2021年5月19日 衆院厚生労働委員会 除斥期間問題解決を B型肝炎訴訟 宮本氏が要求

提出資料 出典:最高裁判所
提出資料 出典:全国B型肝炎訴原告団・弁護団
提出資料 出典:厚生労働省

 国の給付金等の請求期限の延長を行うB型肝炎特措法改正案が20日の衆院本会議で、全会一致で可決しました。宮本徹議員は19日の衆院厚生労働委員会で、4月26日の最高裁判決を踏まえて、除斥期間を理由に正当な救済を拒まれている被害者全員を救済するよう求めました。
 最高裁は、慢性肝炎が再発した原告2人に対して、最初の慢性肝炎発症時を起算点として除斥期間を適用した高裁判決を破棄しました。宮本氏は原告らへの謝罪を求め、田村憲久厚労相は「除斥についての考え方が今までと変わってくる。被害者におわび申し上げたい」と述べました。
 宮本氏は、慢性肝炎を再発しながら、国から除斥を主張されている被害者が最高裁判決の2人を含め113人いると指摘。「迅速かつ全体的な解決を図るため、関係者と必要な協議を行う」ことを求めた同判決も引用し、全員救済・制度見直しにむけ、弁護団との協議に直ちに入るよう迫りました。田村厚労相は「判決を詳細に分析し、迅速に検討したい」と答弁しました。

以上2021年5月28日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2021年5月19日 第204回衆院厚生労働委員会第20号 議事録≫

○とかしき委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。B肝法について質問します。四月二十六日にB型肝炎訴訟の最高裁判決がありました。慢性肝炎が再発した原告二名に対して、最初の慢性肝炎発症時を起算点として除斥期間を適用した福岡高裁の判決を破棄した、そして、再発時点を除斥の起算点にすべきだということになったわけであります。資料をお配りしておりますけれども、資料の二ページ目に、判決を踏まえて、全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団が田村大臣宛てに要請書を出しております。こう書いていますね。「原告らは、他の被害者らと同様に、自らは何の落ち度もないのに乳幼児期の集団予防接種によりB型肝炎に感染させられ、二度にわたって慢性肝炎を発症し、長年にわたり苦しみ続けてきたにもかかわらず、最初の発症から二十年という時の経過のみをもって正当な救済を阻まれてきた者である。」こうした上で、要請事項の一つ目で、「国は、本件原告らに対し、正義・公平に反する除斥期間の主張をして苦痛を与えたことについて真摯に反省し、謝罪するとともに、直ちに正当な救済を実現すること」とあります。大臣にお伺いしますが、苦痛を与えた、こういう原告団の指摘に対する認識はいかがでしょうか。
○田村国務大臣 四月二十六日、最高裁の判決がありましたが、HBeの抗原陰性慢性肝炎、これが発症したということは、そこを除斥の起点とするというふうに、起算点をここに持ってくるというふうに、最高裁、これは、原判決が破棄された上で高裁に差し戻されたという案件であります。地裁と高裁で判決が分かれるというようなものでございますので、そういう意味では非常に難しい時間のかかる案件であったというふうに思いますが、しかし、最高裁において、HBeの抗原陰性慢性肝炎の発症時を起算点というような考え方であるとすれば、これは、除斥というものに関して今までの考え方とは変わってくるわけでございますので、本事案については、そういう意味では他の被害者の方々と同じ対応になるということでございますので、同様な形でおわびを申し上げたいというふうに思います。
