2022年11月9日衆院厚生労働委員会 最低賃金再改定迫る 宮本徹氏「物価高騰ふまえて」

配付資料 出典:厚生労働省提出資料より宮本徹事務所作成
配付資料 出典:東京新聞TОKYО Web2022年9月8日付より抜粋
配付資料 出典:ОECD.Statより宮本徹事務所作成
配付資料 出典:厚生労働省ホームページ 2022年8月2日報道発表資料より抜粋

 宮本徹議員は9日の衆院厚生労働委員会で、10月1日から順次引き上げられている最低賃金が、直近の高騰する消費者物価に追いついていないとして、最低賃金の再改定を迫りました。
 中央最低賃金審議会(8月1日)の「公益委員見解」は「今後、消費者物価等の経済情勢に関する状況認識に大きな変化が生じたときは、必要に応じて対応を検討することが適当」だとし、対応の検討を促しています。
 宮本氏は、直近の消費者物価指数(持ち家帰属家賃を除く)の伸び=4.3%は「大きな変化だ」として、「最低賃金のさらなる引き上げが必要ではないか」と質問。加藤勝信厚労相は「各種データを総合的に勘案することになっており、各種指標を注視していきたい。まずは10月1日からの最賃引き上げの動向をよく見たい」と答弁しました。
 「最低賃金は年1回しか引き上げてはならないという法令はあるか」と質問した宮本氏に、厚労省の鈴木英二郎労働基準局長は「ない」と答弁。宮本氏は「フランスは今年、最低賃金を3回引き上げた。最賃が物価を上回らないと賃下げになり、一番生活が厳しい層も実質賃金がマイナスになる」とし、再度最賃を引き上げるよう強く求めました。

以上2022年11月18日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年11月9日 第210回衆院厚生労働委員会第7号 議事録≫

○三ッ林委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。まず、生活保護の扶養照会について質問いたします。扶養照会は、生活保護申請の心理的なハードルになっております。申請させないための水際作戦の機能も果たしていると指摘されております。資料一を見ていただきたいんですけれども、これは、厚労省の監査を基に扶養照会の状況をグラフにいたしました。二〇二〇年度に厚労省が監査をした五十二自治体のうち十五の自治体は、対象親族の七割以上に照会をしております。照会率一〇〇%、申請者の親族全員に照会している自治体もあります。一〇〇%扶養照会しているということは、つまり、機械的に全員扶養照会をしている、あるいは扶養照会をしても問題がない人しか申請していない、こういうことになるわけですね。大臣にお伺いしますけれども、この監査結果は扶養照会について機械的な対応があるということをうかがわせるものだと思いますが、この監査結果、どう受け止めていますか。
○加藤国務大臣 まず、扶養照会でありますが、扶養義務者の扶養が保護に優先して行われることは生活保護法に明記された基本原理でありまして、扶養照会は必要な手続でありますが、一方で、一律に直接照会を行うといった機械的な調査は必ずしも適切ではないと考えております。御指摘の福祉事務所の事案は、令和三年度生活保護法施行事務監査資料の一部、令和二年度扶養能力調査の状況を取り上げられたものと思いますが、今年度の監査において当該自治体の状況を改めて確認したところ、関連通知等に基づき適切な運用がなされていることを承知をしているところであります。引き続き、扶養照会の取扱いについては適切な対応がなされるよう、周知等を行ってまいります。
○宮本(徹)委員 一〇〇%だった自治体は今年度は改まったというのが大臣のお話だったと思うんですけれども。昨年、扶養照会への批判が高まる中、二月、三月に生活保護の問答集を改正しました。扶養照会をしないケースの判断基準を変え、一人一人に寄り添った対応を求めて、申請者が扶養照会を拒む場合は丁寧な聞き取りをするように求めたわけでございますが、先ほどの一〇〇%だったところは姿勢が少し変わったというのが大臣の答弁でしたけれども、では、この問答集が改正されて、それ以降、生活保護行政で具体的にどう徹底され、どう実践されているのか、ちゃんとつかんでおられますか。
○川又政府参考人 答弁させていただきます。二月、三月に通知を発出いたしましたけれども、生活保護が必要な方に確実かつ速やかに保護を実施するということでございまして、著しい関係不良の場合を位置づけるなど、通知、事務連絡の改正を行ったところでございます。この通知と事務連絡による扶養照会の取扱いにつきましては、これまでも、全国会議の場などを通じまして各自治体に対して周知を行ってきております。また、自治体における取扱いにつきましては、国の監査におきまして、監査対象自治体の状況を確認をし、課題がある場合には、要保護者に対して寄り添った対応がなされるよう、個別に指導を行うということで現場への徹底を図っているところでございます。
○宮本(徹)委員 個別に監査もして、指導もしているというお話ですけれども、一年間に監査した自治体数というのは幾らなんですか。
○川又政府参考人 お答えします。国における、国の監査といたしましては、毎年、四十七の都道府県本庁それから二十の政令指定都市本庁全部、それに加えまして、各福祉事務所に対しまして、毎年五十から六十程度の福祉事務所を個別に指導を行うということになっております。また、都道府県においては、都道府県内の各福祉事務所を毎年監査することになっております。
