2021年4月20日 衆院厚生労働委員会 医療費2倍化法案公費・企業負担の引き上げこそ 参考人質疑

 衆院厚生労働委員会は20日、75歳以上に医療費窓口2割負担を導入する「高齢者医療費2倍化法案」について参考人質疑を行い、日本共産党の宮本徹議員が質問しました。
 陳述で、日本福祉大学の二木立名誉教授は2割負担の導入に反対し、応能負担は税・社会保険料で求めるべきだと指摘。全国保険医団体連合会の住江憲勇会長は公費負担や企業負担の引き上げこそ必要だと訴えました。
宮本氏は税・保険料のあり方を質問。二木氏は「『社会保障を充実したいなら消費税をあげろ』という議論があったが、財源は消費税だけではない」と応じ、住江氏はコロナ禍を機に各国が法人税増税・消費税減税に踏み出したとして、「これが世界のすう勢だ」と強調しました。
 宮本氏は、窓口負担増に伴う受診控えについて質問。二木氏は国内外の調査結果を紹介し、▷所得が低いほど受診控えが起こる ▷負担増で受診控え数は跳ね上がる ▷糖尿病や心不全の患者は健康悪化のリスクがより高い- と説明しました。宮本氏は「必要な医療が抑制される」と警鐘を鳴らしました。
 宮本氏が厚労省が法案作成の際に受診控えの影響額を与党協議に示していなかった問題への見解を聞くと、二木氏は「(影響額の計算式は)戦前の数字だ」「計算式の数値を出すよう要求してほしい」と応じました。
 住江氏は「食費を削るしかない厳しい患者が現実にいる」と強調し、負担増でさらなる受診控えを招くべきではないと述べました。

以上2021年4月21日付赤旗日刊紙より抜粋 

≪2021年4月20日 第204回衆院厚生労働委員会第13号 議事録≫

○とかしき委員長 これより会議を開きます。内閣提出、全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案及び西村智奈美君外十名提出、高齢者の医療の確保に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。本日は、両案審査のため、参考人として、健康保険組合連合会副会長・専務理事佐野雅宏君、日本福祉大学名誉教授二木立君、全国市長会相談役・津市長前葉泰幸君、全国保険医団体連合会会長住江憲勇君、以上の四名の方々に御出席をいただいております。この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。本日は、御多用の中、本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。次に、議事の順序について申し上げます。最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。それでは、まず佐野参考人にお願いをいたします。
○佐野参考人 ありがとうございます。ただいま御紹介いただきました健康保険組合連合会副会長の佐野でございます。本日、このような意見陳述の機会を与えていただきましたことに、委員長を始め委員の皆様に深く感謝を申し上げます。また、平素から、健保組合、健保連に御指導、御支援をいただいていることにつきましても、併せて御礼を申し上げます。さて、今回、政府提出法案につきましては、一定以上の所得のある後期高齢者について、自己負担二割を導入するという大きな改正が含まれておりまして、高齢者と現役世代の負担と給付のアンバランスの是正、また、現役世代の負担軽減という観点から、評価できるものであるというふうに考えております。本日は、二割負担導入の必要性につきまして、保険者の立場から、現役世代の負担の状況等も御紹介しながら、意見を述べさせていただきます。それでは、お配りしました資料の、おめくりいただきまして、一ページを御覧ください。左側のグラフを御覧いただきますとお分かりになりますけれども、二〇二二年、来年を境に、いわゆる団塊の世代の方々が七十五歳に到達し始めるため、後期高齢者が急増いたします。次に、右側の表を御覧ください。二〇一五年には、後期高齢者一人を支える現役世代は五・四人でしたけれども、二〇二〇年には四・六人、二〇二五年度には三・七人まで減少すると見込まれておりまして、高齢者数の増加以上に減少するということになります。現行制度のままでは、現役世代の負担は限界を超え、国民皆保険制度の維持も危うくなるとの危機感から、私どもは、これを二〇二二年危機と申し上げ、高齢者医療制度の早期見直しを要望してまいりました。次の二ページを御覧ください。このグラフは、健保組合の被保険者一人当たりの後期支援金などの推移でございます。法改正以前の二〇一四年度を一〇〇としたとき、一番上の赤い線の後期支援金は、今年度、二〇二一年度に一二五にまで伸び、さらに、二〇二二年から急上昇し、二〇二五年度までを推計すると、一七五まで大きく伸びると見込んでおります。下の紺色、この部分が加入者に対する医療給付費の伸びでございますけれども、これを大幅に超える状況となっております。一方で、賃金、これは一番下の線でございますけれども、ここ数年間、横ばいでございます。コロナ禍もあるため、今後も賃金の大幅な伸びは期待できないと考えております。今回、二割負担導入が行われなければ、これまでを超える負担増が現役世代にかかることになります。こうした流れを踏まえまして、私どもは、制度の見直しは時間との闘いでもあるというふうに申し上げてまいりました。次に、三ページを御覧ください。このグラフは、現在の制度が導入された二〇〇九年度から二〇一八年度にかけて、医療費と、保険料、自己負担の変化額について年齢別に表したものでございます。これを見ていただきますと、高齢者世代は医療費の伸びと比較して負担は余り増えておりませんが、逆に現役世代は、医療費に比べて保険料の負担増が大きくなっております。いわゆる高齢者に対する現役世代の仕送りが大きく増えていると言われておりますけれども、まさにその構図が表れているものでございます。次に、四ページを御覧ください。これは、年代別の高額療養費制度の所得区分とそれぞれの負担割合となっております。各年代の一般区分のところを赤く囲んでおります。対象人数が一番多い一般所得区分においても、後期高齢者は一割負担ですが、七十から七十四歳は二割負担、七十歳未満は所得に関わりなく三割負担というふうになっております。七十歳未満においては、今回新たに二割負担の対象となる方よりも所得の低い方、住民税非課税の方も三割負担というふうになっております。年齢だけで負担割合を考えるのではなく、負担能力のある方にはそれに応じた負担をしていただくということがまさに全世代で支える社会保障と言え、支え手である現役世代の納得感にもつながるというふうに考えております。次の五ページを御覧ください。こちらの資料は、厚生労働省の資料を基に私ども健保連で試算をしました、現行制度の場合の二〇二二年度からの四年間の現役世代の負担増を表しておりますけれども、この表の中にありますように、四年間の現役世代の負担増の総額は三・二兆円となります。これに対しまして、今回の政府案による二割負担の導入による負担抑制効果額は、四年間累計で三千百億円、負担増の総額の約一〇%にとどまっております。内容的に十分とは言えないものの、これ以上見直しの先送りは許されず、二〇二二年度の二割負担の導入が不可欠というふうに考えます。また、この表の中では二〇二二年度の負担抑制効果は七百二十億円とされておりますけれども、これは満年度の場合の数字でございます。十月以降の年度後半に実施されるということで、最大でも半分程度の効果となりますので、可能な限り早い時期に実施をしていただきたいというふうに考えております。次に、六ページを御覧ください。こちらは、健保組合の財政状況とコロナ禍の影響を表しております。二〇二一年度の健保組合財政の見通しは、コロナ禍により更に厳しいものになっております。加入者への医療給付費、いわゆる法定給付費の動向が不透明な中で、高齢者医療への拠出金が約千三百億円増加する見込みです。一方で、賃金水準の低下により保険料収入は二千二百億円減少し、更なる財政悪化が見込まれております。全体として、経常収支の赤字総額が拡大し、赤字組合数も全体の八割にまで増加する見込みでございます。左下の円グラフでございますけれども、健保組合にとって、いわゆる法定給付費と拠出金合計がまさに義務的経費ということになりますけれども、この義務的経費に占める拠出金の割合が四七%と、依然として半分近くを占めておりまして、法定給付費に近い額を負担をしております。これが五〇%となる組合数は、その右側のグラフでございますけれども、全組合の四分の一に当たる三百四十九組合に上ります。この上、さらに、コロナ禍による賃金への影響については、業態による差が大きくなっております。右下の表でございますけれども、二〇二〇年度に、コロナによる保険料の特例納付猶予、これを実施した健保組合は百二十九組合で、猶予残高は三百六十五億円になります。次に、七ページを御覧ください。これは、健保組合の方の財政状況とコロナ禍の影響でございます。業態ごとの賃金の動向について、二〇二〇年度と比較したグラフになります。一番左側、黄色で囲った部分が全体の計でございます。月額につきましてはマイナス一・三%、賞与はマイナス七・二%となっております。個別で見ますと、右側の赤で囲んだ部分ですが、やはり、宿泊、飲食サービス業、生活関連サービス業、さらには運輸業等、一般的にコロナ影響を大きく受けていると言われる特定の業態で賃金低下の傾向が大きく出ております。次に、八ページを御覧ください。これまで、現役世代の負担増の状況、世代間の負担と給付のアンバランス、健保組合を取り巻く状況等について御説明をしてまいりました。国民皆保険制度の維持、現役世代の負担軽減のために改めて申し上げたいと思いますけれども、やはり、二〇二二年度からの後期高齢者二割負担の導入については確実に実施をしていただきたいというふうに考えます。今回の改革は、一部の高齢者の方には確かに負担増となります。しかし、これまで現役世代は保険料を増やして高齢者を支えてきたというのが実情でございます。現役世代の負担は既に限界に達しており、二〇二二年危機の到来に加え、更にコロナに追い打ちをかけられているというこの状況において、是非皆様に御理解をいただきたいと思います。今回の二割負担案は、一定所得のある方を対象にしたものであって、自己負担については高額療養費制度による上限もございます。さらに、今回、新たに負担増の対象となる方々には配慮措置も用意されております。こうしたことも踏まえまして、全世代型の社会保障を進めるために、二割負担導入を確実に実施し、更なる対象範囲の拡大についても早期に検討いただきたいというふうに考えております。施行時期につきましても、可能な限り早期に設定をしていただきますようお願いをいたします。その上で、今回の政府案の附則にもありますとおり、次期改革に向けて、給付と負担の見直しを含め、速やかな検討の開始をお願いいたします。本日は時間の関係もございますので詳細な説明は割愛いたしますけれども、特に、今回先送りになった後期高齢者の現役並み所得基準の見直し、それと、その見直しが現役世代の負担増にならないようにするための現役並み所得者への公費投入につきましては、早急に検討開始をお願いいたします。健保組合の財政は、申し上げてまいりましたとおり、大変厳しい状況でございます。二割負担の導入は不可欠ですが、今回の改正による負担抑制効果は現役世代の負担軽減に十分と言える規模ではございません。今回の改革に当たりましては、財政が厳しい健保組合への拠出金負担に対する財政支援、それと、保険者機能を発揮するための推進策の拡充を是非お願いしたいと思います。最後になりますけれども、九ページを御覧ください。こちらは、昨年の十一月に田村厚労大臣宛てに、本会のほか、協会けんぽ、経団連、日商、連合のいわゆる被用者保険五団体が連名で出した意見書の内容でございます。私どもは、従来から、もう一つの被用者保険である協会けんぽ、また、経済団体の経団連、日商、そしてまた、被用者の代表である連合と協力をしております。詳細な説明はいたしませんけれども、九ページ下の方のアンダーラインのところを御覧ください。「七十五歳以上の後期高齢者の窓口負担についても、低所得者に配慮しつつ早急に原則二割とする方向で見直すべきである。」というのが五団体共通の意見でございます。本日は、五団体を代表して要望させていただきます。また、拠出金負担軽減、医療費の適正化をお願いするとともに、保険者機能の強化につきましても、保険者としての責務を今後とも全うしていく所存でございます。繰り返しになりますけれども、制度の見直しは時間との闘いでございます。政府案の成立、早期実施を心から願っております。議員の先生方には、引き続き御指導、御支援を賜りますようお願い申し上げまして、結びといたします。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
○とかしき委員長 ありがとうございました。次に、二木参考人、お願いいたします。
○二木参考人 こんにちは。参考人の二木です。私は、お手元の配付資料、これに沿ってお話をします。私は、医師出身の、医療経済、医療政策研究者です。本日は、去年と今年に発表した二つの論文に基づいて、全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案のうち、中所得の後期高齢者患者の一部負担、窓口負担の二割引上げに反対する以下の四つの理由を述べます。一、応能負担原則は保険料や租税負担にのみ適用される。二、医療には受益者負担原則を適用すべきでない。三、後期高齢者の医療費は非高齢者の約五倍。四、後期高齢者の負担増のうち、現役世代の負担減に回るのは二割にすぎない。一と二は理念的反対理由、三と四はデータに基づく反対理由です。以下、順番に説明します。まず、私は、医療、社会保障における応能負担原則、支払い能力に応じて負担する原則に大賛成です。しかし、それは保険料や租税負担に適用されるのであり、サービスを受ける際は、所得の多寡によらず平等に給付を受けるのが社会保険の原則と考えています。これは、社会保障研究者の常識的な見解、通説です。例えば、社会保障法研究の重鎮である堀勝洋上智大学名誉教授は、社会保険においては、能力に応じて負担し、ニーズに応じて給付するという原則に従うのが望ましいと明快に述べられています。堀氏によると、保険料は能力、給付は必要に応じる方向で進むべきであると最初に提案した公式文書は、社会保障制度審議会の一九六二年の勧告だそうです。私が委員を務めた日本医師会の医療政策会議も、一昨年四月に公表した、平成三十・令和元年度医療政策会議報告書の序章の「財源」で、以下のように述べました。社会保障における能力に応じた負担という考えは、財源調達面に限るのであり、生活リスクに直面してニーズが顕在化し給付を受ける段階で、自己負担率に差を設けることは、社会保障の理念にそぐわない。日本医師会も、昨年十月二十八日に発表した「後期高齢者の患者負担割合のあり方について」で、二割負担導入に反対する理由の二番目に、応能負担、収入や所得に応じた負担は、本来は保険料及び税で求めるべきである、財務省が言うように可能な限り広範囲ではなく、限定的にしか認められないと、社会保険の原理に基づく主張をしています。実は、厚生労働省も、この原則を一九九〇年代までは遵守していました。例えば、介護保険法制定のときの際の老人保健福祉審議会の最終報告、「高齢者介護保険制度の創設について」、一九九六年には、以下のように書かれていました。