2016年10月28日 衆院財務金融委員会 『宮本徹氏 増税の断念迫る』

財金提出資料① 租税及び印紙税収入の中で「消費税」「法人税」「所得税」が占める割合と、国税の新規発生滞納額の中で「消費税」「法人税」「所得税」が占める割合
財金提出資料② 全商連・中小商工業研究所16年下期営業動向調査プレスリリースから抜粋

以下2016年10月31日付赤旗日刊紙より抜粋

消費税増税延期法案を審議した28日の衆院財務金融委員会で、日本共産党の宮本徹議員は「消費税増税は延期ではなく断念し、大企業・富裕層への課税を強化すべきだ」と主張しました。
「消費税増税が長期にわたって個人消費を冷え込ませているという認識はあるか」とただした宮本氏に、麻生太郎財務相は「消費にマイナス影響を与えたのは事実だ」と認めました。
宮本氏は、消費税率8%への増税以降、低所得者ほど消費の落ち込みが大きいことを指摘。増税を延長しても実施すれば個人消費と経営に大きなマイナスとなるのは明らかだと批判しました。麻生財務相も「消費税が逆進性を有しているのは事実だ。消費に影響を与える」と述べました。
国税庁は、2015年度、消費税の新規滞納が前年から約3割増え、税全体の新規滞納額に対する消費税の割合が64%に達していることを示しました。
宮本氏は消費税の価格転嫁が進んでいない状況を示し、「消費税は、事業者が赤字でも、消費税が価格に転嫁できなくても身銭を切って納めなければならない根本的な欠陥がある」と指摘。価格転嫁できずに苦しむ中小零細業者の声を紹介し、「この不条理をどう考えるのか」と迫りました。
麻生氏は「(消費税を)とれなかったら税金をまけてくれという世界ではない。自前の才能でやることだ」と開き直りました。

≪第192回 衆院財務金融委員会第5号 2016年10月28日≫

○御法川委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。消費税増税延期法案について質問いたします。麻生大臣は、消費税増税延期の際の記者会見で次のようにおっしゃっておられました。日本の場合、伸びていないのは個人消費、正直申し上げて我々としては予想外だったと思っている。それが消費税率八%への増税の影響かと言われると、そうじゃないと反論したくても我々としては難しい。GDPの六割以上を占める個人消費が伸びていないことに対応するために、私どもとしては、消費税をもう一回上げるというのは今の時期ではない。こうおっしゃっておられます。安倍総理の言う世界経済のリスクというのを振りかざしての説明よりは、個人消費に着目して増税延期するという説明だったかと思いますが、非常にそういう点では安倍総理よりは常識的な説明だなというふうに思って聞いておりました。二〇一四年の消費税増税は、二〇一四年、二〇一五年とGDPの個人消費二年連続マイナスという戦後初めての事態をもたらしました。二〇一六年度に入りましても、総務省の家計調査では消費支出はマイナス続きです。内閣府の消費総合指数も低迷を続けております。この間、春の国会でも随分議論しましたけれども、その際は個人消費の持ち直しが期待されるという答弁が続いたわけですが、期待どおりにいかなかった。消費税増税が長期にわたって個人消費を落ち込ませている。このことはお認めになりますね。
○麻生国務大臣 基本的に、今言われましたように、この数字を見ましても、五から八へ上がった段階で、次の四―六でマイナス四・八%というのが、需要減という形になっておりますので、回復としては極めて緩やかなものだったのは間違いない事実だと思っておりますし、また、賃金の上昇率が物価上昇率、いわゆる消費税率の引き上げ分を含むものを下回ったということも事実ですので、そういったことなどいろいろ挙げられると思います。内閣府の試算を見ましても、これは二〇一四年の個人消費というのを見ますと、駆け込み需要の反動減により三兆円減少した、消費税率引き上げによる物価上昇で約二兆円台半ば程度減少したと試算をされているものと承知をいたしておりますので、私どもとしては、今言われました点につきましては十分にそういうようなものは、今言われた数字の、二〇一四年のことに関しましてはそのとおりだと理解しております。
○宮本(徹)委員 二〇一四年だけではなくて、二〇一五年、二〇一六年と個人消費の停滞は続いているわけです。それと、先日、民進党の木内さんも質問されておりましたけれども、消費総合指数、前回の一九九七年の増税のときと比べても、今回、長期にわたって低迷しておりますが、これは、原因はどう分析されているんでしょうか。
○麻生国務大臣 消費税率がいわゆる三から五に引き上げられた一九九七年以降の経済動向というのと比較の話をしておられますけれども、あのときと今とは大分違うのであって、あのときはいわゆる通貨危機というのがありましたし、また、金融システムというのは極端なことになって、あの年には山一証券倒産、三洋証券倒産、それから北海道拓殖銀行が倒産して、翌年には長銀ですか、不動産銀行も倒産しましたのは、そういったようなものが随分大きな、ほかにもいろいろ銀行が、もう昔の名前で出ている銀行が二つぐらいしか残っていないぐらいになったほど銀行もやっていけなくなったという事態だったので、あのときというものを見た場合に、これが消費増税のことだけかというと、なかなかそうはいかないんじゃないのかと。日本の消費にマイナスを与えたということは間違いないとは思いますけれども、いわゆる景気後退の主因であったかと言われれば、これは、いわゆる一連の資産のデフレから始まる金融危機等々のものも大きな影響を与えたというのであろうと思います。一概に、これが全てと言えるということはなかなかできないと思いますけれども、非常に悪い、マイナス影響を与えた、四・八ですから。それははっきりしていると思っております。
○宮本(徹)委員 一九九七年のときはアジアの通貨危機だとかがあったわけですけれども、そのときに比べても今回の方が、先日の木内さんの出したこのグラフを見ても、消費は低迷しているわけですよ。そこをやはりしっかり見なきゃいけないと思うんですよ。私はやはり、なぜ一九九七年のあの通貨危機があったり金融危機がいろいろあったときよりも今消費が低迷しているのかと考える場合に、働いている皆さんの賃金がどうなっているのか、収入がどうなっているか、可処分所得はどうなっているのか、ここを見なきゃいけないと思うんですよ。一九九七年が賃金のピークです。そこからどんどん下がって、一方、社会保険料は上がっております。厚労省の毎勤調査では、労働者一人当たりの賃金は一九九七年に比べて五万円下がっている。総務省家計調査では、実質可処分所得は月七万円下がっている。年金生活者の皆さんも年金は下がっているというわけですよ。ですから、実際の可処分所得が一九九七年のときよりも大きく落ち込んでいるもとで増税をかぶせたということが、前回の増税よりもはるかに大きな個人消費の低迷をもたらしているというふうに思います。そこでお伺いしますけれども、この消費税八%への引き上げはどういう世帯の消費支出に大きな影響を与えたでしょうか。
