2022年2月15日衆院予算委員会中央公聴会午後 賃上げますます切実 小畑氏ら主張

 衆院予算委員会は15日、2022年度予算案について中央公聴会を行ないました。
 全労連の小畑雅子議長は、2年以上続く新型コロナ禍のもと労働者の要求はますます切実だと強調。格差と貧困を是正し経済を活性化するためにも「人間らしく働ける賃金への大幅引き上げを」と要求し、ケア労働者の賃上げ、全国一律の最低賃金時給1500円以上の実現、中小企業支援、雇用保険制度の改善を訴えました。
 連合の石上博副事務局長は、コロナ禍のもとで男女賃金格差の深刻さなどが浮き彫りになっているとして、格差是正のための実態把握などを求めました。
 質疑で日本共産党の宮本徹議員は、政府が進める2月からのケア労働者の処遇改善事業を実施しない自治体もあるとして「政府が立てた設計に問題があるのではないか」と質問。小畑氏は、ケア労働者の賃金は全産業平均から大きく下回るにもかかわらず、賃上げ幅が低すぎるうえ、対象となる職種が分断を持ちこむとの声が上がっていると述べました。
 さらに、条例改定が間に合わないため実施しない自治体もあると指摘。「保育の正規職員は賃上げせず、会計年度任用職員だけ」「雇用が複雑になる、公平性が保てないなどの理由で実施しない」という自治体があり、怒りと不満が広がっていると語りました。
宮本氏はまた、アイスランドでは男女の賃金格差是正のための法的枠組みがあるとして、日本での法的枠組みの必要性について質問。石上氏は、女性活躍推進法で、男女の賃金の差異の把握を義務づけることなどが必要だと語りました。

以上2022年2月16日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年2月15日 第208回衆院予算委員会公聴会第1号 議事録≫

○根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。令和四年度総予算についての公聴会を続行いたします。この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。令和四年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。御意見を賜る順序といたしましては、まず翁百合公述人、次に石上千博公述人、次に大竹文雄公述人、次に小畑雅子公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。それでは、翁公述人にお願いいたします。

○翁公述人 日本総合研究所の翁百合と申します。本日は、令和四年度予算に関する公聴会にお招きいただきまして、誠にありがとうございます。二〇二〇年から感染が拡大した新型コロナウイルス感染症により、日本でもまだ、今日も人々の生活そして経済活動に様々な深刻な影響が出ております。この影響を何とか克服し、日本は新しい豊かな経済社会へ発展していく必要があると考えておりまして、私からは、主にコロナ禍を経て目指すべき経済社会という視点からお話しさせていただきながら、今回の予算に関して意見を述べさせていただきます。第一は、日本はコロナ禍を社会の変革の機会と捉え、経済を立て直し、持続的な成長を実現することが重要であるということをまず指摘したいと思います。日本経済はコロナで大きな影響を受けましたが、実はコロナ以前からも経済成長率が低く、こうしたことも反映しまして、日本の賃金はほかの先進国に比較しても横ばいの状況となっております。お手元の参考資料を御覧いただきますと、図表一でございますが、一九九一年を一〇〇としますと、米国や英国、フランス、ドイツなどでは一・三から四倍になっておりますが、日本は僅かに一・〇五倍という水準になっております。また、今回、コロナ禍で、国民は、例えば行政のデジタル化の遅れ、ワクチン開発の遅れなど、日本が様々な課題を抱えていることを認識いたしました。東京一極集中に対する疑問、健康や環境などに関する意識の変化ももたらされています。ですので、こうした国民の意識の変化を機会と捉え、アフターコロナの新しい社会に向けて必要な政策を打って、成長を実現していくということが重要であると思っております。これによって賃金を引き上げていきながら、コロナ禍で広がりかねない格差の問題にしっかり対応していく必要があると思っています。特に、新しい社会をつくる土台となるここ数年の政策対応は重要と思っております。我が国にとって、グリーンとデジタル、また、後ほど述べる人への投資、これはアフターコロナの社会をつくる鍵であると思っておりまして、長期的な投資の効果が出るような政策の推進が求められると思っております。デジタル化は、行政手続を始め、民間企業、個人一人一人といった社会全体に広げる必要があると思います。企業のデジタル関連投資は、生産性向上とともに、価値をつくり出すという意味でも大事でございますし、行政サービスのデジタル化は、行政や企業の効率化や個人の安心や利便性向上につながり、高齢社会における社会的課題解決にも寄与すると思っております。したがって、自治体間、企業等の間でのシステム仕様の標準化など、地道な取組によって、行政と民間が共通のデジタル基盤で相互運用を確保し、情報を連携して活用できるデジタル社会を目指すということが重要かと思っております。 また、地方創生も、今やデジタル化が重要な手段だと思っております。コロナ禍で内閣府が実施したアンケートを見ますと、図表の二でございますが、地方移住への関心は徐々に高まっておりまして、特に若者中心に関心が高い状況です。実際に、東京圏からの転出も増えております。テレワークやオンライン教育、副業などの可能性も広がり、二地域就業、二地域居住のライフスタイルも増えております。この機会に、デジタル化を活用して、全ての世代にとって魅力的な地方圏を競い合える環境を整備していくことが望まれます。その意味で、今回の予算で打ち出されているデジタル庁の情報システム関連予算、デジタル、グリーン、AIといった分野、研究開発推進などは、潜在成長率を高める上で重要と思っております。一方で、例えば、行政のデジタル化に当たっては、行政の仕事の仕方から見直し、利用者視点に立ったものでなければならず、予算が無駄に使われることがないように、しっかり効果を検証、プロセス管理をしながら進めることが重要と思っております。また、大学ファンド、これは財政融資を活用いたしますが、リスクのある市場運用をして、その運用益から支援する枠組みでございますので、世界最高水準の研究大学を形成しつつ、償還確実性を担保できるよう、制度設計やリスク管理に十分留意すべきと思っております。第二に、中でも人への投資が成長、分配の両面で大事であるということをお話しさせていただきたいと思います。日本では、残念ながら、当面、生産年齢人口は大きく減少していき、成長には負の影響を及ぼします。それを打開するのは、一人一人の質、人の質を高めて生産性を上げていくということが大事かと思っております。潜在成長率は、現状〇・五%程度と推計されておりまして、図表の三を御覧いただきましても、ここ十年ぐらい見ましても、横ばいから低下の状況でございます。その内訳を見ますと、資本投入量が増えているほか、近年は高齢者や女性などの就業も増えて労働投入量は増加しておりますが、一方で生産性が低下しております。この近年の生産性低下の原因には、人的資本の低迷があるといったことも、一橋大学の深尾京司名誉教授などから、最近の論文でも分析、指摘されています。前西村大臣いらっしゃいますが、昨年、民間の学者、経営者と議論して、選択する未来という報告書で提言をさせていただきましたが、今後の成長、分配両面で人への投資は大変重要だというふうに考えております。特に、必要な人への投資は三種類あると思っております。まず、第一に必要なのは、STEAM人材という社会的課題を認識した理系の人材でございます。こうした人材が厚くなり、革新的イノベーションを起こし、日本でスタートアップが次々と立ち上がる、そうして既存企業も新たな価値を創造するということが期待されます。特に、初等教育からそうでございますが、大学などの最先端のデジタル教育も多くの人にアクセス可能になるということが求められると思っております。データ、ソフトウェア、知的財産、人に埋め込まれている知識、組織能力などを無形資産といいますけれども、図表四を御覧いただきますと、無形資産GDP比率、先進国間で国際比較すると、低水準でございます。この赤い線でございます。特に、右側、人への資本を含む経済能力投資、これの低いことが見て取れます。現在はポスト産業資本主義の時代というふうに言われますが、大量生産時代の工場などの有形資産への投資だけでなく、製造業も非製造業も、これからはカスタマイズされたニーズに応えるための価値の高いサービスや商品をつくることが求められています。であるからこそ無形資産投資が重要となっており、人への投資こそ革新的なイノベーションを生み出し、価値を創造し、さらに、生産性向上に結びつくと思います。また、第二に、多くの働く人が学び直し、やり直しができるという意味で、リカレント教育が大事だと思っております。デジタル分野の変化のスピードは速く、知識が陳腐化しては、その職場でも、新しい職場でも新たな挑戦はできないと思います。第三は、残念ながら職を失ってしまった人や起業に失敗してしまった人、こういった人を新しい仕事に橋渡しする人への投資でございます。特に急がれるのは、コロナで影響を受けているシングルマザーなど非正規の方々への就労支援でございます。正規社員は職を失っても雇用保険がございますが、非正規の方は、雇用リスクを抱え、職を失ってもセーフティーネットがなく、正社員になるハードルも高いのが現状でございます。こうした方たちには、一時金のみならず、望む人には正規社員になれるように必要な教育や訓練を行って、次の仕事まで寄り添い、支援する仕組みが重要と考えております。北欧では、こういった就労政策を積極的労働政策といいまして、次の仕事につなぐ就労政策が充実しております。であるからこそ、失敗への許容力も高く、ダイナミックな構造転換も可能な社会になっていると考えられます。今回の予算には、科学技術立国に向けた人材育成支援、人への投資に三年間で四千億円の措置には、デジタル人材育成、リカレント教育、非正規雇用労働者のキャリアアップなどが含まれ、また、求職者支援制度への国庫負担引上げなども入っておりまして、これらの人的投資が、今お話ししたものが含まれているというように思います。今後、日本では、こうした積極的労働政策を一層推進する必要があると思っております。これは、継続的な賃上げの不可欠な条件である成長分野への円滑な労働移動にも結びつくものだと思っております。今後も環境変化に応じていや応なく産業構造は変わっていくと考えられますが、これに就労者が組織内だけでなく組織を超えて柔軟に対応できるようにする上でも、日本社会が取り組むべき重要な施策であり、多くの人が利用できることが期待されます。今後、若い人のみならず、ミドル層やシニア層などの潜在能力をもっと生かすことが求められると思いますが、特に、リカレント教育の拡大に当たっては効果をしっかり把握していただきたいと思っております。図表五のとおり、OECD調査でも、日本のリカレント教育は、柔軟性がない、ニーズに合っていない、賃金リターンなどの効果が乏しいといった点が低い評価となっております。先ほどの四千億の措置につきましても、民間の知恵を今後活用すると説明がございます。是非そうしていただきたいですし、どの予算もそうですが、データをきちんと把握し、意図した政策の効果が実現できているかを検証し、必要な修正を行うというPDCAを回す必要があると思っております。第三に、社会保障予算に関連して、医療提供体制の再構築と少子化対応の重要性について申し上げたいと思います。持続可能な社会保障制度は日本の将来にとって極めて重要で、特に、コロナを機にしまして、医療提供体制の問題、開業医や病院の間で危機時に適切、機動的な連携が取れなかった、保健所業務がオンライン化されていなくて過剰な負担がかかっているなどのことが明らかになりました。まずは医療提供体制の適切な見直しが重要ですが、そこでもデータ活用と連携が鍵になると思っております。データ利用と連携は、かかりつけ医と病院の機能分担と連携、病院間連携にも重要な手段でございます。また、診療データの蓄積、活用によって、データで医療を評価する仕組みも実装すれば、価値の高い医療が選択され、医療技術の発展や医薬品、医療機器の開発につながり、医療の質の改善が継続いたします。予算でも措置されておりますが、高齢化の中で、データ活用、連携は健康寿命の延伸にも寄与し、医療の効果的、効率的提供を担保し、持続可能性を確保する鍵の一つですので、しっかり進めるということが大事だと思っております。医療の持続性確保には、それ以外にも様々な取組が必要だと思っております。二〇二五年は、団塊の世代が、皆様、後期高齢者になります。本年十月から後期高齢者医療費負担が引き上げられますが、NIRA総合研究所というところで、私もプロジェクトに入り、昨年秋に、日経リサーチモニター、若年層から高年層まで四千名にアンケート調査を行いました。後期高齢者医療費、自己負担増加に賛成の方は約六割でございましたが、この問題に関する回答者にほぼ共通している問題意識は三つございました。第一は、高齢化により、このままでは現役世代の負担が大きくなり過ぎて医療制度が維持できないのではないかといった危機感、第二は、医療費の無駄があるのではないかという疑問、第三は、世代間の不公平があるのではないか、より応能負担を追求することができないかというような意見でございました。こうしたアンケート結果は、あくまでも参考の一つではございますが、国民の不安や疑問に応えるためにも、医療はより質を上げつつ、めり張りの利いた診療報酬体系にしていくことが望まれます。今後、医療提供体制整備、質の高い医療の促進、医師の働き方改革など、様々な視点から制度や診療報酬などを継続的に見直し、社会保障の持続可能性を担保していくことが重要だと思っております。また、今回、不妊治療の保険適用は大事な取組だと思っております。少子化が進む原因は様々ありますので、いろいろな施策を地道にしっかり財源を確保しながら進めていく必要があると思っております。コロナ禍で、出生数は、数年前までは百万人を超えていましたが、昨年は八十万人程度と大きく減少が予想され、今後について大変懸念をしております。非正規の若者の所得の向上なども、この観点から重要と考えております。少子化対策は日本の未来にとって最重要課題と言っても過言ではなく、しっかり取り組んでいただきたいと思っております。最後に、今後の財政健全化の考え方に関して意見を述べたいと思います。今回の予算は、一般会計総額が百七兆六千億円と十年連続で過去最高、名目GDP比率でも近年拡大傾向にあり、債務残高名目GDP比率は二・五倍に達し、国債に依存した財政運営では、今後、人口が減っていく将来世代へ過剰な負担が懸念されます。日本経済の厳しい現状を考えますと、成長を実現しながら中長期的な財政再建を両立していく必要があると思っております。まず、コロナなどの感染症に関連する財政支出は多額に上りますが、会計検査院からも繰越額や不用額があることが昨年十二月に指摘されております。コロナ対策が常態化して財政の持続化の信認を損なわないように、例えば通常の歳出と区別して整理するなど、費用の見える化をしていってはどうかと考えております。今後の財政支出の在り方としては、やはりワイズスペンディング、着実に重要な分野に支出をして、長期的な経済へのプラス効果を得る努力をしながら、真に経済的に厳しい方のサポートをしつつ、成長を実現しながら財政健全化を図っていくことが大切と思っております。二〇二〇年には、国民全員に十万円の給付金が配付されました。コロナで打撃を受けた家計にとっては助かるものでございましたが、同年の勤労者世帯の消費性向は下がっており、多くの部分は家計の預金増加、すなわち貯蓄に回っております。給付金にはいろいろな目的がございますが、消費につなげようと思っても、長期的に所得が安定する見通しがなければ難しく、先ほど申し上げた積極的労働政策の支援などの工夫が必要になってくると思います。感染症対策や困窮な方々への迅速な支援は重要であることを強調しつつ、しっかりとエビデンスベースで効果を出し、歳出の内容を改善、改革していく努力が大事だと思っております。現在、コロナ禍後の需要拡大に供給が追いつかず、世界経済はインフレに直面しており、金融市場の潮目が変わりつつございます。米国ではインフレ率は七%を超え、日本は円安傾向となっております。現状、日本銀行の金融政策で日本は低金利が続いており、急な金利上昇の可能性は高くないわけでございますが、景気が回復してきたりインフレ傾向が強まるなど金利への上昇圧力がかかっていくならば、中長期的には利払い費が増える懸念がございます。未来世代にツケを回さないように、しっかりとした財政運営を行う必要がございます。日本は先進国の中で公的債務残高が極めて大きく、中長期的な財政健全化への姿勢が見えることは今後の金融市場から信認を得るためにも重要であるということを最後に申し上げたいと思います。以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○根本委員長 ありがとうございました。次に、石上公述人にお願いいたします。

