2021年4月21日 衆院厚生労働委員会 75才以上医療費2倍化、200万円で「負担力あり」は暴論

提出資料 津川友介「世界一わかりやすい『医療政策』の教科書」
提出資料 鈴木亘「慢性疾患と自己負担率引上げ ―糖尿病・高血圧性疾患レセプトによる自己負担率引上げの動態的効果の検証ー 」
提出資料 日本医師会総合政策研究機構 前田由美子「受診時定額負担について」
提出資料 「第7回 日本の医療に関する意識調査」日医総研ワーキングペーパー№448
提出資料 「第6回 日本の医療に関する意識調査」日医総研ワーキングペーパー№384
提出資料 2021年4月20日付「朝日新聞」

 日本共産党の宮本徹議員は21日の衆院厚生労働委員会で、高齢者医療費2倍化の対象とされている「年収200万円以上」(単身)の世帯について、‶負担能力あり″とする政府の論拠を批判し、命と健康への影響を精査するよう求めました。
 政府は、家計調査をもとに「年収200万円」の世帯の収支差をみると年12万円の黒字だとして、負担増に耐えられるとしています。宮本氏は、同調査のサンプル数は123世帯にすぎないとして「この調査をもって負担能力があると結論づけるのは極めて乱暴だ」と批判しました。
 また、「年12万円の黒字」を前提に考えたとしても、税と社会保険料の負担は増加の一途で、生活の余裕はなくなると強調。厚労省は、現在と比べ2040年度には、後期高齢者医療保険料は年約2万円上がり、介護保険料は同3.5万~4万数千円上がる見通しだと答弁しました。
 宮本氏は、保険料だけでも政府が‶余裕″と見なす12万円の半分が消え、さらに年金や貯蓄は目減りし、医療費の窓口負担も増えるため、「暮らしはたちまち赤字になる」と指摘。医療費負担が増えると受診抑制が起き、健康に悪影響が出るとの国内外の調査を示し、「審議をいったん止めて、疾病ごとに負担増の影響を調査すべきだ」と主張しました。

以上2021年4月22日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2021年4月21日 第204国会衆院厚生労働委員会第14号 議事録≫

○とかしき委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。七十五歳以上の医療費負担二倍化法案について質問いたします。今回の法案は、二割負担を導入する、まずは二百万円、単身世帯であれば、その収入がある方からということになっております。今朝も、この二百万円の方というのは負担能力があるのか、ないのかという議論がありました。大臣は、十二万円の収入と支出に差がある、余裕があるんだということをおっしゃっているわけですけれども、私は、こういう、統計を見て平均だけで議論するというのはやめた方がいいというふうに思いますよ。それは、同じ二百万円の中でも、それまでの人生の中で貯蓄がある方、ない方、いろいろな方がいらっしゃいます。そして、その二百万円の使い道の中でも、医療費の支出がかなり多い方も現にいらっしゃるわけであります。あるいは、家賃の負担が高い方もいらっしゃるわけであります。元々、根拠にしている家計調査も、二百万円プラスマイナス五十万円、百二十三世帯という物すごい少ないサンプルで出されているわけですけれども、ちょっとお伺いしますけれども、じゃ、この百二十三世帯の中で最も医療費の負担が多いケースは年間幾ら負担していますか。
〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕
○浜谷政府参考人 お答えいたします。厚生労働省からお示ししている七十五歳以上の世帯の収入と支出の状況につきましては、御指摘のとおり、統計法に基づき総務省において実施しております家計調査の調査票情報の提供を受けまして、厚労省におきまして特別に集計を行ったものでございます。御指摘の医療費が最も高いケースでございますけれども、これは、個別の調査対象が特定されるおそれがありますことから、総務省のガイドライン上、お示しすることができないということになっております。
○宮本委員 個別のデータも示さないで、平均値だけで議論しろというのはめちゃめちゃな話ですよ。あり得ない話だと思うんですよね。同じように、住居費なんかも、予算委員会でも言いましたけれども、年間の住居費は、二百万円の方は年間で十七万円となっているわけですけれども、賃貸だったら年間十七万円なわけがないわけですよね。ですから、賃貸の方なんかからは本当に悲鳴の声が、今回の法案について私のところにも寄せられております。ですから、率直に言って、この百二十三世帯の調査をもってして負担能力がある、こういうふうに結論づけるのは極めて乱暴だと思いますが、大臣、そう思いませんか。