○宮本委員 おわびを申し上げるということですが、争い続けたこと自体が苦痛を与えたということだと思います。その上で、慢性肝炎を再発しながら、国から除斥を主張されている原告が、最高裁判決の二人を含めて百十三名いらっしゃるということなんです。資料一ページ目につけておりますが、この判決には、最高裁の三浦守裁判長の補足意見というのがあるんですね。最後の四行を読みますけれども、「極めて長期にわたる感染被害の実情に鑑みると、上告人らと同様の状況にある特定B型肝炎ウイルス感染者の問題も含め、迅速かつ全体的な解決を図るため、国において、関係者と必要な協議を行うなどして、感染被害者等の救済に当たる国の責務が適切に果たされることを期待するものである。」ということで、同じ立場にある方々をみんな早急に救済するためにしっかり協議をせよというのがこの補足意見の趣旨だと思いますが、当然、この裁判長の補足意見をしっかり受け止めて、制度の見直し、同様の状況にある被害者全員の救済のために直ちに原告弁護団との協議に入っていく、こういうことでよろしいですね。
○田村国務大臣 お尋ねの、同様の事情にある方についての対応でありますとか原告弁護団との協議の進め方など、今回の判決を受けた対応については、判決内容を詳細に分析しながら、関係省庁とも相談をさせていただきつつ、これは迅速に検討していきたいというふうに思っております。
○宮本委員 基本的には、同様の状況にある方については、当然、最高裁の指摘を受けて救済するということで、そういう方向で検討するということでよろしいですね。確認です。
○田村国務大臣 どういう方が同様の事情かということも我々は検討しなきゃいけませんので、そういう意味では、これは判決は判決でいただいておりますので、この判決に沿って我々としては検討させていただきたいということであります。
○宮本委員 全く同様の事例で百十三名だというのが私は弁護団から伺っている話でございます。更に加えて、今年二月末時点で、全国の未和解原告のうち、国から除斥を前提とした減額した給付金であれば和解すると言われている方が三百二十八人いらっしゃるということなんですね。この人たちは、でも、除斥を前提とした給付金は納得いかないということで、この三百二十八人の方は承服しかねるということで争っているわけです。このうち、先ほど言ったとおり、最高裁判決と同じ再発例が原告を入れて百十三人。原告団・弁護団の大臣への要請書にはこう書いてあるんですね。「慢性肝炎の再発事案に限らず、除斥期間を理由に正当な救済を阻まれている全国の原告らの早期解決に向けて、直ちに我々全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団との協議を開始すること」というふうに書かれております。ですから、最高裁と同じ再発事例の方が百十三名いるわけですけれども、再発以外の方でも、様々なことで除斥の問題で承服できないという方々がいます。こういう方々の解決も含めて是非協議のテーマにしていただきたいと思いますが、いかがですか。
○田村国務大臣 あくまでも今回の最高裁の判決というものが我々は非常に判断するのは重いというふうに考えておりまして、最高裁は、要するに、再燃事案のうちHBe抗原陰性下での再燃ということを判断を示したものであるということであります。そういうような判決内容も分析しながら、関係省庁と相談をしつつ検討してまいりたいということであります。
○宮本委員 最高裁の判決の範囲というのはそういうことなんですけれども、同時に、やはり特措法一条は、そもそも感染被害の迅速かつ全体的な解決を図ることを目的とするということが書かれているわけですよね。やはり、被害の全体的な解決ということであれば、今この除斥の問題で争っている方々についてもしっかり協議の議題に私はすべきだと思います。とりわけ、B型肝炎は治療で鎮静化する方もたくさんいらっしゃいますが、一方で鎮静化しない人もいるわけですよね。除斥はおかしいと争っている人の中には、慢性肝炎の症状がずうっと続いている方もいるわけですよ、何十年と。そういう方というのは、再発の人よりもある意味被害を受けている期間というのは長いということになります。弁護団にお伺いしましたら、先ほどの三百二十八人のうち、二十年以上前に発症しているけれども再発や継続によって提訴時以降も慢性肝炎に苦しめられている原告というのは、再発の百十三名を入れて百六十七人いらっしゃるということであります。私自身の個人的な立場は、本来、除斥で差別することなく、慢性肝炎を発症した原告はひとしく満額で救済すべきだというふうに思っておりますけれども、最高裁の判決を踏まえれば、私は、この再発の百十三名はもちろんのこと、ずっと慢性肝炎の症状が継続している人も含めて、提訴時以降も慢性肝炎の症状がある原告は、除斥という差別をすることなく救済すべきだと思うんですね。