○麻生国務大臣 これは消費税率引き上げ後の消費動向について見ますと、高所得者層の落ち込みというものの税率引き上げ後は消費水準の五%程度にとどまっているのに対して、低所得者層の落ち込みは一〇%程度と、比較的大きくなっていると思っております。また、世帯主が四十四歳未満の家計と五十五から六十四歳の家計の落ち込みが他の世帯と比べて大きくなっている、私どもはそう理解をいたしております。その背景は、やはり若年子育ての世帯や、勤労所得というものがなくて年金などの安定収入も少ない六十歳代前半の無職世帯などの構造的な弱さを持つ世帯というものが消費を抑制したというように分析をいたしております。
○宮本(徹)委員 つまり、低所得者ほど消費が落ち込んだというのが政府の分析なわけですよね。ですから、結局、消費税の性格として低所得者ほど負担が重い逆進性があるから、今回のような消費の落ち込みをもたらしているんじゃないですか。
○麻生国務大臣 先ほども申し上げましたように、これは低所得者層の落ち込みの方が比較的大きくなっているというのは確かですが、また、低所得者ほど収入に占める税負担の割合が高いという意味では、消費税はいわゆる逆進性を有している。これも事実であります。ただ、今回の社会保障と税の一体改革では、消費税の増収分というものは全額社会保障の充実、安定化に充てるということにしておりますので、その受益を見ますと、これは低所得者層ほど大きなものになるというのは理の当然であって、また、消費税率八%の引き上げに当たっては、軽減税率導入までの暫定的、臨時的措置として、低所得世帯に対しては簡素な給付措置というのを実施するということになります。このように、消費税率の引き上げを含みます一体改革の影響については、負担の面だけではなくて、受益の面というものもあわせて評価しないといかぬのではないかと理解しております。
○宮本(徹)委員 その負担と受益を両方合わせても、低所得者の方は負担が実際ふえているわけですよ。しかも、四十四歳未満の家計だとか五十五歳から六十四歳のところというのは、これから政府が一〇%に引き上げたときにやる年金の底上げというのも来る世帯じゃないわけですよ。そうならないところで消費が落ち込んでいるというのが政府の分析なわけであります。私は、いろいろな税金の中でも、法人税だとか所得税だとかいろいろありますけれども、消費税ほど増税したら景気にマイナスの影響を与える税金はないと思いますよ。そういう認識はございますか。
○麻生国務大臣 消費税というものの主体からいって、消費に影響を与えるというのははっきりしていると思っております。
○宮本(徹)委員 消費に影響を与えるわけですよ。ですから、今回、増税の日付を延期する、二〇一七年四月に上げるよりははるかにいいわけですけれども、しかし、延期しても、実施すればそのときにまた大きく個人消費の低迷をもたらす、日本経済に対して大きな悪影響を与えるというのははっきりしているんじゃないですか。
○麻生国務大臣 この法律を最初に出したときの経緯というのを、先ほど古本先生のお話にも出ていましたけれども、これは、国民に安心を与えます社会保障制度というものを次世代までにきちんと引き継いでいかねばならぬというのが我々の世代に与えられている大きな使命だ、その点ははっきりしておるということを考えたときに、人口構成を考えて、今後とも若い人が減り、いわゆる高齢者の比率が勤労者に対して比率がふえていきますので、そういったことを考えた場合に、どういった形でこういった社会保障制度を次に引き渡すことができるのかという点を私どもは真剣に考えたということだと思っております。また、市場やら国際社会からの信認ということを考えるときに、日本の抱えております借金等々は十分に、私どもはそれを返済していこうという意思が明確であるということもきちんと伝えておかないと、国際社会における信認の面も得るということだと思っておりますので、この増収分につきましては、全額社会保障の充実、安定化に充てるということにしておりますので、そういった意味で、国民に還元されるものなんだというように理解して、私どもとしては、一定のプラスという面も与えられるというのははっきりしていると思っておりますので、経済財政というものの運営に万全を期していかねばならぬところだと思っております。
○宮本(徹)委員 日本経済にマイナス影響を与えるのは明らかじゃないかというふうに聞いたわけですが、それに対してお答えがなかったわけです。朝の民進党の皆さんの質疑の中で総理の記者会見が紹介されておりました。私も改めてこの総理の記者会見を見ましたけれども、内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきであると言っているわけですよ。だから、消費税を上げたら内需の腰折れが起きるというのは、今であっても、それは二年半延長しても、同じことが起きると思うんですよ。それは当たり前の話だと思うんです。ですから、総理の言っている新しい判断の中で唯一言っている、内需を腰折れさせかねないから税率は引き上げないんですということでいけば、これはもう上げない、ずっと上げないというのが出てくる選択肢じゃないかと思うんですが、そうなりませんか。
○麻生国務大臣 私ども、自由主義経済というのをやっております。全然、考え方の哲学が、根本が違っていると思います、御党とは。