○田村国務大臣 現役の皆様方でも、同じような所得の方々のみならず、やはり同じような形で生活される中で三割負担を対応されておられるわけであります。もちろん、医療にかかる回数は高齢者の方が多いじゃないかとおっしゃられますが、その分、現役世代の方々は子育て費用やいろいろなものがかかってくるわけであります。ですから、そこのところをどう考えていくかということと、それから、もう一点申し上げると、このモデル世帯の支出、これを見ると、もちろん、家賃十七万円、年間という形で、これは住居費という形でありますけれども、ほかにもそれぞれの支出があるわけでありまして、そういうものの中には、言うなればいろいろな形で、生活必需だけではなくて、それぞれが生活する中でいろいろな形でお使いになられておられるものもあるわけであります。そういうものも含めて全体を考えた場合に、今回の九割給付から八割給付になる方々、一定の所得の方々に対しては、これはその中でしっかりと対応をいただきたいということで御提案をさせていただいているわけでございますので、決して若い方々と見て非常に高齢者だけが厳しいというわけではない中において、御理解をいただければありがたいというふうに思います。
○宮本委員 生活必需以外のものもあるでしょうというのは、そういうことを大臣が言っちゃまずいんじゃないですか。生活必需品以外の生活を全部医療費で犠牲にしてもいいんだと言わんばかりの答弁というのはまずいですよ、それは。当然、人間らしい文化的な生活というのは、人間である以上はみんなやる権利があるわけですから、この二百万円のところには生活必需品以外も入っているんだから、そこも削ればいい、こういう議論には私はならないというふうに思いますよ。その上で、ちょっとお伺いしますけれども、年収二百万円の方の七十五歳の場合は、税と社会保険料の年間の負担額というのは、後期高齢者医療制度の発足時は幾らで、二〇二〇年度では幾らですか。
○浜谷政府参考人 これは自治体によって異なりますので、例えば新宿区にお住まいの方の年金収入二百万円で単身の方について申し上げますと、所得税、住民税と社会保険料の年間負担額でございますけれども、機械的に計算いたしますと、後期高齢者医療制度が施行されました二〇〇八年度におきましては十七・七万円、二〇二〇年度におきましては二十・七万円でございます。
○宮本委員 新宿区の例でいえば、後期高齢者医療制度が始まってから十二年間で三万円、税と社会保険料が上がっているということであります。これは東京の新宿の例ということでございます。当然、税と社会保険料の部分というのはこれからも上がっていくわけですよね。後期高齢者の平均の保険料額を年額でいうと、現状は幾らで、将来の見通しはどうなっていますか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。後期高齢者の一人当たり保険料、月額でございますけれども、現在、六千三百九十七円でございます。将来見通しにつきましては、もうちょっと古いんですけれども、平成三十年五月に公表いたしました、二〇四〇年を見据えた社会保障の将来見通しにおきまして、一定の前提を置きまして試算しております。その試算によりますと、二〇二五年度で月額六千三百円から六千四百円、二〇四〇年度で月額八千円から八千二百円ということでございます。
○宮本委員 年額でいえば幾ら増えることになりますか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。六千四百円の十二か月分でございますので、現状で八万円程度かと思います。
○宮本委員 ですから、現状から二〇四〇年でいえば、年額でいえば何ぼ増えることになりますか。
○浜谷政府参考人 お答えいたします。済みません、先ほど少し数字が、もう少し正確に申しますと、七万五千円程度でございます。それで、二〇二五年度、年額でいいますと七万五千円強ぐらい、それで、二〇四〇年度で申しますと九万六千円程度でございまして、年額でいうと二万円程度の差ということでございます。
○宮本委員 年額でいえば二万一千円程度増えると。それから、当然、介護保険料も上がっていくと思うんですが、これは平均でいえば年額、現状は幾らで、将来の見通しはどうなりますかね。
