2016年2月17日 衆院財務金融委員会 消費税再々増税地ならし

2016年2月17日衆議院財務金融委員会提出資料①
2016年2月17日衆議院財務金融委員会提出資料②

 

以下2016年2月18日付赤旗日刊紙より抜粋

日本共産党の宮本徹議員は17日の衆院財務金融委員会で、安倍政権が2017年4月の消費税率10%への増税と同時に導入しようとしている「軽減税率」が消費税率の再々引き上げの“地ならし”であることを明らかにし、増税の中止を強く迫りました。
「軽減税率」導入を柱とした16年度税制改正法案には「財政健全化目標との関係…(中略)を踏まえつつ、消費税制度を含む税制の構造改革…(中略)について検討を加え、必要な措置を講ずる」との文言が盛り込まれており、安倍晋三首相はすでに18年度以降の消費税増税も選択肢に「含む」と再々引き上げの可能性を明言しています。
宮本氏は、安倍首相に加え、与党幹部も消費税の再々増税に向けて「軽減税率」を導入することをあけすけに語っていることを紹介しました。
自民党の谷垣禎一幹事長は「軽減税率」について、「消費税の将来を考えたとき、インフラ整備ができた」と発言。公明党の斎藤鉄夫税調会長も「将来、消費税率は13~15%…(中略)食べ物の税率を1桁に固定したことは非常に大きい」と述べています。
宮本氏は「与党が軽減税率の合意と同時に、10%以上の消費税再増税に向かうレールまでしいたのは極めて重大だ」と批判。麻生太郎財務相は「(軽減税率は)痛税感の緩和に重きを置いている」「(18年時点で)必要な場合は、歳入歳出の追加的な対応を検討する」などと述べ、消費税の再々増税の可能性を否定しませんでした。
宮本氏は消費税が財源確保として適切という態度をとる限り、「消費税増税が際限なく続く」と批判。15年の家計調査では消費支出が実質で大幅減となるなど、2年連続で消費が落ち込んでいることをあげ、「(14年4月の)消費税率8%への増税による影響が長引いているとの認識はあるのか」とただしました。
麻生財務相は「消費税が上がった影響があることは否定できない」と答弁。宮本氏は「ここで消費税を10%に引き上げたら、国民生活と日本経済に深刻な影響を与える」と重ねて消費税増税の中止を求めました。

≪第190国会 財務金融委員会第4号 2016年2月17日 議事録≫

○宮下委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。きょうは、まず消費税の問題についてお伺いしたいと思います。法案の前提となる今度の据え置きつき消費税増税で、一体、一人当たり幾ら増税になるのか、一世帯当たり幾ら増税になるのか。この額の問題がこの間変わってきたわけですが、予算委員会で私が当初聞いたときは一人当たり一万四千円、その後、参議院では税収見込みによる増税額は一人当たり二万七千円ということで、数が変わりました。私に対する回答は家計調査で答えたんだ、家計調査というのは消費の六割しか把握できていない、こういう話でした。これからは税収見込みからの算出が正しいんだというのが麻生大臣からあったというのがこの間の到達だというふうに思います。この税収見込みから一世帯当たり六万二千円、一人当たり二万七千円というのは、軽減税率の軽減額総額が一兆円だというところから来ているんだと思いますけれども、改めて伺いますけれども、軽減税率による軽減総額一兆円が正しい、こう言われる根拠は何なんでしょうか。
○麻生国務大臣 税制改正に伴います減収の見込み額というものは、税収の実績に見合った見積もりで行う必要があろうと考えております。こうした考えのもとで、軽減税率制度の導入に伴う減収見込み額につきましては、家計が負担をいたします年率一%当たりの消費税収の見込み額を基礎として、家計調査から推計いたしました軽減税率の適用対象となる消費支出の割合を掛けまして、結果的に一兆円程度と見込んでおるということで、一%程度の税収から政府負担額を引きましたところに軽減税率対象の割合が二四%のものをそれに掛けて、軽減税率二%を掛けますと約一兆円というのが計算の基礎であります。
○宮本(徹)委員 今お話しありましたように、私に対して答えたのは家計調査そのものから答えたと。今度は、税収見込みから一兆円というのを出したんだけれども、税収見込みから一兆円出す上でも家計調査を使われているわけですよね。一方では家計調査は消費支出全体の六割しか把握できていないといって一人当たり一万四千円は間違いだと言いながら、今度は同じ家計調査を使って軽減総額一兆円は正しいんだというふうに言われているわけですよ。なかなか理解できないんですね。 参議院の議事録を見ていましたら、麻生大臣も、家計調査は、全部書いていられるかというと、書いていられないと、こう答弁もされています。ですから、全部書いていられない家計調査を使って、きょう改めて前回もお配りした資料を提出させていただきましたけれども、軽減税率の対象品目の割合は二三・九%だ、ここから軽減税率の額一兆円が出てくるという説明なわけです。一方で、家計調査が六割しか把握できていないということになりますと、この一兆円という額も正しいとは言えないんじゃないですか。
