特例公債法案 本会議質問

2月9日に行われた衆議院本会議で、宮本徹議員が日本共産党を代表して行った質問の大要は以下の通りです。

私は日本共産党を代表して、特例公債法案について質問します。本法案は、東日本大震災の復興債という目的も償還財源もはっきりした法案と、財政法が禁じた赤字国債の発行を特例的におこなう法案を一本にしたものであります。性格の異なる2つの法案は、それぞれ分けて国会に提出すべきだということをまず、厳しく指摘します。

本法案は、2016年度から5年間、赤字国債の発行を政府の手にゆだねるものとなっています。これは、憲法と財政法の規定を幾重にもふみにじるものです。
わが国の憲法は、第83条で「国の財政を処理する権限は、国会の議決にもとづいてこれを行使しなければならない」とさだめ、86条で「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない」と定めています。どこから財力を調達するかも含め、国会の議決に基づくものとし、予算の単年度主義を規定しています。
その上で財政法4条は、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入をもって、その財源としなければならない」としています。公共事業などをのぞけば、公債や借入金は認めていません。こうした明確な規定を「最近における国の財政収支が著しく不均衡な状況」などという理由で、踏み破っていいというのでしょうか?憲法、財政法違反は明らかではありませんか(総理)

なぜ赤字国債の発行を禁じているのか? 財政法制定当時の主計局法規課長、平井平治氏のあらわした「財政法逐条解説」は、次のように明確に述べています。
「第4条は健全財政を堅持していくと同時に、財政を通じて戦争危険の防止を狙いとしている規定である。……戦争と公債がいかに密接不離の関係にあるかは、各国の歴史をひもとくまでもなく、わが国の歴史をみても公債なくして戦争の計画遂行の不可能であったことを考察すれば明らかである、……公債のないところに戦争はないと断言しうるのである、従って、本条はまた憲法の戦争放棄の規定を裏書き保証せんとするものであるともいいうる」、であります。
総理は、赤字国債の発行を禁じた財政法4条は、膨大な戦時国債で戦争をすすめ、国家財政と国民生活を破綻させた反省をふまえたものだという認識をお持ちでしょうか? 財政法4条の背景にある痛苦の歴史の教訓を直視すれば、5年間にもわたり、国会のチェックなしに、赤字国債を発行する法案などだせないではありませんか?(総理)

そもそも特例公債法は、2012年までは、赤字国債の発行が必要な年に、国会の議決が必要な法案として国会に提出され、審議してきました。単年度に限定したのは財政規律を保つための最低限の措置だったのす。ところが、2012年に消費税増税を前提に民主党・自民党・公明党の3党合意で4年間の赤字国債の発行自由化まで決めたのです。
国会のチェックをはずした4年間、国と地方の借金はどうなったか。2011年度末は895兆円が、2015年度末の見込みは1041兆円、うなぎのぼりに増えています。本法案でさらに5年、赤字国債の発行を政府にゆだねるならば、国と地方の借金がいっそう累積していくことは、内閣府の試算でもあきらかではありませんか。(総理)

莫大な赤字国債発行は超低金利が前提となっています。かりに金利が1%増加すれば、利払い費は何兆円増加するのでしょうか? 借金は雪だるま式にふくれあがるのではありませんか?(総理)
特例公債の発行限度額を予算総則に書くとしますが、2017年度から2020年度までは、どのような予算が、どのような規模で組まれるか、時の政権にしかわかりません。衆議院議員の任期の4年をもこえて、5年間も赤字国債の発行を政府の裁量にゆだねよというのは、政府が国会の予算の審議権を奪うにひとしいではありませんか。(総理)

法案では、特例公債の発行額の抑制のために、「経済・財政一体改革を総合的かつ計画的に推進」するとありますが、その計画の中身はきわめて重大です。「経済・財政再生計画 改革工程表」は、後期高齢者の窓口負担の1割から2割への引き上げ、介護保険利用料の1割から2割への引き上げ、年金の支給額をさらに目減りさせるマクロ経済スライドの見直し、高額療養費制度の見直しなどを検討項目にかかげています。「財政再生」を口実にした、社会保障の給付減・負担増のオンパレードではありませんか。(総理)

深刻な貧困と格差が広がる中、消費税増税と、社会保障削減をすすめていくことは、憲法25条が保障する、健康で文化的な生活を送る権利を侵害するものです。生存権裁判とよばれた朝日訴訟の東京地裁判決は、「最低限度の水準は決して予算の有無によって決定されるものではなく、むしろこれを指導支配すべきものである」と断じました。生存権の保障、社会保障を最優先に確保するのが、予算のあり方ではありませんか。(総理)

重大なことは、これほどの借金をつくり、何に支出しているかです。
安倍内閣は、社会保障について毎年の「自然増分」を大きく抑え込む一方で、大企業に対しては研究開発減税の拡充、設備投資減税の創設、先行減税の形での法人税率の引き下げなど減税の大盤振る舞いです。復興法人税の1年前倒しを含めれば、3兆円もの大減税が行われました。財界要望を受けた大企業優遇減税が歳入減少の要因の一つになっていることを認めますか?法人税率のさらなる引き下げは、法人税収が減るだけでなく、黒字大企業の内部留保を積み上げるだけであり、やめるべきです。(総理)

また、新規大型開発事業への集中投資が行われています。通行料金では採算がとれないため、建設費の75%、1兆円の税金を投入してつくる外環道(練馬~世田谷間)など三大都市圏環状道路、国際コンテナ港湾など、不要不急の新規大型開発はやめるべきです。(総理)

とりわけ、軍事費を増大させていることは重大です。
安倍政権のもとで、防衛費は4年連続で増額となり、来年度は当初予算で初めて5兆円をこえました。中期防衛力整備計画をも上回るいきおいです。その中身は、空中給油機や無人偵察機などアメリカの軍事戦略を補完する装備調達、沖縄県民の民意を無視した米軍基地建設の強行です。さらに来年度からの米軍への思いやり予算も増額で合意しました。総理、防衛費は、歳出削減の聖域だということですか(総理)

防衛費の後年度負担額はこの4年で約1.5倍、急速に拡大しています。しかも、政府は、昨年、防衛費の後年度負担の拡大に道をひらく防衛調達特措法を成立させました。これまで5年だった国庫債務負担行為による支出の年限を、武器の購入にかぎって10年に延ばしました。10年先までの予算の使い道を決めるというのは、国会の予算審議権を侵害し、財政民主主義に真っ向から反するものではありませんか。(総理)

政府が昨年強行成立させた安保法制、すなわち、戦争法と防衛費は一体のものです。アメリカの戦争支援のために赤字国債を増やすなど絶対に許されません。日米ガイドライン・戦争法の具体化を中止し、東アジアの平和的環境をつくる外交努力を強め、防衛費の削減にふみだすべきです。(総理)

以上、総理の明確な答弁を求め、質問を終わります。