○土生政府参考人 お答えいたします。介護保険料につきましては、保険者である市町村ごとにサービス見込み量、被保険者数の動向等を踏まえて定めているということでございますけれども、直近の第七期の計画期間で平均保険料額、月額五千八百六十九円、年額にいたしますと七万四百二十八円となってございます。それから、将来の試算につきましては、ただいま保険局長から御答弁申し上げました将来見通しの中で一定の前提を置いて試算をいたしております。二〇二五年度で申し上げますと、月額約六千九百円から七千二百円、年額ですと八万二千八百円から八万六千四百円、二〇四〇年度につきましては、月額で八千八百円から九千二百円、年額では十万五千六百円から十一万四百円と幅のある試算になってございます。
○宮本委員 つまり、これから後期高齢者の保険料も介護保険料も上がっていく。後期高齢者でいえば、七・五万円が二〇四〇年には九・六万円、二・一万円ぐらい上がる、介護保険料は、今、七万円ぐらいが平均なものが、二〇四〇年には十万五千六百円から十一万三千円ということですから、大体三万五千円から四万数千円上がるということですから、五万数千円から六万円ぐらい更に保険料だけでも上がっていくということになるわけですね。今、十二万円の収支の差があると言っておりますけれども、保険料だけでもその半分はこれからなくなるというのが皆さんの見通しなわけですよね。しかも、これから物価は上がっても年金は目減りするというのがずっと続いていくわけですよ。そうすると、今回の年収二百万円というのは、平均で見て十二万円の差があるということを一生懸命皆さんおっしゃいますけれども、これは平均にすぎないですし、しかも、平均で見ても、これは時がたてばたつほど全くその差はなくなっていくということになるじゃないですか。これに医療費の負担がかかるんですよ。そうなったら、どうなるんですか。年収二百万円でも保険料は上がる、そして窓口負担は上がる、暮らしはたちまち赤字になっていく、こういう方が増えていくということになるんじゃないですか。
〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕
○浜谷政府参考人 お答えいたします。個々の世帯におきましては、収支をそれぞれ工夫しながら生活をされているというふうに認識をいたしております。例えば、貯蓄がある方であれば、まずは貯蓄などの活用、生活の工夫などで現在でも対応しているということでございまして、そういった個々の生活の工夫の中で対応していくものと考えております。
○宮本委員 ですから、赤字になれば貯蓄があるだろうというふうにおっしゃいますけれども、貯蓄がたくさんある方はそうやって対応できると思いますよ、対応するしかないと思いますけれども、問題は、じゃ、みんなが貯蓄があるのかということなんですよ。それまで、例えば家族の中に大きな病気を抱えている方がいらっしゃる、あるいは本人自身もいろいろな病気で入退院を繰り返す、貯蓄をほとんど使い果たす人だっているわけですよね、七十五歳までになると。あるいは、この世の中は本当にひどい世の中ですから、例えばジャパンライフみたいなものがあるわけですよ。高齢者の貯蓄を狙って、詐欺で身ぐるみを剥がす。私の地元でも、高齢者の方、ジャパンライフで全く全部貯金がなくなって、年金は二百万もないですから、生活保護で暮らされている方がいらっしゃいますけれども、そういう人だっているわけですよね。みんなが年金二百万円だったら貯金があるというのは、それは平均の議論であって、一人一人を見た議論では全くないと思いますよ。こういう平均で見て、年収二百万円の人は貯金があるから、将来保険料が上がって窓口負担を増やしても大丈夫なんだ、こういう議論はやめていただきたいと思います。
○田村国務大臣 年収二百万のところを特におっしゃっておられると思いますが、そもそも、今いろいろと話が出ていたのは将来の話でありますから、そのときにどのような社会保障の姿であるかというのは今現状でつぶさに申し上げられないというのは一つありますが、年収二百万の方々プラス、要するに課税所得二十八万でございますので、保険料が上がっていけば当然課税所得の方がそれを下回っていくということもあり得ますから、一割になられる方、特にその瀬戸際におられる方々は一割になられる方も出てくるんだというふうに考えております。