○麻生国務大臣 家計調査につきましては今御指摘のあったようなことは重々承知しておりますけれども、家計調査というものは、この前も御説明申し上げましたとおり、約九千世帯の実際の消費支出をもとにした統計であります。家計消費の内容とか構造とか動向を示す統計としては最も信頼がありますので、ほかによりふさわしい統計も存在いたしていないと思っております。加えて、サンプル数が全国消費実態調査と比較したらという御指摘もありますが、消費全体に占めます軽減税率の適用対象となる消費支出の割合につきましては、ほとんどそのパーセントの差は変わらないということなどを踏まえますと、消費の構造、どういった形の構造があるかという、すなわち軽減税率の対象となる消費支出の割合というものを算出するに当たりましては、家計調査というものを活用することについては一定の合理性があるのではないか、私どもは基本的にそう思っております。
○宮本(徹)委員 一定の合理性があるというふうにおっしゃいますけれども、ほかに、家計調査以外に使うものがないからということもおっしゃられるわけですよね。家計調査の対象は、先ほど言われたとおり九千世帯ですよね。実際、住民台帳に載っている二〇一五年の世帯は五千六百四十一万世帯だと。物すごい差があるわけですよね。この九千世帯で、しかも消費の六割しか把握していないと言われているものがなぜ正しいと言えるのかという説明には、今の説明はなっていないというふうに思います。なぜ、この九千世帯が五千六百四十一万世帯を正確にこの家計調査は反映しているというふうに言えるんですか。
○麻生国務大臣 消費の内容、構造等々に関しましては、これにかわる資料というものは存在いたしておりませんので、基本的に五千六百万世帯というもののそのサンプルの中から私どもとしてはそれを参考にさせていただいて合わせるということでありまして、もっといろいろあるではないかと、私どもはもっとほかに資料があればそれを使わせていただきますけれども、それにまさるような資料は存在しておりませんというのも事実です。
○宮本(徹)委員 結局、それにかわる資料がないということでありまして、この一兆円が正しいということにはならないわけですよね。これは参議院でも紹介があったわけです。国民経済計算があります。食料・非アルコール飲料、これを見ますと、平成二十六年度、二〇一四年では四十兆九千五百五十七億ということになっております。これに軽減分の二%を掛けたら八千億ということになるわけですよね。六割しか把握していない家計調査をもとにした税収見込みを使った一兆円と、そしてこの国民経済計算で、支出の目的で出てくる食料・非アルコール飲料から計算で出てくる八千億と、二千億の差があるわけですけれども、大分違うわけですよね。では、なぜこの国民経済計算から出てくる八千億じゃなくて、家計調査も使った一兆円の方が正しいんですか。そこがわからないですね。お答えください。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。今回の軽減税率導入に伴います減収見込み額を計算する点につきまして、先ほど大臣から御説明申し上げましたように、まずベースといたしましては、家計が負担をいたします一%当たりの消費税収の見込み額をまず基礎にするということと、それが約二・一兆円でございますが、それに軽減税率の適用対象となります消費支出の割合を掛けまして、一兆円という数字を出してきているわけでございます。それで、計算の基礎として、まず消費税の税収を基礎として見積もっているということでございますが、それは消費税の税収そのものが実際の消費支出に対応して現実に負担されている金額でありますから、そこから計算されていくべきものであろうと。問題は、その中に食料品に当たる部分がどれぐらいの割合があるだろうか、そこの部分として参考的にどういう資料からどういう割合を持ってくるのが適当であろうかということで家計調査による割合を持ってきたということでございます。家計調査自体は、先ほどから御説明ありましたように、家計消費の中身とか構造とか動向とかというものをしっかりと把握するということを主たる目的としておりまして、家計の支出総額そのものをつかまえるという性質でないということをも十分勘案した内容でございます。それから、国民経済計算との関係の御指摘でございました。確かに、国民経済計算によりますと、食料・非アルコール飲料に係ります家計消費は四十一兆円程度でございますので、それをもとに計算をいたしますと〇・八兆円ということになりますけれども、子細に国民経済計算の中を見ますと、軽減対象となる商品でありましても、例えば、ホテルや旅館等の直営の売店で販売されるお土産とかお菓子、飲料の類いというのはその中に計上されないというふうな、これまた統計上の制約があるということでございます。したがいまして、その場合では、恐らく軽減税率の適用対象となる家計消費というのは、その四十一兆円よりも大きくなるということになるでしょうから、それに対応しまして減収見込み額も〇・八兆円よりも大きくなる、そういうふうな構造になっているんだろうと思っております。いずれにしても、消費税の減収額を求めるときには、基本的に、家計が負担をしている消費税そのものの負担のところをベースに計算するというのが最も実態に近いものであろうというふうに考えて計算をしているところでございます。