○宮本(徹)委員 ですから、五十から六十しか毎年監査は実際にはやられていないわけですよね。ですから、どういうことが起きているかといいますと、資料の二ページ目を御覧いただきたいと思いますけれども、これは東京新聞が独自に都内の自治体の扶養照会の状況について調査を実施したものです。通知等が出て、二〇二一年度にかけて、前年度に比べて中野区や足立区は一〇ポイント以上照会率が下がって、照会率は一〇%程度まで今なっているわけです。一方で、高い照会率のままの自治体も、通知が出て以降もあるというのが実態なわけですね。大臣にお伺いしたいと思いますけれども、扶養照会率が一〇%程度にまで顕著に下がった自治体と照会率が高い自治体の差は一体どこから来るのか。扶養照会の判断基準を変えて、寄り添った対応を求めても、高い割合で照会をかけ続けている自治体が存在する点について、どう考えているんでしょうか。
○加藤国務大臣 自治体ごとに扶養照会状況の違いが発生する原因としては、要保護者と扶養義務者との関係性、これがまた地域によって様々であること、また、扶養義務履行が期待できない者に該当するか否かは個別の要保護者への聞き取り結果によって異なるわけでありますから、照会率によって、適切な運用が行われているかどうか、これを一概に判断するのは難しいというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 一概に判断するのは難しいというふうにおっしゃいますけれども、その地域地域によって、同じ通知に基づいて生活保護行政をやりながら、片や、生活保護、扶養照会、照会率は一〇%程度と、片や一〇〇%近い、八〇%、九〇%というのは、これはどう考えても、その地域の、要保護者の方と義務を負っている方との関係だけでは、その差だけでは説明できないですよね。どう考えても、自治体の通知に対する受け止めというのが私は違うんじゃないかというふうに思いますが、そうは思われませんか、大臣。
○加藤国務大臣 まず、後者の、自治体によって受け止めが違うことがないように、今後とも、各都道府県等を通じながら、あるいは直接に、しっかりとその中身を徹底をさせていただきたいと思います。また、前者については、どこの水準が適正なのかという、これは、だから、それぞれの地域によってばらばらでございますし、その中のまさに実態を見ながら判断をしていくことが重要ではないかと思います。
○宮本(徹)委員 この東京新聞の調査を御覧になっても分かりますように、生活保護の問答集の改正を受けても現場の運用を変えていない自治体が少なからずあるということなんですね。これは東京の調査ですけれども、恐らく全国を見ても同じような状況があると思います。私は、これは厚労省としてやはりしっかり調査をしていく、今、年間は五十、六十のところしか調べていないというお話でしたけれども、これは全部をちゃんと調べていくということが必要だと思いますし、あわせて、やはりこの生活問答集を改正した趣旨をしっかり再度徹底していく、こういうことが必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 通知が出て変えないというのは、従前もその通知に従ってやっておられるというところもあるんだろうというふうに思いますので、それだけで見て判断するのはなかなか難しいかなと思って聞いておりました。この現行の扶養照会の取扱いについては、各自治体において徹底していただくことが重要でありまして、先ほどから申し上げておりますように、全国会議等の場を通じて周知を行い、また各自治体に対しても周知徹底を図っていきたいと思っております。国の監査においても、現行通知に基づき適切に扶養照会が実施されているか、引き続き自治体の取扱いを確認をしていく。また、都道府県等が行う監査における指導状況、これも継続的に把握して、適切な取扱いを行っていきたいというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 やはり、これまで以上の監査をしっかり私は国としてやるべきだというふうに思いますので、その点は強く求めておきたいというふうに思います。もう一点、最低賃金についてお伺いしたいと思います。物価高騰が続いている中で、私は、最低賃金をもう一回引き上げる必要があるんじゃないかと思います。十月に三・三%引き上げましたけれども、直近の消費者物価指数の伸びは最低賃金の伸びを上回っている状況で、国民の中からも悲鳴の声が上がっております。資料の三ページ目に載せておきましたけれども、そもそも日本の最低賃金は、賃金の中央値との比較で見ると、世界の中でも大変低い方です。三十一か国中、下から六番目、賃金の中央値に対して四五%が日本です。フランスは六割を超えているということです。今でも、最低賃金だけでは生活できず、一人親の方でダブルワーク、トリプルワークをされているという話は皆さんの周りでもたくさんあると思います。資料の四ページ目に、中央最低賃金審議会の公益委員の見解を載せておきましたけれども、なぜ今年度の引上げ率は、今年四月の持家の帰属家賃を除く総合が示す三・〇%を一定程度上回る水準、こうしたのか、お答えいただけますか。