○石上公述人 ただいま御指名いただきました連合の石上でございます。本日は、このような場で、私たち連合の意見を表明する機会をいただき、感謝申し上げたいと思います。連合は、働くことに最も重要な価値を置き、誰もが公正な労働条件の下、多様な働き方を通じて社会に参加でき、社会的、経済的に自立することを軸とし、自己実現に挑戦でき、セーフティーネットが組み込まれている、活力あふれる参加型の社会、すなわち働くことを軸とする安心社会を目指しております。本日は、働く者の立場から、コロナ禍で浮き彫りとなった課題への対処と、連合が目指している社会像を実現するために必要な政策について申し述べさせていただきたいと思います。初めに、コロナ禍における雇用対策についてであります。お配りした資料二ページを御覧ください。御存じのとおり、雇用保険制度は、労使の保険料と国庫負担を財源として政府が運営しており、雇用のセーフティーネットとして多くの労働者の雇用を守ってきました。特に、交通、運輸、観光、サービス、飲食などの業種を中心に、多くの労働者が休業を余儀なくされた中、雇用調整助成金の特例措置や在籍型出向を通じた雇用維持を支援する産業雇用安定助成金を始めとした雇用保険二事業が失業者数の抑制に大きく貢献をしてまいりました。しかし、その財政は危機的状況にあります。資料三ページのとおり、失業等給付の積立金は、雇用保険二事業への貸出しなどによって次年度末にほぼ枯渇する見通しです。そして、雇用保険二事業は、資金残高が枯渇した状況が続く見通しであり、次年度予算さえも年度途中で不足する懸念があります。コロナ禍の影響を受ける労働者が安心して就労できるように、当面の雇用維持に必要な予算や今後の感染症の拡大による雇用への影響に対応するための予算を十分に確保しておく必要があると思います。また、失業等給付の国庫負担割合は、本来は二五%とされているところ、今年度末までの引下げ措置によって、現在、国庫負担割合は二・五%となっております。過去の国会の附帯決議においても触れられているとおり、国庫負担には政府の雇用政策に対する責任を明確にする意義があるということから、この間の審議会では、早急に本則に戻すべきと労使意見が出されております。しかし、今通常国会に提出された法案では、雇用情勢及び雇用保険の財政状況が悪化している場合のみ二五%とし、それ以外の場合は二・五%とする、別途国庫から機動的に繰入れ可能な制度を導入するとされております。政府による政策の判断が労働者の雇用により大きく影響する今のような状況だからこそ、本来の国庫負担割合を維持することが重要だと考えます。また、新たな国庫繰入れの制度についても、機動性と実効性が担保されることが必要だと考えます。現場からは、雇用調整助成金の特例措置を始めとする雇用保険制度が本当に重要だという切実な声も寄せられております。雇用保険制度が労働者の確かな支えとして機能し続けるために、国庫負担割合を本来の割合に戻すことも含め、財政基盤の確立を求めたいと思います。次に、コロナ禍における生活対策です。国民が安心して暮らし、社会経済活動を行えるようにするためには、ワクチン接種の体制確保とともに、事業所における感染検査の体制整備に向けた支援強化、検査キットの安定確保について、医療現場への安定供給と併せて求めたいと思います。また、変異株の特性や、それに応じた感染予防対策、ワクチンの副反応の情報など、国民への正確な情報提供を行うとともに、ワクチン接種の有無による差別、偏見が起きないよう、改めて啓発の徹底を求めます。次に、困難を抱える女性の支援についてです。コロナ禍の影響で、非正規で働く労働者、とりわけ女性に大きく影響が出ています。これは今突然出てきたという問題ではなく、コロナ禍により、非正規雇用の不安定さや雇用形態の違いによって生ずる男女間の賃金格差の深刻さが改めて浮き彫りになった結果です。信頼できる公的な相談体制の整備と、NPO等民間レベルでの取組の支援及び経済面を含む直接的な支援が求められております。また、オミクロン株の感染拡大により休校、休園が相次ぐ中、小学校休業等対応助成金に救われる人も多いというものの、そもそも制度を知らない、事業主に制度利用を拒否されたという声も聞きます。当事者に情報が届くように制度の認知向上策と、さらに、事業主への利用促進に努めていただきたいというふうに思います。次に、財政の基盤となる税制についてです。今回の税制改革関連法案は、喫緊の課題である格差是正に向けた所得再配分機能の強化、そして持続可能で包摂的な社会保障制度の構築に必要な安定財源の確保に向けた改革の全体像は示されませんでした。国民の暮らしと将来の希望を確かなものにし、社会の安定と持続的成長を確保するためにも、税制の抜本改革につながる政策として四点申し上げたいというふうに思います。資料四ページを御覧ください。一点目は、所得再配分機能の強化です。他の先進国との比較において、決して高いとは言えない税の所得再配分機能を強化すべきだと考えます。特に、金融所得課税の強化については、昨年の税制改革大綱の取りまとめにおいて課税強化が見送られたことは大変残念だと思っております。所得再配分機能の強化に向けては、将来的な総合課税化を見据えつつ、早急に結論を出すべきだと考えます。二点目は、将来に向けた安定財源確保です。現行制度を前提とした場合、社会保障給付費は二〇四〇年時点で約百九十兆円必要となると言われております。社会保障の安定財源と位置づけられている消費税の在り方も含め、財源調達機能の強化を念頭に置いた税制全体の抜本改革は不可避だと思います。三点目は、中長期的な財政運営、財政健全化に向けた取組についてであります。コロナ禍対策として、各分野において積極的な財政措置が取られ続けていますが、それらの検証も含め、中長期的な財政運営の客観的評価と分析を行う内閣から独立した機関の設置は、将来世代に対する責任を果たす上でも、今を機に検討されるべきものだと考えます。今後、様々な外的ショックが同時発生するおそれもあり、債務残高が極めて大きい我が国がこうした危機を乗り越えるためには、危機に対応できる財政余力を確保しておくことが不可欠だと考えます。四点目は、足下の課題となりますけれども、燃料価格の高騰に伴うトリガー条項の発動についてであります。原油価格の高騰が家計や中小企業の経営に与える影響は明らかであり、現在行われている石油元売会社への補助金適用だけでは不十分だと考えます。機動的な対策を行うためにも、トリガー条項の速やかな発動を求めたいと思います。次に、社会保障について申し述べます。社会保障は、社会の安心と安定の基盤であるとともに、活力の源泉でもあります。コロナ禍で明らかになった課題を解消するとともに、人口減少、超少子高齢化などの課題を克服していかなくてはなりません。政府には、全世代型社会保障構築会議での議論を進めるとともに、全ての国民が希望ある未来を展望できる社会保障制度の構築に向けて、財源の在り方も含めて、労使参画した上での検討を求めたいと思います。その上で、四点申し述べたいと思います。一点目は、医療提供体制についてです。人口減少下や感染症禍であっても、地域で安心して医療を受けられるよう、外来を含むあらゆる設置主体の医療機関の参画によって地域医療構想を再検討し、人口減少下や感染症禍であっても安心できる、切れ目のない効率的な医療体制の構築を求めたいと思います。二点目は、社会保障を担う人材の処遇改善と人材確保についてです。国民が将来にわたって質の高い社会保障サービスを利用できるようにするためには、医療、介護、障害者福祉、保育所や放課後児童クラブなどで働く労働者の更なる処遇改善を継続的に行い、人材確保につなげていくことが極めて重要だと思います。資料五ページに記載しておりますとおり、看護、介護、保育など各職種の年収は、全産業平均に比べ低水準で、介護や保育などでは約百三十万円もの格差が生じている職種もあります。とりわけ、放課後児童支援員の賃金の低さは問題だと思います。政府の処遇改善の方針は評価をしておりますけれども、対象の医療機関や事業所が限定されております。現場労働者に広く行き渡るものとなっておりません。特に、医療従事者については、処遇改善に係る加算の報酬制度がないために、確実に賃金が引き上がる仕組みの構築がまず必要です。また、二〇一九年には、保育士への報酬加算額が賃金改善に充てられていなかったことが会計検査院の指摘で明らかになっております。医療、介護、保育など、いずれの分野でも、現場で働く全ての労働者が確実に賃上げされる仕組みを確立し、労働者の処遇改善を継続的に実施する、実効ある施策を講じていただくよう求めたいと思います。三点目は、社会的セーフティーネットの拡充についてです。連合は、社会保障と生活保護制度の中間に、就労、生活支援を担う第二のネットの創設など、重層的なセーフティーネットの構築を提起し、生活困窮者自立支援制度として実現をしてまいりました。コロナ禍では、住宅確保給付金や緊急小口資金、臨時の給付金などによって対応されてまいりましたけれども、国民の安心のため、更にセーフティーネットの拡充が極めて重要だと考えます。とりわけ、自立の基盤となる住まい、住居を誰もが不安なく確保できる仕組みを充実するとともに、就労準備支援事業などの任意事業が全ての自治体で幅広く実施されるよう、体制確保支援と財源確保を求めたいと思います。四点目は、子ども・子育て支援の強化についてです。サービスの量的拡充及び質の向上に必要な一兆円超のうち、まだ確保されていない〇・三兆円の財源を早急に確保するように求めます。また、サービスの質の向上と職員の業務負担の軽減のため、一、四、五歳児の職員配置基準の見直しを求めたいと思います。さらに、児童虐待が相次いでいる事態を踏まえ、懲戒権規定の削除、体罰を禁止する規定を盛り込む民法改正法案の今通常国会への早期の提出を求めるとともに、児童相談所などの職員体制の強化、体罰のない子育ての啓発強化を求めたいと思います。一方、今回の予算案について、教員の加配定数の千三十人増員とスクールサポートスタッフ等の外部人材の配置促進が盛り込まれたことは評価をしておりますけれども、それでも、教員が一人一人の子供と向き合いながらきめ細かい教育を行うには、教職員が不足しております。就学前教育から中等教育までの更なる少人数学級の実現、部活動の地域への移行、スクールカウンセラーなどの常勤化、ICT支援員などの拡充など、外部人材の活用も含めた教職員の負担軽減策の推進を求めておきたいと思います。次に、雇用の安定と公正労働条件の確保について述べます。コロナ禍は、業務委託や請負など、雇用契約でない契約形態で働く就業者のセーフティーネットの脆弱性を顕在化させました。こうした就業者の保護に関しては、昨年三月にフリーランスガイドラインが策定されましたけれども、ガイドラインは従来の考え方をまとめたものであって、現下の社会の実態や就業形態の多様化を踏まえた対応が求められております。EUでは、昨年十二月にギグワーカーを保護するための法案を公表し、曖昧な雇用で働く就業者の権利保護に向けた取組を始めております。新しい資本主義実現会議の緊急提言ではフリーランス新法の制定も提言されておりますけれども、この会議の場で連合としても意見を出しておりますけれども、労働関係法令では対象とならない就業者の保護を喫緊の課題と捉えて、労働者概念の見直しを始め、法的保護の拡充に早急に取り組んでいただきたいと思います。次に、男女間の賃金格差の是正であります。日本の男女間賃金格差は国際的に見ても大きく、その要因は勤務年数や管理職比率の差異となっておりますけれども、その背景には、固定的性別役割分担意識による職務配置や仕事の考え方、キャリア形成による男女の偏り等があります。男女間賃金格差を是正していくためには、男女別の賃金実態の把握と分析を行って問題点を改善するとともに、男性の育児参加を促進するなど、固定的性別役割分担にとらわれることなく、女性が働き続けられる環境整備が重要だというふうに思います。次に、デジタル化の対応、グリーンリカバリーの推進についてであります。今回のコロナ禍は、我が国のデジタル化の遅れを明白にいたしました。プッシュ型支援を早急に実現をしていく必要があります。欧米諸国において、給付つき税額控除の仕組みが迅速な給付、所得に応じた給付に有用であったことから、我が国でも、マイナンバー制度を活用し、税情報と社会保障を連携させ一体的に運営する給付つき税額控除の制度設計を加速させることが必要だというふうに考えております。また、グリーンリカバリーの推進とカーボンニュートラルの実現に向けましては、イノベーションの創出、人材確保に向けた諸外国に引けを取らない積極的な投資、そして産業の予見可能性を確保するための複数のシナリオ、具体的なロードマップを早急に制定することを求めたい。その中では、経済、地域社会、雇用に対する負のインパクトを最小化する公正な移行が重要だというふうに考えております。最後に、私たちが目指す社会の根底には、自由と民主主義の普遍的原理、そして人権の尊重が貫かれていなければならないと考えております。一九五八年に採択されたILO百十一号条約、既に百七十五か国が批准しているにもかかわらず、日本はまだ未批准であります。昨年六月に可決、成立した法律に基づいて、ILO第百五号条約についても早期の国会承認と批准を求めたいというふうに思います。以上、申し上げまして、意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○根本委員長 ありがとうございました。次に、大竹公述人にお願いいたします。

