2021年6月2日 衆院厚生労働委員会 五輪開催「普通ない」尾身会長が答弁

衆議院TV動画 6月2日13時〜宮本徹 (この日、3回質問していますが、1回目です)

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は2日の衆院厚生労働委員会で、東京五輪・パラリンピックの開催について、「今の状況でやるというのは普通はない。このパンデミック(世界的流行)で」と述べました。日本共産党の宮本徹議員への答弁。
 尾身氏は、開催するのであれば主催者の責任で規模を最小化し、管理体制を強化する必要があると指摘。また、「そもそもこういう状況の中で何のためにやるのか目的が明らかになっていない」として、「一体何のためにやるのかという明確な話、いかに感染のリスクを最小化するかということをパッケージで話さないと国民は協力しようと思わない」と述べました。

以上2021年6月3日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2021年6月2日 第204回衆院厚生労働委員会議事録≫

○とかしき委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。今日も、尾身会長、お忙しいところありがとうございます。質問させていただきます。 毎回東京のことについてお伺いしているわけですけれども、東京の日々の感染確認者数は連続して前週の同じ曜日に比べて下回っているのが続いているわけですけれども、東京都が公表している発症日別のデータを見ると、五月二十日を境に、下げ止まり、横ばいしているように見えるんです。一時的なものならいいなと思うんですけれども、これはどう見たらいいんでしょうか。
○尾身参考人 感染状況については、いろいろな指標があります。今週先週比とか、その他、あとは発症日別あるいは報告日別、その中でも、一番現実に近いのはやはり発症日別のグラフだと思います。一番理想的なのは感染日別のというのがあるけれども、これはなかなか難しいので。今、発症日別のデータというのが一番、検査の多寡、日によって検査は違いますよね。そういうものに影響が一番少ないものということで、発症日別のものが一番信頼性が高いと思いますが、そうした中で、今委員御指摘のように、発症日別のものを見ると、やや下げ止まり、少なくともどんどん下がっているようには見えないというのがあると思います。今ここは専門家の間で毎日詳しく見ていますけれども、これが今、本当に下げ止まって、平行にしているのか、やや下がっているのかというところは非常に微妙な段階だと思います。これから少しまだ注意して見つつ、少なくとも、どんどん急激に下がっているということは恐らくないし、どんどん急激に上がっているというのでもないので、その中間でどうなるかというのは注意深く見ていく必要があると思います。
○宮本委員 発症日別という一番現実に近いデータで見ると、大変注意しなきゃいけない状況になってきているというのが今の東京の状況だと思います。そういう中で、ここでもオリンピックの問題がずっと議論されているわけですけれども、今日オリパラ事務局に来ていただきましたけれども、尾身会長はこの間、オリパラという大規模イベントに伴う国民の動きで感染が増加するリスク、これは随分あるんだということを指摘されております。昨日、代々木公園のパブリックビューイングは中止ということが発表になったわけですけれども、一方で、上野公園や井の頭公園や日比谷公園などのパブリックビューイングはやる予定だということなんですよね。これは本当にそのままやるんですかね。その辺、どうお考えなんですか。
○河村政府参考人 お答えいたします。いわゆるパブリックビューイングの開催につきましては、万全の防疫策を講じたところで適切な開催が可能かといった観点で、各開催主体に、主催主体において御判断いただく筋合いの話だと理解してございます。
