2017年2月23日 衆院予算委員会第五分科会 ハンセン病療養所の医師不足解決を

日本共産党の宮本徹議員は23日の衆院予算委員会分科会で、国立ハンセン病療養所の医師不足について政府の対応を求めました。
全国に13ある療養所の医師の充足率はこの5年で85%から72%に低下し、東京都東村山市の多摩全生園では昨年、4人いた内科の常勤医師のうち2人が退職し、現在では血液と透析が専門の内科医が各1人という状況になっています。
宮本氏はこうした実態を示し、「入所者が安心して暮らせるよう国は責任を果たす」との立場に変わりはないかと追及、塩崎恭久厚労大臣は「責任を果たしていく」と答えました。
宮本氏は全生園では医師確保の努力をしても給与面で話しがまとまらなかったことが何度もあったと園長が述べていることを紹介。国立病院機構の医師とも給与面で格差があることや、同じく医師確保が課題の法務省の矯正医官は特例法で一昨年から兼務ができるようになったことを指摘し、政治決断し処遇の改善をと求めました。
塩崎厚労相は医師不足の原因について「処遇面での課題がある」と認め、財源の問題にふれながら「関係省庁に言うべきことは言い、努力を重ねたい」と述べました。
宮本氏は「全国の療養所の医師の定員は146で財源は理由にならない」と述べ、政府として至急対応するよう重ねて求めました。また副園長がいない園が全国で5あるなど医官である園長、副園長の後継者不足も深刻と指摘、定年の見直しなどが必要とただしました。

≪2017年2月23日 衆院予算委員会第5分科会第2号 議事録≫

○山下主査代理 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)分科員 日本共産党の宮本徹です。きょうは、まずハンセン病療養所の医師不足についてお伺いしたいと思います。大臣も、多磨全生園はよく御存じだと思います。私も、正月に新年の挨拶に行ったときに、入所者の方から、お医者さんがやめて大変なことになっているという話を伺いまして、今月の初め、改めて多磨全生園の方をお伺いしまして、園長先生だとか、あと入所者の皆さんにお話を伺ってまいりました。多磨全生園では、昨年、常勤の医師の退職が相次いで、特に内科医は、四人いた常勤医のうち二人が退職されて、補充が常勤医としてはされていないということなんですね。残っている二人の内科医の方は、内科医といっても専門がありますから、一人の方は血液の専門だ、もう一人の方は透析の専門だというお話なんですね。入所者の皆さんからは、今までの先生だったら判断がついたような病気も判断がつかずに、園外の病院に行かなきゃいけないようなこともあったりするんだ、夜にぐあいが悪くなったときは大変不安だ、こういうことをおっしゃっていました。命と健康、暮らしを守るためにも、医師不足を解決するのは緊急の課題だというふうに思っております。塩崎大臣に改めて確認いたしますが、ハンセン病療養所の入所者の皆さんが最後の一人まで安心して暮らせるよう国は責任を果たす、この立場には変わりはないですね。
○塩崎国務大臣 国は、長年にわたるハンセン病隔離施策とらい予防法によってハンセン病政策の被害者に多大な苦痛と苦難を与えてきたことについて真摯に反省をして、衷心より謝罪する立場にあるというふうに思っています。被害を受けた元患者の方々が良好かつ平穏な生活を営めるように、国としてこれからも適切な対策を講じていく必要があるというふうに思っております。特に、国立ハンセン病療養所の入所者の皆様方については、ハンセン病の後遺障害に加えて、高齢化が進んでいて、今、平均八十四・八歳ということであります。そんな中で、ハンセン病問題対策協議会における確認事項等に基づいて、入所者の皆様が在園を希望される場合には、その意思に反して退所、転園させることなく、終生、在園の保障をしているところであります。この点については、平成二十年に成立をしたハンセン病問題の解決の促進に関する法律にも明確に規定をされておりまして、引き続き、国としての責務を果たしてまいります。
