2021年2月16日 衆院予算委員会参考人質疑 変異株対策とマスク、高齢者施設に週1〜2回の検査、 大企業非正規の休業支援金の拡大を

 衆院予算委員会は16日、2021年度政府予算案について参考人質疑を行い、日本共産党の宮本徹議員が質問しました。
 宮本氏が、大企業の非正規雇用労働者への休業支援金が対象期間・金額で中小企業の労働者と格差があると指摘しました。これに対し参考人の井上久美枝・連合総合政策推進局長は、「休業者すべてに同じように支給すべきだ」と述べました。
 参考人の舘田一博・東邦大学医学部教授が緊急事態宣言解除後の「攻めの検査」を示したのを受け、宮本氏は新型コロナウイルスの変異株にも触れ、濃厚接触者に限らず陽性者と同じ空間にいた人にも検査対象を拡大すべきだと指摘。舘田氏は「おっしゃる通りだ。(対象を)広くやる対策は当然取っていい」と応じました。
 宮本氏は、高齢者施設などでの検査で「頻度が大事だ」と質問すると、舘田氏も「非常に大事だ」と回答。宮本氏は、政府対策分科会メンバーの脇田隆字・国立感染症研究所長は「週1~2回」は必要だと述べていることに触れ、分科会での検討を求めました。
 また、宮本氏は、コロナ患者を受け入れていない医療機関に対する減収補填(ほてん)について質問。全国保険医団体連合会(保団連)の住江憲勇会長は、民間医療機関もコロナ患者の診療に奮闘しているとして、前年度比の減収分を概算払いすべきだと求めました。
 宮本氏は、政府が75歳以上の医療費窓口2割負担の導入について、年収200万円以上の人は「余裕がある」と述べていると批判。住江氏は「公費や大企業負担の少なさにメスを入れることが喫緊の課題だ」と強調しました。

以上2021年2月17日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2021年2月16日 第204回衆院予算委員会第11号 議事録≫

○金田委員長 これより会議を開きます。一般会計予算、令和三年度特別会計予算、令和三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。参考人として、東邦大学医学部教授舘田一博君、日本労働組合総連合会総合政策推進局長(ジェンダー平等・多様性推進担当)井上久美枝君、練馬区長前川燿男君、全国保険医団体連合会会長住江憲勇君、一般財団法人キヤノングローバル戦略研究所研究主幹山下一仁君、以上五名の方々に御出席をいただいております。この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。参考人各位には、令和三年度総予算について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。それでは、議事の順序について御説明申し上げます。まず最初に、参考人各位から一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡潔明瞭にお願いいたします。なお、念のため申し上げますが、発言の際はその都度委員長の許可を得ることとなっております。また、衆議院規則の規定により、参考人は委員に対して質疑することはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。それでは、まず舘田参考人にお願いいたします。
○舘田参考人 おはようございます。御紹介いただきました東邦大学の舘田と申しますけれども、本日はこのような発表の機会をいただきまして、ありがとうございます。新型コロナウイルス感染症ですけれども、なかなか収束が見えない状況の中で私たち一年を過ごしてきたわけですけれども、その間いろいろなことを経験し、学び、そして反省しながらここまで来ました。今まさに、緊急事態宣言をどのように解除していくのか、そしてその後どのように対応していくのかということが大きな問題となっているところです。今日は、私の立場からして、感染症に関しまして、一年を振り返りながら、そしてこれからの対策の在り方等に関してお話しして、そして皆様方からの御質問をいただければというふうに感じています。お手元に資料を配らせていただきました。それに従いましてお話を進めていければというふうに思います。一ページ目の下のスライド、感染症マップということで、今、既に一億人以上の感染者が出て、二百四十万人を超える方がお亡くなりになっている、そういった状況で、毎日毎日、新しい感染者、残念ながら多くの方がお亡くなりになっているという状況が続いています。次のページの上のスライドになりますけれども、そんな中で、やはり毎日毎日、世界の中でも、その感染症の状態が変化してきています。左は一日当たりの感染者数、右が一日当たりの死亡者数ですけれども、今でも一日五十万人以上が感染し、そして、今でも一日一万人以上の方がお亡くなりになっている、そういった状況ですが、最後のところをちょっと見ていただくと、赤い矢印のところになりますけれども、ここ一、二週間、世界的に見ても感染者数そして死亡者数の減少が見られているということが大事になるかと思います。今、変異株の出現が大きな問題となっている、そういった状況の中で、全体で見ると感染者数は減少化傾向に向かいつつあるということは大事な事実になろうかと思います。下のスライド、日本、第一波、第二波、第三波を何とか乗り越えようとしている、そういった状況です。下の図が死亡者数になるわけですけれども、やはり冬のコロナは厳しかった、残念ながら多くの方がお亡くなりになった、そういう状況ですけれども、日本で今、四十一万人以上の感染症患者さんが出て、残念ながら七千人を超えてしまいましたけれども、そういう多くの方がお亡くなりになっている、そういった状況であります。次のページ、上のスライド、東京、一日当たりの感染者数の推移ということでまとめさせていただきました。去年の四月から今年の二月までの全体像を把握していただくという形で示させていただきましたけれども、非常に大きな大事な経験、そして反省がこの中に見えているというふうに思います。去年の四月の第一波、緊急事態宣言が四月の七日に出されたあの山、あのときのピークは、四月の十七日で二百六人でした。今考えると少ないというふうに思うんですけれども、あのときは、もう医療現場は大変でした。本当にもう、逼迫というか、崩壊がもう本当に目の前にあるような、そういった状況があったことが思い出されます。緊急事態宣言の解除が五月の二十五日、そして、その解除されたときは、東京で一日の感染者数は二十人前後まで抑えられていた、そういう状況での解除だったわけですけれども、残念ながら、その時点で既に次の火が燃え出していた、歓楽街の飲食店を中心とするクラスターが少しずつ少しずつ進んでいた、そういったことを後から気づいていったことが思い出されます。そして、それが原因となって、中心となって、第二波、八月に見られた第二波です。そのときのピークは八月の二日の四百七十二人でした。このときは緊急事態宣言を出すことなく、何とかこの山を乗り切ることができた。これは一つの大きな我々にとっての自信にもなりましたが、ただ、下げ切らない、そういった状況が、九月、十月、感染者数二百人前後、そして十月、十一月になってくると五百人前後という形でだんだんだんだん増えてくる中で、残念ながら、今回の第三波、第二回目の緊急事態宣言ということになってしまったわけです。ここで青の矢印のところがありますけれども、これは、個人的に私は、今振り返ってみると、たらればの話になりますけれども、こういったところで何か次の対策が取れなかったのだろうかということ。初めての経験ですから、なかなか難しいです。しかし、今こういった経験が蓄積される中で、次はもう少し効果的な対策を取る、そういったことを考えていかなければいけないということを強く感じているところです。下のスライド、緊急事態宣言の解除のときということで、幾つかのポイントを示させていただきました。再増加を絶対に阻止していかなければいけない。蔓延防止等重点措置、これが動き出しました。これによって段階的な解除、ある意味、伝家の宝刀としての緊急事態宣言の前に、あるいは後に、これが使えるようになったということは非常に大きい。それをいかに効果的に使っていくのかということが大事になります。急所に対する持続的、積極的対策の実施。急所が分かってきた。この一年間の経験の蓄積の中で急所が分かってきた。それは飲食の場であり歓楽街でありということで、そこをどうやって効果的にたたいていくのかということが大事になるということです。四番、攻めの検査によるクラスターの早期発見。どうしても今までは追われる形での検査が行われていたわけですけれども、それをこの緊急事態宣言の解除のときに、攻めに転じていかなければいけないというふうに私は思います。五番目、文化としての感染対策の徹底と定着。少しずつですけれども、確実にその方向性が見られているんじゃないかなというふうに思います。次のページの上、解除後の攻めの感染対策ということになります。濃厚接触者や有症状者に対しての検査はどうしても守りだった。それを、ハイリスクあるいは無症状の人たちに対しても積極的に検査を行う攻めの検査、これが今求められている変化だというふうに思います。急所の中の急所が今見えてきているわけですよね。そこを地域限定の形で徹底的にたたく。時短要請の継続、そして、それに見合った補償ですね。一日六万円という時短営業に対する補償だけではなくて、急所の急所ですから、そこに対しては更に徹底したサポートの下に協力をお願いするような、そういった方向性を考えていく必要があるんじゃないかなというふうに思います。二番、攻めの検査として、定期的に、かつ無料で、これは既にもう進もうとしていますけれども、歓楽街や飲食店を中心とした、まさにあぶり出されてきたその急所、そこに対してどういうふうに検査、そしてまた、弱い、高齢者あるいはその職員を守るかということが非常に大事になりますし、それ以外にも合宿所や集団生活の場所などが、これが急所ということになろうかと思います。三番目は、今話題となっている変異ウイルス対策ですけれども、変異ウイルス検出体制の更なる充実、そして遺伝子多型解析等を用いた伝播ルートの追跡、解明というものが、これが非常に大事になっていく方向性です。下のスライド、新型コロナウイルス変異ウイルスの出現と広がりということで、まだ今の段階は面的な広がりは見えてはいない、そういうふうなことがよく言われますけれども、ただ、残念ながら、市中感染、伝播を疑うような、そういった事例がぽつぽつと出てきている。そして、二月十日の時点では計百八例、国内事例という形で、こういう形で報告されているわけですけれども、イギリス株がメインであるということ。一月二十九日の時点で、東京iCDCが千七百十例の遺伝子解析、陽性例に対して変異株の検査を行ったところ、二例が変異株、〇・一%ということで、まだそんなに多くない。しかし、皆様方がお感じになっているとおり、残念ながら、これは水面下の広がりを覚悟しておかなければいけないし、それに備えた対策というものを考えていかなければいけないというふうに私は思います。次のページの上、新型コロナウイルスの、シェーマで示したものですけれども、一番表層のところの赤字で示しているSたんぱくですね、スパイク糖たんぱく、ここの部分で人の細胞に吸着して感染が広がっていく、そこの変異がこのウイルスの伝播性の変化につながってくるということが明らかになっているところです。下のスライド、ウイルスの変異と進化の方向性です。変異というのは、生き物、ウイルス、細菌も含めて常に起きているものですよね。このウイルスは、二週間に一回の頻度で変異が起きています。日本に広がっているウイルスの中でも、二週間に一回は変異が起きている。どこに変異が入るかはランダムであり、それが、Sの受容体結合部位に変異が入ると感染性の変化のリスクが生じてくるということが大事。偶然です、たまたまです、そこに変異が入ってしまうと、それがリスクが高まるということになります。ただ、その変異が、感染性、病原性、その変化に必ずしも一致しないということも大事です。変異は起きているけれども、感染性は高まるけれども、病原性に関してというのはまた別の問題で考えていかなければいけないということが大事になります。一般的には、ウイルスの変異というのは広がりやすくなる方向に変異がします。一方で、弱いウイルスになる方向に変化していくのが生物の進化の方向性になります。すなわち、風邪のコロナウイルスになる方向に広がりやすく、遺伝子を残す方向に変化していくというのが一般的な考え方になりますけれども、今回のこのウイルス、変異がどういう方向に進んでいくのかということは非常に注意して見ていかなければいけない。次のページの上、変異ウイルスの出現と問題となるポイントについて簡単にまとめました。感染性が残念ながら高まっているということが報告されています。しかし、診断が難しくなるか、あるいは治療に反応しなくなるか、死亡率が高くなるか、ワクチンの効果が低下するかに関しましては、まだよく分かっていないというのが現状だというふうに思います。そういう意味では、こういった項目に関しましては、日本の中でしっかりとデータを出して、そして解析を続けていくということが大事になります。下のスライド。例えば、変異ウイルスで死亡率に大きな変化はないけれども、ただし死亡患者数が増えるというような、そういった報告が、これは今年になって発表されました。これはちょっとごちゃごちゃしていますけれども、上のスライドでは、赤でくくったところが六十代、七十代、八十代の人の、この赤が死亡ですね。そして、変異の「変」と書いてあるところが変異ウイルスによるものですけれども、これを見ていただくと、コントロールと変異株で死亡の率に関しては差がないんですけれども、下の赤でくくってあるところは、これは実際の数で見てみると、感染者数が増えるから変異株による感染では死亡者数が増えてくるような、そういったことが報告されています。これは一つの例、変異ウイルスによる例ですけれども、こういったデータをウイルスごとに、感染性そして病原性に関して解析していくことが重要になろうかと思います。次のページの上のスライドですけれども、そんな中で、世界中で進行するワクチン接種ですね。日本もようやく接種ができるようになるような状況の中で、私どもは、これは感染症学会としても慎重に、冷静にそれを見ていかなければいけないという立場でいました。そんな中で、非常にうれしいことに、アメリカで二千六百万人を超える接種者が得られている。イスラエルでは人口の四〇%を超える人が打って、そしてその有効性、副反応に関しましても、受け入れられる程度の副反応であるということが明らかになってきているということは非常に大事な事実であり、下のスライド、たくさんのワクチンの開発が進んでいる。それは、日本で最初に使われるようになるファイザーのものだけではなくて、モデルナやアストラゼネカ、それぞれいろんな特徴、ターゲットを変えて、そして変異ウイルスにも効くような、そういった違いがあるワクチンということが言えるかと思います。次のページの上。そんな中で、例えば、ワクチン接種後の血清中に存在する中和抗体の比較ということで、ファイザーが作ったワクチン、そして変異ウイルスはこれはイギリス株です、に対して、そのワクチンを打った人の血液の中にどれだけ中和する抗体があるかということを見た、そういった成績ですけれども、ちょっと分かりにくいかもしれませんけれども、縦軸はその患者さんの血液を希釈していって、何倍希釈までウイルスを中和することができるかということを見てみると、これはざっくり見ていただくと、変異の前のウイルスに対して変異したイギリスのウイルス、同じぐらいこの患者さんの血清は中和することができる。すなわち、同等の効果が得られるということが明らかになってきているところです。これは一例ですけれども、変異ウイルスごとに、そしてワクチンごとに、こういったデータを蓄積していくということが重要になろうかと思います。そのページの下のスライドです。今回、新型コロナウイルスの出現を見たわけですけれども、その予兆というものが既に見られていた。二〇〇二年にはSARSが、二〇一二年にはMERSが同じコロナウイルスとして、新型として出てきた、いずれもコウモリから。例えばSARSはハクビシンを、そしてMERSはヒトコブラクダを介して人に広がってきた。予兆が見られていたわけですね。そんな中での今回の新型コロナです。ということは、次の新型病原体の出現は、これは必然であるというふうに考えておかなければいけない。それに対する備えを我々はしっかりと整えていかなければいけないということになります。次のページの上。今回私も、アドバイザリーボードあるいは分科会等々に入らせていただいて、いろいろと経験をさせていただきました。その中で非常に感じたのは、こういった危機管理体制下におけるワンボイスの重要性です。いろいろなところがいろいろなことを言い出してしまうと、なかなか市民の人たち、国民に対して伝わらない。何に従っていいのかが分からないという、そういったことを経験してきました。これは、いろいろなステークホルダーの方がいらっしゃるわけですけれども、命を守る、生活を守るというこの一点において、危機管理の体制で協力していくといった仕組み、そういった考えが重要になるのではないかなというふうに思います。下のスライド。このウイルスは、人、社会、国に分断を引き起こしやすいウイルスで、その分断が差別や偏見を引き起こしてしまう。非常に大きな問題で、これに関して、我々が何とかしていかなければいけないというのももちろんですし、政治も含めてみんなで協力してこれを防いでいかなければいけない問題だというふうに思います。市民と行政、専門家の温度差。情報発信の重要性、リスクコミュニケーションです。これに関しても、なかなか難しい問題があるということを改めて感じています。ただ、日本では、市民一人一人の協力をいただけたことによって何とかここまでこういうふうに来れているということは、大きな力だというふうに思います。
○金田委員長 参考人、恐れ入りますが、申合せの時間が過ぎておりますので、恐縮ですが、発言をおまとめいただければありがたいと思います。
○舘田参考人 はい、わかりました。ピンチをチャンスに変えるということで、最後のスライドになりますけれども、一年の経験とこれからということで、急所を押さえ、ワクチン接種、あるいは変異株、覚悟、希望という形で、みんなの協力で絶対に再増加させない、そういった思いを共有していくことが重要だというふうに思います。以上です。どうもありがとうございました。(拍手)
○金田委員長 ありがとうございました。次に、井上参考人にお願いいたします。
