2022年12月8日 衆院消費者問題に関する特別委員会 実効ある規定に改めよ 宮本氏、党の修正案示し迫る

 日本共産党の宮本徹議員は8日の衆院消費者問題特別委員会で、統一協会の被害者救済法案に対する日本共産党の修正案を示し、マインドコントロール(洗脳)下の寄付勧誘を禁止する実効ある規定に改めるよう迫りました。
 宮本氏は、政府提出法案では救済対象が狭い上、条文が明確でなく、解釈に疑義が生じかねない答弁が続いていると批判。法人等に課す「配慮義務」を「禁止規定」とし、「困惑」などを要件とする禁止規定を改めて、洗脳下の寄付勧誘を禁止する修正案を日本共産党が提出したことを紹介し、「このほうが洗脳下の献金を明確に禁止し、被害防止、被害救済につなげられる」と岸田文雄首相の認識をただしました。
 岸田首相は「(政府案は)マインドコントロールによる寄付について現行の日本の法体系の中で許される限り最大限禁止行為や取り消し権の対象とした」などと述べるだけでした。
 宮本氏は、全国霊感商法対策弁護士連絡会なども防止効果が弱く、救える対象が狭いと指摘しているとして「もっと努力すべきだ」と要求し、「首相は現行の法体系でギリギリの対応というが、(共産党の修正案は)衆院法制局の力を得て現行の法体系にあわせ、憲法の枠内でしっかり禁止行為にできることを示してる」と強調。統一協会は半世紀にわたり被害を広げ、自民党は広告塔の役割を果たしてきたとして「首相には被害を防止する実効ある法案をつくる責任がある」と迫り「日本共産党の修正案を丸のみすべきだ」と求めました。

以上2022年12月9日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年12月8日 第210回衆院消費者問題に関する特別委員会第6号 議事録≫

○稲田委員長 次に、宮本徹さん。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。昨日、参考人の川井弁護士からは、配慮義務の規定は、統一協会の加害実態から重要な内容を含んだものであり、禁止行為にすべきだと提案がございました。配慮義務を禁止行為にすることについて、総理は、禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのかを的確に認識できるよう、客観的で明確なものとして規定すべきと考えられます、こう答弁されてきました。総理、この配慮義務の内容というのは、客観的で明確なものとして規定することは可能なんじゃないですか。
○岸田内閣総理大臣 委員御指摘のように、禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのか、これを的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきであると考えています。そして、一方、配慮義務の方ですが、行為ではなくして、適切な判断をすることが困難な状態等、勧誘によってもたらされる結果、これに着目をして、個人の状態を規定しているものであります。これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止行為とするよりも、こうした結果を招く、より幅広い行為を捉えることができると考えています。そして、それを、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償を容易とする効果が高いと考えております。要は、禁止行為においては、可能な限り客観的で明確なものとして規定することが必要だということを申し上げた上で、配慮義務については、今言ったように、結果に着目することによってより幅広い行為を捉えることができる、こういった考え方に基づいて二段階の体制を用意したというのが政府の考え方であります。
○宮本(徹)委員 配慮義務の内容を客観的な明確なものとして規定することは可能かと聞いたんですけれども、否定はされないわけですよね。私たち、今日、修正案を出しております。企業が何をやってはならないのかを明確にして、禁止行為として法案を作ることは十分可能であります。加えて言えば、総理は予算委員会で伺ったときは、禁止規定にすると行政措置や刑事罰の適用につながるので明確性が必要だと言っていたんですよね。ところが、今日この後出される、与党も含めた修正案では、配慮義務も行政措置の対象にするわけですよ。となると、裏を返せば、このままでも明確性があるということになるじゃないですか。本当に随分ずさんな答弁になってきていると思いますよ。加えて、川井参考人は、配慮義務だけでは裁判所で不法行為と判断されるかは極めて不透明、ほとんど役立たない、こう述べておられます。ところが、先ほど総理は、禁止行為とする場合よりもより幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定及び損害賠償請求を容易にする効果が高いと、全く反対のことをお述べになったわけです。一体何を根拠に総理は、統一協会相手に長年裁判で闘ってきた弁護士とまるっきり反対のことをおっしゃるんですか。
○岸田内閣総理大臣 先ほども答弁させていただきましたように、禁止行為は、個人の寄附の意思表示をゆがめる法人等の具体的な勧誘行為を規定しています。他方で、配慮義務については、個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥るなどの結果を招かないよう、寄附勧誘の際の配慮義務を課す、このように法律を用意いたしました。このような配慮義務を規定することで、不当な寄附行為についてより広く包括的に捉えることができ、民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償が容易となり、被害救済の実効性が高まる、このように考えた次第です。そして、法律の施行後、法律の執行の状況等も勘案し、必要な見直しを行うこととしており、この中でこうした効果についても確認してまいりたいと考えます。
