2022年11月18日衆院厚生労働委員会 障害者総合支援法改定案可決 国連の勧告に逆行 宮本徹氏反対

 精神福祉法など5法案を束ねた障害者総合支援法改定案が18日の衆院厚生労働委員会で、自民、公明、立民、維新、国民などの賛成多数で可決しました。日本共産党は反対しました。
 国連障害者権利委員会の総括所見(9月発表)では「非自発的入院を通じて自由の剥奪を許す、あらゆる法的規定を撤廃すること」を勧告しています。
 日本共産党の宮本徹議員は討論で、反対の最大の理由は「障害者権利委員会の勧告に沿わず、逆行するものになっている」からだと指摘。「本人の意に反する医療保護入院について、家族の同意・不同意の意思表示がない場合にまで、市町村長の同意で入院を判断できるようにする。適用を拡大するもので、不要な強制入院が増える」と批判しました。
 厚労省が一度は「医療保護入院の将来的な全廃を視野に縮小」を提案していたと強調し、「障害者権利委員会の勧告にそって当事者参加で出し直すべきだ」と求めました。
 また、障害者データベースなどは「個人情報保護法制の救済策が不十分であること、サービスの切り下げにつなげてはならない」と指摘しました。

以上2022年11月19日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年11月8日 第210回衆院厚生労働委員会第10号 議事録≫

○三ッ林委員長 以上で、ただいま議題となっております両案中、内閣提出、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案に対する質疑は終局いたしました。これより討論に入ります。討論の申出がありますので、これを許します。宮本徹君。

○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。障害者総合支援法等改正の束ね法案に対して、反対の討論を行います。本法案には五本の法案が束ねられておりますが、難病法の改正など、難病患者の皆さんの要望に応えた改善が図られる法改正がある一方、精神保健福祉法など問題点が指摘されている法改正があります。多くの議員が指摘したように、束ねを外すべきであり、乱暴なやり方で採決することに、まず初めに抗議をいたします。本法案に反対する最大の理由は、九月に出された障害者権利委員会の勧告に沿わず、逆行する内容が含まれているからであります。国連の障害者権利委員会の総括所見では、障害のある人の非自発的な入院は、障害を理由とする差別であり、自由の剥奪に等しいと認識し、障害や危険の事実、認識に基づく非自発的入院を通じて自由の剥奪を許す、あらゆる法的規定を撤廃することと勧告しております。ところが、本法案は、本人の意に反する医療保護入院について、家族の同意、不同意の意思表示がない場合にまで、形骸化が指摘されております市町村同意で入院を判断できるようにします。医療保護入院の適用を拡大するもので、不要な強制入院が増えます。医療保護入院制度は、人権を守る観点から、根本的に見直すべきであります。家族同意の仕組みも廃止すべきです。また、本法案で入院期間の定めが設けられますが、更新回数に上限がない点も問題であります。そもそも、本法案の検討過程で、厚労省自身が、医療保護入院の将来的な全廃を視野に、縮小を提案しておりました。ここに立ち返り、精神保健福祉法改正案については撤回し、障害者権利委員会の勧告に沿って、当事者参加で議論し直して、修正して提出すべきであります。あわせて、精神障害のある人の尊厳が確保され、地域で自分らしく安心して暮らせるよう、精神科医療の地域移行、生活支援、差別、偏見の解消を全力で進めることを強く求めるものであります。最後に、障害者データベース等については、個人情報保護法制の救済策が不十分であること、サービスの切下げにつなげてはならないことを指摘し、反対討論といたします。

○三ッ林委員長 以上で討論は終局いたしました。これより採決に入ります。内閣提出、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○三ッ林委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。この際、本案に対し、田畑裕明君外五名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び有志の会の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者より趣旨の説明を聴取いたします。中島克仁君。