○宮本委員 組織委員会がパブリックビューイングをやるということになったら、これはどこでもやると思うんですよね、はっきり言って。それは地元選手がいる自治体でもやるでしょうし、あるいはいろいろな企業なんかでもそれぞれ集まって応援するということは、いつものオリンピックだったらそういうことがやられているわけであります。一方で、東京でいえば、この間も夏祭りだとかをどんどん中止しているわけですよね。花火大会なんかもどんどんどんどん中止が発表されております。私の地元でも、今年こそはと思っていたけれども、変異株の影響も踏まえて中止を決断するという夏祭りが相次いでおります。本当に断腸の思いで、やはり感染拡大防止のためにはということで協力しなきゃいけないということに、多くの夏祭りなんかもなっているわけですよね。そういう国民、都民の努力の中で、オリンピックをやればこれは果たしてどういうメッセージになっていくのかなということを、私たちはよく考えなきゃいけないと思います。昨年、GoTo事業をやりました、イートとかトラベルとかをやりました。これは国民全体に対して、感染対策より経済を回すときだ、こういうメッセージになってしまった、そして感染拡大の契機になっていったのは否めないと思います。また、その後、総理のステーキ会食というのも起きましたけれども、これは政府のメッセージが国民に響かない状況をその後つくってしまった大きな要因だと私は思っております。尾身会長にお伺いしたいと思いますが、インドで確認された変異株への置き換わりも想定される、感染対策を更にしっかり呼びかけていかなきゃいけないということが求められる中で、オリンピックだけを特別扱いにして行うことが社会に対してどういうメッセージになってしまうのか。この点、お聞かせいただけるでしょうか。
○尾身参考人 私は、これは本当に国あるいは組織委員会の関係者がオリンピックをやるという決断をしたのかどうかよく分かりませんけれども、した、あるいはするのであれば、いわば、やや比喩的に言えば、三位一体の努力が必要だと思います。一つ目は、政府あるいは自治体のリーダーシップによる一般市民の協力で、人流に伴う接触機会のことをなるべく減らすということが、私は、これは一般市民あるいは自治体、国の努力が必要だと思います。それからもう一つは、ここに来て、人々がなかなか、緊急事態宣言などの協力を得にくくなっているという現実がありますから、相変わらず人々の努力だけに頼るという時期はもう過ぎたと思いますので、ITのテクノロジーだとかサイエンスというものを最大限活用するというのがもう一つの三位。それから最後は、これはオリンピック組織委員会の人たちが是非やっていただきたいことですけれども、オリパラをもしやるのであれば、その規模をなるべく最小化して、それから管理体制をできるだけ強くする。こういう人々の、国の、自治体の努力と、それからサイエンスとテクノロジーの最大の活用と、それから、オリンピックをオーガナイズする人たちの責任としては、これはなるべく、今の状況でやるというのは普通はないわけですよね、このパンデミックで。そういう状況の中でやるということであれば、オーガナイザーの責任として、開催の規模をできるだけ小さくして管理の体制をできるだけ強化するというのは、私は、オリンピックを主催する人の義務だと。そういう意味で、三位一体の努力が必要だと思います。
○宮本委員 先ほど尾身会長が、普通、こんなパンデミックの中ではやらないですよねということをおっしゃいましたけれども、そして、やるなら三位一体の努力が必要だということを言われました。ただ、やるという前提に立てばそういう話が出てくるのかも分からないですけれども、果たして、国民の協力だけという段階は超えているのは確かですけれども、しかし、依然として、やはり国民の皆さん、市民の皆さんの協力、行動変容が感染対策の一番の土台であることは間違いないと思うんですよね。ワクチンがもっと早く打てればまた違うんでしょうけれども、どう考えても七月、そして八月のパラリンピックの時点では、ワクチンは、高齢者はそれなりに打つでしょうけれども、基礎疾患の方が打っている最中には始まるわけですよね。抗体ができる前に始まっていくと思うんですよね。そういうときに、オリンピック、やりましょうということになったら、やはり間違ったメッセージになっていく。どうしても、人々の動きはもっと活発にならざるを得ない。やることによって、幾ら規模を縮小しましょう、協力してくださいということを言っても、それは、夏祭りだったら中止かも分からないけれども政府はやるんだということになれば、どうしても、何だ、もう感染対策はそんなに重視しなくていいのかという空気が生まれてしまうのではないか。ここへの懸念というのが私はかなりあるんですけれども、その点、いかがですか。
