2月12日衆院予算委員会 消費者物価指数、平均と70歳以上で大きくかい離 実態合わせた年金を

 日本共産党の宮本徹議員は12日の衆院予算委員会で、マイナス改定される2021年度の公的年金について、改定の指標とされる20年の消費者物価指数が高齢者の消費実態とかい離している問題を追及しました。
 20年の消費者物価の内訳をただした宮本氏に対し、総務省の佐伯修司統計局長は、上昇したのは主に食料で、下落したのは主に幼稚園・保育料などの授業料等、宿泊料などの教養娯楽サービスだと答弁。「『Go To』事業による宿泊料の割引を除いた試算では、(物価は)0・1%上昇となる」と説明しました。
 宮本氏は、高齢者の生活に影響の大きい食費は上がったのに、「ちょうど『Go To』の影響分、物価が伸びず、マイナス改定になった」と強調。さらに、70歳以上の高齢者の消費実態に合わせた消費者物価指数(総務省発表=グラフ)を示し、70歳以上の指数の上昇率は全世代平均より高く、19年比で0・5ポイントも上がっている(全世代平均は0・0ポイント)のに、年金は減額されると批判しました。
 田村憲久厚労相は、賃金の目減りを口実に「現役世代も厳しい。全世代型社会保障の面から、高齢者も同じ形で対応を」と強弁しました。
 宮本氏は、今改定は、物価が横ばいかプラスでも、賃金改定率がマイナスだと賃金改定率に沿って年金が減額される仕組み(16年・年金カット法)によるものだと指摘。「この仕組みは撤回し、高齢者の生活実態に合わせた年金にするべきだ」と主張しました。
 75歳以上の医療費窓口2割負担を導入する医療制度改定一括法案をめぐっては、田村厚労相が家計調査をもとに年収200万円の世帯は「年12万円の余裕がある」と説明。宮本氏は、病気を多く抱えている人もおり、平均でみるのは間違いだと指摘。負担増の対象が「所得の額が政令で定める額以上」とされている点についても「政権にフリーハンドを与えることになる。徹底追及していく」と表明しました。

以上2021年2月14日付赤旗日刊紙より抜粋

提出資料 日本年金機構ホームページ
提出資料 厚生労働省提出資料
提出資料 消費者物価指数の変化(2015年=100)