○井上参考人 ただいま御指名いただきました連合の井上です。本日は、このような機会をいただき、感謝申し上げます。本日いただいたテーマは、コロナ禍での女性と雇用をめぐる問題ということで、早速ですが、お手元の資料一ページを御覧ください。特に女性への影響が大きく出ている中、連合では、同本部の下にコロナ禍におけるジェンダー平等課題に関する意見交換会を設置し、九名の有識者に参画いただき、議論を進めています。本日は、その議論を紹介しながら陳述させていただきます。最初に、女性の雇用への影響と問題の可視化に触れます。資料二ページは、連合が実施している労働相談の昨年一年間の件数と相談内容の推移です。三月の相談件数は、前年対比五百四十一件増の千六百五十六件、率に換算すると七〇%もの増加。その後も労働相談は増え続け、六月には前年対比千百七十一件増、ここでも七〇%超の増加となっています。一月から十二月の年間累計で二万八百二十八件となり、昨年比で三六%となっています。これまでの労働相談ではパワハラ・嫌がらせが継続してトップでしたが、昨年三月には解雇・退職強要・契約打切りがトップとなり、四月以降もこれまでよりも高い割合で二位の状態が続きます。四月と五月は休業補償がトップで、コロナ禍での事業や企業経営の悪化に伴い、有期契約における雇い止めや契約期間中の契約解除、また、学校の休校と休暇取得に伴う休業補償や経営悪化で仕事がなくなり、強制的に休暇取得させられるなど、休業手当に関わる相談も増加しました。六月以降は再びパワハラ・嫌がらせがトップで、この中には、新型コロナウイルスの影響で売上げが下がり、直属の上司から退職を促されるケースや、会社都合ではなく単なる自己都合退職にさせられそうになる退職誘導まがいの事例もありました。雇用形態別では、正社員以外からの相談が六割強を占めるとともに、職業別では、コロナ禍で大きな影響を受けているサービス業関係従事者や医療・福祉従事者からの相談が相対的に増加しています。昨年十二月の総務省労働力調査によると、非正規雇用は同年一月から五十六万人減、うち女性が四十一万人と男性の三倍弱です。女性の場合は、再就職を断念し、非労働力化する傾向があると言われます。中には、売春的行為や風俗業など、暴力やハラスメント、権利侵害を受けやすい働き方に向かう人たちもいます。このような実態が統計上どこに表れているのか疑問です。現に、女性の完全失業者数は七十六万人とされていますが、野村総研は、加えて九十万人が実質的な失業状態との推計結果を公表しています。連合も各種調査を実施していますが、組合員やモニターが対象で、どうしても属性の偏りが出てしまいます。大規模調査は民間では困難であり、国や地方自治体が無作為抽出標本を対象に全国調査を行い、女性が置かれている現状について、偏りない実態把握と問題の可視化を図るべきです。なお、昨年七月に策定された女性活躍加速のための重点方針二〇二〇では、「困難を抱える女性への支援」として「非正規雇用労働者の処遇改善」、また、十二月に閣議決定された第五次男女共同参画基本計画でも、「非正規雇用労働者の待遇改善」、「正規雇用労働者への転換」の支援がうたわれています。実現に向けて、国は、指導力を発揮するとともに、実効性のある施策を打ち出すべきです。次に、テレワークについて述べます。日本女子大学の大沢真知子教授とシカゴ大学の山口一男教授の分析によると、テレワークの機会の男女格差について、約一〇ポイントと顕著な格差があることが明らかになり、その主な要因は、雇用形態別、企業の業種、企業の従業員規模の三つで、その変数の男女差により、職場におけるテレワークの男女格差がほぼ説明できると分析されています。厚生労働省の「働く女性の状況」によると、五六%が非正規雇用です。産業別には、医療・福祉、卸売・小売業、宿泊・飲食業など、テレワークが困難な、対面サービスを要する業種が多いのが特徴です。規模別にも男女で差があります。国はテレワーク七割を掲げていますが、このような現実を踏まえたものであるのか疑問です。まずは、性別、雇用形態別、業種別、職種別、従業員規模別に実施状況を調査、分析し、実態に合っているのか検証すべきです。その上で、テレワークにおける不合理な雇用形態差別を防ぐとともに、実施できない場合の感染リスク対策のため、当該業種等への支援策を重点的に講ずるべきです。また、テレワークの場合、事業主が用意すべき労働の場を提供させられていることになり、家族の生活空間も脅かされています。東洋大学の村尾祐美子准教授が意見交換の際に、子供が家で歌を歌っているだけで怒られる、それでよいのかと訴えられていたのが印象に残っています。昨年六月にはいわゆるパワハラ防止法が施行され、私も審議会での議論に参画しましたが、当時は余り想定されていなかったウェブを通じたハラスメントなど、対人リスクやコミュニケーション上の問題も発生しています。本来は事業主が対策を講ずるべき課題を労働者個人に負わせることがないよう、責任の明確化を図るべきです。さらに、資料五ページは連合資料を基にした村尾准教授の分析ですが、子供がいてテレワークする女性は、自身の労働の負荷の高まりに加え、テレワークするパートナーの労働の負荷も高まっているため、男性の家事、育児等への参入がより難しくなり、通常時よりも増大した家事、育児等をより偏った形で担っている実態も明らかです。育児休業取得率は女性が八〇%台で推移する一方、男性は七%台です。今国会では、男性の取得促進等のための改正法案の審議が予定されていますが、成立したとしても、施行は先です。コロナ禍で、更に女性のキャリアが悪影響を受けたり、無償、有償労働の負担が過剰になったりしないよう、テレワーク下でも保育サービス等を十分に供給するとともに、男性の育児、家事等への参入や長時間労働防止を促進すべきです。次に、昨年支給された特別定額給付金について述べます。社会的包摂サポートセンターの遠藤智子事務局長によると、当時、夫からDV等を受けている女性からの相談が数多く寄せられたそうで、特別給付金をめぐって、同居の被害者に被害の自覚が生まれたのが特徴だそうです。二人以上世帯の八七%は男性が世帯主で、公的な給付金すら、配偶者である女性には個人が個人として受け取る権利が保障されていません。今後のために、特別定額給付金の給付対象者の性別ごとの受給状況を調査、検証し、世帯主基準を見直して、一人一人に支援が確実に行き届くスキームを構築すべきです。続いて、雇用の創出について述べます。昨年の自殺者数は、二〇〇九年以来十一年ぶりに増加し、特に女性の増加が顕著です。困窮する人たちが求めているのは、当面の生活費や、避難、宿泊場所を確保した上での働ける場所です。新型コロナウイルス感染症対策関連の事業だけでも、国から民間委託されているものはたくさんあります。資格が必要な場合もありますが、電話の受付、書類整理等で人手が足りない職場も多いはずです。雇用を失った人たちを公共部門で積極的に採用するというのはいかがでしょうか。また、人材不足は、直接的な支援を行うNPO等民間団体も同様です。財政的措置を行い、雇用を失った人たちが、自らが支援する側として訓練を受けながら働けるようになれば、雇用の回復につながります。このような形で、国として雇用創出に努めるべきです。最後に、森喜朗氏による差別発言に触れないわけにはいきません。お手元に連合の談話もお配りしましたが、日本は女性差別がある国だと世界に発信してしまいました。トップの交代で済む話ではありません。オリンピック憲章に反するのはもとより、ILO第百十一号条約に反するものであり、日本が中核条約を批准していないことが、あのような発言が出る背景にあると考えています。東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、日本が国内法を国際基準に適合させ、来日する多くの選手、関係者の期待に応えるまたとないチャンスであり、日本があらゆる差別を許さない国であるということを国際社会に示すためにも、第百十一号条約を直ちに批准するという声明を出すべきです。そのことをお願いし、陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○金田委員長 ありがとうございました。次に、前川参考人にお願いいたします。
○前川参考人 東京都練馬区の前川でございます。本日は、コロナワクチン接種練馬区モデルについてお話しする機会をいただいて、心から感謝を申し上げます。私ども練馬区は、人口七十四万人、二十三区中二位の規模でありますが、高齢者は十六万、高齢化率約二二%の自治体でございます。昨年十一月に担当組織を設置をして、ワクチン接種の具体的方法について、練馬区医師会の皆さんと検討を開始いたしました。実は、当初から極めてシンプルに考えておりまして、毎年のインフルエンザ予防接種と同じやり方ができないかということでありました。私たちは、考えてみますと、毎年、電話をして、近所の診療所、かかりつけのお医者さんを予約をして、そこに歩いていって、かかりつけ医の問診を受けて、ワクチンを打ってもらうわけであります。こういうやり方が一番いい、早くて近くて安心である、これをやりたい、そう考えました。あと、住民も診療所の医師の皆さんも慣れている方式であります。まずは接種が差し迫っている高齢者を中心とするモデルとして策定いたしましたが、一般の区民にもそのまま適用できると考えております。そこで、個別接種を中心に検討を開始いたしましたけれども、モデル立案には三つの課題のクリアが必要でございました。第一は、ファイザー社製のワクチンの診療所ごとの小分けができるかという問題でありました。なかなか管理が難しいワクチンであると聞いておりますので、これが最大の課題でありました。当初はできないという話が伝わって困惑したんですが、関係省庁と協議を重ねて、最終的に可能であるとの判断をいただきました。私自身が電話で連絡を受けて、大変うれしかったことを覚えております。二番目の課題は、実施には医師会の協力が欠かせないということでありました。幸い、練馬区は、医師会との協力は極めて密接に行っている自治体であります。例えば、昨年七月に全国に先駆けて開始をした診療所での唾液PCR検査、これもやっていただきました。また、PCRの検体採取センターの運営も委託をしております。こういった実績に加えて、伊藤会長のリーダーシップと、さらには、医師の皆さんの、自分の患者は自分で診たいという熱意と誠実さのおかげであって、心から感謝を申し上げております。三点目の課題は、ただ個別接種だけでは限界があります。対応できない方もいます。例えば、かかりつけ医がいないとか、あるいは平日休めないとか、そういった方がいらっしゃいますので、どうしても集団接種も必要であります。そこで、個別接種をメインに、集団接種を組み合わせるベストミックスの方式といたしました。こうやって何とか三つの課題をクリアできましたので、厚生労働省の依頼を受けまして、練馬区医師会、厚生労働省とともに練馬区モデルを検討し、立案した次第でございます。お手元の資料の一ページ、二ページと五ページをちょっと御覧いただきたいと思います。まず、全体構想についてお話し申し上げます。一ページ、二ページにありますように、個別接種を二百五十の診療所で行う、これは全体の六四%となります。これをメインとして、残りの三六%を集団接種でカバーするベストミックス方式を採用しております。具体的に申し上げると、区の高齢者は十六万人、これを接種率六五%と考えました。今年のインフルエンザの高齢者の接種率は約六〇%であります。ワクチンですからもっと増えるだろうと考えまして、六五%としました。十六万人の六五%ですから、十万五千人になります。この方々を二回接種しなくちゃいけない。そうすると、二十一万回であります。これを三週間、三週間で六週間でやるとしますと、一週当たり三万五千回になります。そのうち診療所は二万二千五百回でありますが、一診療所、一週間で九十件、一日当たりに割り返すと十五件という件数でありますから、これは十分可能であると医師会と話し合って、そういう感触を得ました。これに集団接種を加えますが、集団接種は平日と土日でやり方を変えておりまして、平日は六つの総合病院、それと四つの区立施設で行います。土曜、日曜は、区役所本庁舎と小中学校の体育館を巡回して行う予定でございます。三月中旬以降に接種券とお知らせを区内高齢者十六万人に送付する予定としております。予約については、個別接種は、これは当然ながら直接診療所へやっていただく。これは当然ながらインフルエンザと同じであります。集団接種は区へ予約していただきますので、予約専用電話百回線、ウェブ予約システムを設置する予定でございます。もう一つ、最大の課題は、ワクチンの診療所ごとの小分けと配送でありまして、七ページから十ページ、特に十ページを御覧いただきたいと思います。練馬区内を四地域に分けまして、各地域に基本型の接種施設、区立施設に一か所置きます。つまり、区全体で四施設置くわけで、各地域、一地域ごとに五十から七十の診療所を所管することになります。その区立施設に、ディープフリーザー、マイナス七十五度でワクチンを保管できるディープフリーザーを配備をいたしまして、ここが地域内配送の拠点となります。国からは、その拠点の四施設にワクチンが届きます。届いたら、当然、各施設のディープフリーザーに保管をいたします。それを小分けするんですが、小分けは各拠点施設で区職員が立ち会って、委託業者がディープフリーザー内のワクチンを取り出してバイアルホルダーに入れます。バイアルというのは瓶ですけれども、ホルダーに入れて、それと保冷剤を保冷ボックスに収めるわけであります。保冷ボックスでは、二度から八度で冷蔵することができます。その保冷ボックスを、これも区職員が同乗して、委託配送事業者、トラック便ですが、これが各地域内診療所、五十か所から七十か所に三時間以内に納品する、診療所では五日以内に使い切るという想定をしております。この配送の試算ですけれども、一時間当たりトラック一台で三か所配送できると仮定をいたしました。そうしますと、三時間で九か所になります。そうすると、一拠点施設当たりでいいますと、トラック二台で一日二回、週二回やったら七十診療所に配送が可能であります。これを区全体で申し上げると、トラック八台、八台のトラックで一日二回、週二回で全部の二百五十の診療所に配送は可能であると計算をしております。そういう意味では十分実施可能な案であると自信を持っております。二月の十二日には、練馬区議会でこの補正予算案の可決をいただきました。一般会計で三十七億三千万を計上しておりまして、既に接種の準備に着手をしております。今後も状況変化に応じて柔軟にこのモデルをブラッシュアップしていきたい、そう考えております。必ず成功させていきたい、そう固く決意しております。最後に、国への要望でありますが、二点ございまして、申し上げるまでもありませんが、一点目は、ワクチンを一日も早く確実に配付していただきたい。医療従事者から始まると聞いておりますけれども、その後の全体の配付日程を早く示してくださるようにお願い申し上げたいと思います。もう一点は、ワクチンに不安を抱く国民もいらっしゃいます。国民への正確な情報提供、特にワクチンの安全性の説明をしっかり行っていただくようにお願いを申し上げたいと思います。私からは以上であります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○金田委員長 ありがとうございました。次に、住江参考人にお願いいたします。
○住江参考人 全国保険医団体連合会と申しまして、地域での第一線の医療機関で働く保険医の、医科、歯科合わせての全国で十万七千名を擁する団体でございます。本日、こういう機会をいただいたことを改めて感謝申し上げます。まず、感染症対策の大原則とは二つございます。一つは、早期に徹底的な検査体制の拡充、拡大実施と、それによって拾い上げた感染者を隔離、収容すること。二点目は、感染拡大によって国民に一定の私権制限の場合には、経済的補償、そして人権侵害についての救済規定を準備することではないでしょうか。少なくとも、この二点については政府の責任でございます。今の感染拡大に伴う様々の国民の困難は、この二点の政府責任の不十分さに尽きるのではなかろうかと思っております。目下の喫緊の課題として、指摘八点させていただきます。この各課題について、各々国会論議でどう議論され、対策が取られようとするのか、やはりここに国民の注目が集まっております。まず一点目は、国民生活を守るための雇用を守り、中小零細業者の継続を守る施策が求められております。持続化給付金、家賃支援給付金、雇用調整助成金、休業支援金等々の制度継続、拡充が求められております、少なくともコロナ禍収束まで。そしてまた、生活保護制度のやはり抜本的な改善、水際作戦の廃止、そして、捕捉率をもっともっと上げることです。そして、その生活保護制度の一歩手前として、生活困窮給付金、そして住居確保給付金等の制度も是非とも必要でございます。二点目。国民の命、健康にとっての地域医療の現場の困難打開、そして、非営利、皆保険制度堅持のためにも、地域の第一線の医療機関の減収補填が何としても必要です。先日、二〇二〇年の上半期の医療の概算医療費が発表されました。実にマイナス一・一兆円です。具体的に数字を挙げますと、四月、五月で七千百五十二億円、六月一千億円、七月一千六百億円、八月一千億円、九月二百四十二億円のマイナスです。そして、その間、いろいろ医療機関の支援策もいただいております。一つ、一次補正と二次補正を合わせて一・七八兆円、昨年の九月十五日に予備費より一・二兆円、そして三次補正で一・三兆円、合わせて約四・三兆円です。しかし、この支援が行き届いていないんです。二〇二一年一月末時点で、このうち、届いているのは、交付されているのは一兆二千億止まり。このことからしても、やはり診療報酬の概算払い方式が最も確実で迅速性があるということが分かると思っております。いずれにしましても、早急にやはり交付実施が求められております。しかし、コロナ非対応の医療機関、歯科医院では、本当に厳しい現状でございます。二次補正の感染防止のための支援、これは二千六百億円充てられております。そして九月十五日の、インフルエンザ流行期における発熱外来診療体制確保支援、これに二千百七十億円充てられておりますけれども、これは実際にその診療体制をつくっていく、そういうための支援でございます。そして、三次補正による診療・検査医療機関への百万円、そして、感染防止のための支援二十五万円が二〇二一年三月三十一日までの追加、そういう状態でございますので、甚だ不十分でございます。ここは何としても、発熱外来そしてまた感染防止についてのやはり増額継続が、二〇二一年度予算でも求められているところではないでしょうか。そしてまた、再度の大規模の減収の場合には、概算払い減収補填を強く要求させていただきたいと思っております。三点目。医療従事者への再度の慰労金が必要だと思います。やはり、この一年、本当に頑張っていただいた。これ以上の離職者を出さないためにも、再度の慰労金の御検討をいただきたい。四点目。現在、クラスター発生が相次いでいる医療、介護、福祉施設での全従事者、全入所者、全通所者への継時的なPCR検査はもちろんですけれども、無症状感染者の発見、保護のためのPCR検査拡大、そして全額国庫負担が何としても求められております。今、市中感染拡大、そして保健所業務の逼迫により、やはり濃厚接触者の指定、それが限定また抑制されているという実態がございますが、これはもう感染症対策としての大原則を逸脱するものですので、やはりそういうところのきっちり手当てをしていただくこと。そして五点目。コロナ感染重症者医療の逼迫を、何としても打開への道をつくるために何が今必要とされるか、真剣に議論を尽くさねばなりません。この重症者医療現場のキャパシティーを拡大、すなわち、それを担っていただいている病院からの、コロナ重症者からの回復者の受入れ、そしてまた、軽症者、無症状者の受入れ、そして、その病院の一般病床の患者の受入れをどう推進するかが問われているのではないでしょうか。単に民間医療機関の受入れが少ないと医療機関の間に分断をつくることではなく、今の長年の低医療費政策による民間の中小病院の困難、すなわち、医師、看護師の配置不足、そしてまた構造的にも動線そしてゾーニングの困難、そういう実態を踏まえた、しかし、その中でも可能な策を議論することが必要でございます。そのためには、受入れに伴う財政支援、そしてまた、一たびクラスターが発生した場合の減収補填策が何としても急がれるところでございます。六点目。このコロナ禍で病床不足が言われているわけですけれども、その中でも、今、政府、政権の中では、地域医療構想推進、そして四百四十病院の統廃合に向けた議論が進められているんです。ちょっと許し難いことだと思うんですけれども、これは直ちに、こういうことがなきように中止していただきたい。そして七点目。特措法、感染症法の問題です。既に今国会で成立はしていますけれども、補償や安全対策を取らないがために懲罰的に行政罰を科すのではなく、徹底的な十分な補償と安全対策による国民の理解と協力こそが、この実効性を担保するものであると考えております。今国会でも改めて改善が求められるところだと思っております。最後に八点目。後期高齢者医療制度の患者負担、窓口負担二割化の問題であります。どう理屈づけされても、今のこのコロナ禍であえぐ国民、とりわけ高齢者に更に負担を強要することの正当性、合理性は全くございません。そもそも、このコロナ禍で、日本の社会保障、医療保障制度の脆弱性、所得再分配機能の脆弱性が大きく露呈されました。そのことを全国民が実感しました。今求められているのは、この脆弱性を二〇二一年度予算で少しでも手当てすることであって、その手当てを拒否して更に国民負担拡大によって、その脆弱性を更に拡大することではありません。そういうことでもって、やはりこの後期高齢者医療制度については、十分な御審議、そして二割化反対という立場をよろしく御論議いただきたいと思っております。以上です。ありがとうございました。(拍手)