○尾身参考人 私は、今回一番大事なのは地域での感染拡大を防ぐことだということは前から申し上げているとおりで、そういう意味では、オリンピックの組織委員会、政府、自治体が、矛盾したメッセージは避ける、一体感のあるメッセージを出すということは、もうこれは必須、非常に重要なことだと思います。その中で、やる、やらないにしても、どういうリスクがあるのかということをしっかり見極めた上で説明する必要があると思いますけれども、私は、人流の増大、接触の機会ということを前から申し上げていますけれども、もう少しこれを分析しますと、人流増大には三つの要素があるんだということを十分理解した上で、対策を打つなり決める必要があると思います。一つ目の人流増大に至る要素というものは、一つは観客のことで、観客が全国から集まる、観客の移動に伴うもの、要素というのが一つだと思います。それから二つ目の要素というのは、パブリックビューイングだとか応援イベントや、スポーツなどの応援に伴うものということがあると思います。それから三つ目は、一つ目はいろいろなところから会場に来る、観客が来るというものですけれども、三番目はそれと逆に、比較的都市部に住む人たちが、この期間には実は連休というのもあるし、お盆もあるわけですよね。それ以外にも、今度は帰省やら、国の、地方のおじいさんがいたりおばあさんがいるということの帰省の方の、こういうことですよね。こういう三つのリスクが実は地域においてあるので、これはスタジアムの中の、バブルの中の話とは全く別の話で、こういうことがあるんだということを、実はこっちの方がはるかに感染のリスクが高い。これをどう制御するのかということをしっかりと考えることが、私は、国、そして特に地方、国内の方は国の、地方自治体の責任ですよね、ということで、しっかりとそういうことを吟味する必要があると思います。
○宮本委員 矛盾したメッセージは駄目だ、統一したメッセージを出すのが非常に大事だというお話が初めにありましたけれども、全く私も、本当にそのとおりだと思いまして、人流、三つの要素とお話がありましたけれども、どう考えても、やはりオリンピックをやると、メッセージとしては統一したものにはなかなかならないんじゃないか、矛盾したものになってしまうんじゃないかというふうに思わざるを得ないわけですよね。私もかつて渋谷の繁華街のそばで暮らしていたことがあるんですね、今、長妻さんの選挙区ですけれども。サッカーの日本代表の勝った後というのはもう大騒ぎですよね。みんな渋谷で、スポーツ、いろいろな飲食店で見ていますから。わあっと集まってきて、すごい熱気なわけですよね。オリンピック、日本代表と言われたら、やはりみんな応援したくなりますよね、国民はみんな、四年に一回のイベントですから。幾ら田村大臣が、自宅でテレビの前で観戦してもらうんだということを言っても、本当にそんなことになるんだろうかというのが多くの皆さんの思いなのではないのかなというふうに思います。ですから、もちろん尾身先生たちはプロフェッショナルですから、やるというふうに政府が決めちゃった場合には、それに応じてどうするかということを当然考えられるんでしょうけれども、やらないという選択肢も、私は、専門家の皆さんとしてもあってしかるべきだというふうに思います。やはりどう考えても、オリパラをやれば、人の流れ、先ほど帰省の話もありましたけれども、オリンピックをやって観客も来ていいんだという空気が生まれれば、どうしても、確かに連休の、連休といいますか夏休み、お盆の人の移動というのも、それは自然に生まれていくのかなという思いもあります。そうすると、やはりこれをやること自体が、結局、第五波を大きくしてしまう危険性があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○尾身参考人 これは、仮にやるのであれば、リスクを最小化するのが関係者の務めであると思うんですけれども、私は、どうやって感染リスクを最小化するということは、もちろん、当然、オーガナイザーの方々の責任だと思います。そもそも、このオリンピック、今回、こういう状況の中で、一体何のためにやるのか、目的ですよね。