衆院国交20160520 日本共産党の宮本徹議員は25日の衆院財務金融委員会で、税逃れのために富裕層が相続税のない国へ移住していく問題を取り上げ、対策を求めました。
現行法では相続人、被相続人とも国外に5年を超えて居住していれば、国外財産については相続税、贈与税がかかりません。
宮本氏は、ベネッセホールディングス創業者が株式や居住地を贈与税、相続税がないニュージーランドに移したケースを紹介。「普通の庶民は逃げたくても逃げられない。不公平感は大きなものがある」と批判し、居住期間の要件を見直すなど、意図的な相続税逃れの対策を求めました。
財務省の佐藤慎一主税局長は、アメリカ、オランダなど、国外の居住期間の要件が長い国を紹介。麻生太郎財務相は「諸外国も苦労している」「(対策の)努力を引き続き検討していかなければならない」と述べました。
宮本氏は、法人税引き下げ競争が各国の財源を奪っている問題も追及。経済協力開発機構(OECD)が策定した「税源浸食と利益移転」(BEPS)プロジェクトで課税の穴を埋めるのと同時並行で、各種税金の引き下げ競争をやめさせるため「日本政府がイニシアチブ(主導権)を発揮する必要がある」と主張しました。
麻生氏は「基本的な問題意識は共感する」と述べ、「まずはBEPSでスタートする」と答えました。

2016年5月27日付赤旗日刊紙より抜粋

 

≪第190回 衆院財務金融委員会第19号 2016年5月25日 議事録≫

○宮下委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。きょうはまず、国際的な課税逃れについて質問します。タックスヘイブンには三十兆ドルもの資金が蓄積されていると言われております。OECDは多国籍企業だけで年間一千億ドルから二千億ドルの税逃れがあると試算をし、欧州委員会は域内で年間五百億から七百億ユーロの税収を失っていると試算しております。日本政府としては、推計が難しくて試算は行っていないというきのうの参議院での答弁がありました。ですので、ちょっと、桁でどれぐらいの税収が失われているのかというのをお伺いしたいんですが、兆の単位と見ているのか、十兆の単位で見ているのか、あるいは、数千億の単位と見ているのか、数百億の単位と見ているのか、お答えいただけますか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。今先生から、いわゆるオフショアの軽課税国などへの投資によって日本の税収がどの程度減額になっているのかというお尋ねでございました。先ほど先生がお触れになりましたOECDにおきましては、BEPSプロジェクトにおきまして、国際的な租税回避による法人税の失われた税収の規模を世界全体で一千億ドルから二千四百億ドルと推計しております。ただ、OECD自身がこの試算を出すときに言っているとおり、推計の基礎となるデータですとか試算方法につきましては課題が多く残されていて、実態を反映した結論を示すためにはさらなる検討が必要という留保をつけて出しているところでございます。日本からの投資につきまして、例えば、収益の総額がどれぐらいであるかということが不明であったり、また、個々の納税者の事実関係や適用される税法の規定がそれぞれ異なっているといったようなことがございまして、現時点で課税当局が保有するデータでは推計を行うのに十分ではありませんで、今のところ推計は行っておりません。したがいまして、お尋ねの、どの程度のオーダーかということについてもなかなか申し上げられないということを御理解いただきたいと思います。
○宮本(徹)委員 けさの読売新聞を見ていましたら、フランス当局がグーグルを家宅捜索して、行き過ぎた節税策での課税逃れがあったというので二千億円課税を求めたというのも出ていました。こういう報道を見ていますと、やはり日本で失われている税収も兆の単位だろうなというふうには私も思います。あらあらでも推計は出す努力を、大変だと思いますけれども、やった方がいいと思うんですね。これだけ税逃れがやられているのかということが国民的な認識になりましたら、それを許さない世論ができるわけですよ。多国籍企業や富裕層の皆さんの課税逃れを許さない仕組みを前進させていく上では、そういう世論というのが一番大きな力になると思いますので、あらあらでも推計を出す努力を求めたいと思います。もう一つ、海外に五千万円を超える資産を持つ日本の居住者に国外財産調書の提出義務づけが始まって、二〇一五年三月提出期限分で八千百八十四件。実際は十万人ぐらいいるんではないかという指摘もあるわけですが、国税庁としては実際どれぐらいいて、国外財産調書制度の捕捉率というのはどの程度だと見ているんでしょうか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。