○宮本(徹)分科員 国としての責務を果たされるということなんですけれども、なぜお医者さんが退職されるのか。定年で退職される場合もありますけれども、お話を聞いていましたら、一人の方は定年ではなくて、やめられたというお話だったんですね。お子さんの教育費の関係だというお話も伺っておりますが、やはり処遇、給与という問題が一因になっております。園長先生にお話を伺いましたけれども、新しい常勤医を確保するのも大変苦労されているんですよね。出身大学のつてをたどっていろいろな方にアプローチをして、やりがいを語って、うまくいきそうかなと思ったけれども、最後に給与の面のところで話がまとまらなかったというのは幾つもあるというふうにおっしゃいました。全国の十三の療養所を見ても、この五年で医師の充足率は八五%から七二%に低下しているわけですね。塩崎大臣自身は、療養所の医師不足の原因はどこにあるというふうにお考えですか。
○塩崎国務大臣 今御指摘をいただいた医師不足の原因でございますけれども、国立ハンセン病療養所において医師の確保が極めて困難となっている現状については、主に、離島であったり、僻地に存在をする施設が多いという地理的な問題などが理由として挙げられるというふうに考えております。
○宮本(徹)分科員 いや、私は今、多磨全生園のお話をしたんですよ。離島だとか僻地の話をしているわけじゃなくて、東京都内の話をしているわけですね。東京都内でこういう医師不足が起きている原因はどうお考えですか。
○塩崎国務大臣 やはり、処遇の面での課題というものがあるのは、先ほど先生からも教育費の問題の御指摘がありましたが、その問題についてもあるんだろうというふうに思います。とりわけ多磨全生園の場合には、都内ですから、そういうことであれば、東京都での他の職場との比較なども考えられる先生もおられるんだろうというふうに思うところであります。
○宮本(徹)分科員 そういうことなんですよね。ですから、常勤のお医者さんを確保するためには、やはり給与面での処遇の改善というのが私は不可欠だというふうに思っています。国家公務員の医療職の場合は、民間との差は大きくありますけれども、国立病院機構との差も今かなりあるわけですよね。国立病院機構のパンフレットなんかを見たら、「けっこういいぞ!!」、こういう医師募集のパンフレットを出していますよ。その中で、給料も、これだけ年収になりますよというのをアピールして集めているわけですね。ハンセン療養所の場合は、医師募集のパンフレットを出していますよ、でも給与面は書けないわけですね、書かれていないということになっております。それをアピールできないという面があるのは間違いないというふうに思います。同じように医師不足で苦労されているものに法務省の矯正医官があったと思いますが、矯正医官の場合は、御存じのとおり、法律も改正して、フレックスタイム制だとか、あとは兼業、ほかの仕事もできるようにするという改善もして、いろいろな工夫をして対応しているわけですよね。ただ、療養所の場合は、フレックスタイムだとか兼業なんてできないですよ、当直もやらなきゃいけないですし、入所者の皆さんの責任を負わなきゃいけないわけですから。そうすると、ここまで東京都内の多磨全生園でも医師不足が起きて、なかなか現場で解決できないということを考えたら、何らかの政治的な判断で処遇を改善する、何らかの手だてをつくるだとか、国家公務員の医療職の俸給表を改正するだとか、こういうことも必要になるんじゃないかと思いますが、大臣、どうでしょうか。
○塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、処遇の問題というのが人においでいただく際に一つの考慮要素として重要な部分を占めるということもあり得るということを申し上げましたが、安定的な医師確保を実現するためには、やはり給与を初めとする処遇についても、毎年度、私ども、関係省庁に対して必要な改善を要望しているわけであります。また、関係自治体あるいは医学部を持つ大学、国立病院機構などの機関に所長などが訪問しておりまして、医師確保についての協力を依頼するとともに、研修医に向けた全国的な病院説明会にも参加するなど、医師確保のためのアピールはさまざま今やっているわけでありますので、そういう努力も含めて医師確保を図らなければならないというふうに思っております。
