2023年3月15日厚生労働委員会 駐留軍労働者保護を 宮本徹議員 米軍のパワハラ告発

 日本共産党の宮本徹議員は15日の衆院厚生労働委員会で、在日米軍などで働く労働者のハラスメント被害を取り上げ、国内の労働法制を適用した実効性のある労働者保護を求めました。
 「駐留軍等労働者」は約2万6000人。日本政府が雇用主となり、使用者の米軍に労務提供しています。過去5年間の各地方防衛事務所に寄せられたハラスメント相談は延べ277件に及びます。
 宮本氏は、米陸軍キャンプ座間で起きたパワハラ事件を例に、防衛省が配置転換を求めても米軍が拒否し問題が解決しない実態を告発。労働施策総合推進法のパワハラ防止措置義務を米軍にも課すよう協議すべきだと迫りました。
 井野俊郎防衛副大臣は「米側にはハラスメント防止に係る措置義務がないため、厚生労働省による助言等の直接な対象とはなっていない」と答えました。
 宮本氏はさらに、2019年に米海軍厚木基地でのパワハラ事案に対応するため、防衛省、米軍、労働組合で構成する協議会が設置されたと紹介。「厚木基地以外でもこうした協議会を設ける必要があるのではないか」とただしました。井野氏は「今後、必要な場合には適切に対応する」と述べるにとどまりました。

以上しんぶん赤旗ホームページ2023年3月23日配信記事から抜粋

≪2023年3月15日 第211国会衆院厚生労働委員会第3号 議事録該当部分抜粋≫

○宮本(徹)委員 ~略~ 続きまして、駐留軍関係離職者等臨時措置法の延長についてお伺いをいたします。我が党は日米軍事同盟にも思いやり予算にも反対をしておりますけれども、米軍基地で働く労働者について権利を保障するのは当然であり、米軍再編に伴って離職を余儀なくされる方の再就職支援は必要だと考えております。その上で、駐留軍労働者の権利に関わってお伺いしたいと思います。先ほど早稲田委員からも、日本の法令が適用しているのかという点で大事な問題提起がございました。まず私が取り上げたいのは、ハラスメントの問題です。米国人上司からのパワハラ被害などの職場のトラブルが多発していると報じられております。今日、防衛省、来ていただきましたけれども、この間、防衛事務所のハラスメント相談窓口に寄せられている相談件数、年度ごとの合計数を述べていただけるでしょうか。
○井野副大臣 平成二十九年度から令和三年度までの過去五年間でということでありますけれども、各地方事務所などのハラスメント窓口に寄せられた相談件数ですが、平成二十九年度が二十五件、三十年度が五十八件、令和元年度が八十三件、令和二年度が五十七件、令和三年度が五十四件であり、合計で延べ二百七十七件となっております。
○宮本(徹)委員 資料をいただいたので、資料六につけておりますけれども、令和四年度は二月末現在で七十四件ということになっているわけです。この駐留軍労働者は、雇用者は日本政府だ、使用者は在日米軍、日本政府が米軍に供給する間接雇用方式の下で働いているわけです。資料の五ページを見ていただきたいと思います。キャンプ座間でパワハラ被害を受けた女性労働者二人が産業医に急性ストレス障害などと診断され、三か月の傷病休暇を取得しました。その後、配置転換を条件に復帰可能と診断されましたが、米軍側には元の部署に戻るよう指示され、拒むと無断欠勤扱いとなり、お一人は無給状態、こういうことが起きたわけです。この前に、お二人は基地内の人事担当に苦情を申し立て、防衛省の座間防衛事務所も、配置転換を含めた配慮を求める要望書を米軍側に提出しておりましたが、配置転換は使用者である米軍の権限に属するため、雇用主の防衛省だけでは解決できない、こういう実態が浮き彫りになったわけです。同じ労働者供給である労働者派遣では、派遣元だけでなく派遣先もハラスメント防止措置義務を負っているわけです。私は、雇用主である防衛省に義務を課すだけでは不十分であって、使用者として配置転換や指揮命令の権限を持つ米軍にもこうした措置義務を課すなど、実効性のある対策を取るべきだと思いますが、防衛省、いかがですか。
