2021年7月7日 衆院厚生労働委員会閉中審査 五輪は中止が民意

 日本共産党の宮本徹議員は7日の衆院厚生労働委員会の閉会中審査で、東京都議選で「今夏の東京五輪の開催中止・延期をかかげた共産・立民の議席が増えた」と述べ、五輪中止を強く求めました。
 宮本氏は、感染力が強いデルタ株が広がり、イスラエル保健省がファイザー社製のワクチンの予防効果が低下したと発表したことと東京の感染状況にふれ、今後の感染対策の留意点をただしました。
 政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は、デルタ株の感染力は従来に比べて強いとしたうえで、ファイザー製のワクチンは「少し効きが弱まっている」と答弁。政府の今後の具体策として「矛盾したメッセージを出さないことが非常に重要だ」と述べました。
 宮本氏は大会関係者だけで海外から5万3千人が訪日し、食事をしながら観戦すると報じられているとして、IOCやスポンサー関係者を入れるのは「感染対策に逆行するメッセージになるのではないか」と強調。尾身氏は「無観客が望ましいと申し上げてきた。大会関係者も一部必要な人を除いて、なるべく最小限にすることが、矛盾したメッセージを出さないために重要だ」と述べました。
 宮本氏は、サッカーの欧州選手権で観客に感染が広がっていることにふれ「五輪をやれば競技場外でさまざまな形で応援、観戦が起きる。感染拡大の大きな契機になりかねない」と指摘しました。
 尾身氏は、「当然、高揚感はある。人々の意識に与える影響は非常に重要だ。緊張感をもって対策を行うことが極めて重要だ」と述べました。宮本氏は、国民の納得が得られなければ感染防止の協力も得られなくなると指摘。五輪開催の中止を要求しました。

以上2021年7月8日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2021年7月7日 衆院厚生労働委員会閉中審査 議事録≫

○とかしき委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。大臣、日曜日に都議会議員選挙がありました。枝野さんからもお話がありましたけれども、この夏のオリンピックについては中止あるいは延期、これを掲げました私ども日本共産党及び立憲民主党が議席を増やすということになりました。やはり都民は一刻も早く日常を取り戻したいという思いがあります。そのために感染防止に努めているのに、感染を広げるリスクがあるオリンピックをやるのは何事かということだと思うんですね。やはり、コロナ対策に今集中するべき時期ではないか、オリンピックは、この夏は中止して、安心してみんなで応援できる時期にやるべきだ、こういう都民の思いの表れだというふうに私は思っております。大臣は都議選の結果をどう受け止められているのか。そして、この結果を受け止めて、総理に、やはり今からでもオリンピックは中止すべきだ、このことを進言すべきじゃありませんか。
○田村国務大臣 都議選の結果を私の立場から何か申し上げるということはないんですが、様々な政党がそれぞれ議席を増やしておる、また、減らしたところもあるということであろうと思いますが。国民の皆様方のいろいろなお声というものをしっかりと我々としてはお聞かせをいただきながら、これからもコロナ感染症の予防対策、これをしっかり進めてまいりたいというふうに考えております。
○宮本委員 やはり選挙で示された民意というのは、しっかり政治は受け止めなきゃいけないと思うんですよね。自民党は史上二番目に少ない議席ですから、胸を張るような話じゃないですよ。総理だって、謙虚に受け止めたいと言って反省しているじゃないですか。自公で過半数というのは届かなかったわけですよ。都議選前の報道では、複数の大臣がオリンピックはやはり中止した方がいいと総理に進言していた、こういう報道も出ていましたよね。それはもう当然、命と健康を守る厚生労働大臣としては、何よりも、国民が何を今考えているのか、それをしっかり、選挙で示された民意を受け止めて行動すべきだということを強く求めておきたいと思います。その上で、今日は尾身先生、お忙しいところ、本当にいつもありがとうございます。幾つかお伺いしたいと思うんですが、今、感染力の高いデルタ株への置き換わりが始まっておりますけれども、気になる発表がイスラエルの保健省からありました。デルタ株が広がる中で、ファイザー製のワクチンの感染の予防効果が従来の九五%から六四%に低下したと。重症化予防の効果はそれほど落ちていないということですけれども、それ以外のところでかなり落ちているということなんですね。デルタ株でワクチンの感染予防効果が下がるということであれば、今後の対策でどういう点に留意する必要があるとお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
