衆院予算委員会は21日、2017年度予算案に関する中央公聴会を開きました。予算案について公述人の小田川義和・全労連議長らが意見陳述するとともに、自衛隊がPKO(国連平和維持活動)に派兵されている南スーダンの深刻な実情について日本国際ボランティアセンター(JCV)の今井高樹氏が陳述しました。
今井氏は、自衛隊が活動する避難民保護施設の周辺地が「ジュバの中で最も不安定な、何かしらの衝突が起こっても全く不思議ではない場所だ」と指摘。施設内に避難する元副大統領のマーシャル氏の出身部族に対し、政府軍が襲撃を繰り返していると話し、「日本政府は『ジュバは落ち着いている』というが、(停戦合意の成立などを派兵の要件とした)PKO5原則は崩れている」と強調しました。
国会審議で紛糾する南スーダンPKOの陸上自衛隊部隊の日報をめぐり、「戦闘」という言葉を稲田朋美防衛相が「武力衝突」と言い換えたことに対し、今井氏は「言葉遊びのようなものだ」と批判。「現地からみれば、みなさん自分の家族を亡くし、あるいは家を追われ、いまも避難生活を続けている。多くの方が亡くなった。国会でどう表現しようと現場で起きていることは変わらない」と訴えました。
日本共産党の宮本徹議員は、日本政府が昨年12月、国連安全保障理事会での南スーダンへの武器輸出禁止の制裁決議案に棄権し、廃案に追い込んだことに対する見解を尋ねました。今井氏は、「実際に戦闘が起こっている中では(武器禁輸は)何よりも重要だ」とするとともに、正規輸入ルート以外に周辺国から武器が流入する現状も指摘。「(禁輸だけではなく)どうやって和解を達成していくかが重要だ」と述べました。

以上2017年2月22日付赤旗日刊紙1面より抜粋

全労連の小田川義和議長は、政府の「働き方改革実現会議」で残業時間規制の上限を「年間720時間」などとする案が出されていることについて「到底賛同できるものではない」と指摘。「過労死認定基準さえ超える時間が、なお検討の対象となっているとすれば論外だ」と批判し、労働者の実態を踏まえて①最低賃金の大幅引き上げ②同一労働同一賃金の実現③労働時間の規制強化‐を緊急に議論するよう提案しました。
一方、連合の逢見直人事務局長は、安倍内閣が国会に提出している「残業代ゼロ」法案に含まれる裁量労働制の拡大について、「ノルマを持たされた営業マンが働く時間を自由にコントロールできるとは思えない。長時間労働を助長しかねない」と反対を表明。「健康確保のために労働時間を適切に把握することは重要だ」と強調しました。
日本共産党の畠山和也議員は、国際労働基準に照らして日本の労働実態をどうみるかなどについて質問しました。小田川氏は、日本が労働時間規制に関する国際労働機関(ILO)条約を批准しておらず、「法定労働制がありながら、さまざまな抜け道がある」と強調。逢見氏は「ヨーロッパでEU指令に入っているインターバル(勤務の間の休息時間の確保)規制を、わが国にも入れる必要がある」と述べました。
一方、政府の給付型奨学金について、東京大学の小林雅之教授は、国公立大に通う自宅生が授業料減免と給付型奨学金を併用できない点に「明確に反対だ」と表明。教育無償化と改憲を結びつける議論についても「むしろそれ以前にやることがたくさんある」と否定的な見解を語りました。日本共産党の宮本徹議員の質問に答えました。