○大竹公述人 大阪大学の大竹でございます。本日、予算に関して意見を述べる機会をいただき、ありがたく思います。配付した資料の最初のページと次のページに本日の意見の概要、そして三ページ目から意見の内容が書かれていますので、参考にしていただければと思います。初めに、令和四年度予算には、新型コロナ対策予算として五兆円の予備費が計上されております。予備費としての計上は、予期せぬ状況変化に備える点ではメリットがありますが、行政府に巨額予算を白紙委任している点は注意すべきことです。これについては、効果的な支出に努めること、事後的な検証が必要となります。中でも新型コロナ対策は、EBPM、証拠に基づく政策形成の観点から検討すべき論点が多いと考えております。ここでは、私が新型コロナ対策分科会、基本的対処方針分科会の構成員として議論してきた経験を基に、新型コロナ感染症対策とEBPMの観点から意見を述べさせていただきます。具体的には、政策目標を達成するための効率性、複数の政策目標がある場合のEBPM、リアルタイムのEBPM、情報提供の重要性とその効果検証、政策の見直しの必要性について述べさせていただきます。まず、政策目標を達成するために効果的な対策になっているかという点です。感染症対策として具体的な政策にどのような効果があるのかを、可能なら事前に分析し、事前に分析できないものは事後的に分析して、より効果的な対策に変更していくべきです。その際、具体的な因果関係が明確な政策と、緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置のように、効果が不明確であるが状況変化に応じて行うべき政策というのを分けて考える必要があります。後者については、事後的に効果検証を行うことが必要です。次に、複数の政策目標がある場合のEBPMの在り方について述べさせていただきます。政策には複数の目標があることが多いわけです。例えば、新型コロナ感染症対策は、感染抑制と社会経済の両立という二つの政策目標になっています。しかし、両者にトレードオフの関係がある場合には、次の点を検討すべきです。まず、政策目標に最初から明確な優先順位がある場合には、感染対策と経済活動の間にトレードオフが存在しても、感染対策を重視するという政策は合理的です。トレードオフを無視して、感染を抑えることに最も有効な対策を検討すればいいのです。例えば、感染による健康リスクが甚大である場合や感染対策の期間が短い場合には、感染対策を優先するという考え方には合理性があると思います。次に、事前に政策の優先順位が決まっていない場合という点について議論をしたいと思います。この場合、専門家の役割としては、トレードオフを明記した複数の政策オプションを示すべきだというふうに思っております。例えば、第六波に対する政策を小林慶一郎さんと仲田泰祐さんと私の三人で提言を出しました。その提言の出し方としては、三つのオプションを提示しております。一つ目、緊急事態宣言などの行動制限による感染抑制。二つ目のオプションとしては、医療逼迫に伴う人々の自主的な行動変容、人々の価値判断による感染抑制。そして三つ目のオプションとして、従来の感染症法の枠組みの中で一時的なコロナ医療体制の変更という三つの政策オプションについて、メリットとデメリットを提示しました。オプションにはそれぞれメリットとデメリットがあり、どのオプションを選ぶかは価値観に依存します。専門家の役割は専門的知識に基づいて選択肢を提示することであり、そのオプションからどの政策を選ぶかは、国民の代表である政治家がすべきことです。政策決定が価値観を伴った意思決定であることから、専門家は、その知見に基づいて提出した判断についての説明責任を負いますけれども、政策の結果責任は負わないというのが原則だと思います。コロナ対策分科会の提言は、一つのものが出され、それを国が採択するかどうかというプロセスになっていたことが多かったと思います。これは優先順位が事前に決められている段階では適切だと思います。しかし、感染対策を重視した場合と社会経済を重視した場合で異なる分野に影響が出ることについて、専門家では一つの意見に集約することはできません。例えば、第六波でどのような出口戦略を取るべきかを判断するのは、オプションを提示する専門家ではなく、政府です。感染力は高いけれども軽症者の比率が高いというオミクロン株の特性に応じた対策については、医療提供体制や保健所の対応の大きな変更も含めて、政府が決断すべきだと思います。トレードオフには、現在世代内でのトレードオフと、将来世代と現在世代のトレードオフがあります。新型コロナ感染症は、高齢者が感染した場合の健康リスクが非常に高く、死亡率も高いという特徴があるため、行動規制による便益は現在の高齢者に集中します。一方、行動規制による感染対策のコストは、元々重症リスクが低い子供あるいは若年層にとっては大きいものです。彼らは感染対策による便益よりも大きな費用を負担しています。これは現在世代内でのトレードオフです。一方、行動規制によって結婚数や出生数なども低下するということが分かってきていますので、将来世代の命を減らすという意味で、将来世代に費用を負担させていることになります。これは現在世代と将来世代の間のトレードオフということになります。次に、客観指標が得られやすい分野と得られにくい分野にEBPMとしては注意する必要があると思います。新規感染者数、死亡者数など感染に関わる情報は毎日報道され、人々の関心を集めやすいものです。そのため、政治的にも重視されています。一方、社会や経済に感染対策が与えるリスクは毎日数字としては表れるわけではありませんし、感染対策の影響かどうかも判断しにくいものが多いのです。例えば、コロナ対策が強化された時期に、特に子供、若者の自殺が増えたことが明らかにされています。コロナ危機による自殺は約四千九百人であり、これは失業率上昇で説明できる部分というのは四分の一ほどしかないという研究もあります。緊急事態宣言で既婚女性の就業率が低下し、ドメスティック・バイオレンスが増えたというエビデンスもあります。学校休校は、子供の学力、非認知能力、健康にマイナスの影響を与え、特に、恵まれない家庭の子供たちへの影響が大きかったということも分かっております。婚姻数は約十一万件も減ったため、もし、これが将来、婚姻数の埋め合わせがないということであれば、失われた出生数は約二十一万人というふうに予測されています。水際対策で海外からの留学生が激減し、国際的なビジネス交流が減り、日本人の国際交流が減ったことは、長期的に日本社会に大きな影響を与える可能性が高いというふうに思います。しかし、これらの指標は、感染者数のように毎日報道されるわけではなく、因果関係を特定することも容易ではありません。したがって、政策担当者は、これらの指標が政策判断で過小に評価されないように注意すべきだと思います。そのためにも、平時からこうした分野のデータの蓄積を進め、危機対応できるような研究を蓄積しておくことが重要だと思います。次に、リアルタイムのEBPMについて意見を述べたいと思います。日々刻々と変わる感染状況に応じて対策を迅速に変えていく必要があります。そのためには二つのことが重要です。第一に、リアルタイムデータを整備し、活用できるようにすることです。日々の行政から得られる行政データ、これも利用可能です。携帯電話の位置情報から得られる人流データ、あるいはクレジットカードの利用情報、POSデータなどの様々なリアルタイムデータがありますが、それらを個人情報保護の上で分析し活用する仕組みを整備すべきだと思います。特に、感染情報については、リアルタイムで得られるはずのものが、政府のデジタル化が遅れていたこと、個人情報の保護の問題があったことから分析が進まなかったという事実があります。政府のデジタル化を推し進め、平時からリアルタイムデータを用いてタイムリーに状況を把握できるようにすべきだと思います。これによって、政策効果をモニタリングし、効果検証を行い、エビデンスを蓄積することも可能になります。二番目として、不完全な情報の下でも迅速に政策判断に有益な分析を行える体制の構築が必要です。私も含め学術専門家は、厳密性、正確性を重視して、その成果を学術研究として発表されて、評価されてきます。そのため、感染の動き、政策効果について学術的専門家に意見を求めたとしても、まだエビデンスがないという下だと、分からないという答えを出すことが私を含めて多いというのが実際です。したがって、政策判断に有益な分析を迅速に行えるような体制を平時から維持しておく必要があります。だから、学術研究と政策分析には少し違いがあるということを認識しておく必要がある。その際には、政策側からどのような可能性があるかについて明確に示す、特に、基本ケース、楽観ケース、悲観ケースなど幅を持たせた上でシミュレーションを示すことが必要です。また、短期的、中期的、長期的な動きについての予測も重要です。当然、不正確な情報に基づいての予測ですから、事後的な検証をしていく必要があります。緊急事態において専門家にエビデンスを求める際には、学術的厳密性だけを追求し過ぎないこと、責任は政策を採択した政府にあることを明確にしておくことが重要だと思います。EBPMについては、厳密なエビデンスがない政策をすべきではないという間違った解釈がされることがあります。新しい政策であれば、当然、エビデンスがないものや不十分なものが多いわけです。しかし、エビデンスがないから政策をすべきでないということにはなりません。特に危機時には、エビデンスが出るのを待っている間に膨大なコストが発生するという、時間イコールコストの意識を政府が持って政策判断することが重要だと思います。時間的な余裕がない場合には、政策効果が見込めるというロジックがしっかりしているということが大事ですし、その場合には政策の価値があります。ロジックの中にはどのような仮定を置いているかを明確にしておけば、どの仮定が間違っていたために政策効果が十分でないかということも検証できます。次に、情報提供の重要性とその効果検証についてお話しさせていただきます。日本の新型コロナ対策の特徴は、諸外国のように罰則を持った規制ではなく、罰則を伴わない努力義務という形を取るものが中心でした。実際、人流の動きは緊急事態宣言よりも感染者数の情報によって引き起こされていたということを示した研究もあります。規制と罰金あるいは補助金という組合せが政策の基本であることは間違いありません。しかし、その政策や情報をどのように伝えるかによって政策効果が大きく異なっていることが、今回の新型コロナ対策でより明確にされたと思います。感染対策への呼びかけ、あるいはワクチン接種率向上などは、情報提供の内容、手段、タイミングによって効果が大きく異なります。政策効果を大きくするために、情報提供にもEBPMの手法を活用すべきだと思います。医療では、新薬を認可する前に、新薬と偽薬をランダムに処方して、その効果が認められた場合に認可するという仕組みになっています。重要な政策については、そうしたランダム化比較試験を取り入れていくことを条件にしていくということも考えていくべきだと思います。具体例を紹介します。私は、感染予防行動を呼びかけるメッセージの効果検証を二〇二〇年の四月から七月、ワクチン接種意欲を引き上げるメッセージの効果検証を二〇二一年の一月から三月にかけて行いました。その結果は、あなたの感染対策で身近な人の命を守れます、あるいは、あなたのワクチン接種が周囲の人の接種を後押ししますといった、感染対策の利他的側面を強調したものが有効でした。ただし、メッセージの効果には人によって違いがあります。ワクチン接種を早めにする人と最後までちゅうちょする人には異なるメッセージが必要だと思います。そうしたことを明らかにしながら、効果的な情報提供をしていく体制をつくることが必要だと思います。これはコロナ対策に限りません。特に、社会的弱者には、情報が届かず、アウトリーチも難しいという実態があります。人々の行動変容が重要な分野には、健康、環境、防災、教育など、様々な国の重要政策があります。行動経済学や行動科学の知見を生かして効果的な政策を行うことが重要だと考えます。次に、政策の見直しの必要性についてお話しします。新型コロナ対策では、エビデンスが不十分なまま様々な政策が行われ、多額の予算が投じられてきています。これは、危機的対応としては合理的なものです。しかし、これらの対策の効果が十分にあったのか、副作用がなかったのかという視点で見直して、必ずしも効果がなかったものは予算を支出しなくてもよいという形に柔軟に変更できる仕組みにしておくべきだと考えます。不確実性が大きい状況では、このような柔軟な予算編成をしておくという重要性は大きいのです。後で変更できないという政策の下だと、対策を講じないという方向の選択をすることが合理的なものになります。それは迅速性が要求される状況では好ましくありません。医療提供体制の逼迫を防ぐために様々な補助金制度の制度設計がなされましたけれども、十分に機能してこなかったというのは事実です。この点については、随時修正されてきましたけれども、やはり感染拡大のスピードに間に合わないことが多かったと思います。新型コロナ感染症という危機において、コロナ対策に一時的に多額の支出が行われるのは当然だと思います。しかし、それはショックが一時的だという前提があって、そのショックからの回復後、コロナ対策費を日本経済が十分に負担できるということを想定しています。東日本大震災の際でも、その財源についての議論はされていました。コロナ後の財源についても議論をすべきだというふうに思います。持続化給付金、雇用調整助成金を中心とする経済対策は、新型コロナ感染症による一時的ショックがなければ倒産せず、解雇もされなかったはずの人たちを守るためのものです。この政策の効果で日本の失業率の急上昇を防いでいることは評価できます。しかし、それが過剰になっていないかをチェックすべきだと思います。一時的なショックを防ぐために対策を行ったとしても、必要以上に倒産を防いで非効率な企業の延命策になっていないかどうかという観点から見直しが必要だと思います。命を守るという点での新型コロナ感染症対策も似たことが指摘できます。日本の平均寿命は毎年延びていますが、二〇〇五年の季節性インフルエンザ流行の際のように寿命が減少したこともあります。新型コロナ感染症に対してどの程度まで感染抑制策を行い医療的対応をするのかというのは、高度な政治的判断です。しかし、新型コロナ以外の病気では同等のリスクがあっても特別な医療的対応あるいは社会的な行動規制をしないということに比べて、新型コロナ感染症の場合だけ特別に対応すべきであるということについては、政府はしっかり説明する必要があると思います。若者の自殺を増やし、出生数が減るほどの行動制限を続けること、子供たちの発達や学力の低下につながるような制限をすること、あるいは国際的な日本の立場を弱めるような水際対策の継続をする必要性があるのかを国会でしっかり議論する必要があるかと思います。政府の予算は国民の税金から支出されています。その税金は、現在の国民も負担しますけれども、現在の子供あるいは将来の子供も負担していくことになるからです。新型コロナ対策では、感染対策の負担が集中している一部の事業者や家計にターゲットを絞った支援の予算額が非常に大きいと思います。しかし、制度の谷間に落ちる困窮者も多く存在します。この方式では、そういった人たちを救うことには不十分だと思います。普遍的な補助金と税制を通じた一般的な所得再分配制度を活用していく必要があるかと思います。最後に、まとめたいと思います。新型コロナ感染症対策の予算及び政策は、EBPMを有効に活用すべきことが多いわけです。不確実性が高く、新しい政策でその効果がはっきりしないものも含めて、迅速に政策対応する必要があります。その際、因果関係が明確になった上で行う政策と、それが不明確なまま行う政策、複数の政策目標がある政策なのか、そうでないのか、リアルタイムの政策分析に適した分析か、情報効果を考慮しているのか、政策の見直しを取り入れているのかという観点に注意すべきだと思います。中でも、複数の政策目標がある場合、計測しやすく目立ちやすい情報に偏った意思決定をしていないかに特に注意すべきだと思います。感染リスクに関する危機意識の共有だけではなく、コロナ禍での経済、文化、教育、健康に関する危機意識の共有も重要です。そのために、平時から社会経済的な課題についてデータエビデンスでしっかり把握し、平時及び危機時の両方に有効な政策的対応を進めるべきです。特に危機時には、エビデンスを待つ時間に膨大なコストが発生することを意識した政策判断が必要だと思います。以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

