2017年3月22日 衆院財務金融委員会 日米経済対話、日欧EPAと革靴産業

2017年3月22日 衆院財務金融委員会提出資料 

宮本徹衆院議員は22日の衆院財務金融委員会で、トランプ政権の閣僚や米国の農業団体から日本にいっそうの市場開放を求める発言が相次いでいることに懸念を示し、「真に平等な日米関係を貫くことが必要だ」と主張しました。
宮本氏は、トランプ政権のライトハイザー次期通商代表が上院財政委員会公聴会で、農業分野の通商交渉は「日本が第一のターゲットになる」とし、環太平洋連携協定(TPP)を上回る協定を日本と交渉すると明言していると指摘。「米議会と通商代表の要求が先鋭化する懸念はないと言えるのか」と追及しました。
麻生太郎財務相は、ペンス副大統領と日米経済対話が現在調整中だとし、「交渉相手がおらず、詰めようがない」と述べるにとどまりました。
宮本氏は「完全に否定できないのが深刻だ」と指摘。日米2国間交渉の中身について、政府が「米国の立場がある」との理由で国民に一切秘密にしていることを批判。「『決まりました』の一言で国民に負担や犠牲を押し付けることは絶対に繰り返してはならない」と強調しました。

以上2017年3月30日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2017年3月22日 衆院財務金融委員会第10号 議事録≫

○土井委員長代理 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。G20では、共同声明から保護主義に対抗するという言葉がなくなりました。トランプ政権の米国第一の姿勢の反映だと指摘されているわけです。そういう中で、四月から日米経済対話が始まります。今、アメリカの日本に対する要求がいろいろ取り沙汰されております。今月十四日に米国上院の財政委員会で公聴会が行われました。会議録を読みますと、通商代表に指名されたライトハイザー氏は、農業はTPPの受益者だった、だから我々は行動を起こし、新しい協定を交渉する、農産物の市場開放でも日本がプライマリーターゲットになる、こう述べております。麻生大臣、米国議会の公聴会でのライトハイザー氏、こういう発言があったというのは御承知ですよね。
○麻生国務大臣 御指摘のような発言をされているということは報道で承知しておりますけれども、今のところ、日米首脳会談における一連の会談を含めまして、米国からそのような要求があったということはございません。
○宮本(徹)委員 承知されているということですが、ライトハイザー次期USTR代表の発言を受けて、全米肉牛生産者・牛肉協会、NCBA、全米豚肉生産者協議会、NPPC、それからUSAライス連合会などが相次いで声明を出すなどして、日本に対する一層の市場開放を求める二国間交渉を期待するという状況になっております。麻生大臣に伺いますが、トランプ政権の対日要求をめぐって、USTRと米国議会の要求が一層先鋭化する、そういう懸念は一切ないと言えますか。
○麻生国務大臣 日米経済対話の具体的な構成や内容については現在調整を進めておるところですし、相手方はまだ下にスタッフがおりませんので、今の段階からUSTRのトップが言っても、その下が何を言っているか全然、相手がおりませんので私ら、詰めようがないというのが正直な実態です。その上で申し上げさせていただければ、日米関係というものをさらに大きく飛躍させていくというためには、これは日米両国が、アジア太平洋地域において、少なくとも開かれた地域の中において、経済対話を含めてきちんとしたルールをつくろうじゃないかという話を日本が持ちかけてこの話を立ち上げるようになったところでありますので、どちらかが一方的に物を言うとかいうような話にはならぬのだと思って、アメリカはアメリカの国益、日本は日本の国益というものをしっかり守りつつ、両方で話し合っていくというので、それが結果として、アジア太平洋地域を含めまして、発展する余地の極めて大きな、大西洋より太平洋側にあるように思われますので、そういった意味では、我々としては、力強い繁栄とかそういった経済成長とかいうものをこの地域でともになし得る、そういったルールづくりを目指してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 大臣がそういうルールづくりを目指されるということですが、一方では、農業団体、アメリカの側からはどんどん強い要求が出てきているわけですよね。そういう要求がさらに先鋭化するということを大臣も否定できないところに私は事態の深刻さがあるというふうに思っております。