○宮本(徹)委員 何の答弁なのかさっぱり私はわからないんですけれども、私らも自由主義経済のもとで質問させていただいております。はっきり言いまして、個人消費が伸びないと国内総生産も伸びない、当たり前のことを麻生大臣も増税延期の記者会見のときにおっしゃっていましたけれども、やはり、私は消費税増税と日本経済の発展は両立し得ないというふうに思います。しかも、消費税増税したら、今、国会に提出されています年金カット法案の関係でも大きな問題が出るんですよ。(発言する者あり)カット法案じゃないという話でありますけれども。今度の法案の中でマクロ経済スライドが変わります、キャリーオーバー制度というのが入りまして、これまで物価上昇が小さい場合やらなかったマクロ経済スライドの分はまとめて発動するということになるわけです。消費税を二%引き上げると、軽減税率があっても物価は一%程度上がります。これまで実施してこなかったマクロ経済スライド、キャリーオーバーが執行されるわけですよ。そうすると、年金は物価が上がってもスライドせずに、実質一%目減りするということになります。さらに、賃金が変わらないという想定のもとでいきますと、物価が上がれば今度は実質賃金が一%削減するわけですよ。そうすると、この実質賃金一%の削減分が、今度の年金カット法案との関係で、その後三年間にわたって年金の削減というのをもたらすことになるわけですよ。ですから、消費税は上がっていく、年金は実質二%分目減りしていくというのが、この消費税増税を行うと年金生活者のところにはやってくるというふうになります。そういうことになりますと、いよいよ個人消費に与える影響は重大だというふうに思います。ですから、絶対私たちは、延期してでも上げるべきではない、消費税とは違う方法で増税はすべきだということを重ねて申し上げておきたいと思います。その上で、この消費税増税は、政府の掲げる経済政策とも両立しないのではないかというふうに思います。政府と日銀は共同声明まで出して、デフレからの脱却と言ってきました。日銀は二%の物価安定目標を掲げました。ただ、達成の見通しはどんどん先送りされているという状況であります。先日の日銀の総括的検証の背景説明の中で、二%の物価安定目標が実現できていない理由として、三つの外的要因というのを挙げておられます。その一つが、消費税率引き上げ後の需要の弱さということです。きょうは黒田日銀総裁に来ていただきました。伺いますが、この消費税率引き上げ後の需要の弱さというのは、消費税が長期にわたって個人消費の低迷をもたらしている、このことも含んでいるということでよろしいんでしょうか。
○黒田参考人 御指摘の総括的な検証におきましては、二〇一三年四月の量的・質的金融緩和導入以降、一年強にわたって順調に上昇していた予想物価上昇率が二〇一四年の夏ごろから横ばいに転じた要因の一つとして、御指摘のような、消費税率引き上げ後の需要の弱さというものを指摘しております。御案内のとおり、一般的に、消費税率の引き上げは、税率引き上げ前後の駆け込み需要の発生とその反動、それに、税率引き上げに伴う実質可処分所得の減少というこの二つの経路を通じて実体経済に影響を及ぼすというふうに考えております。二〇一四年四月の消費税率引き上げの経済に与えた影響について見ますと、このうち、駆け込み需要の発生とその反動が事前予想をかなり上回ったということではないかというふうに思っております。なお、足元の最近の個人消費について一言申し上げますと、ことし前半はやや弱目の動きとなっておりますけれども、ここの中には、一方で、雇用もふえ、賃金も上昇して雇用者所得がふえているわけですけれども、他方で、年初来の株価下落による負の資産効果が影響しているという面と、それから、ごく足元では台風などの天候要因の影響があったということだと思います。ただ、今申し上げたとおり、雇用・所得環境の着実な改善がこのまま続いていけば、消費についても緩やかに増加していくのではないかというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 だから、緩やかに増加していくんじゃないかと言いながらずっと低迷を続けているというのが、この間の個人消費の推移だったというふうに思います。日銀は、先日の政策でオーバーシュート型コミットメントということを掲げることになりました。しかし、消費税を一〇%に増税すれば国民の懐を冷え込ませる、そのことによって物価上昇率も予想物価上昇率も下がるということがまた起きるんじゃないですか。総裁、どうでしょうか。
○黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、消費税率を再び引き上げる際にも、税率引き上げ前後の駆け込み需要の発生とその反動、それから、税率引き上げに伴う実質可処分所得の減少という二つの経路を通じて実体経済に影響を及ぼすことが予想されます。もっとも、これらの具体的な影響については、その時点における景気の状況とかあるいは雇用・所得環境などにも依存しますので、二〇一九年の十月の、消費税率引き上げ前後の景気あるいは経済への影響を今から具体的に申し上げることは非常に難しいと思います。物価上昇率に与える影響という点では、日本銀行としては、実際の消費者物価上昇率の低下が直ちに予想物価上昇率の低下につながることのないように、欧米のように、フォワードルッキングな期待形成というものを強めて二%の物価安定の目標にアンカーしていくということが重要ではないかと考えておりまして、そういった観点からも、オーバーシュート型のコミットメントという形で金融緩和をしっかり続けていくということを今回の金融政策決定会合で定めたわけでございます。
○宮本(徹)委員 ですから、もう何度も何度も目標を引き延ばされているわけですから、そう言われても説得力を感じる国民の方というのは本当に少ないというふうに思います。そして、実質可処分所得の減少というのを、消費税を引き上げたら必ずもたらすわけですよ。そうなれば国民全体の購買力は落ちるわけですから、当然、物価上昇率を下に引っ張る力は働くというのは当たり前の話だというふうに思います。麻生大臣にもお伺いしますが、日銀が総括的検証でおっしゃっています消費税率引き上げ後の需要の弱さというのが物価上昇率の下押しの要因になった、この分析は政府も同じ認識でしょうか。
○麻生国務大臣 二%の物価目標の実現というものを阻害した要因について、今総裁が言われましたように、総括的な検証の中において、いわゆる消費税率引き上げ後の需要の弱さのほかに、原油価格の下落とか、新興国経済政策の減速とか、そのもとでの国際金融市場での不安定な動きといった外的な要因によって実際の物価上昇率が低下した、これが予想物価上昇率の下押しに作用したためというように説明されたものと理解しております。実際に一般の物価上昇率というのは、消費税率引き上げ後の需要動向だけではなくて、経済情勢とか、国際金融市場とか、その他予想物価上昇率とか、いろいろなものが要因となって決まるものだと思っておりますので、消費税率の引き上げによって直ちに物価安定目標の実現が困難になるというようなものではないのではないかと思っております。いずれにしても、消費税率の一〇%の引き上げというものは、先ほど申し上げましたように、社会保障制度というものをきちんと次世代に渡す責任とかその他国の信認とか、いろいろなもののためにこれはぜひとも必要なものだと思っておりますので、我々としては、デフレ不況からの脱却というものにこれまでも、結果としてはかなり三年間、それなりの経済というものは、これまでとは比べ物にならないぐらい経済のあれを見た場合には、間違いなく法人税はふえておりますし、また、GDPも伸びておりますし、また、新規国債発行も十兆円減っておりますし、いろいろな意味で私どもとしてはそれなりの成果というものを、少しずつではありますけれども確実に上げてきていると思っております。