○金田委員長 ありがとうございました。次に、山下参考人にお願いいたします。
○山下参考人 山下でございます。今日は、このような機会を設けていただきまして、どうもありがとうございました。私、三十年間農林水産省に勤務していまして、その頃、大変温かく、時には厳しく御指導をいただいた先生方もたくさんいらっしゃるので、そんな中で、笑いが起こるというのは、多分思い出があるんだと思うんですが、その中でこういう私の意見を陳述させてもらうことは大変光栄だというふうに思っております。若干緊張していますけれども、農林水産省の公式見解とは全く百八十度異なる見解かもしれませんけれども、ちょっと我慢してお聞き願いたいというふうに思っております。まず、一ページを開きまして、私、これは農政のアンシャンレジームと呼んでいるんですけれども、戦後農政が決めたことがずっと続いている。三つの柱です。一つは米価政策です。一つは農協政策です。もう一つは農地政策です。この三つの柱で今まで農林水産政策は運用されてきたということです。米価政策です。六〇年代に米価を上げたわけですね。当時は食管制度があって政府が買い入れた。需給均衡価格よりも超えて米価を設定するので過剰が生じる。そうすると、政府在庫が膨れて過剰米処理をせざるを得ない。したがって、政府買入れによる財政負担を軽減するために始めたのが一九七〇年の減反政策だったわけです。ところが、一九九五年に食管制度が廃止されました。となると、今では生産者に補助金を与えて米の生産を減少させて米価を高く維持する、こういう米価維持政策が唯一の米価のための政策になってしまった。したがって、農協がこれを推進している、こういう構図になっているということなんです。したがって、今年も四十万トン近い米を減産する、こういうことにみんな一生懸命になっているということです。もう一つは農協制度です。農協制度というのは、これは農林省が実は大恐慌のときにつくった組織です。欧米では専門農協しか認められていません。専門農協というのは、端的に言えば、信用事業だけ、金融事業だけやる、あるいは農産物の販売事業だけやる、そういう専門農協なんですけれども、日本のJAという総合農協は、金融も、それから共済も、農産物の販売も、あるいは肥料、農薬の販売も全部やる、こういう総合農協ということでやってきました。それを、米価が上がったので、零細な兼業農家が滞留した。零細な兼業農家は、兼業所得をJAバンクに預けてくれた。それで、今ではJAバンクの預金額は百兆円を超える日本第二のメガバンクになったわけです。ところが、農業は衰退していますから、その百兆円のうちの一%ぐらいしか農業には融資できない。したがって融資先がないわけですね。それでどうしたかというと、これまた農協に特殊な准組合員制度というのがあります。地域の人であれば農業者じゃなくても組合員になって、農協の意思決定には関与できませんけれども、農協のローンを受けたり、あるいは共済に加入したり、そういうことができる特殊な准組合員制度というのがあります。この准組合員制度を利用して、百兆円のうち約三割ぐらいのところを、住宅ローンとか、教育ローンとか、車のローンに融資している、これが今の農協です。この准組合員制度については、今年見直しをされるということになっております。それから、最後は農地政策です。農地政策というのは、農地法というのがあるんですけれども、これはどういう考え方で成っているかというと、自作農主義なんです。戦後、農地改革で自作農をつくりました。それを維持、固定しようとして作ったのが一九五二年の農地法なんです。これはどういうことかといいますと、自作農というのは耕作者イコール所有者ですから、株式会社の場合は、耕作者は従業員になる、所有者は株主だ、この等号関係が成立しない、したがって株式会社は認めない、こういう整理になってきたわけです。したがって、農業、農家とは関係のない若い人が、例えば東京の若い人が農業に関心を持って、例えば茨城で農地を取得して農業に参入したい、そのためにベンチャーの株式会社を立ち上げて、親とか友達とかそういう人たちから出資をしてもらって、その金をもって農地を取得して農業に参入する、そういうふうなことが認められないというふうなことになっているわけです。ところが、農家の子供であれば、東京に住むサラリーマンも大阪に住むサラリーマンも、みんな農地を取得できるわけです。ということは、今までの農政というのは、農家の後継者しか農業の後継者にしなかったわけです。したがって、農業に関心を持つ都会の人が農業をやりたくてもできない。つまり、農業の後継者を抑制しているのが、この農地制度ということでございます。以下、ちょっと詳しく、次のページから申し上げたいと思います。まず、減反政策です。減反政策というのは、実は、戦前もそういう構想を農林省は持ったことがあります。でも、潰したのはどこか。陸軍省だったわけです。米の生産を減少させるなんて安全保障上とんでもないというので潰されたわけです。その下のところを見ていただきたいと思います。米というのは、小麦と比べて、一粒の米からできる米の量というのは、物すごく、はるかに小麦をしのぐわけです。しかも、水資源の枯渇とか、それから土壌流亡とか、そういうこともない、持続可能な農業なわけですね。しかも、水田を水田として利用することによって、水資源の涵養とか洪水の防止とか、そういう多面的機能を発揮しているわけです。そういうすばらしい世界に誇る水田を、五十年以上にわたって水田を水田として使わないという政策に補助金を出している政策、これは本当にいいんでしょうか。持続可能な開発目標、この国連の目標に反するんじゃないかなというふうに思います。次のページ、四ページをお願いしたいと思います。これまた特殊な政策ですね、減反政策というのは。普通なら、先ほど来からありますように、例えば医療政策を取りますと、財政負担をすると国民に安く財とかサービスを提供する、これが普通の政策なんです。ところが、この減反政策というのは、財政負担をして農家に米の生産を減少してもらって米の値段を高くする、つまり、財政負担をして消費者負担を高めるという異常な政策を随分やってきたわけですね。その左の下を見ていただくと分かるんですけれども、米価を高くしたので零細な兼業農家が滞留した、したがって、専業農家の人が農地を買い入れて規模を拡大して、コストを下げて所得を上げようとしても、それはできなくなってしまったということです。それから、農林省とか都道府県の試験場の職員、技術系の職員の人たちは、増産のための品種改良というのを禁じられたわけです。物すごく悔しい思いをしました。いまだに私に、よくぞ言ってくれたというふうなことを言っている技術者の人もいるわけです。つまり、これによって、今では、空から飛行機で種まきをしているカリフォルニアの米の面積当たりの収量は日本の米の収量の一・六倍もある、こんなことになっているわけです。六十年前は、中国の米の収量は日本の半分だったわけです。これが今は追い越されてしまった。さらに、右の方を見ていただきますと、米価を高くしたということで米の消費が減少して、麦の消費が増えました。パンの消費が増えた。五百万トン相当の米を減産して、八百万トンの麦を輸入している、こういう状況になっているということです。済みません、ちょっとスキップさせていただきまして、七ページを見ていただきたいと思います。これは日米の米価の推移の比較なんですけれども、実は、二〇一四年、日米の米価が、これはちょっと分かりにくいんですけれども、逆転しました。日本の米価の方が安くなったんです。面白いことが起こったわけです。ところが、その後、減反を強化したので、また内外価格差が広がっています。しかし、この高い方の国産の米価も、減反によって維持されている米価なんです。減反をやめると、すとんと七千円ぐらいのところに落ちます。では、七千円になると農家が困るじゃないかと。そんなことはないんです。七千円になります。アメリカ産の、カリフォルニア産の米価が一万三千円だと何が起こるか。消費者が米を七千円で国内で買い付けて一万三千円で売ると、必ずもうかるわけです。国内の供給が減ります。米価が上がります。どこまで上がるかというと、少なくとも一万三千円のところまでは上がるわけですね。それを見て、翌年に生産者が増える、生産を増やす。となると、今の八百万トンじゃなくて、千二百万トンぐらいの米の生産ができるということになると思います。済みません、農協問題なんですけれども、十ページに行っていただきたいと思います。先ほど、准組合員の話をさせていただきました。今は、実は正組合員も、本当に正組合員なのかよく分からない人が、農家戸数をはるかにしのぐ正組合員数で、実は組合員の組織率一八〇%ぐらいの、組織として信じられないぐらいの組織なんですけれども、その正組合員数を准組合員が上回って推移しているという状況になっています。つまり、准組合員の方が正組合員、農家よりも多いという状況になっています。その次を見ていただきたいと思います。一番上のところなんですけれども、准組合員制度というのは、組合を利用できるんだけれども意思決定には関与できない。つまり、利用者なんだけれども管理できないというのが准組合員制度です。これは、世界的な協同組合の基本原則、利用者が所有し、管理し、利益を受ける、こういう原則から大きく逸脱しているわけです。その次のページを。独禁法の問題もあるんですけれども、最終的な私の意見としては、今のJAというのは、確かに地域にとっては大きな貢献をしているところもありますので、これは農業を切り離して、信用事業とか共済事業とかを専門に行う地域協同組合として再編して、農業は自主的に設立される専門農協に任せるのがいいんじゃないかなと思います。次の十三ページにもありますように、実は今、JAの農業関連事業は大きな赤字で、これを共済事業、信用事業の黒字で補填しているという状況にありますので、農協としてもそうしたことが受け入れられやすいんじゃないかなというふうに思います。それから、最後に、十四ページですけれども、農地問題です。株式会社に農地を取得させると、農地を転用するんじゃないかとか、あるいは耕作放棄するんじゃないかというふうなことを言われていますけれども、上から二つ目のところを見ていただくと、実は二百八十万ヘクタールの農地を半分は転用、半分は壊廃してしまったというのは誰なんだろうかと。株式会社がやったわけじゃないんです。これは農家がやったわけです。もし、食料安全保障上、農地が必要だということであれば、一番下に書いてありますように、抜本的な改正案というのは、農地法なんか外して、確固たるゾーニングをやって、農地は絶対守るんだという気概を示すことが必要ではないかなというふうに思います。私は、ブラッセルに、EU代表部というところに三年間勤めていたんですけれども、時々パリに買物に行きます。そうすると、フランスの新幹線に相当する列車で行くんですけれども、一面の小麦畑を列車は走ります。もう小麦畑しかないんです。ところが、パリに近づくと、パリがふわっと浮き上がるんです。都市的利用地域と農地的利用地域、この区別がヨーロッパは確実にあるわけです。だから、日本のように、東京から博多まで行ってもどんどんどんどん家が続く、そういう醜い田園都市風景ではないわけですね。そういうことを是非とも見習っていただきたいなと思います。済みません、いろいろ勝手なことばかり言って、怒られることがあるかと思いますけれども、一つの元農林省担当者の意見としてお聞きいただきたいと思います。今日は、どうもありがとうございました。(拍手)
○金田委員長 ありがとうございました。以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
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○金田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。質疑の申出がありますので、順次これを許します。橋本岳君。
○橋本委員 自由民主党の橋本岳でございます。今日は、五人の参考人の先生方にお越しをいただきまして、貴重な意見の陳述をいただきました。それぞれ、いろいろなテーマにつきまして、大変勉強になる陳述をいただきましたこと、お忙しい中お越しをいただきましたことと併せて、まず御礼を申し上げます。誠にありがとうございます。私からは、主にコロナの今の状況についてと今後についてお尋ねをしたいと思っておりますので、主に舘田参考人に対しての御質問になろうかと思います。必ずしも皆様に質問できないかもしれません、まずそのことを御容赦をいただきたいと思いますが、予定していた質問に入る前に、一点、ちょっとひっかかったことがあるので、舘田先生それから住江先生に、一つお考えをお尋ねしたいことを申し上げたいと思います。住江参考人のお話で、感染症対策の基本は、検査をし、そして陽性になった方を隔離していくのだ、これが基本だというお話がございました。まさにそれはそうなのだろうと思っています。一方で、今の日本の感染症法と私たちが呼んでいるもの、正式に言いますと感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律なのであって、それは、ハンセン病に対する我々の過去の経緯等を踏まえて、隔離という言葉を使わない、入院をする、そして、患者さんに対して、社会に蔓延を防止するとともに、その人に適切な医療をするということを基本にするのだということで、わざわざ前文をつけて法律を作った経緯があります。隔離、停留という言葉があるのは検疫法なのであって、感染症法にはない。今の日本の厚生行政の基本としてそこは忘れてはいけないことなのだと思っていますので、済みません、参考人のお言葉に異を唱えるようなことは大変失礼なことだとは思うのですが、我々は常に、感染症の問題を議論するときに、国会でもその議論はあるので、そのたびごとに私は少し嫌だなと思っていたのですけれども、必ず気にしなければいけないことだと思っています。そのことについて、舘田参考人それから住江参考人に、一言感想をいただければと思います。
〔委員長退席、山際委員長代理着席〕
○舘田参考人 御質問ありがとうございます。感染症に対する対策の一番大事なものは、私はやはり、それを発症させない、広げないということですよね。ですから、予防がまず第一だと思います。その上で、発症した人をできるだけ早く検査で見つけて、そして適切に対応していくという、そういった流れが大事だというふうに感じています。以上です。
○住江参考人 どうも御指摘ありがとうございました。確かに、隔離という言葉について、私自身が反省するところもございます。改めて、そういう受け止め方をされたことをここで陳謝したいと思っています。ただ、やはり、感染症の大原則という枠で、感染症法という、そういう概念とはまた別に、感染症対策の大原則という立場から言わせていただきましたので、そのことを御理解いただきたいと思います。
○橋本委員 大変恐縮をしております。決して陳謝をということで御指摘をした、申し上げたわけではないのですが、ただ、国会での議論でも結構、先ほどの言葉遣いをされることが多くて、適切に、もちろん、社会の中にずっと感染症の方がおられると蔓延してしまいますから、そこを防ぐということが大事ということはもちろん我々は心得た上で、ただし、隔離すればいいんだという話ではなくて、その方々に対しては必要なケアなりトリートメントをするということも併せて大事なのであって、そのことは、ある意味で隔離すればいいんだという考え方が仮にあったとすれば、それが差別だとかそういうことにつながっていった我々のつらい思い出というものがありますので、我々も心しておきたいと思って申し上げた次第であります。ありがとうございます。続きまして、ちょっと今の状況等々についてお尋ねをしますが、緊急事態宣言もあって、新規の感染者数が減少していっている、重症者数とも減り始めているというのはありがたいことだと思っています。そこに対して、舘田参考人からは、攻めの検査をするのだ、急所に対して徹底的な検査をするというお話がありました。そのお話そのものは理解をする一方で、例えば、国会でのいろいろな先生方の御議論の中で、希望する方にとにかくできるだけ検査をすればいいんだというお話をされる方もおられます。急所にちゃんと攻めをするのだということと、希望する方は誰でもみんな検査を受ける、その数が大事なんだみたいな話というのは、いささか異なるんだろうと思っていますので、そこの違いについて、舘田参考人から補足をいただきたいと思います。
○舘田参考人 御質問ありがとうございます。非常に大事なポイントだと思います。いわゆる本人が不安だからとか、あるいはビジネスのためにとか、そういうふうな形での検査の希望をされる方、非常に大事なグループになると思いますけれども、そういうふうな方たちに対しましては、自費での検査をできるような、そういった仕組みをつくっていくことが大事なのかな。一方で、やはりこれは、例えば高齢者施設であれば、入院している人たちを守らなければいけない。そういう意味で、そういう意味の人たちで、例えばその職員に対しては、無症状であっても積極的な検査をやっていかなければいけない。ここはしっかりと分けながら、何でもかんでも検査をやる、そういうふうなものではなくて、先ほどお話ししましたように、ハイリスクでこれが必要とする人に対して積極的な検査、攻めの検査をやっていくという、ここをしっかりと考えていくことが大事だと思います。以上です。
○橋本委員 大変分かりやすい御説明、ありがとうございました。まさに、本当に要所要所というのをちゃんと押さえていく。もちろん、必要な、求める人に対してそれに応えるような対策があってもよいとは思いますし、それは逆に言うと、ニーズに応じてやるということですから民間でもできますよねということと、行政としてしっかりポイントを押さえていくということが大事だということと理解をいたしました。続きまして、舘田参考人のお話の中で、変異株についてのお話がございました。これも、今、国民の中で大変心配の種になっている大きな話題だと思っております。そして、もう、一般への蔓延、だんだん広がっていっているということも覚悟すべきだというお話もありました。そうなのだろうと思います。もちろん、これをきちんと、例えばゲノムの解析までしてきちんと検出をしていって、その効果というか、解析をいろいろしていって、どう違うのか、そういうことをきちんと見極めていくこと、それは大事だろうと思っているのですが、ただ、今、よく分からないという状況の中で、政府は何に取り組むべきか。あるいは、一般の人は、変異株という話はテレビ等から出て大変皆さん心配されておりますけれども、では一般の人はどうすればよいのかということについて何かアドバイスがあれば、今までと違うことを何か考えなきゃいけないのか、それとも、普通に、手指衛生をしましょうとかマスクをしましょうとか三密を避けましょうとか、そういうことを徹底していきましょうということをもう一回肝に銘じましょうねという話なのか。そこについて解説をいただければありがたいと思います。
