2016年2月29日 財務金融委員会 参考人消費税中止求める

20160229財金参考人質疑

衆院財務金融委員会で2月29日、特例公債法案と所得税法等改正案についての参考人質疑が行われ、日本共産党の宮本徹、宮本岳志両議員が質問に立ちました。
特例公債法案について静岡大学の安藤実名誉教授は、予算の単年度主義に反し、財政法違反の赤字国債発行を常態化する法案であり、認められれば国会の自殺行為になると批判。「公債発行によって税負担軽減の恩恵を受けてきた財界が相当の税負担をすべきだ」とのべました。
宮本徹氏が、政府が赤字国債発行を積み重ねてきた歴史的要因を質問したのに対し、安藤氏は「経団連などの財界が、(時々の)内閣へ赤字国債発行の働きかけや圧力を繰り返してきたからだ」と答えました。
宮本徹氏は、赤字国債発行の一方で伸び続ける軍事費を「聖域にしてはならない」と批判し、歳出改革への意見を求めました。安藤氏は「憲法第9条を守り平和を発信すべき日本で、軍事費を増やしていくことは問題だ」と答えました。
全国商工団体連合会の太田義郎副会長は、米穀業を50年営んできた経験や、各地の中小業者の声を交えながら、消費税の「軽減税率」やインボイス導入に関する問題点を告発。インボイスを前提とする「軽減税率」の導入で事務負担に耐えられず、廃業・倒産に至る業者が増え、免税業者を取引から排除することを指摘。さらなる低価格販売競争を招き、規模の小さい中小業者ほどますます消費税を転嫁できず、廃業に追い込まれることになるとのべました。
宮本岳志氏は、消費税率10%増税が日本経済に与える打撃についてたずね、太田氏は「大企業が最高利益を上げる一方で中小企業の7割が赤字決算。内部留保が国民にしたたり落ちず格差が広がっている」と増税中止を求めました。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士主任研究員は、「消費税率10%への引き上げは消費を下向ける。来年4月の消費税増税は凍結すべきだ」と批判しました。

以上2016年3月1日付赤旗日刊紙より抜粋

≪第190回 財務金融委員会第8号 2016年2月29日第9号≫

○宮下委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。きょうは、お忙しい中を参考人の皆様に御出席いただいて、ありがとうございます。まず、末澤参考人と片岡参考人にお伺いいたします。今、大量の赤字国債を発行しているわけですけれども、これは超低金利ということがある意味大前提になっているというふうに思います。仮に金利が一%上がれば、利払い費は、一年目は一兆円、二年目は二・二兆円、三年目は三・七兆円ということで、雪だるま式にふえていくことになるわけですよね。そういうことを考えますと、今日銀がやっている異次元の金融緩和の出口戦略がうまくいくのかどうかというのは、日本の財政の命運もかかる仕事になるんじゃないかなというふうに考えております。そういう点では、日銀の今の異次元金融緩和政策の出口戦略についてどうお考えなのか、お聞かせいただければと思います。
○末澤参考人 もともと、今回の異次元緩和が二〇一三年四月四日に導入されたときは、本来は二年でむしろ出口の方向性が出てくるということだったと思うんですが、これはもう丸三年たっているわけでございまして、やはり一般論を申し上げると、現状の政策が長く続けば続くほど、より出口は難しくなる。これは欧米の過去のケースでも同様だと思うんですね。そういう意味では、先ほど申しましたように、出口に向かえるような状況を、その他の政策、特に成長戦略等でしっかり推進していって、普通に日本の潜在成長率が上がり、結果として雇用、賃金等もふえ、いわゆるディマンドプル型の物価上昇に持っていく、これが極めて重要というふうに考えております。
○片岡参考人 お答えいたします。先ほど末澤参考人がおっしゃった部分に関連しているところもあると思うんですが、デフレから脱却するのがおくれれば、それによって出口のリスクというのが高まるのはそのとおりだと思います。逆に、ではどうしたらいいのかということなんですけれども、デフレから脱却するためには、金融政策と財政政策、それから成長戦略、三本の矢全てを使ってデフレから脱却する、これが二十年間デフレに苦しんできた日本経済としてはやらなければいけないことだと思うんですね。ですので、金融政策の足を財政、成長戦略が引っ張らないような状態にする、こういうことがむしろ逆に出口政策のリスクを低めることにもつながるんじゃないか、こういうふうに認識しています。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。安藤参考人にお伺いいたします。先ほどのお話の最後で、原因者負担論というお話がありました。私も若造なもので歴史には疎いんですけれども、原因者ということを考えた場合に、赤字国債がそもそも発行されていく過程というのがあると思うんですけれども、発行に至る経過、あるいは赤字国債を積み増してきた経過、こういうことを見た場合の歴史的責任はどういうところにあるのかなというのをお伺いしたいと思います。