○中島委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。一 グループホームにおける一人暮らし等に向けた支援の実施に当たっては、福祉からの卒業として一人暮らし等への過度な誘導につながらないよう、新たなグループホームの類型の創設については丁寧に検討し、本人の意思を尊重して個別に必要な支援が適切に提供されるようにすること。
二 国連障害者権利委員会の対日審査の総括所見における指摘事項を踏まえ、地域移行を着実に進めるため、多様な障害当事者の意見も踏まえ、目標を設定するなど具体的な地域移行の計画を立案すること。また、地域生活支援拠点等の役割の明確化や機能強化、拠点コーディネーターの役割の整理や配置の促進など地域移行を効果的、計画的に推進するための方策について検討し、必要な措置を講ずること。
三 重度障害者の職場及び通勤中における介護について、現在実施している雇用と福祉の連携による取組の実施状況や、重度障害者の働き方や介助の実態を把握した上で、連携の取組の改善及び支援の在り方について検討すること。また、重度障害児の学校及び通学中における介護の在り方についても、教育と福祉の連携による取組の実施状況を踏まえて検討すること。さらに、地域生活支援事業により実施されている移動支援について、個別給付とすることも含め、その見直しを検討すること。
四 高齢の障害者に対する介護保険優先原則の運用に当たっては、一律に介護保険サービスを優先するのではなく、重度訪問介護も含め、個々の障害者が必要とする支援を受けられるよう、地方公共団体に周知すること。
五 障害福祉サービス等報酬改定に当たっては、加算を増やして報酬体系をいたずらに複雑化させないことに留意しつつ、必要な人員を確保し、適切なサービスが提供されるようにすること。また、コロナ禍において原油価格や物価の高騰に直面し、経営への影響が懸念されている全国の障害福祉サービス事業所を支援するため、必要な措置を講ずること。
六 多様なピアサポーターの活動の価値や専門性を分かりやすく伝える観点も踏まえつつ、障害者ピアサポート研修事業の研修カリキュラムの見直しを検討すること。
七 進行性の障害の状態を踏まえた必要な支援が受けられるよう、障害支援区分の認定や障害福祉サービスの支給決定に係る適切な運用を推進すること。
八 失語症に関し、身体障害者手帳の等級の認定基準等を見直すよう、検討するほか、失語症者向け意思疎通支援者等の派遣事業の全国的な実施等、失語症者が障害者総合支援法に基づく必要な支援を受けられるよう、検討すること。
九 放課後児童クラブのインクルーシブ化を推進するとともに、障害児の特性に応じた適切な支援に努めること。
十 重度障害者に対する職場における支援のための助成金の利用が低調な理由について分析するとともに、重度障害者の就労ニーズの掘り起こし等を検討すること。
十一 難病患者など障害者手帳は取得できないが障害によって働きづらさを抱える者への就労支援のために必要となる就労能力の判定の在り方について検討し、必要な施策を講ずること。
十二 障害者雇用率制度における除外率制度の廃止に向けた取組を行うほか、事業主が、単に雇用率の達成のみを目的として雇用主に代わって障害者に職場や業務を提供するいわゆる障害者雇用代行ビジネスを利用することがないよう、事業主への周知、指導等の措置を検討すること。
十三 医療保護入院の入院期間の上限については、厚生労働省令において六月を下回る可能な限り短い期間を設定するとともに、医療保護入院者退院支援委員会には、入院者本人及び本人の地域移行を支援する者を参加させることとし、入院期間の更新やみなし同意によって事実上の長期入院とならないような措置を講ずること。
十四 家族等が同意又は不同意の意思表示をしない場合において市町村長の同意が安易に行われ、医療保護入院が増加することがないよう、必要な措置を講ずること。
十五 国連障害者権利委員会の対日審査の総括所見における、精神保健福祉法及び心神喪失者等医療観察法の規定に基づく精神障害者への非自発的入院の廃止等の勧告を踏まえ、精神科医療と他科の医療との政策体系の関係性を整理し、精神医療に関する法制度の見直しについて、精神疾患の特性も踏まえながら、精神障害者等の意見を聴きつつ検討を行い、必要な措置を講ずること。
十六 入院者訪問支援事業が、精神科病院に入院している精神障害者の権利擁護のためのアドボケイトとして機能するよう、入院者訪問支援員の研修など事業の実施体制の整備に万全を期すこと。
十七 本法施行後の精神科病院の業務従事者による虐待についての通報の仕組みの実施状況を踏まえ、障害者虐待防止法における、病院での虐待の防止と報告を確保するための更なる取組について検討すること。