○舘田参考人 ありがとうございます。変異株、変異ウイルスであったとしても、一般の人たちにできる対策というのは変わりませんというふうに私は思います。ですから、今までどおり適切に、感染を抑えるような、マスクを使う、あるいは三密を避ける、手指消毒をしっかりするという、それを徹底していくということが大事だというふうに思います。一方で、政府の方には、行政的には検査体制をしっかり、例えば、病原性に関してはまだよく分かりません、病原性が強いウイルスが出てくるような、そういうふうな事態に対して、それをしっかりとキャッチできるような、そういうふうな検査の仕組みをつくっていくということが大事になると思います。
○橋本委員 特に今の話の中で、政府は政府としてしっかりやることをやるということですが、一般の方について、緊張はした方がいいかもしれないけれども、実際にやることがそう変わることじゃないんだ、むしろそういう基本を徹底することなんだということでありまして、これは本当に大事なお話だったと思います。ありがとうございます。どうキャッチするかという話に関連をいたしまして、変異株かどうかというのはゲノムの検査をするということになりますから、それはそれで大事なことなのですが、その以前の問題として、今いろいろな方法で、新型コロナウイルス感染症というものの検査というのは、最初はPCR検査しかなかったですが、抗原定量だとか抗原定性だとか、幾つかの方法が出てきました。ただ、やはり一番信頼されるのはPCR検査なのだろうと思っています。以前、ここの委員会で私は、PCR検査の量だけではなく、質の問題、精度の管理をもっときちんとするべきではないのか、きちんと国は関与すべきではないのかということについて質問をいたしました。こちらにつきまして、やはり舘田先生から、もっとどうあるべきかということについてサジェスチョンをいただきたいと思います。
〔山際委員長代理退席、委員長着席〕
○舘田参考人 PCR検査は、やはり、新型コロナウイルス感染症対策にして、非常に、一番大事だというふうにも思います。その中で、御指摘のように、その精度管理ですよね。検査のキャパシティーは増えてきたけれども、正確な検査ができているのかどうかという、その精度管理に関しては、まだ遅れているというふうに思います。そこをしっかりと精度管理をして、正しい検査結果を出せるようにすること、それは、例えば病院だけじゃなくて、街角検査についても同じですよね。街角検査に関しましても、精度管理をした正しい検査法として、そして感染対策に役立てるような、そういった方向性が重要になるというふうに思います。以上です。
○橋本委員 ありがとうございます。もう少し、今の、正しい検査をする、精度を管理するために、例えばほかの国ではどういう例があるだとかいうことがあれば、もう少し御紹介いただければと思います。
○舘田参考人 精度管理に関しては、決してこの新型コロナウイルス感染症だけのものではなくて、検査全般にわたってこれは確立した概念であり、いろいろな方法が実施されているところだというふうに思います。それは、内部精度管理あるいは外部精度管理という形で、その陽性コントロール、陰性コントロールを、ちゃんと陽性、陰性と分けられるかどうかということを、それをブラインドでやったり、あるいは明らかな形でやったりとか、そういうふうな方法で行うということがあると思います。ですから、そういうふうな仕組みとそういうシステムというのをどういうふうにつくっていくのか。感染研が中心に、あるいは保健所が中心に、もう既に少しずつ動きつつあるのかもしれませんけれども、それを徹底していくということが大事になると思います。以上です。
○橋本委員 ありがとうございます。そうした仕組みというものをきちんと何らかの公的な形でつくっていくべきであろうと思っていますし、これは、おっしゃったようにコロナの話だけではありませんから、今後に向けてという意味でも大事な話だと思っております。引き続き取り組んでいきたいと思っております。続きまして、ワクチンについてお尋ねをしたいと思っています。まさに最近、ファイザー社のものが承認をされたし、そのほかのものにつきましても今後申請があるものもありますし、だんだん我々にも接種ができる日が近づいているのだろうと思っております。ただ、やはり今現在、今時点で、一般の方からすると、まだ、ほかの人が打ってからにしようかなというようなお考えの人が多いというふうに感じています。政府は、メリットがデメリットを上回ると思うから是非多くの方に接種してほしいということを、ここでも田村大臣が答弁をされるわけでありますけれども、残念ながら、政府がそう言ったからといってみんな聞いてくれるかというと、そうじゃないという面もありまして、どういうふうに、例えば私なりここにいる各議員の先生方が、自分の支援者とか一般の方々に、そこについてお話をすればよいのか。もちろん、それぞれの先生のお考えもあるとは思いますけれども、簡単に、メリットがデメリットを上回るからという言葉ではやはり通じにくいと思いますので、どのようにお一人お一人の方に是非打っていただいた方がいいと思いますよということをお伝えすればよいかということについて、アドバイスがあればいただけないでしょうか。
○舘田参考人 今、ワクチンの接種が始まろうとしている、そういうふうな状況の中で、非常に大事な問題だというふうに思います。その中で、やはり一番の基本は情報の開示ですね。海外の情報、あるいは日本の中での臨床試験の情報、そして進行中のワクチン接種に伴う情報、そういったものをリアルタイムでオープンにして、そして、それを共有しながらみんなで考えていくという姿勢、その中で、恐らく政府とともに、先ほど言ったようなステークホルダーが、皆がお互いに議論しながら、理解しながら、それを正しい情報として国民の皆様に伝えていくということが一番大事になるというふうに思います。以上です。
○橋本委員 政府の姿勢としてそうあるべきだということは私たちも理解をいたしますが、もう少し、例えば個別に、私が私の友達とか支援者の人とかに打った方がいいと思うんだよねと言うときに、あるいは、先生がごく親しい人に、ワクチン打った方がいいと思う、どう思うと言われたときに、どういうふうに御説明されるかということについて、もし伺えれば、私は大変参考にしたいと思っているんですが、いかがでしょうか。
○舘田参考人 確かに、ワクチンに関しましては、副作用の問題があるし、新しいメッセンジャーRNAワクチンということで少し心配だというふうな人が多いのも事実だと思います。ですから、やはりこれは、私は学会の立場からして、これは新しいワクチンだから慎重に冷静に、余り、ワクチンだ、ワクチンが出たらすぐに、そういうふうに思っていると、これはひっくり返りますから、ですから、それは慎重にしなければいけないという立場でいました。しかし、冷静にそのデータ、出てくるデータを見させていただくと、かなり効果はあるし、そして、副反応に関しましても許容の範囲だなということを感じます。一医療従事者として感じます。ですから、そういう思いはしっかりと皆様方に伝えていかなければいけないなということだというふうに思います。以上です。
○橋本委員 ありがとうございます。そこは逆に厳しく追及をしたくなるんですけれども、許容できる範囲の副反応というのは、具体的にどんなふうにお話しすればいいですか。
○舘田参考人 例えば接種した後の局所の痛みとか、そういうふうなものに関しては、やはりそれなりに報告されています。しかし、それは、例えばインフルエンザワクチンのとき、麻疹のワクチンのとき、そういったワクチンのときと余り変わらないというふうなこと。一番心配なのは、アナフィラキシーショックというような、そういうふうな状態になりますけれども、それに関しましても、今のところ、特別に高いとか、それで死亡にすぐにつながるような、そういうふうな事例というものはかなり頻度は低い。そういう意味で、今までのワクチンと同等のレベルで許容範囲だというふうに感じています。
○橋本委員 ありがとうございました。具体的におっしゃっていただけましたので、そういうふうに私も人に伝えていこうと思います。続いて、じゃ、ワクチンを恐らく多くの方が打ち終わる、終わるというか、どこまでが終わるか分かりませんが、何割かの方が打って普及をしたというようなことになるのは少し時間がかかると思います。また、感染者の数が仮にうまく減っていって、どこまでかは分かりませんが、緊急事態宣言等も解除されるというようなときがいずれ来るだろうと思っています。でも、なお緊張を緩めてはいけないということは先生もおっしゃっていたとおりだと思いますし、そうしたときに、特に一般の方々が、政府がというよりも、一般の方々は、例えば手を洗うだとかマスクをきちんと着けるだとか、そうしたことというのはまだしばらく続けていかなければいけないんだろうと私は思っているのですが、そうした基本的な感染対策みたいなことというものはいつまで続けなければいけないのか。もっともっと、引き続きやはりそれはやっていってくださいねということであれば、早めに私たちはそれを自覚をしたり、そういうふうに言っていったりした方がいいと思っているのですが、そこについて最後にお尋ねをします。
○舘田参考人 御指摘のとおり、私は、ワクチンの接種が進んで、それなりの効果が得られてきたとしても、しばらくの間はこの新しい生活様式をある部分は維持しながらいくということが大事になるんじゃないかなというふうに思います。いろいろなことが分かってきました。例えば、マスクを着ける、めり張りをつけて着ける、あるいは手指消毒を徹底するということだけで、今年はインフルエンザがほとんど流行しなかった、あるいはそれ以外の呼吸器感染症もこれだけ減っているわけですよね。そういう意味では、これはある意味、我々が気づかされた。マスクを着けるということ、そうやって手指消毒をするという、その感染対策によってこれだけ変わるんだ、変えられるんだということが明らかになってきたわけで、そうしたとき、じゃ、それを次の私たちの生活の中にどういうふうに取り入れていくのかということは、少し長い目で考えていく必要があるんじゃないかなというふうに思います。
○橋本委員 ありがとうございました。終わります。
○金田委員長 これにて橋本君の質疑は終了いたしました。次に、逢坂誠二君。
○逢坂委員 どうもおはようございます。五人の参考人の皆さん、今日は本当にありがとうございます。貴重な話を聞かせていただきました。立憲民主党の逢坂誠二でございます。今日は、五人の参考人の皆さんそれぞれにお話を伺いたいと思っているんですが、もしかすると、時間の都合で全員に聞けない場合もあるかと思いますけれども、その際は御容赦いただきたいと思います。まず最初に、舘田参考人にお伺いしたいんですけれども、検査の在り方について、今の段階で無症状の感染者を割り出していくということが非常に重要な局面に来ているというふうに私は理解をしております。ただし、そうはいうものの、無症状の感染者をどんどんどんどん探せばいいということではなくて、無症状の感染者の中にも、感染力の強い無症状の感染者と、感染力の弱い無症状の感染者がいるのではないかというふうによくいろいろなところで指摘をされるわけですが、そういった点に留意をした検査というのはどういうやり方があるのか。もし御所見があればお伺いをしたいというのが一つです。それと、二つ目なんですが、先生の資料の中でも緊急事態宣言の解除のタイミングについての記述がございますけれども、リバウンドの阻止という項目がございます。リバウンドの阻止。私も、今回の緊急事態宣言を解除して、次にもう一回緊急事態宣言を出さなきゃならないような状況というのは絶対に避けるべきだというふうに思っているんです。その際に、リバウンドをしない程度までに抑制できる目標というのは大体どの程度にあるというふうに見ているのか。解除の目標値みたいなものを、もし御所見があればお伺いしたい。それから、最後です。このグラフを先生示していただきました。この日本の感染の状況ですね。この2のところ、二百人前後まで感染者が下がったところを指し示して、たらればの話だけれどもというようなことをおっしゃって、ここでもう少し何らかの対策が打てていればといったような話があったかと思うんですが、ここで具体的にどのようなことをすればよかったというふうにお思いになっているのか。以上三点、簡潔にお知らせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○舘田参考人 御質問ありがとうございます。非常に大事な問題で、ただ、よく分かっていないことも含まれていると思います。先ほど最初の質問、無症状でも感染を広げやすい人、広げにくい人、ウイルスの多い人、少ない人、でも無症状というふうな人がいて、それをどうやって鑑別できるのかというふうなことを御質問ですけれども、これはできないと思います。できないというようなことで、だから、そこがこの感染症の難しさで、無症状だけれども知らず知らずのうちにうつしてしまう、そういうふうなことがありますから、これは、一つ、やはり私、大事な考え方は、ユニバーサルプリコーションということで、例えば、ここにいらっしゃる人、百人ぐらいがみんな一度に検査したら一人ぐらいは陽性になってもおかしくないようなそういった状況ですから、もし症状がなくても、濃厚接触のリスクがあるようなときにはみんながその対策を取るということで、ユニバーサルプリコーション、そういった考え方が大事だというふうに思っています。二番目と三番目の質問に関しましては、これは関連していると思うんですけれども、リバウンドをどうやって抑えていくのか、そしてそれの例えば数値的な指標、どこでそういうふうなのを始めるのかどうのこうの、それに関しては、これもまだ分かりません。ただ、私は、一つの指標として、東京であれば、一日百人ぐらいの前後であれば保健所がクラスターを追っかけられるようなそういった対策が取れる、そういうふうな一つの指標として、これは幾つか議論されています。ですから、その辺のところが一つの目標になってくるのかなと思います。ただ、もう一つ大事なのは、先ほど出たように、これは同じ百人でも、ある意味、我々何回か経験している中で、下がっていてもまだ燃え残っているようなところが分かるようになってきた。それが急所であって、ですから、そこの急所は同じようには緩めない、しっかりとそこはたたき続けるような対策を取り続けるという、この辺のめり張りをつけた対策というのが大事になるというふうに思います。以上です。
○逢坂委員 舘田先生、ありがとうございました。非常に貴重なお話をいただきました。特に一点目、実は、自治体の現場でも相当議論がありまして、幅広く検査をすべきだということに対して様々な御意見があるんですけれども、今のお話は非常に参考になりました。ありがとうございます。それでは次に、井上参考人にお話を聞かせてください。今回のコロナ禍の中で、社会の中で弱いとされる部分に一気にしわ寄せが来たというふうに私は感じています。その中でも特に非正規雇用。これは、非正規雇用の方々が相当、今、苦境に陥っているわけですが、非正規雇用解消のためにどんな方策を取ればよいのか。その中でも特に女性非正規雇用の解消、この解消のために留意すべき点というのは何か、これを教えていただきたいということが一点目。二点目ですけれども、国の統計データだけでは雇用の実態がよく分からないという指摘がございました。そのために幾つか、こういう部分をやったらいいというような話があったんですけれども、雇用の実態の調査、分析を更に深めるためにはどういうことをやるべきか、あるいは、どういうところを知るためにそういうことをやるべきかというところ、この二点について教えていただければと思います。
○井上参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。まず、女性の非正規雇用の問題ですけれども、女性活躍推進法が施行されたこともあって、確かに女性の雇用は増えてきたというふうに思います。ただ、増えたものの、その多くはやはり非正規雇用となっています。その原因なんですが、まず一つは、第一子を出産した女性の約五割が仕事を辞めてしまうという実態があります。仕事を辞めて、結果、しばらく辞めた後、復帰をするときに正社員になれず非正規雇用になるというのが非常に多いです。それから、最初に仕事に就く場合、正社員になれず、非正規でやむなく仕事をせざるを得ない女性たちも三〇%程度いるというふうに言われています。ですので、働くという上で、狭き門の中で女性が働かなければいけない、あるいは、仕事と育児や家事を両立するために、日本の社会はまだ男性中心型雇用慣行、労働時間が長いとか、それから固定的性別役割分担意識が強いとかというところがあって、なかなか女性が正社員で働けない環境があるというふうに思っています。そういう意味では、非正規雇用で働いている女性たちの処遇の改善、これは女性に限ったことではないですけれども、やはり、男性も今、非正規が多くなっている中で、その処遇の改善は非常に肝腎だというふうに思っています。この四月から中小企業でも同一労働同一賃金が適用されますけれども、コロナ禍だから駄目だということではなく、これをしっかりと遵守するように、きちんと国の方で指導していただきたいというふうに思いますし、それから、エッセンシャルワーカーとか、言葉で称賛されていますけれども、でも、実は、そこで働く人たちの賃金というのは非常に低いです。ですので、そこでいくと、同一労働同一賃金ではなく同一価値労働同一賃金の手法をきちんと活用して処遇を高めることが必要だというふうに思っています。また、そういう課題を政治のメインストリームにするためには、やはり女性の議員がしっかりと増えて、この政策課題をやっていくということが重要だというふうに思っています。それから、統計の件ですけれども、これは有識者の皆様方から指摘を受けている点から述べさせていただきます。調査に関して、まず、モニター調査と無作為抽出標本調査だと、属性による違い、それから意識差が大変大きい。性や年齢、職業などの属性によってモニター調査の結果を補正する試みが余り成功していないというのがJILPTの調査でも明らかになっているんだそうです。そういう意味では、モニター調査及びその補正だけでは十分でないということを押さえておかなければいけないということ。それから、先ほどの私の意見陳述で労働力調査の話をしました。女性の特に非正規の場合は再就職を断念し非労働化する傾向があるというのを発言しましたけれども、そのことについて、失業者の数字が統計に表れていないという実態があります。それでいくと、例えば昨年から九月まで、毎月百万人単位で女性労働者の減少というのがあるんですけれども、その数字がどこにも出てこないというのが今の実態になっています。そもそも、労働力調査ですが、都道府県別に集計して一定の正確さが保たれるような標本設計がされていないという実態があります。そうなると、緊急事態宣言はもちろん、特措法による蔓延防止等の重点措置による雇用への影響というのは分からないということです。ですので、やはり、この対策に関しては、大規模な無作為抽出標本調査については国でしっかりとやるということ、地方支分部局を持つ国、それから地方自治体でなければできないというのが指摘をされています。ですので、予算をかけてでも全国を網羅する偏りのないデータを収集すべきだというふうに御指摘をいただいております。以上です。
