2021年12月15日 衆院予算委員会 CO₂削減目標引き上げよ 宮本徹氏政府ただす

提出資料① 出典:環境省HP
予算委員会提出資料② 出典:気象庁HP
予算委員会提出資料③ 出典:環境省HP

 日本共産党の宮本徹議員は15日の衆院予算委員会で、気候危機対策について、2030年までの政府の二酸化炭素(CO₂)削減目標を抜本的に引き上げるよう求めました。
 宮本氏は、気温上昇を1.5度に抑えるために必要な温室効果ガスの累積排出量の上限値であるカーボン・パジェットについて、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告で残り4000億トンであり、現状のCO₂排出が続けば10年程度で上限を超えると指摘。国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で採択された「グラスゴー気候合意」ではパリ協定の温度目標に整合するように30年度目標の再検討・強化を締約国に要請したとして、「目標の再検討をしているのか」とただしました。山口壮環境相は「整合する目標として13年度比46%削減を設定している」と述べました。
 宮本氏は、世界が10年度比で45%のCO₂削減目標を掲げている中、日本は最もCO₂排出量が増えた13年度比を使って削減幅を大きく見せかけていると批判。山口環境相は「13年度比の46%減は10年度比に直すと41.6%減になる」と答えました。
 宮本氏は、世界の目標より低い目標を引き上げないことなどありえないとただしました。山口環境相は「各国に等しく45%削減を求めているわけではない」と居直りました。
 宮本氏は、日本の1人当たりのCO₂排出量が8.3トンと世界平均の2倍だとして、「世界の45%削減よりももっと削減しなければならない」と強調。岸田首相は「全ての国に等しく対応を求めているものではない」と繰り返すばかりでした。
 宮本氏は「(日本は)石炭火力発言もやめない。削減目標も見直さない。責任を負っている姿勢とはいえない」と批判し、30年度目標の引き上げを強く求めました。

以上2021年12月16日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2021年12月15日 第207回衆院予算委員会第4号 議事録≫

○根本委員長 これにて前原君の質疑は終了いたしました。次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、COP26を踏まえた気候変動対策についてお伺いいたします。先日甚大な被害を出したアメリカの竜巻も、気候変動との関係が指摘をされております。気候変動で災害が頻発し、漁業にも大きな影響があって、命と暮らしを脅かす事態が進行しております。今日、資料をお配りしておりますが、COP26のグラスゴーの気候合意の三で、こう言っているんですね。人間活動がこれまでに約摂氏一・一度の温暖化を引き起こしていること、影響が既に全ての地域で感じられていること、また、パリ協定の温度目標達成と整合的なカーボンバジェットが今や小さく、急速に枯渇していることに、警告と最大限の懸念を表明する、こうあります。気温上昇を一・五度までに抑えるために残されているカーボンバジェットは、IPCCによると四千億トン、現在のCO2の排出量が続いていけば十年程度で超えます。総理に基本的な認識をお伺いしますけれども、この数年で抜本的にCO2を削減しなければならないという危機感を共有していますか。
○山口国務大臣 今御指摘の第六次評価報告書、IPCCの報告書の第一作業委員会の報告書の中に、このカーボンバジェットというのがあると思います。それは、気温上昇を目標とする水準以下に抑えるためには、あとどれだけのCO2を排出し得るか、そういう考え方だと承知しています。他方、報告書では、この考え方と併せて、パリ協定の目標である一・五度目標の実現のためには、二〇五〇年カーボンニュートラルを実現することが重要と。我が国も、この危機感を共有している中で、こういう科学的知見も共有しつつ、二〇五〇年のカーボンニュートラルを宣言して、また、整合的な形で、野心的な目標として、二〇三〇年度の四六%削減目標を掲げており、その実現に向かって全力で取り組んでいるところです。