国外財産調書についてのお尋ねでございますけれども、提出件数でございますが、ただいま先生が御指摘のとおり、平成二十六年末におけます提出件数、昨年六月の取りまとめ時点で八千百八十四件です。これに対しまして実際の提出義務者の数がどれだけかということでございますけれども、本制度は施行から三年目となる制度でございまして、現時点で必ずしも調書の提出義務のある国外財産の保有者について完全に把握できているとは考えておりません。国外財産調書につきましては、確実な提出を促す観点から、調書提出の有無等による加算税の加減算の措置ですとか制度上の手当てが行われているところでございまして、今後、国税庁といたしましては、こうした点も含めまして、引き続き制度の周知、広報に努めるとともに、調書の提出義務があるにもかかわらず未提出となっている者に対しては、行政指導等による適正な提出を促すといった対応に努めてまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 完全に把握できていないということですから、出していないという方がおられるということです。外国の口座を利用した国際的な脱税の防止のために、非居住者の口座情報を自動交換する共通報告基準、CRSがつくられました。情報交換に同意した国は百一国ということで、二〇一七年、日本でいえば二〇一八年から金融口座の情報の自動交換が始まるということです。ただ、この百一カ国を見ますと、アメリカが入っていないんですよ。アメリカは御存じのとおり、デラウェア州など国内に租税回避地を抱えている国です。ですから、アメリカが租税回避地の州まで自動交換の輪に入るということにならないと大きな穴があくということになりますので、ここまで共通報告基準に加わるよう、麻生大臣にはしっかりアメリカにも働きかけていっていただきたいというふうに思います。さらに大きな穴は、ペーパーカンパニーの実質的な所有者については明らかになっていないということです。この間、G7の仙台の会議でも実質的所有者を明らかにするルールづくりということなんかも話し合われてきているわけですが、きょうの報道なんかを見ていますと、欧州の提案に対してアメリカと日本が後ろ向きだなんという報道もあるわけですよ。ですから、ここがはっきり実質的所有者が誰かということにならないとこの穴が埋まりませんので、この点でも政府には、ペーパーカンパニーの所有者特定へ実効ある制度をつくるためにイニシアチブを発揮していただきたいと思います。いずれにしても、二〇一八年までにこの情報交換が始まっていくということになるわけですけれども、これは始まりますと、これまで扱ってきた情報量に比べて相当膨大な情報量というのが日本の課税当局にも来ると思います。しかも、脱税などというのは、ペーパーカンパニーを使って巧妙にやられているわけで、調査にも相当な手がかかると思われます。ですから、これは思い切った人的な体制の補強が必要だと思うんですが、大臣、どうでしょうか。
○麻生国務大臣 経済がどんどん国際的になってまいりますので、国境を越えていろいろな金が動くというのに対応して、適正、公平な課税というものをやっていくというためには、まずは、租税条約というのを結んでいない国もありますので、二国間で租税条約を結んだ上で情報交換を積極的に実施する、まずここから始めないといかぬのですが。問題がある取引があれば、当然のこととして調査に入ることになるんですが、こうした認識を持っておりまして、我々としても、国税庁のもとで、この種の話ができる外国の税務当局との情報交換をやれるような部署というのを増員する、かつ、こういうのを担当する専門官というものをつくって、日本語でやるわけではありませんのでそんな簡単な話じゃないんですが、必要な体制整備を図っているところです。これまでのところ、この十年間で二倍ぐらいにはふえているとは思いますけれども、今後とも、こういった税務執行をやっていくに当たってきちんとした情報交換をやっていくと同時に、今インターネットとかその他の機械が発達してきましたので、お互いに今度の協定で、少なくともこっちが要請しなくても、我々のところに預けている人たちの名前というのを自動的に交換するというルールづくりをやることに決まりましたので、これに入っていなかったのがパナマだったと記憶しますが、そのパナマがこのたび、この五月二十日に正式に世界で最初に日本とこの種の情報開示をやるというのを結んでおりますので、我々もできたので、他国も、これをパナマとやるという話は既に伝えてありますけれども、そういったようなことを一つ一つ手間をかけてやっていくに当たっては、人員が要ることも確かなので、この点については配慮していきたいと思っております。