○宮本委員 そういうせこい答弁をしないでくださいよ。でも、実際は、保険料が上がるのと併せて物価も上がっているわけじゃないですか。この五年間でも、私、予算委員会でも示しましたけれども、高齢者の生活必需品の物価というのは三%上がっている、でも年金は全く五年間ほぼ横ばい、こういう事態で、実際は、年金の価値というのは下がっている。同じ二百万円の価値というのは、高齢者にとっては下がり続けているというのが現状なわけですよね。それは今後も続きます。ですから、そういうことを言わずに、やはりこれは考え直していただく必要があると思いますよ。それで、今日、朝から議論がありますけれども、昨日参考人質疑がございました。それを踏まえて質問させていただきたいと思います。参考人の二木先生から紹介があった研究、今日も御紹介がありました。私も刺激を受けて、アメリカのランド研究所の一九七〇年代に行った大規模な医療保険実験について紹介してある本を早速拝見をさせていただきました。医療費の負担による受診抑制が健康にもたらす影響があるということが書かれているわけですよね。二ページ目でいえば、医療費に関しては、自己負担ゼロのプランと比較して、自己負担二五%のプランは二〇%医療費削減が見られましたと。最も貧困で健康状態の悪い六%の人たちにおいては、三十個の健康指標のうち四つで自己負担がある方が健康状態が悪くなるという結果が認められました、その四つの悪影響が認められた健康アウトカムは以下になりますと。高血圧症、視覚・視力、歯科ケア、重篤な症状ということで、影響が出た疾患についてもやられているわけですよね。これは、一九七一年から一九八二年にかけて、物すごい長い期間やられた社会実験ということになるわけであります。何か今日の大臣の答弁を聞いていたら、これは元々日本とアメリカとは健康保険の制度が全然違うから全く参考にならないんだと言わんばかりの答弁がありましたが、私は、こういう社会実験、壮大な社会実験ですよね、ある意味。十年間以上にもわたって行われた。ここで出ている傾向というのは、当然、医療費の負担と健康について日本として学ぶべきものがあると思いますよ。そういう謙虚な姿勢でこの研究結果を捉える必要があるんじゃないですか。
○田村国務大臣 そもそもアメリカは公的医療保険では、メディケード、メディケアはありますけれども、基本的にはないわけで、そこで自己負担が〇%、二五%、五〇%、九五%という形で割合の保険に加入させて、受診行動やその後の健康の影響、これを三年から五年で追跡調査、評価をされたというものでありますので、要は、我が国は、そういう意味では、今般は九割給付が八割給付に変わるという話でございますので、正直申し上げて、この研究はこの研究で私は敬意を表したいと思いますけれども、これをもってして日本の今般のことをどう評価するということにもいきませんし、併せて申し上げれば、日本とこれとを見て、これから日本の今般の九割給付を八割給付にする場合の、しかも二百万円以上の収入の方々でありますけれども、その方々の健康がどのように変わっていくかというのを調査をする手法というものをここから見出すというのはなかなか難しいというのが率直な私の感想でございます。
○宮本委員 別に、初めから調査が難しいなんて決めつける必要は全くないわけですよ。大体、総理は、本会議での私への答弁で、今度の受診行動の変化は健康への影響はないんだ、こういう答弁をしたんですよ。だけれども、実際は、海外では、医療費の負担増は健康に与える影響というのが詳細な長期間にわたる調査の中で出ているわけですから、この研究自体をひっくり返す皆さんの側の研究結果、調査結果なるものが示されない限り、総理の答弁は虚偽答弁ということになりますよ。それで、参考人の二木先生からは、日本でも調査があるということで紹介されました。それについては、今日、先ほど紹介されましたけれども、日医総研のアンケートの結果を私も配付資料で載せておりますので、それは大臣も御覧になっていると思いますけれども、二〇二〇年でも、過去一年間に費用負担を理由とした受診控えがある割合、二百万円未満は七・八%、二百万円から三百万円は二・八%。収入が少ないほど受診控えが二〇二〇年もあった。十一ページ目には二〇一七年のも載せておりますけれども、過去一年間に具合が悪いが費用がかかるという理由で医療機関の受診を見合わせたことがある割合、二百万円未満は七・八%、二百万円から三百万円は五・三%。これも、収入が少ないほど今でも医療費の負担増が受診控えを起こしている。