というのも、今回の最高裁判決は除斥期間の起算点を再発時というふうにしましたけれども、その根拠に置いたのは、再発の損害は発生するかどうかあらかじめ予測できない、だからあらかじめ請求することは不可能だ、こういう論理で最高裁は再発時というふうにしたわけですよね。 そうすると、慢性肝炎の発症がずっと継続している人も、その論理は同じように私は当てはまると思うんですよね。最初の発症時に将来の提訴時以降まで慢性肝炎の発症が続くということを予測できたかというと、それは、将来の損害をあらかじめ予測して請求することは不可能だったということが言えると思います。ですから、今回の最高裁の論理からしても、少なくとも、提訴時以降も慢性肝炎に苦しめられている被害者は、再発事例であれ、ずっと何十年慢性肝炎が続いている人であれ、除斥を適用すべきでないと私は考えますが、大臣、いかがでしょうか。
○田村国務大臣 ちょっと何度も申し上げて恐縮なんですが、今回の最高裁の判決は、この除斥の起算点というものを、HBeの抗原陰性慢性肝炎が発症した、そこに要は起算点を置くということになりますので、このような判決を我々はしっかりと理解しながら検討していかなきゃならないというふうにお答えしたわけでありますが、今委員がおっしゃられたのは、今般の判決の内容じゃない方々に対してどうなのだ、長期持続して感染というか発症されておられる、そういう方々に対してということでありますが、これはまだ裁判が係属中でございますので、これに関しては、ちょっとコメントは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
○宮本委員 当然、裁判をやっていて、ここで何かしゃべるというのは、確かに裁判との関係でというのはあるのかも分からないですけれども、同じ苦しみをずっと味わってきている方々を線引きをしてはならないというのは私は基本的な考え方だと思いますし、政治が判断すれば、こういう方々は最高裁の判決の論理と同じ論理で考えていけば私は救済できるというふうに思いますので、その点も弁護団、原告団の皆さんとの協議の中で是非よく議論していただきたいというふうに思います。なぜならば、やはり、誰が引き起こした被害なのかということだと思うんですよね。国が感染の危険を承知しながら、注射器を交換せずに使い続けるというのを何十年も放置してきた。それがこれだけの被害を生み、長く長く苦しむ被害者を生んでいったということだと思うんですね。ですから、本来からいえば、私自身の考え方を申し上げれば、時の経過だけを理由に切り捨てるというのは、被害に苦しむ当事者からすれば極めて理不尽だというふうに思いますよ。その点は思いを共有できますよね。
○田村国務大臣 除斥制度というものがある中で、もちろん、これ自体は閣法でありますけれども、制度設計当時、いろいろな議論になったんだというふうに理解いたしております。除斥という制度がある中においてどのような対応をしていくのかという中で生まれた今回の法律であるというふうに理解いたしております。
○宮本委員 ですけれども、やはり除斥という考え方が正しかったのかどうかという検証もあったと思うんですよね。だからこそ、昨年四月から施行された改正民法では、除斥期間という解釈はできないように改正されて、除斥じゃなくて時効なんだと。時効だから、除斥と違って、停止だとか、そういうものもあるわけですよね。ですから、もちろん、改正された民法を昔のことにさかのぼって適用するというのは、当然それは法律上ならないと思いますけれども、ただ、やはり、こうした損害賠償の問題で除斥という考え方はやめようというふうに政治自体は決断を民法まで変えてしたわけですから、その精神を踏まえてしっかり私は弁護団、原告団の皆さんとの協議に当たっていただきたいというふうに思いますが、その点はいかがですか。