○宮本(徹)委員 今のお話ですと、国民経済計算の中には、ホテルだとかの売店で売っているお土産代などが入っていないというお話でしたけれども、それが一体、十兆円もあるのかという話なんですよ。二千億円差があるということは、十兆円差があるということですよね。そうなりますよね。そんなに十兆円もあるということになるんですか。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。今、四十一兆円という飲食料品のところについて数字を申し上げましたが、それから、直接把握されていない部分の代表例として申し上げたところでございます。ホテルでの販売されているお土産とかレジャー施設での販売されているお土産であるとか、あるいは外食・宿泊の中に含まれているサービスであるとか、そういうものがいろいろ入ってまいりますので、そういう部分が狭い意味での四十一兆円の世界の外側にあるのではないかというふうに見ております。ただ、幾らかということは確認はできておりませんけれども、基本的には、それよりも大きな数字が現実に飲食料品の対象であるということは言えるんだろうと思っております。
○宮本(徹)委員 国民経済計算を見ると、食料・非アルコール飲料以外に、外食・宿泊という欄がありますよ。外食・宿泊、全部合わせて十八兆六千七百八十億ですね。宿泊、全部ホテル代ですよ、お土産代の話じゃないですよ。ホテル代だとか全部含めて十八兆ですよ。ですから、レジャー施設でのお土産代だとかホテルでのお土産代が十兆円もあるという話には絶対ならないわけですよ。それはお認めになりますよね、十兆円はないと。それは、おっしゃるように、四十一兆よりは若干膨らむかもわからないけれども、五十兆にはならないと思いますよ。それはお認めになりますか。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。国民経済計算上は、明確なのは、食料・飲料のところは四十一兆円ということでございますが、飲食料品として捉えるときに、今申し上げたようないろいろなところに、そういうものが複線的に入っているというふうに思われます。それ自体を取り出すことは恐らく困難だと思います。したがいまして、数字の突合というのは不可能だと思いますけれども、統計の性格上、そういうものがきちっと外側にあるということは事実でございますので、四十一兆円をベースにいたしました〇・八兆円という減収額よりも大きくなるということは言えるんだろうと思います。
○宮本(徹)委員 四十一兆円よりは若干大きくなるということなんですけれども、五十兆にはならない。ですから、国民経済計算からいっても、軽減総額一兆円というのは根拠がないということになるんじゃないかというふうに私は思うんですよね。ですから、本当にこの間、財源をどう確保するんだという議論もさんざん予算委員会も含めてやられていますけれども、これが一兆円なのかどうなのかという議論の前提となる数字が極めて不確かな状態のままにあるというのが、きょうの議論の到達ということになるんじゃないですか、麻生大臣。
○麻生国務大臣 私どもは基本的に、一兆円の減収になるというものを考えて、それに対応するべくいろいろな安定した恒久財源を探すということをやっておりますので、それより少なければそれはそれなりに結構かもしれませんが、それに対して足りなくなった場合のことをよく考えておかねばなりませんので。最初に申し上げましたような計算方法でいきますと、家計が負担する税率一%当たりの税収の見込み額というものを基礎として考えさせていただきました一兆円というものが私どもとしては最も信頼できる数字で、これを埋められるようなものを考えておかないと、後々のいわゆる財政なり予算というものが極めて厳しいことになるだろうと思っております。
○宮本(徹)委員 結局、財源のことを考えたら大き目に見積もっておこう、こういう話ということじゃありませんか。それで結局、私、一番初めに言いましたけれども、この軽減総額が幾らなのかというのは、実は、今度の一部据え置きつき一〇%増税で一世帯当たりの負担増がどれぐらいになるのか、一人当たりの負担増がどれぐらいになるのか、ここに直結するわけですよ。国民の多くの皆さんは、今度の増税で暮らしがどれぐらい大変になるのかと大変心配しているわけですよ。そこの根拠になる数が、いや、財源のことにかかわるから大き目に見積もっておこうという話では私は済まされないというふうに思いますので、この一兆円の根拠について改めて精査していただいて、なぜこれが正しいと言えるのかというのを政府としての統一見解を出していただきたいと思います。委員長、本委員会にそれを出していただけるように協議をお願いします。
○宮下委員長 後日、理事会で協議させていただきます。
