2023年3月15日 衆院厚生労働委員会 戦時PTSD調査へ 宮本徹議員に厚労相答弁

配付資料 出典:西日本新聞2020年10月8日付
配付資料 出典:篠田謙一『人類の起源 古代DNAが語るホモサピエンスの「大いなる旅」』(中公新書)より抜粋
配付資料 出典:毎日新聞2023年3月10日付
配付資料 出典:読売新聞2022年2月4日付
配付資料 出典:防衛省提出資料
配付資料 出典:防衛省提出資料

 アジア・太平洋戦争によってPTSD(心的外傷後ストレス障害)を負った旧日本兵の実態について、日本共産党の宮本徹議員は15日の衆院厚生労働委員会で、国による調査を求めました。日本兵のPTSDが国会で取り上げられたのは初めて。加藤勝信厚労相は、国として調査する考えを示しました。
 宮本議員は、「PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」を2018年に立ち上げた東京都の黒井秋夫さんらの証言、研究者の資料などを紹介。千葉県の国府台陸軍病院には、1万人以上の日本兵が精神障害を発症し入院していたが、治療が受けられず亡くなった人も多くいたと指摘。「戦争で心を傷つけられながら、理解されずに亡くなっていった。暴力が子や孫に連鎖していく。こんな悲惨なことがあるだろうか」と話しました。
 加藤厚労相は「心に傷を負われた元兵士や家族の実態を語り継ぐということは、戦傷病者や家族が戦中戦後に体験した労苦を次の世代につないでいくためにも大事なことだ」と答弁。政府が06年に開館した戦傷病者史料館「しょうけい館」において「兵士や家族による体験、専門家による研究の成果などを調査し、運営有識者会議の議論を行っていく」と答えました。

以上2023年3月16日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2023年3月15日 第211国会衆院厚生労働委員会第3号 議事録≫

○三ッ林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。まず、戦没者等の妻に対する特別給付金支給法改正については賛成です。支給漏れがないよう願います。戦争被害に関わって、三点取り上げたいと思います。資料二を御覧いただきたいと思いますけれども、PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会というものを武蔵村山市の黒井秋夫さんが立ち上げました。心を病んだ元兵士の家族、復員した父親から暴力を受けた家族が次々に名のりを上げ、今では全国で数百人規模の交流会が開かれるようになっております。国府台陸軍病院に入院した日本兵は一万人に上り、精神を病んでも治療につながらなかった人は相当いたとのことであります。戦後も精神障害への社会の理解は乏しく、傷痍軍人として国の保護を受けることをためらったケースも多かったと見られ、被害の実相が顧みられることは余りありませんでした。黒井さん御自身、父親が中国から復員後、定職に就かず、亡くなるまで無口、無気力で、父を軽蔑して育ったそうであります。戦場で受けた心の傷が原因ではと思い至ったのは、PTSDに苦しむベトナム戦争帰還兵の話に接した八年前だそうです。黒井さんは、戦争後遺症について調べ、父を理解してあげられなかったことを悔やんで会を立ち上げたということなんですね。戦争で心を傷つけながら、家族も政府もそのことを理解してくれず、亡くなっていく。そして、暴力が子や孫にまで連鎖をしていく。こんな悲惨なことがあるだろうか、せめてこうした悲惨な事実があったことを多くの皆さんに知ってほしいと、黒井さんたちは痛切に訴えられておられます。加藤大臣、アジア太平洋戦争における元兵士のPTSDとその家族たちの労苦について、どのように受け止められているでしょうか。PTSD兵士と家族の実態を調査し、被害の実相を語り継いでいくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 さきの大戦で、戦闘で負傷したり病に倒れた戦傷病者の方々、心身両面に深い傷を残したまま、戦中戦後の激動期を耐え、今日の我が国の繁栄を築き上げてきていただいたわけでありますし、また、その御家族の方々の労苦も並々ならぬものがあったと認識をしております。厚労省では、平成十八年三月に、しょうけい館を開設し、戦傷病者とその御家族が体験した労苦を次世代に伝えることを目的として、資料及び情報の収集、保存、展示等をも行っているところでございます。PTSDを含めて心の傷を負われた元兵士やその御家族の実態を語り継ぐということは、まさに今申し上げた戦傷病者とその家族が戦中戦後に体験した労苦を次の世代に伝えていくというためにも大事なことだと考えております。そういった意味で、しょうけい館において、こうした点について、元兵士やその御家族の体験、専門家による研究の成果などを調査し、また、しょうけい館には運営有識者会議というのがございますので、そこでの議論も行っていただく中で考えていきたいと思っております。