○鈴木政府参考人 最低賃金につきましては、最低賃金法に基づきまして、地域における労働者の生計費、賃金、通常の事業の賃金支払い能力を踏まえて審議会で議論し、決定するという規定になってございます。まず、このうちの労働者の生計費に関します指標といたしまして、中央最低賃金審議会におきましては、物価に関する物価指数について、持家の帰属家賃を除く総合を用いて判断をしてございます。これは、実際に市場での売買が存在しない持家の帰属家賃を除くことで、消費者と実際に取引がある品目の価格の動きを把握するということで、従来からこの数値を使ってございます。その上で、今年度の引上げ率につきましては、今年四月の持家の帰属家賃を除く総合が示す三・〇を一定程度上回る水準とするということになりまして、これにつきましては、賃金については、春季賃上げ妥結状況における賃金上昇率は二%を超えまして前年より大きくなっていることに加え、今年の賃金改定状況調査結果における賃金上昇率は一・五%と平成十四年以降最大であるものの、これらの賃金引上げには今年四月以降の消費者物価の上昇分が十分に勘案されていない可能性があること、労働者の生計費につきましては、必需品的な支出項目に係る消費者物価が四%を超える上昇であることを勘案いたしまして、最終的に三・三%という目安を示したと承知してございます。
○宮本(徹)委員 それで、持家の帰属家賃を除く総合の三・〇を一定程度上回る水準というふうに今回して三・三になったわけですけれども、直近の消費者物価指数の十月速報値を見ますと、持家の帰属家賃を除く総合、これの伸びは四・三%なんですね。つまり、最賃引上げ率を一%上回っているわけです。物価は、この十一月もいろいろなものの値上げ、牛乳だとかいろいろありました。今後も消費者物価の上昇が見込まれているんですね。中央最低賃金審議会の公益委員会の見解は、次のように述べているんですね。「今後、公益委員見解の取りまとめに当たって前提とした消費者物価等の経済情勢に関する状況認識に大きな変化が生じたときは、必要に応じて対応を検討することが適当である。」と書いています。今の消費者物価の伸びは、それ以降の大きな変化だと私は思います。そして、必要に応じて対応ということになれば、当然、最低賃金をいま一度更に引き上げる、こういうことが必要だと思いますが、この公益委員会の見解に従えばそうなるんじゃないでしょうか、大臣。
○加藤国務大臣 まず、御指摘の変化の内容、程度、これはあらかじめ定められているものではなくて、その状況に応じて検討すべきだというふうに考えております。また、最低賃金の決定に当たっては、消費者物価指数のほか、賃金や労働者の生計費、通常の事業の賃金支払い能力、各種データを総合的に勘案するということにもなっておるところでありますので、引き続き各種指標を注視していきたいと考えております。まず、最賃自体の引上げがこの十月一日から段階的に実施されておりますので、そうした動向もよく見ていきたいと思っております。
○宮本(徹)委員 ですから、労働者の生計費が一つの大きな要素なわけですよね、最低賃金。それを考えた場合には、消費者物価指数というのは一番着目しなければならないというのが、この間、最賃の審議会でもずっと言ってきたことだと思います。そういう点でいえば、今、公益委員会の見解のまとめからいえば、更に消費者物価が上がっている下でもう一度上げるというのを考えなきゃいけないことだと思います。念のため確認しますけれども、最低賃金というのは年一回しか引き上げてはならない、こういう法令はどこかあるんでしょうか。
○鈴木政府参考人 お答えを申し上げます。最低賃金の改定の頻度につきまして、年一回しか引き上げてはならないという法令の定めはございません。
○宮本(徹)委員 そうなんですよね。別に日本の最低賃金法では、年何回最低賃金を引き上げてもいいわけですよね。ちなみに、フランスは今年、最低賃金を三回引き上げております。フランスの場合は、物価が上がれば自動的に連動して上がる仕組みがあるから、物価高騰の中で最低賃金が上がっているということはありますけれども、世界を見ても、年間複数回、最低賃金を段階的にこの物価高騰の中で上げている国というのはあるわけですよね。私は、物価高騰がこれからも見込まれている下で、やはり最低賃金の再改定もしっかり視野に入れた取組をしていく必要があると思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 先ほどの答弁と同じことになって恐縮でございますけれども、消費者物価指数だけではなくて、賃金とかあるいは支払い能力とか、そうした様々な点を勘案しながら最賃自体も議論させていただいているわけでありますから、したがって、消費者物価指数あるいは物価の動向、こういったものも含めて、引き続き注視していきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 消費者物価指数をやはり上回っていかないと、実際は賃下げになっちゃうわけですよ。実際、この間発表されている実質賃金は、ずっとマイナスがここのところ続いているわけですよね。今回の最低賃金でいけば、一番生活が厳しい層も、この物価に賃金の上昇が追いつかずに、実質賃金はマイナスということにこのままではなってしまうわけですね。これは絶対、政治の責任で避けなきゃいけないことだというふうに思います。ですから、是非、政府部内で最低賃金を再度引き上げていく、速やかに千五百円を目指していく、このことを強く求めまして、質問を終わります。