年金支給なぜ0.1%減額 食料・生活品の物価上昇「GoTo」が押し下げ要因に

 高齢者の老後を支える公的年金。厚生労働省は2021年度の年金支給額を0.1%減額すると発表しました。新型コロナウイルス対策として菅政権が進めた「Go To トラベル」事業が物価を押し下げたことも要因となっています。

「無償化」も影響

 年金額は物価と名目賃金の動きに合わせて毎年度見直します。変動率の高い方に合わせて見直せば高齢者の生活水準は維持され、現役世代との格差も広がりません。しかし、自公政権は04年、基本的に変動率の低い方に合わせて改定する改悪を実行しました。
 21年度改定では物価0%、賃金マイナス0.1%なので、賃金に合わせます。
 しかし、20年度の物価の内訳をみると生存に不可欠な食料品は軒並み上昇。日常生活用品や住居費の上昇も目立ちます。10年10月の消費税率10%への引き上げが物価を押し上げています。 
 一方、押し下げているのは「Go To」による宿泊料や「幼児教育・保育の無償化」による保育料、高等教育の就学支援新制度による大学の授業料など。平均5万6千円の国民年金で暮らすような高齢者には縁遠い品目ばかりです。
 日本共産党の宮本徹議員は昨年12月の衆院厚生労働委員会で「Go To」が物価を押し下げ、年金がマイナス改定される危険を指摘していました。懸念通り、宿泊料と保育料の下落分だけで物価を約0.6%下げています。
 名目賃金は実質賃金に物価変動率を掛けて出します。「Go To」など政府の施策による物価下落が名目賃金も押し下げ、年金が減らされようとしているのです。

背景に16年改悪

 今回のマイナス改定の背景には、16年の年金制度改悪の影響もあります。
 これまで、年金支給額が減額(名目減)されるのは物価がマイナスになったときだけでした(既に年金が支給されている人の場合)。このルールなら21年度の年金額は据え置きです。
 ところが、自公政権は16年の改悪で、21年度以降は「物価が0以上で賃金がマイナスの場合」と「物価と賃金がともにマイナスで、賃金の落ち込みが物価より大きい場合」は賃金に合わせて年金を見直すことにしたのです。改悪された新ルールが適用されたことで、21年度の年金額が減らされることになったのです。
 自公政権が非正規雇用を拡大してきた結果、実質賃金は下がり続けています。パートタイム労働者に厚生年金の加入対象を広げていることも、賃金の変動率を押し下げる要因になり、16年改悪の影響が今後いっそう強める恐れもあります。

「スライド」改悪

 16年の改悪では少子高齢化に合わせて年金支給水準を自動的に引き下げる「マクロ経済スライド」も改悪されました。それまでは、年金額の改定率が0以下のときはマクロ経済スライドを発動しませんでしたが、18年度以降は未調整分を翌年度以降に繰り返すようにしたのです。
 そのため21年度のマクロ経済スライドの調整率マイナス0.1%は、22年度以降に繰り越されます。
 16~20年度に新ルールを当てはめると、5年間の年金額の改定率は0.2%からマイナス1.7%へと大きく落ち込みます。

予算確保ずみ減額やめよ 宮本徹衆院議員の話

 物価変動率の内訳をみると、消費税増税の影響で、食料や生活用品は上がる一方、私が昨年12月に国会で指摘したように「教育無償化」や「Go TO トラベル」が物価の押し上げ要因になっています。
 政府は2021年度予算案を、年金支給額を据え置く見通しで組んでいます。予算は確保されているのですから、年金の減額はやめるべきです。
 これまでの年金改定のルールでは物価がマイナスでなければ、年金は減額されませんでした。16年に安倍政権が成立させた「年金カット法」で、21年度から物価がマイナスでなくとも、賃金変動率がマイナスであれば年金を減額することになり、今回このルールが適用されました。「年金カット法」の見直しも必要です。

以上2021年1月24日付赤旗日刊紙より抜粋