○宮本(徹)分科員 ですから、今まさに、目の前で常勤医も補充できない、こういうことが都内の療養所にまで広がってきているという状況なんですから、ここは、毎年各省庁に要望しているという話はされましたけれども、大臣の政治決断が必要なんじゃないですか、大臣として何らかの手だてをとると。きょうは、全生園でインターネットでこの中継を入所者の皆さんが見ているというお話ですから、大臣の前向きな答弁をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、私ども、この国立ハンセン病療養所については、国の責務として、しっかりと、入園されている方々には、終生ここで暮らしていきたいという方々には暮らしていただけるようにする、そのための医療環境をどう整えるかということでありますので、今お話がありましたように、処遇、もちろんこれは財源あっての物種でもございますので、私どもとしては、先ほど申し上げたとおり、関係省庁にもしっかりと言うべきことは言いながら、医師確保にもつながって、療養所におられる方々が安心して暮らしていけるようにしていきたいというふうに思っておりますので、引き続いて努力を重ねていきたいというふうに思います。
○宮本(徹)分科員 財源ということをおっしゃいますけれども、全体でいっても、医師の定員というのは、全ての療養所を合わせても百四十六ですよ。その財源が出せないという国であってはならないと思うんですよね。大臣もそう思われますよね。財源を理由にできないような話じゃないと思いますが、いかがですか。
○塩崎国務大臣 いや、これはやはり財源抜きには語れないことでありますけれども、財源だけを理由にしてできないことにするわけにはいかないということだと思います。
○宮本(徹)分科員 財源抜きにできない、財源を理由にできないという話には絶対ならないわけですから、ぜひ、いろいろな政治判断、政治決断を塩崎大臣のところで下していただきたいということを重ねて求めておきたいと思います。それから、あと、医師確保のためにはできることは何でもやるという姿勢が大事だと思うんですね。法務省の矯正医官、ポスターをつくっています。国会議事堂前の地下鉄の駅にも張ってありましたけれども、EXILEのATSUSHIさんを採用してこういうポスターを張って、一生懸命やっているわけですよ。法務省の矯正医官の募集を見ても、六つの魅力ということでいろいろなことが書かれてやっていますけれども、本当にそういうところも見習って努力をお願いしたいと思いますが、その点はどうですか。
○塩崎国務大臣 法務省も努力しているということでありますし、私どもも同様に、やはり努力をしないといけないというふうに思います。
○宮本(徹)分科員 よろしくお願いしたいというふうに思います。それから、園長も定年を迎えて後継者がなかなか見つからないという状況があります。副園長もいない園が五園にもなっております。定年延長をしても三回までというふうになっていまして、園の運営に見通しがなかなか持てないという状況もあります。医師の定年延長については、見直しが必要なんじゃないか、もっと長く安定して、一定の期間療養所で働けるようにする必要があると思いますが、この点はどうでしょうか。
○塩崎国務大臣 今、園長あるいは副園長の立場の方々の人材不足についてお話がございましたが、医師である園長及び副園長は、施設における医療と運営、両方を担っていただいているということでございまして、厚生労働省としては、その確保に今全力を挙げて取り組んでおるところでございます。一部施設におきまして、平成二十八年度に、それ以前は空席となっていた副園長を補充することができたといった成果も上げているわけであります。一方で、引き続き園長等を含む医師の確保が極めて困難でありますので、定年年齢の引き上げ、あるいは、三年を超えることができないと定められている定年後の勤務延長の年数の増加について、関係省庁に私どもとしても強く要望をしておるところでございます。引き続き、しっかりと医師確保のために努力をしていかなければいけないというふうに考えております。
○宮本(徹)分科員 全力を挙げて医師確保に取り組んでいただきたいということを申し上げまして、次の問題に移りたいと思います。もう一つ取り上げたいのが、二〇一五年度からスタートした生活困窮者自立相談事業についてです。二〇一三年に法律の制定が行われました。私たちの党は、この法律の制定に当たって、この法律が生活保護申請や、受給する際の水際作戦になってはならないということを言って警鐘を鳴らしてきたわけですが、制度が始まって二年近くになりますが、まさに危惧していたような事例が起きております。厚労省の通知を見ますと、生活困窮者自立相談事業と生活保護制度の連携について、こう書いています。「必要な者には確実に保護を実施するという生活保護制度の基本的な考え方に基づき、生活保護が必要であると判断される場合には、福祉事務所と連携を図りながら適切に生活保護につなぐことが必要である。」