2015年2月26日 衆議院本会議 消費税増税・法人税減税法案への質問

2015年2月26日、衆議院本会議で宮本徹衆議院議員が初質問をおこないました。
以下は質問の大要です。 

私は日本共産党を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について質問します。
本法案は、景気がどうであろうと逆進性のある消費税を2017年4月から何が何でも10%に引き上げ、一方で、地方税と合わせ法人実効税率を2.51%も引き下げようとしています。このような極端な大企業優遇、庶民いじめは、断じて認められません。
本来、税制度は、利益や所得の大きなものに応分の負担を公平に求め、生活に困っている庶民の負担を軽くする所得再分配の機能をはたすものです。
ところが、法人税の実質の負担率は、国税庁の統計でも、資本金階級が大きくなればなるほど、低くなる不公平が生じています。所得税の実質負担率も、年1億円をこえると所得階層が高いほど下がっていきます。
総理、やるべき税制改革は、円安で過去最高の利益を上げている大企業や、株式の運用で大きな儲けのある富裕層へ、担税力にふさわしい負担を求める抜本的改革ではありませんか。本法案は、まったく逆であります。

総理は、多くの国民の声を無視して、昨年4月消費税率を8%に引き上げました。 総理は、17日の衆議院本会議で「昨年4月の消費税率引き上げが個人消費に影響を及ぼしたのも事実」と、答弁しましたが、 国民生活はどのような状態になったでしょうか。
同じ日に発表された総務省家計調査によると、勤労者世帯のすべての収入階級で2014年の可処分所得、消費支出はともに実質減少となり、高齢単身無職世帯の可処分所得は実質11%ものマイナスと、個人消費の冷え込みは惨憺たるものです。国民の暮らしは、食費を削り、教育費を削り、洋服代を削り、医療受診の抑制まで広がっています。
総理、国民の暮らしに重大な影響を及ぼし、個人消費を冷え込ませた責任をどう認識しているのですか。

 中小零細企業の経営も深刻です。全国の中小業者から「昨年4月から売上げが落ちたままもどらず先の見通しが立たない」「仕入れ単価がアップしたが販売価格にのせられず、生活が苦しい」との悲鳴があがっています。
衆議院経済産業調査室が1月に出した「最近の企業動向等に関する実態調査」によると、中小零細企業は「売上高の低迷」をはじめ「原材料品の仕入れ価格の上昇」など、円安が「マイナス面」に働いたとする回答が、大企業を上回っています。
総理が進めた円安と消費税増税が、大企業には莫大な利益を、中小零細企業には「アベノミクス不況」と言われるような経営悪化をもたらしたことは、明白ではありませんか。

貯蓄ゼロ世帯は3割をこえ、深刻な貧困が広がりをみせています。内閣府が今年1月にまとめたミニ経済白書では、消費税増税後に低所得者の収入と消費が最も大きく落ち込んだと分析しています。その原因が低所得層での非正規労働者の拡大と消費税増税の影響であることは明白です。
総理、低所得者ほど負担が重く、逆進性の強い消費税のさらなる増税が、いっそうの格差と貧困を広げるという認識はありますか。

消費税率を引き上げるとき、総理は、財政再建のため、社会保障充実のためと言いました。総理は、今国会でも「社会保障制度の財源としては、消費税がふさわしい」と何度も繰り返していますが、なぜ消費税なのでしょうか。
社会保障制度とは、所得を再分配し、すべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障するものです。低所得者ほど重い負担になり、健康で文化的な最低限度の生活をこわす消費税増税は、社会保障制度の財源としてはもっともふさわしくないと言わなければなりません。

 総理、消費税増税のたびに国民のくらしと、中小零細企業の営業を壊し、景気を後退させてきました。2017年に、消費税率10%を強行するならば、この過ちを繰り返すことになります。消費税10%はきっぱり断念すべきです。

 つぎに法人税について質問します。
来年度の税制「改正」は、「企業は収益力を高めれば、継続的な賃上げが可能となる」とし、「稼ぐ力のある」企業への減税を進めるとしています。しかしながら、輸出企業を中心とする大企業は円安を背景に巨額の利益を稼ぎ、内部留保も285兆円にまで膨れ上がりました。総理、大企業だけがもうかることで、どうして全国の労働者の「継続的な賃上げ」になるのでしょうか。説明をしていただきたい。

 本改正による法人税率の引き下げは、黒字大企業中心に1兆6000億円もの減税をもたらすものです。与党税制大綱は、2016年度以降も法人税実効税率をさらに引き下げ、数年で20%台にしようとしています。これは財界の身勝手な要求にほかなりません。大企業優遇をいっそう拡大する税制措置は、断じて容認できません。

総理、法人税率の引き下げ競争は、各国の財政事情を悪化させ、世界で大問題になっています。いま必要なことは、法人税率の引き下げ競争をやめさせることです。
総理、国際的な協調で法人税率を引き上げるために、日本政府こそ、積極的な役割を発揮すべきではありませんか。

政府は法人税率引下げの財源として、課税ベースの拡大を行うといい、そのひとつとして、研究開発減税の縮減をあげています。ところが、本法案では、研究開発費が増えなくても減税される「総額型」の拡充をしているではありませんか。研究開発減税はその92%が大企業に恩恵をもたらすものです。2013年度をみると、前年度比1.6倍近い6240億円に膨らみ、なんとトヨタ1社で1200億円もの巨額な減税の恩恵を受けています。研究開発減税の20%を1社で享受していることになります。
総理、このような大企業優遇制度こそ縮小するべきではありませんか。

外形標準課税の拡大が重要な財源と位置付けられてることも大問題です。外形標準課税は、給与総額にも課税するものです。赤字企業まで増税となるのがこの税制です。外形標準課税が拡大すれば、税負担を避けるために派遣や請負への置き換えが進むのは明らかではありませんか。

また、外形標準課税の中小企業への拡大の検討が、与党税調の税制改革大綱に盛り込まれているのは重大です。中小企業は7割が赤字でありながらも、懸命に地域の雇用を維持しています。総理は国会質疑の中で外形標準課税の中小企業への拡大は「慎重に検討」と述べましたが、中小企業の廃業や倒産をさらに広げる外形標準課税の拡大は断念すべきであります。

 日本共産党は、消費税増税に頼らない道を提案しています。富裕層や大企業を優遇する税制をあらため、国民の家計を応援する政治に抜本的に切り替えることを求めて、質問を終わります。