以上2017年2月22日付赤旗日刊紙2面より抜粋

≪2017年2月21日 衆院予算委員会公聴会第1号 議事録≫ 

○葉梨委員長代理 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。きょうは、お忙しい中、貴重な御意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。まず、小林公述人にお伺いいたします。今回、給付制奨学金が初めて創設されるという予算案になっておりまして、画期的だというお話もありまして、大事な一歩だと私たちも考えております。それで、総理も、誰もが希望すればどんな家庭に育っても大学に進学できる環境を整えなければならないというふうにおっしゃったわけですけれども、実際にそういう状況をつくり出そうと思ったら、例えば給付制奨学金でいえば、将来的には、年収でいえばどこぐらいまで広げる必要があるのか、あるいは大学の授業料の水準というのはどこぐらいまで下げる必要があるとお考えなのか、お聞かせください。
○小林公述人 御質問ありがとうございます。ただし、大変難しい質問でありまして、簡単に計算はできないのでありますけれども。高等教育の場合は、進学率をどの程度に設定するかということが一つのポイントになります。と申しますのは、全ての者が進学するというわけではなくて、義務教育ではありませんので、それをどうするかということが一つ規模の推計に当たっては重要なことになります。それから、進学率を設定した上で、どの程度のものが必要かということになるわけでありますけれども、授業料水準については、日本は国際的に見て非常に高いということは言えますけれども、これがどの程度適正な水準になっているかということは実は簡単に計算できないというような性格を持っておりまして、国際的に比較して高いということは言えるんですけれども、それがどの程度高いか、あるいは適正であるかということはなかなか簡単に判断できないということであります。これは私の方で勉強不足でありまして、もう少し研究した上でお答えしたいというふうに思っております。済みません、お答えになりませんが。
○宮本(徹)委員 引き続き小林公述人にお伺いしますが、先ほどの資料を見ていましたら、国立大学でも収入による進学率の格差が大きく広がっているというグラフがありました。それで、今度の給付制奨学金で、国立大学の場合、授業料免除を受けて、減免を受けた場合は、自宅生は二万円ではなくてゼロ円にする、自宅外生も三万円と言っていたのが二万円になるという方向で今検討がされているわけですけれども、こういうことをしますと、国立に通う学生にとっては進学の後押しにこの給付制奨学金がならないんじゃないか、この点は再考が必要なんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○小林公述人 この点については、私も、明確な意見としてそういうふうに思います。といいますのは、給付型奨学金の方が今回先に予約でもらえるわけでありますから、それが国公立大学に進学した場合に授業料減免を受けられないということになりますと、結果的に非常に苦しい生活を強いるということになります。授業料減免を得て、しかも、生活費を給付型奨学金で、あるいはアルバイトをして、あるいは貸与奨学金を受けて初めて進学できるというような階層の子供たちがたくさんいるわけでありますので、併用ができないということについては私は明確に反対であります。
○宮本(徹)委員 それから、今度の給付制奨学金の財源なんですけれども、いろいろなところから捻出することになっていますが、そのうちの一つが、今ある給付制奨学金を見直して、出す。一つは、大学院生の奨学金の返済免除制度を縮小していくということ、それからあと無利子奨学金、一定の収入がある世帯に対しては借りられる額を制限していくということも給付制奨学金の財源の一つとして今検討をされております。これでは、本当に困っている人を助けるための給付制奨学金をつくることによって新たに困る学生、院生が出てしまうということになるので、こういうのも改める必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○小林公述人 その議論については詳しくはお聞きしておりませんが、大学院生に関して申しますと、これは、この制度自体が非常に変則的な制度でありまして、優秀者免除と申しまして、一割が全額免除、二割が半額免除というような形で返還の免除をするという形になっておりますけれども、これ自体が非常に予見可能性が低い制度でありまして、私はこれは問題であるというふうに思っております。別の問題ではありますけれども、これによって、大学院への進学というものが非常に予見可能性が低くなるというような問題をはらんでおりますので、この制度をさらに縮小するということは非常に問題があるというふうに考えております。それから、もう一つの点につきましては、済みません、私は今初めて聞きましたので、回答できませんので、申しわけございません。
〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕
○宮本(徹)委員 もう一点、小林公述人にお伺いしますが、今、教育の無償化、かなりここでも議論されるようになっておりますが、それを憲法改正と結びつける議論があるわけですが、高等教育まで含めた無償化はもちろん憲法に書かなくても政策判断で当然できるものなわけですけれども、これをあえて政治的思惑を持った憲法改正と結びつける議論についてどういうふうにお考えなのか、お聞かせください。