そして、米国のトランプ政権は、今月八日のWTOの対日貿易政策審査に合わせて意見書を出しております。この中でも、日本に対する貿易赤字は米国に深刻な懸念を残した、こう表明して、自動車の非関税障壁や農産物の高関税を批判して、市場開放を通じて貿易赤字削減に取り組むよう求めているということになっています。さらに、国家通商会議のナバロ委員長も八日、アメリカのマスコミに、米国の貿易赤字相手国は製品ごと、業界ごとに一定期間に赤字削減で米国に協力すべきだと主張して、この中でも日本を名指しするということになっております。麻生大臣にお伺いしますが、トランプ政権はなぜここまで日本に対して市場開放と米国製品の購入を求めるんでしょうか。
○麻生国務大臣 なぜと言われても、これは相手に聞かれる方がいいのであって、私に聞くのは間違いで、自分でお聞きになった方がよろしいんだと思いますけれども。少なくとも、今、御存じかと思いますけれども、日本の自動車輸入に関しては、これは関税がかかっていないということをライトハイザーが知らないと。まあ、何十年か前、USTRにいましたから、その知識がそのままとまっていれば、ないですよ、多分。そのときのままだと思っていれば。あのときは高かったから。しかし、今はありませんから。関税がかかっているのはアメリカの方ですから。日本の関税二・五%がかかっているのは向こう。我々は全くかかっていませんから。これは事実です。だから、そういった話を含めて、いかなる差別的なものもないのははっきりしておりますし、私どもとしては、きちんと、農業分野の関税水準等についても、これはもう間違いなくWTO等の協定等々を整合的に実施しておりますので、我々はこういった会議の場できちんとそういった話を繰り返していくだけなのであって、時間等少々あれはかかろうかとは思いますけれども、日本で自動車を売りたければ、少なくとも右ハンドルぐらいの車をつくらないかぬでしょうね。
○宮本(徹)委員 アメリカの側は、先ほどのWTOの意見書でも、自動車の関税があるというふうに日本に言っているわけじゃないんですね。自動車の非関税障壁を撤廃しろということを向こうは盛んに言ってきている状況があるわけですよね。昨年の国会でもTPPの問題は議論になりました。TPP交渉だとか日米並行交渉の場でも、アメリカは日本に対して、保険、金融、農林水産、畜産、医薬医療品、政府調達、知的財産などで非関税措置を緩和、撤廃するよう要求し続けていた。これがずっと議論されてきたわけですよね。麻生大臣にお伺いしますが、トランプ政権は日本の非関税措置の緩和、撤廃に引き続き問題意識を持っている、これはお認めになりますね。
○麻生国務大臣 向こうがそう言っているんだからそうなんでしょう、多分。ただ、私は直接聞いたことは一回もありません。その上で申し上げさせていただきますけれども、日本の非関税障壁が対日貿易の赤字であるという話をしておられるんですけれども、これは、ライトハイザーなんかが一九九一年にやっていたときのアメリカの対日貿易赤字の占める比率は五八%ですから、今は九%ぐらいかな、今とは全然違っていると思っておりますので、そういった意味で米国の貿易赤字に占める対日の割合というものがそれだけ下がってきておりますので、先ほど、一位の中国とかと比べましても圧倒的に我々が低い上に、対米投資をえらく求めておられますけれども、対米投資に関しましては、アメリカに対する対米直接投資は一番がイギリス、二番が日本だと思いますので、そういった意味では、アメリカ国内に八十四万、五万の直接雇用というのを我々はやっておりますので、そういった意味では、日米両国の関係というのは一九九一年代の、あのころの話とは全くさま変わりしているというのが実態なんだと思っておりますので。いずれにしても、こういったようなことを両方、知識、現状認識というのをきちんと一致させた上で話をしていくというのが大事なことかなと思っております。
○宮本(徹)委員 現状認識を一致させるのは大事なわけですけれども、とにかくTPP交渉の際は、同時並行で行われた日米交渉も、その交渉内容の詳細というのは、相手国があるからということで、国民には全部秘密だったわけですよね。交渉中は一切だんまりで、その後、決まりましたということでいろいろなことが出てくるということがあったわけですけれども、こういう、交渉中は一切国民には明らかにせずに、決まりましたということで国民にいろいろな負担や犠牲を押しつけるということが繰り返されては絶対にならないというふうに思いますし、真に平等な日米関係、これを貫いていかなきゃいけないということを申し上げまして、次に、関税にかかわって、輸入革靴の問題についてお聞きしたいと思っています。