これはある意味常識だと思うんですよね。それで、少し戻りまして、資料の七、八、九とつけておりますけれども、これは、二〇二〇年、昨年五月二十六日に出ました日医総研のリサーチエッセイですけれども、この中で、患者負担と受診抑制、過去にどんな先行研究があるのかというのを日医総研でまとめられているわけですよね。八ページにありますけれども、受診抑制については、複数の調査から、経済的理由で受診を控えた者が一から二割程度あることがうかがえる。また、受診抑制は低所得者層で多いことも指摘されているというので、いろんな研究結果が、その後、並べられております。当然、経済的理由で受診を控える人が一割、二割いる、こういう認識は厚労省も持っているということでいいわけですよね。
○田村国務大臣 ランド調査は、我々は、自己負担があることにより一般的には健康状態への悪影響は認められなかったことということに結論づけられているというふうに認識いたしております。もちろん、最も貧困で健康状態の悪い六%の方々は別でありますけれども。それから、今ございました日医総研の、これも二百万未満と二百万以上でございますから、今般我々は二百万以上の方々にお願いをいたしておりますので、これ自体も、我々が言っていることを裏づけているという意味も、言うつもりもありませんが、ですから、要は、それでは分からない、なかなか調査結果は難しいということを申し上げているわけでありますし、一割負担、二割負担も、これは、二割負担に関しましては、多分子供たちだというふうに我々は認識いたしておりますので、御高齢者の方と子供を比べている。これもまた、判断するのが本人か本人じゃないかということもございますので、なかなかこれをもってしてどうだという評価、だからどうだと私も言うつもりもありませんけれども、これをもってして証左だと言われると、なかなか我々も、そうですかという話になります。そもそも、今我々が対象としているのは、七十五歳以上の収入が二百万円以上の方々に対して申し上げておりますので、ちょっと委員がおっしゃられている意味が私自身よく理解ができていませんので、いずれにいたしましても、なかなか、これを見ておりましても、調査をしっかりとやるということは難しいなということが改めて分かりました。
○宮本委員 基本的に、収入の状態と医療費の負担という点でいえば、当然、収入が少ないほど受診控えがあるし、医療費の負担が増えるほど受診控えが起きるというのは、あらゆる調査がそうです。私、二回前の一番初めのこの法案の審議のときに、今回の医療費の負担増についてのある西日本の病院の調査を示しましたよね、七十五歳以上、五百人ぐらいの方が回答していると。二百万円以上、百何十万円以上、それから二百四十万円以上と区切ったら、まさに日本の七十五歳以上の方々の調査でも現に受診控えがある。私は調査を示しましたよ。大臣は、それはコメントしようがないみたいな答弁でしたけれども。そういう現に今受診控えがあるんだという現実からも目を背けて、恐らく、今受診控えがあるんだということを認めたら、それ以上負担増というのはできないから、今でも受診控えがあるんだということを認めたくないのかも分かりませんけれども、しかし、そこで、あらゆる調査で同じ傾向が出ているわけですよ。そこから目を背けて突っ走るというのは、私はいかがかと思いますよ。それから、もう一点、今日は資料をつけております。四ページ目からつけているのは何かといいますと、日本での調べた結果なんですけれども、これは、学習院大学の鈴木亘先生ですね、経済論集、二〇一一年に出されたものですが、「慢性疾患と自己負担率引上げ 糖尿病・高血圧性疾患レセプトによる自己負担率引上げの動態的効果の検証」というやつなんですけれども、これは結論のところだけ、考察と結語だけ私は引っ張ってきましたけれども、資料の五ページ目のところに「結語」と出ていますけれども、本稿は、政策的に重要性が高い自己負担率引上げ後の医療費の動態的な変化に着目し、慢性疾患の中から糖尿病と高血圧性疾患を取り上げて分析を行った。具体的には、百十一健保組合のレセプトデータの個票から六種類のエピソードデータをつくり、それを水準とトレンドの両方に差分の差を設定するモデリングで推定を行った。その結果、糖尿病については自己負担率引上げ後に受診率が抑制されたものの、その後、入院確率、入院医療費が増加したことを主因に医療費の回復効果があることが分かった。すなわち、日本医師会などが主張する「受診抑制による医療費増」というメカニズムが働いた可能性があるというふうに書いてあるわけですね。