○宮本(徹)委員 しょうけい館の活動の中で考えられるという答弁でございましたが、是非、この黒井さんたちの、御家族の思いをしっかり受け止めて、実態調査、被害の実相を語り継ぐ取組をしっかり取り組んでいただきたいと思います。二つ目の問題です。昨年十一月、ETV特集で、中国残留孤児だとして、今も二百人余りの人が認定を求めているということが報道されておりました。そのうち、四人の方が登場しておりました。菅さんは、九十歳の証言者を見つけ、厚労省にビデオと文書を提出。これに対して厚労省は、証言者に直接会っての調査が必要と返事。しかし、厚労省はすぐに面談せず、待つこと一年半、証言者は認知症が進み、亡くなってしまった。黄さん、この方は、親の長谷川さんの方も捜していたことなど、たくさんの証拠書類をそろえたんですけれども、認定されなかった。白さんは、養母が亡くなる前に、拾ったときに包まれていた服を渡されたという話など、紹介されていました。孫さんも、日本語の手紙も残っております。それぞれ、いろいろな物証も含めて、ある方々ばかりでした。しかし、証言をしていた人が亡くなるなどして、現在のやり方では認定が進まない状況ということになっております。中国残留孤児を生んだ日本政府の責任というのは極めて重大であって、私は、解決に向けて、日中で協議して、新たなルールを作るなどすべきではないかと思うんですね。報道を見ていましたら、白さんは、二〇一九年に厚労省を直接訪れたんですけれども、あなたは日本人だと言うけれども、本当かと言われたとのことでありました。しかし、例えば、今世紀に入って、DNAの解析というのは、ずっと、手法も開発されて、世界各地の人類集団のDNAの解読、ゲノムの解読というのは進んでおります。人類学的に見て、日本人と中国人、漢民族は、見た目以上にゲノムが違うということも既に明らかになっているわけですね。遺骨の収集の際にもそうした技術が活用されているわけです。大臣、科学の活用も含め、こうした皆さんがちゃんと認定されて、日本に戻ってこれるように新しい認定ルールを作るべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 中国残留孤児の調査については、本人の申立てを基に、日中両政府が保有している資料を用いたり、必要に応じて証言者に照会を行ったりすることで、客観的な立場で調査を行い、日中両政府で中国残留孤児との認定を行っているところであります。日中両政府が中国残留孤児として認定している方は、日本人を両親として出生した者であることなど、ちょっと省略しますけれども、五つの要件を全て備えている方であります。昭和五十年から平成二十四年までに二千八百十八名の孤児を認定しており、平成二十五年以降は認定された方がいないというのが現状であります。現在、厚労省として、孤児に係る新規申立て、これはゼロ件ということでありますが、中国残留孤児を調査を行うに当たって、今、DNAの分析結果というのが一つの例示として出ておりました。そうしたことが活用できるのかできないのかということも含めて、中国残留孤児の調査をより的確に行っていくことは大事だと思っております。
○宮本(徹)委員 DNAはできるかできないか、これはできるに決まっていると思うんですね、だって、実際に遺骨ではやっているわけで、何人の骨なのかというのは、遺骨についた壊れたDNAまで、次世代シークエンサーでSNP解析もやって、これは日本人だという判定をしているわけですよね。さっきの五つの要件を満たすことが必要だということをおっしゃいましたけれども、五つの要件の一つ目は、両親が日本人であること。そこに疑問を持って受け付けられていない、認定されていない方々がいるわけですから、そこは、私は、DNAも、まあ本人が提供するのは同意が原則ですけれども、DNAについては。そういうことも含めて、本当に、自分のルーツは何なのか、人間の尊厳の問題だということを当事者の皆さん、訴えられておられました。