11月9日厚労委員会 扶養照会 実態把握を 保護申請の障害 宮本徹氏迫る

 日本共産党の宮本徹議員は9日の衆院厚生労働委員会で、生活保護申請の障害となっている扶養照会を全ての扶養義務者に行う機械的な対応をする自治体があるとする厚労省資料を示し、全国的に実態を把握するよう迫りました。
 扶養照会への批判が高まる中、厚労省は昨年2月と3月、各自治体への事務連絡で、扶養照会をしないケースの判断基準を変え、一人一人に寄り添った対応を求め、申請者が照会を拒む場合は「丁寧に聞き取り」するよう求めています。
 宮本氏は厚労省の監査資料をもとに、2020年度に扶養照会を実施した52自治体のうち15自治体が対象親族の7割以上に照会し、申請者の親族全員に照会している照会率100%の自治体もあると告発し、「機械的な対応があることをうかがわせる。どう受けとめているか」と質問。加藤勝信厚労相は「一律に直接照会を行うといった機械的な調査は必ずしも適切ではない」と答弁しました。
 宮本氏は、東京新聞の調査では、都内自治体でも照会率が低い自治体と高い自治体があると指摘。事務連絡の趣旨を徹底し、全国の実態を調査し把握するよう求めました。
 加藤厚労相は「適切に扶養照会が実施されているか自治体の取り扱いを確認していく」と述べるにとどまりました。

以上2022年11月19日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年11月9日 第210回衆院厚生労働委員会第7号 該当部分議事録抜粋≫

