2022年5月20日 衆院厚生労働委員会 恒久的家賃補助を検討 厚労相 宮本徹議員に答弁

配付資料 出典:全日本民主医療機関連合会提供資料 
配付資料 出典:札幌市ホームページ
配付資料 出典:厚生労働省提出資料
配付資料 出典:2022年4月17日付「生活と健康を守る新聞」
配付資料 出典:北海道生活と健康を守る会連合会提供資料
配付資料 出典:「生活保護の実施要領の取扱いについて」(1963年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知)より宮本徹事務所作成
配付資料 出典:宮本徹事務所作成

 後藤茂之厚生労働相は20日、コロナ対策で一定の役割を果たしてきた住居確保給付金を基礎とした恒久的な家賃補助制度を検討する考えを明らかにしました。衆院厚労委員会での日本共産党の宮本徹議員への答弁。
 厚労省の生活困窮者自立支援のあり方などを検討するワーキンググループの論点整理では、住居確保給付金について、「住まいを喪失するおそれのある人の多さ(裾野の広さ)が顕在化した以上、住宅手当といった家賃補助的な施策も含め、普遍的な社会保障施策として検討する必要がある」と指摘。「職業訓練受講給付金との併給等について、恒久的な対応として制度化すべきではないか」と提言しています。
 宮本氏は「コロナ特例を恒久化していくのは非常に大事だ。併せて、家賃補助制度への発展も含めて検討してほしい」と提案。後藤厚労相は「全体としてそれも含めて検討したい」と答弁しました。
 宮本氏は「大事な答弁だ」としつつ、「日本の住宅政策は極めて持ち家偏重だ。住宅ローン減税に毎年8千億円以上使う一方で、公営住宅が足りず、民間賃貸住宅への家賃補助も少ない」と指摘し、持ち家偏重の支援からの脱却を求めました。

以上2022年5月21日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年5月20日 第208回衆院厚生労働委員会第21号 議事録≫

○橋本委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。まず、資料の一枚目でございますが、PCR検査の保険の点数ですね、今、外部委託の場合は八百五十点ですけれども、七月一日から七百点になります。こうなると赤字になるという声が医療機関から寄せられております。資料を見てほしいですけれども、大手への検査委託料は約六千円、七百点になったとしてもこれ以上下げられませんと提示されているそうであります。残り千円で、綿棒やスピッツなどの医療材料、一検体ごとに取り替えているゴム手袋、医師、看護師の人件費、感染防止の様々な資材、あるいは検体を取るために特別にレンタルしている空調機つきのプレハブ診療室や待合室、HEPAフィルターつきの空気清浄機、こうしたものを考えると、とても賄えないということでございます。大臣、これは医療現場の実情をよくつかんでいただきたいと思うんですね。赤字にならないように点数の引下げは見直していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○後藤国務大臣 御指摘のPCR検査料につきましては、実勢価格を踏まえた保険収載価格の検証を行いまして、その結果を踏まえて、必要な見直しを行ってきております。具体的には、PCR検査を外部に委託する場合の点数については、昨年十二月に千八百点から千三百五十点に引き下げた上で、本年四月からは七百点に引き下げることといたしておりましたけれども、感染状況や医療機関の実施状況を踏まえまして、激変緩和のための更なる経過措置として、六月末までは八百五十点とすることといたしました。また、迅速、スムーズに検査できる体制を確保する観点から、診療・検査医療機関として公表されている保険医療機関に対する診療報酬上の特例措置、五百五十点の期限を、三月末から七月末まで延長しております。PCR検査の保険収載価格だけでなく、このような取組も含めて、全体として対応をしているところでございます。新型コロナウイルス感染症に係る対応については、引き続き、現場の声もよく聞きながら、必要な対応を講じてまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 現場の声を聞きながら必要な対応ということですから、現場の状況を私もお伝えしましたので、その必要な対応は下げないことだということだと思いますので、しっかり対応を取っていただきたいと思います。それから、資料の二ページ目でございますが、生活保護について、これは札幌市が作っている、生活保護は国民の権利ですというポスターでございます。こうしたポスターを作る自治体が少しずつ広がってきております。スティグマをなくして必要な人が利用できるようにするために、国としても更に取組を強めていただきたいと思うんですね。自治体の役所の目立つところだとか困窮者支援の窓口、病院やハローワーク、あるいは人がよく目にする町会の掲示板だとか駅の広告など、是非、国と自治体と共同してこうした取組を広げていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○後藤国務大臣 生活保護制度は最後のセーフティーネットでありまして、生活保護を必要とする方に確実かつ速やかに保護を実施することが重要と考えています。