「高齢者介護に関する現行の利用者負担は、福祉(措置)制度と医療保険制度との間でも、また、在宅と施設の間でも不合理な格差が生じているので、この格差を是正するため、介護保険制度においては、受益に応じた負担として統一的なルールを設定することが適当である。 利用者負担の設定に当たっては、受益に応じた公平な負担という観点から、定率一割負担とすることが考えられる。」と。なお、私は、今後は、保険料や租税の賦課対象に金融資産も含めるべきだ、必要があると考えています。個人金融資産の約三分の二は高齢者に集中しており、これにより、保険料、租税収入が相当増えることが期待できます。もう一つの理念的反対理由を述べます。それは、医療には受益者負担原則を適用すべきではないと考えているからです。一般には、医療の一部負担は、医療サービスを利用した人、患者さんと、利用していない人、健康な方との公平を確保する受益者負担原則あるいは応益負担原則から説明されます。しかし、患者が医療を受けることで得る受益とは、病気から回復、改善すること、つまりマイナス状態から正常状態に近づくことであり、消費者が一般の物やサービスを利用して得るプラスの利益、満足感、経済学では効用といいます、とは全く異なります。この点については、世界的な経済学者である故宇沢弘文先生も以下のように指摘されています。医療は元々、病気、けがによって健康を喪失した人々を健康な状態に戻すという防御的な面を持つ。つまり、自分から進んで積極的に求め、享受しようという一般的な財・サービスとは異なって、喪失したものを取り戻して健康な状態への回復を求めるものであって、豊かな医療サービスを多くの人々が利用できるような医療制度を維持することは、社会的な観点からも極めて望ましいものとなると。次に、第三の、データに基づく反対理由を述べます。それは、後期高齢者の一人当たり年間医療費は九十一・九万円で、六十五歳未満の十八・八万円の四・九倍であり、仮に二割負担を導入すると、年間自己負担額は十八・四万円となり、三割負担の六十五歳未満の自己負担額五・六万円の実に三・三倍になるからです。これは高額療養費制度は考慮しない粗い計算ですが、それを考慮しても、後期高齢者の患者負担の方がはるかに多くなることに変わりありません。これではとても公平な負担とは言えません。法案では、二割負担化に関して、長期にわたり頻繁に受診が必要な外来患者について、ある程度配慮がなされていますが、法施行後三年間の時限的なものです。しかも、田村厚生労働大臣が四月十四日に答弁されたように、二割負担の対象拡大は、法改正ではなく国会の議決を必要としない政令で行えます。重要なことは、当面は配慮がなされているにもかかわらず、厚生労働省の長瀬指数を用いた推計によると、受診日数が二・六%程度減少するとの結果が得られていることです。しかし、国民、特に高齢者がコロナ危機で心理的、経済的に疲弊しているときに、高齢者を狙い撃ちにした負担増方針を打ち出せば、コロナ危機で既に生じている高齢者の医療機関の受診控えを加速し、医療機関の経営困難を更に悪化させる危険があります。なお、一部負担増による受診抑制が健康に影響を与えるとの厳密な実証研究は、日本ではまだありません。この点は、田村大臣が四月十四日に繰り返し答弁されたとおりです。ただし、その理由は単純で、日本の従来の研究では平均値の検討しかなされていないからです。それに対して、アメリカのランド研究所が一九七〇年代に連邦政府の委託を受けて行った大規模な医療保険実験では、無料医療により、最も貧困な人々や疾病のハイリスクの人々の健康状態が向上する、逆に、患者負担はこれらの人々の健康状態を悪化させるとの結果が得られています。しかし、これらの人々は調査対象の中では少数派であるため、アメリカの研究でも、平均値のみで見ると、患者負担増による健康状態の悪化は見られませんでした。ついでに言うと、同じ研究では、一部負担が多い患者は無料医療の患者に比べて入院率は低いが、入院患者のカルテを個別に調べて個々の入院の適否を評価したところ、不適切と判定された入院の割合は無料医療の場合と同じだったことも明らかにされています。つまり、患者負担の引上げによって、不適切な入院のみを減らすことはできないのです。最後に、四番目の、やはりデータに基づく反対理由を述べます。これは、私が一番強調したいことです。それは、後期高齢者の負担増のうち、現役世代の負担減に回るのは二割弱にすぎないことです。なお、私は、本資料を作った四月十七日時点では最新資料を持っていなかったので、以下に述べる数値は、昨年十二月二十三日の社会保障審議会医療保険部会に提出された参考資料一、「議論の整理(案)に関する参考資料」に基づいています。御了承願います。参考資料五ページの数値を見ると、給付費減少、後期高齢者の負担増の千九百三十億円の中心は公費千十億円で、後期高齢者支援金、現役世代の負担軽減七百四十億円より多くなっています。その上、参考資料十九ページによると、現役世代の負担軽減には本人負担だけでなく事業主、企業負担減も含まれ、本人、現役労働者負担減は三百五十億円にとどまっています。これは、給付費減少の一八・一%にすぎません。私の知る限り、現役世代の負担に事業主負担を含んだ政府の公式文書はこれが初めてです。菅首相は、常々、若い世代の負担上昇を抑えることは待ったなしと強調されていますし、私もそのお気持ちはよく理解できます。しかし、言うまでもなく、本人のうち、若い世代はごく一部です。二〇一九年の二十から六十四歳の生産年齢人口のうち、二十―二十九歳は一八・二%にすぎず、若い世代を二十から三十九歳に広げても三八・九%にとどまります。しかも、参考資料七ページによると、今回の改革案により、一人当たり支援金に対する抑制効果は一年七百円です。この約半分は事業主負担なので、本人負担減は約三百五十円。つまり、一月当たり三十円弱にすぎません。若い世代は給与水準が低いので、保険料も少なく、支援金に対する抑制効果は更に小さくなります。これではとても、若い世代の保険料を減らすとは言えません。 それに対して、自己負担が二割となる後期高齢の外来患者の一月当たり負担額は、経過措置の間でも、三十円の百倍、三千円に増えるのです。この数万円は訂正です、最大三千円です。このような後期高齢者の中でも、不幸にして病気になってしまった方に対してのみ負担を押しつけるやり方は、とても公正な負担とは言えません。私も、全世代型社会保障検討会議最終報告が書いている、若い世代は貯蓄も少なく住居費、教育費等の支出の負担も大きいという事情は深刻だと思います。しかし、これを、若い世代の保険料負担の上昇を少し、文字どおり少しですね、減らしていくことにより是正することは不可能で、若い世代の給与引上げと正規雇用化の促進、及び、住居費、教育費への公的補助、支出が不可欠と思います。今回の後期高齢者の負担増提案は、この課題から目をそらすレッドヘリング、これは専門用語です、本題から目をそらさせるための偽情報、本題からかけ離れた紛らわしい情報であり、経済学的には、公費、企業負担から高齢者負担へのコストシフティング、コストの置き換え、転嫁と言えます。厳しい言い方をすれば、若い世代はもちろん、現役世代の負担増抑制はそのためのだしに使われたと言えます。以上です。(拍手)
○とかしき委員長 ありがとうございました。次に、前葉参考人にお願いいたします。
○前葉参考人 三重県津市長の前葉泰幸でございます。全国市長会の相談役を務めさせていただいております。厚生労働委員会の先生方には、コロナ対策に全力でお取り組みくださっていることを感謝をし、また敬意を表するものでございます。私ども市長たちは、最前線で、住民の期待に応えられるよう、日々力を尽くしております。昨年の今頃を考えてみますと、住民みんなが困って戸惑っていた、そういうところと比較いたしますと、今は、助けを必要とする方々、そしてその局面、あるいはその内容が多岐にわたっており、よりきめ細かな対策を自治体独自の創意工夫により講じていくということが肝要である、このように感じております。国からは、確実な財政措置と、それから、迅速に情報をお届けくださるようお願いをする次第でございます。さて、本日、私は内閣提出第二一号に賛成する立場から意見を申し述べます。全世代型社会保障に関する議論につきましては、令和元年の骨太の方針、これにおいて、医療等の分野について、給付と負担の在り方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取組を進めるべき政策を取りまとめる、こうされたことを受けまして、同年九月の内閣総理大臣を議長とする全世代型社会保障検討会議の設置、そして令和二年十二月にはその方針が取りまとめられました。私も委員を仰せつかっております社会保障審議会医療保険部会におきまして、この検討会議と並行して、医療保険制度の改革を主に、個別具体の制度の在り方について議論を重ねてまいりました。議論の整理を十二月に部会として取りまとめましたが、政府において方針を出された、この方針の内容と私どもの医療保険部会の議論は、共に、両方を踏まえていただいたというふうに思っております。この改正案では、これらの議論の成果を具体化するために重要なお取組を進めていただくものというふうに思っておりまして、この実現に向けた政策が、丁寧かつ着実に実施されることが求められるものでございます。本改正案におきまして、後期高齢者医療制度及び国民健康保険制度に係る改正事項を中心に、意見を申し述べます。まず、窓口負担の見直しでございますが、我が国の国民医療費は増加の一途をたどっております。令和元年度の概算医療費の総計は四十三・六兆円でございましたが、このうち七十五歳以上の後期高齢者医療費は十七兆と、全体の四割近くを占めておるわけでございます。よく言われますように、二〇二五年の、団塊の世代、全て後期高齢者になるということで、更なる医療費の増嵩が見込まれており、現役世代の負担の増加は確実な状況でございます。この改正案は、課税所得二十八万円以上、年収二百万円以上の方に二割の窓口負担をお願いするものでございますが、この改正がなされた場合、二〇二五年度における後期高齢者支援金は八百四十億円の減少というふうに推計されております。これによりまして、国民健康保険や被用者保険における現役世代の保険料の負担の減少がもたらされ、持続可能で安定的な社会保障制度の維持のためにも一定の役割を果たすものというふうに思っております。この二割負担の該当者は約三百七十万人とされております。配慮規定が設けられておりまして、長期頻回受診患者の急激な負担増は一定期間、防がれるとされております。負担の引上げに際しましては、国における丁寧な周知、広報により、対象となる方々の十分な御理解を得られた上で実施されることをお願いをしたいと存じます。さて、次に、国民健康保険の中で、子供に係る国民健康保険料の均等割額の減額措置の導入を盛り込んでいただいております。国保の保険料の算定における均等割は、世帯に属する被保険者の数に応じて賦課される応益割の賦課方式でございますが、被保険者を世帯単位とする、国保ならではのものでございます。世帯の人数に応じまして保険料が増額されるということで、特にお子さんの多い多子世帯においては経済的な御負担となっているという現状がございます。少子化対策を政府として進めておられる中で、その対応が求められてきているところでございます。平成二十七年の国保法の改正の審議の際に、参議院の厚生労働委員会の附帯決議において、子供に係る均等割保険料の軽減措置について、地方創生の観点や地方からの提案も踏まえ、現行制度の趣旨や国保財政に与える影響等を考慮しながら、引き続き議論するとされており、また、昨年三月の少子化社会対策大綱においても、子供の数に応じた国民健康保険料の負担軽減を行う地方公共団体への支援の着実な実施が記述されておるところでございます。以降、国保基盤強化協議会等において、国、全国知事会、全国市長会、全国町村会の間で協議を重ねていた事項でございます。全国市長会としては、減額措置の導入は従来から要望していたものであり、その実現を歓迎するものでございます。なお、その際、都道府県四分の一、市町村四分の一となっております地方側の負担につきましては、交付税措置が確実に講じられるよう、お願いを申し上げます。厚生労働省におかれましては、今後の対象範囲の拡大について、引き続き地方側との協議の場で議論していただきますよう、重ねてお願いを申し上げます。次に、保健事業における健診情報等の活用促進について申し上げます。国保法第八十二条において、市町村は、健康教育、健康相談及び健康診査並びに健康管理及び疾病の予防に係る被保険者の自助努力についての支援その他の被保険者の健康の保持増進のために必要な事業を行うよう努めなければならないとされております。私ども保険者は、被保険者の皆様の健康づくりや生活習慣病重症化予防などといった様々な保健事業を行っておりますが、これらの保健事業の実施に当たっては、被保険者の皆様の健康状態を確実に把握することが重要となってまいります。高齢者の医療の確保に関する法律では、特定健康診査等に関する記録の提供として、第二十七条第二項で、保険者は、事業者等に対し、当該加入者に係る健康診断に関する記録の写しを提供するよう求めることができるとされており、この健康情報をもって各種保健事業を行うことが望ましいものであると認識をいたしております。そこで、国保の被保険者の構成を見ますと、自営業の方及び無職の方が大部分を占めておりますが、被用者の方も三割強を占めております。こうした方々につきまして、事業者が行う定期健康診査を受診していただいておりますため、国保保険者といたしましては、この事業主からの健診情報を国保の保健事業へ活用できると考えておりますが、特にこれまで四十歳未満の被保険者の方の健康状態の把握に難点がございました。四十歳以上の方々につきましては、事業主健診の結果を特定健診の結果として活用できるので、データの提供の法的仕組みがございましたが、特定健康診査の対象となっていない四十歳未満の方については、保険者へ提供される法的仕組みがございませんでした。このため、四十歳未満の方の健康状態の正確な実態把握が困難である、このような実情がございました。本改正案は、この課題の解決に資するものであります。四十歳未満の事業主健診情報につきましても、事業主への提供の要求が可能となるほか、その情報を保険者に集約することによって、より効率的な保健事業の実施が可能となると考えております。保険者がよりよい保健事業を実施することで、被保険者の健康が保たれ、医療費の抑制にも資するものと考えております。では、最後に、国民健康保険制度の取組の強化について申し上げます。本改正案では、都道府県の国保運営方針について、保険料の水準の平準化や財政均衡に関して、記載事項に位置づけることとされております。国保の保険料は、その自治体の医療体制や、加入者の所得状況、収納率など、地域によって様々な差異がありますことから、都道府県が示す標準保険料率を基に、各市町村が実情に応じた保険料を設定しております。しかしながら、このことは、患者にとって、同一の医療サービスを受けるのに、自治体によって保険料が異なる、こういう事象をもたらしている、このような事実がございます。国は、給付金等算定ガイドラインにおいて、将来的に同一都道府県内の保険料水準の統一を目指すこととしております。実際に、私の地元三重県におきましては、その保険料の統一に向けて、現在、暫定的な措置が講じられているところでございまして、全国でそのような取組の進展が見られつつあるところでございます。