○宮本(徹)委員 私がお伺いしたのは、日銀がおっしゃっているように、消費税率引き上げ後の需要の弱さというのは物価上昇率の下押しの一因になった、これは含まれるのかと聞いているわけですよ。それだけだということを私は言っているわけではないわけですよ。その点は日銀と同じですか、違うんですかということをお伺いしています。
○麻生国務大臣 今丁寧にお答えしたと思いますけれども、重ねて申し上げましょうか。(宮本(徹)委員「いやいや、だから一言だけでいいですよ、含まれているなら」と呼ぶ)先ほど黒田さんが一番最初に申し上げたと思ったら、聞いておられなかったかどうか存じませんけれども、最初のところに、さまざまで決まるものであるということで日銀の総括的な検証についても述べたと思いますが。
○宮本(徹)委員 では、同じ認識でいいということだと思います。同じ認識ということになれば、結局、消費税を増税したら、そのことが物価を下に引っ張っていく、下押ししていくということになるわけですね。そうすると、消費税増税というのは政府の脱デフレ戦略とも両立しないというのは、この間の経験で明らかなんじゃないですか。
〔委員長退席、土井委員長代理着席〕
○麻生国務大臣 見解が全然違うんだと思いますが。私どもとしては、きちんとこれをやる本来の目的というものを考えて、それを達成しないと我々は後世に社会保障等々のものをきちんと引き継いでいくことができない。それを達成するためには、我々は、税というものをきちんとやらない限りは、人口構成のことを考えても、国家というものの形態を維持しづらくなってくるという状況を考えたときに、経済を再生させた上で、その上で消費税によってそこの分をきちんと補って、その分で、増収した中において低所得者等々、私どもとしては社会保障やら税の一体改革というものをきちんとやっていかないかぬということなのであって、経済を再生させることによって景気をきちんとよくし、その上で私どもとしては消費税をいただけるような経済情勢をつくり上げるように今努力をしているということだと理解しております。
○宮本(徹)委員 私がお伺いしたのは、政府の脱デフレ戦略と消費税増税というのは両立し得ないんじゃないかと。そのことに対しては御答弁がなくて、社会保障のためには必要なんだというお話でありました。私は、政府の経済政策から見ても、消費税増税路線というのは袋小路に陥るだけだというふうに思います。日曜日の産経新聞に編集委員の方が、「国会は増税ドグマを払拭せよ」という「オピニオン」を掲載しておりました。私たちは産経新聞とはそれこそほとんど見解を異にしておりますが、この点では、やはり、消費税増税が日本経済を破壊する現実をしっかり認識すべきだという点は同じ思いだということでございます。きょうは総裁、お忙しい中を来ていただいてありがとうございます。退席していただいて結構でございます。その上で、もう一点、消費税については、やはり税制としての根本的な欠陥があるのではないかというふうに考えております。昨年度は消費税の新規滞納額が大きくふえました。前年の三千二百九十四億円から四千三百九十六億円です。消費税の新規滞納が急増した理由、国税庁、説明していただけるでしょうか。
○飯塚政府参考人 お答え申し上げます。二〇一五年度の消費税の新規発生滞納額でございますけれども、先生御指摘のように四千三百九十六億円となっておりまして、前年度から一千百二億円、三三・四%増加しているところでございます。一般的に、滞納が発生する要因につきましては、個々の納税者の営業やあるいは資金繰りの状況などさまざまな事情によるために、確たることは申し上げにくいわけでございますが、二〇一五年度の消費税の徴収決定済み額、全体で前年度より二兆四千三百七億円、一六・九%増加しておりまして、このことが一定程度、新規発生滞納額の増加につながったのではないかと考えております。
○宮本(徹)委員 徴収決定済み額は一六・九%だけれども、これは税率を引き上げたからですよね。徴収決定済み額よりもさらに大きな比率で新規滞納がふえたという数字だというふうに思います。結局、税率引き上げで納める税額が大きくなって払えなくなっているということだと思います。では、もう一つお伺いしますが、消費税の新規滞納の発生件数と一件当たりの滞納額、幾らになっているでしょうか。
○飯塚政府参考人 お答えを申し上げます。二〇一五年度の消費税の新規発生滞納件数でございますが、五十七万二千件でございます。一件当たりの平均発生滞納額は七十六万八千円でございます。
○宮本(徹)委員 一件当たり七十六万八千円ということです。ですから、多くの場合は、この数十万円の消費税を納めるのに大変苦労されているということだと思います。御存じのとおり、中小企業、小規模事業者、零細業者の皆さん、大半の場合がもともと赤字なわけですね。売り上げがあっても、仕入れなどの運転資金に回っていく。手元にいつでもまとまったお金があるというわけではないわけであります。そうすると、消費税を納める期限に手元にお金がないと滞納になり、滞納になったら延滞税も発生するということになっているわけです。それで、きょう、私もグラフもつくってきましたけれども、国税庁にお伺いしますが、国税収入全体に占める消費税の比率と税の新規滞納額全体に占める消費税の比率、増税前の二〇一三年と二〇一五年を比べて紹介していただけますでしょうか。
○飯塚政府参考人 お答えを申し上げます。国税の徴収決定済み額、すなわち申告等により課税された額でございますけれども、その全体に占める消費税の割合が、二〇一三年度が二〇・九%、二〇一五年度が二八・九%でございます。また、国税の新規発生滞納額全体に占める消費税の割合でございますけれども、二〇一三年度が五一・四%、二〇一五年度が六四・〇%でございます。