そのため、自治体においては、保護のしおり等を用いた、制度の仕組みを十分に説明する等の周知広報、福祉事務所が生活に困窮された方を把握できるように、生活困窮者自立支援法に基づく自立相談支援機関等の関係機関において、必要な方を福祉事務所につなぐなどの緊密な連携などに取り組んでいただいていると承知しています。また、厚生労働省としても、新型コロナウイルス感染症の影響も踏まえまして、生活保護の申請が国民に認められた権利であることをホームページ等で周知することにより、ためらわずに福祉事務所に御相談いただくよう呼びかけております。今後とも、広報の実施や関係機関との連携を自治体に促すとともに、国としても引き続き、必要に応じて周知広報に取り組んでまいります。
○宮本(徹)委員 広報を自治体に促すという点で、こういうポスター、これは先進的な事例だということで、是非厚労省からお勧めしていただけないでしょうか。
○後藤国務大臣 自治体における具体的な広報の方法については、地域の実情も踏まえて適切に御対応いただきたいと考えています。国としては、生活保護の申請が国民に認められた権利であることを厚生労働省のホームページ等で周知するなどしておりまして、生活保護を必要とする方が申請をためらうことがないように呼びかけを行うなど、引き続き、必要に応じて周知広報に取り組んでまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 ためらわないようにするためには、やはり権利だというのを知るというのが一番の基礎だと思うんですよね。ですから、やはり、それを今、確かに、ホームページでやったりSNSでやったり、厚労省も努力されていることは承知しております。ですけれども、もっと、それが届かない範囲、それはネットというのは見る人にしか見えないものであって、ポスターだとかというのは歩いたらいやが応でも目に入るものですから、そうしたものも含めて是非検討していただきたいと思います。大臣、うなずいていらっしゃいますので、是非省内で検討をよろしくお願いいたします。次の質問でございます。資料の三ページ目を見ていただきたいと思います。厚労省が五月十日付で、「生活保護制度上の自動車保有の取扱いについて(注意喚起)」なる事務連絡を出しております。最後の部分を読みますけれども、「今般、ある自治体において、障害等を理由に通院のために自動車の保有を容認された者について、通院以外に日常生活に用いることが認められるような考えを示した事例が確認されたことから、改めて実施要領における自動車の保有の取扱いについてご留意いただき、引き続き、自動車の保有について適切な指導をお願いいたします。」と書いてあるんですね。これを見て驚きました。事の発端は、次のページ、四ページ目を御覧いただきたいと思うんですけれども、札幌市が生活と健康を守る会の要望に対して、障害等を理由に自動車の保有を認められた場合は、保有する自動車を日常生活で利用することは、被保護者の自立の助長、保有する資産の活用の観点から認められる、こう回答したことでございます。これに対して厚労省が札幌市に聞き取りを行い、これは違うんじゃないかと指摘を行い、さらに、五月十日にはこういう事務連絡を全国に出し、五月十二日、札幌市は、生活と健康を守る会への回答について、生活保護の実施要領に沿うものでないと訂正をして、当該部分の撤回を表明するということになったわけでございます。私は、この札幌市の当初の回答は当然の回答であって、厚労省の対応は間違いだというふうに思います。配付資料、ちょっと飛びますけれども、十ページ目を御覧いただきたいと思います。大阪地裁の判決をつけております。二〇一三年四月十九日、一部を紹介したいと思いますが、通院等の保有目的が認められることを前提として生活保護の開始とともに自動車の保有が容認された場合には、日常生活において保有する自動車を利用することなく、費用を負担してタクシーを利用したり、第三者の介護を求めたりすることは補足性の原則にも反することである。当該自動車を通院等以外の日常生活上の目的のために利用することは、被保護者の自立助長及びその保有する資産の活用という観点から、むしろ当然に認められるというべきである。これが地裁の判決なんですね。一旦保有を認めた場合は、日常生活のために利用するためということは当然に認められるべきだ、生活保護法の考え方からしたらそうじゃないかという判決でございます。大変明快な判決だと思うんですね。車の保有が認められた方について、日常生活の自動車利用を制限するような不合理な運用というのは私は改めるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○後藤国務大臣 生活保護制度上、自動車は資産に該当し、また、維持費が生計を圧迫することを踏まえて、原則としてその保有は認められておりません。その上で、障害者や公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者が自動車により通勤する場合や通院、通所及び通学のために自動車を必要とする場合などであって、一定の要件を満たす場合には、例外的に自動車の保有を認めております。