つまり、糖尿病、毎月かなりの、三千円、四千円、人によっては五千円、自己負担一割の方でもありますので、今、七十五歳の人でもあります。これは七十五歳の人をやった調査ではありませんけれども、糖尿病の毎月毎月の診断と、インシュリンだとか、かなり負担があるわけですよね。その下で自己負担を引き上げたら、これは受診が、外来が減ったと。しかしその後、糖尿病の入院が増えたということが言われているわけですよね。それは悪化して増えた可能性が指摘されているわけですけれども、いつもこの負担増の議論をするときは指摘されるわけですけれども、窓口負担を引き上げると受診控えが起きて症状が悪化する、そして重症化してから病院にかかる、そのことによって医療費が逆に増えるんじゃないか、糖尿病についてはこういう指摘が当たるんじゃないか、こういう分析がされているわけですよね。この研究については、厚労省はどういうふうに考えられているんですか。
○田村国務大臣 鈴木亘先生の、これは平成九年九月、被保険者の自己負担が一割から二割に上がったときの研究であります。 言われるとおり、糖尿病と高血圧に着目して、言われるとおり、七十五歳以上じゃなくて零歳から六十九歳でありますから、単純に私は比較できないと思っておりますが、ここで窓口負担引上げ直後に、言われるとおり、糖尿病については外来受診が減少していったということであります。その後、医療費増加等々、言われているとおりであります。一方で、高血圧については、逆に、負担割合引上げ後、外来受診が増加しておるということでございまして、何を言いたいかというと、負担が増えたから高血圧は外来受診が増えたということを言いたいわけではなくて、つまり、様々な要因があって出てくるアウトプットが糖尿病と高血圧で違うわけでありますから、併せて申し上げれば、やはりなかなか、負担のみでどうだということを検証するのは難しいな、いろいろな要因、要素があるなということを改めて感じさせていただいております。
○宮本委員 この鈴木先生の六ページのところでも最後に言われておりますけれども、やはり「早急に、各疾病ごとの弾力性、動態的効果の計測を行い、基礎的知見を蓄積する必要があると思われる。」というふうに先生は書かれているわけですけれども、当然、負担増をやれば影響が出る疾病があって、そのことが重症化リスクを高める疾病があるという大変厳しい指摘だと思うんですよ、私は。そういう一つ一つの疾病に対してどういう影響があるのかというのをしっかり調査もやらずに、高血圧は受診が高まった、糖尿病は受診率が下がった、だから全体として見ればよく分からないんだ、そういうことじゃないと思いますよ、私は。国民の命と健康が懸かっているんですよ。命と健康を守るための健康保険なんですから、それが、その窓口負担増によって本来の機能を果たせなくなるということがあっては絶対ならない、それが本来厚生労働省が取らなければならない立場だというふうに私は思います。ですから、結論ですけれども、もうこの法案の審議は中断をして、まず調査しましょうよ。負担増がそれぞれの疾病、そして国民の健康、そして、今日、長妻さんから、平均寿命も含めて影響を与えているんじゃないか、こういう指摘がありました。そういうのをしっかりはっきりさせてから、また与党協議から始めたらどうですか。
○田村国務大臣 与党のことは私が申し上げるわけにいきませんので、お言葉を差し控えさせていただきますが、いずれにいたしましても、七十五歳以上に団塊の世代の皆様方が二〇二五年には全員なられるということになります。そういう意味で、負担というものを考えたときに、若い方々に後期高齢者支援金という形で御負担していただくその割合、額というものが増えていっているわけで、そこを何とかしないと、やはり若い世代の方々、現役世代の方々の負担というものが過重になってくるわけでありまして、私どもは、今ここでそこにまず第一歩を踏み出さないと、これからこの社会保障制度、医療保険制度というものが国民の皆様方から信頼いただけないものになってしまうのではないかというようなおそれを思いながら、思い描きながら、今般この法律を出させていただいております。もちろん、御負担が増える方々には、大変厳しい中、申し訳ないという思いはあるわけでありますが、そこは、この保険制度をこれから将来に向かって守っていくまず第一歩であるということを御理解をいただいて、どうかこの法案に対して、しっかりと御審議をいただいた上で御判断賜れればありがたいというふうに思います。