○宮本(徹)委員 もし国民経済計算をもとにした八千億だとしたら、それよりはもうちょっと大きいのかもわからないですけれども、一人当たりの増税額、一世帯当たりの増税額がどうなるのか、私自身計算しました。そうすると、一人当たりの負担増というのは二万八千八百五十六円、一世帯当たりは六万五千五百九十一円ということで、この間答弁されてきた数字よりもさらに大きくなるということになります。その分、家計への影響、日本経済への影響も、今まで政府が考えてきたよりも大きくなるということは指摘しておきたいと思います。続いて、次の問題に行きますが、今度、分厚いこの税制改正法案の一番最後の方にあります第百七十条について質問させていただきたいというふうに思います。これは予算委員会の審議のときにも、私、総理に質問させていただきました。自民党、公明党の軽減税率導入に当たっての与党合意の文言がそのまま、ほぼ同じ形で百七十条に入っています。その後段にこういう文言があるわけですね。財政健全化目標との関係及び基本方針二〇一五に記載された二〇一八年度の経済・財政再生計画の中間評価を踏まえつつ、消費税制度を含む税制の構造改革などなどについて検討を加え、必要な措置を講ずること、こういう文言があります。この意味について総理に私が尋ねたところ、予算委員会では、これは二〇一八年度以降の消費税増税も選択肢として含むということだ、含むということで、必ず上げることではない、こういう答弁があります。それを踏まえて、さらにこの文言の意味について聞きたいと思います。財政健全化目標との関係を踏まえつつということですので、先ほどの、総理から答弁があった二〇一八年度以降の消費税増税を選択肢として含むということは、当然、二〇二〇年度までに消費税増税をもう一度、さらに十数%に上げるということも選択肢として含むという意味でいいんですね、この法案の文言は。
○麻生国務大臣 この条文の第一号の規定は、平成二十九年四月からの軽減税率の導入に先立って、安定的な恒久財源をしっかり確保するため、二十八年度末までに歳入歳出における法制上の措置等を講ずるということを示したものということであります。さらに、第二号の規定でいきますと、軽減税率制度が導入されました後、経済・財政再生計画に基づく三十年度の中間報告の際に、軽減税率制度の導入と安定的な恒久財源の確保という計画策定後に生じた新たな状況等を織り込んで、財政健全化目標の達成や社会保障と税の一体改革の実現に向けた検討というものを行って、その結果を踏まえて必要な措置を講ずるということを示したものであります。したがって、一号と二号とあわせて規定することによりまして、政府としては、軽減税率制度の導入に当たっての安定的な恒久財源の確保について揺るぎない姿勢というものを明確に示しているというように御理解いただければと存じます。
○宮本(徹)委員 それは、姿勢を示しているのはそうなんですけれども、私がお伺いしたのは、財政健全化目標との関係ということを言っているわけですから、先日総理が答弁された、二〇一八年度以降、消費税のさらなる引き上げについて選択肢として含むというのは、当然、財政健全化目標は二〇二〇年度までの目標なんですから、そこまでに引き上げるということも選択肢として含むということですかということをお伺いしています。
○麻生国務大臣 私ども、この文書を策定いたしましたときのことでいきますと、御指摘の消費税制度を含むとの文言につきましては、消費税制について軽減税率制度というものの導入といった重要な制度改革を行ったことから、このことは税制全体のあり方というものを検討する際に対して十分に踏まえるという必要があろうということを確認的に示したものだと思っております。いずれにしても、こうした検討に基づく具体的な内容につきましては、何らかの措置を講ずるか否かを含めまして現時点において決まっているわけではありませんので。本条を踏まえていろいろ御相談をさせていただきつつ、今後、歳入歳出両面にわたってしっかりと検討してまいりたいと考えておるのであって、一〇%超への引き上げというのを検討するということを今考えているわけではありませんで、現時点で私どもは具体的な案が頭にあるわけではありませんので、それ以上のお答えのしようがございません。
○宮本(徹)委員 いや、現時点で頭にないんだったら、こういうことは書く必要は全くない文言だというふうに思うんですけれども。総理は明確に答弁で、議事録が残っていますけれども、二〇一八年度以降の消費税増税も選択肢として含むということはお答えになられました。でも、含むということで、必ず上げることではないと。当然、それは何も決めていない状態だということです。ただ、この文言の意味は、含むということだということをお答えになったわけです。文言の意味について私は聞いているわけですよ。何も考えていないと言いながら、二〇二〇年度までの話がこの法案に入っているわけですよ。財政健全化目標との関係、プライマリーバランスを黒字化することとの関係の文言がここに入っているから私は聞いているわけです。そうすると、これを素直に読めば、財政健全化、消費税増税の選択肢というのは、二〇二〇年度までに引き上げることを考えている、それも選択肢としてあるということになるんじゃないですか。