○根本委員長 ありがとうございました。次に、小畑公述人にお願いいたします。

○小畑公述人 全国労働組合総連合、全労連で議長をしております小畑です。二〇二二年度政府予算に関わって、労働者の立場、労働組合の立場からの発言の機会をいただき、ありがとうございます。コロナ禍が二年余りにわたって続く下で、労働者、国民の要求はますます切実なものがあります。現在、全労連は二二国民春闘の取組を進めているところですが、現場の声も踏まえ、働く仲間の切実な要求を実現する観点から、幾つかの点について意見を述べさせていただきます。第一に、コロナウイルス感染拡大の第六波が続く下で、今までの教訓を踏まえて、命を守る政策への転換を求めます。全労連は二月三日に、コロナ感染の急拡大を受けて、厚生労働大臣に対して緊急の要請書を提出いたしました。医療、介護、公衆衛生の抜本的な拡充、ワクチンの三回目接種の加速化、検査体制の強化、小学校休業等対応助成金の申請の簡素化、給付の迅速化などを求めたものです。全労連だけではなく、多くの国民の皆さんの声が寄せられる下で、この間、ワクチン接種や小学校休業等対応助成金の申請に関わって一定の前進がありましたが、さらに、検査体制の強化やワクチン接種の迅速化などを進めていただけるように、重ねて要望をさせていただきたいと思います。その上で、コロナ感染拡大が続く下で明らかになった、余りにも脆弱な日本の医療、公衆衛生体制を抜本的に拡充していくことが必要だというふうに思っております。第四波、第五波においては、医療崩壊とも言える状況が広がり、コロナに感染しても病院等に入院することができないまま自宅等で亡くなる方が続出することが大きな問題となりました。第五波までに八百人以上に上るとの報道もあります。現在、第六波においても、保健所や病院の体制が追いつかないほどの感染拡大の下で、自宅療養者数が今月九日の時点で五十四万人を超える状況となっています。こうした状況を生み出す原因となっているのが、感染症病床や集中治療室の大幅な不足、医師、看護師、介護職員の人員不足、保健所、保健師の不足です。これらの諸問題の背景として、九〇年代後半から続いてきた医療、介護、福祉などの社会保障費並びに公衆衛生施策の削減、抑制策があります。感染症対策を中心的に担う公立・公的病院の役割の重要性が増しているにもかかわらず、政府は公的・公立病院の統廃合を進めようとしています。コロナ禍における教訓は、医療、介護、福祉を始めとした社会保障拡充の重要性です。二〇二二年度の予算編成に当たって、公立・公的病院などの削減、縮小ありきの地域医療構想を撤回し、国民の命を守ることを最優先にする政策に転換し、医師、看護師、医療技術職員、介護職員等を大幅に増員し、夜勤改善等、勤務環境と処遇を改善すること、そして、公立・公的病院の再編統合や病床削減方針を見直すこと、さらに、保健所の増設など公衆衛生行政の体制を拡充し、保健師等を大幅に増員することなど、安全、安心の医療、公衆衛生、介護、福祉提供体制を確保することを強く求めます。第二に、誰もが人間らしく暮らせる賃金へと大幅引上げ、底上げをしていく課題です。このことは、コロナ禍で広がる格差と貧困の問題を解消し、日本経済を活性化していくことにもつながる課題です。御承知のとおり、日本の労働者の実質賃金は、この二十数年にわたって下がり続けています。三ページ目のグラフを見ていただければ分かりますとおり、実質賃金が下がり続けているのは日本だけです。一方で、大企業は内部留保を増やし続けてきました。大企業の社会的責任を果たし、生計費原則に基づいて、労働者の賃上げに回すべきであると考えます。岸田首相は、通常国会冒頭の施政方針演説において、新しい資本主義を掲げました。市場に依存し過ぎたことで公平な分配が行われず生じた格差と貧困の拡大など、新自由主義的な考え方が生んだ様々な弊害を挙げた上で、それを乗り越える方策の一つとして、分配戦略の第一に賃上げを掲げておられます。具体策として掲げられた中でも、労働者の切実な要求に基づいた施策については歓迎をします。しかし、残念ながら、首相のメッセージほどには多くの労働者の賃金を上げるものとはならない可能性があります。全ての労働者の大幅賃上げ、底上げへとつなげるために、四点指摘したいと思います。一点目は、昨年もこの場で取り上げた、ケア労働者の賃上げに関わる施策についてです。ケア労働者の賃金が低過ぎることが可視化され、解決に動き出したことは非常に重要です。全てのケア労働者が、コロナ禍で自らの生活を犠牲にし、命を張って、社会機能の維持のために全力を挙げています。しかし、この二月から始まる処遇改善事業については、大病院の看護師に限り一%アップ相当の四千円、介護士、保育士、福祉、学童保育は三%、九千円、この内容に、職場からは、戸惑いや不満、怒りの声すら上がっています。一つは、余りに低く、一桁足りないという声です。賃上げの対象にならない他の職種にも配分したら、千円にも満たないものです。二つには、対象となる職種を限定しているために、チームワークを基本とするケア職場に分断を持ち込んでしまうことです。三つは、制度導入が拙速過ぎて、この繁忙な二月から四月時期に要件を満たす手だてを取れないという声です。制度が閣議決定されたのは昨年十一月末でしたが、今年一月に入っても、制度の内容は案しか示されず、混乱とちゅうちょや諦めが広がっています。職場で労使合意を図り賃上げを行うには時間が足りず、逆に、交渉を制限するなどの看過できない事態も起こっています。 そして四つには、条例改定が間に合わないなどの理由で処遇改善事業を取り扱わない自治体が続出している問題です。政府が意図した賃上げにつながらない事態となっています。ケア労働者の処遇を抜本的に改善するために、この処遇改善事業について、三月中に申請ではなく、申請受付期間を大幅に延長すること。一部の職種、職員に対象を限定せず、全てのケア労働者の賃上げを行うこと。月四万円以上、時間給二百五十円以上とすること。三分の二はベースアップにとされているんですけれども、定期昇給の原資に使うことが除外されていません。確実に賃上げにつながる制度設計とすること。そして、二〇二二年度の予算に盛り込まれる十月以降の賃上げの制度について、早期に明確にし、診療報酬、介護報酬の引上げを基本に、財源を国庫負担とすることなどが必要だと考えます。秋の段階で直ちに利用者に負担を転嫁するということではなく、ケア労働者の働きに見合った、専門職にふさわしい賃金に抜本的に引き上げられるような制度設計となるよう、政府としての責任を果たしていただきたいと思っております。二点目は、最低賃金千五百円、全国一律最低賃金制度の確立についてです。コロナ禍において、非正規労働者、女性労働者に矛盾が集中しています。その背景に、低過ぎる最低賃金の問題があります。現在の最低賃金は、全国加重平均で時間額九百三十円です。年収百七十万円にも満たないワーキングプアです。また、地域間格差は、時間額で二百二十一円、フルタイムで年額四十万円に上ります。同一労働でも働く地域で賃金格差があるのは、極めて不合理です。人口の大都市一極集中や地方経済の疲弊を招く原因となっています。地域間格差は、大幅な引上げの妨げになっています。後藤道夫都留文科大学名誉教授の試算によれば、資料の八ページですけれども、最低賃金近傍の割合は、二〇二〇年に一四・二%となりました。十年で二倍になっています。時給千五百円未満で働く人の割合は女性正社員で四九・八%と指摘しています。最低賃金の低さが男女の賃金格差を助長しているとの指摘です。この間、全労連に結集をする地方労連は、全国二十八都道府県で三万人が参加をして、最低生計費試算調査を進めてまいりました。若者一人が人間らしく暮らしていくために必要な最低生計費は、全国どこでも月額二十二万円から二十四万円、時間額千五百円から千六百円程度となることが明らかになっています。先日は大阪府の調査結果が出たんですけれども、資料八ページにありますけれども、これが千六百円というふうに発表したところです。政府による最低生計費調査を行うことを強く求めたいと思います。コロナ禍の中、低賃金労働者やエッセンシャルワーカーの生活を支えるとして、海外の各国政府は最低賃金の抜本的な引上げを次々に表明しています。七ページにあります。ドイツのショルツ政権は全国一律一五%引上げ。イギリス、全国一律六・六%引上げ。アメリカは、連邦最賃を三〇%引上げ、十五ドル、千六百円を目指すとしています。岸田政権が三%、二十八円で大幅に引き上げたと言っているわけですけれども、余りにも立ち遅れていると言わざるを得ないと思っております。低賃金状態をこのままにすれば、失われた十年を繰り返すことになります。最低賃金の抜本的引上げ、全国一律最低賃金制度の確立へ足を踏み出すことを求めます。三点目は、全ての労働者の賃上げ、最低賃金の引上げを実現するためには、中小企業支援が欠かせません。コロナ禍で苦しむ中小企業への支援を強めることが、労働者の雇用の確保、賃金の底上げを可能にし、地域経済を豊かにすることにつながります。例えば、政府が掲げている賃上げ税制は、賃上げができる黒字の法人だけが対象で、全体の六割となる赤字の法人や個人事業主は対象外となってしまいます。多くの中小・小規模企業には無縁な制度です。法人税減税はするべきではなく、むしろ課税強化で、体力のある大企業には社会の維持に必要な経費をしっかり分担してもらう必要があります。今の局面では、消費税の減税が効果的です。赤字の企業も含めて、全ての事業者に恩恵があります。コロナ禍で苦しむ中小企業に対する支援策が求められています。全労連は、資料の九ページ、十ページにありますけれども、この間、経営者団体の皆さんとともに議論を重ねながら、「最低賃金の改善、中小企業支援の拡充で地域経済の好循環を」と題する中小企業支援策に関わる提言をまとめてきました。ポイントは三つあります。第一に、中小企業が最低賃金の引上げによって手元資金が不足しないよう直接に助成金を支給するほか、大きな負担となっている社会保険料の減免を行うことです。第二に、公正取引の実現です。賃金引上げに伴う単価引上げなどが適正に行われるようにすることです。そして第三に、地方、地域の経済活動の生み出した利益を、東京に集中させたり国外に流出させたりすることではなく、地域で可能な限り循環させる仕組みづくりです。これらを実現させるためにも、中小企業対策費を大きく増額し、使えるものに施策を充実すること、中小企業が経営を継続できるための施策を強めること、公契約事業の在り方を地域循環型にし、契約の中に事業に関わる労働者の賃金保障をする条項を盛り込むことが求められています。また、中小企業の社会保険料の減免では、給付水準を下げることがないよう、社会保険料率を応能負担にする累進方式とし、大企業に相応の負担を求めるものとすること。先ほども述べましたように、消費税を五%に減税し、免税点の引上げを行うことは重要です。とりわけ、二〇二三年十月からの導入が予定されているインボイス制度が導入されれば、今まで一千万円以下の免税業者だった多くの中小、自営業者は商売が立ち行かなくなってしまいます。十一ページの資料にありますが、経営者団体の方も要望されているとおり、インボイス制度の中止を強く求めるものです。そして四点目に、労働者の生活保障の観点から、雇用保険制度についても要望させていただきます。コロナ禍の休業補償をめぐって、諸外国に比べ日本の制度は金額が低過ぎると批判が起こり、二〇二〇年、当時の安倍首相は、雇用調整助成金の助成額等が欧米より低いことは認識していると答弁し、雇用調整助成金の上限額を一万五千円に引き上げ、休業支援金などの個人が受け取る額も、日額一万円を超える水準に設定しました。ところが、当初の日額八千三百七十円という水準、この根拠となった雇用保険の基本手当日額の上限額は、これでは生活できないという声が国会で共有されたのに、改善されず、置き去りにされ、昨年の八月には更に引き下げられています。現在の雇用保険制度は脆弱です。完全失業者のうち、雇用保険を受給する割合は二割程度と、先進諸外国に比べ著しく低い上に、基本手当日額は、最高額が八千二百六十五円、最低額は二千五百五十円にすぎません。二〇〇〇年初頭に比べると、年齢区分ごとに違うのですが、日額二千円から二千七百円、月額換算では六万円から八万一千円も減らされています。これでは、雇用保険法の目的である、生活及び雇用の安定を図り、求職活動を容易にすることはできず、希望とかけ離れた職種や労働条件の求人であっても、とにかく再就職を急がざるを得ないことになります。雇用保険制度の見直しにおいては、基本手当日額の引上げを行うべきです。その際、財源の国庫負担分を本則どおり二五%へと、今の特例措置の十倍に戻し、その額を基本手当受給者に給付するべきです。それにより、四十七・五万人の現在の受給者に対し、一人月額三万五千円の給付増を行うことができます。貧困と格差の広がりを是正し、公正な社会に転換していくために、国の果たす役割は大きいと言わなければなりません。私たちは、以上述べてきた施策は、税の集め方や税の使い方を変えれば可能であると考えています。先ほども触れたように、二〇二〇年、コロナ禍であっても、資本金十億円以上の大企業は内部留保を新たに七・一兆円積み増して、その額は四百六十六兆円にも膨れ上がっています。ため込んだこの内部留保を、下請中小零細企業への支援や、生活できないほどに下げられてしまった労働者の賃上げに使うべきだと考えます。同時に、内部留保への課税や累進課税への転換によって税収を増やすことは可能です。岸田政権は、過去最大規模となった経済政策のために、二〇二一年度の第二次補正予算三十六兆円を組みましたが、そのうち七千七百億円は軍事費です。二〇二一年度は、一般予算を含め、軍事費は初の六兆円を超え、GDP比一・〇九%と、歴代内閣トップとなりました。世界的なコロナパンデミックの中で、何よりも一人一人の命を守ることが最優先のときに、軍事費を増やす必要はありません。軍事費を削って、コロナ対策、医療、公衆衛生への抜本支援、生活困窮者への支援に回すことを求めます。最後になりますが、現在、バス、タクシー、ハイヤー、トラック等の自動車運転者を対象とした労働時間の改善基準告示の議論が厚生労働省の審議会で進んでいます。勤務の間のインターバルを十一時間以上にする案に対して使用者側が抵抗し、十一時間か九時間かの議論が続いています。この休息期間に、通勤や食事その他の生活活動と睡眠を取るわけです。現状のインターバル八時間では、睡眠不足状態を生み出し、労働者の命と健康も、利用者の安全も守れないことが分かっています。九時間でも、交通事故も過労死も減らせません。トラック、バス、タクシー運転手の勤務と勤務の間の休息時間を十一時間以上とする基準を設定するということをこの場からも強くお願いいたしまして、私からの発言を終わらせていただきます。本日はありがとうございました。(拍手)

○根本委員長 ありがとうございました。これより公述人に対する質疑を行います。質疑の申出がありますので、順次これを許します。神田憲次君。

○神田(憲)委員 公述人の皆様方におかれましては、大変御苦労さまでございます。自由民主党、神田憲次でございます。やはり、分配を実現するためにどういった成長を国として導いていくか、この観点が重要かと思っております。そういった観点から、限られた時間ですが、質問をさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。まず、政府は、三年間で四千億円規模の施策のパッケージに向けて、人への投資ということを促進するということで、その実現に当たりまして、先月までアイデアを募集していたわけです。成長分野を支える人材育成とか、非正規労働者の正規雇用化、さらには円滑な労働移動のために期待される更なる具体策について見解を伺いたいと存じます。これは、翁公述人と石上公述人にお願いをできればと存じます。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。人への投資は非常に、私は重要だと考えております。やはり三種類ぐらい考えていく必要があると思います。やはり、成長分野、この分野は、海外との競争に勝っていくためにも、非常に、成長分野に人材を輩出していくことは極めて重要でございまして、STEAM人材と申し上げましたが、理系で、かつデジタルの力があり、かつ社会的課題の認識のある、そういった方々をどんどん育てていくというのは、成長の上では極めて重要と思っております。それから、二番目に挙げられた非正規の方々、これも非常に重要だと思っております。今回、コロナで、シングルマザーの方とか女性で非正規の方が一番影響を受けていらっしゃいます。こういった方々が次の仕事に、サポートできるような、そういった形での人への投資というのは、これからも大事だと思っておりますが、今、非常に喫緊の課題と思っております。それから、それ自体がですね、また、リカレント教育、三番目がリカレント教育でございますが、リカレント教育とかアントレプレナー教育とか、一般の私たち働く人たちみんなにとって、そういったリカレント教育などが充実していくということも、人生百年時代ということを考えますと極めて重要でございまして、新たな仕事に就くといったような労働市場の流動化にも寄与する、そういった就労政策になるのではないかと思っております。以上でございます。
○石上公述人 人への投資ということですが、今回の連合の春闘、本当にこの視点、投資というものを重要視して経営者には求めていく、交渉を進めているという状況でありまして、連合としては、今回の春闘を未来づくり春闘ということで、今回の春闘の中で、将来をつくっていく、そういう賃上げ、そして人への投資、そういうものを求めていくという目標で現在取り組んでいるということでございます。非正規の問題につきましては、私は先ほども申し述べさせていただきましたが、やはり、健全なというか、労働条件、そして賃金が正当なものとしてしっかり確保される、そういった職場を多くつくっていくこと、これが非常に重要だというふうに思っておりますし、非正規だけではなくて、先ほど触れさせていただいたフリーランスの問題、こういった人たちの賃金、そしてその結果に対する報酬というものをしっかり、不当なものとならないようにしていく、そういう制度づくり、こういうことも、日本社会においてはフリーランスの数ももう無視をできない状況になっておりますので、そういったものにも連合としては取り組んでいきたいというふうに考えております。イノベーション、そして、先ほども申し上げた、カーボンニュートラルなどを実現するためにはイノベーションをやはり成し遂げていかなきゃならない。そのためにも、当然、人材が、新たな人材が必要になってくる。これは二〇五〇年までに向けた継続した取組ですから、短期的なものとはなりませんけれども、そういった継続的な人材づくり、そこに向けた議論も是非お願いをしたいというふうに思います。
○神田(憲)委員 ありがとうございます。翁公述人におかれましては、所得の再分配、これについて、若い人に対して余りうまくいっているとは言い難いという御発言もなされておるようですが、このうまくいかない理由、これについてはどのようにお考えでしょうか。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。若い方の所得が低いというのは、やはり、日本社会に根づいている年功序列の仕組みというのが大きいかなというふうに思っております。海外の国々と比べましても、やはり年功序列というのは特に正規の方々にとっては非常にしっかり根づいておりまして、その結果として、若い方がまず所得が小さいというのがございます。加えまして、やはり非正規の方々が多いということで、もちろん不本意な方々が特に問題になるわけでございますけれども、なかなか正規になれずに非正規のままにとどまってしまっている若い方が多い。こういった方々は、三百万円の壁と申しますけれども、なかなか正規になれない、そういった状況がございます。ですので、やはり様々な視点からこれを見直して、若い方がもっともっと所得を稼げるような、そういった環境にしていくということが大事だと思っております。
○神田(憲)委員 ありがとうございます。続きまして、新しい資本主義実現会議の有識者メンバーとして、昨年の補正予算と一体として編成いたしました令和四年度予算について、特に成長戦略としてデジタル、グリーン等の研究開発への予算配分について、見解を翁公述人にお伺いしたいと存じます。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。これからの成長にとって、グリーンとデジタルというのは極めて重要だと思っております。グリーンにつきましては、これでカーボンニュートラルという大きな方向がもう出てきておりまして、様々な困難な課題はございますけれども、やはり未来世代のためにこのカーボンニュートラルの方向に向けて社会は変わっていかなければいけないというふうに思っております。その中で、グリーンというのはかなりいろいろなイノベーションに依存するところが多いと思っております。水素とか、アンモニアとか、又はCO2を埋める技術とか、いろいろございますけれども、まさにイノベーションの競争でございますので、こういったところをむしろ成長分野として、グリーンリカバリーと欧州では言っておりますが、まさにこういった分野でしっかりと取り組んでいくことが中長期的な日本の成長には寄与するというふうに思っております。また、デジタルに関しましても、先ほど申し上げたとおり、生産性の面でも、価値を創造していく面でも非常に重要な取組だと思っています。そのほかにも、AIやデジタル、様々な科学技術、こういったところにどんどん日本の優秀な方々が集まり、そして研究開発が進んでいくということが日本の研究の裾野を広げて、また成長にもつながっていくというふうに期待しております。
○神田(憲)委員 ありがとうございます。今の御回答にも関連して、このデジタルとかグリーン分野への投資とか起業というのは、イノベーションを起こすという観点では社会的にもコンセンサスはあると思います。しかしながら、一方で、特定分野にお金を集中させること、この点においては、基礎研究という分野との不均衡が生じますし、我が国の技術開発力をゆがめるというような意見もあるんですが、これについての御見解を翁公述人にお願いを申し上げます。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。おっしゃるとおり、基礎研究があって初めて応用ができるという部分がございますので、やはりそこはバランスよく配分していく必要があるということは委員の御指摘のとおりだと思っております。デジタル、グリーンというところは、特にデジタルはちょっと日本の遅れが目立っております。また、グリーンというのは世界的な競争になっております。いずれも大事だと思いますが、やはり基礎研究のところもしっかりと充実させていくことができればというふうには思っております。
○神田(憲)委員 ありがとうございます。そのデジタルの分野ですが、先ほど、今、公述人も、大変遅れているというお話をされました。このデジタルのプラットフォームという技術の部分なんですが、世界的に見ましてもGAFAが圧倒しているような状況にございます。更に問題は、国内にこれに対抗し得るようなプラットフォームがないこと。これは、今後、日本のデジタル分野が成長していく上で大きな制約を受ける要因となると考えるわけなんですが、その点について翁公述人に見解をお伺いしたいと存じます。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。日本にも少しはプラットフォーマー企業はございますけれども、圧倒的に、GAFAと比べるとまだ規模も小さいということで、やはり一つの大きな課題は、日本はなかなかスタートアップが成長していかないというところがあるんだろうというふうに思っております。やはり、そういった新しいビジネスモデルというのは既存企業よりも新しいスタートアップから生まれてくるということが多うございます。その意味で、まあ欧州もこういったGAFA的な企業はおりませんけれども、やはり、アメリカで参考になるとすれば、こういったスタートアップがどんどん育っていく、そして新しいチャレンジができる、そういうチャレンジがしやすい環境をつくっていくということで、スタートアップ支援をしていくということが、人的な面でも、資金の面でも、またいろいろな、アントレプレナー教育などの面でも非常に重要なのではないかというふうに思っております。
○神田(憲)委員 おっしゃるように、スタートアップを成長させるための国内の土壌というんですかね、これが大変、これから先、スピーディーに、かつ重要なところになってくると思います。そのためには、国としてどういうような法整備であるとかそれから政策を推進していくべきでしょうか。翁公述人にお願いします。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。スタートアップについては、今までもいろいろなことは行われてきてはいるんですけれども、まず、アントレプレナー教育、これを大学とか又はリカレント教育でももっと広げていくことができないかと思っております。それから、スタートアップでも人材不足が指摘されています。大企業の方でもすぐにスタートアップに移れるといった、人材の流動化ということも必要だと思っています。また、今回、グロース市場ということで東証の新しい市場ができますけれども、そういったところにもっと機関投資家なども入っていって、今、個人投資家中心のマーケットでございますが。そして、もっと活性化していって、成長ができるような、資金面での手当ても必要なのではないかと思っています。また、もっと挑戦するということがしやすい社会になっていくということで、さっき申し上げたような就労政策なんかもいろいろ工夫していくということが大事ではないかというように思っております。
○神田(憲)委員 ありがとうございます。まさに、その挑戦しやすい市場をどうやってつくっていくかだと、私も同様に考えております。時間が参りましたので、質問を終わらせていただきたいと存じます。ありがとうございました。

