2017年12月1日 財務金融委員会 富裕層課税強化を求める

宮本徹議員は1日の衆議院財務金融委員会で、2018年度の「税制改正」をめぐり、年収800万円のサラリーマンから増税にするという与党税制調査会内の議論に対し、サラリーマン増税をやめ、欧米に比べて低い株の譲渡益等への税率引き上げによる富裕層への課税強化こそ必要だと主張しました。
また、宮本氏は、給与所得控除等の縮小は国民健康保険料をはじめ社会保障制度にも大きな影響を与え、低所得者や中間層の負担増につながる危険があると指摘。給与所得控除等を削減した場合、基準額を変更しなければ、住民税非課税世帯が収入も増えないのに課税世帯となってしまい、保育料、給付制奨学金、高額療養費などへの影響が大きいことを指摘しました。その上で、税制改正にあたっては、社会保険料や住民税まで視野に入れて、低所得者や中間層の負担増に絶対ならないようにすべきだと求めました。
麻生大臣は、「ご指摘の社会保険等において、所得税、個人住民税の額に応じた負担、給付水準等が変化することは認識している」「見直しの内容が決定次第、各省庁に見直しの内容をきちんと説明したうえで、対応を要求していきたい」と述べました。
宮本氏は、年少扶養控除を廃止した際、対策を取らず、保育料が大幅に引きあがった自治体がある事を示し、対策を重ねて求めました。

