2020年11月10日衆院本会議 新型コロナ対策の拡充迫る ワクチンの安全確認を

 新型コロナウイルスワクチン接種関連法案が10日の衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の宮本徹議員が質疑に立ち、新型コロナ感染拡大の第3波が始まる中、コロナ対策の継続強化、ワクチンの承認についてただしました。
 宮本氏は、医療・検査体制の拡充が必要だとして医療機関への減収補てんは「待ったなし」と迫りましたが菅義偉首相は、3兆円の支援を実施してきたと述べるだけで、減収補てんについては語りませんでした。
 宮本氏は入国規制について、感染が広がる地域からの緩和は慎重にすべきだと指摘。菅首相は「感染拡大防止と両立する形で段階的に再開する」と背を向けました。
 宮本氏は雇用調整助成金について「希望をもって年を越せる支援が必要だ」と特例措置の延長・拡充を要求。生活保護について「利用のちゅうちょが広くある」として扶養義務者への照会をやめるべきだと迫ると、菅首相は「運用の弾力化等により速やかな保護決定を促す」と答えました。
 宮本氏は政府が供給を受けるワクチンについて、実用化例のない新しい技術が用いられていると指摘。接種が症状を悪化させるリスクがあるとして、「有効性、安全性の確認をないがしろにしてはならない」と強調しました。
 国内での検証的臨床試験の実施を要求するとともに、脇田隆字国立感染症研究所長がワクチンの品質確認は「書類審査だけ」と発言していることにふれて、国家検定の省略も検討していることに「国民に危険がおよぶ」と懸念を表明しました。
 田村憲久厚労相は国内での検証試験データはなくても有効性、安全性が確認できると述べ、承認前検査と国家検定については、検討するとの答弁にとどまりました。
 宮本氏は、ワクチン接種には「自己決定権の尊重が何より大事だ」として、接種しない権利があることを明言するよう求めました。菅首相は「接種するかどうかは国民自らの意思で決定するもの」と答えました。

以上2020年11月11日付赤旗日刊紙より抜粋(写真は赤旗提供)

≪2020年11月10日 第203回衆院本会議 第4号 議事録該当部分抜粋≫

○議長(大島理森君) 宮本徹君。
〔宮本徹君登壇〕
○宮本徹君 日本共産党の宮本徹です。~中略~ 新型コロナは、事実上、第三波が始まりました。国民の命を守るために、医療、検査の体制の拡充が必要ですが、多くの医療機関が減収で苦しんでいます。受診抑制は、コロナ陽性者を受け入れていない医療機関でも広く起きており、減収補填は待ったなしです。検査体制確保の補助金は、検査人数に応じて減額されます。検査キット代などを差し引けば、検査による診療報酬では補助金の減額はカバーされません。改めるべきではありませんか。世界で感染が拡大する中、総理は、入国緩和を進め、グローバルな経済活動の再開を表明しています。しかし、ことし三月、ヨーロッパからの入国制限のおくれが、今日に至る感染の流行をもたらしました。オリンピックの聖火が到着するまで待っていたとの指摘もあります。なぜヨーロッパからの入国制限がおくれたのか、理由を聞かせていただきたい。分科会で、押谷仁東北大教授は、PCR検査では感染直後の人などは把握できず、すり抜けて入国後に発症する人がかなりの数出ることが予想されると指摘しております。春の失敗を繰り返してはなりません。感染が大きく広がる地域からの入国規制の緩和は、慎重にすべきであります。年末にかけて、倒産、廃業、失業の急増が懸念されております。第三次補正予算を待たずに、希望を持って年を越せる支援を打ち出す必要があります。雇用調整助成金の特例措置は縮小せず、延長、拡充を直ちに表明すべきです。休業手当が支払われず窮している大企業の非正規労働者が多数います。労働局等の助言指導にもかかわらず、大企業が休業手当を支払わないケースについて、政府はどうするんですか。休業支援金の対象を拡大すべきであります。また、困窮する一人親世帯への給付をいま一度行うべきです。緊急小口資金等の特例貸付けの累計支給件数は、約百三十万件になります。期間は最長七カ月です。四月に借り入れた人は、十月に貸付期限を迎えています。生活再建ができていない場合、政府はどう支援するのでしょう。