○逢坂委員 どうもありがとうございました。国の統計では捕捉できないようなところがあるということも、改めて認識をさせていただきました。それでは、次に前川区長にお伺いしたいんですけれども、私自身も、実は個別接種と集団接種、それをそれぞれの自治体が組み合わせて行うというのは非常によいことだと思っております。その意味で練馬区の取組は本当にすばらしいなというふうに思うんですが、その中で、国では今、マイナンバーを使って新たなシステムをつくるということを言っているわけですが、私はマイナンバーの活用というのは、これはあり得ることだとは思っているんですが、今、全国の自治体から聞くと、もう既に予防接種台帳があるんだ、そのシステムも持っているんだ、それを、この平時とは言えない中でまた新たなシステムをつくるというのは、とてもじゃないけれども対応できないし、何のためにやるのかよく分からないというような声も非常にあるわけですね。だから、このマイナンバーと予防接種台帳をひもづけるというのは、それは平時にやるべきことであって、今やるべきことではないという御意見があるんですけれども、この辺りについて何か御所見があれば、お伺いしたいと思います。
○前川参考人 コロナについてのいろいろな対策の管理をしなくちゃいけない、それを当然ながら個人単位でやらなくちゃいけないんですが、私どもの実感では、マイナンバーを云々する前に、現在のシステム管理そのものが必ずしもうまくいっていないんじゃないかという感じを持っています。まず、自治体によって管理システムが違いますから。しかも、またそれを、V―SYSですかね、あれもやって、それもなかなか問題がある。そういった現状でありますから、理想としては、当然ながら、国がおっしゃるとおり、マイナンバーで一本化してやっていけばよろしいんでしょうけれども、それを一挙にやるのはなかなか現実には難しいだろうと考えております。
○逢坂委員 貴重な御意見をありがとうございました。私自身も自治体の現場におりましたので、予防接種台帳のシステムがそれぞれいろいろ違っていることや、あるいは、また新たなシステムを導入することで既存のシステムとの調整とか、それは平時にゆっくり考えればいいことであって、今、この緊急の中でやるべきことではないというふうに感じていたんですが、同様の認識かなというふうに御理解をさせていただきました。それで、次に住江参考人にお伺いをしたいんですが、この三十年余り、日本の国というのは、どちらかといえば、官から民へ、民でできることは民で、それから、マーケットでいろいろなものをやっていただければ、都合よく物事が改善をしていくとか、問題解決が進んでいくというような大きな流れだったというふうに思います。その一環として、例えば、保健所なんかも統廃合して、少しかかるコストを抑えていこうじゃないか、医療機関についてもそういうような方向になってきたわけです。だがしかし、今回コロナ禍に直面して私が感ずるのは、政府そのものがそういうことをやってきたために機能しない政府になってしまった、非常時に本当はワークすべきなのにワークしない、こういう現状が生まれてしまったのではないかというふうに思うんですね。だから、今回、様々な給付金なんかもやろうとしても、政府自らがそれをできずに外注せざるを得ない。外注すると、結果的に、行政の中身が分からない人がやっているので今度は対応が不備が出てくるということで、更に今度はコストがかかってしまうというような実態が生まれたんじゃないかと思っているんですが、このコロナ禍を経験し、かつまたこの三十年間の日本の歩みを見た中で、今後の医療体制の在り方とかあるいは政府の在り方とか、そこについて何か、今後はこうなるべきだというような御所見があれば、お伺いしたいと思います。
○住江参考人 どうもありがとうございました。本当に、先生は三十年来とおっしゃいましたけれども、私は四十年来と思っております。四十年来の新自由主義に基づく、そういう政治、経済、財政運営によって、今日の厳しい国民生活の実態を招来させたと思っております。とりわけ社会保障分野において、本当に、今回も首相が自己責任論をちょっと唱えられましたけれども、資本主義社会において自己責任を問えることとはどういうことかとちょっと考えてみますと、やはり、働く人々が雇用をずたずたにされて、賃金が破壊されて、なおかつ所得再分配機能が破壊されたのでは、ちょっと、国民、働く人々としては生きていけない、そういう実態をつくってしまうわけで、そういうところが本当に破壊されてきた結果が今だと思います。とりわけ医療分野において、この二〇〇〇年に入ってからも、低医療費政策がずっと、三十年、四十年来から続いているわけですけれども、診療報酬についても、この二十年の間で一一・五%引き下げられている。そこにやはりアメリカと極端に、比較するのはあれですけれども、大体、百床当たりで医師、看護師の配置数を見ますと、日本はアメリカの五分の一です。それでしか地域の医療機関としての民間の医療機関は経営を維持できない、やはりそういう問題点がつぶさに今回出ている。そこでやはり民間が受入れが少ないという批判もあるわけですけれども。しかし、民間の病院、本当にそういう中でも精いっぱい頑張っていただいております。一つ例を紹介しますと、これは東京都の病院協会の実例ですけれども、都立、公社、公立は八四・六%の病院が受け入れられている、公的は九三・七五%の病院が受け入れられている、地域支援病院の民間、これは一〇〇%受け入れる、そして、確かに民間中小病院は二一%です。しかし、受入れが困難という実態はどういうところにあるかというと、先ほどの低診療報酬化によって経営が本当に厳しい中で、しかし、機能別に見ますと、一般病床のあるケアミックスとか、療養病床とか、回復期、精神科、そしてまた単科の専門病院。やはりそういう実態をきっちり見ていただいて、これは、そういう批判があるときには真っ先に、政府はこういうデータを持っているわけですから、やはりそこはきっちり意見を述べていただきたいと思っております。とにかく、この三十年来、四十年来の新自由主義、政治、経済、財政運営、そこをやはり本当に国民本位に、社会保障の安定、国是の第一義的に考えていただけるような、やはりそういう政治、経済、財政運営が求められているところだと思っております。ありがとうございました。
○逢坂委員 住江先生、ありがとうございました。それでは、最後に山下参考人にお伺いしたいんですけれども、長い間農政に携わっておられて、また、基本的な今の農水省とまた違った目線での御発言、非常に参考になりました。ありがとうございます。それで、私は、やはり、今の日本において食料自給率の低さというのは異常だと思うんですよ。先ほどフランスの例も御紹介いただきましたけれども、フランスに行っても、ドイツに行っても、イギリスに行っても、食料自給率は日本とは比べ物にならない状況になっているわけですね。こうした中で、食料自給率を上げていくために具体的にどういう方策が、例えばこれとこれとこれを組み合わせることで少なくともこういう方向になるのではないかといったような、何か知見があれば御示唆いただければありがたいなと思います。よろしくお願いいたします。
○山下参考人 まず、食料自給率というのは私はまやかしの議論だと思います。あれは、農林水産省がつくったプロパガンダの中で最も成功したプロパガンダです。で、最も空疎なものです。なぜかというと、食料自給率というのは生産を消費で割ったものです。消費というのは国内生産と輸入で構成されています。それを消費しているわけですね。したがって、輸入を全部ストップする、例えばアメリカ産の農産物を全部ストップする、欧州も全部ストップすると、食料自給率は一〇〇%になるわけです。終戦直後の食料自給率というのは一〇〇%なんです。そうはいっても、国内農業が疲弊しているのは事実です。フランスは食料自給率は一〇〇%を超えています、アメリカも超えています。日本だけ異常に低いわけですね。なぜかというと、日本の農政というのは国内のマーケットしか見なかったわけです。最近は輸出も考えています。輸出ということになりますと、国内で消費をする以上に生産をしているということですから、分子の方が分母よりも大きくなるわけです。したがって、食料自給率が一〇〇%を超えてくるわけです。とすると、輸出を考えないと駄目だ。これが、今の政権の輸出は、ここ何年かで輸出を振興しているのはいい考え方です。ところが、決定的な問題点があります。価格を全く無視しているということです。価格競争力がないものは、幾らいいものでも売れないわけですね。メルセデス・ベンツというのは確かにいい車です。いい車なんですけれども、ベンツを例えば一億円で売ったら誰が買うかということなんです。やはりレクサスを買っちゃうわけですね。したがって、価格競争力をつけないで輸出はできないんです。いい車でも、いいカメラでも、コストダウンをしないと輸出できないんですね。だから、いいものを安くというのが日本の輸出産業の基本なわけですね。そうすると、何が考えられるか。日本で減反をしている。米の潜在生産量は今よりも五百万トンぐらい上になります。さらに、収量を抑えていますから、アメリカ並みの収量のある米を開発して作付すればもっと増えるわけですね。米を安くして輸出をする、そうするとそれだけで、私の計算では一兆五千億ぐらいの、今の一兆円の目標をはるかに超えるわけですね。つまり、何が必要かというと、自給率を上げるためにも米をもっと作らないと駄目なんです。米をもっと作って、米を安くして輸出する。それは究極的には備蓄になるわけです。今、日本では、高い米を国内で備蓄をして、それでいざとなったときに食料安全保障は駄目だと言っているんですけれども、輸出というのは何かというと、無償の備蓄なんです。困ったとき、日本では食料危機が起こるときはシーレーンが破壊されるときです。怖くてアメリカの輸送船もオーストラリアの輸送船も日本に穀物を供給できない、農産物を供給できない、これが日本で起こる恐らく一番確実な食料危機なわけですね。平時のときに米を輸出すれば、困ったときには輸出ができない、輸入もできないわけですから、その輸出しているものを食べるわけですね。つまり、平時のときの輸出というのは、食料危機のときの無償の備蓄になるわけです。そういうことを農林省自体が発想を全部転換してやらないと、国内のマーケットだけ考える、しかも、価格だけが重要だと。欧米がやっているような、直接支払いで農業を保護する、こういう考え方から学ばないと駄目だと思うんです。
○金田委員長 時間が来ておりますので、まとめていただきたいと思います。
○山下参考人 ありがとうございました。
○逢坂委員 五人の参考人の皆さん、本当に今日はありがとうございました。大変参考になりました。ありがとうございます。終わります。
○金田委員長 これにて逢坂君の質疑は終了いたしました。次に、濱村進君。
○濱村委員 公明党の濱村進でございます。今日は、五人の参考人の皆様、貴重な御意見をお伺いすることができました。ありがとうございました。まず、今日、ワクチン接種の話について、練馬区モデルということで前川区長から様々具体的なお話をお伺いすることができたなと思っておりまして、本当にいい機会を得たなと思っております。先ほど逢坂先生のお話にも少しあったんですが、確かに、V―SYSで、予防接種台帳とかがあって、これをどう使っていくんだとかという話があるんですが、実は今、予防接種台帳をそのままV―SYSで使おうとすると、接種した方々の接種状況というのを知ることができるのが二、三か月後になってしまう、そういう問題点があるのが、今のV―SYSで予防接種を管理しようとするとそういうことになるというのが現状でございます。ですので、それをV―SYSの中でシステム改修して対応しようというのはちょっと無理があるよねということで、河野大臣の下で新たに予防接種を管理するための仕組みをシステム開発しようということなんですね。なので、実は、マイナンバーを使うとか云々かんぬんとかというのは、はっきり言って、個人を特定するためのシステムとしてのキーですね。その特定するためのキーとしてマイナンバーを使うということであるので、私は妥当な話だなと思っているんです。ちなみに言うと、自治体をまたがるような接種をする場合に、この個人をどうやって特定するんだとなると、一番簡単に特定できるのは、マイナンバーを使うことが一番簡単に特定できるわけですから、私は、マイナンバーを今回の予防接種の中でも使うということは妥当性があるなと思っております。その上で、これは、実は業務が非常に重要でございます、業務。どういうことかというと、予防接種を打ちました、打った限りは、この方々について打ちましたよということをその日中にシステム入力していただく、そういう業務が必要になるわけでございます。これをクリアできるかどうかというのは、今回のワクチン接種が成功するかどうかという点において極めて重要なポイントだと思っておりますが、その点、練馬区におかれましては、医師会の皆様の協力ができる状況をつくってこられたというふうに伺っております。これは、個別接種を軸にしたら、その個別接種、診療所とかでインフルエンザのワクチンと同じように打ちましたよという入力をしていただかなきゃいけないわけですが、OCRとかの読み込みとかで簡単にできるようにするということもやろうとしているわけですが、これはやはり、そうはいっても、一生懸命仕事を朝から晩までやったドクターの皆様、あるいは看護師、スタッフの皆様、こうした方々がどれぐらい予防接種をしたかということをその日中に入力していただくことが重要でございますが、医師会の方々、こうした点についても御協力をいただけるのかどうか。あるいは、そうした具体的な話についても、既に練馬区におかれてはお話が進んでいるのかどうか。この医師会の皆様への協力、そういう環境をつくっていくというところで、区長並びに練馬区の皆様がどういう対話をされてこられたのか、お話を伺えればと思います。前川区長、よろしくお願いします。
○前川参考人 システムの管理でありますけれども、これは国からも、例えば、個人を特定するような情報を入れる、名前、性別、年代とか、そういったことを入れることをやりたいという打診が当然来て、今のV―SYSについても来ておりますし、それは当然、医師会の状況も聞いておりますけれども、率直に申しまして、なかなか抵抗があるのが現実でございます。私ども行政としてはできるだけ合理的なシステムをつくりたい、それは当然のことでありますけれども、また、国にも頑張ってもらわなくちゃいけないんですが、ただ、現場で今現実にコロナで奮闘しているお医者さん、看護師さんたちから見ると、なかなか正直言って、そこまで余裕がないというのが実感だろうと思います。
○濱村委員 ありがとうございます。率直に、なかなか負担感が強いということでありますので、これはしっかりと、接種券等の発行においても、そこでOCRが書いてあって、そのラインを読み込めば、ちゃんと簡単に読み込めるというようにしようというような検討をしているというふうに私も聞いておりますが、あるいは、そういうOCRがないようなところについては、接種券についてある番号を入力すればその個人が誰かというのが分かるように接種券を管理していこうというような話も聞いておりますが、この点をしっかりと、医療の現場の皆様の負担を軽減しながら進めていくことが極めて重要なんだろうというふうに思っております。医療の現場の皆様の御苦労ということを考える上で、ちょっとこれは保団連の住江会長にもお話をお伺いしたいなと思っておるんですが、この国による一大プロジェクトといいますか、コロナ対策のために極めて重要なワクチン接種というこの取組、医療現場の皆様の協力が必要不可欠であるというふうに思っておりますが、保団連の皆様における受け止め、どのようなことが議論になっているのか、どういった御協力をいただけそうであるのか、こうした点、保団連の立場からもお話をお伺いできればと思います。
○住江参考人 どうもありがとうございました。私ども、地域の第一線の医療機関で働く保険医ですので、それはもう全面的に協力をしていくことは前提でございます。ただ、町の第一線の臨床医にとって、自己医院でそういう接種をすること、ふだんかかっていただいている患者さんについては、その方の病歴とか家族歴、そういうことは十分熟知しているんですけれども、やはり、そういうワクチン接種ということで本当に初めて来られる方、そういう方に接種するということは、本当にプレッシャーというのは大きいものなんです。そういう中で、そういう副作用、極端に言えばアナフィラキシーショックとか、そういうことが起きますと、本当に数少ないスタッフの中で、またそういう狭いところで、そしてまた時間的制約がある中で、そこに十分な対応が本当にできるか、また、直ちに後送病院が手当てできる、そういう保証があるのか、やはりそういうところの、きっちり、条件整備というのは必要だと思っておりますので。やはり、そういう初めての方の患者さんに、予防接種といえどもそういう侵襲を加えるということについてのプレッシャー、ここは十分御理解いただきたいと思っております。
○濱村委員 本当に、現場の御苦労ということで、非常に、初見の方がお越しになる場合の、例えば副反応が出た場合とかというのは、本当に大変な現場でのマネジメントが必要なんだろうと思っております。そうはいっても、全面的に御協力いただくということでありますので、また改めて感謝を申し上げたいなというふうにも思いますが。これは今住江会長からもおっしゃっていただきましたが、かかりつけであればまだしもというような話がございました。ただ、私が思いますのが、練馬区モデルもそうなんですけれども、かかりつけ医があればという話にはなっているんですね。ちょっとこれは井上参考人にもお話をお伺いしたいと思っておるんですが、そもそも、働いている方々の大半の方は、そんなにかかりつけ医がないんじゃないかしらと思っております。そうであるならば、私も余り、そんなしょっちゅう病院に行くわけでもないですし、そういう意味でいうと、かかりつけ医がなくて平日働いているからなかなか困難ですとかというようなこともあれば、集団接種なども十分考えられるということで、練馬区モデルにおいてもちゃんと集団接種を残されておられるわけでございますけれども。こういう集団接種の一つの考え方として、職域における接種も考えられるんじゃないか。これは自民党さんがおっしゃっておられたりもするわけでございますけれども、一つ合理的だなというふうにも思います。接種の面だけでいえば合理的なんだと私は思っておりますが、この点、連合の皆様、働く方々の代表をされておられるということでいえば、何か御意見等ございますれば、お伺いできればと思います。
○井上参考人 ありがとうございます。今御質問いただきました職域における接種、大変重要だというふうに思っております。やはり、まず、医療従事者であるとか必要なところからしっかりとやっていくということが求められるというふうに思っています。また、職場における集団接種などに関しましては、集団でできればいいんですけれども、そうじゃない場合があると思います。個人で行かなければいけない場合、またかかりつけがない場合などもあると思いますので、現在、連合では、接種をする場合、例えば職場で休暇が取れるような職場の配慮、それを求めていくべきではないかということで、現在、連合の中では取組を進めているところであります。以上です。