全国市長会といたしましては、従前より医療保険制度の一本化を要望しているところであり、その第一歩としては、保険料水準に差異が生じているこの現状について、一定の時間はかかるとは思いますが、徐々にならしていく必要があると考えておるところでございます。一方、平準化を進めるに当たっては、算定方式の統一、あるいは事務の標準化など多くの課題があります。その中で、特に一般会計からの法定外繰入れの解消が課題に挙げられております。これは、国保の赤字を補填するために一般会計から国保会計に繰り入れるものでございます。理由は、国保の被保険者は、比較的所得が低い加入者が多い、高齢者が多く、医療費が被用者保険に比べて高額であるなど、国保が抱える構造的な課題がございます。法定外繰入れは、二〇一四年度は、千百十二の市町村で三千四百六十八億実施をしておりましたが、二〇一八年度には、三百五十四に市町村数は減り、額も一千二百五十八億と約三分の一まで減少しており、私ども保険者といたしましては、着実にその成果が表れているところでございます。ただ、これは、一般会計から繰り入れますと、市町村民の税金でもって国保会計をカバーするということになりますので、引き続き適切ではないという認識をいたしております。そこで、今回この法律案で規定される、都道府県の国保運営方針への保険料水準等に関する記載ということでございますが、都道府県によっては既にその記載がされているところもございます。三重県の国保運営方針では、保険料水準の統一に向けた考え方として、被保険者の負担の公平性から、保険料の統一を目指すとはっきりと明記されておりまして、将来的な統一に向けた本格的な議論を進めるための準備として、保険料の算定方式を含めた統一の定義や前提条件等の考え方や課題を整理していく、このように定められているところでございます。また、赤字の削減、解消の取組については、赤字が発生した市町は、五年以内を目標に赤字削減、解消計画を策定し、その取組状況や改善結果を連携会議で報告するものとされております。他の都道府県の国保運営方針におきましても、保険料水準の統一に向けた、それぞれの地域の実情に応じた対策について記述がなされております。私ども保険者といたしましては、保険料水準の統一の実現に向けて様々な課題を解決していく必要があると認識をいたしておりますが、引き続き、国からの御支援、そして国との協議の中で、取組の継続的な進捗を図ってまいりたい、このように考えております。以上、意見を申し上げましたが、本改正案につきましては、少子高齢化の進む我が国において、社会保障制度を持続可能なものとしていくために不可欠なものであると考えており、私ども自治体といたしましても、国民皆保険制度の最後のとりでである国民健康保険制度を担う者として、引き続き、その安定的な運営に努めてまいる所存でございます。また、本改正案が施行された後も、我が国の少子高齢化は進展してまいります。国において、今後も継続的な検証と見直しをお願いをしたいと存じます。以上で意見の発表を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○とかしき委員長 ありがとうございました。次に、住江参考人にお願いいたします。
○住江参考人 全国保険医団体連合会と申しまして、地域の第一線の医療機関で働く医科、歯科の保険医の団体でございます。常日頃、地域で、国民、患者さんの命、健康に携わらせていただいております。本日、こういう陳述の機会を与えていただいたことに厚く感謝を申し上げます。私どもとしては、今回の健保法一部改定案についての後期高齢者窓口負担二割化、この問題について反対の立場で意見陳述させていただきます。まず、一国民として。今、コロナ禍で生活困難にあえぐ国民に、ショックドクトリンとばかりに更なる負担増を強いることなんでしょうか。ショックドクトリンの本質は、新自由主義の狙う変革は危機状況によってのみ可能となるというフリードマンの言葉でありますけれども、であり、まさに更に大企業、富裕層に富を集積せんがための国民、働く人々への搾取、収奪そのものであると考えております。こんな暴挙が、コロナ禍という未曽有の困難に瀕する国民に強いること自体、許されるものではありません。今こそ、このコロナ禍で露呈された日本の社会保障制度の脆弱さ、所得再分配機能の脆弱さを二一年度予算で一歩でも二歩でも取り返すことこそ求められるところではないでしょうか。二ページに。次に、医療者の立場から述べさせていただきます。高齢者負担増反対でございます。一つ。四十年来の新自由主義政治、経済、財政運営による日本の社会保障制度、所得再分配機能の脆弱さがこのコロナ禍で一層あらわになりました。この脆弱性克服のために二〇二一年度予算で改善の道をつくることこそ求められているはずです。そもそも所得再分配は、働く人々の長年の血のにじむような不屈の闘い、運動によってかち取ってきた人類史上の財産でございます。時の政府の都合によって改変されることがあってはなりません。脆弱さがあれば、更なる改悪をすることではなく、まず是正することこそが求められるところではないでしょうか。二番目に、医療に求められているのは、常に早期発見、早期診断、早期治療による安全、安心でございます。負担増による受診抑制、治療中断はこれをことごとく困難にします。医療本来の在り方からすれば真逆の制度設計と言わざるを得ません。三ページをお開きいただきたい。今回のこの負担増について応能負担とも言われますけれども、応能負担は窓口負担に求めるのではなく、税金、保険料に求めるべしでございます。この税金、保険料が正しく、負担が公平なものになっているのかどうかというところが問題です。大企業や富裕層の税と社会保険料負担の是正こそが、何よりも求められるところではないでしょうか。高齢者にとっては原則一割負担の今でも高い窓口負担となっております。年収に対する窓口負担が占める割合は現役世代の二から六倍に近い負担になっております。この棒グラフ、見ていただくのは、左が一人当たり年間収入の棒グラフです。当然、高齢になっていくほど少なくなっていきます。右の棒グラフ、一人当たり年間収入に対する患者一部負担の比率を表した棒グラフです。ですから、高齢になるほど、複数科受診、そしてまた重症化、そして医療の高度化によって、やはり収入に対しての比率で見ますと現役世代の二から六倍の負担になっているということを表しております。続きまして、四ページ。既に年間三百八十三万以上は三割負担でございます。二割負担となるのは、中低所得となる年収二百万から三百八十三万未満の方々の三百七十万人でございます。そもそも二百万以上とは法案には明記されておりません。対象は政令で決めるとなっております、国会審議はなく。ですから、対象年収の引下げは、やはり必至と考えざるを得ません。この棒グラフです。七十五歳以上個人の年収額の分布です。平均値は百六十六万、中央値は百三十万、こういう実態なんです。能力に応じた負担というが、負担増の対象となるのは圧倒的多数を占める中低所得者ということを御理解いただきたい。また、政府の言い分として、せんだって田村厚労大臣が述べられました。年収二百万の方々の家計調査によると、年間十二万円の余裕がある、だから今回の負担をお願いする。しかし、考えていただきたい。十二万円の余裕なんか、一回入院でもしたらそれこそ吹っ飛んでしまう額なんです。この額でいうならば、後でも述べますけれども、本当に、やはり、日本の社会保障制度に対する、社会保障給付費に対する公費負担、そして企業負担の少なさ、そこらを是正していただくことが大事です。また、高齢者は結構な資産を有しているとも言われます。これは、個人個人、その時々の政府の評価を受けての結果なんです。これに対して懲罰的に課税強化をレトロスペクティブに強めるということは、これは税制上あってはならないことだと思っております。次、五ページ。高齢者の生活に負担増を受け止める余裕は、もう既に、今までのデータでも明らかだと思うんですけれども、世帯主が七十五歳から七十九歳の無職の夫婦世帯、平均では、月収入二十三・三万円に対して月支出が二十五・五万円。既に二・二万円の赤字。これはどこから捻出されているかというと、貯蓄から切り崩されている。しかし、その貯蓄ゼロの高齢世帯、二割ございます。こういう厳しい中で本当に今の負担増がいいのか、本当に考えていただきたいと思っております。次、六ページ。最後になりますけれども、日本の今、社会保障費、対GDP比で見ますと二二%、約百二十兆円。しかし、フランスで見ますと三二%。一〇ポイント少ないんです。ということは、五十五兆円。その内訳は、国民負担はほとんど一緒です、フランスと。三%分少ないのは、公費負担、十六・五兆円。企業負担は七%少ない、三十八・五兆円。やはり、ここらを是正していただくことこそが喫緊の課題だと思います。最後に、私どもの国会請願署名とか、そしてまたクイズキャンペーン、そういうところで、患者さんからの生の声をいただいております。ちょっと紹介させていただきます。高齢者、当事者からです。これ以上医療費が増えると安心して病院に行けなくなります。生活費も考えなくてはならなくなります。年金は減っていく。消費税は上がる。医療と介護の負担は増える。年寄りは長生きするなと言われているようだ。年金だけでは、これから先、体が弱り、ますます病院通いが増えるのに、生活できなくなります。国はもっと、年金生活者の心細さを知ってほしい。年金収入のみで七十五歳からやっと医療費が一割になると期待していましたが、二割負担では年々減っていく年金収入に占める割合が大きくなります。まともに受診できなくなるばかりです。そしてまた、現役世代からも声が寄せられております。高齢の親がいるので医療負担が大きくなると、私の負担に不安が出てきます。年齢を重ねるたびに医療費の負担が重くなっていくのに、更に負担を増やすことに不安しかありません。給料が下がる中、高齢の親を持つ者として、医療費や介護保険利用料のアップは、大変な負担になります。いずれは私自身の受診も控えなくてはいけなくなるのでは。一割負担は維持の方向でお願いしたいです。そして、このコロナ禍であえて負担増を強いられることについて。この時期に医療費二割負担を宣言する政府の冷酷さに唖然とします。コロナの流行で国の方針が明確に見えたと思います。弱者を切り捨てる政府に対しては怒りが止まりません。コロナの影響で、生活が苦しくなる一方で、窓口負担がこれ以上増えると、病気になっても、診療が受けられなくなる。コロナでも診療機関へ受診しづらいのにますます受けにくくなって、年金暮らしをしている方は、飢え死にする方も増えてくるのではないでしょうか。国民の収入は減っているのに、医療費が高くなって、治療を受けたいけれども受けられない人々が多くなるのは反対です。まずは新型コロナ対策を早く行い、感染拡大を防ぐ。病気の人から多くの負担金をという考えは、弱い者いじめではないでしょうか。以上、本当に国民の切なる願い、切実な声に是非とも寄り添っていただいて、何事も慎重な審議、そしてやはり、この今の時期に患者負担増、高齢者負担増ということはやってはならない、そういう立場で意見陳述させていただきました。何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)
○とかしき委員長 ありがとうございました。以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
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○とかしき委員長 これより参考人に対する質疑を行います。質疑の申出がありますので、順次これを許します。大串正樹君。
○大串(正)委員 自由民主党の大串正樹でございます。参考人の四名の皆様、本当に御多用の中、御出席いただきましてありがとうございました。大変有用な御意見をいただけたなというふうに思っております。本当はそれぞれの皆様にじっくりとお伺いしたいところでありますが、時間の制約がございますのでお伺いできない方がいらっしゃるかもしれません。その節は御容赦いただきたいと思います。これまでにも、この委員のメンバーの中で議論をさせていただいたり、それぞれの党の中でもこの問題を非常に議論させていただいたわけでありますが、後期高齢者の窓口負担割合の見直しというところは非常に大きな政策の課題ではあろうかというふうに思います。現役世代の負担を軽減しなければいけないという問題意識は皆さん共有できているとは思いますけれども、そのやり方とか中身についてはいろいろな意見があろうかと思います。我々、議員をやっていますと、いろいろな方々から御意見をいただくこともあって、多分ここにいらっしゃる委員のメンバーも皆さんそうですけれども、ちょっと、新聞の見出し等を見て、高齢者全員が二割負担にされちゃうんじゃないかとか、過度に誤解をされている方がたくさんいらっしゃって、実際、この中身は、所得水準にしっかり配慮されたりとか、負担増への配慮とか、かなりきめ細かく丁寧に配慮されているというのが事実でありまして、やや複雑ではあるので、新聞の見出しだけ見てすぐに理解はしにくいのかもしれないですし、また、併せて、既存のいろいろな制度、高額療養費制度であるとか、しっかりと、経済的に厳しくても医療が受けられなくなるということがないような十分な配慮がなされている方式であろうかというふうに思いますが、この辺は、やはり広報とか、皆様方の理解をしっかりといただくというのが大変重要かと思います。そこで、健保連の佐野参考人にちょっとお伺いいたしますけれども、やはり、そういった関わりを持たれている立場からも、広報ということ、どういうふうに周知していくか、若干、厚労省にもいろいろ私はお願いしているんですけれども、厚労省はなかなか広報が上手ではない省庁でもございますので、健保連の方で、一体どういった周知の仕方ができるか、工夫ができるか、もし御知見があれば教えていただきたいと思います。
○佐野参考人 ありがとうございます。今、大串先生がおっしゃったように、やはり制度の広報というのは極めて重要だと思っております。特に、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、元々、医療保険制度にはいわゆる高額療養費の上限というものがあって、特に、入院された方等については余り影響がないですとか、さらに、今回の改正においても、対象となっている方は一定以上の所得の方ということで限られております。さらに、配慮措置というものが設けられて激変緩和的なことも入っておりますので、この辺を含めて、負担が一律で二倍になるものではないということも含めた広報は大変重要だと思っております。私ども健保連も余り周知、広報が得意な方ではございませんので、なかなか耳の痛い部分もございますけれども、ここは、私ども保険者もそうですし、国、厚生労働省の方とも連携をして、より周知、広報に努めてまいりたいというふうに考えております。以上でございます。