○安藤参考人 公債の発行については、まず、一九六四年の九月に当時の池田総理大臣が病気になりました。その後が佐藤内閣ということになるわけですが、佐藤首相に、当時のいわば財界の大御所と言われたコバチュウこと小林中さんが国債発行を入れ知恵したというふうに言われています。これは、小林さんが自分の腹心の者を佐藤首相の特別秘書に送り込んでそういうことをやったということが報じられております。そういう意味で、公債発行は当時の福田大蔵大臣の発案だというふうに普通思われているようですが、実際は、そういう財界筋からの働きかけがあった、そういう事実が一つあります。それから、赤字公債の発行のときですけれども、これは、財界が総力を挙げて当時の三木内閣に圧力をかけた、そういうことがあります。まず経団連の土光会長、日経連の桜田武会長、日本商工会議所会頭の永野重雄さん、経済同友会代表幹事の佐々木直さん、そういう財界の首脳が、それこそこぞって、当時の三木首相、それから自民党の幹事長は中曽根さんでしたけれども、そこへ直接、赤字国債の発行に踏み切るべきだ、そういう圧力をかけたということがあります。これを受けて、中曽根幹事長は愛される国債にしたいと言ったということが新聞で報じられております。そういうことで、公債発行政策については財界の働きかけがあって、それを当時の内閣が実現していった、そういうふうに考えております。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。出発点が財界だったというお話でした。ここまで積み増してきた、まあ、出発点は財界だということなんですけれども、さらに、国と地方を合わせて一千兆ということになっていますけれども、ここまで積み増してきた責任というのはどうお考えでしょうか。
○安藤参考人 これは、政府と国会は責任があると思っています。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。それから、引き続いて安藤参考人にお伺いしますが、一九七六年の予算委員会での渡辺法政大教授の公述も引用されて、それから、その発言の、赤字国債の発行についてのやり方についての恥知らずなことという言葉も引用されておりました。当時の議論を見ると、歳出をまず決めて赤字国債の発行額を決めるのは、赤字国債発行の限度をなくすものだという批判がされているわけですけれども、そうすると、基本的に、赤字国債を組む場合の考え方としては、歳出を出発点にするんじゃなくて税収が出発点なんだ、年度途中で補正を組むべきだというのが当時のものを見ると出てくるんですけれども、これは今日でも言えることなんでしょうか。
○安藤参考人 最初に赤字公債を発行したとき、一九六五年の場合はそういうやり方をやりました。つまり、年度の途中で歳入欠陥が生じた、それの穴埋めとして赤字公債を発行する、これが筋であると思います。ただ、いかにも今の日本の財政状況から見ますと、それでは多分予算を組めないんだろうと思いますね。そういう意味で、そういう事態は好ましくない、非常によくないということを自覚しながら、限度を決めてやるしかないのではないか、当面それしかないのではないかというふうに思います。
○宮本(徹)委員 引き続き安藤参考人にお伺いしますが、公債は租税の前借りだというお話がありました、いずれ税金で返さなきゃいけないと。それから、公債の場合は、発行すれば、今はマイナス金利でありますけれども、一般的には利子がどんどんつくわけです。そうすると、赤字国債の発行がふえればふえるほど、国債の所有者に利払いという形で所得が移転していくということになると思うんですね。そうすると、国債がふえればふえるほど、税制のあり方としては応能負担を一層強めなきゃいけない、こういう改正が必要になるという理解でよろしいんでしょうか。