そういうことがちょっと明らかになっていないので、私は、このことをしっかりと、はっきりと明言することが、実は人々の協力を得られるかどうかという非常に重要な観点だと思うので。オリンピックを仮にやるのであれば、いかに感染のリスクを評価して、それを最小化するということはもとより、一体何のためにこのオリンピックを開催するのかという明確なストーリーというか話、いかに感染のリスクを最小化するということとパッケージで話をしないと、国民の人は。一方で、恐らくここは、国あるいは自治体は、大臣おっしゃるように、なるべくテレビで観戦して、外にはなるべく出ないでというような趣旨のことをお願いすることになりそうですよね。そういう中で、やはりなぜやるのかということ、あるいは、オリンピック委員会の人がどれだけ汗をかくのか、先ほどの三位一体の、オリンピック関係者の方ですよね。そういうことが明確になって初めて、一般の市民は、それならこの特別な状況を乗り越えよう、協力しようという気になるんだと思います。そうしたはっきりした、国から、あるいは国というよりはオリンピック委員会でしょうかね、から、なぜやりたいのかというような、これは国ですかね、誰が決めるのかよく分かりませんけれども、そういう関係者がしっかりとしたビジョンと理由、これを述べることが私は極めて重要だと思います。それがないと、なかなか一般の人はこれに協力しようと思わないで、地方で飲み会があったり、地方へ帰れば、同級生と飲もう、せっかくと、こういうことになる可能性が否定できないと思います。
○宮本委員 裏を返せば、本当に、今、何のためにオリンピックをやるのかというのが全く国民には理解されていない状況だということだというふうに思います。元々オリンピックは、オリンピズムですから、平和と友好の祭典で、四年に一回集まってやるわけですけれども、菅総理は、安倍さんのときからそうですけれども、新型コロナに打ちかったあかしでやるんだという話をしていて、これは誰も打ちかっていないというのは、現時点ではそう思っているわけですから、なかなか何のためにというのは、国民が理解し得る理由が出てくるのかなという疑問符を私自身は抱いております。昨日、総理はほかの委員会で、オリンピックより国民の命最優先なんだということをおっしゃいました。ですけれども、やはり客観的に見て、私自身は、この局面ではオリンピックは中止ないし延期をするということが、命最優先、そして感染対策優先ということになると思うんですよね。医療従事者のことを考えても、延べ七千人必要だと。もしかしたら、オリンピックをやらなければワクチン接種に、その中で協力していただける医療従事者の方がいるかもしれない。そうなれば、守れる命は更に増えることもありますし、感染終息もそれだけ早まるということになります。あるいは、東京都なんかも、今、組織委員会に一千百人職員を派遣しているわけですよ。その一方で、飲食店への協力金の支給は遅れていて、私の地元でも悲鳴の声が上がっております。その職員の皆さんをもっと協力金の支給事務を進めるために充てられないのか、あるいは飲食店の換気対策、私はいつも言っていますけれども、そういうもののアドバイスのために充てられないのか、こういうことも考えるわけです。あと、午前の議論でもありましたけれども、水際対策で専門家の皆さんが言う理想の期間できない理由が、一つはキャパの問題があるわけですよね、ホテルの。でも、オリンピックのために確保しているホテルを充てれば、水際対策ももっとしっかりしたものができるじゃないか。こういうことを考えると、本当にオリンピックを今やることが優先課題なのかというのは大変疑問だということを申し上げておきたいというふうに思います。最後に、オリパラ事務局に、オリンピックに関わって一点お伺いしますけれども、観客にPCR検査の陰性確認を求めるという報道が出ておりますが、そもそも検査はすり抜けが多いですけれども、報道では一週間前の検査ということを言っているわけですよね。一般的には、海外から来る方はたしか七十二時間以内の検査ということを言っているわけですけれども、一週間前の検査では、その後感染して、観戦日までに感染力を持つことになるというのは起き得るというふうに思いますし、あと、検体をどこで誰が取って、その検体がその人のものだという確認は本当に果たしてできるのかなということもあるわけですね。調子が悪いけれどもオリンピックに行きたいという人は、ほかの人の検体で出して陰性確認を取るということなんかも、こういうことも起き得るんじゃないかと思いますが、その点はどうお考えですか。