○三ッ林委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。まず、生活保護の扶養照会について質問いたします。扶養照会は、生活保護申請の心理的なハードルになっております。申請させないための水際作戦の機能も果たしていると指摘されております。資料一を見ていただきたいんですけれども、これは、厚労省の監査を基に扶養照会の状況をグラフにいたしました。二〇二〇年度に厚労省が監査をした五十二自治体のうち十五の自治体は、対象親族の七割以上に照会をしております。照会率一〇〇%、申請者の親族全員に照会している自治体もあります。一〇〇%扶養照会しているということは、つまり、機械的に全員扶養照会をしている、あるいは扶養照会をしても問題がない人しか申請していない、こういうことになるわけですね。大臣にお伺いしますけれども、この監査結果は扶養照会について機械的な対応があるということをうかがわせるものだと思いますが、この監査結果、どう受け止めていますか。
○加藤国務大臣 まず、扶養照会でありますが、扶養義務者の扶養が保護に優先して行われることは生活保護法に明記された基本原理でありまして、扶養照会は必要な手続でありますが、一方で、一律に直接照会を行うといった機械的な調査は必ずしも適切ではないと考えております。御指摘の福祉事務所の事案は、令和三年度生活保護法施行事務監査資料の一部、令和二年度扶養能力調査の状況を取り上げられたものと思いますが、今年度の監査において当該自治体の状況を改めて確認したところ、関連通知等に基づき適切な運用がなされていることを承知をしているところであります。引き続き、扶養照会の取扱いについては適切な対応がなされるよう、周知等を行ってまいります。
○宮本(徹)委員 一〇〇%だった自治体は今年度は改まったというのが大臣のお話だったと思うんですけれども。昨年、扶養照会への批判が高まる中、二月、三月に生活保護の問答集を改正しました。扶養照会をしないケースの判断基準を変え、一人一人に寄り添った対応を求めて、申請者が扶養照会を拒む場合は丁寧な聞き取りをするように求めたわけでございますが、先ほどの一〇〇%だったところは姿勢が少し変わったというのが大臣の答弁でしたけれども、では、この問答集が改正されて、それ以降、生活保護行政で具体的にどう徹底され、どう実践されているのか、ちゃんとつかんでおられますか。
○川又政府参考人 答弁させていただきます。二月、三月に通知を発出いたしましたけれども、生活保護が必要な方に確実かつ速やかに保護を実施するということでございまして、著しい関係不良の場合を位置づけるなど、通知、事務連絡の改正を行ったところでございます。この通知と事務連絡による扶養照会の取扱いにつきましては、これまでも、全国会議の場などを通じまして各自治体に対して周知を行ってきております。また、自治体における取扱いにつきましては、国の監査におきまして、監査対象自治体の状況を確認をし、課題がある場合には、要保護者に対して寄り添った対応がなされるよう、個別に指導を行うということで現場への徹底を図っているところでございます。
○宮本(徹)委員 個別に監査もして、指導もしているというお話ですけれども、一年間に監査した自治体数というのは幾らなんですか。
○川又政府参考人 お答えします。国における、国の監査といたしましては、毎年、四十七の都道府県本庁それから二十の政令指定都市本庁全部、それに加えまして、各福祉事務所に対しまして、毎年五十から六十程度の福祉事務所を個別に指導を行うということになっております。また、都道府県においては、都道府県内の各福祉事務所を毎年監査することになっております。
○宮本(徹)委員 ですから、五十から六十しか毎年監査は実際にはやられていないわけですよね。ですから、どういうことが起きているかといいますと、資料の二ページ目を御覧いただきたいと思いますけれども、これは東京新聞が独自に都内の自治体の扶養照会の状況について調査を実施したものです。通知等が出て、二〇二一年度にかけて、前年度に比べて中野区や足立区は一〇ポイント以上照会率が下がって、照会率は一〇%程度まで今なっているわけです。一方で、高い照会率のままの自治体も、通知が出て以降もあるというのが実態なわけですね。大臣にお伺いしたいと思いますけれども、扶養照会率が一〇%程度にまで顕著に下がった自治体と照会率が高い自治体の差は一体どこから来るのか。扶養照会の判断基準を変えて、寄り添った対応を求めても、高い割合で照会をかけ続けている自治体が存在する点について、どう考えているんでしょうか。
○加藤国務大臣 自治体ごとに扶養照会状況の違いが発生する原因としては、要保護者と扶養義務者との関係性、これがまた地域によって様々であること、また、扶養義務履行が期待できない者に該当するか否かは個別の要保護者への聞き取り結果によって異なるわけでありますから、照会率によって、適切な運用が行われているかどうか、これを一概に判断するのは難しいというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 一概に判断するのは難しいというふうにおっしゃいますけれども、その地域地域によって、同じ通知に基づいて生活保護行政をやりながら、片や、生活保護、扶養照会、照会率は一〇%程度と、片や一〇〇%近い、八〇%、九〇%というのは、これはどう考えても、その地域の、要保護者の方と義務を負っている方との関係だけでは、その差だけでは説明できないですよね。どう考えても、自治体の通知に対する受け止めというのが私は違うんじゃないかというふうに思いますが、そうは思われませんか、大臣。
○加藤国務大臣 まず、後者の、自治体によって受け止めが違うことがないように、今後とも、各都道府県等を通じながら、あるいは直接に、しっかりとその中身を徹底をさせていただきたいと思います。また、前者については、どこの水準が適正なのかという、これは、だから、それぞれの地域によってばらばらでございますし、その中のまさに実態を見ながら判断をしていくことが重要ではないかと思います。
○宮本(徹)委員 この東京新聞の調査を御覧になっても分かりますように、生活保護の問答集の改正を受けても現場の運用を変えていない自治体が少なからずあるということなんですね。これは東京の調査ですけれども、恐らく全国を見ても同じような状況があると思います。私は、これは厚労省としてやはりしっかり調査をしていく、今、年間は五十、六十のところしか調べていないというお話でしたけれども、これは全部をちゃんと調べていくということが必要だと思いますし、あわせて、やはりこの生活問答集を改正した趣旨をしっかり再度徹底していく、こういうことが必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 通知が出て変えないというのは、従前もその通知に従ってやっておられるというところもあるんだろうというふうに思いますので、それだけで見て判断するのはなかなか難しいかなと思って聞いておりました。この現行の扶養照会の取扱いについては、各自治体において徹底していただくことが重要でありまして、先ほどから申し上げておりますように、全国会議等の場を通じて周知を行い、また各自治体に対しても周知徹底を図っていきたいと思っております。国の監査においても、現行通知に基づき適切に扶養照会が実施されているか、引き続き自治体の取扱いを確認をしていく。また、都道府県等が行う監査における指導状況、これも継続的に把握して、適切な取扱いを行っていきたいというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 やはり、これまで以上の監査をしっかり私は国としてやるべきだというふうに思いますので、その点は強く求めておきたいというふうに思います。~以下略~