○根本委員長 次に、中川宏昌君。

○中川(宏)委員 公明党の中川宏昌と申します。公述人の皆様方におかれましては、本日、御多用のところ、お話をお伺いする機会をいただき、心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。私からは、まず、大竹公述人に何点かお伺いをさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。国全体の本年の取組といたしましては、一つはコロナ対策、そして経済活動、この両立が重要だと思います。大竹先生も種々お話をしていただいていると思いますけれども。今回、今審議している新年度予算案にもこの両方の政策が盛り込まれておりますけれども、先ほど大竹先生から示された中に、政策効果は政策や情報をどのように伝えるかによって大きく異なる、このようにお話がありました。それには、EBPMを活用して情報発信、情報提供の重要性、これが先ほどお話があったところでありますけれども、国としては、どのような情報発信また情報提供をすれば官民挙げて活力のある社会にしていけるのか、この点につきまして大竹先生の御所見をまずお伺いしたいと思います。
○大竹公述人 御質問ありがとうございます。伝え方が重要ということなんですけれども、幾つか学問的にも発展していまして、行動経済学や行動科学の分野で、情報提示の仕方としてどのような形でするのがいいのか、例えば、損失を強調するのがいいのか、利得を強調するのがいいのか、あるいはもう少し、デフォルト設定というのがあるんですけれども、デフォルト設定を工夫する、あるいは情報提示の仕方を単純にしていくということも、いろいろあります。いろいろあるんですけれども、やはり、そのときにどういう人にどんな効果が一番大きいのか、平均的にはどんな効果が大きいのかというのは、できれば事前にテストしていく。そして、いろいろな今、技術があります。オンライン調査やスマホのデータを使うということもありますから、それで、今日申し上げたように、リアルタイムで効果を測定しながら一番よい方法というのを考えていくということが重要かと思います。以上です。
○中川(宏)委員 ありがとうございます。リアルタイムでしっかりと見ていくということでありますけれども、コロナ対策と経済活動を両立させていく中で、目指していくものは社会の安定だと思います。コロナ禍の中で社会の安定を維持していくためには、国民全体となっての行動変容が必要でありまして、大竹先生は行動経済学の研究をされておりまして、先ほどもお話がございましたけれども、あなたのワクチン接種が周りの人のワクチン接種を後押ししますというメッセージに効果があると確認できたと先ほどもお話がありましたが、人の利他性が発現しやすい状況をつくり出すことが重要と大竹先生は御教示くださっております。コロナ禍の今、打撃を受けられている方は、やはり、飲食業や観光業を始めとしまして、行動制限によって収入が激減している方たちでありまして、その方々を救う、社会貢献のために行動変容を促すことは、ひいては自分自身を守る最適な手段になり得ると私自身考えております。こういった方々への支援として、国民の皆様の心に届くメッセージとしては具体的にどういったメッセージを発出していった方がいいのか、また、国が取り組むべき対策があれば御教示いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○大竹公述人 ありがとうございます。確かに、利他的メッセージは、全員じゃないですけれども、ある程度の人たちに効果があります。そして一方で、利己的メッセージで動く人たちも結構いる。難しいところは、利己的メッセージ、例えば、あなたにとってこれは得ですよということを言った場合に、それを目的としないで行動したいと思っていた人たちの意欲をそいでしまうということがあります。したがって、その人たちの意欲をそがないような形で、両方の人たちの行動を促進するような工夫が必要だと思います。確かに、一つは、何かクーポンをもらえる、あるいは援助をもらえる、例えば、ワクチンを打ったら援助をもらえる、ポイントがもらえるというふうな仕組みにしたときに、利己的な人たちはそれで動く。しかし、利他的な人たちはそれで動かなくなるという可能性を考えると、その援助が被害を受けている人たちにも貢献しますよというふうなメッセージというのは、確かに一つの方法だというふうに思います。以上です。
○中川(宏)委員 御教示いただいてありがとうございました。そして、大竹先生にはもう一つ、午前中もお話がございましたけれども、EBPMであります。大竹先生も四年前にこの研究プロジェクトを立ち上げられまして、日本の政策にEBPMを根づかせていくことが非常に重要であるというふうに指摘をされておりますけれども、今、日本を取り巻く環境ですけれども、新型コロナウイルスに始まりまして、この数年は豪雨災害、自然災害もございます、そして自殺など、命に関わる深刻な問題もたくさんありますけれども、この命に関わる深刻な問題についてEBPMをどう活用するべきか、この点につきましてお尋ねしたいと思います。
○大竹公述人 ありがとうございます。命に関わる点ということでは、例えば豪雨災害のことにつきまして私も研究したことがありまして、どういうメッセージで避難を呼びかけるとより早く避難されるかということについて、幾つかのメッセージを提示した後の行動、あるいは行動意欲というのを測定する。その中で一番効果があるというのは、例えば、あなたが避難をすると周囲の人の避難を後押しするというようなメッセージは効果的になります。それ以外のことにつきましても、そういうふうに、どのメッセージが効果的かということについては、先ほど申し上げた、ランダム化比較試験というんですけれども、異なるメッセージをランダムに渡してその効果を見ていくというふうな手法で効果検証をしていく。そして、効果が一番大きいというふうに認められたものを全面的に採用していく。あるいは、どの対象にどのメッセージや手法が効果的かということを明らかにすれば、対象ごとにメッセージや手法を変えていくということがEBPMの在り方だというふうに思います。以上です。
○中川(宏)委員 ありがとうございました。今後の政策過程でのしっかりとした糧にしてまいりたいというふうに思っております。それから、翁公述人にお伺いをしたいと思います。今日お伺いした中で、全ての人にとってデジタルは大事な部分であるというふうに言及をしていただきました。そして、今日御提供いただいた資料の中に、地方移住の関心が非常に高まっているという、こんな資料も提供をいただきました。私も地方出身でございますので、今後を考えたときに、地方とデジタル、これは非常に重要であり、密接な関係にしていかなければいけないかなというふうに感じ取っているところでありますけれども、デジタルを活用した地方創生につきまして、公述人のお考えがございましたら、お示しいただきたいと思います。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。まさに、コロナで今回、デジタルをいや応なく使うようになったんですが、その結果として、やはり多くの気づきがあったと思います。地方に住みながらリモートワークができるようになってきている。それから、地方にいながらオンラインで教育を受けることができる、こういったことが徐々に当たり前の生活になってきているということだと思います。また、地方で起業するということも、デジタルを活用していろいろなビジネスができるようになってきているということで、今までは、都市と地方というのは割と対立的に捉えられていたわけですけれども、むしろ、非常にデジタルによって近づいて、また、二か所で仕事をしたり、二か所で住むとか、そういう多様な働き方、多様な生き方ができるようになってきている。そういった意味で、地方においていろいろなチャンスが出てきているのではないかというふうに思っております。例えば、高専生などがディープラーニングを学んで、その結果として自分の物づくりの知識等を生かして起業するというような、女性で起業する、若い方が。そういうこともできるようになってくるということで、まさに今のチャンスを生かして、地元の企業とか大学とか金融機関とか、またそれが都市部などとも結びついてうまくネットワーク化して、いろいろなサポートをして地域活性化をしていけるチャンスなのではないかなというふうに思っております。
○中川(宏)委員 ありがとうございます。そして、翁先生にはもう一つだけお伺いしたいと思うんですけれども、冒頭、これからは社会の変革と継続的な成長が大事である、こういうお話がございました。今、日本を見回しますと、激しい分断ですとか、格差社会、アメリカほどではありませんけれども、中間層の厚みを誇っていた日本が、今、中間層が減少しまして、格差社会となっているというふうに思っております。そんな中で、日本の低成長、また格差というこの二つの課題については、冒頭お話がありましたが、グリーン化、デジタル化、これを押し上げていくことが大事だ、こういうふうにお話があったんですが、低成長と格差というこの二つの課題を克服していくためにまず着手していくべき対策はどのような対策が必要なのかという点について、最後、お伺いしたいと思います。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。おっしゃるとおり、ジニ係数というもので測りますと、アメリカはずっと上がっていて、日本はそれほど大きく上がっているわけではないのですけれども、このコロナによって、やはり、また、特に非正規の方とか飲食にお勤めの女性の方とか、そういった方々が非常に困難な状況に陥っておられて、しっかり格差の問題に対処していくというのは非常に政治として重要な課題だと思っております。日本の場合は、一番最初に私が申し上げたように、各国と比べますと、日本も成長してきているんですけれども成長がやはり緩やかで、また、賃金の伸びなんかも、最初に提供させていただきましたグラフでもありますように、全く、余り伸びていないんですね。ですから、やはり、全体としてはまず成長して、それを分配していくという形で、成長と分配、まさに好循環させていくということが非常に重要なんだろうというふうに思っています。ですから、まず成長戦略もしっかりやっていく必要がございますし、それをどうやって賃金に分配していくか、そして賃金から更に成長に結びつけるためには、やはり社会の不安とかそういったことが小さくなる必要があると思っています。ですから、社会保障とか、これから人口減少ということで人々が持っている不安とか、そういったことに対してもきちんと対処していくということも非常に重要なのではないかなというふうに思っております。
○中川(宏)委員 大変御丁寧にありがとうございました。時間が参りましたので終わりにしたいと思いますが、やはり、成長と分配の好循環、これが非常に大事だということでありまして、それを今日はしっかりと確認をさせていただきました。以上で質疑を終わりにします。ありがとうございました。

○根本委員長 次に、石川香織君。

○石川(香)委員 立憲民主党の石川香織です。今日は、四人の公述人の皆さん、お忙しい中、貴重なお話を聞かせていただきましてありがとうございます。私からは、一番最初に、カーボンニュートラルに向けた課題ということで、翁公述人と石上公述人にちょっとお伺いをしたいと思います。二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に向けて努力をしていくというのは、重要かつ必要な取組だと思います。ただ、その際の移行期の負の影響というのは最小限にとどめなきゃいけないと思います。いわゆる公正な移行というものですが、特に労働力の部分でこの公正な移行を確保するために、具体的には失業であったり労働条件が低下してしまうですとか、こういった雇用に悪影響が生じてしまう産業ですとか地域というものがあると思いますが、ここについてどのような対策が必要であるかという点について、お二人にまずお伺いをします。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。まず、委員がおっしゃったように、カーボンニュートラルについては不可逆的に進めていかなければいけない課題ですが、その移行期は、やはり、様々な産業の変化、構造変化というのが起こり得ると思います。その意味で、そういったところにお勤めになっていらっしゃる方をどういうふうにサポートしていくかということは、とても大事だと思っております。やはり、私は、先ほども少し述べましたけれども、そういった方々が、新たな技術とか新たな仕事とか、そういったものにスムーズに移行できるような、そういった就労政策というのをしっかりやっていくということがとても大事なのではないかと思っております。それは、企業内でやる部分もあるかもしれませんが、もしかしたら、企業を越えて、転職とかそういったときにも就労がスムーズにいくようにしていくということが大事だと思っています。まずもって、やはり、政府全体として、カーボンニュートラルに向けて、どういうシナリオで、予見可能な形で、大体どういうようなプロセスで進んでいくのかというのが見えてくるということもとても大事だと思っております。そういった全体の話と、あと、きめの細かい就労政策と、両方組み合わせてやっていくことが大事なのではないかというふうに思っております。
○石上公述人 ありがとうございます。カーボンニュートラルの実現に向けて、公正な移行というのは、連合としては、この間ずっと主張してまいりました。政府の様々な文書にもこの公正な移行というのが入るようになりまして、これはよかったなというふうに我々は思っているわけですが。労働組合ですから、労働力に対する公正な移行ということを中心的に申し上げておりますけれども、実際には、地域経済を含めて様々な社会に大きな影響を与えるカーボンニュートラル実現に向けての移行期において、その問題についてしっかり解決をしていく。そして、こういうふうに解決していくんだという道筋を皆さんに示していくということがなければ、カーボンニュートラルを実現することによって自分の仕事がなくなってしまうとか地域経済が衰退してしまう、そういう人たちが多くなればなるほどカーボンニュートラル実現というのは非常に難しくなる。だからこそ公正な移行が必要だというのが連合の主張であります。その意味では、様々な教育や訓練の実施ですとか住居や生活の支援ですとか、持続可能な雇用の創出とか再就職のあっせんとか、労働に対しては様々方策は考えていかなければならないと思いますけれども、一方では、中央でも当然必要だと思いますけれども、各地域でも、この影響を受ける各地域でも、様々な人たちが入った社会対話を進めていく。カーボンニュートラルを実現していくことが目標なんだけれども、それの実現に向けて、みんなで意見を出し合って議論をしていくという場が当然必要だというふうに思っておりまして、労働組合も含んだ関係当事者の参加が保証される対話の場の設置、まずこれをスタートさせていただきたいというふうに思います。
○石川(香)委員 スムーズに移行できる仕組みが大切であったり、企業や地域、それから関係の当事者の社会対話が必要だということで、まさにそのとおりだと思います。石炭を始め化学燃料から脱却していくというのは、多くの産業に大きな構造転換を迫ってくるということで、世界では既に公正な移行が進んでいる国も多いということで、イタリアではエネルという会社、発電の大きな会社がありますけれども、石炭火力をたくさんの国に持っていて、それを二七年までにゼロにするということで地域からもかなり反対の声もあったり、かなりの議論になったそうですが、今では様々な脱炭素ビジネスも展開をしていくということで、逆に、再エネ企業としてこれからも続けていけるような可能性もつくり出し、うまくいけば前倒しで石炭ゼロも目標を達成できそうだということですので、カーボンニュートラルの話題と並行して、労働力の公正な移行、それから経済の持続可能性を保っていくということについても、政治も積極的に政策を打ち出すべきだと思います。ありがとうございます。続いて、石上公述人にお伺いをさせていただきます。今回、介護、保育、看護の職業の方々の処遇改善というものがありましたが、この点で、評価できる点、それから課題と感じている点をお伺いします。
○石上公述人 ありがとうございます。先ほども申し上げましたが、政府が今般打ち出しました、介護、看護、保育などの現場で働いている方々の収入を増やしていくという方針、これは一歩前進だということで評価をしております。しかし、三%程度の改善では不十分だと思いまして、全産業平均に追いつくまで何年も要するという状況であります。人材確保が困難なこの分野で、働きに見合った抜本的かつ継続的な賃金の改善は非常に重要ですし、このことがなければ安定的なサービス提供にも支障が出るというふうに思っておりますので、全ての従業者を対象とした継続的な処遇改善、これが行われるように求めていきたいと思います。
○石川(香)委員 不十分だという点も今指摘をしていただきましたが、現場の方に聞きますと、百三十万円の壁であったり、やはり、パートの方々を始め、いろんな働き方をしている方がいらっしゃる中で、必ずしも事業所にとってよかったと言えることだけではなくて、負担も当然大きくなるというお話も伺いました。ただ、こういった分野で働く方々の処遇を改善していく、ベースアップをしていくというのは当然必要なことでありますし、一方で、違う見方をすれば、今、家族の誰かを支えている人の生き方を制限せずに、学ぶ機会、働く機会、自分の自由な時間をつくるという、つまり、支える人を支える仕組みというものも必要なのではないかなと私は感じています。支える人を支える仕組みが必要だということで、ちょっと、ヤングケアラーについてもお伺いをしたいと思います。石上公述人と小畑公述人にお伺いしますが、近年、ヤングケアラーの問題が取り上げられるようになりまして、ただ、法律では定められていないんですが、一般的に十八歳未満とされていますが、この年齢の線引きを始め、ヤングケアラーの問題をどう捉えるべきかということについてお伺いをさせてください。
〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕
○石上公述人 ありがとうございます。このヤングケアラーの問題ですが、これによって教育や就業の機会を逃すという可能性もありますので、早期発見、そして支援、ニーズを把握をして、社会的な孤立、生活が困窮化することのないように、相談体制、そして生活、就学支援などの包括的な支援提供体制の整備が必要だというふうに思っております。十八歳未満ということですが、幅広い年齢のケアラーが幅広い年齢の人をケアしているというのが実態だというふうに思っております。例えば、学生のときに家族のケアを行い始めて、それが一時期で終わらずに、そのままケアをしながら年齢を重ねている。そういった、いつまでもケアが継続していくケースもあるというふうに思っておりまして、十八歳以上の方も含めて、若年層のケアラー、この方々の教育や就業の機会を妨げることのないように、一律に年齢で区切ることはせずに、切れ目のない包括的な支援が必要だというふうに考えています。
○小畑公述人 御質問ありがとうございます。このヤングケアラーの問題は、一つは、子どもの権利条約に定められている、子供の最善の利益を優先するということから考えれば、学び、成長を保障する、そういう場や時間が失われているということがあるわけですので、その学び、成長を保障するという、そのことを何よりも重視をして、どのような政策が必要かということを検討していくことが重要だということがまず一点です。それと同時に、委員もおっしゃいましたように、このケアを担うのは誰かという問題がありまして、もちろん家庭の中でケアしなければならない問題もあると思いますが、社会全体として、そのケアの問題をどのように考えていくのかということが重要になっていると思います。保育、介護、福祉のところの社会保障全体をどのように充実していくかという、その包括的な立場から、このヤングケアラーの問題も考えるべきだというふうに思っております。以上です。
○石川(香)委員 ありがとうございます。労働組合もこのヤングケアラーの問題に力を入れているということと、それから、岸田内閣でも、三年間、このヤングケアラーについて周知に力を入れるということですので、一層、政策を考えていかなきゃいけないと。私も、先日、ALSの患者さんのお母さんを介護する十八歳の男の子、双方にお話を伺ったんですが、お母さんからすると、もう介護することが息子が当たり前になり過ぎて、洗脳という言い方をされていたのが印象的でしたけれども、どこまでがケアかというのは気づきにくいと。息子さんは息子さんで、何か困っていることはないかと聞いても別にないということで、なかなか表面化しづらい、心身の悩みとか。この実態をどのように問題化していくか、その負担をどうやって軽減していくかということは、非常にこの問題の難しさを感じました。ありがとうございます。では、大竹公述人にも伺わせていただきます。先ほどの委員の質問にもありましたが、行動経済学の専門家ということで、いろいろな、先ほどのお話の中でも非常に興味深いお話がございました。過去の記事をちょっと調べていたんですが、二〇二〇年の四月末から八月までオンライン調査をして、二十歳から六十九歳の方に、どのような言い方をすれば感染対策を促すことができるかという調査をされたと思います。その結果、本人の健康を守る利己的な利得ですとか、他人への感染を防ぐ利他的な利得というような論点があると思うんですが、このオンライン調査は二〇二〇年ということですので、今、この二〇二二年、それもオミクロン株に変化したことによって、人々への呼びかけとか受け取るメッセージが何か変わった点があれば教えていただきたいなと思うんですが、何かあればよろしくお願いします。
○大竹公述人 ありがとうございます。端的に言うと、専門家としては、エビデンスがないので答えられませんとしか言いようがないんですけれども、恐らく変わっていると思います。当時は、一番最初、第一回の緊急事態宣言の最中で、非常に不安が大きかった時期です。そのときに効果的だったというのが、人の命を守れますというのが効果的でした。今、非常に不安が減ってきている中で、より効果的な、今の中で効果的なメッセージというのは、ひょっとしたら違ってきている可能性もあると思います。それから、元々、人によってメッセージは効果的なものとそうでないものがありますから、その違いも出てきているのかなというふうには思います。済みません、答えられないというのが正直な答えです。
○石川(香)委員 エビデンスがない中、無理な質問をしてしまいまして申し訳ありません。どういうメッセージが響くかというのは、そのときの状況も含めて微妙に変化していくものだ、やはり先生のされている研究というのは、私たち政治家にとっても、政策を発信する上でも非常に大事なヒントになるなというふうに感じました。時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