○田村国務大臣 まず、今回の最高裁の判決というものは我々も真摯に受け止めながら、これから対応をいろいろな形で検討の上やっていかなきゃならぬと思っています。民法において除斥制度を時効という、これに関しては、それは一つの考え方でありますが、過去に上って遡及適用されるものではないわけでありますので、その中において、要するに、この肝炎の問題のみならず、社会一般、除斥という制度の中でいろいろな形で秩序が守られてきたということはあるんだというふうに思います。そういう全体の中での判断においてこういう法律の体系になっているという理解をさせていただいております。
○宮本委員 なかなか冷たい答弁なわけですけれども、やはりそれは、法律も国民世論と立法の努力の中でいろいろな点で前進していく面があるわけですから、過去の法律を作ったときの法律の全体の体系とは違うものができたら、その時点で、やはり政治はどうなのかという検証を絶えずほかの法律についてもしていくべきだというふうに思います。その上で、残された時間で幾つかのことをお伺いしたいと思いますが、特措法制定時、集団予防接種時の注射器連続使用などによってのB型肝炎感染者の患者は約四十五万人と推計されているわけですけれども、給付金支給者が大きく下回っているわけですよね。その要因について先ほど来いろいろ議論があるわけですけれども、皆さんが今日言われていることの理由以外に、私は、書類がそろえられない、こういう相談は私自身も幾つも受けてきましたけれども、そういう問題もあると思うんですよね、基本合意で求められている書類がそろえられない。こういうものが相当な数に上るという認識というのは政府はお持ちなんでしょうか。
○正林政府参考人 書類がどの程度そろえられないかという点については、余り承知はしておりません。何度も繰り返し答弁していますけれども、やはり、大多数が無症状の方々というのが一番大きいのではないかなと思います。症状がないと、御自身が肝炎に感染したということを認識することがなかなかできませんので、そこが一番大きな要因ではないかなとは思います。そのために、検査の奨励とか普及啓発活動を行っているところでございます。
○宮本委員 一番大きな要因はそこにあるにしても、同時に、私自身は、基本合意で定められた書類が、いろいろなものが求められますよね。そろわない人たちの相談、厚労省とも何回かやり取りしたことがありますけれども、あるんですよね。ですから、当然、基本合意は基本合意としてあるわけですけれども、私は、そういうところも含めて、本当に全員を救済するためにはどうしたらいいのかということをもっと考えなきゃいけないところに来ているのではないかということを指摘させていただきたいと思います。最後、ちょっと時間がないからあれですけれども、まとめて二問お伺いをいたします。一つは、C型肝炎は薬で完治するようになりましたけれども、B型肝炎は根治するための治療薬はありません。ここをどう開発していくのか、一層の支援が必要ではないかということと、あと、資料三枚目にお配りをしておりますけれども、先ほど津村さんとの質問のやり取りで、職場健診については広島の例が出されて、B型肝炎のウイルス検査が増えてきていますよと広島の例でおっしゃいましたけれども、一方で、自治体での検査というのはかなり減ってきているのではないかというふうに思いますので、やはりこの受検率を上げる対策が私は必要だというふうに思います。私自身、もう大分前の話ですけれども、二十数年前ですかね、後輩が二十三歳でB型肝炎、肝臓がんで亡くなりました。やはり沈黙の臓器と言われますから、なかなか気づかないというのはよく言われますよね、いろいろ進行しても。いろいろな事情があって、実はその告知のときにも私は立ち会っていたんですけれども、本当にそのときのことを今でも思い出します。 そういう点では、やはり治療薬と検診、これは本当に大事だと思いますので、その点、よろしくお願い申し上げます。
○正林政府参考人 御指摘いただいたように、B型肝炎についてはまだまだ根治療法がありませんので、その辺はしっかり研究していく必要があるというふうに承知しています。また、検査についても、先ほども御答弁申し上げましたが、できるだけ多くの方に検査を行っていただくよう、これも普及啓発をしっかり行っていきたいと思います。
○宮本委員 終わります。ありがとうございました。