○宮本(徹)委員 私のきょうつくってきた資料ですけれども、これは徴収決定済み額と違って、国税庁のホームページから抜いたので若干パーセントが、税収の方が割合が変わっていますけれども、ほぼ同じなので見ていただきたいと思います。実線の方が、新規発生滞納額、青が消費税、赤が法人税、緑が所得税、それぞれ全体の滞納額に占める比率です。それから点線の方が、国税収入、印紙収入も含めてですけれども、そこに占める、消費税、法人税、所得税の占める比率です。所得税を見ていただければわかりますけれども、この実線と波線はほぼ同じように推移しております。若干差がありますが、法人税の場合は滞納額の方が占める比率は低いとなっています。ところが消費税は、ワニの口をあいたように、税率を引き上げるたびにこの差が大きくなって、新規発生滞納額全体に占める消費税の割合は実に三分の二近くまで膨れ上がるということになっております。法人税と比べて、ここまでなぜ消費税の滞納の割合が高いのか。これは、国税庁、理由はどう分析されているんでしょうか。
○飯塚政府参考人 お答えを申し上げます。先ほどお答え申し上げましたとおり、二〇一五年度の国税の徴収決定済み額全体に占める消費税の割合が二八・九%でございますが、他方、国税の新規発生滞納額全体に占める消費税の割合が六四・〇%ということで、御指摘のように、徴収決定済み額と比べて高くなっているところでございます。しかしながら、一般的に滞納が発生する要因は、個々の納税者の営業や資金繰りの状況などさまざまな事情がございますので、その理由については確たることは申し上げにくいところでございます。いずれにいたしましても、二〇一五年度の消費税の滞納とその整理状況を申し上げますと、消費税の新規発生滞納額は四千三百九十六億円であるのに対しまして、整理済み額、すなわち納付等がなされた額は四千五百三十三億円ということで、新規発生滞納額を百三十八億円上回っておりまして、その結果、滞納残高は前年度より減少しているということでございます。国税庁といたしましては、引き続き、消費税の滞納の未然防止と整理の促進に努めてまいりたいと考えております。
〔土井委員長代理退席、委員長着席〕
○宮本(徹)委員 なぜ法人税は割合がここまで低くて、消費税が高いのかという説明は全然ないわけですよね。かつての答弁をずっと調べていましたら、こう答えていますよ。法人税の場合は、赤字になれば法人税の納税はございませんから滞納も発生しない。一方、消費税は、赤字、黒字関係ございませんから、経済情勢に沿って滞納があるのではないかと。二〇〇三年三月二十五日に答えていますよね。こういうことなんじゃないんですか、理由は。
○飯塚政府参考人 お答えを申し上げます。確かに御指摘のような要因もあろうかと思いますが、一方で、先ほどお答え申し上げましたとおり、滞納が発生する要因につきましては、営業ですとかあるいは資金繰りの状況とかいろいろな状況が影響してくるものでございまして、一概には言いがたいというふうに考えております。また、先ほども申し上げましたとおり、新規発生滞納額が増加するとともに、同一年度内の滞納整理額もふえているというところで残高が減っております。また、二〇一五年度の消費税の徴収決定済み額のうちで九九・三%がその年度中に納付等がなされている状況にございまして、御指摘のような、利益の有無によって全体の滞納額に占める消費税の割合が高くなっているということは、なかなか、一概には言いがたいというふうに考えてございます。
○宮本(徹)委員 御指摘の要因もあるというふうにおっしゃいましたけれども、納めなかったらみんな差し押さえされちゃうわけですから、当然、皆さん納めますよ。それを、納めてもらっているから問題ないんだという言い方はおかしいんじゃないかと思います。麻生大臣、ここまで差があるというのは、やはり消費税の性格からくるのは間違いないというふうに思いますので、こういう税金でいいのかというところは私は真剣に考えなきゃいけないと思います。しかも、実態として見た場合は、価格転嫁ができていなくても売り上げに応じて納めなきゃいけないという問題があります。ちょっとお伺いしますけれども、経産省が消費税の転嫁状況に関するモニタリング調査をずっとやられておられます。最新の九月のもので見ますと、「全て転嫁できている」と答えているのが、BツーBで八五・七%、BツーCで七二・六%。二〇一四年四月、増税のときの調査を見ますと、BツーBで七九%、BツーCで六九・三ですから、このときと比べれば数ポイントは改善しております。ところが、ここのところずっと数値は足踏み状況にあります。もちろん、かつての消費税五%のころみたいに半分の業者が転嫁できないとかそういう事態ではないですけれども、いずれにしても、全業者が転嫁できる状況にはおよそなっていないというのが今の現状であります。きょう中小企業庁も来ていただいておりますが、消費税の価格転嫁が足踏みしている原因は何でしょうか。
○吉野政府参考人 お答えいたします。今御指摘のありました消費税の転嫁状況に関する月次モニタリング調査でございますけれども、この調査では、一部を転嫁できている、それから転嫁できていない方々に対しまして、転嫁ができていない理由についても回答をいただいております。それについて申し上げますと、事業者間取引、消費者向け取引ともに、他社との価格競争があるといったところ、事業者間取引におきましては、取引先業界の景気が悪い、それから消費者向けに関しましては、消費者の財布のひもがかたいといった理由が多くなっているということでございます。
○宮本(徹)委員 つまり、他社との価格競争がある、消費者の財布のひもがかたい、だから価格転嫁ができていないという状況なわけですよ。これは、他社との価格競争なんて、先ほど自由主義経済というお話がありましたけれども、自由主義経済である限りなくならないということですよね、当然。そうすると、価格転嫁というのは、絶対、いつまでたってもできる状況にならないということにもなるというふうに思います。消費税増税で業者の皆さんは大変苦労されております。資料の二枚目に、全国商工団体連合会が行った最近の調査と、そこで寄せられた声も若干掲載させていただきました。そもそも業者の皆さんは、消費税増税で消費が落ち込んで売り上げが減る。売り上げが減る中で、BツーCの場合は当然お客さんに転嫁するのも大変な状況があるわけですよね。BツーBの場合も、先ほどおっしゃったように、他社との価格競争があって価格転嫁できない状況があるわけですよ。ここに出されている声をぜひ麻生大臣も見ていただければというふうに思います。ですけれども、価格転嫁できなくても、自腹を切っても消費税は納めなきゃいけないわけですよ。大変私は不条理だというふうに思います。麻生大臣、消費税が、そしてその増税がこういう不条理をもたらしている。価格転嫁できなくても、自腹を切ってまで消費税増税を納めなきゃいけない。業者の皆さんを苦しめていることについてどういう責任をお感じでしょうか。
