2023年2月27日 衆院予算委員会 学術会議 政府介入の改定法案 首相「期限ありきでない」 提出断念迫る宮本徹氏に

配付資料 出典:日本学術会議ホームページ 
配付資料 出典:内閣府提出資料「日本学術会議法の見直しについての検討状況」から
配付資料 出典:日本学術会議「2月16日臨時幹事会における内閣府からの『検討状況』説明についての懸念事項」2023年2月22日抜粋
配付資料 出典:日本学術会議ホームページ
配付資料 出典:Scienceホームページ2023年2月18日付 
配付資料 出典:内閣府提出資料 

 日本共産党の宮本徹議員は27日の衆院予算委員会で、政府が今国会中にも提出を狙う日本学術会議法改定案について、「首相による(会員候補の)任命拒否を正当化する仕組みができるのではないか」と指摘し、法案提出を断念するよう強く求めました。
 同法案は、学術会議の会員選考に政府が介入する仕組みを設けるもの。宮本氏は、改定に向けた政府の検討資料に「学術会議の活動に、行政…の意見を反映させる」との記述があるとして、「政府の下請け機関にするつもりか」と厳しく批判しました。
 宮本氏は、日本のノーベル賞受賞者ら8氏が声明(19日発表)で政府に再考を求めていると指摘し、「政治の意向を忖度(そんたく)して(政府に)助言を行うようになれば、存在意義がなくなる」と主張。岸田文雄首相は「学術会議の職務の独立性は否定されない」と強弁しました。
 政府の検討案には、会員選考のための「選考諮問委員会」を新設し、同委の「意見を尊重しなければならない」と明記。宮本氏は、学術会議と同委の意見「不一致」を理由に、首相が任命拒否を正当化するなど「政府が人事に介入しうる、極めて不透明な仕組みを持ち込もうとしている」と批判しました。
 宮本氏は「学術会議との合意なしに法案は提出しないと断言するか」と追及。岸田首相は「今国会への提出を目指しているが、期限ありきではなく、学術会議と意思疎通を図りながら検討を進めていきたい」と述べました。

以上2023年2月28日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2023年2月27日 第211回衆院予算委員会第14号議事録≫

○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、日本学術会議法の見直しについてお伺いいたします。パネルを御覧ください。ノーベル賞などの受賞者、八人います。本庶先生など、そうそうたる顔ぶれの皆さんが連名で声明を出しました。今回の法改正は日本学術会議の独立性を毀損するおそれと指摘し、政府に再考を求めております。声明は、冒頭でこう書いております。「学術は人類が手にしている崇高な知的営みであり、その発展は人類の進歩と福利を実現するための不可欠の条件です。各国にはナショナルアカデミーが存在し、それぞれの国の学術を代表するとともに、世界の学術界と連携することにより、人類の福利に貢献する国際的公共財を構成しています。成熟した先進国の政府は、ナショナルアカデミーの活動の自律を尊重し、介入しないことを不文律にしてきました。」総理、なぜ政府はナショナルアカデミーの活動に介入しないことが不文律となっているのか分かりますか。
○岸田内閣総理大臣 独立性を尊重する理由は何かということですが、それぞれの国において、アカデミアの活動を尊重するという基本的な考え方に立っている、こうしたことから、独立性を尊重する、こうした基本的な考え方に立っているんだと認識をしています。ただ、それを現実に実践するための仕組みは、各国において様々な工夫が行われていると承知をしています。
○宮本(徹)委員 学問の自由とも密接不可分なわけですけれども。学術会議も含め、各国のナショナルアカデミーは、政府と社会に対して科学的助言を行う組織です。その科学的助言というのは専ら学術的知見に基づくもので、政治権力や特定の利害から独立して人類社会の福祉につなげるものであります。学術的知見が時には政権の政策に批判的となる場合もある、だからこそ科学的助言の意味があるわけですね。政治の意向を忖度して助言を行うようになれば、学術会議は存在意義がなくなるんです。ところが、政府は、日本学術会議に対して、政府等と問題意識や時間軸等を共有することを新たに求めているわけであります。パネルの二でございますが、法改正に向けた政府の資料を見ると、新たに学術会議の活動に行政の意見を反映させるために実施する事業、これが求められております。政府の下請機関にするおつもりなんでしょうか。さらに、会員に求められる資質として、行政の諸課題に取り組むための広い経験や、行政、産業界等との連携による活動の業績などを設けております。これは基礎研究の分野にはなじまないと学術会議からも声が上がっております。総理、政府が学術会議に国費を出しているのは、学術会議の独立した活動を保障するためであります。お金を出しているから口も出すんだという考え方は、学術会議の独立性を損なうのではありませんか。