○井野副大臣 ハラスメント防止対策についてでありますけれども、パワハラ防止法が令和二年六月に施行された後は、この法律の適用を受ける従業員の雇用主として、新たに駐留軍等労働者のためのパワハラ防止に係る方針を策定し、米側や従業員に考え方を共有し、周知するとともに、各地方防衛事務所などにハラスメント専用の相談窓口を設けるなど、対策を講じているところでございます。また、米側に対しては、パワーハラスメントの具体的な事例などを示して啓発を行ったり、米側及び従業員を対象とした在日米軍従業員等へのパワーハラスメント防止講習会を実施し、パワーハラスメントを防止するための各種取組を進めてきているところでございます。こういったハラスメント発生を防ぐための取組を引き続き進めるとともに、万が一ハラスメントが発生した場合には迅速に解決ができるよう、日米間で緊密に連携して取り組んでいくところでございます。
○宮本(徹)委員 午前中の早稲田委員とのやり取りを聞いていましても、日本の様々な法令が在日米軍には実際には適用されていない状態になっているわけですね。このパワハラ防止措置義務についても、先ほど言いましたけれども、同じ労働者供給でも派遣では、これは派遣先にも課されるわけですよね。その義務の中には、ハラスメント防止の方針の明確化、周知啓発だけでなく、相談窓口の設置、速やかな被害者への配慮、行為者に対する措置、再発防止策などなどが使用者の側にも課されるわけですよ。こうしたものが米側に課されていないからなかなか問題が解決しない、こういうことになっているんじゃないんですか。ですから、ここは防衛省としてちゃんと、パワハラ防止措置の義務やセクハラ、マタハラの防止措置の義務についてもちゃんと、日本の法体系に沿った対応を取るように協議して、合意を得る必要があると思いますが、いかがですか。
○井野副大臣 確かに、使用者である米側に対しての対策というところですけれども、我々防衛省としては、米側にはハラスメント防止に係る措置義務がないため、厚生労働省による助言等の直接的な対象とはなっていないというのは、確かにそういう面はありますが、駐留軍等労働者から各地方防衛事務所などのハラスメント相談窓口に相談があった場合には、駐留軍等労働者の意向を踏まえつつ、防衛省から米側に対し事実関係の確認を行うとともに、事実であることが確認できた場合には、速やかに環境の改善や再発防止措置を講ずるよう求めるなどの取組を行っているところでございます。
○宮本(徹)委員 ですから、その措置義務をちゃんと米側にも、認めるような協議をする必要があるんじゃないかということを申しているんですよ。
○井野副大臣 米側との協議、取組についてでありますけれども、先ほどちょっと申し上げたとおり、まずは労働者の意向を踏まえつつ、その上で、事実関係の確認等は、防衛省としてはしっかり米側に確認を求めているという形でありますし、もちろん、それがあった場合には、直ちにその是正、改善等を講じていくように求めている。そういう取組を積み重ねていっているところでございます。
○宮本(徹)委員 ちゃんと日本の国内法を米軍にも守るように協議をする、それで合意を求めていく、何でそれが言えないのかというのは、本当に私、情けないなと思いますよ。米軍によるハラスメントについて裁判で賠償を求めたらどうなるか。米軍のハラスメント防止措置を取らなかったと認められた場合は、当然米軍は問題なんですけれども、これは国に責任があるとして日本政府が賠償を払っているわけですよ。こういうことになるわけですよね。米軍がハラスメントを使用者として起こしても、日本政府が賠償を払う、こういうことが起きているわけですからね。米軍の無法を許せば許すほど日本政府はその分も賠償を払うって、こんなばかな話はないわけですから、ちゃんと米軍に対しては、ハラスメント防止措置、日本の国内法と同じものを取っていただく、この合意を取っていただきたいと思うんですよ。今日、そこまでのペーパーしかないんだったら、持ち帰って検討しますということだけ言ってください。