○麻生国務大臣 消費税というのは、これは御存じのように、価格への転嫁というものを通じて最終的に消費者に御負担をいただくということが予定されている税でありますので、価格転嫁をできるということはこれは極めて重要な要素、これははっきりしていると思っております。したがいまして、政府としては、消費税率の引き上げに際しまして、転嫁対策特別措置法というものまでつくりましたし、買いたたきなどに対して公正取引委員会等が指導、勧告を適切に実施する、社会保障と税の一体改革を趣旨とする、国民の皆様に御理解いただけるような広報を行うといった取り組みを行っていますのは御存じのとおりであります。今言われましたように、本年の四月、中小企業庁が実施した消費税の転嫁状況に関するアンケート調査というのが出てきておりますが、「全て転嫁できている」と答えた事業者は、BツーBで八五・七ということになっております。消費者向けで七二・六であった一方、「全く転嫁できていない」という回答をいただいた事業者の方々は事業者間取引で三・三%、消費者向け取引では五・六%であったという数字が挙がっております。したがいまして、御指摘のように、事業者は消費税を適切に転嫁できていないのではないかと言うけれども、実質問題は三・三ですから、それはある程度、適切な転嫁がかなりできているというように私どもとしては理解をしております。いずれにいたしましても、引き続き、事業者の方々が消費税というものを価格に転嫁できるように、我々としてもしっかり応援をしてまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 全く転嫁できていないと同時に、一部転嫁できていない方々もたくさんいらっしゃるわけですよね。それも含めていえば、BツーBでいえば十数%、BツーCでいえば二十数%になるわけですよ。全くじゃなくて一部転嫁できていない人も、その転嫁できなかった分は自腹を切って納めなきゃいけない、そういう仕掛けになっているわけですよ。これは私は余りにも不条理だと思いますが、不条理だというふうには思われないですか、大臣は。
○麻生国務大臣 我々商売をしたことがありますので、あなたがどういう御経歴か知りませんけれども、私は長いこと商売したところからこの世界に来ましたものですから、少なくとも、お客に払った金を払っていただけないというのを含めまして、いろいろな難しい問題を抱えて商売しておる、自由主義経済ではそういうことになっております。したがって、ある程度のもので、取り切らなかった場合は、わしは取れなかったからその分だけ税金まけてください、これが通る世界でありませんので、私どもは基本的に、引き続き商売をしていく上では、最低限の努力というものをやった上できちんと対応していかねばならぬ、それは自前の才能でやらなしゃあないというところだと覚悟しております。
○宮本(徹)委員 ただの民間業者間の話じゃないわけですよ。この消費税自体は国の制度なわけですよ。価格転嫁できていなくても、その分も含めて納めなさいというのが今の消費税の仕組みになっているわけですよ。ですから、自由主義経済、民間と民間の話じゃないんですよ、民間と国との関係で起きている問題だから私は言っているわけでありますよ。その点について本当に責任を感じないというのは、非常に問題だというふうに思います。仮に一〇%に引き上げたら、この価格転嫁の状況だとか消費税の滞納の状況というのはどうなるというふうに予想されますか。
○麻生国務大臣 先ほども申し上げましたように、事業者が消費税を適切に転嫁できないという状況ではないというように考えております。その上で、今回の法律は、平成三十一年の十月に引き上げということになっておりますので、私どもは転嫁対策特別措置法の期限も二年半延長をしているところであります。引き続き、この法律の枠組みのもとで、買いたたきとか、また、いろいろな形での介入に対して、私どもは指導、勧告を適切に実施するなどしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。また、滞納につきましては、これは個々の納税者の営業とか資金繰りの状況などさまざまな事情によって発生するものでありますので、お尋ねの消費税の滞納に関しましてもこれは確たることは申し上げられませんけれども、納税者から相談があれば、分割納付等々、法令に基づいていろいろ対応しているんだと思いますので、できればこういったものはきちんとした対応がしていただけるように、我々としては引き継ぎ対応を続けてまいりたいと思っております。
○宮本(徹)委員 どれだけ価格転嫁の対策をしても、価格転嫁がもう進まない状況になっているんですよ。足踏みする状況に今なっているわけですよ。その理由も、先ほど紹介がありましたように、それこそ自由主義経済だったらなくならない理由によって価格転嫁ができないということになっているわけです。そうである以上、これを一〇%に引き上げたら、ますますこの不条理が拡大するということになります。この不条理が拡大するような消費税の増税は断じて認められないということを申し上げまして、次に、消費税にかわる財源策についての質問に移りたいというふうに思います。私たちとしては、社会保障、若者支援、子育て支援、そのための財源確保は待ったなしだというふうに考えております。そのための財源確保を真剣に行う必要があります。租税特別措置初め大企業優遇税制の見直しを進めていく必要があります。その点で、これは本会議でもお尋ねしました研究開発減税、二〇一四年度を見ますと減税総額六千七百四十六億円、このうち九五%が大企業が利用しているものであります。このうち増加型と高水準型の適用期限が今年度末ということになっております。この減税額が一千九十億円です。ですから、このまま何もせずに寝ていれば、一千九十億円、暮らしに回す財源が生まれるということになります。ところが、経団連や経産省はこの減税規模を維持してほしいという要望を出しているわけです。麻生大臣は私の本会議の質問に対して、租特については真に必要なものに限定していくんだ、研究開発減税についても、研究開発投資に向けた有効なインセンティブとなっているかといった観点からもしっかりと検討してまいりたいとおっしゃいました。真に有効なものなのか、必要なものなのか、きょうは議論させていただきたいと思います。きょう、総務省に来ていただきました。今週、総務省の行政評価局が、租税特別措置等に係る政策評価の点検結果を発表しました。研究開発減税についても、経産省の事前評価書についての点検というのを行っております。総務省にお伺いしますが、このうち、過去の効果、将来の効果について経産省が説明責任を果たせているのかということについて説明していただけるでしょうか。