○麻生国務大臣 今お話がありましたけれども、財政健全化目標の達成というものをこれは政府に義務づけるものではないのは、この文章から見てもはっきりしております。財政健全化目標というものはこれは基本方針の二〇一五において決定されたものなんですが、この条項で、軽減税率制度の導入に当たって、財政健全化目標との関係で必要な措置を講ずることは政府に対し義務づけるものであるということで、財政健全化目標との関係で必要であると合理的に判断される措置がとられた後、仮に、予見困難な事態の発生などやむを得ない事態等により、結果的に財政健全化目標が未達ということになるような場合にはどういったことになるか。これは、本条に違反しているではないかというようなことにはならないようにしておかねばならぬとは思っておりますが、今申し上げましたように、いろいろなことを考えた上で申し上げておりますので、今の段階でその辺のことを考えておるわけではないということだけははっきりしております。
○宮本(徹)委員 いや、今の段階で考えていないんだったら、なぜこんな文言が入っているのかということになるわけですね。総理は、一八年度以降の消費税増税も選択肢として含むと明確に答弁をされました。そして、この文言というのは、財政健全化目標との関係ということで書かれているわけですから、それは当然、文言の意味でいったら、二〇二〇年度までということに普通に日本語を読めばなってしまう法案なんじゃないですか。この文章を誰がつくられたのかというのはありますけれども。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。この附則百七十条の趣旨でございますが、まず第一号に、先ほど大臣から御説明いたしましたように、二十九年四月からの軽減税率制度の導入に先立って、安定的な恒久財源をしっかり確保するということで、二十八年度末までに法制上の措置を講ずるということを示しているわけでございます。二号につきましては、軽減税率制度が導入された後、その後に、経済・財政再生計画に基づく平成三十年度に中間評価が行われるということでございます。その際に、この計画が策定された後に生じた事態として、軽減税率制度の導入、あるいはそれに伴う安定的な恒久財源を確保する、そういう新しい流れがあるということもきちっと織り込みながら、財政健全化目標の達成であるとか一体改革の実現といったものの所要の検討を行って、その結果、必要とあらば必要な措置を講ずるという形になっているわけでございます。基本的に、消費税について二十九年四月に軽減税率制度を導入する前後において、財政健全化について遺漏なきようきちっとした形で政府において検討するということをあわせて規定しているということでございます。その際、具体的にどういう措置を講ずるかというのは、それぞれの段階における検討に委ねるということでございますけれども、今、政府として具体的な案があるわけではないということは、常々申し上げているところでございます。
○宮本(徹)委員 だから、ここには消費税を含むというふうにわざわざ書いているわけですよね、消費税を含む改革と。これは消費税増税も選択肢として含むということだと。今決めているわけじゃないけれども、選択肢として含む、そう言われた総理の答弁を踏まえれば、佐藤局長、これは二〇二〇年度までにとる措置のことを言っているわけですよね。財政健全化目標との関係というのはどういう意味ですか。
○佐藤政府参考人 まず申し上げますと、「消費税制度を含む」というところでございますが、これは、念頭にありますのは、消費税制につきまして軽減税率制度の導入といった重要な改正を行ったということで、税体系に一定のインパクトを与えているということでございますので、今後、第二号に沿って検討するときでも、そういう大きな変更を行ったこともしっかり踏まえて検討するということをいわば確認的に書いているというのが基本でございます。一方、第二号の精神は、健全化計画の中で、中間評価をしながら財政の状況を見て、本当に必要なときには歳出歳入についての適切な処置を講ずるということでございます。健全化目標の二〇二〇年度の目標というものが前提となりながら財政健全化計画ができているということでございますので、そうしたスコープの中でこの問題の検討がなされていくということでございます。検討の位置づけが書かれているということでございます。
○宮本(徹)委員 ですから、二〇二〇年度までに検討するということで間違いないわけですよね、この選択肢も。それは、やるやらないというのは今は何も決まっていないわけですけれども、二〇二〇年度までにやることを検討するということですよね。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。この第二号は、経済財政健全化計画というものをベースに考えておりますので、主としたスコープは二〇二〇年の黒字化目標ということでございますが、その中間年の二〇一八年度におきまして中間評価を行うというところがキーでございまして、その時点において、消費税制について軽減税率制度が導入され、必要な財源措置が講じられるということがあったというような変更も含めて、その時点での、二〇一八年度の段階でもう一度しっかりと中間評価をして、その時点の判断において所要の措置が必要であればやるというようなことを書いているということそのものでございます。