○大串(正)委員 ありがとうございます。是非、皆さんに分かりやすく、そしてしっかりと理解をしていただけるのがありがたいなというふうに思っております。また、これまでの議論を、また、皆様方の御意見を伺っている中で、ちょっと気になるというか、議論の中心となっているのは受診控えの問題でございまして、この制度によって本当に必要な医療を受けなくなってしまうようなことがあっては、これはあってはならないということでございます。実は、そうはいいましても、急を要するような受診というのは、恐らく皆さん、例えば痛みが止まらないような場合はそれは控えることは多分ないと思いますし、実際、私の地元で、コロナのクラスターが発生した病院で受診控えが風評被害もあって多少起こっているという話を伺ったときに、一番減っているのが、例えば白内障の手術であるとか、あと、大腿骨の人工骨の入替えの手術とか、必要なんだけれども急を要さないものを皆さん先送りされているというケースがあったりとか。ですから、長瀬効果の話とかいろいろあるんですけれども、もう少し精緻に見ると、本当に控えているのか、あるいは少し先へ送っているのか、あるいは場合によっては、いろいろな知識を身につけられてセルフメディケーションで対応している場面もあったりとか、いろいろな多様な選択肢が今は増えている時代でもありますので、そちらの方に移行しているのではないかなというふうに考えてもいいのかなというふうに思うんです。そういった部分で、健保連であれば、そういういろいろな受診の情報とかデータをたくさんお持ちでありますので、今後も、私も党内でデータヘルスのことを関わらせていただいているんですけれども、データヘルスの推進の立場からも、そういった積極的なデータの利活用を進めていただければありがたいなと思うんですけれども、今後のデータの利活用についての御所見があればお聞かせいただきたいと思います。
○佐野参考人 ありがとうございます。確かに、先生おっしゃるとおり、受診控えということについての具体的な、どういうことが起こっているのかというのはなかなか把握はしにくい部分であろうかと思います。ただ、一方で、今先生がおっしゃったように、今後、医療の在り方を考えた場合においては、やはり当然、病気にならないような健康管理に努めて、例えば健診によって早期に病気を発見していく、こういった取組が大変重要であるというふうに考えております。そういう意味で、受診においても、かかりつけ医等を活用した適切な受診行動、この促進は極めて重要であるというふうに考えております。今、既に政府の方でも整備はされていますけれども、PHRのデータ等の利活用につきましても、やはり今後大きな力になっていくというふうに考えておりますし、私ども健保連としてもこれについては期待をしております。そういう面で、データをいかに使うかということも我々にとっても課題だと思っておりますし、また、加入者の意識変化といいますか、そういったことも含めて御支援申し上げていきたい。健保組合というのは、御存じのとおり、事業主や被保険者との距離の近さ、これが最大の強みでございますので、こういったことも含めて保険者機能をより一層発揮する、こういうふうにしてまいりたいというふうに思っております。ありがとうございました。
○大串(正)委員 ありがとうございました。このデータの利活用の話ですけれども、自治体の方では、前葉参考人もお越しいただいているので少しお伺いしたいですけれども、こういう医療に係るデータをいろいろな形で利用できるようになれば、やはり自治体としても大きなメリットがあるのではないかな。特に、健康増進ということを標榜しなければいけない自治体でありますので、また同時に、市民のいろんな窓口、クレームもあるでしょうし、いろんな要望も寄せられる中で、そういったデータの利活用ができることによって、自治体のメリットというか、そういう要望とか、もしあればお聞かせいただきたいと思います。
○前葉参考人 御指摘のように、予防していくということについて、保健、医療のデータをしっかりと活用していくというのはとても大切なことでございまして、実際に我々もそのように実施をいたしております。例えば、糖尿病を重症化を予防していくとかいうようなことについて、しっかりと医療のデータを保健、予防に生かしていくということが大切であろうかというふうに思っております。保健、医療、介護の一体的な実施の中で、委員おっしゃったようなデータの利用をこれからもしっかり現場で進めてまいりたいと思っております。
○大串(正)委員 ありがとうございます。そういう時代になりつつある中で今回の改正もあるというふうに思っております。やはり、今回、どうしても財政の話に視点が寄りがちなんですけれども、私自身は、コロナのいろんな状況を見て、医療との関わり方が大きく変わっていく一つの過程の中で捉えた方がいいのではないかなというふうに思っておりまして、例えば、今回、コロナ禍で小児科とか耳鼻科の受診控えがすごくあって医療経営も厳しくなっているというデータもあるわけでありますけれども、そういった中身をいろいろ分析しながら、コロナの時代で一体どうやって医療をしっかりと地域の中でより機能的にしていくのかという視点がやはり必要ではないかなというふうに思っておりまして、ですから、財政の話だけではなくて、受診の在り方が変わっていく時代の中で我々はどう考えていくか。例えばかかりつけ医機能をしっかりと強化していくとか、あとは、健診の受診率というのを向上させて、あくまでも今回の改革は、健診をしっかり受けていただいて、自己の健康管理も含めたセットの改革でなければいけないのではないかなというふうに思っておりますが、なかなか健診の受診率が上がりにくいと思いますので、ここはちょっと健保組合の佐野参考人に、まずは健診のデータというのをどうやって蓄積しながら、そして、自分で考える機会をどうやってつくっていくかということについて、もし御所見があればお願いしたいと思います。
○佐野参考人 ありがとうございます。私自身も、先生おっしゃるとおり、やはり医療との関わり方が大きく変わっていくというのをまさに感じております。特に、コロナ禍ということを経て各国民の皆さんの受診行動が大きく変わりつつあると思いますので、そういう点では、やはり、いわゆる上手な医療のかかり方という部分についても今後より強めていく必要があると思っています。そういった中で、もう一つは、健康増進若しくは疾病予防という観点を含めても健診というものが極めて重要であると思っていますので、国の方のいろんな目標に沿って、私ども、健診受診率は着実にアップはしておりますけれども、やはりまだ不十分な部分もあろうかと思いますので、ここについては、まさに、各国民の皆さんの受診行動若しくは健康に対する意識、行動変革をいかに進めていくのかという観点も含めて、更に努力をしてまいりたいというふうに思っております。 ありがとうございました。
○大串(正)委員 ありがとうございます。佐野参考人が御説明いただいた次期改革への取組の最後のところに、適切な受診行動の促進という、まさに我々というか国民全員が医療に対する意識改革も必要だと思いますので、そういった意味で、冒頭お話しした広報であったり教育、そういったところも考えていかなければいけないなというふうに思っております。時間もあれなので、最後に前葉市長にもう一回ちょっとお伺いしたいと思います。健診の受診率なんですけれども、やはりどうしても国保の受診率というのはなかなか上げるのが難しい。現場で多分いろいろ御苦労されていると思いますけれども、受診率を上げるのが難しい。特に、先ほどお話しいただいた四十歳以下が非常に難しいという話も伺っておりますが、今後、具体的に、もし、取組の方法として、健診の受診率を上げるとか、あるいは、先ほど佐野委員がお話しになったような、適切な受診行動を取れるような地域としての健康教育の在り方とか、あるいは広報の仕方も冒頭ありましたけれども、そういうものも含めて取組があれば教えていただきたいと思います。
○前葉参考人 健診を受けていただくように私も御案内するわけですけれども、なかなか、忙しいとか、あるいはおっくうだとかいうことで、受けていただけないケースがございます。その場合、もう一度はがきで勧奨して、さらにはコールセンターから電話をしたりということでお勧めをいたしております。そのような一つ一つの努力に加えて、やはり、健診を受けていただくことが疾病の予防につながっているということを啓発していくということも大切だと思いますので、ミクロの話とマクロの話、両方をこれからもしっかりと進めてまいりたいと思っています。
○大串(正)委員 ありがとうございます。一般の健診もありますし、がん検診もありますので、いろいろな疾病の予防にこれから動きができていけばいいなというふうに思っておりますので、また引き続き皆様のお知恵をおかりできればと思います。 今日は時間の関係でほかの二名の方にお伺いできなくて大変恐縮でございますが、これで質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。
○とかしき委員長 次に、中島克仁君。
○中島委員 立憲民主党の中島克仁です。本日は、大変お忙しい中、四人の参考人の皆様には、厚生労働委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれの立場での御意見、陳述内容は大変興味深く拝聴させていただきました。 限られた時間ではございますが、私からも御質問させていただきたいと思います。時間の関係で全ての参考人にお尋ねできないかもしれませんが、御容赦願いたいと思います。団塊の世代が後期高齢者となる二〇二五年問題、これを間近に控えて、現役世代の負担軽減を図らなければならない、こういった思いは我々も強く感じているところでありますし、制度の持続性も大事な部分であるということは十分共有されていることと思います。しかし、今回、政府より提出、審議されている内容がそれに本当に資するものなのか、また、現在は、新型コロナウイルス感染症の長期化、現在進行形、また今後の見通しも予断を許さない状況下において、後期高齢者の窓口負担を引き上げることがどのような影響を及ぼすのか、大変懸念があるところであります。まず、二木参考人にお尋ねをしたいと思いますが、政府案の後期高齢者窓口負担の引上げについて、先ほど、理念またデータに基づいて四点のポイントを挙げられました。この四点のポイントは全てつながっていることだとは思いますが、特に、一点目に挙げられた、応能負担原則は保険料や租税負担にのみ適用されるということについて、なぜそうでなければならないのか、もう少し詳しく御説明いただきたいのと、また、その原則が崩れた場合、どのようなことが懸念されるのか、お尋ねをしたいと思います。
○二木参考人 お答えします。先ほどのお話で述べましたけれども、応能負担原則は保険料、租税で適用されるということは、何も私が個人的に言っているのではありませんで、厚生労働省も政府もつい最近まで言っていたんです。先ほど介護保険の例を出しましたね。だから、逆に、それが崩れたらどうなるかということが私はすごく心配しているのですね。応能負担は、お金持ちにたくさん負担してもらいましょうということですけれども、あくまでも租税とか保険料に限定する。逆に、それを崩すと、今回みたいに、今回はまだちょこっとですけれども、利用料にも負担するとなると、お金持ちが二重払いになっちゃうんですね。応能負担の一番大事な点は、租税や保険料はお金持ちがたくさん払うけれども、実際のサービスはみんな平等に受けるというのが大原則だけれども、それが崩れたら、お金持ちは、租税や保険料もたくさん払うのに、利用料もたくさん払うとなると、これは二重取りということで不満が出てきちゃうわけですね。そして、応能負担がなぜ大事かというと、お金持ちがたくさん払ってもらって国民全体でプールするということですけれども、その原則が崩れると、お金持ちの社会保険に対する不満、恨みが強くなって、例えば、ドイツのようにお金持ちは別にしようとか、あるいは、利用料を払うんだったら自腹で払った方がいいやということで、保険分を縮小して、あと、お金のある人で自由になる医療を増やすとか、そういうことが起こって、国民皆保険の一番の理念である国民連帯、それが崩れる。私はそれが一番困ると思いますよ。よろしいでしょうか。
○中島委員 ありがとうございます。応能負担原則、これが崩れると国民連帯に影響するという話、大変現実感がある話だと思います。一方で、立憲民主党案では、保険料の賦課限度額を引き上げることで、後期高齢者の中で特に高所得の方に負担をお願いすることによって、公費と併せて、政府案と同程度の現役世代への負担を軽減できるとしています。二木参考人と住江参考人にお尋ねをしたいと思うんですが、端的に、この立憲民主党案に対する評価、お願いをしたいと思います。
○二木参考人 まず最初におわびします。先ほどの十五分の陳述のときには、時間がなかったので、立憲民主党案に全然触れられなかったこと、それは大変申し訳ありませんでした。その上で、事前に読ませていただきましたけれども、立憲民主党案は、患者の一部負担を増やすんじゃなくて、保険料の賦課限度額を上げて高額所得者の保険料負担を少し増やすという方向は、社会保険の原理に極めて沿って、真っ当な提案だと思います。要するに、政府案、先ほども言いましたけれども、病気の人に集中的に負担してもらうというよりも、病気があろうがなかろうが、つまり、患者さんであろうが健康な人であろうが、負担を分かち合うということはすごく大事だと思っています。ただ、民主党の提案はあくまでも短期対策ですよね。これをはっきり書いていて、私はそれでいいと思うんですけれども、私自身は、将来的には、高齢者も非高齢者も含めて、先ほど言いましたけれども、金融資産の問題も含めて、応能負担の原則から保険料、租税の負担引上げが必要だと思っています。ただ、今、コロナの危機で、やることは不可能ですから、それはあくまでもコロナ危機が終息した後で。ですから、当面の対策としては、お金持ちの高齢者の保険料を増やすだけではちょっと足らないみたいだから、臨時的に国庫負担増で補うというのは、緊急避難的には当然だと思います。以上です。
○住江参考人 どうもありがとうございます。私どもとしても、今回の立憲民主党の提案について、一つ、一割堅持、そして二点目に、賦課限度額引上げ、そして三点目に、中低所得者の保険料引下げ、これは大きく評価させていただいています。よくぞ出していただいたと感謝申し上げます。以上です。
○中島委員 ありがとうございます。ちょっと時間もないのでどんどん進んでまいりますが、政府案に対して、立憲民主党案に対しての、今、評価をいただきました。先ほど住江参考人も、その他の参考人の方からも、現在、新型コロナウイルス感染症の長期化によってただでさえ受診控えが生じている状況で、必要な医療が受けられなくなるのではないかということも大変懸念されているわけであります。新型コロナウイルス感染症の長期化の中で、窓口負担を引き上げることによる後期高齢者の方の健康被害、例えば認知症の悪化、介護度の重度化への影響、これは大変懸念されることだと思うんですが、これも二木参考人、住江参考人に一言ずつお尋ねをしたいと思います。