是非、与党の皆さんも、関心を持たれる方は、NHKのオンデマンドで見れますので、見ていただけたら。これは本当に放置するわけにいかない問題だと、できることがあるんだったら本当に全部やり尽くして、帰国できるようにしなきゃいけないと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。そして、三点目ですけれども、空襲被害者救済法についてお伺いいたします。先ほども吉田委員からお話ありました。長年、民間空襲被害者への補償を訴えてきた空襲被害者の逝去が続いております。残された時間はほとんどありません。国が戦争を始め、敗戦必至の状況でも国が戦争を続ける中、空襲で五十万人の民間人の命が奪われました。家族を失い、孤児となり、障害を負い、塗炭の苦しみの中に生きてきたわけでございます。この被害を招いた責任は国にあるわけですね。何も補償しないというのは、正義にも、人の道にも反すると思います。加藤大臣、総理はこの間、答弁で、議員連盟での議論もしっかりと注視しながら政府として何を加えるべきかと考えていきたい、こういう答弁をされております。しかし、法案は、議連の方ではまとまっていても、自民党内での調整がつかない、こういう状況が続いております。先ほどの吉田委員への答弁では、大臣は注視していくということをおっしゃっておられましたけれども、ただ注視するだけではなく、是非、総理が決断できるように、閣僚の一人として、決断を促す役割を加藤大臣には果たしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 先ほど答弁しましたので重複ははしょらせていただきますけれども、今委員のおっしゃった点に関しては、まさに総理がおっしゃっておられるように、議連の議論も注視しながら政府として何ができるか考えていきたい、まさにこういった姿勢で取り組んでいきたいと考えています。
○宮本(徹)委員 今日、改めて、三月十日の毎日新聞の社説も資料でつけておきました。同じ敗戦国のドイツとイタリアでも、あるいは戦勝国のフランスやイギリスでも、空襲被害者の救済というのは行っているんですよね。やはり戦争被害の救済のためのというのはやるというのが当たり前のことだと思うんですよ。ほかのサミット諸国でもやっているわけですから、是非日本でも、これは本当に待ったなしの課題ですので、決断していただきたいということを強く求めておきたいと思います。続きまして、駐留軍関係離職者等臨時措置法の延長についてお伺いをいたします。我が党は日米軍事同盟にも思いやり予算にも反対をしておりますけれども、米軍基地で働く労働者について権利を保障するのは当然であり、米軍再編に伴って離職を余儀なくされる方の再就職支援は必要だと考えております。その上で、駐留軍労働者の権利に関わってお伺いしたいと思います。先ほど早稲田委員からも、日本の法令が適用しているのかという点で大事な問題提起がございました。まず私が取り上げたいのは、ハラスメントの問題です。米国人上司からのパワハラ被害などの職場のトラブルが多発していると報じられております。今日、防衛省、来ていただきましたけれども、この間、防衛事務所のハラスメント相談窓口に寄せられている相談件数、年度ごとの合計数を述べていただけるでしょうか。
○井野副大臣 平成二十九年度から令和三年度までの過去五年間でということでありますけれども、各地方事務所などのハラスメント窓口に寄せられた相談件数ですが、平成二十九年度が二十五件、三十年度が五十八件、令和元年度が八十三件、令和二年度が五十七件、令和三年度が五十四件であり、合計で延べ二百七十七件となっております。
○宮本(徹)委員 資料をいただいたので、資料六につけておりますけれども、令和四年度は二月末現在で七十四件ということになっているわけです。この駐留軍労働者は、雇用者は日本政府だ、使用者は在日米軍、日本政府が米軍に供給する間接雇用方式の下で働いているわけです。資料の五ページを見ていただきたいと思います。キャンプ座間でパワハラ被害を受けた女性労働者二人が産業医に急性ストレス障害などと診断され、三か月の傷病休暇を取得しました。その後、配置転換を条件に復帰可能と診断されましたが、米軍側には元の部署に戻るよう指示され、拒むと無断欠勤扱いとなり、お一人は無給状態、こういうことが起きたわけです。この前に、お二人は基地内の人事担当に苦情を申し立て、防衛省の座間防衛事務所も、配置転換を含めた配慮を求める要望書を米軍側に提出しておりましたが、配置転換は使用者である米軍の権限に属するため、雇用主の防衛省だけでは解決できない、こういう実態が浮き彫りになったわけです。同じ労働者供給である労働者派遣では、派遣元だけでなく派遣先もハラスメント防止措置義務を負っているわけです。私は、雇用主である防衛省に義務を課すだけでは不十分であって、使用者として配置転換や指揮命令の権限を持つ米軍にもこうした措置義務を課すなど、実効性のある対策を取るべきだと思いますが、防衛省、いかがですか。