○尾身参考人 私ども、やはりこのデルタ株、変異株ですよね、感染力が従来の株のものに比べて強いというのはほぼもう間違いないと思うので、そういう意味では、今まで以上に、これから特に夏休みがあったりお盆があったり、いろいろな感染が更に拡大する機会があるので、今まで以上に人と人との接触、人流ということもそうですけれども、人流に伴う人と人との接触というものを十分避けて、しっかりとした、マスクを中心とした感染対策、換気、そういう総合的なことをしっかりやるというのが今まで以上に求められている時期に来ているというふうに私は思います。
○宮本委員 ワクチンの効果が下がっているというイスラエルの保健省のデータについては、どうお考えですか。
○尾身参考人 イスラエルのデータは、いわゆるリアルワールドの結果でそういう結果が出てきていると思いますけれども、それと同時に、実験室でのデータでも、少し効果が、例えば抗体価が上がった血清にデルタ株のウイルスを入れてみると、なかなか、中和が生じにくい、つまりウイルスがしにくいというようなことが実験室でも出ているので。こういうことで、私は、ワクチンについては全く効かないということはなくて、まだこのワクチンは基本的にはよく効くワクチンだと思いますけれども、少し効きが弱まっているということもあるので、より感染対策は慎重にやるべきだと思います。
○宮本委員 より感染対策を慎重にやるべきだというお話です。先ほど長妻さんと尾身先生とのやり取りで、東京の状況のお話がありました。入院の数も増えていますし、重症者の数も増えてきている。効果的な対策を早く打たなきゃいけないというお話がありましたけれども、具体的には、効果的な対策というのはどういうことを現時点では尾身先生としてはお考えなんでしょうか。
○尾身参考人 具体的な細々なことはちょっと割愛しますけれども、私は、大きく分けて二つ、三つと言ってもいいかもしれないんですが、あると思います。まず一点目は、もう既に我々の国は、基本的対処方針でいろいろなことをやるべきということを書いてあるわけですよね。それは、検査を更にしっかりやるだとか、QRコードのこととか、ワクチンの接種というのはもとよりですけれども、そういう既に基本的対処方針で国、地方自治体が実際にやるんだということを明記したことがあるわけで、それについては私はかなり進んでいると思いますけれども、まだ実効性というのでそこを加速する必要があると思います。それから、それに加えて、今申し上げたような新たな感染力あるいはデルタ株というようなこともあって、あるいは、更にオリンピックのこともありますよね。そういう意味では、基本的対処に今までに書かれていないようなことも新たにやるということ。例えば、これから特に夏休みがあったりお盆があるので、そうなるとどうしても人と人との接触が多くなるので、そういう意味では、今まで言っていたわけですけれども、なるべくふだん会うような人との機会を、接触するというようなことも含めて、あるいはオリンピックになれば、これはやる、やらないかという話がありましたけれども、なるべく家でテレビを見てもらうというような、これは新たなことですよね、そういうことを、新たなことをしっかりやる。それと同時に、三つ目は、ここは非常に重要な時期に来ていますので、政府、自治体がしっかりした対策を打つと同時に、矛盾したメッセージを出さないように、つまり整合性のある、一体感のあるメッセージを出すということも重要だと私は思っています。
○宮本委員 矛盾したメッセージを出さないということが極めて大事だというお話もありましたけれども、専門家の皆さんの先月の提言では無観客が望ましい、それが一番リスクが低いんだということが提言されてきました。今日議論になっておりますけれども、報道では、オリンピック、無観客なのか、それとも小規模の会場には観客を入れるのか、こういう議論がされている。その一方で、大会関係者は別枠だと報じられているわけですよね、スポンサー、IOCの関係者。大会関係者というのは、海外から来るだけでも五万三千人ということを言われています。報道では、VIPラウンジですよね、豪華な食事を出しながら観戦する、これはお酒は出さないということにはなっていますけれども、それ以外はVIPラウンジも予定どおり運営するというふうに報じられているわけですよね。こうなると、日本人の観客は入れないかも分からないですけれども、それ以外のIOC関係者、スポンサー関係者の事実上の観客は入れてやるということになったら、これは感染対策に対して逆行するメッセージになるのではないかと思いますが、尾身先生のお考えはいかがでしょうか。