また、生活保護の運用上、資産の保有とはその保有又は利用を指しておりまして、例外的に保有が認められた場合であっても、自動車は原則として保有が認められない資産であること等を踏まえて、保有が認められた目的のために限って利用されるべきというふうに考えています。御指摘の大阪地裁判決は、そもそも通院等のために保有が容認された自動車を日常生活に利用することが争点となっておらず、傍論として示されたものでありまして、通院等のために保有が認められている自動車の日常生活上の利用を認めるべきとする司法判断が示されたものとは考えておりません。さらに、別の事案に関する大阪高裁判決では、判決理由の中で、保有を容認された自動車の保有目的以外での利用を制限することが合理的であるとの判断が示されております。御指摘の事務連絡は、先ほど述べた生活保護制度における自動車の利用に関する取扱いを改めて周知するものでありまして、自動車の日常生活利用に関する新たな制約を課したものではなく、妥当な内容であるというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 この判決は傍論だというふうにおっしゃいましたけれども、私、傍論だと言われると言いたくなっちゃうんですよね。安保法制のとき、集団的自衛権の解釈を変えました、政府は。安保法制の委員会の中でも私も随分議論しましたけれども、そのとき、砂川判決の傍論を使って政府は合理化したわけですよ。御都合主義じゃないですか。一方では判決は傍論を使って自分たちの解釈変更を後づけしながら、今回は傍論だから関係ないと。私は、それは政府の姿勢としていかがなものかというふうに思いますよ。傍論であっても、しっかり私はこれを受け止めなきゃいけないというふうに思いますよ。そもそも、生活保護法の目的というのは何なのかということを考えた場合に、最低限の生活を保障するとともに自立を助長することが目的なんだ、だから、自立助長、資産の活用の観点から当然に認められるべきだというのがこの地裁判決の言っていることですよね。私は、本当に厚労省の今取っている姿勢というのは非常識だと思いますよ、率直に言って。保有を認めておきながら、それ以外の活用については駄目です、タクシーを使って行ってくださいと。それは自立の助長につながらないと、この判例で言っているとおりじゃないですか。じゃ、本当にそれが正しいと思いますか、大臣。今、恐らく大臣は、役所の皆さんから渡されたペーパーを正直に読み上げられたんだというふうに思います。ですけれども、認められた保有の目的以外の利用についてはタクシーを使ってくださいというのは、私はどう考えても非常識、不合理だと思います。その辺り、よく考える必要があると思いますけれども、いかがですか。
○後藤国務大臣 大阪地裁の判決は、先ほど申し上げたように、判決を読む上においては傍論の部分で述べられているということでありますけれども、別の同様の事案で、直接ここが、この点が争われていた大阪高裁の判決においては、保有を容認された自動車を、保有目的以外の利用を制限することが合理的であるという判断は出されているので、一応そのことについては補足をさせていただきたいと思います。生活保護を考えるときに資産というものをどういうふうに捉えるかということの根本に関わることでありまして、基本的には、先ほど申し上げたように、原則として、維持費が生計を圧迫するということを踏まえて、資産に該当する自動車を保有することはできないという法制度の仕組みの中で、均衡を取って解釈をしていることであります。そういうことで、この生活保護というのは、ぎりぎりに生活を支えていく、そういう制度の中にありまして、やはり、自動車を資産と考えた場合に、こういう取扱いを一般論としている中で例外的に保有を認められている場合は、その保有を認められた例外的目的の範囲内において使うことが認められるというのが、一応、理論的な均衡のある判断ではあると思います。
○宮本(徹)委員 いや、理論的な均衡なんて全くないと思いますよ。大体、生活保護法にはそんなことはどこにも書いていないわけですからね。これは、私は、与党の皆さんからも是非声を上げていっていただきたい話だと思いますよ。こんな不合理な話はないですよ。保有を認められた車について、通院でしか認められていないけれども、じゃ、通院と併せて何か買物に行ったらこれは駄目ですよなんという話なんて、こんなばかな話はあり得ないですよ。そのために、一旦帰ってから、またタクシーを今度は使って買物に行くんですか。こんなばかな話、ないじゃないですか。これは直さなきゃいけないと思いますよ。なおかつ、今回、大臣いろいろおっしゃいますけれども、実施要領に沿うものではないということを言って札幌市は撤回表明したわけですけれども、実施要領、どこを読んでもそんなことは書いていないんですよね。実施要領、どこを読んでも書いていないですよ。保有の要件については書いていますけれども、保有した自動車をどう利用するのかということについてはどこにも書いていないと思いますが、いかがですか。