○宮本(徹)委員 人員は増員していく方向だというお話でしたけれども、私、前にはここで庶民いじめの税務調査の問題も随分やらせていただきましたけれども、そういうところに人を割くよりも、やはり大規模な税逃れを摘発するところにしっかり人を割いていくということを求めておきたいと思います。それからもう一つ、きょうは相続税などの対策のためのキャピタルフライトについても質問したいと思います。庶民は増税されても逃げられませんが、巨額の資産家は相続税のない国にキャピタルフライトできるわけで、不公平だという声が上がっております。例えばベネッセホールディングスの最高顧問の福武總一郎氏は、アメリカのフォーブス誌によると、一千三百八十三億円の資産を持っていらっしゃいます。二〇〇八年十一月に、奥様のれい子氏と一緒に、ニュージーランドの資産管理会社に保有する株式一千三百六十一万株を譲渡し、さらに、御本人も二〇〇九年十二月に住所をニュージーランドに移しております。ニュージーランドは相続税も贈与税もないということであります。ベネッセですから、進研ゼミだとかこどもちゃれんじだとか、日本で生み出された富がもともとの彼の資産のもとになっていると思います。BEPSプロジェクトは、法人税については価値が生み出された場所で課税しよう、こういう方向になっているわけですが、しかし、相続税制ではそういうことはまだ話し合われていないわけですけれども、もともと日本で生み出された富であっても、現行の税法では、相続人、被相続人とも五年以上国外に居住していれば、国外財産については相続税、贈与税ともかからないということになります。一千三百八十三億円ですから、日本国内で相続ということになったら数百億円ということです。幾つもの自治体の予算にも相当する税額ということになります。しかし、ニュージーランドで福武夫妻の場合はもう五年以上たっていますので、ゼロということになるわけですよ。現行法では、五年たって、相続あるいは贈与を受けた人が日本に帰ってくるという節税というのも可能になっているわけです。ですから、ちょっとお伺いしたいんですけれども、相続税、贈与税の納税義務が生じる要件として、国外での居住期間が日本で言う五年以内よりも長いスパンをとっている国というのはあるんでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。先生のお尋ねですので、居住期間要件が長い国を申し上げますと、アメリカにつきましては、被相続人が市民権を有する場合には、相続人が海外での居住期間がどれぐらいであるかにかかわらず、国内、国外財産とも課税対象になるということでございます。オランダにおきましては、オランダ国籍を有する被相続人がオランダから離れて十年以内という場合には、国内、国外財産とも課税対象になるということでございます。補足いたしますと、日本は五年ということでございますけれども、他国、例えばドイツは同じ五年、それからイギリスは三年ということになってございまして、それぞれ国情に応じて設定されているのではないかと思っております。
○宮本(徹)委員 日本よりも長い国、アメリカは市民権があれば無期限というお話でした。今、節税目的で永住権を得る富裕層がふえている、香港、シンガポールが人気だ、こういう報道もあるわけです。外務省の在外邦人統計を見ると、シンガポールの永住者は、二〇一〇年千五百七人から二〇一四年に二千二百五十人と、一・五倍になっております。香港への永住者は、千三百九十七人から二千五百二十一人と、同じ期間に一・八倍に大きくふえております。もちろん、永住の理由はさまざまで、節税目的以外の方もたくさんいらっしゃるというふうに思いますが、一方で、節税目的でのキャピタルフライトもふえている、永住もふえているということも言われているわけです。ですから、こういう実態を踏まえて、国外財産の相続税、贈与税、この納税義務の生じる要件について、国外での居住期間の問題の見直しも含めて、意図的な相続税逃れを防ぐ対策というのも検討が必要なんじゃないかと思いますが、大臣、どうでしょうか。