○尾身参考人 私どもは、前から無観客が望ましいということは申し上げているところです。その上で、今委員の御質問の、大会関係者をいわゆる別枠みたいな形で入れるのはどうかということですけれども、私は、ここは、前から申し上げましたように、オリンピックをやるのであれば、なるべく小規模にして、矛盾したメッセージを出さないということが非常に重要なので、大会関係者の人を入れる必要が一部あると思いますけれども、なるべく最小限にすることが矛盾したメッセージを出さないために非常に重要だと思います。
○宮本委員 基本はそういう方々も入れないということが一番望ましいと。確かに、どうしても入らなきゃいけない、大会関係者で運営をする側の人は入らなきゃいけないのかも分からないですけれども、お客さん、観戦する側で入らなきゃいけない人というのは、基本的には大会関係者ではいないんじゃないかというふうに私は思うんですよね。そういう人たちが、それこそスポンサーの人たちだとか、あるいは五輪貴族だとかIOCファミリーとか、いろいろなことを言われていますけれども、そういう方々がVIPラウンジで楽しく観戦していると。これは、やったら私は、本当に感染対策に逆行するメッセージになるのは間違いないというふうに思います。それと、もう一点お伺いしたいんですけれども、この間の報道で、サッカーの欧州選手権の応援で、スコットランドで大きく感染者が増えているんですね。ロンドンにみんなで応援に行って、パブで見たり、いろいろなところで観戦をして、その後スコットランドに帰って、そこで二次感染も含めて広がっているということなんですね。ですから、そういうことを見ると、たとえオリンピックに観客を入れないということになっても、恐らくオリンピックをやれば、競技場の外で様々な形での集まっての応援、観戦というのはどうしても起きると思いますよ、私は。当然、みんな応援したいですから、やれば。そうすると、それが感染拡大の大きな契機になりかねないというふうに私は思っております。しかも、イギリスと違って日本はワクチンの接種はそこまで進んでいない。そうすると、先生が先ほどおっしゃられたように、四十代、五十代、こういう層で重症化する方々が増えていくという危険もあると思うんですよね。ですから、この段階での、こういうヨーロッパのサッカー選手権の事態を踏まえて、オリンピックの感染拡大リスクというのを先生はどう見ていらっしゃるのか、改めてお伺いしたいと思います。
○尾身参考人 私がこういう席で申し上げたいことは、今、オリンピックに観客を入れるかどうかということが非常に国民的な関心が高いと思いますけれども、それはやはり非常に重要なことで、そうしたことに関心が行くのは私は当然だと思います。その上で、もう一つそれと並行して大事なことは、実は、オリンピックというのがなくても、これから、七月、八月、九月のこの時期は、もう既に今東京では感染が拡大傾向にあって、デルタ株のことがある、人流の増加がある、それから、この季節になるとどうしても感染しやすいということが今まで分かっていますので、オリンピックがなくても、感染の拡大が徐々に進行していて、もう感染拡大のルートに入っておりますから、そのことを我々日本人は、しっかりと私は認識する必要があると思います。その上で、オリンピックをやるということになれば、当然、今委員がおっしゃっているように、単に物理的に観戦をするということと同時に、やはりこれだけの規模と社会的な関心があるスポーツがあれば当然高揚感というものがあるので、そういった人々の意識というものに与える影響というのは非常に重要だと思うので、そうした観点から、私は、この時期、緊張感を持って対策を行うことが極めて重要だと思っております。
○宮本委員 人々の意識にも大きな影響を与える、緊張感を持って対策が必要だというお話なんですけれども。ただ、実際は、いろいろな緊張感を持って対策を政府が様々更にお願いをしなきゃいけない、効果的な対策という中でお願いするということに対して、でも、国民には更にいろいろなことをお願いするのにオリンピックはやるんだ、こういうことになると、五輪開催に納得できない方々には政府の感染対策を呼びかける声が一層届かなくなるのではないか、こういう指摘もあるんですけれども、その点、尾身先生はいかがでしょうか。