≪2021年2月12日 第204回衆院予算委員会第9号議事録 該当部分抜粋≫

○宮本委員 ~省略~ その上で、時間がないので次に行きます。年金の減額について伺います。二〇二一年度の年金はマイナス改定になりました。物価がマイナスでないのに年金がマイナスになったのは、初めてであります。来年度予算案では、年金は実は据置きで組んでいるわけですよね。据置きで組んでいるにもかかわらずなぜ年金が減額になったのか、端的に説明していただけるでしょうか。
○田村国務大臣 賃金変動率が物価上昇率よりも低い場合は賃金変動率を使う、名目賃金変動率でありますけれども、それを使って改定をするということになっております。それで、過去三年間の実質賃金の平均を出した上で、それに直近の物価を乗じるという形になりますけれども、計算した場合に、結果的にマイナス、マイナス〇・一%というような改定になるということであります。
○宮本委員 ですから、予算は据置きで組んだわけでしょう。なぜ予算と違う結果になっているんですか。
○田村国務大臣 予算はそういう話でありますけれども、実際問題、これに関して言いますと、予算に不足が生じるおそれがありませんので、そういう意味で、修正はいたしていないということであります。
○宮本委員 予算のときは、年金が減額するというふうに思っていなかったわけですよね。だから据置きで組んでいたわけでしょう。ですけれども、実際は、配付資料にありますが、二のところで、前年の消費者物価指数を、賃金改定率は足しますけれども、前年の消費者物価指数が〇・一か〇・二になる予定だったのが〇・〇になっちゃった、だから賃金改定率の方がマイナス〇・一になってしまって、年金がマイナスになったということですよね、その年金の予算のときとの違いというのは。その上で、今日、総務省に来ていただいておりますけれども、二〇二〇年の消費者物価について、主に上がった項目と下がった項目、それぞれが消費者物価指数に与えた影響について述べていただけますか。
○佐伯政府参考人 お答えいたします。消費者物価指数の二〇二〇年平均の総合は、二〇一五年を一〇〇として一〇一・八で、一年前と同水準になりました。内訳を見ますと、上昇した主な項目は、外食などの食料や、火災・地震保険料などの設備修繕・維持で、総合指数への影響はそれぞれ、〇・四ポイント、〇・一ポイントの押し上げとなっております。下落した主な項目は、ガソリンや電気代などのエネルギー、幼稚園保育料などの授業料等、宿泊料などの教養娯楽サービスで、総合指数への影響はそれぞれ、〇・三ポイント、〇・三ポイント、〇・二ポイントの押し下げとなっております。なお、GoToトラベル事業の開始で宿泊料が割引となったことによる影響を除いて二〇二〇年の総合指数を試算いたしますと、〇・一%の上昇となります。
○宮本委員 つまり、GoToトラベルの影響分ちょうど物価が伸びなくて、年金がマイナス改定になったということなわけです。ですけれども、上がったのは食費が上がったと。先ほど、下がったのは幼稚園無償化など教育費だと。高齢者というのは、食費はたくさんかかるわけですよね。ですけれども、子供が幼稚園に行っている高齢者というのは、まあ余り、めったにいないわけであります。ですから、消費者物価指数そのものは変動はないといっても、中身を見れば、高齢者にとっては大変、必要なものは上がったということなんですね。資料の三枚目を見ていただきたいと思うんです。これは総務省が、七十歳以上の高齢者の消費実態、消費品目ごとのウェートに合わせた消費者物価指数というのを公表しております。青い線が七十歳以上、赤い線が消費者総合物価指数そのものということになっております。全世代平均で見れば、二〇一五年を一〇〇とすると、先ほどお話あったとおり、二〇二〇年は一〇一・八。一方、七十歳以上の高齢者は、二〇一五年を一〇〇とすると、二〇一九年は一〇二・五、二〇二〇年は一〇三・〇ということで、高齢者バージョンの消費者物価指数で見れば、この一年で〇・五上がっているわけですね。一方で、年金は、幼稚園の無償化やGoToトラベルの影響でマイナス〇・一ということになるわけであります。そもそも、年金自体は、マクロ経済スライドもあって、この間上がっていないというのがあるわけですけれども。今度のこういう改定というのは、高齢者の消費生活の実態から見たら大変生活が厳しくなる改定ではないかと思いますが、そういう認識は、大臣、ございますか。
○田村国務大臣 GoToトラベルでという話がまずありましたが、GoToトラベルによって需要が増えているということでありますから、物価全体で見れば、それはGoToトラベルによって増えた需要というものが他の物価に影響を与えているということもこれは考えなければなりませんので、一概に総務省が言ったような話ではないんだろうと私は認識いたしております。その上で、要するに、賃金が目減りしておるということは、若い現役世代もその分だけ厳しい状況になっておるということでございますので、ここは、全世代型社会保障という面から考えれば、ひとつ、やはり高齢者も同じような形で対応をいただかなければならないのかと、大変申し訳ない話でありますけれども、お許しをいただきたいという気持ちであります。同時に、高齢者の方々の物価だけ変えるとなると、今度、高齢者物価が下がったときに、世の中全体は上がっているのに高齢者だけ下がった、年金が下がる、こういうことも、逆のことが起こり得るときに、そういう対応をしたときにどう思われるのかということもあると思います。それから、年金の財政計算という意味からすると、経済の成長というものを一定見込みながら長期的な計算をしておりますので、大体、総合物価指数たるものはそれに近いような動きであるだろうという話であろうと思いますが、高齢者だけ抜き出すというのが果たして全体の計算の中にどういう影響を与えるのか、これは経済全体の成長とは違う動きをする可能性がありますので、そういうことも勘案をしなければならない。幾つかのやはり問題があると思います。大変心苦しいわけでありますが、今般こういう改定であったということで、どうかお許しをいただきたいというふうに思います。
○宮本委員 高齢者の皆さんの生活実態に合わせた改定というのは、私は一番大事なことだと思うんですね。やはり年金というのは、高齢者の皆さんというのは年金しか収入がない、だから、物価が上がればそれに合わせて年金も上げてくるというのが戦後の日本の基本の年金の姿だったというふうに思うんですよね。ところが、五年前の年金カット法で、賃金がマイナスのときは物価が上がろうとも賃金改定率に合わせて下げるということになったわけでありますが、しかし、それに加えて、今日、総務省の資料をグラフにしましたけれども、やはり全世代の消費者物価指数と高齢者の消費者物価指数が乖離してきているわけですよね。同じような動きをしていれば同じような改定で説明がつくと思うんですけれども、ここまで乖離してきているということになると、これはやはり、高齢者の生活を守るためにはどういう統計を使うべきかということも含めて私は研究、検討しなきゃいけないというふうに思いますよ。その上で、もう一点だけお伺いしますけれども、二〇二〇年の実質賃金は、速報値でマイナス一・二%ということになりました。実は、年金に昨年の賃金が反映されるのは二から四年後の三年間ということになっていて、二〇二一年の年金には反映されないわけですね。その先の年金に反映されることになります。そうすると、二〇二一年はマイナスだと、二二年も二三年も二四年も、四年連続で年金は今のままではマイナスになる可能性が極めて高いんじゃないですか。
○田村国務大臣 物価の変動率でありますとか賃金の上昇率といいますか変動率というのは、これはなかなか我々も予見ができないわけでございますので、今ここで即座にお答えするというわけにはいかないということで御理解いただきたいと思います。
○宮本委員 ですけれども、大体想像がつくわけですよね。それは、よほど物すごいインフレが起これば、インフレだとか起これば、いろいろなことが起きたら何か起きるかも分からないですけれども、賃金がぼんと上がることとか、いろいろなことが起きれば分からないですけれども、普通に考えたら、これほどの実質賃金の低下があったら、それは当然、その先に大きくマイナスとして反映するわけですよね。仮に、今年も翌年も物価が上がっていったとしても、年金だけは下がり続けるという事態がこのままでは起きる。私は、五年前の、賃金に合わせて、賃金がマイナスだったら年金を下げていくというこの仕組みはやはり見直さなきゃいけないというふうに思いますし、高齢者の生活実態に合わせた年金にすべきだと。更に言えば、二〇二一年でいえば、予算では年金は据置きで組んでいるんですから、少なくとも据置きすべきだ、そのことを強く申し上げておきたいと思います。 ~以下略~