○麻生国務大臣 これは今宮本先生おっしゃるとおり、租税回避に対する国民の関心はパナマペーパーのおかげですかね。BEPSなんて言ったって全然関心を持ちませんでしたものね、みんな、ついこの間まで。持っていただいた方は本当に数名の方だったと記憶しますけれども。あのパナマ文書のおかげでえらく興味を持っていただけるようになったので大変助かったと思っているんですけれども。税制に対する信頼というのを確保するというのは極めて重要なものだと思っておりますので、先ほど佐藤の方から答弁をいたしておりますけれども、平成十二年度の改正において、経済のグローバル化といった経済社会状況の変化への対応とか租税回避行為の防止の観点から、五年以内の居住期間要件を導入したところなんですが、さらに、平成二十五年度の改正において、相続人が日本国籍を有していない、かつ日本には住所を有していない場合でも、被相続人が日本に住所を有しているときには国内及び国外財産等を課税対象とさせていただいたところであります。そういった形になっているんですけれども、世の中には相続税の全然ない国というのが幾つもありますので、そういった意味では、制度を濫用した意図的な課税逃れというものに関しましては、課税の実態とか、これは諸外国はいろいろ皆苦労しておられるので、今後ともこういった努力というものは引き続き検討していかねばならぬところだと思っております。
○宮本(徹)委員 引き続き検討していかなきゃいけないということですので、本当に、国民にとっては、普通の庶民は逃げたくても逃げられないという状況があるわけですけれども、富裕層だけが逃げられる、このことへの不公平感というのは相当大きなものがありますので、しっかり前向きに早急に検討していただきたいというふうに思います。さらにもう一問だけお伺いしますけれども、この間も、相続税なんかはシンガポールだとか香港では廃止されたという経過もあります。それと同時に、法人税についてはもう二十年ぐらい前から、法人税引き下げ競争というのが各国の財源を奪うということで問題になってまいりました。BEPSプロジェクトで課税の穴を塞ぐということではこの間議論が進んできているわけですけれども、法人税引き下げ競争については、問題になって二十年ぐらいたつわけですが、これがおさまっていないというのが今の状況です。ですから、BEPSプロジェクトで課税の穴を塞ぐということと同時並行で、法人税を初めとした税金の引き下げ競争をやめさせていく。この点でも日本政府が積極的なイニシアチブを発揮する必要があるんじゃないかと思いますが、大臣の御見解をお伺いします。
○麻生国務大臣 各国の法人税の引き下げ競争というのが、際限なくやっているということを続けると、これは各国とも財政が立ち行かなくなりかねぬという基本的な問題意識というのは共感するところです。この問題意識というのを背景にこれまで、軽減競争というのは避けて、少なくとも協調して税制の調和を図っていこうじゃないかというので、OECDとかG20のBEPSプロジェクトというのは始動してきたんです。法人税率自体の議論というものはこれからやっていかないかぬのですが、一番基本は、グローバルな企業というものは、経済活動が行われて、いわゆる価値、バリューというものが創造される場所で税金を払えというのが原則なんだ、そう思っておりますので、このルールというものを再構築して、国際的な租税回避を防止するための議論というのが、昨年の十月、最終報告書が公表されたところです。先週のG7の会合におきましても、この問題は、法律はできたけれども、実施できますかね、本当に実施してくれるのかというところがもっと問題なんですよ、我々に言わせれば。言うだけ言って、やらないところだっていっぱいきっと出てきますから、そこのところの方がよほど問題なんだと私らはそう思っているんです。いずれにしても実施する重要性の確認はされたところなので、私どもとしては、単に表面税率の引き下げだけを行うのではなくて、課税ベースの拡大というものも、今度、外形標準課税をいろいろやらせていただいておりますけれども、税率を引き下げているということとしているものですけれども、引き下げ競争といったものではないということは各国も認めているところです。いずれにしても、今後こういったような問題というのは、一カ国でやっても、キャピタルフライトという言葉がどれくらい通じるんだか知りませんけれども、こういったお金が一番簡単に外に逃避しやすいものであることははっきりしていますので、今は瞬時に移動しますので、そういった意味では、これに対する対応策というのは一国とか先進国だけなんというレベルのものでは全くない、そう思っております。私どもとしては、これをやるのは、まずはBEPSでスタートして、これはどれくらい行けるかというのに関心を持っておりますが、この六月にBEPSの第一回の実施するための会議というのを日本で開くことにしております。OECDは四十数カ国ですけれども、今回の日本が最初にスタートさせます実施の会議において、参加希望国が百カ国を超えておりますので、少なくともやる気は今のところあることは確かだと思いますが、実際やり切るかねというのは別問題です。
○宮本(徹)委員 BEPSの具体化をやり切るためのイニシアチブとあわせて、法人税引き下げ競争もやめさせていく。この点でのイニシアチブを重ねて求めまして、質問を終わります。