○二木参考人 私、先ほどの陳述でも述べましたけれども、この問題は、自己負担の拡大による受診の抑制と、その受診がどの程度健康被害を与えるかというふうに、二段階に分けて考えた方がいいと思います。まず、受診の抑制に関しては間違いなく起きますが、その場合、特に受診が大きく下がるのは低所得者です。これは日本でもデータがあります。全国データで一番有名なのは、一九八四年に健康保険法抜本改革が行われまして、それまでは健康保険の本人の自己負担はなかったんですね、原則無料だった。それが一割負担が導入されたんですが、それから一年たったらどんなことが起きたか。社会的に一番弱い立場にある、今はありませんが、日雇労働者健康保険の受診率は何と二〇%も、一年たってですよ、下がったままなんですね。ですから、弱い人々に集中的に受診控えが起こるということは、これは日本のデータでも証明されています。それに対して、受診控えが健康悪化をするかどうかという点に関しては、日本では厳密な調査報告はありません。この点では、四月十四日、長妻議員と田村厚生労働大臣との議論で大臣がおっしゃったことは決して間違いではありません。だけれども、先ほど言いましたように、日本でないのはデータがないということで、存在がないということじゃないわけですね。平均値だけで見ると、病気がべらぼうに重い人とかべらぼうに貧しい人というのは少数派なんです。だから、平均値を取っちゃうとそれが見えなくなっちゃうということで、アメリカのランド研究所の例を話したんですね。ですから、もし日本でそういう自己負担を増やすということをやるのであれば、それに併せて、自己負担の受診率に与える影響は割と簡単に出ます。健康状態に与える影響もきちんと調査してやらないと、何か答弁を見ていたら、健康状態への影響は分かりませんと言っていますよね。分からないんじゃ困るので、その調査をしっかりやるということをやはり政府は約束すべきだと私は思います。
○住江参考人 どうも御質問ありがとうございました。実は、この新自由主義政治、経済、財政運営によって、以前から経済的な理由で受診控えというのは現実にずっとありました。私ども、五年前に全国で、受診控え、治療中断事例があるかという調査をいたしました。医科では三五%の診療所の先生方が経験がある、歯科では五五%、現実にそういう数字が五年前時点でございました。そこへ、一昨年の消費税増税、そして昨年からのコロナ禍。コロナ禍については、医療機関に行くと感染が広がるということで、そういうこともありますけれども、コロナ禍でやはり経済的な理由もございます、こういうところでの受診控えがずっとあります。ですから、この受診控えが何をもたらすかということは、内科的な疾患でしたら認知症、そして慢性疾患、糖尿病の悪化。特に認知症の方々は切実でございます。社会的な活動抑制によって更にこもってしまう、そういうところ。そして、歯科では歯周病の悪化。そういうところが顕著に表れてきております。やはり、この受診控え、治療中断、これは本当に切実な問題でして、それがひいては、今の低医療費政策、低診療報酬政策、社会保障費抑制政策によって医療機関の経営もかつかつの線で経営せざるを得ないという状況。その中に、今回のそういう受診抑制、治療中断事例。これも、皆保険制度そして医療の非営利を守るためにも、そこに適切な財政援助、支援というのは必要だと思っております。よろしくお願いしたいと思います。
○中島委員 ありがとうございます。やはり、患者さんに窓口での負担引上げを求める以上、その健康への被害、政府としてしっかりデータを示すべきだということは非常に我々も共感するところでございます。時間もございませんので、最後に佐野参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。健保連の、様々、少子高齢化、またコロナにおける状況を先ほども御説明いただいて、非常に過大という状況だと思うんですが、今回、後期高齢者二割負担については着実に推進すべきというお考えということで先ほどお伺いをいたしましたが、この次期改革への取組の部分について、後期高齢者の保険料設定の在り方ということ、先ほどの資料にもお示しがあったわけでございますが、やはり、新型コロナウイルス感染症の見通しが立たない現状においても、この保険料設定の在り方、先ほどお二人の参考人にお尋ねしたんですが、我々の賦課限度額の引上げによる考え方について、佐野参考人の御見解をお伺いしたいと思います。
○佐野参考人 ありがとうございます。私どもとしても、今回立憲民主党さんが提案されています後期高齢者の保険料負担、後期高齢者の負担率を見直すということは、一つの考え方としては当然あり得るというふうに思っております。ただ、一方で、保険料負担の見直しを行えば自己負担の見直しをしなくてもいいのかということには、それはならないというふうに考えております。先ほど来、後期高齢者支援金の負担増の状況についても御説明いたしましたけれども、やはり今後の二〇二二年度以降のことを考えますと、現役世代の負担増というのは危機的な状況にあると思っております。そういう意味では、やはり、時間との闘いということも含めて、このタイミングで二割負担の導入、これを実施していただかなければいけないと思っております。その上で、現役世代の更なる負担軽減に向けた取組、この中には後期高齢者の方の保険料負担の在り方も含めて、次期改革の中で御検討いただきたい、こういうふうに思っております。以上でございます。
○中島委員 時間の関係で前葉参考人にお尋ねできなかったことはおわびを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
○とかしき委員長 次に、伊佐進一君。
○伊佐委員 公明党の伊佐進一です。四人の参考人の皆様、お忙しい中、今日は、お越しいただきまして有益な話をいただきまして、ありがとうございます。それじゃ、私の方からは、前葉参考人から質問させていただきたいというふうに思います。今、本当に、地域でこれだけ医療が逼迫しているという状況の中で、全力で各現場、首長さん、自治体、やっていただいていると思います。こんな状況で健康保険法を議論している場合かというようなお声があって、まさしく自治体、首長の皆さんは当事者でいらっしゃいますから、今、医療提供もさることながら、ワクチン接種もあったりとか、様々大変な中で、今、同時に、しかし我々は、日本の医療にとっても、この法案も待ったなしなんだという思いでやらせていただいております。まず、前葉参考人に伺いたいのは、現場も本当にいろいろ様々大変な中で、それでもこの法改正の議論を今やっている、今やるべきなんだと感じていらっしゃるかどうか、質問したいと思います。
○前葉参考人 コロナの対応というのは、それはそれで、目の前、一生懸命やらなければいけませんし、それを住民の方々は非常に大きく期待なさっているというのは、我々も日々感じております。一方で、この社会保障の仕組みを持続可能なものにしていくということも、それも大切なことでございますし、実際、高齢者の皆さんとお話をしていても、それはやはり一定の、孫の世代にまで引き継いでいけるような仕組みを整えなければいけない、そのために一定の負担をしなければいけないことはよく分かっているんだというような議論を、コロナ禍においても聞かせていただいております。したがって、この今回の法案が、ずっと長い流れの中で積み重ねられてきて今形になっているものであるとすれば、それは、コロナがあるからといって、今先送りにするのは大変難しいと思いますし、そのことは住民の皆さんにも広く御理解をいただいているものというふうに認識しております。
○伊佐委員 ありがとうございます。次に、この法案の中で大きな争点の一つであります高齢者の窓口二割負担という点で質問させていただきます。佐野参考人に伺います。今回、給付は高齢者中心で負担は現役中心、こういう今までの社会保障構造というのを見直すんだという大きな一歩だというふうに思っております。その中で、先ほど参考人の方からも指摘がありました、いやいや、若者の負担軽減というのは限られているんだ、そんなに大したものじゃないんじゃないか、むしろ、若者の負担軽減よりも国費の軽減の方が大きい、国のためなんじゃないかというような御指摘もありますが、それに対しての御意見をいただければと思います。
○佐野参考人 ありがとうございます。元々、やはり給付と負担のアンバランスが生じているということは先ほども御説明したとおりでございまして、特に世代間のアンバランスが激しいという中で、現役世代の負担軽減を図るということが極めて重要なのは言うまでもないと思います。一方で、現在の後期高齢者の負担については、公費が五で現役世代の保険料は四で高齢者自身が一という負担割合になっていますので、全体としてのバランスを取っていくときには公費の方も減っていくという構造にはなると思います。これは、現役世代だけを減らすというのはなかなか難しいんですが、今の仕組みの中ではそうなっているというふうに認識をしておりますし、その中でのやはり現役世代の負担軽減、これについての取組を是非やっていただきたいというふうに思っております。以上です。
○伊佐委員 これは私自身は、今これだけ減りますというのが面積でずっと積もり積もって利いてくるので、今やらないと、より若い世代の将来負担は増えていく、後からやると、よりコストがかかるということだというふうに理解しております。また、国費といっても、国費というのは結局、次世代へのツケ回しで国費を出しているわけですので、これも若い世代のためなんだというふうに私自身は理解をしております。二木参考人に伺いたいと思います。四点指摘をしていただいて、非常に勉強になりました。その中で、少し疑問に思ったことがございまして、それは、保険料とか租税負担を応能でするのは理解ができる、ただ、サービスを受ける場合に、その受けた際には平等であるべきだ、そこは応能にすべきじゃないという御意見だったと思います。少し、ちょっと私、疑問に感じて、分からなかったのは、二木参考人の御意見としては、例えば、今、高齢者の皆さんの中でも現役並み所得の方は三割になっております。これもやはりすべきじゃないという御意見かどうかということと同時に、若い方々も高齢者も受益が同じなんだという点ですれば、ここは、二木参考人の御意見としては、若者も高齢者も同じ窓口負担にすべきだという御意見かどうか、確認させていただければと思います。
○二木参考人 二点の御質問にお答えします。一点目は、御指摘のとおりです。私は、お金持ちの高齢者の窓口三割を提案がされたときから反対しております。それは活字に書いております。それから、二番目の御質問、これはすごく大事な点だと思います。先ほども言いましたけれども、若い人で、特に非正規の人たちの、大変な状況にあるわけですね。それが三割負担というのはむごい話だと思います。という点で、もしそのむごい話があるとしたら、多分同じ御意見だと思うんですけれども、その人たちの負担を、窓口負担を減らすという案を出されるべきで、先ほど言いましたね、若い人もお年寄りも全部合わせると本人の負担は一月三十円しか安くならない、若い人は多分十五円ぐらいじゃないですか。そんなことをやるよりは、その若く貧しい人の窓口負担割合、三割を変えれば、下げればいいだけの話だと思います。さらにこれは、いやいや、夢の物語ですけれども、先ほどの二番目の反対理由で言いましたけれども、医療を受ける利益というのは普通の受益と違うので、マイナスをぎりぎりプラスに近い状態に持っていくんだから、私は、究極的には、自己負担は全年齢によらず無料にするのが一番筋としては整っております。それが政治的にできるかどうかは別ですけれどもね。ですから、若い人が大変だからお年寄りを増やすんじゃなくて、若い人が大変だったら若い人の窓口負担を減らす、これが一番、受診抑制を取っ払う上で意味があると思います。以上です。
○伊佐委員 ありがとうございます。もう少しちょっと突っ込んで伺いたいと思うんですが、そうすると、サービスを受ける際には平等にしますということになると、恐らく、どこかで、じゃ、誰かが何かを負担しなきゃいけない。その際には、じゃ、保険料、租税であれば応能負担が可能なのでと、ここに全部集中させると、かなりここに格差が出てくるんじゃないかというふうに思っています。格差というのは、つまり、今までだったらこれぐらいで済んでいたものが、より負担が増えていく。ここだけ、保険料だけが、物すごく負担する方とそうじゃない方という、ここが差が出てくるということで、保険料、租税だけに集中させるとかなり膨大に負担する方も出てくるということになれば、さっきも議員の質問でもありました、保険にはやはり一体感が必要なんだと。ここの部分でもバランスが崩れてくるんじゃないかというふうに思っておりまして、このバランスをどう考えるかという御意見をいただければというふうに思います。
○二木参考人 大変重要な御指摘だと思います。私も議員と同じように、皆保険で一番大事なのは、国民の連帯を保つということだと思っているんです。ですから、同じ理由で、高い保険料を払っている高額所得者の窓口負担を増やすというのは絶対反対、その点では議員と結構似ていると思うんですけれどもね。その上で、保険料を上げるという、租税と保険料の負担は違うんですね、御存じだと思いますけれども。租税の負担の場合には累進課税、まあ日本では大分弱くなっていますけれども、それに対して、保険料の場合は、上限つきの比例なんです。それで、立憲民主党さんの案は賦課限度額を上げるということですよね。だけれども、無限に上げるということじゃないですよね。ということで、賦課限度額を設ける、その天井を今よりもやや高くするということで、そのことによってお金持ちが破産するなんということは絶対に起きないわけです。ということで、私は、そういう意味でのバランスよりも、お金持ちが保険料や税金をたくさん払っているのに窓口の負担を増やされることに対する不満の方が、バランスがずれる方がよっぽど大きな問題だと思います。以上です。
○伊佐委員 ありがとうございます。この点、ちょっと前葉参考人にも伺いたいと思います。賦課限度額を上げることについて。というのは、もちろん、高齢者医療と国保は違いますが、ただ、国保では、これは毎回議論になっています。賦課限度額を引き上げるという話です。今回、私も、これはこれで一つの考え方だというふうに思っておりますが、ただ、関係者間での議論をしっかりしていかないと、議論を整えないといけない。だから、まずは関係者間でのある程度の合意が必要だと思っていまして、今日、さっき、この質問、保険者である佐野参考人はお答えいただけましたので、では、首長として、まさしく関係者、当事者の首長として、この賦課限度額を引き上げるということについてどのようにお考えになるか、伺いたいと思います。
○前葉参考人 委員各位、政治家でいらっしゃって、私も政治家でありますので、負担を引き上げていくというのは非常に苦しい判断になります。その中で、賦課限度額を引き上げると、所得層において、さほど収入が高くない層も限度額に達してしまうということがあって、そこは影響が大きいというふうに思っております。いずれにいたしましても、ここは、どの方にどれだけの御負担をいただくかということについて、これしかないという答えはなかなか難しいものでございますが、いろいろな議論の中で、バランスを取って決めていくべき課題というふうに認識をいたしております。
○伊佐委員 ありがとうございます。時間もなくなってまいりましたので、ちょっと最後、一問を二人の参考人にお答えいただければというふうに思っております。二木参考人と佐野参考人にそれぞれ質問します。というのは、長瀬効果、つまり、受診抑制が起こって、必要な医療が受けられなくなるんじゃないか、医療の質が悪化しないことを証明するべきだというような御指摘があって、私自身は、これは確かに証明するのは非常に難しいなというふうに思っております。その中で、今日、二木委員からは、ランド研究所、アメリカの、あの例を示していただいて、これは非常に勉強になりました。その中で、ただ、私、感じましたのは、これは本当にいろんな要素があって、各国も全然事情が違います。例えば、貧困の度合いも違う。今回の、我々、今、八・三万の窓口負担を十・九万にするという負担増になりますが、平均で。このランド研究所の場合はゼロか一かという、違いますか。そこも御答弁いただければと思うんですが、無料医療と有料医療の差だと私は認識しています。あるいは、皆保険のある国とない国という点でも違う。つまり、いろんな要素が違うので、一概に、これは、厳密な実証研究といってもなかなか難しいんじゃないかというふうに思っています。この点について、二木参考人と、あと、佐野参考人については、実際に我々経験として、これまで何度か医療費負担を上げてきております。上げた中で、これまでの経験を踏まえて、この受診抑制についてどのように考えられるか、最後、伺いたいと思います。