○濱村委員 おっしゃるとおり、職場の配慮、職場の理解を得て、今日ちょっと集団接種、まあ集団にせよ個別にせよ、ワクチンの接種のために病院に行ってきますということで、午前あるいは午後、分からないですけれども、一日なのかもしれませんが、休暇をもらいますよというようなことが柔軟にできるように、職場における配慮、理解あるいは調整、こうしたものもしっかりとやっていかないとワクチンの接種は進まないんだということなんだろうというふうに思っております。少しまた前川区長にお話をお伺いしたいのですが、練馬区ではいろいろな工夫をされようとしておられまして、これは国会でも議論があるんですが、一バイアル当たり六回の接種なのか五回の接種なのかというような話もあります。練馬区では、テレビで私、これも見ましたが、六の倍数で予約するとか、そういうようなことを工夫されているというような話がございましたが、これは、六回打てるかどうかというのは、注射針とシリンジの確保が重要になってくるというふうに聞いております。ちゃんと六回分打てるようにするためには、そのためにちょうどよく設計されている注射針とシリンジが必要ということでございますけれども、この確保についてできているのかどうか。これが確保できていないと、なかなか、接種、せっかく六の倍数で予約して、無駄をなくそうということでお考えになられているというふうにも聞いておりますので、無駄をなくすという目的のために、注射針、シリンジの確保についてはどのように進めておられるのか、前川区長にお伺いしたいと思います。
○前川参考人 ありがとうございます。まず、五回分か六回分かということは、これは国全体としてのワクチン管理としては極めて重大な問題だろうと思っております。当然、貴重なワクチンを少しでも有効に使わなくちゃいけない。そのためには、当然ですけれども、早めにファイザーの規格に合った注射器の確保に国に努めていただきたい、そう思っております。私どもは、今は、現場では全体のことはちょっと管理できませんので、いただいたファイザーのワクチンについては、当面は五回分の注射器しか使えないものですから、それを前提として五の倍数で管理をしていきたい、できるだけ国に早めに注射器の確保をしていただきたい、そう考えております。
○濱村委員 今、シリンジあるいは注射針の確保、しっかりファイザーのワクチンが来てからということでもございますが、練馬区モデルでは、小分けして配送するということも非常に重要なポイントだとおっしゃっておられます。配送については恐らく業者さんに委託をされるということでございましょうけれども、ここで、この業者さん、いろいろなリスクを抱えたりすると思うんですね。配送途中にちょっと、万々が一割れちゃったとか、そういうようなこともあるのかもしれませんが、ディープフリーザーからバイアルホルダーに移すというようなときにも、区の職員の皆様とどういう形でリスク分散をされていかれようとしているのか。この辺の、契約にも関わるようなところかもしれませんが、安全に、そして安心して、万が一のときにどういった体制を取れるのか、どういう責任分界点を持っておられるのか、その辺の考え方についても、ほかの自治体も非常に参考になると思いますので、お話を伺えればと思います。
○前川参考人 今お話がありましたように、このファイザーのワクチンというのは大変繊細なものと聞いておりまして、例えば一時報道されたような、バイクであるとか、そういったことはできない、好ましくないという判断が示されております。ですから、私どもとしては、当然ながら、トラックと言ったらいいのか、車両を使って配付をしていくということを前提に考えております。それから、小分けに当たっても、当然ながら、業者に任せっきりにすることは考えておりませんで、お話がありましたように、区の職員が必ず現場に立ち会って、指示をしながら小分けをして、そしてまた、運送に当たっても一緒に車に同乗して管理をしていく、そういう体制でやろうと考えております。
○濱村委員 ありがとうございます。ワクチンの接種率については六五%を目指しておられるということでございます。インフルエンザの予防接種を参考に数値目標を決めておられるということでございますけれども、少し、これは舘田参考人にお伺いしたいと思います。まず、インフルエンザも発症予防については二割から六割ぐらいの効果があるというような、一般的なそういう認識があると思っておりますけれども、接種率が六五%、あるいはどれぐらい接種すれば感染拡大防止に対して寄与するのか、この辺の幅といいますか、どのように感染をコントロールしていくのかという意味において、接種率の考え方についてはどのようにあればよいのかというところを専門的な見地から教えていただければと思います。
○舘田参考人 ありがとうございます。いわゆる集団免疫効果というところにつながってくると思うんですけれども、一般的に言われているのは、その集団の中の五〇%前後が免疫を持つ、ワクチンで免疫を持つのか、あるいは自然感染で免疫を持つのか、それが五〇%に達するとそれ自体で感染していない人も守られていくというような、そういうふうな効果が出てくるというふうに考えられていると思います。ですから、まだ、今、この前、抗体検査の結果が出ましたけれども、東京で〇・九一%、一%か二%ぐらいの人しか感染していないという状況ですから、そこにワクチンで免疫をつけていくことによってというふうにしても、まだまだかなりの時間がかかるのかなというふうに感じています。以上です。
○濱村委員 ちょっと最後、もう一問だけお伺いしたいと思っておりますが。政府としても、ワクチンの接種は決め手と考えているわけですね。その中で、今おっしゃっていただいた集団の中における免疫の獲得の仕方等々あったんですが、ワクチン接種して感染しないと思っておられる方々も非常に世の中にはいらっしゃるということでございますが、あくまで発症予防なのかなと思っております。この発症予防自体に意味があるということについて、先生から分かりやすく国民の皆さんにちょっとメッセージを伝えていただければと思います。
○舘田参考人 非常に大事なポイントだと思います。ワクチンの有効性を評価する上で、まず、ウイルスに感染しないかという予防効果が一つですよね。もう一つは、感染して発症するかしないか、感染発症予防効果ですね。それが今言われているように、九五%というような形で言われていますけれども、これは感染して発症するというところを予防する効果ですということが分かってきていると思います。ただ一方で、また感染して発症した後に重症化するかどうか、そこもワクチンによって効果が見られてもおかしくない。ですから、今は発症予防というところで見られていますけれども、感染予防はどうなのか、あるいは重症化予防はどうなのかというところに関しては、まだよく分かっていないところだというふうに思います。
○濱村委員 参考人の先生方、ありがとうございました。山下参考人には質問できず、失礼いたしました。終わります。ありがとうございました。
○金田委員長 これにて濱村君の質疑は終了いたしました。次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、五人の参考人の皆さん、大変貴重なお話、ありがとうございました。まず、舘田参考人にお伺いしたいと思います。今日は解除後攻めの感染対策というお話がございました。急所中の急所、飲食、会食の場、更にいろいろな時短要請なんかも含めてというお話もあるんですけれども、それと同時に、やはりどう経済活動を再開していくのかということを考えた場合に、飲食店での換気対策を更に強める必要があるんじゃないのかなというふうに思っております。この間、CO2モニターの問題だとか、いろいろなことを分科会でも具体化されてきておりますけれども、更にきめ細やかに、飲食店のガイドラインなんかを見ても、換気の話は結構後ろの方なんですよね。もっと前面に突き出して、対策を一つ一つ促していくというのが解除後の攻めの感染対策では必要ではないかと思うんですが、その辺りの御見解をお伺いしたいと思います。
○舘田参考人 おっしゃるとおりだと思います。やはり急所と定めた飲食店ですよね、お酒を飲むような場所も含めて、そういったところで密になりやすいし、換気が悪くなりやすいし、そこでの感染のリスクは高いということが分かってきたわけです。そういう意味では、今から緊急事態宣言を解除して、そしてできるだけ正常に近いような形に戻していこうとしたときに、それでも、やはりそういう急所の場においては、いかに感染対策を維持しながらやっていくのか。そのときに換気というのは非常に大事なポイントでありますし、と同時に、やはり密にならないようにする、ソーシャルディスタンシングというのが大事ですし、あるいはアクリル板を使うとかもありますし、そういうふうなことを総合的にしながら、できるだけ正常にしながら感染リスクを抑える、そういう新しい生活様式を定着させていくことが重要だというふうに思います。
○宮本委員 それから、あと、攻めの検査というお話もありました。それで、いろいろな検査を考えられると思うんですけれども、やはり今私自身が感じているのは、今、濃厚接触者、再び追跡できるぐらいの数にまで、保健所からしてもなりつつあるのかなというふうに思うんですけれども、その濃厚接触者の外の接触者も検査をすれば陽性という話がそれなりに出てきているわけですよね。この攻めの検査といった場合に、変異株も出てきていることもありますので、濃厚接触者に限らずに、その陽性になった方と同じ空間にいた、行っていた方々も含めて、検査の範囲を広げる、そういう検査をやられている自治体もありますけれども、そういうことも考える必要があるんじゃないかと思いますが、この点はいかがお考えでしょうか。
○舘田参考人 おっしゃるとおりで、これはやはりなかなか、この緊急事態でそのキャパシティーも限られている状況の中では、濃厚接触者をかなり限った形での検査しかできなかった、そういうふうな事情があると思います。それが、一メートル以内でマスクをしないで十五分以上とかそういうふうな形で、一つの基準として決めたわけですけれども、それを、今は少し余裕が出てきている、少し手が回るのであるならば、もう少し緩くして、それが一メートルじゃなくてもうちょっと離れていても、あるいは十五分じゃなくて十分でもというのは、それはいろいろな判断の中で少し緩めながら広くやっていく、そういうふうな対策は当然取っていっていいんじゃないかなというふうに思います。
○宮本委員 それからもう一点、高齢者、職員を守る介護施設の定期検査、これはもう私も大分前から言ってきたんですけれども、考えられる際にやはり頻度だと思うんですよね、定期検査というのは。何か、長い間に一回やったって、がんの検査じゃありませんから、その日感染していなくても翌日感染する可能性があるということを考えたら、やはり頻度が大事だというところをしっかりと分科会なんかでも示していただけたらなというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○舘田参考人 頻度は非常に大事だというふうに思います。ですから、これもよく言われるように、今日は陰性でもあした陽性になるかもしれない、それはそうなんですけれども、ただ、大事なのは、この感染症というのは、感染を起こしてから症状が出るまでに一週間、二週間というふうな、長くて二週間というところですよね。ですから、その辺のところを考えながら、そして、その地域地域の流行状況というものも見ながら、どのくらいの間隔で検査を行っていくのかということを考えていく必要があると思います。ですから、そういう意味では、例えば、ざっくり、私は個人的には、今、一か月に一遍でもいいのか、あるいはもう少し短く、一週間、二週間でやるのかとか、その辺のところは、その状況を見ながら考えていく必要があるのかなというふうに感じています。
○宮本委員 是非そこは分科会でも議論いただけたらなというふうに思います。脇田先生なんかは、やはり週一、二回だろうみたいな話もされていますので、是非よろしくお願いいたします。それからあと一点、変異株の問題なんですけれども、ドイツなんか、広がる中で、マスクは医療用マスクに公共の場ではしましょうということを言ったり、あるいは、アメリカのCDCが最近二重マスクが効果があるんだということを言ったり、全体、世界を見ていますと、エアロゾル感染対策をかなり意識しているというふうに見えるんですけれども、先ほど橋本岳さんとのやり取りでは、私たちができることは変わらないんだというお話もあったんですけれども、全体としては、やはり換気とマスク、マスクの質も含めて、やはりそこに一人一人の感染対策という点でも意識を強める必要があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。
○舘田参考人 これは、恐らく、マスクの質というのは非常に大事だというふうに思いますし、また、一枚よりも二枚重ねて、二枚よりも三枚重ねた方がいいんじゃないかとかいう、そういうふうな議論というのも出てくるわけですけれども、私は、これはもう個人的にですけれども、日本は、そういうことがよく分からない中で、マスク文化が定着していたような状況の中で、最初の段階での大きな流行というのをほかの国に比べてみるとうまく抑えることができたというのは、あれは、いわゆる普通のマスクを普通につけるような、そういった状況の中でもかなりこれはコントロールできる感染症なんじゃないかなということを感じています。もちろん、ゼロリスクはありません。ゼロリスクはないからということはあるんですけれども、だから、大事なのは、しっかりとそのリスクを感じながら、めり張りをつけてマスクを使う、換気をする、三密を避ける、そういったことをやっていくことが大事なんだろうなというふうに思います。
○宮本委員 ありがとうございました。続きまして、井上参考人にお伺いいたします。この委員会でも、コロナ禍の下で、女性の非正規の労働者の皆さんが、休業手当ももらえず、休業支援金の対象にもなっていない方がたくさんいるということは何度も議論されてきました。そういう中で、ようやく大企業の非正規の方にも休業支援金が対象になるということになったんですけれども、ところが、具体化されたものを見ましたら、中小企業で働く非正規の皆さんとも差がつくという状況が今の到達点ですが、この休業支援金、大企業、非正規の問題も含めてどう見ていらっしゃるのか、御意見をお伺いしたいと思います。
○井上参考人 ありがとうございます。まさに御指摘のとおり、休業したんだけれども支援金がもらえない、そういう女性たちの声をたくさん聞いています。本来であれば、休業している全ての人たちが同じようにこの助成金を支給される制度であるべきですが、そこにすら格差がついていること自体がやはり大きな問題だというふうに思います。その意味でも、例えばマイナンバー制度をもっと拡充をして、しっかりと収入のひもづけをするとか、そういうことも求められてくると思いますので、そういう仕組みをやはりしっかりと整えていただいて、ただでさえ非正規の皆さんは、働くこと自体で格差がある、そして助成金を受けるのにも格差がある、二重の格差、三重の格差があるということを是非もっと真剣に検討していただきたいというふうに思っています。 以上です。
○宮本委員 ありがとうございました。続きまして、前川参考人にお伺いいたします。練馬区、地元のうちの会派の議員にも聞きましたら、やはり医療機関への支援だとか、かなり頑張っていらっしゃるということをお伺いをしました。早い段階から拠点病院へお金を出したり、あるいは最近も、PCR検査しているところへの独自の支援ということもやられているというお話を伺いました。すごい大事なことだと思いますが、一方で、国の支援が足りない、遅れていることの裏返しでもあるのかなと思うんですけれども、医療機関への支援がなぜ必要だというふうに感じられたのかということと、国の医療機関への支援の現状についての問題意識などありましたら、お答えいただけるでしょうか。
○前川参考人 お褒めをいただきまして、ありがとうございます。私ども、いろいろな形でコロナ対策をやっているわけでありますが、病院の支援というのはもちろん極めて大事なことだと思っております。病院がコロナ対策でいわば忙殺されている、そして通常の診療もできなくなるし、そして、ひいては経営にも大きな影響がある。これは最も重要な問題でありますので、私どもとしては、その分について、コロナ患者を受け入れている病院の経営については早い段階から支援を始めました。春の段階ではなかなか大変だったんですけれども、今となってきては、まあまあ感染が落ち着いてきたこともあるんでしょうけれども、経営としてはまあまあ立ち直りつつあるのかなと考えております。
○宮本委員 ありがとうございました。続きまして、住江参考人にお伺いをいたします。先ほど、前川参考人からは、コロナ患者を受け入れているところは立ち直りつつあるのかなというお話がありましたが、その一方で、コロナ患者を受け入れていない病院のお話が住江さんからあったわけですけれども、具体的に、どういう診療所だとかどういう種類のところが苦労していて、どういう支援があったらその減収が埋まるというふうにお考えなのか、詳しくお聞かせいただけたらと思います。
○住江参考人 どうもありがとうございました。最初、十分間の冒頭陳述でも詳しく答弁させていただいたんですけれども、とにかく今、やはり、今の支援金制度、緊急包括支援金、これについても、あらゆる補助金、支援金、やはり線引きをして、そして申請させて、それで給付という、本当に二重三重の手間暇がかかっている。今現在、医療機関支援として総額四兆三千億、やはりそういうところ、メニューとしてはあるんですけれども、実際に行き届いているのは一兆二千億、やはりそういうところのギャップがあるわけです。これを早急に施行していただくことが大前提なんですけれども。だから、やはりその二重三重の手間暇によって遅れている、それをどう改善しようかと思えば、やはり対前年度比できっちり減収分を概算払い方式で、これは、政府にはそういうことを何回も要請させていただいたんですけれども、この概算払い方式というのは、災害時、カルテなりそういう請求、そういう業務ができない場合ということはおっしゃるんですけれども、今、そういうことでこれだけの支障が来ているわけですから、そこはもっと大きく考えていただきたいと思っています。今現在、本当にそういうところで、診療所、そして病院、そういう中でも精いっぱい頑張っていただいている。例えば、大阪保険医協会のアンケート調査でも、コロナ患者を受け入れることは、今の、やはり医師、スタッフ、そういうところの限界、そしてまたゾーニング、そして動線確保、そういうところは難しい。ですけれども、そういうコロナ患者さんの受入れは登録はしていないけれども、地域でクラスターなんかが発生したら、やはり積極的にその病院なり診療所がコロナ患者さんの診療に当たっていただいている。やはりそういう現実、そういう頑張りが、地域の第一線の先生方は奮闘していただいていることを、そして、先ほど東京都の病院の調査結果も紹介しましたけれども、一月十二日の東京都の一番感染者数がピークのとき、三千人調査されたんですね。そうすると、五五%は民間病院で診ていただいているので。やはりそういうデータもございますので、決して民間病院が、限界はありつつも精いっぱい頑張っている、サボタージュしているということは決してないということをやはり御理解いただきたいと思っております。ありがとうございました。