○宮本(徹)委員 つまり、今の佐藤局長の答弁と前回の予算委員会での安倍総理の答弁を重ね合わせると、一〇%を超える消費税のさらなる増税も選択肢とした検討は、二〇一八年度の中間評価を踏まえて始まると。その視野は二〇二〇年度までだということでよろしいですね。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。この第二号におきましては、あくまでも二〇一八年度におきます中間評価、そのことにおいてさまざまな要因を総合勘案して検討しなさいというふうに政府に対して義務をかけているということでございますので、その中身についてはその時点で判断されるということだと思います。
○宮本(徹)委員 つまり、義務をかけているということですよ。義務の中身の一つとして、総理は、一〇%超への消費税増税が選択肢として入っていると、そういう関係になるわけですよ。ですから、私は、わざわざこんな文言をこの法案に入れるというのはとんでもない話だと思いますよ。一〇%に上げていいのかどうかということを、今国会は本来だったら増税一年前の国会ですから、やらなきゃいけないですよ。こんな経済状況、国民生活が大変な中で、一〇%に上げることの是非を議論しなきゃいけないときに、その先の増税の枠組みまでレールとして敷いちゃっているわけですよ。わざわざ二〇二〇年度の財政健全化目標との関係で消費税だけを特記させ、数ある税制の中で消費税だけを、消費税を含むという形で書いてやっているわけですよ。実は、過去の税制改正の法案を私もひっくり返して見ましたけれども、同じような文言が入ったことがありました。二〇〇九年の所得税法改定案の附則百四条、こういう文言でした。「消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。」こういう文言が入って、その後どうなっていったかというと、実際には消費税の八%、一〇%への二段階増税が決められるという経過になったわけですよね。ですから、いつも、消費税を上げる前に次の増税に向けたレールを敷くような文言を法案の中にこっそり盛り込んでいる、こういうことなんじゃないですか。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。繰り返し申し上げていますように、第一号、第二号、両方あわせまして、今回、軽減税率を導入することに伴う安定的な恒久財源をしっかり確保するという政府の姿勢をしっかりと示す、あるいは、それに対して法律において政府にその検討をきちっと義務づけるということでございます。しかも、それは、二十九年四月の前という段階と軽減税率が導入された後のさまざまな影響ということもしっかり織り込むということが、恐らく大きな制度変更ですから必要であろう。財政健全化等々あるいは一体改革等々、いろいろやるべき事柄があるわけでございますが、そういうものに対する影響をしっかりと勘案して検討しなさい、こういう趣旨でございます。それで、先ほども答弁申し上げましたが、「消費税制度を含む」というところをあえて書いておりますのは、繰り返しになりますけれども、今回の法案におきまして、消費税制について軽減税率制度の導入という大きな政策変更を行っている、制度の大きな変更を行っておりますので、そういうものが所得税とか他の税の税体系にもどういう影響を与えるかというようなことも十分考える必要があるだろう。例えば、消費税の軽減税率制度の導入を行うということを織り込んで、それでは税制全体としての再分配機能をどう考えたらいいかとか、そういうふうな問題まで事柄は発展していくわけでございますので、今回は軽減税率制度を導入するということを内容とする法案である以上、その趣旨を明確にするのが得策であろうということで御提案申し上げているところでございます。
○宮本(徹)委員 そうでしょう。所得税だとか法人税だとか、そういうことを書いてないんですよ。消費税を特記して、軽減税率を導入したから標準税率をもっと上げようじゃないか、こういうふうにしかこの文言は普通に読んだら読めない文言になっているわけです。内閣府の試算では、名目成長率三%という大変甘々の試算でもプライマリーバランスの黒字化には六・五兆円足りない、ベースラインケースでは十二・四兆円足りないということに二〇二〇年度時点でなっているわけですよね。ですから、そういうものを、今の段階からそこに向かって消費税増税も選択肢にしてしまうような文言を法案に盛り込んでいくというのは間違いだ、やめるべきだということを私は厳しく指摘しておきたいと思います。それで、自民党の谷垣幹事長は、この間、ちょっと前ですけれども、自民党のインターネット番組で軽減税率の導入についてこうおっしゃっています。消費税の将来を考えたとき、インフラ整備ができたみたいなことじゃないか、こういうふうにおっしゃっていました。それから、きょうはもう退席されたんですかね、公明党の税調会長の斉藤鉄夫さんは東洋経済のインタビューで、「将来、消費税率は一三から一五%、ひょっとすると欧州のように二〇%になっているかもしれない。そのときでも食べ物は八%に据え置かれる。」「今回、たった二ポイントの軽減だが食べ物の税率を一ケタに固定したことは非常に大きい。」こういうふうに述べておられます。ということは、結局、今度の軽減税率というのは再々度の消費税の大増税に向けた準備だというのが与党の幹部の皆さんの認識なのかなというふうに私は思ってしまうんですけれども、その点、麻生大臣、どうですか。