○葉梨委員長代理 次に、市村浩一郎君。

○市村委員 ありがとうございます。公述人の皆様、どうも本日はありがとうございます。質疑をさせていただきたいと存じます。まず、何といいましても、今度の令和四年度の予算を今審議をしているわけでありますけれども、まず、翁公述人もおっしゃったように、社会変革の機会にしなくちゃいけないということだと思います。もう始めなければならない。三十年間成長もしなかったということでありますから、やはり成長をどうやって達成していくかということだと思います。ただ、やはり何といいましても、諸外国の状況を見ていましても、急激に経済成長しているわけではありません。この三十年間、緩やかに経済成長していく、やはり、これがあってこそ賃金も伸びていくということでありますし、成長があって分配、また分配が更なる成長を呼び起こすということになってくるんだと思います。その中で、やはり選択と集中というのが私は必要ではないかと思っています。成長分野を選択し、集中をするということが大切だと思いますが、翁公述人におかれましては、これからの日本、どの分野が成長分野だとお考えでしょうか。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。私、先ほども申し上げましたが、やはり環境関連のグリーンの分野と、それから、何といってもデジタルの分野、これはやはり成長していく分野でありますし、この分野については集中してやっていくということはとても重要ではないかと思っております。それらは両方とも日本の社会的課題も解決するものだと思っておりまして、例えばデジタルにつきましては、やはり、高齢社会で、いろいろデジタルで、マイナンバーで個人が特定できていると早くサポートができるとか、そういう意味、あと、医療などでもオンラインでいろいろなことができるようになるということで、社会的課題を解決するものでもあると思うので、この二つの分野については特に集中してやっていくということについては、今回の予算でもそうなっておりますけれども、私も賛同しているところでございます。
 〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕
○市村委員 成長分野はデジタルそれからグリーンということであります。そこで新しい市場をつくっていくということがやはり必要だと思うんですが、具体的に、なかなかこれは難しいと思いますが、どういう市場がこれから有望であるかということも、また翁公述人、よろしくお願いいたします。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。市場というと、どういうビジネスということかなというふうに思いますけれども、やはりデジタルの分野は、今回、非常に、生活のあらゆる分野にデジタルが入ってきていると思っております。先ほども少しお話しさせていただきましたけれども、教育の分野とか、そういったところも少しずつハイブリッドでやったり、それから働き方のところでもデジタルが入ってきていて、それから、大きいのはEコマースですね。皆さん、Eコマースで買物するようになり、その意味で、プラットフォーマー的な企業が様々なサービスを提供するというような形になってきているというふうに思っています。ですから、デジタルの分野は、やはり、いろいろなことがアプリ一つでできる、そういったプラットフォーマー的な、利便性の高いサービスというのがこれから大事になってくるかなと思っています。グリーンの分野というのは、やはりイノベーションが大分必要な分野だと思っております。やはり、これから新しい、水素とかアンモニア、先ほどもちょっと申し上げましたが、CO2を埋め込む技術、ありとあらゆるところでそういったイノベーションが必要になってきていると思っています。そういったイノベーションをうまく喚起するようなマーケット、それをクレジット化するとか、そういったことで売買するとか、そういったことも是非、海外なんかではそういう動きも出てきていますけれども、そういうマーケットも広がっていくといいなというふうに思っております。
○市村委員 ありがとうございます。それでは、次は石上公述人にちょっとお伺いしたいんですが、先ほどトリガー条項のことも挙げていただきました。特に、中長期的な課題ということで、経済成長をどうやって緩やかにするかという話を今お伺いしたところなんですが、今は、一方で、短期的には、やはり、このコロナで傷ついた日本経済をどう立て直していくかというところも大切だと思います。そこで、私ども維新の会は、減税政策というのを中心に据えて、今話をさせていただいております。消費税減税もそうなんですが、トリガー条項もやはり減税ということになりますが、このトリガー条項につきまして、やはり連合さんとしても今力を入れていただいていると思います。まずは、その点につきまして改めて御見解をお伺いできればと思います。
○石上公述人 ありがとうございます。先ほども申し上げさせていただいたんですが、石油の価格の高騰というのが経営だとか様々な生活に大きく影響しています。特に、コロナ禍において傷ついた生活や経済の中に更にこれが重なっている。ですから、こういった緊急事態については、やはり早急に解除していただきたいというか、何とかこれを回避していただきたい。その意味で、緊急的な取組として、このトリガー条項について連合としては要求している、そういうことでございます。
○市村委員 是非とも、減税政策、頑張っておりますので、また応援くださいませ。それで、今まさに未来づくり春闘ということでやられているということであります。そのためにも、やはりこれから経済成長して、緩やかな経済成長において賃上げも成し遂げていくということ、つまり、昔から言われます労働分配率を高めるということになります。ただ、しかし一方で、先ほど、国庫負担割合が今本則二五パーじゃなくて二・五パーであるということもおっしゃられました。改めて、私は、今ゼロになっているという状況を考えますと、やはり本則に戻すべきだというふうに私も考えておるところですが、改めてその御見解もよろしくお願いいたします。
○石上公述人 ありがとうございます。先ほども述べさせていただきましたが、雇用保険財政、非常に厳しい状況になっております。これは審議会等でも、経営者側も、そして労働側も申し上げておりますけれども、やはり本則に戻すべきだと。そして、政府がしっかり雇用に対する責任を果たすんだというメッセージを国民に対して出してほしい。そういった意味で、単なる財政論だけではなくて、国としてこういうコロナで傷んだ雇用の状況をしっかり支えるんだ、そういうメッセージとしても、この本則に戻すべきだというのが連合としての考え方です。
○市村委員 ありがとうございます。それで、今度は大竹公述人にちょっとお伺いしたいのですが、大竹公述人は、今、感染症総合教育研究拠点の特任教授をされているということでありますが、私ども、今、例の感染症法の二表から五表にやはりするべきじゃないか、また、昨年の落ち着いていたときにしておくべきだったのではないかという思いも持っているところなんです。先日、予算委員会の方で担当大臣と御議論させていただいたんですが、なかなかそれは昨年の段階では予見できなかったというお答えだったんですが、しかし、一般的に、ウイルスは弱毒化するということもあるということで、本当にエビデンスがこの場合なかったのかなと。多分、特に大阪大学だけじゃなくて、いろんな教授の方が弱毒化しますよというデータも示しながらエビデンスを持って、いわゆる二表から五表にしてもいいんじゃないかということを昨年の段階で、暮れの段階で言われていたような気がするんですが、大竹公述人の御意見をちょっと賜れれば幸いでございます。
○大竹公述人 御質問ありがとうございます。新型コロナ感染症を二類から五類にするということですけれども、弱毒化するかどうかということに、一般的な話というのはいろんな議論があってはっきりしていないと思います。私、先ほど、意見で紹介させていただきました三つのオプションというところで、医療提供体制を一時的に変更するという提案というのは、運用上でまずは変えてはどうかと。それで、オミクロン株に適した医療提供体制というのは、もう少し、実質的にはかなり五類に近いものというのを一時的に対応するということが望ましいのではないかというふうに思っています。ただ、今後、また違う変異株が出てくる可能性があるということで、それがはっきり見えてくるまでに大きな制度変更をするかどうかというのは、制度変更の難しさ、時間的な余裕がどのくらいあるかということにも関わってきますので、それは、政策のスピード感に応じてどちらを選ぶかということは決めていただければいいというふうに思っておりますが、まずは、運用上でできることをしていただくのがいいのではないかというのが私の個人的意見です。以上です。
○市村委員 ここで、もうこの議論は尽きないんですが、ただ、要するに、今よく言われるように、変異というのは繰り返していくわけでありますから、じゃ、このままだと永遠に、変異を繰り返すたびにまた対応しなくちゃいけないということになってしまうので、どこかでやはり政治決断をしなくてはいけないかなというふうに思っていますが、ちょっと一言だけ御見解をいただければと思います。
○大竹公述人 ありがとうございます。本日申し上げたとおり、そういった、だから、専門家はオプションを提示する、政治的な決断をしていただくというのが国会であり、政府であるというふうに思います。そういう大きな方向性を是非政治で議論していただければというふうに思います。ありがとうございます。
○市村委員 では、小畑公述人にもお伺いしたいんですが、最低賃金を上げるという議論はもうずっと続いております。ただ、先ほども申し上げましたが、経済成長が緩やかにしていれば緩やかに最低賃金も上がっていったと思うんですが、今お示しいただいた資料にあるように、もう格差がすごい、諸外国との。ただ、これを一気に上げるというのは、やはりなかなか、中小企業をもっと支えなくちゃいけないという公述人のお考えなんですが、中小企業がもたない。私も中小企業の経営者の方々とお話ししますが、いや、ちょっとそんな、最低賃金をいきなり上げろと言われても、それはもたないよということで、もう倒産だということになってしまいます。ですから、やはり経済成長が必要だと思うんですが、ちょっと小畑参考人の御見解をまたいただければと思います。
○小畑公述人 御質問ありがとうございます。まず、最低賃金が低過ぎるという話を先ほどさせていただいたわけですけれども、その低過ぎる水準というのが、日本の場合は、一人一人の労働者が生活できないほど低い水準になってしまっているというところがまず問題なので、そこを生活できるような水準にまず上げるということが私たちは非常に重要だというふうに考えています。それで、それをやるためには、今お話があったように、今、コロナの問題で、中小企業の皆さん、大変な困難の中にいらっしゃいますので、もちろんその前からも様々な困難を抱えられていたわけですけれども、そこのところに必要な支援をしながら、労働者も生活ができるし、経済も回していくことができる。そして中小企業の皆さんのお仕事もきちんとできるというような、そういうところに国がきちんと政策として踏み込むべきではないかということを私どもとしては主張をしているところで、生計費原則というのが一番大事なところだというところを御理解いただければというふうに思っております。例えば、今日お示しした中小企業支援の政策にも書きましたけれども、韓国やフランスなどでは、社会保険料の負担軽減など中小企業支援を拡充して、最低賃金や労働者の賃金が上がるような施策をしているわけですので、是非そうしたことも研究していただいて、国としての政策を進めていただければありがたいと思っております。以上です。
○市村委員 ありがとうございます。かつて、何かトゥーリトル・トゥーレートという議論があったのを覚えておりますが、もはや、そういうことを議論している間もないぐらいの状況だと思います。また日本経済が成長できるように、公述人の皆様にもまた御指導いただきながらやってまいりたいと思います。よろしくお願いします。今日はどうもありがとうございました。