○二木参考人 大変大事な点を御指摘いただいて、ありがとうございます。実は、ランド研究所の報告は日本でもよく紹介されるんですが、ほとんどの報告は、自己負担でも健康状態は悪化しないよという紹介が多いんです。平均値で見るとそのとおりなんです。だけれども、アメリカでも、特別に貧しい人、ハイリスクの人に限定してみると違うよということが出たので。資料の四ページに文献の五が書いてありますね。原著はニューハウスという世界的に有名な医療経済学者なんですが、津川君というのは、日本人の医師でアメリカのUCLAで准教授をしている人ですけれども、彼の本だけが、低所得者、リスクが高い人に限定すると高いということを正確に書いているので、私はこの本の書評をしたこともあるので紹介をさせていただいたので、是非、英語の方はちょっと厚い本できついですけれども、日本語の本を読んでいただければと思います。 それで、先ほど、大変失礼しました。少し話を簡単にするために無料医療と自己負担と言いましたけれども、アメリカは、御存じのように皆保険がない国ですから、だから、自由に設計ができて、このランドの実験の場合は、薬の評価と同じように、ランダム化比較試験というやつで、無料、一〇%、二〇%、五〇%、一〇〇%自己負担、一〇〇%があるんですよ。それを比べていて、その上でのことで、ゼロかありかよりも、もっと緻密なことをやっています。そういう点で、日本の場合には、やはりアメリカと違って国民皆保険がありますよね。それで、今ナショナルデータもすごくしっかりしていますから、そのナショナルデータの個票を使えば受診率は簡単に出ます。それだけじゃなくて、今、医療データもすごく充実していますから、医療データ、つまり患者の病気の重さとか、治ったとか、そういう点も、昔と違って、個票を使えばできるし、今でも一部では、市町村の国保単位とか、あるいは健保組合の一部が情報提供して、研究があるんですけれども、それはやはり、一国保、一市町村じゃちょっと普遍性がないですよね。だから、是非今回は、政府、この場合は厚生労働省ですかね、音頭を取って、そういう日本発の、厳密な、世界にも堪えられるような調査をやっていただきたい。これは、医療経済学、医療政策研究者、私を含めた研究者もほとんど同じ要望だと思います。どうもありがとうございました。
○佐野参考人 ありがとうございます。先生おっしゃるように、受診抑制がどういう要因で起こるのか、また、それによる医療の質低下につながらないのかというところは、正直よく分からない部分だと思っております。大変難しい課題だと思いますけれども。ただ、少なくとも、今回の政府案を見ますと、今回の二割導入に当たっても、元々の高額療養費の上限があるということ、それから、今回は一定の収入以上の方に限られているということ、さらには、外来受診について三年間の配慮措置が設けられているということでもって、受診行動の変化は当然あるかもしれませんけれども、必要な受診が阻害されることはないのではないかというふうに考えております。いずれにしても、やはり、現役世代の負担増の状況を考えますと、高齢者でも負担能力のある方には御負担をいただくということは必要ではないか、こういうふうに考えております。以上でございます。
○伊佐委員 ありがとうございました。もう時間になりましたので、終わります。今日いただいた意見はしっかりと審議に役立たせていきたいと思います。ありがとうございました。
○とかしき委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、お忙しい中、四人の参考人の皆様、大変貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。まず初めに、四人の参考人の皆様にお伺いいたしますけれども、医療制度の持続可能性ということを考えた場合に、しっかり財源をどこから確保するのかということになっていくわけです。それで、二木参考人からは、税と社会保険料のところでの応能負担をもっと徹底すべきだというお話がありました。また、住江参考人からは、社会保障財源のGDP比の国際比較の資料も示されて、事業主負担と公費負担を更に引き上げることが必要だという指摘がありましたが、このお二人の参考人の指摘について、四人の参考人の皆様はどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。
○佐野参考人 お答えいたします。問いになられるのは、やはり、この日本の世界に冠たる国民皆保険制度をどのように維持していくのかというのは、極めて重たい課題だと思っています。そういった中で、給付と負担を含めた財源をどう持ってくるのかというのは、大変これまた重たい課題だと思っていますけれども、基本的に、やはりこの財源としては、いわゆる公費であるところの税、それから現役世代の保険料としての拠出、それから自己負担、この三つしかないと思っておりますので、このバランスをどう取っていくのかというふうに思っておりますので。少なくとも、これまでやはり現役世代の負担に大きく偏っていた部分があるということは、今後を考えた場合に見直していく必要があるというふうに思っております。そういった点で、今回の自己負担の引上げについても、必要な施策であるというふうに考えております。以上でございます。
○二木参考人 自分で言ったことにというと、どういうふうに……(宮本委員「住江さんの指摘もありますので、住江さんの指摘も含めて」と呼ぶ)私は、この十年の国会での議論を踏まえて、随分進歩したと思っています。どういうことかというと、今から十年前だったら、社会保障の財源を増やす、いわゆる当時は社会保障の機能強化と言っていましたけれども、それはほとんど消費税を上げることに限定されていたんですね。それで、社会保障を充実したいのなら消費税を上げろというような議論があったんですが、この間で、もちろん消費税も社会保障の重要な財源だけれども、それだけじゃないよということで、税の多様化。私の研究仲間の権丈善一さんは、財源の確保というのは全員野球だと言っていますけれども。そういうふうに言っている。ということで、今、佐野さんも、だからバランスが大事だというのは税金の場合も同じで、消費税だけじゃなくて様々な税金を使うということです。それで一つ、住江さんのお話も、大体私も大枠は賛成だったんです。違うなと思ったのは、高齢者の問題なんです。私は今、年金生活者ですから、実際に年金生活者が租税的に有利であるということはよく実感しています。ずっと確定申告していましたからね。そういう点で見ますと、高齢者も、保険料や税金に関しては応分の、ある程度余裕がある人は増やすべきだ。それから、所得だけじゃなくて、金融資産でも、もちろんある程度の節度が要ると思いますけれども、今まで手つかずだった部分にも増やす。そういう意味で、租税とか社会保険料の枠内で支払い能力のある人のを増やすということは大きな選択肢だと思っています。以上です。
○前葉参考人 御質問ありがとうございました。消費税を、公費負担を増やすために上げていくのかという議論もあり、また、保険料ということになると、保険者として被保険者の理解をいただかなければいけないということもあり、なかなか難しい決断になろうかというふうに思います。今回の法案は、要するに、人口ピラミッドが変わりつつある中で、世代間でどう負担していこうかということを、今までとは違う考え方を一歩示したものというふうに思っておりまして、その意味で、大きくない一歩だとは思いますけれども、将来更にこの議論が深まっていく、その第一歩だというふうに認識いたしております。
○住江参考人 どうも、御質問ありがとうございました。ちょっと例を引いてみたいと思います。ちょうど一年前の今頃、このコロナ禍の厳しい世界経済、そして国民生活の困難、そういう中で、やはり、本当に、大資産家、高額所得者、その税金を引き上げろ、そしてまた大企業の法人税も引き上げよ、そして消費税も引き下げろと、大きな国際世論がありました。そういう国際世論の声を聞いて、そのときの安倍政権は、これはたまったもんやない、こんなこと、大きな世論になると、大企業や富裕層のもうけが限りなく削減されてしまう。そういうことで、反対に、大企業、富裕層への大盤振る舞いの財政出動をしたという、そういうことがございました。そして四月七日、アメリカのバイデン大統領は、向こう十五年間で日本円にして二百七十五兆円の法人税増税を打ち上げました。やはり、もう法人税引下げ競争をやっている場合ではない、これが国際世論なんだ。そしてまた、消費税も五十六か国で引下げがされています。これがやはり世界の趨勢なんだ。そういうことを考えていただくと、高齢者医療の負担増じゃなしにどこに財源を求めていくかということが、もう明白でございます。以上です。
○宮本委員 ありがとうございました。二木参考人に、これは分かればお願いしたいんですけれども、この受診抑制が、今でもあるというのは住江参考人からお話がありました。歯科の歯周病や、あるいは糖尿病、あるいは認知症だとか、こういう問題があるというお話がありましたけれども、アメリカのランド研究所の研究では、どういう疾病に対して負担増というのはかなり影響が出るんだとか、そういうものというのは書かれているんでしょうか。
○二木参考人 ランド研究所はすごい研究で、一九七〇年代の時点で百億円の予算だったんですよ。ですから、疾病についても、詳しいことで、先ほど言いましたね、貧しい人はそれ自体で受診が下がるし、健康状態も悪化するんだけれども、ハイリスクの人、糖尿病とか心不全とか、これは日本でもおなじみの、そういう疾患の場合になると言われています。あと一つ、ちょっと補足したい。日本でも、先ほど、厳密な調査はないと言ったんですが、厳密ではないけれども、いい調査があるんです。それを是非御紹介したいんですが。それは、日医総研、日本医師会の医療政策研究機構がやった調査なんですね。あの調査は三年に一回、国民の医療に関する意識調査をやっているんですが、それの第六回が二〇一七年、第七回がコロナ禍の二〇二〇年に頑張ってやったんですけれども。いずれの調査でも、一年間に、病気があるのに、医療機関に受診したいんだけれども医療機関に受診できなかったことはありますかという調査をしたら、所得格差がきれいに出ているんです。全体的な、そういうことがあったよという人は五%ぐらい。それから、所得が、家計所得です、二百万円以上の人は二、三%なんですね。ところが、二百万円未満の貧しい人たちの場合は一〇%ぐらい高いんですよ。それからもう一つ、すごい調査が、これも二〇一二年、ちょっと古いんですけれども、同じく日医総研の調査ですけれども。自己負担の割合でそれを調べているんです。そうすると、一割の自己負担の人は、病気だったけれども受診できなかったという人が五%ぐらいなんですね。それが二割になったら、ぽんと上がって一〇%を超えて。もう一つ、病気だったのに医療機関受診控えをしましたよという割合は、一割のときには五%ぐらい、具合が悪くなったという人、もちろんこれは主観的なものですよ、医療機関を受診していないですからね。だけれども、二割になると、受診控えしたために具合が悪くなったという人が、ぽんと二割ぐらいに、一割かな、ちょっと細かい数字は覚えていませんが、アップしたということで、これが日本で、患者負担が多いほど受診率が下がることに加えて、主観的健康感、病気の自覚症状が悪くなるよということを証明したデータで、残念ながら、それ以降十年ぐらい、同様の調査はされていないようです。以上です。
○宮本委員 ありがとうございます。やはり、負担によって受診行動の変化が起きるというのは国内外、いろんなことを調べれば分かるのかなと思うんですけれども、その点、佐野参考人と前葉参考人はどうお考えなのかという点を是非お伺いしたいと思うんですよね。この間、国会でも議論していまして、いわゆる長瀬効果ということが政府からも説明があります。今回、給付費が二割負担の導入で二千百六十億円減るうち、一千五十億円が受診行動の変化だというのが厚労省の説明なわけですよね。やはり、これはかなり必要な医療も抑制されていくのではないかと思いますが、その点、佐野参考人と前葉参考人にお伺いしたいと思います。
○佐野参考人 ありがとうございます。この受診行動というのがどういうふうに変化していくのかは、先ほど来申し上げていますように、なかなかデータとして把握できている部分ではございません。そこについてはなかなかお答えしにくい部分があるんですが、少なくとも、さっきもおっしゃいました、今回の改定においてはなかなかよく見えない部分ではあるものの、それに対して、既存のやはり高額療養費の医療費の上限の問題であるとか、また、今回の対象範囲が一定以上の所得の方に限られているですとか、さらには配慮措置が設けられている、こういった点において、私自身は、受診行動は変化はあるかもしれませんが、必要な受診が阻害されるようなものではないというふうに考えております。以上でございます。
○前葉参考人 受診抑制は絶対にないかというと決してそうじゃないというふうに率直に認めた上で、それを最小限にとどめるように今回のこの案が作られているというふうに思っております。経過措置などによって、受診抑制になるべくならないようなことに、我々としても現場で努力してまいりたいというふうに思っています。
○宮本委員 ただ、経過措置も残念ながら三年間ということで、その後は何もないということになってしまうわけでございます。最後、お伺いしたいんですけれども、実は、この間質疑していて分かったんですけれども、与党協議で、幾らから二割負担の対象にするかというのを決める際に、長瀬効果の数値も示されていなかったと。受診行動の変化がどれぐらい起きるのかというのは一切知らされないまま、この対象が決められていった。大変私も驚いたんですけれども、私はもう与党協議をやり直すところからやるべきじゃないかということを思いましたが、この点、二木参考人と住江参考人に御見解をお伺いしたいと思います。