革靴産業は東京の地場産業でもあります。この間、日欧EPA協定等で革靴と皮革部品の関税率が低下しております。この影響で革靴の輸入が増加して、職人さんだとか零細事業主さんの生活を脅かしているという状況があります。一九八六年度から革靴輸入は関税割り当て、TQ制度に移行して外国製革靴の輸入がふえ、現在では、TQ枠に加えて関税特恵国からの輸入、さらにはスポーツ靴と称する革靴、こういうのも加えますと、輸入革靴は年間四千万足という事態です。外国製の革靴が国内産業を圧迫する事態となっております。履物協議会の二〇一五年のアンケートによりますと、長時間労働のもと、四十年以上の熟練労働者が半数を超えております。年収二百万円未満の方が二八・七%、三百万円以下まで入れますと八六・六%を占めている。雇用保険や退職金もない職人さんが大勢いるというのが現状です。きょうは経産省にも来ていただきましたが、革靴業界のこの実態をどういうふうにつかんでいるのか。皮革産業の実態に即した支援が必要じゃないかと思いますが、どうでしょう。
○土田政府参考人 お答え申し上げます。委員御指摘の革製履物製造業につきましては、中小零細企業が大半でございまして、ピーク時の一九九一年から二〇一四年までの間に、国内出荷額は四分の一以下に、事業所数は二分の一以下にそれぞれ減少するなど、大変厳しい状況であるというふうに認識しております。このため、経済産業省といたしましては、革製履物を含む皮革関連産業の競争力強化を図るため、皮革関連団体及び皮革関連事業者グループが実施する海外を含む販路開拓の支援、また地方公共団体が実施する技術者研修等の取り組みを支援するなど、必要な措置を講じてきているところでございます。今後とも、皮革関連産業の置かれている厳しい状況を踏まえ、製品の高付加価値化や海外を含む販路開拓等の取り組みを支援することを通じまして、革製履物を含む皮革関連産業の競争力強化に努めてまいりたいというふうに思っております。
〔土井委員長代理退席、委員長着席〕
○宮本(徹)委員 革靴産業は、先ほど言いましたけれども、代表的な東京の地場産業にもなっております。近年は、若い人たちに、皮革材料を扱う物づくりというものへの興味、関心も広がってきている面もあります。ただ、同時に、魅力ある賃金が保障されないということで、なかなか思い切って飛び込んでこられない状況もあります。ですから、そこは魅力ある賃金を保障できるような業界にしていくための支援を経産省には求めたいと思います。その上で、革靴業界の方から心配の声で聞かれるのは、日欧EPAの行方であります。ヨーロッパの側からは、革製品の関税を下げよという声があるわけですね。この上、革靴の産地であるヨーロッパから無税だとかあるいは低い税率で革靴が入ってきたら、国内産業はさらなる深刻な影響を受けるのは火を見るよりも明らかだというふうに思います。日欧EPAで革靴の関税率を下げるようなことだとかあるいは関税割り当て制度の割り当て数量を拡大するようなことがあってはならないと考えますが、経産省はどういう考えでしょうか。
○土田政府参考人 お答え申し上げます。日・EU・EPAにつきましては、可能な限り早期の大枠合意の実現に向けて、現在、交渉を継続しているところでございます。 具体的な交渉の状況につきましては、交渉中ということもあり、差し控えたいというふうに思いますが、経済産業省といたしましては、日・EU・EPAを含め、経済連携交渉に当たっては、関係業界からそれぞれの産業実態等を丁寧に聞き取り、またニーズを酌み取りながら交渉を行っているところでございます。いずれにいたしましても、引き続き、攻めるべきは攻め、守るべきは守り、国益の観点から最善の結果を追求してまいりたいというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 守るべきは守るに革靴業界をちゃんと入れて、あらゆる点で貫いていただきたいということを申し上げておきたいと思います。それから、麻生大臣にもお伺いします。昨年四月十四日に、革靴履物組合も含む二十三団体が、国民のための財務・金融行政を求める二〇一六共同行動実行委員会ということで、大臣宛ての要望書を出しておられます。その中で、革靴の関税割り当て制度は維持してほしい、関税率は従来の水準に引き上げ、今後引き下げは行わないことということが書かれております。私も関係者の皆さんからお話を伺うと、スポーツ靴と称した革靴の輸入の影響が深刻だ、こういう話もありました。麻生大臣宛ての要望書中でも、スポーツ靴や革靴、毛皮製の甲及び部品、パーツの輸入については厳正な税番適用と有効な規制措置をとること、さらに、国内産業の一層の空洞化を招くこととなる加工再輸入減税制度の対象品目から革製履物の甲を除外すること。かなり詳細な要望が大臣宛てに出されております。革靴産業が発展していくためにも、こうした靴工組合の皆さんの要望を真摯に受けとめる必要があると思いますが、大臣の考えをお聞かせいただきたいと思います。
