2022年10月25日 衆院本会議 感染症法等改定案審議入り 医療機関への罰則に懸念

 公的病院に感染症対応の義務を課す感染症法等改定案が25日の衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の宮本徹議員が質問に立ち、「医療機関に必要なのはペナルティーではなくリスペクトだ。特定機能病院や地域医療支援病院の指定取り消しは、地域医療を崩壊させる」と批判しました。
 同法案は、都道府県が数値目標を持って予防計画を立て、医療機関と協定を結び、病床や発熱外来などの確保を図るもの。協定等の履行確保措置として、協定履行状況を公表し、指示に従わない場合には病院名を公表し、特定機能病院や地域医療支援病院は指定取り消しなど重いペナルティーを設けます。
 宮本氏は「予防計画の数値目標達成のために、実情に合わない病床割り当てなどが協定で事実上強制されることや、事実上強制された協定が履行できないためにペナルティーの対象になることはないか」と懸念を示し、「医療ニーズを把握しているのは現場の医療機関であり、協定が守れないケースに正当性があるかないか、大臣や知事が判断することなどできない」と指摘しました。
 流行初期医療確保措置の費用負担の半分を保険者に求める同法案に、宮本氏は「感染症対策の費用は公費負担という原則を掘り崩す」と批判しました。
 岸田文雄首相は「地域医療を崩壊させるものではない」と答えました。

以上2022年10月26日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年10月25日 第210回衆院本会議第4号 議事録≫

○副議長(海江田万里君) 宮本徹君。
〔宮本徹君登壇〕
○宮本徹君 日本共産党を代表して、感染症法等改正案について質問します。(拍手)冒頭、統一協会問題について二点聞きます。総理、統一協会関連団体と推薦確認書を結んだ自民党の国会議員は何人いたのですか。地方議員も含め、統一協会による選挙支援の実態を党の責任で調査、公表すべきではありませんか。総理は、予算委員会での私たちとの議論を踏まえ、宗教法人の解散命令の要件について、法解釈を改め、民法の不法行為責任なども該当すると述べました。重要です。総理は、組織性、悪質性、継続性が明らかとなるか、事実を積み上げることが必要だと述べていますが、既に、統一協会の不法行為責任、使用者責任を認めた判決は多数、さらに、刑事事件で組織性、継続性を認めた判決もあります。組織性、悪質性、継続性が明らかな事実は現に積み上がっているのではありませんか。法務省、検察、霊感商法対策弁連の皆さんの力も結集し、早急にこれまでの判決、資料を分析し、組織性、悪質性、継続性を確認すべきではありませんか。速やかな解散命令請求を求めるものであります。次に、法案について質問いたします。総理は、この間の新型コロナ対応から何を学んだのでしょうか。多くの方が医療を受けられないまま自宅や介護施設で亡くなりました。このパンデミックが明らかにしたことは、緊急時の対応には平時の医療提供体制に余裕が必要だということです。医療費抑制政策の下で、パンデミック以前から医療機関はマンパワーに余裕がありません。医療費抑制政策を改め、平時から余力のある医療提供体制を再構築する必要があるのではありませんか。ところが、政府は、地域医療構想で、マンパワーの手厚い急性期病床二十万床の削減を進めようとしています。消費税を使って、この二年で五千六百十六の病床が削減され、急性期病床は四千五百四十九床削減されました。急性期病床の削減を進めれば、緊急時の人材確保が更に困難になるのではありませんか。本法案では公的病院に感染症対応の義務を課しますが、ならば、再編統合を求める公立・公的病院四百四十三のリストは撤回すべきではありませんか。地域医療構想の根本的な見直しを求めます。第二に、政府の新型コロナ対応は、専門家の意見を大事な場面でしばしば聞かず、重大な結果を招きました。尾身会長は、文芸春秋で、専門家の意見を聞かずに政府が決め、発表してしまうことがあったと述べ、安倍元首相の一斉休校とアベノマスク配付、菅前首相のGoToキャンペーン停止の遅れとオリンピック、岸田総理の濃厚接触者の待機期間短縮、検査キット確保の遅れなどを挙げ、批判をしております。