○井野副大臣 ハラスメント防止対策についてでありますけれども、パワハラ防止法が令和二年六月に施行された後は、この法律の適用を受ける従業員の雇用主として、新たに駐留軍等労働者のためのパワハラ防止に係る方針を策定し、米側や従業員に考え方を共有し、周知するとともに、各地方防衛事務所などにハラスメント専用の相談窓口を設けるなど、対策を講じているところでございます。また、米側に対しては、パワーハラスメントの具体的な事例などを示して啓発を行ったり、米側及び従業員を対象とした在日米軍従業員等へのパワーハラスメント防止講習会を実施し、パワーハラスメントを防止するための各種取組を進めてきているところでございます。こういったハラスメント発生を防ぐための取組を引き続き進めるとともに、万が一ハラスメントが発生した場合には迅速に解決ができるよう、日米間で緊密に連携して取り組んでいくところでございます。
○宮本(徹)委員 午前中の早稲田委員とのやり取りを聞いていましても、日本の様々な法令が在日米軍には実際には適用されていない状態になっているわけですね。このパワハラ防止措置義務についても、先ほど言いましたけれども、同じ労働者供給でも派遣では、これは派遣先にも課されるわけですよね。その義務の中には、ハラスメント防止の方針の明確化、周知啓発だけでなく、相談窓口の設置、速やかな被害者への配慮、行為者に対する措置、再発防止策などなどが使用者の側にも課されるわけですよ。こうしたものが米側に課されていないからなかなか問題が解決しない、こういうことになっているんじゃないんですか。ですから、ここは防衛省としてちゃんと、パワハラ防止措置の義務やセクハラ、マタハラの防止措置の義務についてもちゃんと、日本の法体系に沿った対応を取るように協議して、合意を得る必要があると思いますが、いかがですか。
○井野副大臣 確かに、使用者である米側に対しての対策というところですけれども、我々防衛省としては、米側にはハラスメント防止に係る措置義務がないため、厚生労働省による助言等の直接的な対象とはなっていないというのは、確かにそういう面はありますが、駐留軍等労働者から各地方防衛事務所などのハラスメント相談窓口に相談があった場合には、駐留軍等労働者の意向を踏まえつつ、防衛省から米側に対し事実関係の確認を行うとともに、事実であることが確認できた場合には、速やかに環境の改善や再発防止措置を講ずるよう求めるなどの取組を行っているところでございます。
○宮本(徹)委員 ですから、その措置義務をちゃんと米側にも、認めるような協議をする必要があるんじゃないかということを申しているんですよ。
○井野副大臣 米側との協議、取組についてでありますけれども、先ほどちょっと申し上げたとおり、まずは労働者の意向を踏まえつつ、その上で、事実関係の確認等は、防衛省としてはしっかり米側に確認を求めているという形でありますし、もちろん、それがあった場合には、直ちにその是正、改善等を講じていくように求めている。そういう取組を積み重ねていっているところでございます。
○宮本(徹)委員 ちゃんと日本の国内法を米軍にも守るように協議をする、それで合意を求めていく、何でそれが言えないのかというのは、本当に私、情けないなと思いますよ。米軍によるハラスメントについて裁判で賠償を求めたらどうなるか。米軍のハラスメント防止措置を取らなかったと認められた場合は、当然米軍は問題なんですけれども、これは国に責任があるとして日本政府が賠償を払っているわけですよ。こういうことになるわけですよね。米軍がハラスメントを使用者として起こしても、日本政府が賠償を払う、こういうことが起きているわけですからね。米軍の無法を許せば許すほど日本政府はその分も賠償を払うって、こんなばかな話はないわけですから、ちゃんと米軍に対しては、ハラスメント防止措置、日本の国内法と同じものを取っていただく、この合意を取っていただきたいと思うんですよ。今日、そこまでのペーパーしかないんだったら、持ち帰って検討しますということだけ言ってください。