○岸田内閣総理大臣 学術会議に対しまして、問題意識や時間軸等の共有、こうしたものが必要であるという考え方ですが、問題意識や時間軸等の共有とは、政府等との結論の共有を求めるのではなく、今般の見直しによって学術会議の職務の独立性は否定されないと考えています。他方で、問題意識や時間軸等の共有が必要であるのは、地球規模の課題や新興技術と社会との関係に関する課題など、政策立案に科学的な知見を取り入れていく必要性がこれまで以上に高まっていることを踏まえて、学術会議に期待される時宜を得た質の高い科学的助言を政府等に対して行うという役割を果たすためには、受け手側の問題意識、時間軸や現実に存在する様々な制約等を十分に踏まえながら審議等を行っていただく必要がある、こうした背景によるものであると考えています。
○宮本(徹)委員 時間軸を共有するといったって、政権は次から次へと新たな政策課題を打ち出して、今だったら大軍拡ということを打ち出して、そのために軍事研究をやろう、こんな話になっているわけじゃないですか。そういうことを求めていくというのが間違いですよ。世界全体のそれが常識なんですよ。その上で、次の質問ですけれども、学術会議の独立性を担保するものは、自主的な会員選考であります。今、世界のほとんどのアカデミーの会員選考は、現会員が次の会員を推薦し選出するコオプテーション方式です。優れた科学者を選考することは、学術分野に通じた科学者以外には困難だからであります。日本学術会議は、現会員からの推薦に加え、約二千の学会や経済団体等に情報提供をお願いして選考を重ねて、慎重に推薦候補を決めております。ところが、政府の検討案では、学術会議が独立して行っている会員の選考について、新たに外から意見をつける選考諮問委員会を設けて、選考諮問委員会の意見を尊重しなければならない、こうしております。日本学術会議からは、学術会議の独立性を損なうとの強い懸念が表明をされております。総理、今、学術界全体で選ぶやり方をしているのに、なぜそこに外部から口を挟むという不透明な仕組みを設けるんですか。その狙いは何ですか。
○岸田内閣総理大臣 学術会議が国費で賄われる国の機関として独立して職務を行うに当たっては、国民から理解され信頼される存在であり続けるため、活動及び運営の透明化にとどまらず、当然のことながら、活動を担う会員、連携会員の選考も透明なプロセスで行われることが必要であると考えます。このため、会員等以外の有識者から成る選考諮問委員会を学術会議に設置をし、選考に外部の目を入れることにより、選考プロセスの透明化を図ることが検討されていると承知をしています。学術会議においても、選考プロセスの透明化の重要性については認識が共有されているものと承知をしています。選考諮問委員会の設置は、選考における学術会議の独立性を損ねるものではなく、むしろ、学術会議が国民から理解され信頼されるための重要なツールになるものとして検討されていると承知をしております。
○宮本(徹)委員 学術会議からは、政府の今回やろうとしていることの一番の問題の一つがこの選考諮問委員会を設けることだということでおっしゃっているわけですよね。全然問題意識は政府と共有されていないですよ、学術会議は。そして、プロセスの透明化ということをおっしゃいますけれども、選考諮問委員会のメンバーは、一定の手続を経て会長が任命すると書いているんですね。その一定の手続は何なのかということを幾ら学術会議が問うても、具体的な話が出てこない。その一定の手続に政府が関与する可能性についても、説明がない、否定していない状況なわけですよ。そして、この選考諮問委員会のメンバーは一体誰がなるのか。科学者以外の人が入って、科学的業績について評価できるはずがないわけですよ。仮に日本学術会議と選考諮問委員会の見解が一致しない、このときにどうするのかということになります。学術会議は、当然、自分たちが選んだ会員候補を推薦します。その際、内閣総理大臣は、不一致を理由に任命を拒否する、こういうことを正当化する仕組みになるんじゃないかということを学術会議は指摘しております。つまり、政府が学術会議の人事に介入し得る、極めて不透明な仕組みを持ち込もうとしている、こういうことなんじゃないですか。