○根本委員長 次に、斎藤アレックス君。
○斎藤(ア)委員 国民民主党の斎藤アレックスでございます。本日は、公述人の皆様、大変お忙しい中、また長時間にわたりまして、意見陳述、また御質問に答えていただき、大変ありがとうございます。私から、我々国民民主党が掲げている給料が上がる経済を実現するという観点で、少し御示唆をいただきたく、御質問を中心にさせていただければと思っております。まず、石上公述人にお伺いしたいと思います。今回の予算の中で、また岸田政権の政策の中で賃上げ税制というものがございまして、今審議をされております。我々国民民主党も賃上げを実現したい、もちろん労働者の皆様も賃上げを実現したいという思いは同じだと思いますけれども、今回の政権側から出てきた賃上げ促進税制に関してどういった評価をされているのか、また、どういったところを改善すべきだとお考えになっているのか、教えていただきたいと思います。
○石上公述人 ありがとうございます。今回の賃上げ促進税制ですが、政府による賃上げの環境整備の一環であるというふうに受け止めておりますけれども、ただ、この税制、一定長い期間行ってまいりましたが、実際には本当にこれが賃上げにつながっているのかどうか、現状の状況を見ると、効果があるのかどうかということについて、やはり検証が必要なのではないかというふうに思います。その意味で、こういった方法で本当に賃上げが実現できるのかどうか、その議論を是非お願いをしたいというふうに思います。それと、今回のこの制度設計に関しての懸念、二点申し上げますと、まず、中小企業については、先ほども申し上げましたが、全体の半分ほどしか対象にならないという状況でありまして、そういった意味では不十分ではないかというふうに思いますし、もう一点、休日出勤や時間外労働を増やしてもこの賃上げ税制の対象となるということで、長時間労働を是正するという意味では、これはやはり問題があるというふうに思いますので、是非適用要件の厳格化をお願いしたいというふうに思います。
○斎藤(ア)委員 石上公述人、ありがとうございます。我々国民民主党としましても、月例賃金をしっかりと引き上げていくということが重要だと考えておりますので、こういった休日出勤や時間外労働が算定に含まれないよう、また、中小事業者、赤字企業が大変多くなっておりますので、こういった事業者も対象になって、賃上げに全体としてつながっていくよう、消費税の減免も含めて検討していくよう政府には求めていきたいと思っております。また、これに関連して翁公述人にお伺いしたいと思うんですけれども、今、石上公述人からもありましたが、これまでもこういった賃上げ促進税制というものが導入されてきて、今回それを拡充するという内容だと思うんですが、これまでこういった賃上げ促進税制が余り機能してこなかった理由というところにはどういったものがあるとお考えでしょうか。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。やはりEBPMで、大竹先生がおっしゃったような、こういったことで確認をしていかなければいけない分野ですが、それが必ずしもしっかり検証できていないということだと私は思っております。一つ、中堅・中小企業とか製造業、非製造業で分けて分析してみますと、賃金が上がっていない原因はいろいろございまして、中小企業などは、やはり労働生産性がなかなか上がっていないというところが大きな要因になっています。一方で、大企業の製造業とかは、労働分配率がやはり上がっていないというようなこともございまして、やはりそれぞれの置かれている企業によって課題がいろいろ違うのかなというふうに思っております。何といっても、やはり労働生産性に合った形で賃金が上がるようにしていくためには中小企業の支援も必要になってくると思いますし、また、労働分配率についてはしっかりそういった生産性と併せて議論していくということで、これも人への投資と関係ありますけれども、コーポレートガバナンスとかこういった方でも、しっかり賃金とか人への投資とか見ていくというようなこともこれから必要になってくるのかなというふうに思っております。
○斎藤(ア)委員 ありがとうございます。ちょっと唐突かもしれないんですけれども、大竹公述人にも、もし御示唆であったり御知見があったらお伺いしたいんですけれども、日本でなかなか賃上げが生じないとか、あるいは消費が増えないとか、こういったところには多分に行動経済的なマインド面での影響というものがあると想像するんですけれども、こういったところに関して、なぜ賃上げが持続的に行われないのか、消費が日本で活性化しないのかというところについて、何か御知見であったり、対応策みたいなものについてお考えがあれば、是非教えていただければと思います。
○大竹公述人 御質問ありがとうございます。日本で賃金が上がらない理由というのは、いろいろな分析がありまして、一旦上げると今度下げにくいという、これは世界各国どこでもそうなんですけれども。その背景には、物価がなかなか上がらない。物価が上がらないという前提だと、下げなきゃいけないときに名目で下げなければならない。それは非常に大きなショックを与えます。したがって、物価が継続的に上がる見込みがない下で賃金を上げるというのは、企業にとってはかなり大きな決断になるというわけです。では、どうして物価がなかなか上がらないのかということ、これもなかなか難しいんですけれども、物価が上がらないものだという社会規範が形成されてしまったというのは非常に大きい。それに伴って、やはり賃金も上がらないものだという規範になっていて、その前提で全て企業が行動しているというのはあると思います。したがって、こういった長いデフレの経験ででき上がってしまった社会規範をどうやって変えていくのかというのは、本当に政府一丸で工夫していく必要があるというふうに思います。以上です。
○斎藤(ア)委員 突然の質問にもかかわらず、ありがとうございました。本当に参考になりまして、我々国民民主党も、こういった意味で、これまで日本政府としても、この三十年間ずっと何とかこの悪循環を断ち切ろうとして取り組んできたけれども実現できていないというところだと思いますので、デフレ予想であったり、賃金が上がらないといった状況、そういった固定観念みたいになってしまっているところを変えていくためにも、政策の力で一度ショックを与えて賃上げを促していくというところに全力を尽くしていきたいと考えておりますので、この点に関しても引き続き御指導いただければというふうに思っております。また、賃金が上がるということが実現できると何ができるかといえば、やはり消費が増えるというところだと思います。消費が増えて、そして企業の業績が上がって、さらに設備投資ができるようになって、さらに賃金が上がっていくという、内需がしっかりと機能している先進国であればこういったサイクルができていると思うんですけれども、これを実現するためにも日本で賃上げを実現しなければならないと考えています。しかし、先ほど公述人の皆様からも御意見がありましたけれども、やはり、賃上げができても、将来に対する不安というものが解消されなければなかなか消費を増やすことができないというようなお話もありましたけれども、こういった観点に関して、今、財政も非常に厳しい中でございますけれども、石上公述人にお伺いをしたいんですけれども、働く者の、皆様の立場から、今後、どういった形で財政再建であったり、あるいは社会保障制度の、セーフティーネットの機能を強化をすることが望ましいとお考えになっているか。ちょっと、ざっくりとした質問で恐縮ですけれども、教えていただければと思います。
○石上公述人 ありがとうございます。先ほども述べさせていただきましたが、そこを支える財政的な基盤、そこはやはり非常に重要だというふうに思っておりまして、これは税だけではなく社会保障、保険料も含めてですが、そういったもの全体を国民としてどう負担をしていくのか、国民負担率ですね、それをどこに今設定をし、そして、どういう制度であるのかということを国民に提示をして、やはり議論をしていくということが必要だというふうに思います。特に、勤労者というか、納税する、保険料を払う人口というのはどんどん減っていく中で、こういった制度の持続可能性というものを国民にしっかり示していくこと、そこがなければ、やはり将来に対する不安というのは消えないだろうし、その意味では、新しいものにトライをしていく人たちというものもやはり出てこないというふうに思うんですね。だから、そういった意味では、国としての将来像をどう示していくかということが非常に重要だというふうに思います。
○斎藤(ア)委員 ありがとうございます。これはまさしく政治の責任というところでございまして、いろいろなシナリオというものは、やはりこれも専門家の方からお示しをいただいていると思いますし、あとは政治がしっかりと決断をして、決断をする前に国民の皆様に説明をして、国民の皆様にも選んでいただく、そういった真正面からの政策、政治議論がこの社会保障制度改革で必要だと考えておりますので、いただいた御示唆もしっかりと生かしていきたいと考えております。これに関連いたしまして、先ほど翁公述人の方からも、安全、安心というものをつくっていくということが経済上も極めて重要だ、こういった御意見がありましたけれども、そういった安心、安全を生み出すための制度というもので、何か方向性であったりイメージというものをお持ちでいらっしゃいましたら、是非教えていただければと思います。
○翁公述人 ありがとうございます。一つは、先ほど申し上げた就労政策ですね。残念ながら職を失ってしまったり、又はうまくいかなくなってしまっても、新たに教育や訓練を受けてステップアップしていけるというような、そういった社会にしていくということは非常に重要だと思っております。また、やはり正規社員と非正規社員には随分差があって、非正規の方の将来不安というのはすごく大きくて、やはり、消費の動向なんかを見ていても、若い方とか非正規の方の消費性向が低いという傾向がございます。そういった意味でも、そういった方々が仕事に就けるようにしていくということは極めて重要だと思っています。あとは、やはり社会保障制度の持続可能性、これが見えていないので、やはり老後の不安というのは多くの国民が抱えているというふうに思っています。ですので、ここはどのぐらいのこれから給付が必要になり、どのぐらいの負担が必要なのかというようなことをきちんと明らかにして、国民的な議論はちゃんとしていくということが非常に重要になってきているんじゃないかなというふうに思っております。
○斎藤(ア)委員 ありがとうございます。生産性を引き上げるであったりとか将来の不安を解消していくために、挑戦もしやすい社会にしていかなければならないということは、これも広く今認識をされている、共有されていることかと思います。一方で、なかなか、起業家精神と一くくりに言われるこういったものが、日本でまだまだ育ってこないということも言われているので、そういった、非常にこう言ってしまうと抽象的なものですけれども、取り組んでいかなければならないと思っていますし、また、先ほど少し翁公述人の方からありました、グロースマーケットといいますか、新規公開企業の市場に関しても、改善であったり活性化が必要だというお話があったんですけれども。これも私、非常に認識を共有するところでございまして、特に、昨今すごく値段が下がってしまって、市場関係者に失望のようなものも広まってしまっているんですけれども、この新規公開企業の資金調達市場、これをもう一度活性化するというか健全な姿にしていくためにどういったことが必要だということを、こちら、突然で恐縮ですけれども、何か御示唆があれば、是非教えていただければと思います。
○翁公述人 ありがとうございます。マザーズマーケットがかなり今価格が下がってしまっているということで、大きな問題になっているわけでございますが。やはり、大事なのは透明性かなと思っています。プライシング、価格のですね。ですから、やはりそういったことが非常に重要な、透明なマーケットにしていくということが大事だということと、あと、多くの投資家が入っていけるマーケットにしていくということ。日本のマザーズとかは割と上場の基準が、時価総額が低くても上場できるという、世界の中でも非常にその意味では上場しやすいマーケットなんですが、なかなかそこから成長しないということがありまして。ですから、やはり成長をしっかり見守る、モニターしていく、そういった投資家がグロース市場にどんどん入っていくということも非常に重要なのではないかなというふうに思っております。また、シンガポールとかそういったところにつきましては、かなり、例えばヘルスケアとか、こういったところについては上場しやすくするとか、割と戦略的にいろいろ考えて施策を打っているところもございます。いろいろなやり方があるかと思いますけれども、しっかりと、こういったスタートアップの支援というのを、あらゆる角度から是非御検討いただきたいなというふうに思っております。
○斎藤(ア)委員 ありがとうございました。時間の関係で皆様に御質問できなくて、大変申し訳ございませんでした。しっかりといただいた御示唆はこれから生かしていきたいと思います。時間が来ましたので、終了させていただきます。ありがとうございました。

○根本委員長 次に、宮本徹君。

○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。まず、小畑公述人にお伺いしたいと思います。政府が進めているケア労働者の皆さんの賃上げの問題に関わって、この二月からスタートする部分について職場で戸惑いや不満の声がいろいろ上がっているというお話がございましたが、もう少し詳しく御紹介いただけたらと思います。
○小畑公述人 御質問ありがとうございます。今日お配りしました資料の四枚目でしょうか、エッセンシャルワーカーの賃金という資料があると思いますけれども、そもそもケア労働者の賃金は、全産業平均の賃金からも大きく下回るような低賃金になっています。介護士、保育士、福祉、学童保育では、所定内の賃金が月に六万から七万も低いというような状況です。看護師は全産業平均とほぼ同程度ですけれども、諸外国の看護師や保健師の賃金は全産業平均よりも二割から三割高い水準だというふうに言われていますので、日本の場合は非常に低い。さらに、ケア労働者の賃金体系は経験を重ねても上がらない、まあ女性の方が多いわけですけれども、これは昨年も指摘をいたしましたが、寝たきり賃金というふうに言われているような賃金になっています。この低さに対して、今回、全ての職種ではなくて、一部に限定された人たちに対して、しかも、看護師では一%、四千円、そして、介護士、保育士、福祉、学童保育は三%、九千円ということに対して、非常に金額そのものが低いということが一つあります。それから、今も申し上げましたが、二つ目には、例えば看護師だったら、救急車が年二百台以上の大病院の看護師に限定をしている。介護や保育園なども、直接ケアに関わっている方に職員が限定されているというような限定条件がついていることで、非常に不公平だという、職場を分断するようなものに対しての不満の声が上がっているということです。三つ目には、非常に拙速過ぎるということで、これは先ほども申し上げたとおりです。 それで、このことは公務の職場でとりわけ問題になっているんですけれども、条例改定が間に合わないので実施しない、できないとか、賃金の低い会計年度任用職員だけを実施するなどの消極的な自治体の姿勢があらわになっている中で、非常に、せっかく政府が上げると言っているのにそれが実現できないということに対しての不満、不安、怒りの声が上がっているということです。以上です。
○宮本(徹)委員 今のお話で、自治体の中で条例が間に合わないだとか、そういうお話が出ているということで、これは大変、本来政府が立てた制度設計からしたら深刻な問題じゃないかというふうに思いますが、その辺り、具体的に自治体でどういうことが起きているのか、更に詳しくお聞かせいただけたらと思います。
○小畑公述人 御質問ありがとうございます。例えば、先ほども言いましたけれども、条例改定が間に合わないので実施しないということがあるんですが、まだそれぞれの労働組合と交渉中ですので自治体名までは申し上げられませんが、例えば、保育士の正規職員は賃金水準や近隣の動向を踏まえ賃上げを行わず、会計年度任用職員だけ行うというような自治体があったり、それから、正職員のケア労働者の賃上げは行わないというようなことが言われていたり、また、ある自治体では、賃金体系が変わってしまう、雇用が複雑になる、ほかの職員との公平性が保てなくなるという理由から実施しないという回答があったり、また、別の自治体では、既に十分な賃金を保障している、急に言われても困る、給与は一過性に定めるものではないなどの回答が自治体当局から出ているようです。先ほども申し上げましたけれども、政府が、この賃上げ、せっかく政策として打ち出しているわけですので、それが意図したように歓迎されていないということについては非常に問題だと考えているところです。以上です。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。是非、与党の皆さんも地元の自治体でこの政府の策が活用されるように、様々な働きかけもお願いをしたいなというふうに思います。続きまして、大竹公述人にお伺いをしたいと思います。コロナ対策で極めてメッセージが大事だ、こういう研究があるというお話でございました。今回の日本の新型コロナ対策は、他国と違って、やはり国民の行動変容と自発的な協力というのが本当に鍵になって進めてきているわけですけれども、そういう点で、政府が行うリスクコミュニケーション、とりわけ政治リーダーが行うリスクコミュニケーションについて、どうこの間捉えられていて、どういう御意見をお持ちか、お伺いしたいと思います。
○大竹公述人 御質問ありがとうございます。政府が行うリスクコミュニケーションについては、やはり、どこが情報発信するかというところがなかなか一本化していなかったように思います。当初の頃は、例えば専門家会議、あるいは分科会もそうです、それから西村大臣も情報発信されていましたし、あるいは時々総理からも発信があるという形で、様々な役割の人が発信をされていたということで、その役割分担が明確じゃなかったかなというふうには私自身は思っております。そのときに、今日お話ししたのは、どういう情報発信をすれば効果的なのかということを、もう少しエビデンスを基に政策に使っていくということをしていただければ、より効果的だったのではないかというふうに思います。御指摘のとおり、日本人の行動変容は非常に大きくて、厳しい規制でなくてもここまで感染を抑えることができたというのは大きな成果だというふうには思っていますけれども、まだ改善できる余地はあるんじゃないかというのが私の意見です。以上です。
○宮本(徹)委員 ありがとうございました。続きまして、石上公述人にお伺いしたいと思います。男女の賃金格差の是正が極めて大事だというお話がございました。私も本委員会で取り上げてきたんですけれども、例えばアイスランドでは男女の賃金格差の問題について是正のための法的な枠組みがある、事業主の側に男女の賃金が差別されていないということを実証する責任が負わされているという仕組みがございますが、この男女の賃金格差是正に向けての法的な枠組みといいますか、その点についてはどういうお考えをお持ちでしょうか。
○石上公述人 ありがとうございます。法的な枠組みということですが、活躍推進法の状況把握項目で、選択項目となっています男女の賃金の差異を、義務である基礎項目、まずそこからスタートすべきだなというふうに思っております。あわせて、全ての事業主に対して、雇用の全ステージにおける男女別の比率、男女別の配置状況、教育訓練の男女別の受講状況、両立支援制度の導入や男女別の利用状況、男女別の一つ上位の職へ昇進した者の割合、男女の人事評価の結果による差異、非正規雇用から正規雇用への転換制度の有無と転換実績データの男女別データ、各項目に関する現状把握、分析、情報開示なども、義務として、格差是正に向けた具体的なデータによる取組を行うべきだというふうに思います。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。続きまして、翁公述人にお伺いしたいと思います。人への投資が重要だというお話をいただきました。日本は、OECD諸国の中で女性が大学院でも四年制大学でも進学率が男性より低い唯一の国だということも先日予算委員会で取り上げさせていただきました。やはり、女性の皆さんが更に活躍できる社会にしていかなければならないと思うんですけれども、その点でどういう改善策が必要だとお考えなのか、お伺いしたいと思います。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。この問題は本当にいろいろなことを解決していく必要があるというふうに思っております。まず、やはり女性が働き続けるということがなかなか難しいです。一時的に正規社員になっても、今、M字カーブは大分解消しておりますけれども、非正規になってしまう方が多くて、パートに変わってしまう方が多くて、L字カーブといいますけれども。そういう意味で、やはり女性が家族の生活と両立して働くということがまだまだ日本全体ではできていないというふうに思っています。その意味で、しっかりとそういった働き方改革を進めていくということは非常に大事だと思っておりますし、あと、先ほど御指摘、ほかの公述人の方からありましたけれども、やはり性別役割分担の意識、こういったところも家族から変えて、男女が共に子育てもし、仕事もする、そういう社会にだんだん変わっていくということが大事かなと。そして、子供が育てやすい社会になっていくということも非常に大事だと思っています。また、女性の管理職、こういったこともかなりいろんな企業が努力するようになってきていますけれども、やはり、ある程度明確な目標を持って、女性にもどんどん、今まで余り人的投資はなかったかもしれませんけれども、そういった方々にもチャンスがあるということを自覚してもらって、しっかりと教育や訓練もし、そして管理職にどんどんなっていく、そういうのが当たり前になるような社会で、企業全体にもお取り組みいただきたいなというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 ありがとうございました。まだ時間がありますので、小畑公述人に改めてお伺いをしたいと思います。雇用保険制度についても言及がございましたが、雇用調整助成金の特例措置が、今、三月までということになっているわけでございますが、この点について、現場の感覚からすればどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。
○小畑公述人 御質問ありがとうございます。コロナ禍に対応した雇用調整助成金の特例措置については、これまでも公述人の皆さんからもお話がありましたように、失業者の発生を抑える効果を発揮してきたというふうに思っております。同時に、先ほども私も触れましたが、給付日額の限度を引き上げたことによって、休業中の労働者の生活を守ることもできました。全労連が組織をしている職場の労働組合からも、この助成金の活用によって雇用が守られたということが報告をされています。この制度を活用している事業所では労働者の雇用を確保してきたことから、事業再開が速やかに行うことができているということも聞いております。コロナ後の企業経営にとって労働者の確保は非常に重要な問題です。一度雇用関係が切れると労働者の確保が難しいというのはこの間様々なところで言われていることだと思いますが、経営に大きな影響を与えることがあるというふうに思います。コロナ禍の先行きがまだまだ見通せない中、特例措置を終了するということは早過ぎるというふうに考えています。政府には、是非この特例措置の延長を行っていただきたいというふうに思いますし、同時に、基本日額の特例措置も継続するようにお願いをしたいと思います。以上です。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。最後に、石上公述人にもう一問お伺いしたいと思いますが、コロナ禍三年目を迎えることになるわけですけれども、労働組合に寄せられる労働者の皆さんの相談というのはどういう形になってきているでしょうか。特徴とか変化とかあれば、教えていただけたらと思います。
○石上公述人 ありがとうございます。連合としては、この間もずっと労働相談を受け付けてきているわけですが、やはり、コロナ発生によって様々な相談が激増したというのが実態です。特に雇用の問題を含めて、多く上げられてまいりました。先ほどもお話ししたとおり、女性や非正規労働のところに多くのしわ寄せが行って、やはりそういった人たちからの相談も多くありましたし、我々としては、連合としては、取り組み始めたところですけれども、フリーランスの人たちの相談も実は受け入れて、今相談に乗っております。そういった人たちから、労働者とまだ認定をされてなく労働組合をつくれない人たち、そういった人たちからの相談も多くなっているというのが実態です。
○宮本(徹)委員 ありがとうございました。時間になりましたので、終わります。