○二木参考人 実は、長瀬効果による医療費抑制数字は、つい最近出されたんですよね。そして、実は、私、先ほど言いましたけれども、今日の参考人質疑、先週の金曜日に依頼されて、土曜日に原稿を書いたんですけれども、そのときにはまだ持っていなかったんですよ。それで、去年の十二月の社会保障審議会医療保険部会の資料を見たら、確かに、ちっちゃい字で、虫眼鏡で見えないくらいちっちゃい字で長瀬効果と書いてあったんですけれども。それで、野党が言ってやっと出てきたみたいですけれども。 まず、今の示し方は全然駄目です。皆さん、長瀬効果って多分見たことないでしょう。私は、長瀬効果の戦前の本を持っているんですよ。やはり研究者ですからね。だから、歴史的に見ると、あの調査というのはすばらしい先見の明があるんですけれども、今から見ると、例数は少ないし、かなり、いわゆるカンピューター的なものなんですね。それで、たしか、厚生労働省の担当者か田村大臣がおっしゃっていましたけれども、長瀬指数でいっても係数は変えているんだよと。だから、長瀬さんのオリジナルとは違うんだよということをおっしゃっていたんですけれども、それを見て唖然としたんですけれども。方程式はy=f(x)で同じだけれども、その係数が違ったら違っちゃうんですよ。ということで、これはまずいので、野党の皆さんでも与党の皆さんでも、その結果、何千億円低下とかいう、その計算式を出させて、それで、その計算が本当に正しいのかどうかを見た方がいいと思いますよ。私としては、今から、もう戦前の数字を、だから、長瀬効果という何かブランドだけで、中身はかなり違っているはずです。ただ、私も、そういう効果は、公表されないから見ようがないんですよ。だから、研究者としても判定しようがないんです。だから、先ほど言った健康の影響は調査しなきゃいけないのと同じように、それが結構大変なんです。だけれども、長瀬指数を、オリジナルの長瀬指数と新しい今使っている長瀬指数、どう違うのか。よく、数字はうそを言わないと言いますね。最近も本が出ていました。「ナンバーズ・ドント・ライ」、あれはうそなんです。数字なんて幾らでもうそを言えるんです。それはもう私は統計をやっていましたからね。計算数値というのは、前提条件で幾らでも変わるんです。ということで、まずは、長瀬指数の新しい計算プロセスを出してほしい。例えば、もう四月ですけれども、大学の入学試験で、数学なんかでも今は思考過程を大事にするので、結論だけ出したら、それは落ちますよ、落第しますよ。だから、これこれこういうプロセスでこういう結果が出たということを示さなきゃいけないわけで。それが、ずっと、せっかく最終的な結果を得たけれども、プロセスが、計算式が出ていないので……
○とかしき委員長 申合せの時間が来ておりますので、済みません。
○二木参考人 はい、分かりました。ということで、是非その数値を出すように、皆さん、要求してください。
○とかしき委員長 住江参考人、申合せの時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。
○住江参考人 どうもありがとうございました。今回の負担増によって、千八百八十億ですか、長瀬効果が九百億と言われていますけれども、私は、実際、臨床の現場の人間としては、もっとやはり受診抑制がかかると実感しております。先ほど、私どもの調査の結果も紹介しましたけれども、今現実に、これだけやはり生活困難の国民、圧倒的なところの中で、日々受診をためらい、そして慢性疾患で通っていても治療を中断し、それでも、困難な中で、現実的に食費を減らすという。御承知のとおり、収入があれば、社会的固定費として、家賃とか、そして社会保険料、そしてまたライフライン料、交通費、そういうところがどうしても出ていくのは決まっているんですね。あと、残りの自律的消費部分でどうやりくりするか。そうしたら、もう既に、始末するところは全部始末し切っておられるんです。なおかつその中で生活を保つためには、あとはもう食費を削っていく、やはりこういう厳しい方々が現実におられる。そういう方々に受診を更に抑制を起こさせるような、それが果たして今のコロナ禍の時期でいいのかどうかということをやはりきっちり御論議いただきたいと思っております。以上です。
○宮本委員 時間になりました。終わります。ありがとうございました。
○とかしき委員長 次に、青山雅幸君。
○青山(雅)委員 日本維新の会・無所属の会、青山雅幸でございます。本日は、参考人の先生方、大変貴重な議論、ありがとうございます。時間がございませんので、早速質問させていただきます。私は、今回の健康保険法改正案、非常に難しく、なおかつ、この法案だけを見ていてもなかなか問題が解決しないというか、本当に根の深い問題だと思っております。というのは、今日も先生方の中でもお話しされているとおり、この法案の背景にあるのは日本の人口構成の大変動なんですね。よく少し前までは人口減少ばかり言われていましたけれども、人口減少が、各世代のバランスが保たれたまま減っていくのであれば、そんなに問題はないわけです。ところが、既に進行してしまっておりますけれども、高齢者世代が非常に多くなってしまって、それを支える勤労者世代がだんだん少なくなっている、そこに最大の課題があるわけで、しかもこれが、例えば二〇二五年問題と言われていますけれども、二五年で打ち止めになればいいわけですけれども、そうじゃなくて、二〇五〇年、六〇年くらいまでは続いていくわけですね。当然、先生方は御承知だと思いますけれども、高齢者世代が今より一割くらい割合が増える、勤労者世代が一割くらい減っていく、それで二〇六〇年くらいで落ち着くんじゃないのかなというのが今の人口予測です。全ての将来予測の中で最も当てになるのが人口予測と言われているとおりで、これはちっとやそっとでは動いていきませんから。そうなると、社会保障の問題、特に健康保険の問題は、そこまでを本来見据えたものでなければならないわけですけれども、私がレクでお聞きしていても、厚労委員会の質疑で聞いても、これは要は、不断の見直しが必要なと。つまり、不断の見直しが必要ということは、いつまでもつか分からない、取りあえず、いわゆる二〇二五年問題に対応するために、取っかかりとしてこれをやって、やり始めてみるというものにすぎないわけで、しかも三年の経過措置がありますから、それを外した後どうなるか分からないという非常に不確定な問題がある。財政問題も避けて通れない。参考人の中には、御意見として、法人税とか所得税を上げるべきだと。私もそれは必要があればあっていいのかなと思いますけれども、私、個人的に前に試算したときに、法人税を三五%くらいまで上げて、所得税の累進部分は今より一〇%くらい、もちろん低所得者の方はそれなりに配慮してとやっても、財政、いわゆるプライマリーバランス均衡にはまだ届かないんですね。どうしても消費税の部分が要る。恐らく、そういう考え方でEUは平均二〇%の消費税を課している。ところが、日本は、御承知のとおり、ずっと低い税率で来ていて、その穴埋めのために今や財政赤字が九百五十兆円くらいになっている、累積の赤字国債が。大体年平均三十兆円くらいの国債依存度ですし、それから、ここ二十年くらいの時間軸で見ても、社会保障費以外は全然伸びていない、国債関係費と社会保障費以外は、横ばいか、むしろ減っているところの方が多い。こういう物すごく大変な状況の中で全てを見据えてやっていかなければいけないものですから、もちろん、個々の論点を取り出せば、それは財源に限りがなければ、高齢者の方にも本当に負担なく医療を受けていただきたいと思いますし、それが理想なことは分かっているわけですけれども、それができないところに本当に苦悩があるのかなと。そして、これの問題もそこを全部見据えてやらなきゃいけないのかなと思っております。そういう問題認識の中でお伺いするんですけれども、まず二木先生にお伺いしたいんですけれども、先生の方で、応能負担は保険料や租税負担のみに適用されると。もちろん、そうなれば私はそれが一番いいと思います。ただし、私、弁護士ですので、法学をずっとやっておりましたけれども、法律の世界でも過去の通説というのは現状の変化に基づいて変化していくということがやはり普通であるかと思います。先ほど言ったように、日本が理想的な人口ピラミッド、今のインドみたいな感じの、子供が非常に多くて高齢者が少ない、戦後すぐの頃の、そういうような人口ピラミッドの頃でしたら、それはそのとおりだと思います。ただし、今現状は違うわけですね。そして、もう一つ大きく違うのが、考えなきゃいけないのは、能力に応じて負担し、ニーズに応じて給付する、このニーズの部分の議論が全くされていないなと思うわけです。何を言いたいかというと、例えば、よくEUというのは高福祉・高負担、理想的な社会保障がされているというわけですけれども、実は、よくよく見ると、例えば、基本的に窓口がかかりつけ医に限定されていて、専門医なんかですぐ診れない。レントゲンを撮ってもらうのにも一週間くらいかかる、ましてやCTなんていつ撮ってくれるか分からない。専門医にかかるのにも、かかりつけ医にかかった上で、かかりつけ医が紹介してくれないと行けないという、本当に基本的に、それこそ受診抑制みたいな制度が取られているわけですね。これがイギリスのNHSですか、ナショナル・ヘルス・サービス、非常に理想的と思われている医療システムの現状なわけです。それから、フランスなんか見てもそう思うわけですけれども、日本のように、高価な抗がん剤などがふんだんに医療保険で使える国が一体どのくらいあるのかなと思っているんですね。アメリカなんかでも、例えば、あれは民間医療保険が多いわけですけれども、この治療にはこれしかできないという厳しい縛りがある。つまり、必要性への縛りがあるわけです。スウェーデンなんかは、高齢者がICUに入るのに、非常に、無限定では入れなくて、一定の条件を満たさないと入ることができない。どこも現実を見据えてそういう議論をしているわけですけれども、日本は、高齢者、もちろんそうです、高齢者の方は、私自身もだんだんそういうところに近づいてきて、どんどん体の中で悪いところが増えている。自分の肉親においてもやはり、それを見ていると痛切に思います。ただ、日本がそういう状況に入れば入るほど、やはりどこかで何かをしていかなければいけない。その必要性の議論というのが私は欠けていると思うんですけれども、二木先生のお考えをお伺いしたいと思います。
○二木参考人 青山さんですか。こんなにいろいろな話をされて、何を聞きたいのか分からなかったんですけれども。もうちょっと焦点を絞って質問していただけませんか。
○青山(雅)委員 私が申し上げたのは、私の質問の背景を申し上げた。先生にお伺いしたのは、先生がおっしゃっている、応能負担原則は保険料や租税負担のみに適用されるという中に書いてある、能力に応じて負担し、ニーズに応じて給付すると。そのニーズというのが、もちろん水準があるわけですね。日本のようにフリーアクセスでどんな治療でも可能ということになれば、それはもう莫大にかかるわけです。ところが、実は諸外国を見ると、高福祉と言われているEUあるいは北欧においてさえも、このニーズというのはかなり限定されているんです。そこの議論もしないと私は不公平じゃないかと思うので、そこについて先生の御見解をお伺いしたい。
○二木参考人 大変重要というか、面白いというか、変わった提起だと思います。EUは一か国じゃないんですね、一枚岩じゃないので、いろいろな国があるので。何か自分の都合のいいデータだけ持ってきてやるのは余りフェアな議論では、まあ、弁護士の世界はそれが当たりかもしれませんけれどもね。EUも、そもそもイギリスは今EUではありませんけれども、いろいろな国がありまして、例えば社会保険方式を取っている国では、例えばドイツがその典型ですけれども、日本と似ている、なおかつ、ドイツは窓口負担が基本はないんですけれども。という点もあるし、あと、フランスの場合には、やはり医療保険がベースですけれども、公的保険の給付が制限されているというような面が一見あるんですが、それを共済組合でほとんどカバーしているんですよ。だから、医療受診も結構行けるし、だから、医療費のGDPに対する割合もよろしいんですね。ということで、余り特定の自分に都合のいい国だけを例に挙げて論争するというのは余りフェアではないと私は思います。元大学教員の立場から。その上で、おっしゃるように、いろいろな原則は変わって当然だと思うんです。ただ、変わる場合には、こういうふうに変わりましたという説明が要るわけですね。だけれども、私がずっと見てきていましたけれども、厚生労働省も政府も九〇年代までは応能負担の原則、私と同じような説明をしていて、だから介護保険ができたんですけれども。二〇〇〇年の一月からかな、小泉首相の時代に厚生労働省がお金持ちの自己負担を増やすと出したんですけれども、その頃から今まで私は全部文献を見ていますけれども、財政的に大変だからというだけで、ロジック、原則をどう変えたかという説明、今回を含めて、ないんですよ。ですから、是非、維新の皆さん、その点を弁護士さんだったら追及していただきたいと思います。あと、能力に応じて負担して、ニーズに応じて受けるというのは、これは理念的な規定で、ニーズってそんな無限じゃないんですよ。それぞれの患者さんに応じて。だから、専門家がいるわけです。患者さんが好きなのを食べたいとかなんとかという話じゃなくて、医療に関する、今日の話ですよ、医療のニーズというのは、専門家である医師が患者さんの話をよく聞きながら決めるということですね、これはインフォームド・コンセントと言いますけれども。だから、そんなに何か無限に増えるものじゃないし、実際、この二十年見ても、そんなに医療ニーズは、医療費も増えているわけじゃないんだよね。もうちょっと現実に即して見られた方がいいと思いますよ。私からの、年寄りからのアドバイスです。
○青山(雅)委員 非常に残念なお答えだと思います。私は、必要性の原則でもって見るということもしてもいいんじゃないかと申し上げているだけで、別にイギリスのようにした方がいいとか、そういうことを申し上げているわけではありません。ただし、EUなどで、私が知る限り、日本のようなフリーアクセスのところもありませんし、高額な医療が受けられるところもありません。なので、先生は研究者なので、都合のいいところばかり挙げるなではなくて、EUあるいはアメリカなどの現状もお調べになった上で、必要性についての議論もされたらいかがかなと思って、問題提起しただけでございますので、誤解のないように。時間がないので、もう一件、先に。お聞きします、もちろん聞きますけれども、現場の……(発言する者あり)だから、お聞きしますから、黙っていてください。
○とかしき委員長 御静粛に願います。質問を続けてください。
○青山(雅)委員 はい。住江先生、現場、なさっているので、今の議論、例えばCTなどが非常に日本は多い現状があって、そこの部分についての議論もなすべきだと現場の先生もおっしゃっているので、住江先生の御意見をお伺いした後、もう一度、二木先生の御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
○住江参考人 EUを例に出してどうのこうのじゃなしに、今の日本の高齢者の現実を控えてどうなのかというやはり議論をしていただきたいと思います。以上です。
○二木参考人 ちょっと議員誤解して、私の資料の一ページの堀勝洋先生のところに書いていますけれども、「能力に応じて負担し、ニーズ(必要)に応じて給付する」ということで、医療とか福祉の世界では、ニーズと必要が同じ意味で使われています。それをちょっと議員は違う使い方をされていると思うんですけれどもね。もちろん、じゃ、ニーズとは何かということでいいますと、昔は専門家が全部決めるというイメージがあったんですが、今は患者さんあるいは障害者の意見も聞きながら決めるということで変わっていますけれどもね。そういう点で、ニーズと必要が違うんだという議論は、余り私が知っている範囲では、ありません。あと、言うまでもありませんけれども、私は医療経済、政策学を五十年やっていますから、「世界のリハビリテーション」という本も出したし、少なくとも議員よりは私の方が詳しいと思うので、余りつまみ食い的な意見は言わない方がいいと思いますよ。