こう書いてあるわけですが、実際はそうなっていない現状を先日、私、聞きました。東村山市の市議会議員から聞いたお話を紹介します。六十九歳のAさん。年金がないので、ずっとガードマンで働いていたんですが、腰を悪くして仕事ができなくなり、貯金もなくなって、生活保護を受けたいと市の自立相談事業の窓口、ほっとシティ東村山といいますが、この窓口に行ったら、生活保護を受けたいと言ったのに、働きたいですかと聞かれて、新聞配達をやってはどうですかと言われたというんですね。本人は、もう腰も痛いし、バイクも乗れないので、できない。あとは死ぬしかないのかなとそのときは思ったそうです。ただ、この方の場合は、うちの地元の共産党の市議会議員にたまたま相談があって、一緒になって生活保護申請に行って生活保護を受けられましたけれども、窓口では帰されたという話になっているわけですね。それから、五十三歳のBさん。仕事を失って、三年間ホームレス状態にあった。精神的にも、うつ状態で、足も引きずっていた。病院にも行けずに、足のけがは紫色にひび割れて一部壊死している状態だった。この方も、生活保護を受けたいということでこのほっとシティ東村山の窓口に行ったら、仕事がしたいか、住み込みの新聞配達ならきょうにも行けますよと新聞配達を勧められて、なかなか生活保護につなごうとしなかった。ただ、この方の場合は、私どもの地元の市議会議員が同行していたので、生活保護の担当者を出してほしいと相当強く言って、それでやっと生活保護の担当者が出てきて、市議を交えての話をして、結果としては生活保護を受けられることになりましたけれども、こういう例が幾つも、ほかにもこの一人の市議会議員の方が相談を受けた例で出てきているということになっているんですね。こういうふうに、生活保護を受けたいといって来ているのに、生活保護の相談員にすぐつながずに引き延ばす。これは、この制度の運用としては極めて不適切だというふうに思います。これは、調査して、是正、指導が必要なんじゃないですか、大臣。
○定塚政府参考人 今御紹介いただきました東村山市の個別事案についてでございますけれども、私どもも逐一窓口の取り扱いを全部確認したわけではございませんが、私ども厚生労働省といたしまして、先ほど委員から御指摘ありましたとおり、通知においても、生活保護が必要な方は、生活保護の窓口に紹介をしてつなぐようにということを生活困窮の窓口にも徹底をしてきておるわけでございます。また、通知だけではなく、私どもの会議や研修会、その他あらゆる場を通じてそのような指導、周知はしてきておるところであり、今回、東村山市にもお伺いしましたけれども、東村山市におかれても、そのような方針であるということは変わりないというふうに伺っております。
○宮本(徹)分科員 そういう方針があったら、こういう事態が私たちの市議会議員のところに次から次へと相談が来るということにはならないわけですよね。この東村山市の事業を委託されているのはやまて企業組合というところですけれども、このやまて企業組合の職員会議に東村山市の職員が参加をして、何ですぐに生活保護に回すんだと強く言った、こういう話も私たちは聞いているわけですよ。それで、市はちゃんとやっていますよというのをうのみにして見逃すというわけにはいかないと思いますが、大臣、どうですか。
○定塚政府参考人 御紹介があった事案の一つは、昨年六月に市議会でも取り上げられているというふうに伺っております。この事案のことであれば、市からは、相談者が新規に相談に来られたときに、短時間なら就労したいという意向を示された、また、手持ち金も一定程度あったということで、本人の意向に沿って仕事を探そうということで翌日の来所を促したけれども、翌日は顔を出さなかったということで、再度相談窓口から連絡をして就職の話をしたというような経過があるというふうに伺っています。市としての方針は、先ほど申し上げたとおり、生活保護につなぐ必要がある方については、本人の意向や状況を踏まえてつなぐ対応をしている、早急につなぐ対応をしているというふうに申しております。ただ、いずれにしても、こうした窓口で相談者の意向とか健康状態をしっかり確認して、御本人、なかなかしゃべりにくいという方もいらっしゃるので、そうしたことをしっかり聞き取るアセスメント能力、これがしっかりしていないと窓口が適切な対応をできないのかなと思っておりますので、私どもとしても、そうした窓口の対応をしっかりできるような人材を育てていく、これを自治体と一緒に進めていくことが一番重要ではないかと思っているところでございます。