以上2017年12月4日付赤旗日刊紙より抜粋

提出資料① 宮本徹事務所作成

《2017年12月1日 第195回衆院財務金融委員会第2号 議事録≫

○小里委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。引き続き、財務金融委員となりました。まず、来年度の税制改正についてお伺いしたいと思います。報道を見ていますと、所得税は、基礎控除の拡大と給与所得控除等の縮小がセットで議論されております。しかし、例えば基礎控除の拡大は賛成ということを本委員会でも言ってまいりましたけれども、給与所得控除等を減額すると、他の社会保険料だとか住民税にも影響が出てきます。やり方によっては、低所得者にも負担増ということをもたらす危険もあると思っております。資料を配っておりますが、例えば国民健康保険料の課税基準額というのは、所得からマイナス三十三万円、引くわけですが、給与所得控除を縮小すると、当然、国民健康保険料は負担増になるわけですよね。この基礎控除に当たる三十三万円を給与所得控除等の減額分に合わせて、その分引き上げるということをやれば、国民健康保険は給与所得者だけじゃないですから、自営業者もたくさん入っていますから、保険料収入全体はマイナスになるわけですよね。そうすると、その保険料収入の少なくなった分を別の方法でカバーしなきゃいけないという必要が出てくるということになります。もし、その別の方法として所得割の税率を引き上げるということになったら、これまた、結局、低収入の給与所得者の国民健康保険料も上がっちゃう、こういう問題も出てくるわけです。それから、下の方には住民税の計算式を載せておきましたが、住民税、これは非課税世帯になるかどうかというのも、当然、給与所得控除の縮小は影響します。これが縮小すれば、当然、非課税となる基準額も変更しないと課税世帯となるわけですよね。住民税は、課税世帯か非課税世帯かでかなり制度的にほかの面でも違います。保育料の減額、高額療養費の減額、あるいは給付制奨学金の対象になるかどうかも、住民税非課税世帯かどうかということになるわけですね。ことしの政府税調の中間報告を見てみましたら、個人所得課税の見直しが社会保障制度に与える影響について留意する必要がある、こういう指摘はされております。麻生大臣、私は、今、税調で議論されているさなかだと思いますが、所得税の改正、とりわけ、この給与所得控除等の縮小が波及して、所得の少ない方、こういう方々の国民健康保険料が、絶対負担増になってはならないと思いますし、あるいは、住民税非課税世帯が課税世帯になるようなことも絶対にあってはならないというふうに考えております。ですから、こういうことをやるんだったら、本当に手を打たなきゃいけない問題だと思っています。私自身は、基礎控除を拡大しても、所得が少ない方については給与所得控除等は縮小しないということも検討すべきだというふうに思っていますが、どういう方法をとるのであっても、関係省庁ともしっかり協議を行って、社会保険料や住民税、さまざまな制度への影響もしっかり視野に入れて、今度の税制改正、この影響で低所得者や中間層が負担増にならない策をしっかりととるべきだと考えますが、その基本的な考え方についてお伺いしたいと思います。
○麻生国務大臣 今の御指摘ですけれども、個人所得課税の見直しということにつきましては、これはもういわゆる所得税、個人住民税ともに与党税調で今審議の最中なので、具体的な内容は現時点で決まっているわけではありません。なお、御指摘のありました社会保障制度等々において、所得税とか、また、いわゆる個人住民税の所得金額に応じた負担とか、また給付水準等々が変化するというものが存在しているということは私どももよく認識をいたしておりますが、仮に今回の見直しによって所得税とか個人住民税の所得金額等が変わるということになる場合に関しては、これは関連する制度はほかにもありますので、そういったものを所管しておられる省庁、府省において、いわゆる見直しの趣旨を踏まえて適切な対応を検討していただく必要があるものだと考えておりますので、見直しの内容が決定次第、各府省に見直しの内容というものをきちんと説明した上で、対応を要求していきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 絶対、低所得者や中間層が負担増にならない策をしっかりとっていただきたいと思います。 年少扶養控除をなくしたときに、民主党政権のときでしたけれども、子ども手当をつくってというときに、時の政権は、自治体に対して、いろいろ手を打つように通知を出しました。保育料に波及しないようにだとか通知を出しました。しかし、例えば東京都内では、三つの自治体がその通知をある意味無視したわけですね。保育料が子供が多い世帯で一気に年間二十万円上がったりとか、そういうことも起きたということがありました。私もその相談に乗ったことがあります。ですから、この控除をいじるというのは、ほかの制度まで含めての波及というのは本当に大きいですから、絶対に庶民が負担増にならないという点をしっかり貫いていただきたいと強く求めておきたいと思います。それから、あともう一つ。報道では、この給与所得控除の縮小で年収八百万円ぐらいから増税という話が流れているわけですよね。年収八百万円というのは、私は高額所得者とは絶対言えないと思いますよ。中間層だというふうに思います。私は、所得税で最もメスを入れる必要があるのは、ここの委員会でも何度も言ってきましたけれども、やはり株のもうけに係る税率が低いために、所得が一億円を超えると、実際の税負担は所得が多い人ほど下がっていく、これは国税庁の資料でもはっきりしているわけですね。こういう状況を正すことこそ、所得税の見直しでも私は一番必要なことだと思っています。麻生大臣、やはりサラリーマン増税ではなくて、欧米に比べて低い金融所得課税の引き上げこそ検討すべきだというふうに思いますが、いかがですか。
○麻生国務大臣 御指摘のありました金融所得課税は、主に株の配当とかそういうことなんですけれども、これは平成二十六年の上場株式の配当のときのいわゆる譲渡益について、たしかあのとき税率を倍にして、一〇から二〇だったかな、そんなものだと思いますが、倍にしたんだと記憶しますので、あの倍にしたのが二年前だと思っておりますので、高所得者ほど所得税の負担率は上昇するという傾向が見られておりますので、所得再配分機能の回復には一定の効果があったのではないか、私自身はそう考えております。いずれにしても、今後の税率の水準というのは、このような効果というのを見ていくと同時に、やはり景気情勢とか市場の動向とか、また財政状況もありましょうし、税制とか社会保障等々に関しまして、いわゆる所得再分配の状況とか金融の所得課税のあり方とか、そういったいろいろなものを勘案しつつ検討する必要があるというのは、私どももそう思っております。
○宮本(徹)委員 検討する必要があるとはおっしゃいますけれども、先ほど言ったとおり、麻生大臣もおっしゃいましたけれども、一定の効果はあったわけですね、一〇パーを二〇パーに戻したことによって。さらに欧米並みに引き上げればもっと所得再配分には効果が出るということは間違いないわけですから、やはりサラリーマン増税を一方で言いながら、所得一億円を超える方々は実際の税負担、大金持ちほど低いという状況を放置しているというのは、これはとても国民の納得を得られるものではないということを強く申し上げておきたいと思います。