総理は、尾身会長の指摘についてどう受け止めていますか。反省と検証、総括が必要なのではありませんか。尾身会長は、新型コロナ対策の最大の教訓は、最終判断は総理がするものですが、専門家の意見を聞いた上で判断すること、判断したなら、なぜかを総理が自分で国民に説明することの大切さだと指摘しています。総理に同じ認識はありますか。姿勢を改めるべきではありませんか。本法案の問題点について聞きます。本法案は、都道府県が数値目標を持って予防計画を立て、都道府県と医療機関が協定を結び、病床や発熱外来などの確保を図ろうとするものですが、協定等の履行確保措置として、協定履行状況を公表し、指示に従わない場合には、病院名の公表、特定機能病院、地域医療支援病院については指定取消しなど、重いペナルティーが設けられていることは問題です。予防計画の数値目標達成のために実情に合わない病床割当て等が協定で事実上強制されることや、事実上強制された協定が履行できないためにペナルティーの対象になることはありませんか。医療ニーズを把握しているのは現場の医療機関であり、協定が守れないケースに正当性があるかないか、大臣や知事が判断するなどできないのではありませんか。医療機関に必要なのは、ペナルティーではなくリスペクトです。ペナルティーまで設けて特定機能病院、地域医療支援病院の指定取消しをやることは、地域医療を崩壊させるものであり、やめるべきであります。本法案では、流行初期医療確保措置の費用負担の半分を保険者に求めるものになっています。感染症対策の費用は公費負担という原則を掘り崩すものであり、認めるわけにはまいりません。地域の通常医療を維持するための対策、支援も必要です。保健所体制も、保健所数や職員数を増やすことが必要です。なぜ法案にないのでしょうか。最後に、第八波の対策についてもお伺いをいたします。治療薬には投薬のタイミングがあり、新型コロナもインフルエンザも、早期検査、早期治療が重要であります。新型コロナ、インフルエンザ以外にも発熱する病気はあります。財政的な支援で更に発熱外来などを拡充して、希望する人には、最大限、対面受診が可能な体制をつくる必要があるのではありませんか。また、コロナ抗原検査キットの入手を個人責任にするのではなく、あらかじめ政府の責任で配付すべきではありませんか。さらに、エアロゾル感染対策が重要であります。換気設備、CO2モニター始め、一層の支援とイニシアチブの発揮を求めて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 宮本徹議員にお答えいたします。旧統一教会との関係の党の調査や宗教法人法に基づく解散命令の請求についてお尋ねがありました。内閣総理大臣として答弁しておりますので、自民党の対応について申し上げることは控えるべきではありますが、一般論として、選挙に当たり、各候補者が政策分野を含め様々な団体とやり取りを行っていると考えております。その上で、推薦確認書に署名したことが選挙での支援につながっているかどうかがポイントであると考えております。この点については、党として所属国会議員による点検結果を取りまとめ、既に公表しているところです。推薦確認書に署名したと名のり出た議員がいることは承知しており、党の点検結果との関係については議員本人から説明すべきものであると考えております。宗教法人法に基づく解散命令の請求については、現在、旧統一教会に関して把握している事情からは、過去に解散を命じた事例と比較して、現状は解散事由に該当すると明確には認められないものと考えております。このため、まずは、文部科学省において、報告徴収、質問権の行使等を通じて、行為の組織性、悪質性、継続性等について、本件をよく知る弁護士による団体等から情報提供など必要な協力を得つつ、具体的な証拠や資料などを伴う客観的な事実を明らかにしてまいります。新型コロナ対応と地域医療構想についてお尋ねがありました。今般の新型コロナのような新興感染症等の感染拡大時には、機動的に対応できるよう、地域の医療機関における役割分担、連携の強化、そして弾力的な対応を可能とする医療従事者等の配置などが必要であると認識をしております。