○小林公述人 これは非常に慎重な検討が必要な事項であろうというふうに考えております。と申しますのは、例えばドイツの場合でありますと、憲法あるいは高等教育の大綱法というような法律がありまして、そこに高等教育まで含めて無償にするということがあります。ところが、現実の問題としては、連邦制でありますので非常に複雑な問題ですけれども、授業料を徴収していたということがあります。最終的には、憲法によって、授業料は徴収しないということになったわけでありますけれども、そこに至るまで非常に何十年という長い時間がかかっております。日本の場合には、国際人権規約を批准したのが数年前でありますので、私立大学が非常に多いということもありますので、この中で憲法改正のみで高等教育を無償化するということをいたしましても、それだけではなかなか問題は解決しない、むしろ、その以前にやることがたくさんあるのではないかというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。続いて、今井公述人にお伺いします。きょうは本当に、南スーダンの状況が大変詳しく、よくわかりまして、日本としてもいろいろなことを考えなきゃいけないということもわかりました。それで、きょうお伺いしたいのは、昨年十二月に、国連安保理で南スーダン政府に対する武器禁輸などを定めた制裁決議案が出されましたが、日本政府は中国やロシアなどと一緒に棄権するということになって、これは廃案になってしまったわけですが、今の南スーダンに対して武器を禁輸していく、これはどういう意味があるというふうにお考えでしょうか。
○今井公述人 武器の禁輸は、もちろん多くの武器が南スーダンに入ってきています。その中には、小火器もあれば、あるいは、私の話の中で言ったような戦車ですとかヘリコプターもあります。ですから、そういった意味で、それが実際に戦闘を起こして人々を殺しているわけですから、武器を禁輸することは、それは何よりも重要であると思います。ただ、武器を禁輸すればそれで戦闘がやむのかというと、そうではないと思います。といいますのは、やはり正規の輸入ルートではなくて、周辺国から流れてくるような、例えば、武装勢力が隣の国に出て、そこで何らかの形で武器を得て、また入ってくるといったようなルートもありますし、それだけで、つまり、武器の禁輸だけで武器はとめられない。あるいは、もっと言いますと、武器も使わないような、つまり、おのとか、なたとかといったもので殺傷しちゃうというようなことも行われています。ですから、武器禁輸はもちろん必要だと思います。ただ、その上で、それだけではない、どうやって和解を達成していくかということが重要だと思います。
○宮本(徹)委員 ありがとうございました。熊谷公述人にお伺いをいたします。アメリカのトランプ政権の評価のところで好材料、円安、株高というお話がありましたが、一方で、円安は物価高を国民にはもたらして、先日もエンゲル係数が二十九年ぶりに高くなったという総務省の家計調査も出ましたが、円安が個人消費に与える影響についてはどのようにお考えでしょうか。
○熊谷公述人 御質問ありがとうございます。ちょっと私の資料の九十ページのところを見ていただくと、円安になったけれども輸出が伸びていないじゃないか、こういう議論がよくあるわけでございますが、ただ、もし円安になっていなければ輸出はもっと減っていたということですから、やはり円安になることが輸出を支えているところがある。そして、日本経済はやはり輸出主導型の経済構造でございますので、輸出が伸びると、そのことによって最終的には日本経済にとってもプラスの影響が及んでくるということがあるわけです。私どもが実際、定量的なシミュレーションを行ってみても、確かに、円安のメリットは主として大企業のところに及んでいる、これはあるわけでございますが、ただ、中小企業だとか非製造業も、これもわずかではあるけれども、やはりプラスの影響自体は出ているということがあるわけでございますので。私は、日本経済は、やはり構造から見れば、円安にして、そして輸出を支える、もしくは、企業の売上高が伸びることによって、そのことが国内の所得に還流するという、これらのプラスの効果があるんじゃないかと考えている。もう一つちょっとデータの御説明をさせていただくと、九十一ページの右側の図表です。右側の図表は、円安で日本の企業の売上高が海外で伸びることによって、そのお金が日本に還流をしてきて、これが個人消費を支える。具体的には九十一ページ右側の真ん中の黄色い部分でございますけれども、円安で日本企業の海外の売り上げがふえて、そのお金が日本に流れ込むことによって、個人消費は二・四兆円程度支えられている。ですから、これらの面で見れば、円安に功罪があることはわかりますけれども、やはり日本の場合は円安にした方が、適度な円安にするのであれば経済にとってはプラスである、こういう考え方でございます。
○宮本(徹)委員 最後に、熊谷公述人と高橋公述人にお伺いをいたします。今の日本経済の状況を見ていまして、私は必ずしも経済の好循環が生まれているとまでは言い切れないというふうに見ています。やはり個人消費が低迷が続いているということもあります。総理は、確実に経済の好循環が生まれています、こう言い切るんですけれども、こう言い切れるほどの状況になっているのかどうかというのをお二人の公述人にお伺いしたいと思います。
○熊谷公述人 確かにまだベースアップが大きく来るところまでは来ていないわけでございますが、ただ、大きな流れとしては、例えば、名目GDPでいえば四十四兆円増加をしている、それから地方経済等についても、さまざまな指標で見て、例えば有効求人倍率が全ての県で一を超えているような状況でございますので、課題が残っている、道半ばであることは事実ですが、大きな流れとしてはやはり経済の好循環が徐々に回り始めているんじゃないか、こういう認識でございます。
○高橋公述人 経済をどのように見るかということなんですけれども、二つの見方、指標があると思います。一つはGDPで見るもの、あともう一個は雇用で見るものですね。先ほど私、説明したように、財政政策の方ですと比較的GDPの方に影響があって、金融政策が雇用です。それで、どちらを見るかというと、私が官邸にいたときに、ミニマムラインをどっちに引くか、普通は雇用です。ですから、雇用がよければ実は六十点ぐらいとれて、さらにGDPがよければ、実はかなりそれの上の八十点、九十点になるというところだと思います。そこで考えますと、金融緩和しているので、実質金利が下がって、かなり雇用はよくなっています。ですから、そのところで思うと六十点の及第点はとれている。ただし、GDPの方の話、これは実は財政政策の話なんですけれども、消費増税してしまいましたので、あれは大失敗ですね。あれがなければ非常によかったと思います。その意味で、今は、消費増税の失敗があって金融政策がよかった、そういう話なので、六十点か七十点、そういうレベルだと思います。あとは、これは今後財政政策をどのようにやるかということにかかってくると思いまして、そこで財政政策を入れれば、多分これはいい方向に行くんじゃないかなというふうに思います。
○宮本(徹)委員 どうもありがとうございました。