○宮本委員 全く納得できない答弁ですね。現役世代の負担の軽減というのは、別に、高齢者の窓口負担増をしなくても、やりようは幾らでもあるわけですよ。私たちは国庫負担を増やせばいいじゃないかということも言ってまいりました。立憲民主党さんからは、後期高齢者の保険料の賦課限度額の上限を引き上げよう、それから国庫から負担を入れよう、そのことによって現役世代の負担軽減は当面できるじゃないかという提案がありました。昨日の参考人質疑でも、賛成だ賛成だという意見が出ていましたよ。私も賛成ですよ、立憲民主党さんの提案には。それでいこうという声が与党からも是非上がってほしいというふうに私は思います。(発言する者あり)
○とかしき委員長 御静粛にお願いします。
○宮本委員 ちょっと残り時間が短くなってきまして、今日はたくさん通告していたんですけれども、次回に回さざるを得ないものがありますけれども。ちょっと幾つか、法案から離れてお伺いしますが、一つは、配付資料でお配りしているのが、資料の十三ページ目からランセットの論文をつけております。これは四月十五日に出たものですけれども、新SARS―CoV―2のエアボーントランスミッションですね、空気感染を支持する十の科学的根拠というのが出ているわけであります。ちょっと今日は時間がないので、本当は、時間があったらこれを紹介してゆっくり議論したいなというふうに思っているんですけれども、大変説得力がある中身なわけですけれども、これについて、厚労省の見解についてお伺いしたいと思います。
○正林政府参考人 お答えします。議員御指摘のペーパーについては、新型コロナウイルスの感染経路について、ある科学者が示した、空気感染することを結論づけるのは困難との報告に対し、著者らが、空気感染が主要な感染経路ではないかとの反論を行ったものと承知しています。このように様々な見解があるところ、WHOにおいては、昨年の七月の感染経路に関する科学的見解として、感染は感染者の唾液や飛沫等が主体であること、医療施設等でエアロゾルが発生する手技が行われている場合にはそれによる感染が起こり得ること、室内の密集した空間等では飛沫感染と併せてエアロゾル感染が起こっている可能性が示唆されること、エアロゾルを発生するような手技を伴わない環境下での空気感染等については質の高い研究が必要であることを発表しているものと承知しています。また、アドバイザリーボードにおいて、室内の密集した空間等では、飛沫感染と併せてマイクロ飛沫も起こっている可能性が指摘されており、厚生労働省としても、いわゆる三密の回避や頻回の換気を行うことなどを推奨しているところであります。引き続き、新型コロナウイルスに関する最新の知見を収集し、効果的な対策に生かすとともに、国民への正確な情報提供に努めてまいりたいと考えております。
○宮本委員 もう一か月以上前ですかね、この場で尾身会長にも、エアロゾル感染と換気の問題について議論して、消毒よりもよほど換気が大事なんだと、エアロゾル感染の対策が今極めて大事だという話が、尾身さん流の言葉はマイクロ飛沫感染という言い方ですけれども、ありました。ところが、厚労省自身は、そのときも指摘しましたけれども、主な接触感染のルートは飛沫と接触というところがちっともホームページが書き改められないわけですよ。分科会の皆さんが言われていることがなぜ正確に書き換えられないのか。私は、本当に、先日の兵庫県の県知事のうちわ会食の話がありましたよね。批判を浴びてやめましたけれども、あれは、飛沫感染と接触感染だというふうに皆さんが言うからああいう誤解が生まれるんですよ。飛沫はマウスガードやうちわでブロックができると。違うんですよね。エアロゾル、マイクロ飛沫、空気感染というのがかなりのクラスター発生では重要な要素になっているから、うちわ会食は駄目なわけですよ。ですから、本当に国民の誤解が広がらないように、やはり最新の知見をしっかり私は示していくのが厚労省の役割だと思います。やはり厚労省がそこを改めないと、なかなか、お医者さんなんかも、やはり厚労省の言うことだと結構、ああ、そうかなと思っていますから、病院によっても、前も紹介しましたけれども、接触と飛沫対策中心で、エアロゾル、マイクロ飛沫対策が弱いのもあるわけですよね。私は、正しい感染経路について認識をすることが新型コロナとの戦いで一番の土台だと何度も言っておりますので、この点、よろしくお願いします。