○宮本(徹)委員 危機感を共有しているということですけれども、ただ、現状は、COP26で各国が表明した目標を足し合わせても、この一・五度目標は達成できないということになっているわけですね。ヨーロッパの研究所などで構成されるクライメート・アクション・トラッカーというところの試算では、二・四度上がるだろうということが言われております。そこで、グラスゴー気候合意の二十九を見ていただきたいと思うんですけれども、二〇二二年末までに、パリ協定の温度目標に整合するよう、必要に応じて各国の国が決定する貢献における二〇三〇年目標を再検討し、強化することを締約国に要請するとあります。総理にお伺いしますけれども、このグラスゴー気候合意の二十九が求める二〇三〇年目標の再検討、強化、行いますか。
○山口国務大臣 このパリ協定一・五度努力目標と整合的な形で二〇五〇年のカーボンニュートラルを宣言して、また、二〇三〇年度の目標として、二〇一三年度比四六%削減、さらに、五〇%の高みに向け挑戦を続けるということを設定しています。我が国としては、これを実現するために、徹底した省エネ、再エネの最大限の導入、地域の脱炭素化、国民のライフスタイル変革の推進など、施策を総動員して脱炭素社会を構築していく、そういうことにしています。
○宮本(徹)委員 ですから、このグラスゴー気候合意は、二〇三〇年目標を再検討して、強化することを締約国に要請しているわけですよね。これを無視するんですか。
○山口国務大臣 今申し上げたこの数値によってしっかり実現できるというふうに我々は踏んで、そのとおりに実現、今努力しているところです。
○宮本(徹)委員 いやいや、ちょっと驚きなんですけれども。今の数値で、各国の目標を足しても達成できない、だけれども日本は低い目標のままでもいいんだと。それがグラスゴー気候合意の立場なんですか。さっき、二〇一三年比ということをいつもおっしゃるんですけれども、世界は今、二〇一〇年比で四五%、CO2を二〇三〇年までに削減しなければならないとなっているわけですよね。これは何で、二〇一三年比ということを言って、二〇一〇年比というのを使わないんですか。
○山口国務大臣 パリ協定が行われたのは二〇一五年ですけれども、その際、直近の数字として二〇一三年の数字を取りました。また、いろんな国でそれぞれの事情に応じて基準年を決めているわけですけれども、アメリカの場合は二〇〇五年、あるいはEU、イギリス、ドイツ、この辺は一九九〇年という数字を取っていると承知しています。
○宮本(徹)委員 資料の三枚目に、CO2の日本の排出量を載せておきましたけれども、今の答弁を聞いても、二〇一三年を基準年として使い続ける理由はどこにもないと思うんですよね。この二〇一三年というのは、原発事故後、最もCO2の排出量が増えた年なんですよね。その年を基準にこれだけ削減しますよということを言ったら、当然、数字は見た目だけ大きく見えるわけです。二〇一三年比で四六%減というのは、二〇一〇年比に直すと何%になりますか。
○山口国務大臣 お尋ねの二〇一三年度比四六%減は、二〇一〇年度比に直すと四一・六%減となると思います。
○宮本(徹)委員 二〇一〇年比で言うと四一・六%なんですよ。このグラスゴー気候合意の、資料の一枚目に戻っていただければ分かりますけれども、見ていただきたいんですけれども、二十二番に、二〇三〇年までに世界全体の二酸化炭素排出量は四五%削減しなければならないと。しかし、日本は、二〇一〇年比で四一・六%の目標しか掲げていない。だから、グラスゴー気候合意は二十九で、各国は来年のCOP27までに目標を再検討してくださいということを決めたわけですよ。これは、目標を再検討しないなんてあり得ないんじゃないですか。総理、どうですか。
○岸田内閣総理大臣 まず、その二〇一三年度比が適切なのかという御質問につきましては、先ほど環境大臣からお答えしたように、各国とも基準とする年は違っている。日本の場合は、やはり二〇一一年に東日本大震災の発災という大きな出来事がありました。これ等も勘案した上で最も高い年を基準として考えている、こういった日本の事情を現実的に考えた上での対応であると認識をしております。そして、後半の方の質問については、我が国として、二〇五〇年カーボンニュートラル、これは大きな目標としてしっかりと確認をしているわけです。この目標に向けて努力を続けていく、そのプロセスを一つ一つ積み上げていきたいと考えています。