十八 隔離・身体的拘束に関する切迫性、非代替性、一時性の要件を明確にするため、厚生労働大臣告示の改正を速やかに進めること。また、同告示に、患者に対する治療が困難という文言を用いることが適切であるかについて関係団体との意見交換の場を設け、当該文言やそれに類似する文言の使用によらない方策を検討し、必要な措置を講ずること。
十九 地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドラインについては、原則として警察又は警察関係者を参加させるべきではないとの観点から必要な措置を講ずるとともに、措置入院の運用に関するガイドラインについては、関係者による協議の場が、自立支援協議会等とは異なる役割を有することを踏まえて適切に運用されるよう、必要な措置を講ずることについて検討すること。
二十 第八次医療計画の中間指標では、精神科病院の非自発的入院の縮減を把握する指標例とともに、精神病床の削減のための目標値の設定について検討すること。
二十一 指定難病及び重症度分類の基準の選定に当たっては、引き続き、医学的見地に基づく日常生活上の困難さも十分考慮すること。また、小児慢性特定疾病について、成人後も切れ目のない治療が可能となるよう指定難病に指定することを検討すること。
二十二 難病患者等に対する医療費助成の前倒しに当たっては、申請日から医療費助成の対象の病状であると診断された日まで十分に遡って助成の対象とすること。また、自己負担限度額の在り方について、引き続き、必要なデータ収集を行うこと。
二十三 就労支援、医療・福祉、ピアサポート等、多岐にわたる相談業務を担う難病相談支援センターについて、関係機関との連携を密にしつつ、それぞれの強みを活かした相談支援を充実させるとともに、地域間格差が生じないよう必要な人員の確保や研修等による職員の質の向上に努めること。また、難病対策地域協議会等が設置されていない都道府県等に対し、十分な協議が行われるよう、その設置を促すとともに、医療的ケア児等の他の協議会と共同で開催できる旨の周知に努めること。
二十四 難病患者等が地域において適切な医療を受けることができるよう、必要な予算や人員を確保しつつ、難病診療連携拠点病院を中心とした医療機関間の連携や移行期医療の体制整備などに取り組むこと。また、難病患者等の診療が制限を受けることは、命に直結することから、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中でも、診療に制限がかかることのないよう万全の対策を講ずること。
二十五 難病患者等が治療によって、就労・就学において不利益な扱いを受けることがないよう、環境の整備に万全を期すこと。就労については、病気休暇等の普及促進、難病患者の障害者雇用率制度における取扱いの検討及び事業主への正しい理解の啓発に取り組むとともに、働きやすい環境整備に取り組むこと。
二十六 難病の根治に向けた研究、治療法の確立に資するデータベースの構築を図るため、データ登録の促進に努めるとともに、オンライン化を始めとした事務手続の簡略化を図ること。また、取り扱うデータは遺伝情報等が含まれることから、登録データのセキュリティ対策には万全を期すとともに、利活用の範囲については慎重に検討すること。
二十七 長期療養を必要とする難病等に苦しむ者や子どもが地域において適切な福祉サービスを享受できるよう、地方自治体が作成する障害福祉計画・障害児福祉計画に係る基本指針にその趣旨を明記すること。
二十八 難病に苦しむ者の就労状況の実態把握に努め、治療を躊躇することなく、就労できる環境を創出するための、関係制度の検討及び他領域にまたがる政策の連携を通じた、支援策の充実に努めること。
二十九 包括的な難病等対策を実現するため、難病等に対する有効な新規治療薬・治療方法の開発を進めるとともに、新たに治療薬が実用化された場合などにおいて、早期診断及び早期治療が可能となるような医療提供体制を早急に整備すること。
三十 新生児マススクリーニング事業について、全国の地方自治体において適切に検査が実施され、検査の結果治療が必要となる新生児に対し、最新の知見を基に最適な治療が受けられるよう国の責任において当該事業の推進を図ること。
以上であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

○三ッ林委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○三ッ林委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。この際、加藤厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。加藤厚生労働大臣。
○加藤国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力してまいります。