○麻生国務大臣 宮本先生の御見解はわかりました。私どもとしては、消費税の軽減税率制度というものにつきましては、税制抜本改革法の第七条に基づいて、消費税率の一〇%への引き上げに伴うときの低所得者への配慮として導入することであって、今の御指摘というのは少し違うのではないかと思っております。なお、ほぼ全ての人が毎日購入をしておられます酒類及び外食等々を除く飲食料品等の税率を八%に据え置くことによって、所得の低い方ほど収入に占める消費税負担の割合が高いという、いわゆる消費税率の逆進性というものを緩和するということであって、日々の生活の中で、買い物の都度、痛税感の緩和を実感していただくということが大事なものであって、いろいろ他に御意見はあろうかと思いますが、私どもはこの痛税感の緩和というのにより重きを置いております。
○宮本(徹)委員 いや、麻生大臣はそうおっしゃるわけですけれども、さっきは私の見解を述べたというよりも、与党幹部の皆さんの発言を私は紹介したわけですよ。結局、軽減税率の導入で標準税率を引き上げるときの抵抗感を減らして、さらに増税しやすくしよう、こういう考え方が見え隠れしているということを言わざるを得ないと思います。ちなみに、今回の百七十条の文言と同じことを言っていた方がいらっしゃいます。経団連の榊原会長はこうおっしゃっています。二〇一八年度で一度中間的な再評価をする、消費税増税は選択肢としては二〇一八年時点では一つの可能性としては排除しないということで、何か百七十条の文言を説明しているかのような発言があります。昨年一月一日の経団連ビジョンを見ますと、法人税については、二〇一五年度から引き下げを開始して、早期に二九%にして、その後、二〇一八年度から一%ずつ引き下げて、二〇二一年度には二五%。それから、消費税については、二〇一七年度に一〇%まで引き上げ、一八年度に二%、一九年度からは二五年度にかけて一%ずつ引き上げ、最終的には一九%。こういう財政再建プランも試算的なものとして掲載されております。今回、法人税率の早期引き下げという点では経団連の要望を丸のみしていったわけですけれども、それに続いて、消費税増税についてこの経団連のプランを丸のみしよう、そういうことなんじゃないですか。
○麻生国務大臣 これは、今のは経団連が平成二十七年一月に公表されておられましたいわゆる「「豊かで活力ある日本」の再生」というビジョンにおいて、「中長期的に持続可能な財政構造を確立するためには、消費税率を欧州諸国の水準にならい、二〇三〇年までに一〇%台後半に引上げる必要がある。」ということを書いておられる、このことを読んでおられるんだと。そういうことですね。政府といたしましては、中長期的に持続可能な財政構造を確立するということのためには、まずは歳入増と歳出の抑制を組み合わせて、二〇二〇年度までにプライマリーバランスというものを黒字化することを目標として掲げておりますのは、たびたび申し上げてきているとおりであります。成長戦略を着実に実施するということで、引き続き経済再生に取り組んでまいりますとともに、経済・財政再生計画で示しております目安に沿いまして、改革工程表というものに基づいて歳出改革というものを断行し、同時に、二〇一八年時点での進捗状況を評価し、必要な場合には歳入歳出の追加的な対応を検討するということといたしております。こうした具体的な方針のもとで、我々としては、二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化に取り組んでまいりたいというのは基本的な姿勢であります。
○宮本(徹)委員 私もいろいろなところで総理や麻生大臣に質問してきましたけれども、いつも社会保障財源は消費税がふさわしいということをおっしゃるわけですよね。そういう姿勢をとっている限り、際限なく消費税が増税していくということになってしまいますよ。だから、ここの考え方を私は改めていただきたいというふうに考えております。低所得者ほど消費税というのは負担が重いというのは誰もが知っていることなわけです。そして、今の日本の経済の状況からいっても、本当に来年四月からの消費税増税というのはあり得ないと思います。きのう、家計調査が発表になりました。私もざっと見ました。二人以上世帯の勤労者世帯の消費支出は、名目で一・一%の減少、実質二・一%の減少ということでした。増税後、二〇一四年に消費支出が落ち込んで、二〇一五年、それよりもさらに落ち込むということになりました。麻生大臣は、消費がさらに落ち込んだというのは、原因についてはどうお考えですか。