○宮本(徹)委員 いやいや、二〇五〇年の前に二〇三〇年があるわけですよ。さっきも言いましたけれども、今の世界の排出量のペースでは、二〇三〇年の時点でカーボンバジェットはなくなっちゃう。そうなったら一・五度を必ず超えちゃうわけですよね。一・五度に抑える目標に日本政府も合意したわけじゃないですか。それに向かってみんなで目標を再検討しようということを、グラスゴーの気候合意で確認したわけですよ。なぜ、ここで、来年のCOP27に向けて、日本の目標について再検討しますと言えないんですか。世界の求めている排出目標よりも低いんですよ、日本は今。目標を再検討すると総理が指示を出せばできる話なんですよ。環境大臣はこの間優秀だということを総理はおっしゃっていたけれども、全然優秀じゃないですよ。
○山口国務大臣 この四五%削減するというのは、必要性をそういうふうに認めているわけですけれども、各国にひとしく四五%削減を求めているものではありません。
○宮本(徹)委員 各国にひとしく求めていない、それは確かに各国にひとしく求めていないですよ。日本は、一人当たりのCO2の排出量で見れば、八・三トンなんですね、今。世界平均の二倍ぐらい出しているんですよ、私たちの国は、一人当たりで見たら。だから、ひとしくどころか、日本は世界の四五%削減よりももっと削減しなければならない位置にいるんですよ。アメリカもそうだと思いますけれども、日本もそうなんですね。EUはちなみに一人当たり、今、平均のCO2排出量は五・八トンですよ。やはり、一人当たり排出量が多い国ほど、世界が掲げている四五%、二〇三〇年削減よりも大きく減らさないと、世界全体が四五%削減、二〇三〇年まで、できるはずがないじゃないですか。それは当然でしょう。その当然のことをなぜやらないんですか。総理、新しい資本主義、目指すんでしょう。総理、いつも言うじゃないですか。新自由主義が気候変動をもたらしている、新しい資本主義を目指すんだと。この目標の再検討もできなくて、新しい資本主義なんと言う資格はないですよ。
○岸田内閣総理大臣 気候変動問題、地球規模の重要な課題だと強く認識をしております。そして、御指摘の合意についても、先ほど大臣からお答えしたように、全ての国に等しい対応を求めているものではない。二〇五〇年カーボンニュートラル、そして、我が国としては、二〇三〇年度四六%の削減、こうした目標を掲げて、国際社会にしっかり理解をいただきながら取組を進めているということであります。この大きな目標においては共有している。その目標に達するために、より具体的に、現実的に我が国として取組を積み上げていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 世界からは理解されないですよ。だって、グラスゴーの気候合意自身で、先ほど、二十九で、それぞれの国は目標の再検討をしましょうということを言っているわけですよ。本当に危機感を共有しているんですか、総理は。若者の手紙を読んだというお話をされていましたよね。高校生、大学生の手紙を読んだと。そして、そこには深刻な若者の気候危機への危機感が書かれていたということも本会議で述べられていましたよね。その若い皆さんが、本当にこのままでは私たちの未来が奪われるんだと。この危機感に応えなくてどうするんですか。ちゃんと目標を再検討する、ちょっともう一回相談してみますと、それぐらい答えられないんですか。
○岸田内閣総理大臣 先ほどから申し上げているように、我が国は、二〇五〇年カーボンニュートラル、こうした大きな目標を国際社会とともに共有しております。その目標に向けて、我が国の具体的な、現実的な事情、しっかりと加味しながら、国民の皆さんにも協力をいただきながら、企業活動のみならず社会生活全体において一つ一つ努力を積み上げていく、こうした方針は間違いないところでありますし、大きな目標を達成のために、国民の皆さんにも理解、協力をいただきながら、努力を続けていきたいと思っております。
○宮本(徹)委員 二〇五〇年カーボンニュートラルは大事ですよ。ただ、問題は、そこまでにどう到達していくのかといったときに、どんどんどんどんカーボンバジェットはなくなっているわけですよ。もう二〇三〇年にはこのままではなくなるわけですよ。そこに向かっての、どう責任を果たすのかというのを世界みんなで議論している、石炭火力発電もやめようと言っている。ところが、石炭火力発電もやめない、目標を見直さない。
○根本委員長 宮本君、簡潔にお願いします。
○宮本(徹)委員 これでは、人類の未来に責任を負っている姿勢とは言えません。再検討を、目標の引上げを強く求めて、質問を終わらさせていただきます。
○根本委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。これをもちまして締めくくり質疑は終了いたしました。以上をもちまして令和三年度補正予算両案に対する質疑は終局いたしました。