○古市政府参考人 お答えいたします。総務省におきましては、各行政機関が実施した租税特別措置等に係る政策評価の点検を実施し、その結果を十月二十五日に各行政機関に通知するとともに公表したところでございます。お尋ねの、試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除の拡充につきましては、民間研究開発投資を二〇二〇年度までに対GDP比三%以上との目標を掲げ、要望されたものでございます。今回の点検では、この目標達成の基盤となる本特例措置によって民間企業の研究開発投資がどの程度拡大したか、また、今後どの程度拡大するかについて定量的な分析がなされていないことから、この点を課題として指摘したところでございます。
○宮本(徹)委員 ですから、どれぐらい効果があるのか定量的な分析がされていないというのが、経産省の事前評価書を見た総務省の点検結果ということになります。これは、見ましたら、やりとりしているわけですよね。説明できていないから、経産省に対して再説明を求めています。再説明を求めたのについて点検結果というのがされているわけですよ。再説明を受けてもまだ説明されていないというのが総務省の判断ということになっております。この研究開発減税の過去の効果、将来の効果について、経産省の説明では説明責任が果たせていない、こういう総務省の指摘については大臣はどう受けとめられているでしょうか。
○麻生国務大臣 これは行政レビュー等いろいろなものをやっておりますが、研究開発税制というものを含みます租税特別措置につきましては、目標の達成に向けて有効かどうかという観点から不断の見直しを行っていくことが重要、これは当然のことだと思っております。したがいまして、総務省の政策評価の点検結果にありますように、これは各省庁、通産省に限りませんけれども、税制改正や既存の制度の延長を要望される際にはしっかりその効果などについて証明すべきだ、これは当然のことだと思っております。平成二十九年度の税制改正において、総務省の点検の結果などにつきましても要望省庁に説明を私どもとしては求めながら、研究開発税制の制度全般にわたってめり張りをきかせながら、研究開発投資を促す有効なインセンティブとなるように、私どもとしてはしっかり検討を行ってまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 効果を証明すべきという話なわけですけれども、同じ政府部内でも、総務省から見れば効果が証明できていない、説明できていない。この点を踏まえてやはりしっかり査定をしていっていただきたいというふうに思います。もう一点、研究開発減税の高水準型の「僅少・偏りの状況」についても総務省は点検をなされておりますが、この点検結果についても説明していただけるでしょうか。
○古市政府参考人 お答えいたします。お尋ねの試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除の拡充につきましては、平成二十六年度の適用数が百三十件である高水準型について、上位十社の適用額に占める割合が九三・二%、また、平成二十六年度の適用数が百六十一件であるオープンイノベーション型について、上位十社の適用額に占める割合が八四・三%となっております。今回の点検では、これらが想定外に特定の者に偏っていないことについて十分な説明がなされていないことから、この点を課題として指摘したところでございます。
○宮本(徹)委員 「想定外に特定の者に偏っていないことについて説明されていない。」というのが総務省の点検結果だったわけです。この点については、大臣の受けとめはどうでしょうか。
○麻生国務大臣 これは、総務省が実施をされました平成二十九年度租税特別措置に係る政策評価の点検結果という話を今説明したんだと思いますが、御指摘のありました高水準型というのとオープンイノベーションという形、特別試験研究費でしたか、何かそういうのだと思いましたが、つきましては、これは上位十社の適用金額が八割以上に偏っているということに関して、特定の者に適用が偏っているのではないかということについて説明が不足しておる、ないというのの御指摘がされたものだと承知をいたしております。確かにそれぞれ上位十社の適用額の全体に占める割合が高くなっておりますが、高水準型の方は、研究開発に向けて相当の努力を行う企業に対してはさらなる取り組みを促す仕組みであるということ、また、オープンイノベーション型、今申し上げました特別試験研究費のことですが、これは、質の高い共同研究に集中的にいわゆる投資を行うように促すものであることなどについては留意する必要があろうと思っております。いずれにいたしましても、税制改正、租税特別措置のことですが、税制改正においてはその利用の実態というものを踏まえながらしっかり検討してまいらねばならぬと思っております。
○宮本(徹)委員 二〇一四年度の政府税調で法人税改革の議論がなされまして、そのときの見直しの基準三というのがあるんです。三つありますその三つ目ですけれども、「利用実態が特定の企業に集中している政策税制や、適用者数が極端に少ない政策税制は、廃止を含めた抜本的な見直しを行う」というふうに政府税調では確認をされているわけですよ。そして、偏りがないかどうか説明しろということを、昨年は会計検査院から指摘されました。しかし、それは、一生懸命経産省が説明しても、説明ができていないというのが、今回、総務省の点検結果だったわけですよ。役所の皆さんに対して説明がつかないものを財務省としてこのまま進めるわけには絶対いかないと思いますが、厳しい査定が必要なんじゃないでしょうか。
○麻生国務大臣 これは先ほども申し上げましたとおり、各省庁が税制改正とか既存制度の延長という要望をされる場合には、その制度の効果について説明責任というものを果たしていただく必要があるというのは当然のことだとして、財務省としては適切な評価を行うように求めていくというのは当然のことです。要望時における政策評価が不十分だとの課題が示されたことだけをもって直ちにその制度全てが問題というわけではありませんで、廃止、見直しを行うべきであるということとは少し考え方が違いますけれども、こういった指摘を踏まえて、各省庁に対して税制改正プロセスにおいて説明責任というものを果たさせていくように強く求めていくことになろう、引き続きお願いはせねばならぬということだと思います。