生活保護については、親、兄弟への扶養照会は絶対嫌と、利用へのちゅうちょが広くあります。生活保護の扶養照会はやめるべきではありませんか。また、求職者支援制度の要件緩和、抜本的拡充、住宅確保給付金の期間延長を行うべきであります。新型コロナワクチンについて質問いたします。ワクチンは、健康を守る上で重要な役割を果たしてきた一方、たびたび重篤な副反応が社会問題化してきました。薬害の痛苦の歴史を繰り返してはなりません。政府が供給を受ける合意を結んだワクチンは、実用化されたことのない極めて新しい技術が用いられております。新型コロナは、二回目の感染で重症化した例もあり、ワクチン接種が逆に感染時の症状を悪化させるリスクも危惧されております。スピード承認のため、有効性、安全性の確認がいささかでもないがしろにされることはあってはなりません。免疫には人種差があります。過去には、海外の承認薬を国内で使い、重大な副作用が起きたこともあります。薬事承認に当たっては、国内でしっかりと検証的臨床試験を行うべきではありませんか。ワクチンは、生物由来のものから製造されるため、国立感染研が品質を確認する承認前検査があります。ところが、脇田所長は、非常に迅速に承認を求められるという状況なので、ほとんど実際の試験は行わずに、書類審査だけで行うということになろうと発言しています。また、承認後にロットごとに義務づけられている国家検定についても、試験の実施の省略が検討されています。国民に危険が及ぶのではありませんか。ワクチンの接種に当たっては、一人一人がベネフィットとリスクを考慮して判断する、自己決定権の尊重が何より大事です。その前提として、有効性、安全性にかかわる全ての情報を明らかにすることが必要であります。また、ワクチンを接種しないことがバッシングの対象になってはなりません。医療者であれ、介護労働者であれ、誰であれ、ワクチンを接種しない権利があることをはっきりと国民に対して明言していただきたい。以上、答弁を求め、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕
○内閣総理大臣(菅義偉君) ~中略~ 医療機関の支援と診療・検査体制の確保についてお尋ねがありました。医療機関への支援については、新型コロナウイルス感染症への対応や患者数の減少による収入の減少などに対応するため、これまで約三兆円の支援を実施してきております。また、インフルエンザ流行期の備えとして、必要な検査キットを確保するとともに、発熱患者等を対象とした外来体制をとる医療機関への支援等を行っております。この支援は、当該医療機関について、実際の受診者が少なかった場合に補助するものであり、受診者数が多かった場合には、通常どおり診療報酬で御対応いただくべきものと考えています。まずは、こういった支援を医療現場の皆様に速やかにお届けをするとともに、今後とも、国民の皆さんに必要な地域医療が確保できるよう、必要な取組や支援を検討してまいります。ヨーロッパからの入国制限についてお尋ねがありました。政府としては、これまで、国民の健康と命を守り抜いていくことを最優先に考え、新型コロナウイルス感染症の国内での蔓延を防ぐため、機動的な水際対策を講じてきました。こうした水際対策については、その実施のタイミングを含め、新型コロナウイルス感染症の拡大の状況が日々変化し、確定的な予見が困難である中、諸外国における感染率や移動制限の状況など、さまざまな情報や知見に基づき、総合的に判断してきました。そのタイミングは決して遅くはなかったと認識しています。引き続き、政府一体となって、国内での感染拡大を防止すべく、必要な措置をちゅうちょなく実行してまいります。入国制限の緩和についてお尋ねがありました。十月から実施した入国制限の緩和に当たっては、検疫での検査や公共交通機関の不使用等の従来の措置に加え、防疫措置を確約できる受入れ企業、団体がいることを入国の条件とするなど、追加的な措置を講ずることとしたものであります。また、検疫所の入国時の検査能力を今月中に一日二万人に引き上げることとしており、国際的な人の往来については、防疫措置をしっかりと講じ、感染拡大の防止と両立する形で、段階的に再開をしてまいります。雇用調整助成金等の対応や困窮する一人親世帯への給付についてお尋ねがありました。