○河村政府参考人 お答えいたします。御指摘の観客に対する検査の件でございますが、政府として具体的な検討を行っている事実はございません。その上で、東京大会における観客の在り方につきましては、いわゆる五者会議におきまして議論をしてきたところでありまして、既に海外からの観客受入れについては断念することで合意をしているところです。また、大会の観客数に係る判断につきましては、変異株による国内感染の状況も踏まえ、スポーツイベント等における上限規制に準ずることを基本に、六月に合意することで話がまとまっているところであります。政府といたしましては、引き続き安全、安心を最優先に、東京都、大会組織委員会、IOCなどと緊密に連携し、大会に向けた準備を行ってまいります。
○宮本委員 検討を行っていないと言うんですけれども、検討を行っているから報道もあるんでしょうし、今朝もNHKのテレビに、大学の先生が、この検査の計画に携わっているという方が出てしゃべっていましたので、もうちょっとちゃんと話してほしいなと思いましたけれども。いずれにしても、本当に命と感染対策最優先で、政府を挙げて考えていただきたいということを申し上げておきたいと思います。以上でオリンピック関係は終わりますので、尾身会長、お忙しいところありがとうございました。大変参考になりました。それでは、育児・介護休業法に関わって、今日はマタハラ、パタハラについてお伺いをしたいというふうに思います。厚労省の委託調査でも、育休制度などを利用しようとした男性の四人に一人がパタハラを受けていたということであります。大企業でも横行しております。大手のアシックスの男性社員、都内のオフィスでプロモーション業務などを担当していたが、長男が生まれ、約一年間の育児休業を取得した。職場復帰後、つくばみらい市の物流センターへの出向が言い渡された。荷降ろしや梱包など、これまでの業務とは全く違う内容を命じられ、その後、出向を解かれ都内のオフィスに戻ったものの、業務命令がなくなった。社則の英訳作業などをしていた。男性は、ハラスメントに当たるとして、アシックスに慰謝料などを求め提訴し、三月に和解をしております。アシックスは、東京オリンピックのスポンサー、東京二〇二〇のゴールドパートナーでもありますが、こうした大企業がパタハラ裁判の当事者にもなっている。こういうことを、大臣はどう感想を持たれていますか。
○田村国務大臣 個別の事案のお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的に、育児休業等々で不利益取扱い等々をしてはならないわけでありますし、こういう育児休業等々を含めて、ハラスメントということに対しては、その防止措置をやはり企業として、事業主として講じなければならないと義務づけているわけであります。もし違反ということになれば、当然、助言、指導、勧告という形になってくるわけでございまして、場合によっては企業名の公表ということもあり得るわけでございますので、我々としては、このような、パタハラを含めて、ハラスメントということが起こらないようにしっかりと対応していかなければならないというふうに考えております。
○宮本委員 前回の法改正で、事業者にマタハラ、パタハラの防止措置というのが義務づけられたわけですけれども、実態はそれほど変わっていないわけですね。参考人質疑が先日、本委員会でもありましたけれども、全労連の舟橋参考人が紹介した実態調査でも、妊娠、出産、育児に関わってハラスメントを受けたことがあるは一六%で、五年に一回調査しているそうですけれども、五年前よりも若干増えたという話でございます。マタハラネットの皆さんは、防止策として、妊娠、出産や育児、介護休業を理由に解雇や退職勧奨をした事業主に対する過料と社名公開、また、妊娠、出産や育児、介護を理由に不利益な評価をした事業主に対する過料と社名公開などを提言しているわけですけれども、やはりマタハラ、パタハラ防止ということを考えた場合に、実効性の担保には、今よりも踏み込んだペナルティーというのが必要なんじゃないかと思いますが、いかがですか。