○尾身参考人 これはもう私、この場で何度も以前からお話をさせていただきますけれども、以前は、オリンピックをやるならば、これはかなり覚悟を持って感染対策をしないと感染拡大する懸念があるということは申し上げたと思います。その上で、オリンピックをやるということに、今そういうことになっているわけですけれども、そのときに、無観客かということは、実は、我々、望ましいということを申し上げましたけれども、それは無観客になれば感染の数が減るということだけではなくて、むしろ、それよりも、一方で多くの人に感染をこれ以上拡大しないようにお願いをしているところに、観客が入って、先ほどの大会関係者なんということの、そういう映像が映ることによって、多くの人に矛盾したメッセージ、このことが、感染という物理的な要素と同時に、その部分が、今回のコロナ対策というのは人々の意識、人々がどう感じるということが非常に重要な要素になっておりますので、そういう意味で、無観客というのは、単に数を減らすということでは、接触の機会を減らすということだけではなくて、むしろ、人々に与えるイメージ、メッセージということがより重要だというふうに私は考えております。
○宮本委員 人々へのメッセージ、無観客というのは一つのメッセージになっていくと思います。大会関係者も含めて全部入れないんだ、これはオリンピックをやる場合はメッセージになると思うんですけれども、私が一番懸念しているのは、それでもやるんですかと。そうはいっても、無観客でもやれば高揚感が生まれて、外での感染拡大のリスクは間違いなく上がるわけですよね。それが分かっていてやるんですかということに対して納得できないという思いは、そこから、本当に、いろいろな感染防止の協力が得られない事態が生まれることを私は本当に心配をしております。私は、今からでもやはりIOCと相談して、時期の問題についてはどうするのかというのを、協議を本来しなければいけないということをあえて申し上げさせていただきたいというふうに思います。ちなみに、昨日、アドバイザリーボードの西浦先生がSNSで、世界的に流行状況が悪いです、日本も今回ばかりは止められないかもしれない、本当に別格サイズの祭典はするんですか、こういう発信もされているわけですよね。私は、オリンピックは安心してみんなで楽しんでみんなで応援できる時期にやるべきだということを強く求めておきたいと思います。それで、最後に、山井さんからも指摘がありましたけれども、自民党の下村政調会長が、低所得者への十万円の追加給付を追加の経済対策に入れ、次の選挙の政権公約にしたい、こう発言されております。私たち野党は今年の三月から提案してまいりました。都議選の審判を受けて与党の姿勢が変わったことは大変歓迎したいですが、随分遅いなと。今困っている人たちがいるわけですから、これはすぐに具体化すべきだと思います。あわせて、子育て世帯への給付金も含めて、これは、子どもの貧困法八周年の集会がありまして、そこでも関係団体から給付金を求める声がありましたので、これもすぐに具体化すべきだと思いますが、大臣の尽力を求めたいと思いますが、いかがですか。
○とかしき委員長 田村厚生労働大臣、申合せの時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
○田村国務大臣 一人親の子育て世帯に対しての今般の生活支援の給付金はもう順次配っていただいているわけでありますが、言われました二人親の御家庭に関しての支援金に関しましては、現在、市町村で準備をいただいて、もう支給を始めていただいているところもあると思いますが、そういう状況であろうというふうに思っております。これは協力しながら、しっかり早くそれぞれの御家庭にこの給付金が行くように、我々も努力してまいりたいと思います。その他、様々な、政府といたしましても、今般のコロナに対する対応は行っておるわけでありますけれども、それぞれの政策が必要な国民の皆様方にしっかりと行き届くように、これからも努力してまいりたいというふうに考えております。
○とかしき委員長 宮本徹君、申合せの時間が来ております。
○宮本委員 これで終わりますけれども、それこそ感染対策に必要な毎日の不織布マスクも買えない、こういう家庭があるわけですよね。ですから、しっかり早急に低所得者への給付金と子育て世帯への給付金は具体化するということを重ねて求めまして、質問を終わります。ありがとうございました。