○麻生国務大臣 この革靴産業をめぐる状況への対応というと、これは当然のこととして、この物資を所管しておられます、今答弁しておられました経産省において、国内の産業事情を踏まえて、国際的な環境や消費者に与える影響等々検討される事項があるんだと認識をしておりますが、要望書を、七項目だったか八項目だかいただいたと記憶しますけれども、財務省としても、そうした検討を踏まえまして、引き続き、物資所管官庁と協議を行って、すなわち通産省と協議を行ってまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 東京の地場産業である革靴産業をしっかり守るために、よろしくお願いしたいというふうに思います。最後に、残された時間で森友学園の問題についてお伺いしたいと思います。小学校の建設工事の費用について、金額の異なる三つの契約書が存在するということが今問題になっております。きょう、そのうち二通については資料で配付をさせていただいております。施工業者は、正しい金額はおよそ十五億で、七億五千万の契約書は森友学園側から私学助成の申請に必要だと言われてつくったと証言しております。それ以外に、二十三億の契約書もあるということですが。大阪府は、契約書が偽造された可能性もあるとして告発も検討しているということです。こうなると、国有財産審議会で森友学園から提出されていた収支計画書も、数字がもともと正しいものを出していたのかどうかという疑いが当然出てくると思うんですよね。麻生大臣にお伺いしたいと思いますが、国有財産審議会で森友学園から提出された収支計画について、偽りが含まれていた可能性はあるんじゃないですか。
○麻生国務大臣 これは佐川にお聞きになった方がよろしいんだと思うんですが、わざわざ、呼ばれないので、私に話させたいという気持ちだと思いますが。ありがとうございます、機会を与えていただきまして。本件については、これは、森友学園の方から国有地の取得等の要望書とともに、約二カ年分の決算書類や収支計画書の資料の提出を受けて、二十七年の一月にその時点の収支計画書等の提出を受けております。これらの資料の内容については、近畿財務局において事務的に審査を行った上で、二十七年二月の地方審議会に、森友学園に対して、買い受け特約つき定期借地契約を締結し処理する方針を付議して了承を得たところであります。審査時の収支計画書は二十七年一月に提出されたものでありまして、小学校建設工事の契約締結前のもので、実際の工事期間より相当前に作成された見積もりの計数であることから、その時点で収支計画書に偽りがあったかどうかを判断することは困難だと存じます。その後、貸付契約、売買契約を締結しているが、仮に契約後に建築工事費が当初の見積もりより上回るとなった場合において、森友学園が貸付料や売買代金、分割納付の話ですけれども、この支払いの遅延や用途指定に違反する事態が生じていれば、契約上の義務違反として、延滞金や違約金の請求のほか、契約解除等の措置を講じることが可能であったと考えられます。いずれにいたしましても、森友学園は、先般、小学校設置の認可申請を取り下げておりますので、国としては、まずは土地の返還を求める権利、いわゆる契約解除、もしくは買い戻し権利の違約金の請求等々を行使するなど、法令、契約上の措置を適切に講じてまいらなければならぬものだろうと考えられます。
○宮本(徹)委員 もともと、国有財産審議会は資金計画の確実性を審査する場だったわけですよね。ここでも議論になってまいりましたけれども、その審議会の場でも、森友学園の財政力というのは心配されていたわけですね。その際、建設費を小さくして財務面の心配を少なく見せかけていたという可能性は私は否定できないと思いますよ。それは、契約を結んだのはその後かもわからないです。しかし、あらあら、どれぐらい学校の建設費がかかるかというのはその時点でも出るわけですね。それを小さく見せることによって財務面の心配を少なく見せて、国有地を私たちは買うだけのお金があるんです、こういうふうにやっていた可能性はあるんじゃないですか。そういうところを、偽りが含まれていたかどうかということも含めて、今からでもしっかり審査をやるべきだということを私は申し上げまして、質問を終わります。