○岸田内閣総理大臣 学術会議の見直しについては、学術会議においても、様々な関係者等との議論を通じて、令和三年四月、「より良い役割発揮に向けて」というものを取りまとめられ、これに基づき改革を進めているところであると承知をしており、改革の必要性や方向性については共有されているものと認識をしています。今回の見直しは、学術会議による「より良い役割発揮に向けて」も踏まえつつ、また、総合科学技術・イノベーション会議、CSTIの有識者議員懇談会でも御議論いただくなど、幅広い観点からの検討を進めてきたところであると聞いており、学術会議における改革の成果を着実に法律に取り込み、今後の安定的な運用を担保しつつ透明性を担保する趣旨であって、学術会議にとっても重要なものであると考えています。また、学術会議が国費で賄われる国の機関として独立して職務を行うに当たっては、国民から理解され信頼される存在であり続けることが必要であり、透明性の高い会員選考や活動に向けた改革が求められているものと考えています。いずれにしても、学術会議ともしっかり意思疎通を図りながら、引き続き議論を続けていきたいと考えます。
○宮本(徹)委員 さっきから透明性とおっしゃいますけれども、私が言っているのは、逆に、今は学術会議の皆さんが選考の過程もこういうふうにやっていますよ、学術界全体の意見を集めてやっていますよと言っているのに対して、外から政府が関与し得る不透明なプロセスを設けようとしているんじゃないのかということを言っているわけです。だから、学術会議の皆さんは、自分たちの独立性が脅かされる、こう批判しているわけですよ。学術会議の皆さんだけじゃない、ノーベル賞受賞者の皆さんも大変大きな懸念を持っているわけでございます。それで、パネルの三でございますけれども、こう書いてありますよ。日本学術会議は、政府と問題意識が共有されるどころか、二月二十二日に出した日本学術会議の懸念の中では、今回の内閣府の方針と説明は、真理や理念を追求する学術の本旨を踏まえぬ近視眼的なものだ、現在のような形で法改正が強行されるなら、それは日本の学術の終わりの始まりとなりかねないことを強く憂慮する、こう言っているんですよ。総理、ペーパーを読むだけだったらまずいですよ。学術会議の皆さんは、本当に、このままだと日本の学術の終わりの始まりとなりかねない、大変な懸念を持っているわけです。ちなみに、この問題は既にサイエンスでも取り上げられて、世界にも報道される事態になっているわけですよね。総理、日本学術会議との合意なしに法案は提出しない、このことを断言していただけますか。
○岸田内閣総理大臣 学術会議の独立性については、今回の見直しによって一切否定されるものではありませんが、学術会議が国費で賄われる国の機関として職務を行うことから、国民から理解される存在であり続けるためには、透明性の高い会員選考や活動が必要であると考えています。現在行っている検討は、学術会議の活動や選考の透明性を図ろうとするものであり、学問、アカデミアと政治との関係を変更するものではないと承知をしています。この議論については、期限ありきということではなく、学術会議と意思疎通を図りながら検討を進めていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 先ほど総理は、期限ありきではないということをおっしゃいました。期限ありきでないということは、当然、学術会議との合意なしでは法律は出さない、こういうことでよろしいですね。
○根本委員長 申合せの時間が過ぎておりますから。では、内閣総理大臣岸田文雄君。
○岸田内閣総理大臣 そもそも、今回の法改正案については、今国会への提出を目指しているところではありますが、先ほど申し上げたように、期限ありきということではなく、学術会議と意思疎通を図りながら検討を進めていきたいと思っています。
○宮本(徹)委員 終わります。
○根本委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。