○青山(雅)委員 非常に残念です。私は、今の日本の医療水準というのは、提供される医療というのは、非常に世界の中でも理想的だと思っています。フリーアクセスですし、救急車を呼べばすぐ来るし、無料です、アメリカと違って。ただ、その医療水準というのが、実は自己負担ばかりにとらわれるとそこを見落としがちですけれども、これを守っていくことはすごく必要だと思っているんです。そうすると、その医療水準というところも、提供されている医療水準を守るためにはどうしなければいけないのかという議論も必要だと思って、お聞きしているわけです。何か誤解されて、水準を引き下げるとか、そっちの方で何か私がよからぬことを考えているように思われているのかもしれませんけれども、私が申し上げているのは、今の日本の社会保障として提供されている医療水準が、実は思われているよりも世界でもトップクラスである、そのことをもし先生が御存じであるならば、それをきちんと言っていただきたいという意味で聞いているだけです。
○二木参考人 それは、もう今、医療や社会保障関係の人間、共通だと思っていたんですけれども。おっしゃるように、日本は、もちろんいろいろな弱点はありますけれども、医療の受けやすさとか、標準的な医療が全国津々浦々で、つまり大都会も田舎も受けられるという点では非常に優れているし、高額な医薬品に関しても、例えば、一昔前の、オプジーボが保険で全部、貧乏な人も診られるとか。そういう点では、日本の医療はなかなかのものだと思っていますから、だから、私は一貫して、国民皆保険はもう日本のぎりぎり、支えるということで、その点では議員と全く同じ立場だと思いますよ。その上で、一言だけ。CTが多いということ、必ず出るんですよね。おっしゃるとおりです。CTはアメリカよりも実数が多いんです。じゃ、日本のCTの医療費は世界で一番多いか。とんでもない。日本の場合はアメリカと違って値段が公定価格で物すごく抑制されているんです。ですから、価格掛ける回数が医療費ですから、それで見ると、日本のCTの医療費、医療費という点では、アメリカよりもずっと少ないんです。ですから、物事を見る場合には、台数だけじゃなくて、利用とか掛けて、トータルな費用を見て、それがGDPに対するどのぐらいの割合かと突っ込んで見た方がいいと思います。以上です。
○とかしき委員長 青山雅幸君、申合せの時間が経過しております。
○青山(雅)委員 はい。要は、今の医療水準が本当に世界的にもトップクラスのものを我々は受けているということ、そして、これを今後守っていくには、負担も含めて相当な覚悟が必要だということをお聞きしたかったということですので、誤解されたのであれば、そこの誤解は解いていっていただければと思います。ありがとうございました。
○とかしき委員長 次に、高井崇志君。
○高井委員 国民民主党・無所属クラブの高井と申します。今日は、四人の参考人の先生方、本当に貴重な御意見、アドバイスをいただき、ありがとうございます。私も、今、皆様のお話を聞いていて、実は、この厚労委員会でこの法案のときに、私は財源論にこだわってずっとやってまいりました。とりわけ、税でもっとやはり負担をすべきなんじゃないかと。これは結構皆さんも同じ考えかなと思って聞かせていただいたんですけれども。ただ一方で、連日財務省に来てもらっているんですけれども、財務省は、債務残高がGDP比二・五倍とか、世界で最も厳しいなんということをいつも言うわけですけれども、ただ、実際、日本はデフレにありますから、やはりインフレになるまではまだまだ私は国債の発行の余地はあって、そういう意味では、税でこの分野も、社会保障もしっかり賄っていく余地はあると考えておりますが、もちろんいつまでも発行できるとは思っていませんけれども、まだまだ当分大丈夫だと思っております。そこで、具体的にまず佐野参考人にお聞きしたいんですが、御説明いただいた資料の八ページのところで、次期改革への取組ということで、私も、まだ本当にこの法案は途中経過というか、これからの改革が非常に大事だと思っていますが、下記の項目について速やかに検討を開始されたいと書いてあるんですけれども、まず一つは、その速やかにというのを、どのくらい速やかにというのをイメージされているかということと、併せてお聞きしたいのは、このポツの一番目に現役並み所得者への公費投入というふうに書いてございますが、これをもうちょっと詳しく、どういったことなのか、教えていただけたらと思います。
○佐野参考人 ありがとうございます。速やかにはどれぐらい速やかにという、なかなかお答えしにくいんですが、できるだけ速やかにという、要は、今回の改定で終わらせることなく、すぐにでも次の改定に向けた検討をお願いしたいという趣旨でございます。それから、もう一点御質問いただきました、私どもの資料の中の現役並み所得の基準見直しの部分なんですが、少し説明させていただきますと、現在、後期高齢者の医療については、従来ですと、現役並み所得の方は三割自己負担をいただいています。それから、それ以外の方は一割負担。したがって、逆に言うと、一般の方でいいますと、保険の給付が九割を占めるんですが、その九割部分についての負担の内訳を申し上げますと、公費が五割で、それから現役世代の負担が四割で、後期高齢者御自身の自己負担が一割、五対四対一という構造になっております。これが、現役並み所得の方については、自己負担を三割いただいておるんですが、残り七割の給付部分、ここについて公費が入っておりません。公費が本来見る分を保険者の現役世代の方が負担をしているということで、現役並み所得の方については保険給付のうち九割を現役世代が負担をしている、こういう構造になっております。 本来であれば、やはり現役並み所得の方についても公費を入れるべきだと思っていまして、この分の金額は、金額にしますと四千五百億円ぐらいございます。ここの部分を私ども健保組合としてはやはり問題意識を持っていまして、少なくとも、今後、能力に応じた負担ということで、今回、一般国民の方のうち一部を二割ということなんですが、現役並み所得の方の適用も本来更に広げていく必要があるのではないかと考えておりますが、現役並み所得の方については公費が入っていないために、仮に現役並み所得の方を対象範囲を広げると、現役世代の負担が増えるという誠に妙なことが起こってしまいます。したがいまして、ここの部分については、現役並み所得の方の基準の見直しと併せて、現役並み所得の方についての公費投入をお願いしたいというのが私どもの要望でございます。長くなりましたが、以上でございます。
○高井委員 ありがとうございます。大変よく分かりました。それでは、せっかくなので、ちょっと四人の皆さんに同じ質問をしたいと思うんですけれども、今申し上げたとおり、私は、やはり税をもうちょっとこの財源として充てるべきではないか。税というか、公費ですね。その公費の中には、ですから国債をまだまだ私は発行する余地はあると考えていますけれども、しかし、いつまでも発行できるというわけではないので、そうすると、税をどこから持ってくるかということも考えなきゃいけない中で、先ほど住江参考人からはありましたけれども、法人税。これは世界的にも、今アメリカもイギリスも法人税を二一%まで下がったのを二八%まで上げるというかなり世界的な流れ。それから、あと、巨大IT企業、こういったところが課税逃れをしている、日本でも多くの大企業が課税逃れをしている実態がありますので、そういったところを的確に捕捉していくということ。それと、もう一つ、今日のテーマでもあります、やはり高齢者の方ほど金融資産が多いと思うんですね、これをちゃんと課税をするということ。それは総合課税というのが必要になると思いますし、あとは、二木参考人の指摘の中で、二ページ目の上段のところ、金融資産を含める必要がある、個人金融資産の三分の二が高齢者に集中している。だから、保険料に対してもここをしっかり捕捉していくということは私は非常に大事じゃないか。ただ、これをやろうと思うと、実は、私はマイナンバーをどうしても入れざるを得ないんじゃないか。実は、我が会派は、マイナンバーと金融機関の口座をひもづけを義務化する、今回、任意でひもづけるという法案は間もなく成立するんですけれども、私は、義務づけまでやらないとしっかり税の捕捉なり保険料の捕捉ができないので、国民からは結構マイナンバーは余り人気がないんですけれども、しかし、そこはやはり国民の皆さんにも納得いただいて、マイナンバーをしっかり入れて金融資産を捕捉して、そうしていけば持続可能な社会保障制度になるんじゃないかと考えますが、少し長くなりましたけれども、私の提案というか考えについて、それでは、二木先生から順に、二木先生、前葉市長、それから住江さん、そして最後、佐野さんの順でお答えいただけたらと思います。
○二木参考人 非常に大事な御指摘だと思っていて、実は、私、今議員のおっしゃった提案でどういうふうに考えたらいいか悩んでいるところなんです。先ほどもちらっと引用しましたけれども、私の研究仲間である慶応大学の権丈善一教授は、議員と同じように、マイナンバー制度を社会保障カードに活用して所得と金融資産をひもづけるということをおっしゃっていて、そうすると、所得水準が分かるから、所得再分配もうまくいくとおっしゃっているんですよ。それで、私も理念としてはすごくよく分かるんです。ただ、それに即賛成と言えるかどうか。だから、反対とまでは言えないんです。今、やはりこれは、日本の場合には、先ほども出ましたEUと違って、個人のプライバシー権は今度の法案でも認められていませんよね。それで、大変失礼ながら、前内閣も現内閣も行政の透明性とか運用という点では疑問ですよね。あと、官庁も、国民の奉仕者なのか特別の企業の奉仕者なのか分からない行為がすごく多いですよね。だから、そういう前提条件をちゃんとクリアしないと、ただ情報だけがひもづけされて、それがどんどん自己増殖して、極端に言えば、今の中国みたいに情報監視社会になる。どうしても、私は団塊の世代だから、そういう監視社会が怖いという意識があるので、若い人とちょっと違いますよとよく教え子にも言われるんですけれども。ですから、大きな方向として、政府が民主的に運営して個人のプライバシーが確保できるというような条件をどう整備するかをまず考えるべきで、その点を抜きにしてぽんと賛成、反対と言われると、申し訳ない、今の段階ではちょっと保留させてください、こういうふうになるわけです。よろしいでしょうか。
○前葉参考人 公費でどう負担するかということは、世代間でどの世代に負担が厚いかということ、それから個人か法人か、さらには資産課税的な考え方をどう導入するかということを総合的に決めていっていただくということになろうかと思います。 ただ、厚生労働委員会の先生方には、この仕組みはあくまでも医療保険であるということの意味合いも是非御理解いただきながら、相互扶助の仕組みであるという基本は忘れないようにしながら公費負担についてはお考えになっていただければ、地方自治の現場としても助かるかなというふうに思っております。マイナンバーについても触れられました。口座番号とひもづけをするということは私は賛成でございます。実際に、十万円の給付のときに、口座番号の把握、登録に物すごく時間がかかった一方で、一人親世帯の特別給付五万円がなされていますが、あれは、自治体が児童扶養手当で口座番号をもう持っていますから、プッシュ型でどんどん給付ができる。非常に短時間にできています。アメリカで小切手がばっと国民に配られるような仕組みで現金給付ができますので、是非そのような方向で進めていただければと思います。
○住江参考人 どうも御質問ありがとうございました。社会保障費用に対する公費の少なさ、そして企業負担の少なさ、これについては先ほど冒頭でも紹介しましたとおりでございます。そうしたら、そういうところをどう是正していくために、議員もおっしゃったように、総合累進課税、大企業そして富裕層にとって本当に特別優遇制度があり過ぎて、やはりそういうところを徹底的に見直しして、証券による取引、そういう額も合算した総合累進課税の徹底、それこそだと思っております。そもそも、今の法人税の負担の少なさというのは一九八九年の消費税導入以降なんですね、直間比率の見直し。実は、二〇二〇年度で消費税がいよいよ基幹税化してしまった。本当にここに、政府、大企業、富裕層の、何というか、本懐を遂げたというんですか、野望が完成してしまった、そういう不幸なことになっているわけですけれども、その消費税導入以降、消費税税収の一・五倍の法人税三税、そしてまた所得税、住民税の減税、それによる税収不足によって一千兆を超す国と地方の合わせたような借金になっている。そういうところの一歩一歩の、そういうところの見直しをしていくことが肝要かと思います。そして、マイナンバーの狙いですけれども、これは昨年二〇二〇年度の骨太方針に如実に表れているんですね。あの骨太方針に三つ言われました。一つは、社会保障を更に削減していく。二つ目は、非正規労働そしてまた不安定労働を増やして労働分配率を更に引き下げる。三つ目に、その二つで収奪、搾取は飽き足らず、国民の持つあらゆる情報を企業の、民間の利潤、利益のために利活用する。そこが本音なんです。ですから、本当に、今回の医療の分野にもマイナンバーカードと保険証をひもづけして、そういうカードの利用を促進されましたけれども、その危険性をやはり全国の医療担当者も自覚して、これが、三月施行ということになりましたけれども、当面十月に延期せざるを得ないという、そういうところの危険性はやはり国民こぞって認識していただく必要があると思います。事実、まだいまだに二五%のマイナンバーカードの普及率ですので、その辺のことをもっともっと徹底していきたいと思っております。ありがとうございました。
○佐野参考人 御質問ありがとうございます。先ほども申し上げましたけれども、いずれにしても、医療保険、社会保険の財源としては、公費であるところの税金、それから現役世代の保険料負担、それから自己負担というこの三つしかないわけでして、個別の項目についてこれを引き上げるのはどうかと聞かれれば、どの人もみんな反対という話になる部分だと思うんですが、まさに、ここは痛みをどう分かち合うのかという部分でもってそのバランスをどう取っていくのかというのがポイントだと思います。そういった中で、税財源の活用についても当然大きな選択肢になると思いますし、中でも、お話がありました金融資産をいかに見るのかというところも私どもとしても大きなポイントだと思っています。ただ、金融資産を加味した負担を導入するに当たっては、やはり公平性であったり納得感であったり、こういったものがきちんと得られるかどうかが大きなポイントだと思っています。そういう点において、マイナンバーというのは、一つ、公平性若しくは納得感を得るためのツールといいますか、ものとしては有力な選択肢だと思いますけれども、やはりそのためには、更なる普及を含めてこの活用方法をきちんと検討していくことが重要なのではないかというふうに考えております。以上でございます。
○高井委員 大変貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。今日は本当にありがとうございました。
○とかしき委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)次回は、明二十一日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。