2022年11月4日 衆院厚生労働委員会 感染症法等改定案可決 病床確保には財政支援 宮本氏が反対

 感染症法等改定案は4日の衆院厚生労働委員会で、自民、公明、立民、維新、国民などの賛成多数で修正可決されました。日本共産党は根本問題が修正されていないとして反対しました。日本共産党の宮本徹議員は反対討論に立ち、三つの問題点を指摘しました。
 第1に、医療機関が都道府県と結ぶ協定等の履行確保措置として、病院名の公表や承認取り消しなど重いペナルティーを設けているが、政府ですらコロナ禍で医療機関はできる限り協力していたと答弁しているとして、「ペナルティーを設ける立法事実がないことは明らかだ」と批判しました。
 また、「ペナルティーの存在が協定締結や病床確保に逆に困難をもたらす懸念がある。病床確保に必要なのは、ペナルティーではなく財政支援と人員増だ」と主張しました。
 第2に、感染症流行初期の医療確保に要する費用を支給する措置(流行初期医療確保措置)の負担割合を公費と保険者で1対1としており、「感染症対策は公費でまかなうという原則にもとる」と批判しました。
 第3に、検疫措置について居宅等での待機の指示を受けた者が、待機状況の報告の求めに応じない場合、懲役または罰金に処する刑罰を設けています。宮本氏は「国内の濃厚接触者への対応と比較しても、刑事罰を設けることは、著しくバランスを欠く」と指摘しました。

以上2022年11月5日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年11月4日 第210回国会衆院厚生労働委員会第6号 議事録≫

○三ッ林委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。討論の申出がありますので、これを許します。宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。感染症法等改正案に反対の討論を申し上げます。本改正案には、今後のパンデミックへの対応で必要な改善も多々含まれておりますが、幾つか看過し得ない問題がございます。第一に、病床や発熱外来などの確保のために都道府県と医療機関が結ぶ協定等の履行確保措置として、指示に従わない場合には、病院名の公表、承認取消しなど、重いペナルティーが設けられている点です。質疑の中で、このコロナ禍で、病床確保の要請に正当な理由なく応じない医療機関があったのか伺いましたが、政府の答弁は、でき得る限りの協力を医療機関はしていたとのことでありました。ペナルティーを設ける立法事実がないことは明らかです。また、与党議員からも、正当な理由の内容が不明確であれば、どのような協定不履行が許されないのか分からず、医療機関が協定締結に二の足を踏むことになりかねませんとの指摘がありました。しかし、政府は、正当な理由の例は三つしか示しておりません。これでは、ペナルティーの存在が協定締結や病床確保に逆に困難をもたらす懸念があります。病床確保等に必要なのはペナルティーではなく、財政支援、人員増であります。第二に、多くの野党議員から指摘がありましたが、本改正案では、流行初期医療確保措置に保険者の負担を求めており、感染症対策は公費で賄うという原則にもとります。第三に、本法案は、検疫措置について、居宅等での待機の指示を受けた者が待機状況の報告の求めに応じない場合には懲役又は罰金に処する刑罰を設けますが、重過ぎます。現にある隔離、停留に従わなかった場合の罰則も抑制的に運用して発動しておりません。国内の濃厚接触者への対応と比較しても、刑事罰を設けることは著しくバランスを欠きます。修正案については、記されている項目は当然の内容と考えますが、問題は、流行初期医療確保措置での保険者負担など、先ほど述べた本法案の基本的な問題点を修正する内容が何ら含まれていないことであります。この修正で本法案の成立を認めるわけにはまいりません。なお、状況が急速に変化している新型コロナ感染症の位置づけを不断に検討するのは当然のことですが、その際、専門家の意見をしっかり踏まえることが重要であることを指摘し、討論といたします。