○井野副大臣 いずれにしても、いろいろな御指摘いただきましたけれども、我々としては、労働者からそういった相談があった場合には直ちに、もちろん労働者の意向がありますので、こういったものを先方に伝えるかどうか含めて確認を取った上で、事実関係の確認、米側に対してもしっかりと事実関係を確認してくれ、その旨言っております。そういった取組を積み重ねていくことによってハラスメント自体がなくなっていくんだろうというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 ハラスメントをなくすためには、ハラスメント防止の措置の義務をちゃんと米側にも負っていただく、日本の企業と同じ責任を果たしてもらうということが必要だということを厳しく申し上げておきたいと思います。あわせて、このハラスメントの問題では、パワハラ被害が増える中、二〇一九年に、米海軍厚木基地が政府を通じて全駐労に対して、協議会の設置などを含めた解決策を提示して、これが設置されております。厚木基地以外でもこうした協議会を設ける必要があるのではないかと思いますけれどもいかがでしょうか。
○井野副大臣 宮本委員御指摘の厚木基地のパワーハラスメント事案、その協議会の設置なんですけれども、これは、当時、令和元年に米軍厚木基地において発生したパワーハラスメント事案を踏まえ、米側より、このような労使紛争を発生させないよう、米側、防衛省、全駐労、労働者の三者による協議会を設置したいという申出があったことを受け、協議会が設置されたものと承知しております。こういった、防衛省としては、米軍や組合の意向を確認しながら、今後、必要な場合には適切に対応してまいるというふうに取り組んでいるところでございます。
○宮本(徹)委員 米側の意向を確認してって、これは、厚木基地だけは米側が言ってきたからつくられたわけですけれども、でも、米側が言ったらやるという話じゃなくて、本来は、日本政府側から言う必要がある話だと思うんですよね。全駐労は、協議会が労使で対応するこの新手法を厚木基地で定着させ、他の基地への拡大も目指す、こうおっしゃっているわけですから、全駐労の側の意向は明確なんですよ。アメリカが言ってくるのを待つんだとか、アメリカに意向を確認してじゃなくて、日本政府の側から、全駐労がこう求めているんだということで、しっかり米側に求めていくという姿勢が大事だと思いますよ。そのことを申し上げておきたいと思います。それから、もう一点、駐留軍労働者に関わって取り上げたい問題がございます。資料の七ページ目につけておりますが、駐留軍労働者の中で有期雇用契約の臨時従業員が、二十年前は、二〇〇三年、九百六十九人の三・九%だったのが、二〇二三年一月末では三千六百二十九人、一四%にまで増えております。非正規雇用への置き換えがずっと進んでいるわけですね。この五年間を見ても、非正規雇用の比率が高まっております。五年前は無期転換ルールが作られたわけですけれども、逆に非正規雇用の比率が高まっているわけですね。五年前の法改正の際に、我が党の高橋千鶴子議員の質問に、米軍側も無期転換権を認めるとの合意に至ったとの答弁がありました。防衛省にお伺いしますけれども、この五年間で無期転換権を得た労働者と無期雇用に転換した人数というのは何人でしょうか。
○井野副大臣 過去五年間において、平成三十年度に百二十一人の駐留軍労働者が無期転換権を得ています。そのほかの年度については、無期転換権を得た従業員はございません。その上で、この百二十一人のうち無期雇用従業員への転換を希望された百十七人については、全ての従業員が無期雇用従業員へと転換をしているところでございます。
○宮本(徹)委員 過去五年間では、平成三十年度の百二十一人が無期転換権を得て、そのうち希望された百十七人が無期雇用に転換した、しかし、それ以外の年度、平成三十一年度以降は無期転換権を得た従業員がいないというんですね。これもおかしな話だなと思うんですよね。ということは、この臨時従業員に更新期間の上限が設けられたということなんですか。
○井野副大臣 平成三十年四月に時給制臨時従業員の労働提供契約が改正されまして、雇用が反復して更新される場合、更新回数については上限がありませんが、通算した雇用期間が最初の雇入れから三年が上限となっているというところでございます。
○宮本(徹)委員 新たに、三年が上限という雇用期間の上限が設けられたという話なんですよね。御存じのとおり、この無期転換ルールは、五年を超えて契約が更新されたら無期転換権が発生する。それまでは上限がなかったにもかかわらず、労働契約法が改正されて無期転換ルールができたら、新たに三年という上限を設けたという話なんですね。ちょっと、加藤大臣、これは許されないんじゃないかと思うんですよね。事実上の無期転換逃れになっているんじゃないかと思いますが、厚労大臣としての所見をお伺いしたいと思います。
