2020年12月9日衆院厚生労働委員会 GOTOで年金に影響の可能性 減額しない特例措置を

提出資料 出典・日本年金機構HP
提出資料 出典:厚生労働省
 日本共産党の宮本徹議員は9日の衆院厚生労働委員会の閉会中審査で、「Go To トラベル」の影響で来年度の年金がマイナスになる可能性があると指摘し、年金が減額とならないよう特例措置を求めました。
 来年度からの年金改定の新ルールでは、物価が上がっても賃金改定率がマイナスとなれば、年金もマイナスとなります。賃金改定率には物価変動が反映され、物価下落に伴い賃金改定率も下がります。
 総務省の発表では、8月以降「トラベル」の影響で宿泊料が下落し、消費者物価指数を押し下げています。宮本氏は「『Go To トラベル』がなければ据え置きの年金が、『Go To トラベル』の影響でマイナスになる可能性が否定できないのではないか」とただしました。田村憲久厚労相は、年金が減額される可能性を否定しませんでした。
 宮本氏は「国民年金だけで生活を切り詰めて暮らしている高齢者に『Go To トラベル』は無縁だ。その影響で年金がマイナスになることは理不尽だ」と批判。年金を下げないよう特例措置を求めました。

以上2020年12月12日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2020年12月9日 閉中審査衆院厚生労働委員会議事録 該当部分抜粋≫