このため、今般の改正案では、都道府県知事が平時に各医療機関と協議を行い、感染症発生、蔓延時における病床確保や人材派遣等について協定を結ぶ仕組みを法制化するなど、流行の初期段階から機能する医療提供体制を構築することとしております。地域医療構想は、中長期的な人口構造の変化や地域の医療ニーズに応じて、病床機能の分化、連携により質の高い効率的な医療提供体制の確保を目指すものであり、新型コロナ対応を通じて明らかになった、地域の医療機関の役割分担等の課題にも対応するものです。公立・公的病院の在り方についても、病床の削減や統廃合ありきではなく、地域の実情を十分に踏まえて、自治体等と連携して地域医療構想を着実に進めてまいります。分科会長の指摘についてお尋ねがありました。新型コロナウイルスはその性状を急激に変化させることから、それぞれの特徴に合わせた効果的な対策を講じるためには、幅広い専門家の方々の科学的知見を踏まえた判断が極めて重要です。このため、これまでも専門家の方々とは様々な局面においてコミュニケーションを取り、知見や意見を伺った上で、政府として必要な判断を行い、責任を持って対策を講ずるとともに、国民の皆様に対して説明をしてまいりました。今後とも、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行を進める中で、引き続き専門家の方々とコミュニケーションを取り、内外の科学的知見に基づきながら、平時に近い社会経済活動が可能となるよう取り組んでまいります。都道府県と医療機関の協定の履行確保措置等についてお尋ねがありました。今回の都道府県と医療機関の協定の仕組みについては、地域における医療機関の機能や役割を適切に踏まえた協定の締結を進めてまいります。その上で、協定に沿った対応をしない場合の正当な理由の有無については、締結した内容を踏まえつつ、締結の際に想定していたウイルスの性状と実際の性状の相違など、個別具体の状況に応じて適切に判断をしてまいります。特定機能病院や地域医療支援病院については、承認取消しの規定を設けていますが、これは、正当な理由なく協定に沿った対応をせず、さらに都道府県知事からの勧告、指示にも応じない場合に行使されるものであり、地域医療を崩壊させるようなものではないと考えております。そして、感染症の態様が明らかでない流行初期には、診療報酬の特例を設けるまでに一定の時間を要しますが、その間に行われる感染症医療には、本来、診療報酬で支えるべき部分が含まれています。また、流行初期に必要な医療提供体制を確保することは、感染症医療のみならず通常医療の確保にも直結するほか、社会経済活動の維持にもつながるものであり、被保険者、保険者共に広く受益するため、このような期間の措置について保険者が相応の負担をすることは必要な対応であると考えております。保健所体制強化については、今般の改正案では、保健所設置自治体に、感染症有事に備えた人員確保や育成など、体制整備を含む予防計画の策定を義務づけるとともに、各都道府県に、関係者が感染拡大時の連携の在り方等を議論するための協議会を設置いたします。こうした取組により、感染症危機時でも機能する強化された保健所体制を平時から計画的に構築してまいります。そして、発熱外来の拡充についてお尋ねがありました。この冬の新型コロナとインフルエンザとの同時流行に備え、これまでも発熱外来の対応能力の強化を図っており、必要な財政支援等により発熱外来の拡充を行うとともに、地域の感染状況に応じて診療時間等を拡大すること等を行っています。検査については、政府として検査キットの確保を行うとともに、十分な量の検査キットのインターネット等での販売を可能とし、国民の皆様があらかじめ購入し、自宅で速やかに検査できるようにしております。エアロゾル感染対策のための換気設備等については、医療機関における簡易陰圧装置等の設置に対して緊急包括支援交付金による支援等を行っており、引き続き、科学的知見を積み上げ、適切な対策を講じてまいります。(拍手)
○副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。