○宮本(徹)分科員 私は、職員会議で市の職員が何と言ったのかという証言まで紹介しているわけですよ。何ですぐに生活保護に回すんだというのを、この委託事業を受けている事業者の職員会議に市が出てやったという話ですよ。もうちょっとちゃんと調査する必要があるんじゃないですか。大臣、どうですか。
○山下主査代理 まずは定塚局長、後、大臣で。定塚局長。
○定塚政府参考人 今御紹介いただいた事柄については私どもとしても確認をしておりませんので、その点については市に再度確認をしたいと思います。しかしながら、大きな方針としては、そのような、先ほど申し上げたような方針であるということを市からも確認しておりますので、我々も、市がその方針に沿って適切に行っていただくように引き続き支援をしてまいりたいと考えております。
○山下主査代理 では、引き続いて、塩崎厚労大臣。
○塩崎国務大臣 基本は、先ほど来御答弁申し上げているように、御本人の意思がやはり一番大事でありますから、それを踏まえた上で、この相談窓口の対応としては、生活保護を必要とするということであれば、福祉事務所の生活保護担当を紹介して、そちらに行っていただくというのが基本だろうと思うので、今局長の方から申し上げたように、この個別ケースについてどうなのかということについては、もう一回確認をしてみるということでございますので、そういうようにさせたいというふうに思います。
○宮本(徹)分科員 しっかり市に状況を把握して指導、調査していただきたいというふうに思います。私たち地元の共産党の議員団は、そういう話がいっぱい来るんですよ。市がやっているやっていると言っても、やっていたら私たちのところにそんな相談は来ないですよ。相談が来るというのは、そういうことなんですよ。みんな困り果てて、自分たちが生きていくためにはどうにか助けてほしいということで多くの方が来るわけですから、本当に、市の言い分だけでなく、しっかり調査、指導していただきたいというふうに思います。そういう点でいえば、この「自治体における様々な取組事例」という中で、これは厚生労働省の検討会に出された資料で、東村山が例で出ていて驚きましたよ。「新規相談・プラン作成」、「市役所として「複合的な課題を抱えている人にはまず自立相談支援機関を案内する」ことが徹底されている。」というんですね。これから先に、ちゃんと生活保護が必要な人につながっていたらこれは褒められる話かもわからないですけれども、事実上の水際作戦のようになっていたら、およそ褒められる事例ではないということを申し上げておきたいというふうに思います。私は、この生活困窮者自立支援事業については、厚労省の通知から離れた実態がほかの自治体で起きていないか、こういうことが懸念、心配されるわけですよね。これは実態を全国的にしっかり調査する必要があると思いますが、大臣、どうでしょうか。
○定塚政府参考人 現在、私どもは、生活困窮者自立支援制度の見直しということで検討会も始めているわけでございます。こうした検討会を通じて、あるいは各自治体からのヒアリング、それから自治体だけではなくて生活困窮者を支援する方からのヒアリング等も進めておりますので、そうした中で御指摘のような事案がないかどうかというのはしっかり把握をしてまいりたいと考えております。
○宮本(徹)分科員 検討会をやられているということですけれども、やはり全国的にこれは調査しないとわからない話ですよね。それぞれの検討会に参加している方が把握している事例だけではなく、やはり全国の自治体でどうなっているのかというのをしっかり調査するよう重ねて求めておきたいというふうに思います。今、生活保護行政全体でも就労支援事業というのは進んでいるわけですよね。その中で改革工程表を見れば、数値目標なんかも入れて就労支援というのを進めているわけですけれども、やはり目標先にありきというふうになりますと本人の実態からかけ離れていく。本人が実際どういう支援が必要なのか、そこから離れて目標達成先にありきというふうになっちゃうと思うんですよね。ですから、私は、こういう事業において、生活保護の就労支援なんかも数値目標を掲げるというのはやめた方がいいというふうに思いますよ。もう一つ質問、残り時間が短くなったので先に行きたいと思いますが、この間、子供の貧困対策の中で生活保護制度の改善が一定見られました。しかし、現場で徹底されていない例というのもいろいろ聞いています。