○宮本(徹)委員 説明責任が果たせていない、ここまで言われているわけですよ。結局、経団連がこれを続けてくれと言って、それを丸のみして説明がつかないものを続けるということになったらこれは大変問題だということになりますので、総務省の指摘も含めて、あるいは去年の会計検査院の指摘も含めてしっかり受けとめて、そして、政府税調の本来の、租特は期限が来たものは原則的にきっぱりやめていくんだ、研究開発減税の総額型というのは補助金にすぎないんだからこれは大胆に縮減するんだ、私が言っているんじゃなくて、政府税調が言ってきたわけですから、この立場に立って査定していただくことを求めておきたいというふうに思います。残された時間で、あと通告してあります金融所得課税の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。経済同友会も、税制改革の提言の中で、今月、公平公正の実現に資する税制ということで、金融所得課税の税率引き上げを提言いたしました。税率を五%程度引き上げるべきだ、高所得者の実効税率の適正化を図っていくべきだということを言いました。私も大変、財界の中からの声ですから、注目をいたしましたが、このことについての大臣の受けとめはどうでしょうか。
○麻生国務大臣 同友会が、今言われたような提言をされたということは承知しております。これは小林さんのところでしたかね、知っておりますし、これに対してですけれども、これは、個別の団体の提言に対してコメントを一つ一つするなんということは差し控えさせていただきます。その上であえて申し上げさせていただければ、金融所得に係ります分離課税の税率に関しまして、平成二十六年度から、一〇%の軽減税率を廃止して、二〇%の本則の税制にしたところであります。したがいまして、今後の税率の水準については、この改正の効果というのは、まだ一年ですので、改正の効果を見きわめるとともに、また、景気の情勢とか市場の動向とか税制とか社会保障制度に係る所得再分配の状況とか、税制全体のあり方の中での金融所得課税の位置づけ等々いろいろ勘案しなくちゃならぬものがいっぱいありますので、そういうものを検討した上で検討する必要があるというぐあいに考えております。
○宮本(徹)委員 先日、「NHKスペシャル」でも、アメリカの中で愛国的な経営者の皆さんが、富裕層に課税を、そして最低賃金を引き上げようという運動をやられていることが紹介されていましたけれども、せっかくこういう経済同友会みたいな動きがあるわけですから、ここはぜひ富裕層の皆さんの課税強化に踏み出すことを、検討をお願いしておきたいというふうに思います。それから、あともう一点、所得税にかかわりまして、今、政府税調、与党税調で控除の見直しの議論が行われておりますが、この点にかかわって一問だけ質問させていただきたいと思います。昨年の論点整理の中でも、所得再分配機能を回復するんだ、このことが今度の議論の大元に据えられているというふうに思います。そういった場合は、やはり生計費非課税の原則というのが貫かれることが原則だというふうに思います。ただ、先日、この委員会の議論の中で、公的年金控除について与党の委員の方が触れられました。これは、縮小することになりましたら、私は高齢者の生活を考えれば大変厳しいと思います。年金生活者、夫婦世帯で見ますと、課税最低限は今でも二百八万円、社会保険料や利用料、こういう負担増もいっぱい計画がされているわけです。前に私も質問しましたけれども、介護の問題でいえば、今でも利用料が高くて必要なサービスを抑制せざるを得ないという状況があるわけですよね。どうするのかということが考えられるわけですが、先日、この課税最低限が年金受給者と給与所得者で逆転している、世代間の公平から公的年金控除縮小みたいな議論がありましたが、私は逆でして、現役世代の控除が低過ぎる、現役世代の控除を引き上げる、基礎控除の引き上げあるいは低所得者の給与所得控除の引き上げなどによって全体の課税最低限を引き上げる、このことによって所得再分配機能の回復を図るというのが大事だと思いますが、その点については、大臣、いかがでしょうか。
○麻生国務大臣 いわゆる課税最低限、ここまでは税負担が生じないという収入の水準、最低水準を示す指標のことですけれども、これはあくまでも、基礎控除とかいわゆる給与所得控除とかといったいろいろな控除がありますので、その控除の額を積み重ねた結果として計算されているものですから、そのあり方を考える際には、その控除の一つ一つをきちんと考えた上で検討する必要がある。まずこれが大前提だと思っております。その上で、個人所得課税における諸控除のあり方につきましては、一人一人の働き方とか家族のあり方の変化とかいった、先ほどのお話と関係しますけれども、経済社会の構造変化というものも考えながら、公共サービスというものを賄うための負担につきましても、所得税としてどのような税負担を求めるのが適当かといった観点も含めて検討していく必要があるものだと考えております。したがいまして、こういうあり方の検討なくして、あくまでも計算の結果である課税最低限のみに着目するというのは、水準の議論とかいろいろありますけれども、必ずしも適当ではないと考えております。
○宮本(徹)委員 やはり、税金というのは幾つかの原則を置いた上で考えるべきだと私は思います。特に所得税でいえば、やはり、生計費非課税というのが一番の大原則になるのではないかというふうに思います。そして今、控除の見直しの議論をずっとされていますけれども、このことを税収中立でやるんだということになっているわけですよね。控除の見直しを税収中立だけでやろうとしたら、これは高所得者じゃない方にも負担がふえる可能性があります。ですから、私、先ほど言いましたけれども、株式譲渡益や配当だとか金融所得課税を引き上げる、それとセットで控除の見直しをやれば、高所得者以外の方が負担をしない控除の改革というのができるんじゃないかというふうに思いますので、その点もぜひ検討していただきたいというふうに思います。時間になりましたので終わりますが、きょうは消費税増税延期法案ですが、延期実施ではなくて、きっぱり断念することを求めまして、質問を終わります。ありがとうございました。