○山本政府参考人 お答え申し上げます。お尋ねの件でございますけれども、これまでも、資産の保有がその保有又は利用を指していることは、実施要領、これは実施要領としての事務次官通知におきまして示されているところでございまして、これを前提として、自動車の日常生活での利用を制限する扱いについても示しているところでございます。様々な、別冊問答集等も保護課長事務連絡等で示しておりますけれども、保護の実施要領である事務次官通知の考え方を具体的にお示ししたものでございます。
○宮本(徹)委員 事務次官通知には、保有を認められた者についての利用については何も、どこにも書いていないですよ。書いていないですよね。読めば分かりますよ、こんなの、誰だって。さっき、その解釈は問答に書いてあるんだということを言いますけれども、問答を見たってどこにも書いていないですよ。私、事務方から事前に話があったのは、ここにありますと言われたのは、問答の、ちなみに、問答というのは実施要領じゃないですからね、問い三の二十のところに、他人名義の自動車の利用のところについてそれに関係することが書いてあるというふうにおっしゃる方もいましたけれども、これも、自動車の保有を認められていない者が、人の、他人名義の自動車を利用する場合についての問答であって、保有を認められた人についての利用についてなんてどこにも書いていないですよ。いいかげんな答弁はやめていただきたいというふうに思うんですよね。それで、この問題は是非与党の皆さんからも働きかけていただきたいと重ねて申し上げておきたいと思います。ちょっと時間がありませんので、次の、最後の質問に移らさせていただきます。家賃補助制度についてでございます。一年前、住宅確保給付金について、恒久的な家賃補助制度にすべきではないのか、発展させるべきではないのかと田村前大臣とこの場で議論させていただきました。先日、生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会の論点整理が発表されました。こう書いています。住宅確保給付金については、コロナ禍にあって一定の役割を果たしてきたが、住まいを喪失するおそれのある人の多さ、裾野の広さが顕在化した以上、住宅手当といった家賃補助的な施策も含め、普遍的な社会保障施策として検討する必要があるのではないのかとあります。一年前、ここで議論したことと同じことが政府の検討会の中でも指摘されるということになっております。是非、大臣、この指摘も受け止めて、住宅確保給付金を基礎に、家賃補助制度の創設、これは検討をスタートすべきじゃありませんか。
○後藤国務大臣 生活困窮者自立支援制度の見直しに向けて、昨年十月より、有識者や実践者から成る生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会を開催いたしまして、本年四月に御指摘の論点整理を取りまとめたところであります。その中で、コロナ禍で利用が急増した住居確保給付金については、住まいを喪失するおそれのある者への支援を強化する観点から、コロナ禍において実施した職業訓練受講給付金との併給等の特例措置の恒久化、個人の事業主に対する個別性、柔軟性の高い支援の実現に向けた求職活動要件の見直し等の指摘をいただいているものと承知しています。生活困窮者自立支援制度の見直しについて、論点整理を参考にして、今後、社会保障審議会の部会において議論していくこととしておりまして、御指摘の住居確保給付金の在り方も含めて検討を深めてまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 コロナ特例を恒久化していくのも本当に大事なことだと思います。あわせて、やはり家賃補助制度への発展も含めて是非検討していただきたいと思うんですけれども、そこは家賃補助制度も含めて検討されるということでよろしいですよね。
○後藤国務大臣 全体として、それも含めて検討してまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 大事な答弁だというふうに思います。これは、与党の中からも家賃補助制度をつくるべきだという声も上がっておりますので、是非しっかり進めていっていただきたいと思います。あわせて、この問題と関わって、最後、資料を一番後ろに、つけているかな、抜けているかな、私が持っているやつは抜けていますけれども、日本の住宅政策というのは極めて持家偏重なんですよね。住宅ローン減税には毎年八千億円ぐらい使いながら、公営住宅は足りない、民間賃貸への家賃補助はほとんどないという状況でございます。イギリスでは、住宅手当の受給者というのは、あの人口で四百二十万人、フランスでは五百七十九万人、持家の多いアメリカでも、賃貸住宅四千三百九十九万戸のうち、四分の一で何らかの家賃免除があり、三百六十万戸家賃補助がありますので、この持家支援偏重からしっかり脱却していくということもこれから求められるというふうに思いますので、そうした点も是非世界のいろいろな施策も見ながら検討を進めていっていただきたいということを申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わらさせていただきます。