○宮本委員 民間病院がサボタージュしているという認識の委員は、多分この部屋には一人もいないと思いますので。その上で、あと、七十五歳以上の高齢者の医療費の窓口負担の問題についてもお伺いしたいと思います。今回、二百万円以上というところで線が引かれたと、単身者でいえば。先日、ここで田村大臣に質疑をさせていただいて、二百万円が負担能力がある根拠は何なのかということをお伺いしましたら、家計調査を見たら、単身二百万円ぐらいの収入の方は、収入は二百万円に対して支出は百八十八万円で、十二万円の余裕があるというお話があったんですけれども、医療現場から見て、十二万円の差がある方は、病気、まあ、いろいろな病気をされる方がいると思うんですけれども、余裕があるというふうに言えるのかどうか、その辺りの御意見を聞かせていただけたらなと思います。
○住江参考人 ありがとうございます。十二万円の余裕があるから、今回、二割負担化で、おおよそ三・四万円、三万四千円の負担増になるんですけれども、十二万円余裕があるから三万四千円の負担をお願いしますというのは、やはりそういう政治感覚が私は本当にどうかなと思わせていただきます。まあ、応分の負担という議論もあります。しかし、それは税と社会保険料負担で、やはりそこできっちり評価していただくものであって。また、そこそこ資産も持っておられるという議論もあります。しかし、それは、過去の社会保険料負担、そして税金負担、やはりそこはきっちりその都度その都度評価されて今日に至っているわけですから。そうしたならば、レトロスペクティブに、今こうだから、だから懲罰的に前に遡って負担を増やす、そういう議論になってしまいます。これは断じて許されるものではないと思います。そして、そもそも、社会保障費用に、日本の場合はやはり決定的に少な過ぎるんですね。これは、OECD先進諸国、例えばフランスと比較しますと、対GDP比で一〇ポイント、一〇%、日本の社会保障費用は少ない。その一〇%の、ということは、五百五十兆のGDPからいいますと、五十五兆円、日本の場合は少な過ぎる。その五十五兆円の内訳、一〇ポイントの内訳を見ますと、国民負担はほぼ一緒なんです。三ポイント、政府、公費負担が少ない、十六・五兆円。そして、七%、企業負担が少な過ぎる、三十八・五兆円。やはりそこに決定的に今の社会保障の困難が表れていると思います。ですから、同じ余裕がある、そういう議論をされるならば、そこの負担の少な過ぎるところについてメスを入れていただくことがやはり喫緊の課題だと思っております。以上です。
○宮本委員 あと、この七十五歳以上の窓口負担の二割化について、実は、法案を見ますと、二百万円からというのは法案には書いてないんですね。政令で決めるというふうに書いてありまして、事実上私は政権にフリーハンドを与えるものじゃないかというふうに思いますが、その点についての御意見はあるでしょうか。
○金田委員長 住江参考人、時間が参りましたので、まとめてお願いします。
○住江参考人 政権に対するフリーハンドということについては、私も、二百万円以上、そういうところが、理解、理解というか、知識として得ているわけですから、ちょっとあれですけれども。とにかく、今、高齢者の生活実態をもっともっと見ていただきたいと思います。例えば、七十五歳以上の個人の年収分布を見ますと、平均値が百六十六万円、そして中央値が百三十万円。確かに、二百万円以上、そういう方は、平均値、中央値から見ると収入が多いランクにはなるんですけれども。そして、世帯主が七十五歳から七十九歳の無職の夫婦世帯の平均は、月収入二十三・三万円、そして月支出は二十五・五万円。月二万二千円、これはやはり赤字である、そういう実態なんですね。やはり、そういうところでは、もう本当にこれ以上の負担に耐えられる状態ではないと思っております。ですから、そういうところについてきっちり議論していただきたいと思うこととともに、もう一点。やはり、今、高齢者二割負担の問題がありますけれども、実は、昨年、既にもう国会で決められた、この八月から、高齢者の負担増、補足給付、介護施設での食費負担の軽減、そういうところを軽減する制度なんですけれども、これが、年金などの収入要件に新たに百二十万円を超える区分をつくり、食費の自己負担を月二万二千円増やされます。配付資料のように、月額負担は五・九万円から八・二万円になります。そこへこの二割負担ということになりますと、本当に医療にもかかれない、そういう事態を生んでしまうということ、やはりそういうところもきっちり見て取って、またこの二割負担については御論議いただきたいと思っております。よろしくお願いします。
○金田委員長 時間が参りました。
○宮本委員 時間になりました。終わります。山下参考人に質問できなかったこと、失礼いたしました。ありがとうございました。
○金田委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。次に、藤田文武君。
○藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。今日は、五名の参考人の皆様、貴重なお時間を頂戴いたしまして、ありがとうございます。全ての皆様に質問できないかもしれませんが、御容赦いただけたらと思います。まず、山下参考人に質問をさせていただきたいと思います。冒頭、農林水産省御出身ということで、にもかかわらず、古巣と違う御意見をたくさん言っていただきまして、私自身も非常に賛同するところがあり、また、日本維新の会が考える農政についての課題意識というのも非常に近しいものがあるなというふうにも思いました。その中でも、今日のお話の中で、国費を使って財政支援をして、減反で生産量を減らしていて、米価を高く設定して、お金を、国費を使っているのに利用者の負担、消費者の負担が多い、これは普通の経済学で考えたら確かにおかしいなというふうに思いました。だから、こういう話は、恐らく、何か、業界の常識は世間の非常識、世間の常識は業界の異端だったり反逆者みたいな、そういう話とも言えるのかなというふうにも思いました。その中で、まず根本的な問いなんですけれども、農業の担い手が高齢化しているし、担い手不足、次の代になかなか引き継いでいけない、こういう問題もあり、耕作放棄地の問題もある。それから、国際競争力が相対的に見ても非常にいい状況ではないという中で、これから世界は食料不足の時代にもなってくる。こういう背景がある中で、やはり、今のままでいいのかというと、私は、それはどうかなと思うわけです。今のままの仕組みでいいんであれば、いいと思うんです、このままで。でも、やはり変わらなければいけない。トランスフォーメーションを農業もしていかないといけない、構造的に。なぜ、そもそもこれはなかなか変わっていかないのか。これは答えにくいかもしれませんが、御見解をお願いいたします。
○山下参考人 ありがとうございます。今日は、うちを出るときに、変なことは言わないようにと言われてきたんですけれども、やはりそれに触れざるを得ないと。資料の開いて二ページ目の一番下の方に書いているんですけれども、二つ理由があります。一つは、欧米にも農業の利益を代弁する政治的な組織がございます。ただし、欧米と違って日本には、JA、農協という、政治組織でありつつ、それ自体が経済行為を行っている組織がある。これが、欧米の農業についての政治と日本の農業についての政治の根本的な違いです。したがって、農協の場合には、農家は米価が下がっても、アメリカやEUがやってきたように、直接支払いで財政で補填するということであれば、価格が下がって、消費者には安く供給できて、みんながハッピーになるわけですね。高い関税も要らないわけです。だから、逆進的な農政をやめられるわけです。ところが、日本の場合には、農協というのは、米の販売をすることによって、それに何%の販売手数料がかかってくる。さらに、米価が高くなると、高い肥料や農薬や農機具を売れる。それにもまたパーセントの販売手数料がかかってしまう。更に言うと、零細な兼業農家を温存して、JAバンクの預金量も増える。そういう組織が日本の場合にはあるということですね。これはなかなか難しい問題。したがって、欧米のような直接支払いにはなかなか移行できない。減反をずっとこのまま続けてきたわけですね。もう一つは、農業票、農民票は減少しています。これは皆さん方には言い難いことなんですけれども、小選挙区制になりました。参議院も、地方区は一人区が多くなりました。そうすると、フィフティー・フィフティーで競っているときに、たとえ農業票が、農民票が少なくなったとしても、その組織された農民票が向こうの陣営に行くと、例えばフィフティー・フィフティーが二%でも向こうに行くと、四八対五二という四%のギャップが生じてしまう。これはなかなか、農民票というのが、本当に、真に農民のための声が代弁されない、そういうふうなところになっているんじゃないかなというふうに思います。
○藤田委員 ありがとうございます。おうちで注意されたことを少し外していただいて、ありがとうございます。私も、予算委員会とともに農林水産委員会の委員でして、この問題はいろいろ根本的な問いからやりたいなと思いながら、ちょっとびくびくしながらいるんですけれども。でも、本当に、これから、日本の農業、農業自体をやはりもう一度復興させていかないといけないという課題意識は一にしておりますので、引き続き御指導いただけたらと思います。この件にやはり触れざるを得ないかなと思うんですが、養父市の件。国家戦略特区で企業の農地取得が特例で五年間認められて、実際には、養父市では、成功事例と言えるような、そこまで一気に拡大はもちろんしませんし、一気に拡大するとそれはそれで問題でしょうから、地道に堅実に成功事例を出してきた。ただ、そもそも国家戦略特区の意義というのは、岩盤規制にドリルで穴を空けて、それが成功であれば、問題がそこまでなければ全国に展開していこう、こういうことであったわけですけれども、今回、残念ながら、二年間の延長措置ということで、全国に展開できるかということを見込んでではないけれども、その他の地域でも調査をしていく、こういうふうにお茶を濁されたわけであります。この件について、山下さんの御見解がもしあれば、いただきたいと思います。
○山下参考人 ありがとうございます。養父市の市長さんには私も随分前にお会いさせていただきまして、養父市の耕作放棄をどうしようかということを本当に真剣に悩まれている方なんですね。それで、やむを得なく企業の農地取得ということを提案されたんだと思います。特に中山間地域は企業にすがらないと農地を維持管理できない、そこまで追い込まれているんだというふうに思います。そういうふうな可能性を閉ざすというのが本当にいいのかどうか。それから、あれも特区の五年間の措置で、それをまた二年間延長ということなんですけれども、それぐらいの小刻みで小刻みで来られると、企業も、本当に農地を取得してもいいのかどうかという、なかなか判断が難しいのではないかと思うんですね。私は、株式会社の農地取得については、耕作放棄をするとか、産廃のあれになるとか、あるいは転用するとか、こういうふうなことを言われるんですけれども、転用については農地法をしっかり運用すればいいだけの話であって、別に、自然人であろうが企業であろうが、それを制限する必要はないわけですね。欧米にも、そういうふうな制限をしている農地法みたいな規則はないわけです。ただし、一つだけ申し上げておきたいのは、先ほどフランスの話をしましたけれども、フランスにあって日本にないのは確固たるゾーニング制度です。農地を農地として守らなければならない。これは、フランスの農地面積というのは三千万ヘクタール、日本は四百四十万ヘクタールですけれども、日本はどんどんどんどん下がってきているんですけれども、フランスの農地面積は三千万ヘクタールからほとんど減少していないんです。この何十年間、ほとんど減少していない。それはやはり、農地を農地として維持するんだ、それがフランスの国益につながるんだ、それが安全保障につながるんだという確固たる信念を持ってフランスは農政をやっているんだというふうに思っております。以上です。
○藤田委員 山下参考人、ありがとうございました。続いて、井上参考人にお聞きしたいと思います。マイナンバーの件に触れていただきました。将来的には収入とのひもつけも必要ではないかという御意見をいただきまして、私は、連合さんの御意見として意外だなと最初思ったんです。でも、今日以前にもいろいろお話を聞いていると、非常に合理的なお考えをされているなという印象も一方で持っています。先ほど特別定額給付金のお話があって、個人にちゃんと行き渡るように、いわゆる国が、どの人が困っていて、どの人ともつながっていない状態から、ちゃんとつながって支援の手を差し伸べられるという社会インフラをつくるべきだというのは私も同感で、思うところであるんですけれども、そういう意味でマイナンバーをどんどん活用していこうというのは、非常に、私はどんどん進めるべきだという立場なんですが、井上参考人の御意見を聞かせていただけたらと思います。
○井上参考人 ありがとうございます。御指摘のとおり、連合としては、マイナンバーの推進を積極的に進めていこうということで、連合は「政策・制度 要求と提言」というのがありまして、その中に、制度の導入について、また拡充について入れて、取り組んでいるところです。これについては政府への要請等も行っていますし、それから、まだ組合員含め国民に知られていないというところがあります。お恥ずかしながら、連合の中でもマイナンバーをしっかりと活用している者というのがまだ少ないというのもありますので、まず足下からそれも広げていかなければいけないと思いますが、連合としては推進の立場で取り組んでいるところです。
○藤田委員 ありがとうございます。もう一問、させてください。先ほど、一人目の出産のときに女性が退職される方が多いと。その中で、もう一度労働市場に再参入されたい、就職を、再就職されたいというときに、正社員になるのが非常に難しい。だから、これは労働市場の問題でもあると私は思うわけです。狭き門の中でというお言葉を使われて、非常にそのとおりだなというふうに思うわけですけれども、その中で、我が党はよく雇用の流動化とかということを申し上げているわけですけれども、これはただ単に解雇規制をどんどん緩和しろというだけじゃなくて、企業にずっと社会保障というか生活保障を負わせてきた社会の仕組みから、雇用がもう少し、その人の本当に生き生きと働けるところに合った働きどころを見つけられて、それがもし流動化していたらその狭き門が少しだけでも広がって、女性のそういう労働市場への再参入ということが促進され、なおかつ失業のちゃんとしたセーフティーネットとか、再就職支援みたいなものがセーフティーネットとしてある、こういうふうに変わっていくべきじゃないかなと思うわけです。そういう観点から、さっきの、狭き門の中で女性が再就職しにくい、正規になりにくいという御指摘は確かにそうだなと思いながら、この雇用の流動化についての御意見、どういう御意見かお聞かせいただけたらと思います。
○井上参考人 ありがとうございます。正直申し上げて、流動化、なかなか難しい、じゃ、連合の立場として流動化を進めるのかというところでいくと、そこは少し違うところがありまして、やはり期限の定めのない雇用が前提というところで取り組んでいるところでありますので、様々、多様な働き方というところに関しては理解をするところであります。そういう中での女性の雇用というのは、確かに、多様な働き方がもっともっと認められていけば女性の雇用は進んでいくというふうに思います。実際に、それは企業でも、例えば、今まで、八時間会社にいなければいけない、あるいは残業しなければいけない、そういう前提で働いていた企業が、短時間でも管理職になれるとか、そういう意味での多様化で女性を登用している企業は今増えていますので、そういう企業がどんどん増えれば、女性の門戸も広がって、非正規の人たちがまた働くという現場に戻っていける、そういう仕組みができるのではないかというふうに思っています。
○藤田委員 御意見ありがとうございます。問題意識は同じなんですが、なかなか、ソリューションの部分はちょっといろいろあるなと思いながら、でも、お立場の中で最大限御発言いただきましてありがとうございます。続きまして、前川参考人にお聞きしたいところが、診療所での接種と集団接種を組み合わせていくという中で、打つ場所が増えるということは、打つ場所を増やして、しかも、優先順位が一応あると思うんですね。この優先順位を厳しくするというのは、やはりどうしても、論理的に考えると、廃棄量が増えてしまうという問題を生む可能性があります。その中で、優先順位を割と、どこかのページで、ごめんなさい、何ページかはちょっとさっと見つけられないんですが、優先順位を柔軟に運用しようというようなことを書かれておられました。これは、私は非常にいいことだなというふうに思うわけですけれども、その辺りについての御見解を聞かせていただけますか。
○前川参考人 ありがとうございます。今お話があったのは何ページのことでございましょうか。その前に……(藤田委員「ごめんなさい、十二ページの最後。優先接種区分にかかわらず、付添いで希望する方などに接種するという」と呼ぶ)これは、コロナのワクチンの接種に優先順位がありますから、そのことでありますけれども、私どもは、優先順位を、何かこれが厳しく、運用が厳しいとは全く考えておりません。まず何よりも、冒頭にお話を申しましたように、特別なワクチン接種体制を取る必要はないと思っておりますので、基本的に、毎年我々がインフルエンザの予防接種を受けている、それと同じ体制を実現することが必要であると。もし集団接種だけでやったら、これはお医者さんの確保だけじゃなくて、すさまじいことになって、とてもできないと考えております。だから、そういう意味でいうと、個別接種を中心に集団接種を柔軟に組み合わせる体制はいいんだ、その中で優先順位の問題もおのずから解決されると考えております。
○藤田委員 ありがとうございます。ちょっともう一点だけ、副作用の救済制度。これは、ワクチンが、いろいろな不安が飛び交っているわけでありますけれども、通常のワクチンよりもやはり過敏になるのは、これは当然のことだと思うんですよね、心理として。その中で、有害事象と言われる、何かちょっと違和感があるということで、問合せの数が通常のワクチン接種よりも恐らく多いんではないか。これは結構大変なことだなと思うんですね。その中で、通常、有害事象というのは接種した医療機関、医師から届け出る、こういう形になっていますけれども、集団接種の場合は、これは委託されたお医者さんが担当されるのか、自治体がやるのか、これはいろいろな運用はあると思うんですけれども、この辺りの有害事象に対しての扱いについて、どういう議論が区ではなされているか、問題設定、課題設定されているか、教えてください。
○前川参考人 ありがとうございます。ワクチンについて、いろいろな副作用がある、副反応があるということはもう十分承知をしておりまして、議論されておりますが、基本的に、いろいろなワクチン全て副反応がないものはないわけでありまして、基本的には、例えばインフルエンザの予防接種であっても、それは接種したかかりつけ医が責任を持って事後に対応するわけであります。今回も同じような形でやる必要がある、それが基本であると思っております。そして、その上で、当然ながら、集団接種については、体制として、もし問題がある方が出てきた場合には十分フォローして対応する体制を取っていきたい、そう考えております。