これは少し前の話ですけれども、高校生がアルバイトをしても進学費用のためにそれを貯金した場合収入認定しないという制度ができるようになりましたよね。それが半年以上現場に徹底されていないという例もあったというふうに聞いております。その件を地元の市議会議員が市にただしたら、厚労省から通知は来ていたけれども課長でとまっていて、忙しくてケースワーカーに徹底されていなかったという話があったわけですよね。本当にひどい話だと思います。昨年秋からは、この生活保護、奨学金についても、これを専門学校の受験料だとか入学金だとかに充てても保護費を減額しないということになったわけですけれども、では、こういうことがしっかり現場のケースワーカーまで徹底されているのか、私はこういうのをしっかりつかんでいく必要があるというふうに思います。あと、現場のケースワーカーの皆さんまで徹底されると同時に、やはり受給者の皆さん自身にもちゃんと知らされていく必要があるというふうに思います。生活保護を厳しくする際は、大体どこの自治体も、生活保護受給者の皆さんには案内が行くんですね。例えば、来年から資産報告が義務化されますという話だと、これは通知が全員に行われるということになっているわけですけれども、昨年秋から始まった、奨学金を専門学校の受験料や入学金に充てても収入認定しない、保護費を減額しない、こういうことについては、ほっておいて、別に、市は一生懸命告知するということにはなっていないわけですよ。ですから、制度の改善については現場のケースワーカーにやはり速やかに徹底する、これをしっかりつかむ必要がありますし、あとは受給者本人にしっかり告知される体制をつくる必要があると思いますが、この点、大臣、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 おっしゃるように、貧困の連鎖を断つためにはやはり教育というのはとても大事でありますし、そういうようなことを含めて大学等への進学による自立ができるようにしようということで、平成二十六年度以降、御指摘の、アルバイトで得た給与あるいは奨学金について、大学などの入学金や受験料に充てる場合それから学習塾代に充てる場合、こういったときは、収入認定して保護費の減額をするということなく手元にお金が残るように順次運用を改善してまいっているわけであります。こうした取り組みについては、その都度、自治体に対してもちろん通知をしますが、毎年開催をしております全国会議等の場において国から自治体の担当者にも資料を用いて説明を行っています。今後とも、もちろん制度改正の内容について丁寧に自治体の担当者に周知をして、より多くの生活保護世帯の子供が進学のための支援をしっかりと利用できるようにしていかなければならないと思います。また、今御指摘のあった、ケースワーカーにちゃんと伝わるということ、それに周知が行き届いていないということがあるという御指摘がありました。そういうところについても、ケースワーカーにもちゃんと伝わり、また本人に伝わるにはどういう方法が一番有効なのかということも考えて、今後、自治体に対しても指導を強めていきたいというふうに思います。
○宮本(徹)分科員 現場のケースワーカーまで伝わっているかどうかというのは、やはり通知を出して会議で決定して終わりじゃなくて、伝えたのかという報告をちゃんと求める仕組みをつくれば、それだけでも、伝えました、伝えていないというのが国としてつかめるわけですから、そういうことをやってはどうかというふうに思いますし、あと、受給者のところまでいろいろなものを、ちゃんと制度の改善を伝えるためには、例えば、お知らせの文書のひな形をつくって、これをちゃんと届けてくださいということを、そこまで徹底するということをやっていけば伝わるんじゃないかというふうに思いますので、そういう改善をぜひ検討していただきたいんですが、最後、どうでしょうか。
○山下主査代理 定塚社会・援護局長。なお、申し合わせの時間が既に経過しておりますので、簡潔に答弁をしてください。
○定塚政府参考人 今委員からも御指摘があったようなことも踏まえまして、周知方法をしっかり工夫してまいりたいと思います。
○宮本(徹)分科員 以上で終わりますが、ケースワーカーは、現場の忙しさもありますので、過重負担の解消には増員も必要だということを重ねて申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
○山下主査代理 これにて宮本徹君の質疑は終了いたしました。