○橋本委員長代理 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。まず、きょうは、GoToトラベルが来年度の年金改定に与える影響について伺います。資料三ですけれども、年金カット法が施行され、来年度から年金改定のルールが新しいものが適用されます。物価改定率がプラスで賃金改定率がマイナスの場合は、これまでは据置きでしたけれども、来年度からは賃金改定率に合わせて年金を引き下げるということになります。そして、資料の四ですけれども、この賃金改定率というのは、計算方法、二から四年度前、三年度平均の実質賃金変動率プラス物価変動率プラス可処分所得変化率、これは〇・〇だと聞いております。賃金改定率も、物価が下がるとそれだけ下押しされる。御承知のとおり、総務省の統計で、GoToトラベルが消費者物価指数を大きく引き下げております。私、試算をしてみましたが、結論から言いますと、来年度の年金は、GoToトラベルの影響でマイナスとなる可能性がかなりある。まず、十一月、十二月の物価、まだ確定値は出ていないわけですが、東京都区部の十一月速報値の水準まで下がった場合について試算をしました。実質賃金変動率はマイナス〇・二と仮置きして計算すると、物価改定率はプラマイ・ゼロ、賃金改定率はマイナス〇・二となります。よって、年金はマイナス〇・二の改定ということになります。これは、仮にGoToの影響がなければ、物価改定率はプラス〇・二、賃金改定率はプラマイ・ゼロで、年金は据置きになっていたはずだということなんですね。実質賃金変動率をマイナス〇・一と仮置きした場合でも、GoToがなければ据置きのはずだった年金が、GoToトラベルの影響でマイナス改定となります。物価変動のもう一つのパターンとしては、十一月、十二月の数値が十月並みだった場合というのも考えられるので、これも試算してみました。実質賃金変動率がマイナス〇・二なら、これもGoToの影響で、年金はマイナス改定になります。実質賃金変動率がマイナス〇・一のときは、マクロ経済スライドの調整率がどうなるかにもよりますが、上がるはずの年金が据置きになるケースもあるということなんですよね。大臣にお伺いしますけれども、このGoToトラベルの影響で年金がマイナス改定になってしまう、こういう可能性があるということは否定できないですよね。
○田村国務大臣 年金の改定率ですけれども、総務省の全国消費物価指数、これを使っています。これを見ますと、今、一月から十月はプラス〇・二という状況で来ておりますが、この後どういう数字になっていくかというのは、これから出てくる数字等々に反映されるものだというふうに思います。この中に宿泊だとかエネルギーだとか、そういうものが入っておりまして、こういうものが今、マイナス要因であろうというふうに推測はされております、推測といいますか、今の足元で。そういう意味からいたしますと、法律上、全国消費物価指数を使う、年金の改定率にということでございますから、事実として、当然、これがマイナスになればマイナス要因になる。一方で、GoToトラベルのお話がありました。このたてつけは、これは国土交通省でお考えになられておりますので、厚生労働省といたしましては、事実の中においてこれから推移を見守っていくということであります。
○宮本委員 GoToトラベルがマイナス要因になるということで、来年の年金がマイナス改定になる可能性があることは否定できないというのが大臣の答弁だったと思うんですよね。このGoToトラベルを始める際に、年金にまで影響が及ぶということは想定されていましたか。
○田村国務大臣 それは国土交通省と総務省の方にお聞きいただきたいと思います。
○宮本委員 いやいやいやいや、だって、さっきGoToトラベルの延長の話もされていましたけれども、これは年金にまで影響が出る事態なのに、国土交通省に聞いてくれという話じゃないと思うんですよね。全然そういうことも考えずにこの政策を始めてしまったということだと思うんですよ。いや、田村大臣も恐らく今の事態の推移を見て、ええっ、こんなことになるのかと心の中では思っているんだと思いますけれども。私は、はっきり言って、このGoToトラベルで年金が下がるというのは極めて理不尽な話だと思いますよ。今、GoToトラベルを見た場合に、例えば、国民年金だけで本当に切り詰めて生活されている方というのは、このGoToトラベルとは全く無縁な生活をやっています。さらに、東京でいえば、六十五歳以上の高齢者の皆さんはGoToは自粛してくださいと言われているわけですよね。まあ、私は全部停止した方がいいと思っていますけれども、少なくとも政府だってそう言っている。GoToに無縁な年金生活者、高齢者、こういう方々がGoToトラベルの影響で年金がマイナスになってしまう。私は、これは許されないと思いますよ。私は、特例措置をつくることも含めて、こういう影響が高齢者に及ばないようにすべきだと思いますが、大臣、いかがお考えですか。
○田村国務大臣 物価はいろんなものが構成されて出てくるわけでありまして、宿泊費だけではなくて、先ほども申し上げましたエネルギー、いろいろなものがあります。コロナ禍においていろいろなものが物価が下がっているということもございます。その中において、最終的に全国消費物価指数を使うという話でございます。重ねて申し上げれば、何か特例という話がありました。以前、特例でおとめしました、年金を下げるのをとめましたが、結果的に、年金制度上、その後その分、後世の方々が年金の引下げになっているわけでありまして、そういう意味では、特例を使って何らかの形で、年金がまだ下がると決まったわけではありませんが、下がるところを仮にとめたとしても、結果的には、それは後世との公平感、負担感の公平感みたいなものにかかわってまいりますので、なかなか、委員からの御提案、これは一般論として、年金が下がったものをとめるというわけにはいきませんし、そもそも、マクロ経済調整等々がいろいろかかる中によって、本来上がるものが上がらなかったりというようなことはもう既に起こっておるわけでございますから、これは年金を維持するための政策として、今そういうふうな特例は考えておりません。
○宮本委員 私は、マクロ経済スライドの問題も意見を持っていますけれども、それにしても、今回みたいな事態で、政府の政策で人為的に物価を下げたわけですよ。自然現象で下がっているわけじゃないわけですよ。しかもそれは、その事業によって恩恵を受けない方々の年金が下がっちゃう。私は極めて理不尽だと思いますよ。その理不尽だという思いすら大臣は共有していただけないというのは極めて残念ですね。しかも、先ほど来議論になっていますけれども、七十五歳以上の医療費を二割に引き上げようということをやっているわけですよね。年金は引き下げて、高齢者の皆さんの窓口負担は引き上げていく。踏んだり蹴ったりじゃないですか。私は、これは本当はちゃんと検討しなきゃいけない話だと思いますよ。それはぜひ、そのことだけ申し上げておきたいと思います。 ~以下略~