○藤田委員 ありがとうございます。あと、最後に、舘田参考人にお聞きしたいと思います。超過死亡数の話があると思うんです。これは、超過死亡数がひどい状況にはなっていないよ、むしろ減っているということについての御見解、どのように捉えたらよいかという御見解が一つ。それから、やはり本当の出口戦略。本当の出口というのはどういう状態を目指すべきかというのが、これは、もう一年ぐらいコロナとの戦いをやっておりますけれども、なかなか、さっきの波の話で、どこまでたたいたらよかったのか、たたかずに共存していく方がいいのか、これは様々な議論があると思うんですが、じゃ、本当の出口というのはどのようにして見えてくるものなのか。これは、第三波が終わっても、やはり普通で考えたら第四波が来るんじゃないかと、もう三回起こっていますから、思うと思うんですね。この本当の出口というのをどのように見据えていったらいいのかというのを、御所見がございましたら是非御指導ください。
○舘田参考人 ありがとうございます。最初の御質問の超過死亡に関しましては、これは、残念ながら、コロナで七千人を超える方がここまででお亡くなりになっている。一方で、先ほどもちょっと出ましたけれども、インフルエンザに関しては、ほとんど今年は、今シーズンは感染がなかったりとか、肺炎球菌による呼吸器感染症も減ったりとか、いろいろな意味でのそういうふうな感染が抑えられる効果も見えていることも事実です。ですから、そういう意味で、超過死亡全体としては大きくならないというような、逆に減っているというふうな、そういうふうなことが明らかになってきたわけで、先ほどもちょっと出ましたけれども、そういう意味では、私たちがやっているこの感染対策がある意味私たちの文化になって自然に定着していけば、もしかしたら、昔あった感染症に対して、そういうようなのも少なくなるような、そういった時代が来てもおかしくないのかなというふうに感じています。二番目の質問の出口戦略をどういうふうに描くかというところに関しましては、非常に、よく分からない不確定要因が多数あるかと思いますけれども、ただ言えることは、このウイルスはすぐに排除されてしまうようなウイルスではないし、もう既に、もう日本の市中に、至る所にと言ってもいいぐらいに定着してしまっているわけですよね。ですから、私の個人的な考えの中では、コロナウイルスですから、風邪のコロナウイルスというのが四つ知られていますけれども、その四つも、最初に出てきたときは新型で、恐らくこういうふうな状態を引き起こしたけれども、ただ、それは分からない、時代の中で、分からなかった中で通り過ぎていたのかもしれません。恐らく、これは五番目の風邪のコロナウイルスになっていくというのは一つ大事な方向性だというふうに思うし、そのためには、先ほどの集団免疫効果等々があって、何年か何年かした先には風邪のようになっていく、そういうふうなこともあるのかもしれません。出口という形で、ある意味強制的にそれを終わらせようとする、そういうふうな中では、恐らく、ワクチンが効果があって、皆さんの協力で受けていただいて、それが五〇%、六〇%、七〇%となる中で、感染が起きないような状態になってくるのが出口なのかなというふうに思っています。
○藤田委員 ありがとうございます。五名の参考人の皆様、本当にありがとうございました。
○金田委員長 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。次に、西岡秀子君。
○西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。本日は、五名の参考人の皆様には、御多忙の中お越しをいただき、誠にありがとうございます。大変貴重な御意見を伺わせていただいております。私からは井上参考人を中心にお聞きをしたいと思いますので、ほかの参考人の皆様には御質問できないこともあろうかと思いますけれども、どうぞ何とぞお許しいただきますよう、よろしくお願いいたします。井上参考人にお尋ねをいたします。今般の新型コロナウイルス感染症の世界的な流行によりまして、我が国が長年抱えていた様々な社会的な問題や課題が明確に浮き彫りになったと考えております。特に、社会のセーフティーネットが大変脆弱であったこと、このことから、先ほどからも御議論があっております、社会的に弱い立場の方が一番深刻な影響を受けているという現状がございます。特に、井上参考人からも言及ございました、女性に集中してその影響が及んでおります。先ほど、具体的に、各種労働相談ホットラインでの皆さんの相談内容について御説明をいただきました。休業補償についても大変御相談が多かったということもございました。このコロナ禍において露呈した女性の雇用労働問題が大変深刻であり、その問題は大変多岐にわたっていると思います。先ほど非正規雇用の待遇改善が一つの大変大きな解決策というお話がございましたけれども、そのほかに早急に重点的に取り組むべき課題があれば、井上参考人から御説明いただければと思います。
○井上参考人 ありがとうございます。まさに、この間、この日本の世の中でスルーをしてきたこと、女性の非正規の問題しかり、脆弱な人たちがいるということしかり、あるいはシングルマザーの貧困の問題しかり、それから高齢女性の貧困問題しかり、いろいろなところでスルーしてきた課題が、問題が、このコロナで全て顕著に現れてきたというふうに思っています。その意味では、国連のグテーレス事務総長始め、国連からも、このコロナ禍における女性や女児に対する影響に対してコメントも出されていますし、それから、各国の、G7における、例えばDVであったり、その支援団体に対する支援というのが、日本の予算とは考えられないぐらいに、とても多額なものの資金が投入されていたりします。一方、日本ではなかなかそういうことがまだされていないということを考えると、やはり、今困っている人たちにどうやって財政的な支援を行うのか。それは、それぞれ、労働者しかり、それからNPOを始めとする支援団体しかり、そういうところにしっかりと財政措置をしていくことが必要だというふうに思います。それから、今回のコロナで雇用を失った女性たちの三〇%以上が再就職できていないという課題もあります。ですので、働く場をどうするのか。今回雇用を失った人たちもさることながら、元々働いていなかった人、働けなかった人、働きたかったけれども働けなかった人たちの雇用をどうやってつくっていくのかというのが非常に重要だというふうに思っています。例えば、これは私たちも有識者の皆さんから言われているんですけれども、労働者供給事業をしっかりと労働組合が今こそやるべきではないかという御助言もいただいたりしていますし、働く場をとにかくつくって、日々生活するための環境をつくっていかなければいけないのではないかというふうに思っています。以上です。
○西岡委員 今、井上参考人から、働く場をつくっていくという御提案がございました。今、大変自殺が増加をしております。特に女性の自殺者が大変急増して、大変深刻な状況と受け止めております。それに加えて、小中高生、大変若い皆さんが、自殺が大変多くなっていて、前年比四一%という数字も発表されて、大変深刻な状況です。こういう今の大変不安で深刻な社会の情勢の中で、やはりこういう方々にもどういう形で支援が届くのかというのも大変重要な視点だと思います。自殺対策の専門家の方がおっしゃっていたんですけれども、そこまで思いが至っている方は自分で支援策を見つけるということはできない。ですので、プッシュ型支援というか、こちらからこういう支援があるということを積極的に働きかけることがこれまでの防止対策に加えて必要なのではないかという御指摘もあります。我が党は、二〇一九年参議院選挙で、望まない孤独に対して孤独担当大臣を置くということを提案をさせていただいて、先般、坂本大臣が孤独担当大臣として就任されることとなりました。こういう大変厳しい状況の中で、先ほど井上参考人からもございました、解雇、退職強要、契約の打切りで仕事を失い、仕事を今失っている女性に対しては、やはり職業訓練という側面も大変重要だと思います。ただ、その職業訓練も、例えば仕事をしながら、生活しながらやっていくというのは大変な状況だと思いますので、これまで以上にその方の実情に応じた職業訓練というのが必要だと思いますけれども、この職業訓練についての井上参考人の御意見をいただきたいと思います。
○井上参考人 ありがとうございます。やはり、職を失った人たちが困っているのは、何をしたらいいか分からないというのが大変多く聞かれます。私、昨年末、新宿でコロナ支援相談村の対応をいたしまして、やはり、解雇されて職がない人たちのお話、相談を伺いました。やはり、働きたいけれども、どこに行っても面接が受からないとか、そういうお話を聞きまして、であれば、例えば職業訓練も必要ではないかという話もしたんですが、職業訓練はやはり雇用保険加入者が対象になっていますので、それでいくと、雇用保険を払っていない、例えばそれこそ非正規の人たちはそういう機会すらも与えられないというところもあるというふうに思います。そういう意味では、広く職業訓練ができるような環境整備というのも必要だというふうに思いますし、何より困っているという声が自ら発せられるような、そういう環境をつくっていかないと、みんな、言えない人たちの方が多くて、それが結果的に自死につながってしまうというところもあると思いますし、大学生とか見ていても、学校に行けない、友達がいない、なので一人で引きこもってしまうというケースも大変多いですので、いかに、まさにプッシュ型、それから人と人とのコミュニケーション、つながりをどうするかというところもこれから求められてくるのではないかと思います。
○西岡委員 続きまして、政府が、緊急事態宣言発令につきまして、テレワーク七割というのを要請をいたしております。テレワークの機会そのものが大変男女で格差がある現実がございます。そもそも女性の半数以上が非正規であること、また、業種的にはテレワークが実施をできない業種に就業している方が多くいらっしゃることが挙げられます。また一方、テレワークを実施している女性の労働者についても、テレワークに起因する労働時間や家事、育児の負担の増大という負の側面も指摘をされております。そのことについて、必要な対策ということについて、井上参考人にお尋ねをいたします。
○井上参考人 ありがとうございます。先ほどの陳述でも述べさせていただきましたが、今まではそもそも会社に行って働くという環境が、今度は家庭で仕事をするということになりました。その意味でも、家庭で働くという環境をどこまできちんと整えるのか、そこは事業主の大きな責任だというふうに思っています。例えば、照明しかり、それから机と椅子の高さしかり、そういうことも、家の中で労働安全衛生法がきちんと保たれるようなものがあるのかどうか。連合としては、そのガイドラインを作って、テレワークを導入する場合には、きちんとそういうものも、それから費用負担ですね、光熱費であったり、パソコンを準備することであったり、そういうことも含めて、労使でしっかりと対応するようにということでのガイドラインを作っています。国の方でもそのガイドラインの検討会が今行われているというふうに思いますので、またそれを見ながら対応していきたいというふうに思いますが、ただ、本日準備させていただいた資料にもありますけれども、やはり、女性でお子さんがいる、そしてテレワークをしている人たちというのは、どうしても負担が多くかかってしまっている。夫と妻で両方でテレワークをしていても、結果的に妻の方に負担がかかってしまっているという状況もありますので、そういう意味でも、男性も含めて、家事、育児にしっかりと関わっていく環境をつくって、そして、同じ家でテレワークをしていても、家事、育児の分担、あるいは固定的性別役割分担の意識を払拭するような、そういう環境をつくっていくことが必要だというふうに思っています。
○西岡委員 ありがとうございます。井上参考人に最後の質問でございます。井上参考人から、最後に、日本オリンピック委員会評議員会での会長の不適切な発言を受けまして、差別をなくして誰もが平等に参画できる社会を実現をしなければいけないという、その重要性について言及をいただきました。現実はまだまだ大変厳しい状況でございます。ジェンダーギャップ指数についても、一昨年からまた順位を下げまして、G7最下位というのが今の現実です。二〇二〇年までの指導的位置に占める女性の割合三〇%という目標も先送りになった状態です。今、女性が意思決定に参加する機会を多くすること、また、リーダー層に女性を多くすることというのは、ジェンダー平等を進めるために大変改善すべき重要な視点だと思います。先ほど参考人から、やはり当事者である女性の声を反映する女性議員を増やすことが必要であるという言及がなされましたけれども、なかなか、政治分野の男女共同参画推進法も成立をいたしましたけれども、その実効性をもっと深めていかなければいけないというのが今の現状だと思います。女性議員を増やしていくということについて、井上参考人のお考え、そしてまた、ジェンダー平等を実現するために、やはり、国際的な中核条約の批准がなされていないということを、大きな課題だということで言及があっておりますけれども、その二点について参考人からお話をいただきたいと思います。
○井上参考人 ありがとうございます。女性議員を増やすというのはなかなか本当に難しいことだと思います。私ども連合も、地方に地方連合会があって、そこで女性委員会と、それから女性の議員の皆さんたちと交流をしたりするんですけれども、よくそこで聞かれるのは、せっかく女性たちがいるんだから、そういう人たちがまず議員になってもらえないかというのがよく聞かれる話です。しかしながら、一方で、例えば立候補するときに離職をしなければいけない、あるいは、もし落選したときのその後の生活の問題であったりとか、あるいは家族が理解をしてくれないとか、政治に対するマイナーなイメージというのが非常に多くて、そしてなかなか一歩踏み出せない女性たちも多いんじゃないかというふうに思います。一方で、きちんと政治に対して理解をしている若い女性たちは、自分たちがこの世の中を変えていこうということで、自分たちが自ら立候補して議員になろうという女性たちもいますので、是非、そういう女性たちの芽を摘まない、そういう環境をつくっていただきたいなというふうに思っています。それから、ジェンダー平等の実現ですが、先ほど触れたILOの百十一号条約もあります。それから、二〇一九年、ILO総会で採択された百九十号条約、仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶、この条約が今年の六月二十五日に発効する予定なんですけれども、一方で、日本では、この条約がすぐ批准できる環境にはなっていません。というのが、昨年六月に改正労働施策総合推進法を施行しましたけれども、そもそもハラスメント行為そのものを禁止する規定が設けられていないとか、あるいは第三者に対するハラスメントが措置義務になっていないというところもあったりします。その意味でも、やはり、ハラスメントを許さない、そういう職場環境をつくっていく、社会をつくっていく、そのことでジェンダー平等を実現させていくということが重要だというふうに思います。国際労働基準が守られていない中での日本の働き方というのはおかしいと思いますので、やはり、ILOの加盟国の責務として、この条約の批准に向けた中でジェンダー平等を進めていくべきだというふうに思っています。以上です。
○西岡委員 ありがとうございます。私たちも、ジェンダー平等、男女共同参画推進をしっかり進めていかなければいけないということを改めて決意をいたした次第です。井上参考人、ありがとうございました。それでは、舘田参考人と住江参考人にお尋ねをいたします。明日から接種が始まりますワクチンでございますけれども、このワクチンは、今までない、遺伝物質を使ったワクチンということで、大変新しい技術のワクチンという中で、大変心配をされておられる方も、私、いろいろお話を聞いております。このワクチンの治験というのは、打って短期間の副反応というものは確認をされるんですけれども、そもそもワクチンについて、長期的にこのワクチンを打ったときにどういう状態かというふうな治験がそもそもワクチンで行われているのかどうか、また、この新しい技術を使ったワクチンの影響というものを専門的なお立場で今どのように分析をされているか、お尋ねをしたいと思います。
○舘田参考人 ありがとうございます。先ほどもありましたように、これはメッセンジャーRNAワクチンということで、今までにない方法で作られてきた。そういう意味では、非常に短期間にこれを作れたということで、この技術が今からますます注目されていくようになるんじゃないかなというふうに感じています。初めてということですから、分からないこともたくさんあります。御指摘のように、接種して短期間の間の副作用に関してはある程度分かってきました。しかし、実際には、それが、打ってから一年後、二年後にどういう副作用が出てくるのかに関してはまだよく分かっていないところがあります。そういう意味では、その辺のところは、先のことですからなかなか言えないんですけれども、ただ、言えることは、そのワクチンを打つことによって、短期的ですけれども、少なくとも感染に対しては、感染発症に関して九五%抑えるというような、そういう効果が出ているということです。ですから、この辺のところは慎重に慎重にですけれども、今こういう状態を少しでも変えるということにおいては、今のワクチン、開発されているワクチンが大事な役目を持ってくるんじゃないかなというふうに思っています。
○住江参考人 どうもありがとうございます。正直言いまして、私ども臨床医にとって、やはり心配事はあります。主に三つございます。一つは、免疫がどれぐらい続くのかということが一つと、二つ目に、やはり臨床試験が決定的に少ない、三点目には、何でしたかな、ちょっとど忘れしましたけれども。そういう懸念があって、どうしてもちょっと臨床医自身、懸念を持っていますということは事実です。しかし、やはり一臨床医として、地域の先生方、地域の住民の命、健康を守るということで、ワクチン行政については全面的に協力させていただきますけれども、それには、先ほども言いましたように、やはり不都合な事象がつきまといますので、そういうところについて、やはりバックアップ体制、こういうことはきっちり条件整備していただくことが大事だと思っております。三つに、あと一つ言いますが、やはり中長期的な副作用情報はもう全く、まあ、それは初めてのワクチンですからないのは当然で、やはりその辺の懸念がございます。先ほども言いましたように、そういう体制をしっかりつくってこそのワクチン行政の、やはり全国民に、そして何よりも政府からの情報提供が大事だと思っております。以上です。
○西岡委員 ありがとうございます。国民の皆さんにやはりしっかり正しい情報を発信していくことでワクチン接種、推進をしていくということは大変重要だと思いますので、初めてのことが大変多いワクチンでございますけれども、引き続き、国民の皆さんへの情報開示につきましてはしっかり取り組んでいかなければいけないということを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。質問させていただけなかった参考人の皆さん、ありがとうございました。申し訳ございませんでした。
○金田委員長 これにて西岡君の質疑は終了いたしました。以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。次回は、明十七日午前八時五十五分から委員会を開会し、集中審議を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。