○加藤国務大臣 一般論でしか申し上げられませんが、更新上限に基づき行われる雇い止めの有効性については、労働契約法第十九条の雇い止め法理に基づき、最終的には司法での判断となります。また、雇用上限を設けることは直ちに法違反となるものではありませんが、無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的で無期転換申込権が発生する前に雇い止めを行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましくないと考えております。厚労省としては、こうした無期転換のルールの趣旨について、防衛省にも丁寧に説明していきたいと考えています。
○宮本(徹)委員 大臣から答弁があったとおりなんですけれども、意図的に、それまで、無期転換ルールができるまでは更新上限は一切設けられていなかったのに、無期転換ルールができたら更新上限を設けていくというのは、これは本当に私は許されない無期転換逃れだと思うんですよね。今、大臣からは、防衛省にもルールを説明していくという答弁がありましたけれども、これは正す必要があるんじゃないですか。いかがですか。
○井野副大臣 先ほどの三年という上限とした経緯についてなんですけれども、有期雇用の従業員の雇用期間の上限を定めること自体は、我々としては直ちに違法になるということではないと承知しておりますし、この三十年の労働提供契約の改正に当たっては、米側、そして従業員の代表たる組合側、そして防衛省の三者の合意を得てこういう三年という形を取ったということでありました。その上で、我々としては、従業員の雇用の安定は重要であるというふうに認識しておりますし、引き続き、従業員を代表する組合側の御意見も伺いながら、こういった駐留軍労働者をめぐる雇用の在り方については今後も引き続き検討していくという対応でございます。
○宮本(徹)委員 先ほど大臣の説明を井野さんも聞かれていたと思いますけれども、無期転換権は、やはり非正規雇用の皆さんが安定した雇用に就くためにつくられたものなわけですよね。わざわざ二〇一八年の際には、当時、無期転換権を得られた方々に、日本の法律に基づいて無期転換権を米側にも認めさせたわけですよ。ところが、それと同時に、それ以降は無期転換権が発生しないようなものに変えてしまった。本当に雇用の安定を図るものと真っ向から逆行することをやっているわけですよね。本来、国は雇用者ですから、国は雇用者なんですから率先して労契法を守って実践しなきゃいけない。その防衛省、国が率先して無期転換逃れをやっている。全く民間に対しても示しがつかないことだと思いますよ。私は、直ちに是正する協議を始めていただきたいというふうに思います。あわせて、最後、一点だけお伺いしますけれども、この間、非正規雇用が大きく増えておりますけれども、これは理由は何なんでしょうか。
○井野副大臣 非正規雇用の増えたということですけれども、退職者が増えている理由、まあ非正規に替わっているということだと思いますけれども、主な理由としては、任期満了による高齢従業員の退職者が増えているということから、雇用継続、そういった、何ですか、定年後、そして非正規になって、そういう人が増えた結果だと思います。それとともに、そういう高齢者の再就職といいましょうか、任期つきで、非正規で雇用を継続していくということを求めている結果がこういう数字に表れているんだろうと思っております。
○宮本(徹)委員 先ほど早稲田委員からその点は指摘があったと思いますけれども、非正規に置き換えていくんじゃなくて、高齢者も定年延長だとか安定した雇用をやっていくべきだというふうに思います。時間になりましたから終わりますけれども、とにかく、駐留軍労働者については、ちゃんと労働者としての権利が守られるように、日本の国内法をしっかり適用できるように、米側としっかり交渉すべきだと強く申し上げまして、質問を終わります。