○田村国務大臣 でありますから、事業主に対して、ハラスメントを防止する措置を講じなければならないということを義務づけているわけであります。いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたけれども、違反があるような件に関しましてはしっかりと助言、指導をやってまいりたいというふうに考えております。
○宮本委員 その枠組みではなかなか、実態としてはなくなっていないということなわけですよね。やはりペナルティーがないと、企業の側は、是正指導されればその段階で直せばいいという考えになってしまっているのではないか。仮に、労働者が労働局に相談しなければ、泣き寝入りしていたら、事業主側のやり得というのが今の状況なわけですよね。ですから、なかなか今の防止措置だけではマタハラ、パタハラの根絶には至らないのかなというふうに思いますので、更なるペナルティーを是非検討していただきたいと思います。さらにもう一点、ILOの百九十号条約、暴力及びハラスメント撤廃条約ができましたが、我が国は、批准に必要なハラスメントを禁止する法律がありません。マタハラ、セクハラ、パワハラなど防止の指針はあるわけですが、そこに入らないハラスメントもたくさんあります。また、事業主への防止措置、先ほど大臣おっしゃいましたけれども、それはあるわけですけれども、ハラスメントの主体は様々で、やはりみんながハラスメントは駄目だという認識を持つ上で、事業主への防止措置だけでは不十分で、ハラスメントは人権侵害であり許されないことなんだ、こういう規範を国が法律でつくっていくということが私は大変大事だと思います。ハラスメントが法律で禁止されれば、これが社会のルールになる、社会全体でハラスメントをなくそうという意識が醸成されていくことにもなります。そうなれば、ハラスメントの抑止にもなっていくというふうに思います。行政がハラスメントを認定し被害者を救済する上でも、私は禁止法は不可欠だというふうに思っております。そこで、マタハラ、パタハラも含めハラスメント禁止を明確にした法整備に踏み出して、ILO百九十号条約を批准すべきではないかと思いますが、大臣の御決断を求めたいと思います。
○田村国務大臣 ILO百九十号条約でありますが、今、六か国ですかね、批准されておられるということでありますけれども。これは昨年施行された改正法においても議論をされておるというふうに思いますが、要は、まず定義、これは当然、条約を結ぶためには、批准するためには定義づけなければならない、つまり、禁止しなきゃなりませんので、禁止して罰則を置くということになれば、ハラスメントの行為、これの定義づけをしなきゃならない。議論の中で、なかなか定義をつけるのが難しいというのは、委員もそういう御議論があったのは御承知だというふうに思います。あわせて、労働者以外の方々、例えば求職者でありますとかボランティアでありますとか様々な方々がおられるわけでありまして、そういう方々に対しても一定の対応をしなければならないということで、これはなかなか、我が国においてそこまでまだ十分に理解を得られていないというところもあるんだというふうに思います。いずれにいたしましても、もう既に法律自体施行されているものがございますので、しっかりと周知をさせていただいて、その実効性といいますか効果を我々は見ていかなきゃならないというふうに思っております。
○宮本委員 何か大変後ろ向きな答弁で残念なんですけれども。定義とおっしゃいますけれども、セクハラの防止の指針にしろパワハラの防止の指針にしろ、何がセクハラで何がパワハラでというのは、それはちゃんと定義もつくって、事例も既に厚生労働省自身示しているわけですよね。あるいは、海外でいえば、EUやイギリスの平等法では、ハラスメントは、他者の尊厳を侵害する行為であり、脅迫的、敵対的、品位をおとしめるような屈辱的な行為であり、さらに、不快な環境をつくる行為であるというふうになっていて、それは定義ができないわけではないわけでありますよ。条約を作るときには、日本政府自身は賛成票を投じたわけですよね。やはりその立場に立って、批准に向けて法整備を、真剣に検討を進めていただきたいということを申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わります。