○井野副大臣 いずれにしても、いろいろな御指摘いただきましたけれども、我々としては、労働者からそういった相談があった場合には直ちに、もちろん労働者の意向がありますので、こういったものを先方に伝えるかどうか含めて確認を取った上で、事実関係の確認、米側に対してもしっかりと事実関係を確認してくれ、その旨言っております。そういった取組を積み重ねていくことによってハラスメント自体がなくなっていくんだろうというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 ハラスメントをなくすためには、ハラスメント防止の措置の義務をちゃんと米側にも負っていただく、日本の企業と同じ責任を果たしてもらうということが必要だということを厳しく申し上げておきたいと思います。あわせて、このハラスメントの問題では、パワハラ被害が増える中、二〇一九年に、米海軍厚木基地が政府を通じて全駐労に対して、協議会の設置などを含めた解決策を提示して、これが設置されております。厚木基地以外でもこうした協議会を設ける必要があるのではないかと思いますけれどもいかがでしょうか。
○井野副大臣 宮本委員御指摘の厚木基地のパワーハラスメント事案、その協議会の設置なんですけれども、これは、当時、令和元年に米軍厚木基地において発生したパワーハラスメント事案を踏まえ、米側より、このような労使紛争を発生させないよう、米側、防衛省、全駐労、労働者の三者による協議会を設置したいという申出があったことを受け、協議会が設置されたものと承知しております。こういった、防衛省としては、米軍や組合の意向を確認しながら、今後、必要な場合には適切に対応してまいるというふうに取り組んでいるところでございます。
○宮本(徹)委員 米側の意向を確認してって、これは、厚木基地だけは米側が言ってきたからつくられたわけですけれども、でも、米側が言ったらやるという話じゃなくて、本来は、日本政府側から言う必要がある話だと思うんですよね。全駐労は、協議会が労使で対応するこの新手法を厚木基地で定着させ、他の基地への拡大も目指す、こうおっしゃっているわけですから、全駐労の側の意向は明確なんですよ。アメリカが言ってくるのを待つんだとか、アメリカに意向を確認してじゃなくて、日本政府の側から、全駐労がこう求めているんだということで、しっかり米側に求めていくという姿勢が大事だと思いますよ。そのことを申し上げておきたいと思います。それから、もう一点、駐留軍労働者に関わって取り上げたい問題がございます。資料の七ページ目につけておりますが、駐留軍労働者の中で有期雇用契約の臨時従業員が、二十年前は、二〇〇三年、九百六十九人の三・九%だったのが、二〇二三年一月末では三千六百二十九人、一四%にまで増えております。非正規雇用への置き換えがずっと進んでいるわけですね。この五年間を見ても、非正規雇用の比率が高まっております。五年前は無期転換ルールが作られたわけですけれども、逆に非正規雇用の比率が高まっているわけですね。五年前の法改正の際に、我が党の高橋千鶴子議員の質問に、米軍側も無期転換権を認めるとの合意に至ったとの答弁がありました。防衛省にお伺いしますけれども、この五年間で無期転換権を得た労働者と無期雇用に転換した人数というのは何人でしょうか。
○井野副大臣 過去五年間において、平成三十年度に百二十一人の駐留軍労働者が無期転換権を得ています。そのほかの年度については、無期転換権を得た従業員はございません。その上で、この百二十一人のうち無期雇用従業員への転換を希望された百十七人については、全ての従業員が無期雇用従業員へと転換をしているところでございます。
○宮本(徹)委員 過去五年間では、平成三十年度の百二十一人が無期転換権を得て、そのうち希望された百十七人が無期雇用に転換した、しかし、それ以外の年度、平成三十一年度以降は無期転換権を得た従業員がいないというんですね。これもおかしな話だなと思うんですよね。ということは、この臨時従業員に更新期間の上限が設けられたということなんですか。
○井野副大臣 平成三十年四月に時給制臨時従業員の労働提供契約が改正されまして、雇用が反復して更新される場合、更新回数については上限がありませんが、通算した雇用期間が最初の雇入れから三年が上限となっているというところでございます。