○三ッ林委員長 以上で討論は終局いたしました。これより採決に入ります。内閣提出、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。まず、田畑裕明君外三名提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○三ッ林委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○三ッ林委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。この際、本案に対し、田畑裕明君外五名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び有志の会の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者より趣旨の説明を聴取いたします。中島克仁君。
○中島委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一 本法施行までに相当の期間があることに鑑み、本法成立後、施行までの期間においても本法の趣旨を踏まえた感染症対策の全体的な取組の強化に努力し、当面する感染拡大に十二分に備えること。
二 保健所設置自治体が予防計画を作成するに当たり、市町村の意見を十分に聴き、市町村の役割を明確にし、保健所の負担軽減につながる方針を示すこと。
三 感染症危機時に確実に稼働する体制を構築するため、新型インフルエンザ等感染症等に係る医療提供体制確保等の協定が多くの医療機関との間で締結され、医療を必要とする者に確実に医療が提供されることとなるよう、地域における感染症医療提供体制整備に必要な支援を行うこと。
四 新型インフルエンザ等感染症等に係る医療提供体制確保等の協定の履行確保措置を講ずるに当たっては、地域の実情に応じた適切な運用となるようにするとともに、協定に基づき履行すべき内容と履行確保措置のバランス、地域医療への影響等に十分配慮すること。
五 流行初期医療確保措置が実施される期間について、保険者等の負担に鑑み、速やかな補助金、診療報酬の上乗せにより数か月程度の必要最小限の期間とすること。
六 新興感染症から国民の命を守るため、医療機関の協力が不可欠な状況に鑑み、平時からの備えに対する必要な支援を医療機関の経営面にも配慮し講ずること。
七 感染症危機に際しかかりつけ医等の地域の医療機関が可能な限り感染症医療を行うことができるよう、医薬品、個人防護具等の配布、治療方法の普及その他の必要な支援を行うこと。
八 感染症医療に対応する医療機関が、感染症患者と当該患者のかかりつけ医との関係を把握し、当該かかりつけ医等の地域の医療機関との連携を確保することができるような方策を検討し、速やかに必要な措置を講ずること。
九 地方衛生研究所について、本法の趣旨を踏まえ、法律上の位置付けを明確にしつつ、その体制整備等についての基本的な指針を地方公共団体に示すとともに、保健所及び地方衛生研究所の人員及び予算を確保し、試験及び検査、調査及び研究等のより一層の体制強化を図ること。
十 感染症対策及び予防接種事務に関するデジタル化及び情報基盤整備に当たっては、情報の流出の防止その他の国民のプライバシー情報の厳重管理を徹底すること。
十一 新型コロナウイルスの特性を考慮し、新型コロナワクチンの予防接種法上の扱いについて検討を行うこと。
十二 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状に苦しむ患者について、治療と就労を両立するための支援を検討し、速やかに必要な措置を講ずること。
十三 新型コロナウイルスワクチン接種後の遷延する症状について、速やかに実態を把握し、病態の解明に必要な調査研究を行うこと。
十四 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状及び新型コロナウイルスワクチン接種後の遷延する症状について、患者がかかりつけ医等の地域の医療機関での治療を受けられるよう必要な措置を講ずるとともに、その症状並びにその診断及び治療の方法に関する情報を収集し、整理し、及び分析し、その結果に基づき必要な情報を適切な方法により積極的に公表すること。
十五 薬事承認制度が製薬企業からの申請に基づくものであることを踏まえ、製薬企業の研究開発支援、申請時の企業負担の軽減、治験等の手続の簡素化、企業相談の実施その他の製薬企業の薬事承認申請を促進する措置を講ずるとともに、緊急時における国主導による医薬品等の確保の仕組みを検討し、必要な措置を講ずること。
十六 今回の新型コロナウイルス感染症対応を踏まえ、かかりつけ医の役割、新型コロナ患者の健康観察を行う主体の在り方も含め、「ウィズコロナ」下におけるあるべき地域保健医療提供体制について引き続き議論を進めること。
十七 「ウィズコロナ」への移行を更に進める観点や教育的観点から、今一度、関係省庁とも連携して、国民がマスク着用の必要のない場面で、マスクを外す判断ができる環境づくりを進めること。
十八 現下の新型コロナウイルスの特性を踏まえ、科学的知見等に基づき適切なマスク着用の基準の見直しを検討するとともに、その結果をわかりやすく国民に伝えること。
以上であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
○三ッ林委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○三ッ林委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。この際、加藤厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。加藤厚生労働大臣。
○加藤国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力をしてまいります。