○正林政府参考人 もしかしたら多少誤解があるかもしれませんが、何回か先生とは議論していますけれども、マイクロ飛沫があることを私どもは否定はしておりません。あり得ると思っています。あのときも議論しましたが、空気感染という言葉を使うと、はしかとか結核とか、そういうものをイメージして、例えば、はしかというと相当な感染力ですから、この部屋で一人はしかの患者さんがいたら部屋中に場合によっては広がってしまう。そこまでの感染力はないだろうということで、我々はマイクロ飛沫とかそういう言葉を使っています。いずれにしても、飛沫感染、接触感染、マイクロ飛沫、いずれの可能性もありますので、そういう経路で感染しないように皆さんで気をつけましょうという普及啓発は今後も行っていくつもりです。
○宮本委員 分科会の皆さんはやられているんですけれども、厚労省の基本のホームページのところには、主な感染ルートは接触と飛沫と書いてあるんですよ。マイクロ飛沫とは書いていないですからね、エアロゾルとは。そこをはっきりして、もっと伝えなきゃまずいですよということを申し上げておきたいと思います。最後ですけれども、ちょっと話が全然離れますけれども、資料十五ページ目に、これは昨日の朝日新聞、「「激戦」〇歳児クラスに異変」ということで、認可保育園、ゼロ歳児がかなり東京でも空いているということが出ています。実は、この朝日新聞の記事を見る前に、月曜日にこの質問通告をしたんですけれども、私も週末に地元の保育園の方々から、実はゼロがかなり空いていて、園の経済的な運営でも大変な状況が生まれているというお話を伺いました。私は、ゼロというのは、元々、四月でいっぱいに埋まるのが理想の姿じゃなくて、年度の途中も空いていて、必要なときに預けられる。生まれるのは、四月に合わせて子供は生まれるわけじゃないですから、生まれて働くときに合わせてゼロというのは預けられるようにするというのは非常に大事なので、空きがあってもいいと思うんですけれども、空きがあっても経営が成り立つように私はしていかなきゃいけないというふうに思っているんですね。でも、現状は、三人空いたら、一対三の配置基準ですから、人件費が一人分大変だということになっております。ちょっと、入所状況と経営への影響を早急に把握をして、どうするのかという対策を考えていただきたいと思いますが、いかがですか。
○渡辺政府参考人 まず、入所状況につきまして厚労省の方からお答え申し上げます。厚労省では、毎年四月一日時点の認可保育所の利用定員数それから入所児童数につきまして、これは市町村単位でございますけれども、児童の年齢別に調査を行っております。令和三年、直近の四月一日時点の調査、これは現在実施中でございまして、取りまとめ次第、例年九月ぐらいになりますが、公表を予定しておりますが、今回の調査におきましては、併せまして、定員数とか入所児童数だけではなくて、新型コロナウイルス感染症の発生の影響についてもアンケートという形で併せて調査を行っているところでございますので、こういったことにつきまして、併せまして保育現場の状況もしっかりと把握していきたいと思っております。
○宮本委員 まとめるのは九月だという話がありましたけれども、ずっと空いている状況が続いたら、結構園の運営も大変になるわけですよね。やはり、子育て世代、この間の新型コロナの影響で仕事がないということで、そのこともあってゼロが空いているという影響もあるというふうに地元の保育園の方々からも伺っております。恐らくこれは、全都、全国でもそういうことになっているというふうに思うので、大臣、これはちょっと、どういうことができるかというのを、実際、早急に、まとめるのは九月だといったら遅くなりますので、事態はつかみ始めているということですけれども、経営状況なんかも含めて、関係団体も含めて意見を聞いていただいて、ちょっと何らか検討していただきたいと思うんですけれども、いかがですか。
○とかしき委員長 田村厚生労働大臣、申合せの時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。
○田村国務大臣 詳細に経営状況を集めるというのは、ちょっとこれはなかなか大がかりになって難しい話だと思いますが、いろいろなネットワークを使いながら、どういう状況なのかというのをピンポイントで聞いてみたいというふうに思います。
○宮本委員 是非お願いします。その上で必要な対策をしっかり取っていただきたいと思います。終わります。