○宮本(徹)委員 新たに、三年が上限という雇用期間の上限が設けられたという話なんですよね。御存じのとおり、この無期転換ルールは、五年を超えて契約が更新されたら無期転換権が発生する。それまでは上限がなかったにもかかわらず、労働契約法が改正されて無期転換ルールができたら、新たに三年という上限を設けたという話なんですね。ちょっと、加藤大臣、これは許されないんじゃないかと思うんですよね。事実上の無期転換逃れになっているんじゃないかと思いますが、厚労大臣としての所見をお伺いしたいと思います。
○加藤国務大臣 一般論でしか申し上げられませんが、更新上限に基づき行われる雇い止めの有効性については、労働契約法第十九条の雇い止め法理に基づき、最終的には司法での判断となります。また、雇用上限を設けることは直ちに法違反となるものではありませんが、無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的で無期転換申込権が発生する前に雇い止めを行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましくないと考えております。厚労省としては、こうした無期転換のルールの趣旨について、防衛省にも丁寧に説明していきたいと考えています。
○宮本(徹)委員 大臣から答弁があったとおりなんですけれども、意図的に、それまで、無期転換ルールができるまでは更新上限は一切設けられていなかったのに、無期転換ルールができたら更新上限を設けていくというのは、これは本当に私は許されない無期転換逃れだと思うんですよね。今、大臣からは、防衛省にもルールを説明していくという答弁がありましたけれども、これは正す必要があるんじゃないですか。いかがですか。
○井野副大臣 先ほどの三年という上限とした経緯についてなんですけれども、有期雇用の従業員の雇用期間の上限を定めること自体は、我々としては直ちに違法になるということではないと承知しておりますし、この三十年の労働提供契約の改正に当たっては、米側、そして従業員の代表たる組合側、そして防衛省の三者の合意を得てこういう三年という形を取ったということでありました。その上で、我々としては、従業員の雇用の安定は重要であるというふうに認識しておりますし、引き続き、従業員を代表する組合側の御意見も伺いながら、こういった駐留軍労働者をめぐる雇用の在り方については今後も引き続き検討していくという対応でございます。
○宮本(徹)委員 先ほど大臣の説明を井野さんも聞かれていたと思いますけれども、無期転換権は、やはり非正規雇用の皆さんが安定した雇用に就くためにつくられたものなわけですよね。わざわざ二〇一八年の際には、当時、無期転換権を得られた方々に、日本の法律に基づいて無期転換権を米側にも認めさせたわけですよ。ところが、それと同時に、それ以降は無期転換権が発生しないようなものに変えてしまった。本当に雇用の安定を図るものと真っ向から逆行することをやっているわけですよね。本来、国は雇用者ですから、国は雇用者なんですから率先して労契法を守って実践しなきゃいけない。その防衛省、国が率先して無期転換逃れをやっている。全く民間に対しても示しがつかないことだと思いますよ。私は、直ちに是正する協議を始めていただきたいというふうに思います。あわせて、最後、一点だけお伺いしますけれども、この間、非正規雇用が大きく増えておりますけれども、これは理由は何なんでしょうか。
○井野副大臣 非正規雇用の増えたということですけれども、退職者が増えている理由、まあ非正規に替わっているということだと思いますけれども、主な理由としては、任期満了による高齢従業員の退職者が増えているということから、雇用継続、そういった、何ですか、定年後、そして非正規になって、そういう人が増えた結果だと思います。それとともに、そういう高齢者の再就職といいましょうか、任期つきで、非正規で雇用を継続していくということを求めている結果がこういう数字に表れているんだろうと思っております。
○宮本(徹)委員 先ほど早稲田委員からその点は指摘があったと思いますけれども、非正規に置き換えていくんじゃなくて、高齢者も定年延長だとか安定した雇用をやっていくべきだというふうに思います。時間になりましたから終わりますけれども、とにかく、駐留軍労働者については、ちゃんと労働者としての権利が守られるように、日本の国内法をしっかり適用できるように、米側としっかり交渉すべきだと強く申し上げまして、質問を終わります。