○安藤参考人 その理解で結構だと思います。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。あと、これはお三方にお伺いしたいと思います。片岡参考人の方から、きょうのお話で、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化については、そこにこだわる必要はないというお話があったというふうに思います。長期債務残高のGDP比が下がっていく状況が生まれればいいんだ、名目GDPの伸びが金利を上回っていればいいんだというお話があって、私もそれはそのとおりだなというふうに思います。ただ、今回の法案には、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化という文言が実は入っていまして、それがあるから野方図に赤字国債が出るわけじゃないんだという仕掛けになっているわけです。ただ、何が何でも二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化ということをやろうとしたら大変なことが起きると私は思っています。政府の成長シナリオということでやっても、プライマリーバランスの黒字化には六・五兆円足りない、ベースラインケースでいえば十数兆円足りないということになっています。一方で、今回国会に出されています所得税法等の税制改正の法案では、二〇一八年度以降に中間評価をやって、消費税を含む税制の構造改革を行うという文言がありますね。私はこの文言の意味を総理に聞きましたら、それは、二〇一八年度以降、消費税増税ですね、一〇%を超える増税も選択肢に含むんだというお話だったんですよね。そうすると、この二つの法案をくっつけて並べると、二〇二〇年度にはプライマリーバランス黒字化だ、そこに向かって、二〇一七年度は一〇%に上げて、その先には十数%に上げる道というのが敷かれていくことになるんじゃないか。そうすると、税の逆進性は一層強まりますし、ましてや、この間の消費税増税が与えた日本経済そして国民の暮らしへの影響というものを考えたら、それはやってはならない道だということを私は思っているんです。そういうことを考えると、法案に二〇二〇年度の黒字化目標というのが書かれているのは非常に問題があると思うんですけれども、これをお三方に御意見をお伺いしたいと思います。
○末澤参考人 今回、なぜ二〇二〇年度にPBを黒字化しなきゃいけないか、こういう前提を考えますと、先ほど御説明しましたように、二〇二〇年度に入っていきますと、団塊世代の方々が徐々に七十五歳、いわゆる後期高齢者の年代にお年を召されるわけですね。最終的に二〇二五年の年初には皆さん七十五歳でございまして、先ほど申しましたように、医療費、介護給付費の相当急激な増加も見込まれる。やはり、少なくともそこまでにPBを黒字化する。これは、黒字化したとしても、別に財政が再建されるわけじゃないわけですね。債務残高を別途引き下げていくことが必要ですから、これはもう本当に最低限の目標だと考えております。そういう意味では、今回の特例公債法が五年間という期限つきというのも二〇二〇年度のPBの黒字化が前提であり、これは極めて重要な目標であり、そういう規定だというふうに考えております。
○片岡参考人 先ほど来からもお話をしていますように、健全化自体、プライマリーバランスの黒字化というものを二〇二〇年度に達成する、こういう形で目標を立てられるのは結構なことだと思うんです。ただ、経済の場合は生き物でございまして、実際の足元の景気の状況ですとか、もしくは、経済成長するというのは政治家の先生方がやるのではなくて我々国民がやるわけですね。ですから、これは、例えば世界経済のリスク要因が高まってくるとか、いろいろな要因がありますから、当然、計画したとおりに淡々と進むというわけではありません。ですから、そうしたところをお考えいただいて、私自身は、二〇年度は目指すとしても、実際、では達成できなかったらそれでだめだというわけではなくて、できる限り早いタイミング、二〇年代の早いタイミングで黒字化の方向に向かっていけばいい。逆に、過度に、ギリシャのように五年間で赤字を黒字にするようなことをしてしまうと、そうすると、デフレが起こり、名目所得は減り、そして失業率は高まって、国民経済生活が破壊されてしまうんですね。その中で、では財政健全化が達成できたかというと、長期債務残高の名目GDP比は逆に発散しているわけであります。だから、こうした例も参考に、バランスをとった形で健全化をすべきだというふうに考えています。