○麻生国務大臣 これは一概に消費税が上がったから落ちたとだけ、それだけ単純なほど経済というのはシンプルなものではありませんので、私どもとしては、いろいろなもの、複合的なものだということで、これをずっと説明するとえらい時間がかかると思いますので、それは避けられたいと思っておられると思いますのでそれを長々と申し述べるつもりはありませんが、一概にこれが答えですというような単純なものではないと存じます。
○宮本(徹)委員 複合的にいろいろな要素はありますよ。将来不安の問題もあれば、いろいろな問題はあると思いますけれども、消費税増税の影響が長引いているのも一因だという御認識はありますか。
○麻生国務大臣 消費税が上がったというのに関して、私どもとしては、これは間違いなくそういったものの影響というのは否定できないものがある。これは最初から、反動減とかいう言葉もありますし、駆け込み需要というものもありますし。いろいろなもので、こういった税というものをさわった場合、私どもとしては、直接、間接的な影響が出るということは確かだろうと思っております。
○宮本(徹)委員 ですから、これは消費税を上げたことがやはり大きな要因になっているのは私も間違いないと思うんですよね。いろいろな指標はありますよ。名目賃金だとか実質賃金だとか、経済を見るいろいろな指標はありますけれども、生活する立場からすれば、手取りがふえているのか減っているのかということと、物価が上がっているのかどうか、この二つが、暮らし向きがよくなっているのか大変厳しくなってきているのかというのを感じるところだというふうに思います。家計調査を見ますと、実質可処分所得という点で見れば、若干マイナス、〇・一%ということになっております。中身を見ると、社会保険料はやはりずっとふえ続けていますよね。当然のことですけれども、この間引き上げてきましたので。収入に対する税と社会保険料の割合というのは、十年前一五・九%、二〇一五年は一八・七%で、三%近く上がっているということになります。さらに消費税も三%上がったということですから、実際の可処分所得は家計調査に出ている数よりももっと落ち込んでいるということになるというふうに思います。それから、家計調査を見て、あとエンゲル係数も出ておりました。勤労者世帯の収入五分位で、第一階級、一番所得が少ないところのエンゲル係数は、二〇一二年が二三・九、二〇一三年が二四・二、二〇一四年が二五・一、二〇一五年が二六・一ということで、毎年のようにエンゲル係数が上がり続けているということです。家計調査一つ見ても、低所得者ほど生活が厳しさを増しているというのは、私は一目瞭然だというふうに思います。ここに消費税一〇%に引き上げたら、暮らしに対しても、そして日本経済に対しても深刻な影響を与えるということになるんじゃないですか。
○麻生国務大臣 私どもはたびたび申し上げておりますように、我々としては、長期的に見て、いろいろな意味で、まず一番超長期的には人口問題だと思いますが、少子高齢化が避けられぬという状況で、高齢者がどんどんふえる。二〇三〇年には団塊の世代も軒並み七十五歳ということになってくるというような事態になってくれば、それに対するいわゆる介護の話とか社会保障全体のことを考えれば、税と社会保障の一体改革ということを一番最初にこれは申し上げて、三党で合意してもともとはスタートしたんだと思っております。私は、与野党で合意してこの種のことができたというのは、世界の先進国の中では日本ぐらいのものだと思っていますから、そういった意味では非常に大きなものだった、そう思っております。加えて、それがきちんとすることによって、低所得者というところが一番それによってカバーされるところだと思いますので、この消費税の増税によって社会保障の部分が充実されていくというのが一番大きなところでありまして、その点を別にしていろいろなことが出てくるんだとは思いますが、一番ここが大事なところなのであって、私どもとしては、長期的に見てこの点が一番、我々として断固後世の人のために国民皆保険等々のお話をきちんと残しておく、それが我々の務めだと。その意味で、この消費税というのは非常に大きなものだと思っております。
○宮本(徹)委員 いや、社会保障で低所得者を支えるためだということをおっしゃいますけれども、例えば非正規の若い世代に対しては、社会保障の充実のメニューというのはなきに等しいじゃないですか。年金生活者だとか低年金生活者の底上げとか、入っているものはありますよ。ですけれども、そこから漏れている人たちというのはたくさんいるわけですよ。そういうところには一方的に増税だけがやってくるということになります。ですから、本当に、黒字の大企業には減税をしていく、庶民からは消費税増税、こういうやり方は暮らしも経済も壊す絶対やってはならない道だということを申し述べまして、時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。