○宮本(徹)委員 同じことを繰り返されているだけなんですけれども、総理は、では、統一協会の被害にピンポイントを当てた場合でも、禁止行為よりも配慮義務の方が民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易にする効果が高い、こうお考えなんですか。
○岸田内閣総理大臣 これは先ほどから言っておりますように、禁止行為は、具体的な行為を禁止するものであります。それに対して配慮義務は、寄附勧誘を受ける個人が適切な判断ができないような状態に陥るという結果を招かないようにするものであります。配慮義務の規定は、こうした結果を招く様々な寄附勧誘行為を包括的に捉えることができるからこそ、被害の救済、防止に資するものであると考えています。被害の回復、救済の手段として裁判実務において最も活用されているのは、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求であるからして、その活用を容易にすること、これが被害救済実務の実効性に寄与することになると考えております。
○宮本(徹)委員 全く説得力を欠く説明だと私は思いますよ。禁止規定にした方が被害防止効果は高い、そして裁判でも闘える、これは弁連の皆さんが言っていることなんですから。それを、根拠も示さずに、逆立ちのことを言わないでいただきたいと思います。四条六号について伺います。寄附に際して、不安をあおり、又は不安に乗じて、不利益の回避のためには寄附が必要不可欠と告げることで困惑をさせてはならないということなんですけれども、念のために確認しますけれども、四条六号は、この四要素、時系列と因果関係を満たさなければならない、こういうことでよろしいですか。
○稲田委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○稲田委員長 速記を起こしてください。岸田総理大臣。
○岸田内閣総理大臣 今、委員の言う質問は、時系列的に因果関係があると……(宮本(徹)委員「時系列と因果関係と、それぞれありますよね、四要素の」と呼ぶ)
○稲田委員長 もう一度、では、宮本委員、質問してください。
○宮本(徹)委員 いえいえ、この四条六号の四要素というのは、時系列も入っていますし因果関係も入っていると思うんですけれども、これは満たさなきゃいけないということでいいですねと。それはそうですと言ってもらえればいいだけです。
○岸田内閣総理大臣 因果関係、これはもちろん必要であります。ただ、時系列というのは、要するに順番に来ないと満たさないというような御指摘であるならば、それは必要はないと思います。
○宮本(徹)委員 いや、因果関係はあるわけですよね、必要不可欠と告げることで困惑させてはならないというのは因果関係があるんだから、時系列も入っているわけですよ、ここには。その上で、川井参考人からは、入信から寄附の勧誘までタイムラグがあり、献金するときは必要不可欠とも言われず、困惑もなく、進んで献金している事例の紹介がありました。本会議での、入信と寄附勧誘のタイムラグがあるケースの私の質問に対して、総理から答弁で、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附の勧誘と判断できない場合であっても、入信時に抱かされた不安が継続している場合には、法人等がこれに乗じて寄附を勧誘すれば取消権の対象になる、こう答弁がありました。不利益の回避のために寄附が必要不可欠と告げることで困惑させてはならない、この条件はこの総理の答弁のどこに入っているんでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 御指摘の答弁は、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断できない場合であっても、寄附時点で不安を抱いており、それに乗じる形で寄附の勧誘を受けた場合には取消権の対象となり得るという立法の趣旨を端的に述べたものであります。そして、御指摘の、不利益を回避するためには当該寄附をすることが必要不可欠である旨告げ、困惑させてはならない、これは条文に定められた要件でありますので、これは当然必要なものであると認識をしております。
○宮本(徹)委員 そうなんですよ。ですから、取消権の対象になるというふうに説明する際は、当然、四要件を因果関係も含めて全て満たす必要があるのに、四要件を説明をちゃんとせずに、取消しの対象になるという答弁をするのは、大変誤解を招く答弁だと思いますよ。必要不可欠と告げることで困惑させてはならない、これがあるために救済の対象はぐっと狭まるわけですよ。それを言わずに、何かそれを抜いて、取消しの対象になります、なりますなんて、本当に甘い答弁だと思います。もう一点お伺いします。総理は本会議の答弁で、事後的に寄附当時に困惑していたと考えた場合には取消権の対象になると述べておりますが、四条六号は禁止行為で、行政措置、刑事罰の対象でございます。行われた客観的行為は同じなのに、事後に困惑したと考えれば行政措置、刑事罰の対象となり、マインドコントロール状況のままでは行政措置、刑事罰の対象とならないということなんでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 勧誘等の行政措置に当たっては、被害者がマインドコントロールにかかっていたかどうかにかかわらず、相談窓口への情報提供なども端緒とし、国として報告徴収を行い、法人等がこうした禁止行為に該当する行為を不特定多数に対して行っていないか、確認を行うこととなります。このため、例えば、寄附者本人がいわゆるマインドコントロール状況のままにあり、取消権を行使しない場合であっても、家族等からの情報提供を基に、法人等への報告徴収を経て、不特定多数への禁止行為を行っていることが明らかとなった場合には、行政措置等を行うことはあると考えています。