○安藤参考人 経済は確かに生き物だと思います。だから、決めようといったってなかなか決められない。ところが、税制は決められるんですね。消費税の引き上げを想定しているということになると、これは国民生活にとって非常に問題だと思います。税制については、やはり応能負担原則、そういうようなことを追求すべきだ。当然、負担すべき者が負担をする、そういう方向を目指すべきだ、そういうふうに考えます。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。あと、最後の一問ぐらいになるかと思うんですけれども、歳出の改革についてもお伺いをしたいと思います。私は、当委員会でも予算委員会でも、歳出の問題で、安倍政権のもとで防衛費が伸びていることを取り上げてまいりました。一つは、後年度負担という形で、それまで防衛費の後年度負担は、安倍政権以前の十年間ぐらいは三兆円でずっと推移していたんですけれども、それが今、今度の予算で四兆六千億を超えるということで、急激に増加するということになっています。それから、中期防衛力整備計画ということで、二〇一四年度から五年間で、閣議決定では二十三兆九千七百億円ということが決まった。これは毎年〇・八%ずつの伸びなんですけれども、それを上回る伸びをこの三年間繰り返していまして、私の計算では、この三年目で既に五千億円オーバーということになっています。ですから、こういうところを聖域にしてはならないということを先日も麻生大臣にも意見を述べさせていただいたわけですけれども、歳出改革といった場合に、いろいろなところに手をつけなきゃいけないと思いますけれども、防衛費も含めて、皆さんの御意見をお聞かせいただければと思います。
○末澤参考人 今回こちらの委員会に招致されるに当たりまして、一九七五年十二月三日の大平大蔵大臣の答弁書、これはたしか官報で六十六ページほどございまして、ちょっと読み直させていただいたんですが、その中でも同じような表現がございまして、大平当時の大蔵大臣、元首相でございますが、防衛費も当然聖域ではないというふうにおっしゃっています。ただし、私は、ある面、予算全体をより効率的な観点で、やはりコストとリスク、コストとベネフィットの管理をすべきだと考えておりまして、そういう面では、昨今のいわゆる地政学的リスクを含む世界の安全保障状況は相当変わってきているのも事実でございます。また、先ほどの後年度負担でございますが、大量に発注すれば安く買えるのであれば、効率的な観点では妥当だ。つまり、後年度負担が大きいからどうこうではなくて、より効率的に、コストとリスク、コストとベネフィットの管理を私は徹底すべきだというふうに考えております。以上でございます。
○片岡参考人 歳出改革についてのお話ですけれども、軍事費については私は専門外でございますので、一般論として申し上げれば、名目GDPと呼ばれます名目所得自体はだんだんだんだんふえてきているんですね。ですから、この名目所得に対して、例えば、必要な歳出みたいなところも、もちろん現下の財政の厳しさもありますけれども、必要なところは適度にふやしていく、こういったところも必要なのかなというふうに思います。あと、歳出改革ということで申し上げれば、先ほどもちらっとお話をさせていただきましたけれども、特別会計の改革といったようなところは、私は、実はまだかなり切り込む余地があるんじゃないかというふうに思っています。例えば外為特会もそうですし、その他にも特別会計はございますけれども、こうしたところは剰余金も含めてお金が非常に潤沢なところもありますので、これは足元の財政状況を考えると合理化をするということも重要なんじゃないか、こういうふうに思っています。
○安藤参考人 軍事費の問題というのは、これは一旦動き出せばそれ自体が非常に膨張する、そういう経費だと思っています。とりわけ継続費であるとか後年度負担だとか、いわゆる単年度主義の例外、そういうものを利用してふえていく、あるいは先取りをしていく、そういう経費なわけで、これは非常に危険だ。私は、日本は憲法第九条をしっかり守って平和ということを世界に発信していく、そういう立場を守るべきだというふうに思っておりますので、そういう日本が軍事費をこの非常に財政事情の苦しい中であえてふやしていく、そういうことは非常に問題だというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 時間になりました。終わります。きょうは、お忙しい中、本当にどうもありがとうございました。