○根本委員長 次に、仁木博文君。

○仁木委員 有志の会の仁木博文と申します。今日は、四人の公述人の皆様方、本当にお話、ありがとうございます。私、ここにまた戻ってきましたが、医師として治療しておりまして、その際に、EBM、エビデンス・ベースド・メディスンという言葉がありますけれども、科学的根拠に基づいたいわゆる医療、まさに限られた資源ですから、手術をする、薬物療法をして患者さんがどのようになったかというのを、患者さんにも選んでいただきますけれども、私たちもそういうことを提示して選択の余地を与える、これは大切なことだと思いまして、後ほど、エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング、EBPMという形でお話しされている大竹先生にまた後で御質問したいというふうに考えております。そして、まず、私、端的に、今、地元徳島を歩いておりまして不安に思っていることがあります。それは、コロナ対策ということで様々な政府からの助成金があります。また、それに加わって、コロナ融資という言葉がありますように、多くの方々が何とか、特に中小企業中心ですけれども、雇用をつないだり、事業を継続することが可能になっていますが、御案内のように、三年間は無利子であったりすることが多い、けれども、本格的な返済が始まったときに、事業そのものがうまくいっていないのにどのようにして返済していくのか、事業本体が回っていないのにどのように雇用をつないでいくのかという不安なこともあるわけです。こういったことに対して、もちろん、そのときになったら、いわゆるアフターコロナショックなる、いわゆるリーマン・ショックの次のようなことが起こるかもしれませんので、そうならないように政府も頑張っていただくとは思いますが、例えば、こういった端的な状態、今日は翁公述人からは、中長期的な、いわゆるいろいろな業態がシフトしなければいけない、新たなデジタルとかグリーンとかそういった分野にシフトしていくべきだということもおっしゃったんですけれども、端的な、コロナで、そういった、今後近いうちに遭遇する、あるいはせざるを得ない中小企業の方々に対して、専門的なお立場から何か政策あるいはお考えがありましたら、教えていただきたいと思います。
○翁公述人 御質問ありがとうございます。私も大変心配しております。来年あたりからゼロゼロ融資の期限が来ます。その意味では、もう今年ぐらいから、どういうふうにその企業のビジネスモデルをアフターコロナの社会に適合するように変えていくかということをしっかり議論していくということが大事だと思っております。やはり、過剰債務になっている企業も少なからずあると思います。その意味では、金融機関がやはりそういった相談にしっかり乗って、アフターコロナのビジネスモデルについてどう考えるのかということを早め早めに議論をしていくということが大事かと思っています。取りあえずコロナ対応で命をつないだ企業も多いので、この対応自体については評価をしているんですけれども、やはり、その後にしっかりとリストラクチャリングしていったり、又はビジネス転換していったり、ビジネスモデルを転換していくということをしっかり早めに議論を始めるということが今求められていると思っております。
○仁木委員 これは帝国データバンクのデータではありますけれども、健全に、例えば好景気の中でも倒産というか、それはある程度あるわけですけれども、先ほど私が述べたことの裏返しかもしれませんが、結果的に、二〇二一年、特に前半、その前後一年というのは、政府あるいはその融資、そういった公的なサポート的なものが中小企業に加わって、実際に倒産件数が減っているんですね。ですから、健全な経済成長、いわゆる好景気の中でも倒産があるということは、やはり、健全な新陳代謝というか、企業の、今、翁公述人も、業態変化、いわゆるシフトのことをおっしゃられましたから、個々の企業も変わっていく、あるいは、個々の業界がまた新たな業界へ行って新たな市場を広げていくということは非常に重要だと思います。私も今日お話を聞いて改めて思いましたのは、時間はかかっても、やはり教育。特に、若者に向けての、子供時代からの、マネー教育も含めて、電子マネーを中心としたもの。お金の教育も余り今、公的な学校、義務教育の中ではないわけですけれども、今、実際、学校を出て、子供も十分電子マネーを使っていわゆる消費をするような時代でもありますし、そういったことをやはり政府的にも、行政としてもやっていくべきだというふうに思っております。片や、また、この四月から、伴走型のいわゆる支援、特別保証制度というのがありまして、私はやはり、この企業さん、この事業に融資してもいいですよということを担う人材、これは目利きというふうに言ってもいいかもしれませんが、そういった分野を民間のバンカーに頼っていくというふうなこともあります。そこに、政府系の金融、融資を担うような方々、あるいは、そうでなくても、こういった国の事業の中で、今、コロナ融資に象徴されるような公的なお金が注がれるようなところの目利きをするコンシェルジュみたいな人の存在というのは、非常に重要だと考えています。そのことに対してまたお答えいただきたいんです。もう一点。今、地元で、こういう中小企業の社長さんの声をお聞きします。それは食品メーカーであったりアパレル関係ですけれども、仁木さん、注文はあるんだけれども、増産できないと。その理由が、人がいないというんですね。例えば、技能実習生に象徴されるような外国人労働者、これがコロナ禍でなかなか日本に入国できない状況もあります。あるいは、そうでなくても、やはり地方においては労働者人口が減っています。高齢者は増えていますけれども、労働者は減っているというふうな実態がありますし。また、そういった方々に対しての、私、中で頑張っている企業さんもありまして、それは何かというと、障害者とか、今おっしゃったM字カーブに象徴されるような女性であるとか、あるいはがん患者さんに象徴される、一旦、がんと宣告されて、治療があるから最前線での前の会社を辞めたんだけれども、またある程度サバイブして元気になって働けるような状態の方も、結構数字としてはいると思うんですね。そういった方々をまた新たなところへつないでいくような、言ったら、スーパーハローワークみたいな人材。いわゆる、特に、障害者ということを先ほど私は申しましたが、最初の障害者、いろいろあるわけですけれども、知的障害であったとしても発達障害であったとしても、例えば、ある分野ではすごくたけているような方もたくさんいらっしゃいますし、そういった方々とコミュニケーションができて、そしてまた、企業が要求するような仕事のこともよく分かっていて、そこを結びつけるような、そういう人材というのも必要だと考えています。そういった、私、もろもろ二点を主に質問したわけでございますけれども、翁公述人の御回答をいただければうれしいです。
○翁公述人 ありがとうございます。目利きというのは非常に重要だと思っております。特に金融機関の融資や保証をする際にも、やはり、そのビジネスがどのぐらいサステーナブルかということをしっかり見極めるということで、場合によってはそれをサポートしてアドバイスをする、そういうことがないとお金も生きていきませんし、やはり、そういった人たちが育っていくということは大事だと思っています。元々は、銀行とか地銀とかローカルバンク、信用組合、信用金庫とか、そういった人たちがいらっしゃるんですけれども、どうしても貸出しの方で見てしまうので、エクイティー目線というのがなくて、どうやったらビジネスが育っていくかということについての目線がまだ不十分なところもあります。そういう意味では、金融機関もそういった勉強をしていく必要があると思いますし、それ以外の方も一緒になってそういった支援をしていくということが大変重要かと思っています。それから、後半につきましては、いろいろな方が本当は社会で活躍したいと思っていると思います。その意味では、高齢者の方とか障害者の方でも、いろいろな活躍の場、又は社会に貢献したいというところの場というのはあるはずなので、そういう方をうまくマッチングしていく。それは、人材もありますし、デジタルの力をかりてもいいのかもしれません。そういう形で、うまくそういった人手不足のところに人が集まるような仕組み、又はそういったコンシェルジュ的な方、こういった方を地域地域で考えていくということは大きな課題であるというふうに思っております。
○仁木委員 ありがとうございました。それでは、大竹公述人に質問したいと思います。今、私たち、例えば政治家が税金とかを使っていく際に、EBPMという中で、様々な政策があったときに、それが本当に有効だったのだろうか。乗数効果とかいろいろ言葉がありますけれども、かつて、例えば、ばらまきと言われた子ども手当とか、あるいは十万円の定額給付、コロナ禍でそういう形で実施されましたけれども、それが、お金に色がないので、実際どういう形で流れていったのかというのははっきりできないわけでございますが、やはり、私もいろいろな形で、例えば、ワクチン接種記録システム、VRSとかの活用をもっと広げて、利活用していこうということを言っても、例えば省庁の壁であったり法律の壁であったりすることがあって、なかなか、スタディー、こういうエビデンスを出したいからこういったデータを集めなきゃいけない、こういった方法で集めなきゃいけないときに妨げになっていることが結構あるんですね。私はまず、今、個人のあるいは企業の情報というときに、個人情報保護法というのがあります。これはある種いい法律かもしれないんですけれども、地元で例えば同窓会がしにくくなっているとか、そういう負の面もあると思いますし、そういう意味では、国民の側に立った情報基本法という、どなたがどういう権限を持って何のために使うのか、そして、悪用されたりミスがあったときにどういう罰則があるのかというのを決めることによって、具体的に、今そういったデジタル行政の中で回りつつあるマイナンバー制度を、加盟率を高めていって、先生が言われているようなEBPMをつくっていくということは非常に大切だというふうに私は思うわけでございますけれども、先生の御所見、改めていただけたらと思います。
○大竹公述人 御質問、御意見ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。私も、個人情報を守りながら、エビデンス、政策効果を検証する、事前、事後両方ですね、過去に行った政策の効果を検証していく、そして、これから行う政策についても事前に効果を検証しながら本格的に実装していく、そういうプロセスを進めるためにも、既に行政内にあるデータを有効利用できるようにするということが重要だと思います。特に、行政のデータ、今、ワクチン接種のデータもそうですけれども、リアルタイムにあるデータなんですね。リアルタイムにあるデータをより有効に使っていくということが、迅速で有効な政策形成に役立つというふうに思います。以上です。
○仁木委員 済みません、最後の質問になるかもしれませんが、石上公述人そして小畑公述人にもお聞きしたいんですけれども、これは具体的なことなんですけれども、今、コロナに対して様々な、医療、介護の現場でしわ寄せが来ています。その中で、例えば介護の現場とかは特徴的なんですが、資格のある人というか、いわゆる制度上その方々がいないと例えば介護給付費等々が入ってこないということは、給与アップは多少は、まあ今少ないという議論が出ていますけれども、あったんですけれども、それに加えて、実際、個々の介護施設においては、事務の方とかが、そういった介護の現場の人たち、有資格者がやるようなことをやっていることも結構あるんですね。電話対応も本当にすごい時間を要します。コロナでなければすごく面会できたり、あるいは、いわゆる、直接会って、違うカウンターパートナーの方がいて済む話が、みんな事務の方にしわ寄せになっていくんだけれども、その事務の方々は実際評価をされていない、いわゆるそういう現実があります。そういったことに対して、もちろん例えば組合も加盟率は低いと思うんですけれども、そういう組合にも入っていただき、そういうのを政治に届けるということも一つの手法だと思いますけれども、何かそのことに関して、まず認識があるのかどうかと、何か対策がございましたら、お二人、お答えいただけたらと思います。ちょっと事前にお話ししていなかったので、済みません。
○石上公述人 ありがとうございます。今言われたような状況、病院も介護も含めて、職場の中には様々あるというふうに思います。先ほども少しあったんですけれども、今回の賃上げなどでも、職場の中でそこの職種だけを引き上げるということはなかなか難しいみたいなことも含めて、職種間の様々な問題点というのはやはりあるんだというふうに思います。労働組合としては、やはり、その職場の中の公平性なり妥当性なりというものをしっかり担保していく、組合員の納得性みたいなところが重要になりますので、そこはどうしても難しい課題になるんですけれども、ただ、言われたとおり、組合の、特に介護職場においては組織率も低いですし、そういったことの展開も、是非我々としてはしっかりやっていきたいというふうに思っております。
○小畑公述人 御質問ありがとうございます。私の最初の発言の中でも強調させていただいたところを更に強調していただいて、本当にありがとうございました。例えば、介護の分野でも、この賃金の上げるところにヘルパーさんは入っていないとか、様々な問題があるんですね。それで、私たちは、そういう限定されたことによって職場が分断されてしまうということは非常におかしなことなわけなので、労働組合として、そういう皆さんも、組織を広げながら、全てのケア労働に関わる皆さんの賃上げをということで、この春闘では、取り立ててこの問題は大きく取り上げて展開をしているところですので、更に頑張ってまいりたいと思います。ありがとうございました。
○仁木委員 ありがとうございました。

○根本委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)以上をもちまして公聴会は終了いたしました。