○宮本(徹)委員 そういうケースもあるということですね。ただ、同時に、この取消権ということでいえば、本人が事後で言えば取消権の対象になり、事後に言わなければ取消権の対象にならないというのは、これは大変法的安定性を欠くと思います。この間、この委員会でも、寄附に際して、困惑、必要不可欠、これが議論になってきたわけですけれども、私、困惑類型にこだわるから、弁連の皆さんが言うように、救済の範囲が狭く、そして後に解釈に疑義が生じかねない答弁、法文からそのまますっきりは読めないような答弁、こういうのが続いているというふうに思います。そこで、私たち、会派として修正案を提出させていただきました。衆議院法制局に本当に御尽力もいただきまして、配慮義務規定を禁止規定にして、困惑類型でない類型を盛り込みました。少し略して紹介しますが、法人等は、当該個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥らせ、又は当該個人がそのような状態に陥っていることに乗じ、寄附の勧誘はしてはならない、こういう文言でございます。統一協会のマインドコントロール下の献金をこの方が的確に禁止して、被害防止、被害救済につなげられるというふうに私は思うんですね。総理、そう思いませんか。
○岸田内閣総理大臣 新法案では、いわゆるマインドコントロールによる寄附について、現行の日本の法体系の中で許される限り最大限禁止行為や取消権の対象としております。具体的には、不適切な勧誘行為を受け、困惑した中で行われた寄附の意思表示には瑕疵があることから、寄附者を保護するため取消しを認めるという考え方に基づき、条文の整理を行ったものです。なお、利益の追求のための寄附については、これは信教の自由や幸福追求権との兼ね合いで、禁止行為にまで規定することは困難だと考えます。他方で、それが意思決定の自由を損なうような勧誘の方法であれば、今回政府案で盛り込む配慮義務規定に反する、こうしたことになると考えております。
○宮本(徹)委員 困惑類型では対象が狭過ぎる、しかし、配慮義務規定を設けたといっても、配慮義務規定では禁止行為にはなっていない、抑止効果が弱い、だから修正してほしいということを弁連の皆さんはこの委員会にも来ておっしゃったわけですよね。私たちが今回法案で提出している中身というのは、何もとっぴなことを言っているわけじゃないんですよ。消費者庁の報告書の中でも、マインドコントロール下にあって合理的に判断できない状況が問題となる寄附、こういうものについては、一般的な禁止規定を設けるべきだ、こういうことを河野大臣の下での検討会の報告書でも書かれているわけですよ。それを素直に法案化すればいいわけですよ。なぜそれを素直に法案化しないんですか。総理、統一協会は半世紀にわたって被害を広げてきました。そして、長年、自民党の政治家の皆さんは、残念ながらこの統一協会の広告塔の役割を果たしてきたわけですよ。その中でこの被害が広がってきたわけですよ。それだけに、私は、総理には統一協会の被害を防止する実効ある法案を作る責任があると思いますよ。長年闘ってきた弁連の皆さんが言っていることは、本当に裁判で闘う上でもこの配慮義務規定は禁止規定にする必要がある、こう言っているわけですから。やはり、この間の政治的な責任も踏まえて、私は、配慮義務規定の中身は禁止規定にしていく、そういう責任が総理にあると思いますよ。そうお考えになりませんか。
○岸田内閣総理大臣 まず、政治の立場から、現実にこれだけ多くの被害者がおられるということは重く受け止めなければならないと思います。だからこそ、今の日本の法体系の中で最大限どのような法律を作ることができるのか、様々な手法を駆使して法律を作成したということであります。いろいろな議論があり、意見の違いはあるとは思いますが、こうした禁止行為と配慮義務規定、二段階の法律を用意したということについても、先ほどから申し上げておりますように、できるだけ現実に即して、多くの方々を救うために、より幅広く行為を捉えるためにこうした工夫をしたということであります。是非、現実にしっかり対応できる法律を用意し、更に実効性を高めるために、政府として、様々な解釈について明らかにするとともに、様々な支援を、環境整備を行っていかなければならないと考えています。そういった思いで、政府として引き続き努力をしていきたいと考えます。
○宮本(徹)委員 しかし、残念ながら、弁連の皆さんからは、防止効果は弱い、救える対象は狭いと。本当だったら、もっと努力すればいいわけですよ。現在の法体系の下でのぎりぎりの対応とおっしゃいますけれども、ぎりぎりじゃないですよ、総理がやっていることは。ぎりぎりじゃないですよ。私たち、衆議院法制局の力を得て、今の法体系に合う形で、憲法の枠内で、しっかりと禁止行為にできるということも示しているわけですから。ぎりぎりという考え方は、私は大きな誤りだと思いますよ。本当にこれで実効あるものになっているのかということを是非考えていただいて、私たちの修正を丸のみしていただきたい、私は、そのことを申し上げまして、質問を終わります。