雇用調整助成金の特例措置の取扱いについては、雇用情勢等を踏まえ、適切に判断してまいります。休業支援金については、雇用調整助成金の活用もままならない中小企業の労働者を早期に支援するという創設趣旨に鑑みれば、大企業を対象とすることは困難であると考えておりますが、雇用調整助成金を活用して休業手当をお支払いいただくよう、しっかりと働きかけてまいります。また、一人親家庭に対しては、今後とも、その置かれている実情を把握しつつ、緊急的に支援が必要な場合には、状況に応じて対応していきたいと考えます。生活困窮者の支援についてお尋ねがありました。緊急小口資金等の特例貸付けによる支援を実施しても、なお生活に困窮されている方については、適切に生活保護制度による支援を行うなど必要な支援を行ってまいります。生活保護制度については、扶養義務者の扶養は保護に優先するという法律上の基本原理は維持しつつ、現下の状況を踏まえ、運用の弾力化等により、速やかな保護決定を促してまいります。求職者支援制度については、雇用のセーフティーネットを強化するため、訓練を受講できる対象人員枠を拡充しており、引き続き、必要な対応に取り組んでまいります。住居確保給付金の支給期間に係る今後の対応については、利用者の実態などを踏まえ、適切に検討をしてまいります。ワクチンの薬害の歴史と有効性、安全性についてお尋ねがありました。医薬品が原因となった過去の薬害事件の経緯を踏まえ、二度とこのような事件が起こらないようその発生防止に努めることは、医薬品行政の基本と考えます。このため、安全性、有効性を最優先にすることは当然のことであり、今後、治験等のデータと最新の科学的知見に基づき、我が国としても、しっかりと審査をした上で、承認したもので接種を行ってまいります。ワクチンを接種しない権利についてお尋ねがありました。ワクチンについては、最終的には、接種をするかどうかは国民みずからの意思で決定していただくものと考えています。こうした観点から、感染症予防の効果や副反応のリスクも含め、正しい情報や知識を持つことが重要であり、政府として、関係省庁の緊密な連携のもと、国民への周知と広報にしっかり取り組んでまいります。残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣田村憲久君登壇〕
○国務大臣(田村憲久君) 宮本徹議員にお答えいたします。新型コロナワクチンの国内承認のあり方についてお尋ねがありました。 新型コロナウイルスワクチンの評価方法等については、日本や欧米各国の薬事規制当局間での意見交換を踏まえ、医薬品医療機器総合機構においてその考え方が策定、公表されています。それによれば、新型コロナウイルス感染症患者の発症率の低い我が国では、ワクチンの評価について、海外での大規模な臨床試験で発症予防効果や重症化予防効果が示されるかどうか、海外臨床試験と国内臨床試験との間で免疫原性が一貫しているか、安全性については海外臨床試験と国内臨床試験における副反応や有害事象の頻度と内容等を総合的に評価することで、国内での検証的試験データがなくても、人種差の検討も含めて有効性、安全性を確認することが可能であると考えています。いずれにしても、新型コロナウイルスワクチンの承認申請があった場合には、国内外の治験データと最新の科学的知見を踏まえて、ワクチンの有効性、安全性等についてしっかりと確認してまいります。ワクチンの承認前検査と国家検定についてお尋ねがありました。ワクチンの承認に当たっては、従前より、提出データに基づく医薬品医療機器総合機構における審査及び調査と並行して、国立感染症研究所において承認前検査を行い、実際に製品の品質を確認しています。また、ワクチンの承認後には、国立感染症研究所においてロットごとに品質の確認を行う国家検定を実施しています。迅速な対応が求められている新型コロナウイルスワクチンについては、適切に品質を確保することを前提として、承認前検査及び国家検定の実施方策について国立感染症研究所等とも相談しつつ検討しております。いずれにしても、新型コロナウイルスワクチンの承認申請があった場合には、最新の科学的知見を踏まえ、ワクチンの品質、有効性、安全性等についてしっかりと確認してまいります。(拍手)