2018年3月5日 衆院議院運営委員会 日本銀行副総裁候補2氏に所見ただす

衆院議院運営委員会で5日、日本銀行副総裁候補の若田部昌澄、雨宮正佳両氏の所信聴取への質疑が行われ、日本共産党から宮本徹議員が質問に立ちました。
若田部氏は、現金融政策の物価上昇率2%を達成することが重要であり、必要であれば追加金融緩和はありえると主張しました。
宮本氏は「超低金利が地域金融機関の収益を低下させ破綻の懸念さえ起きている」と金融緩和政策の副作用の弊害を指摘しました。若田部氏は事態を認めつつも、「超低金利の影響はないとは言わないが、銀行数が過剰であることが問題」と述べました。
宮本氏は、日銀が金融緩和政策の出口に進めば金利が上昇するため、財政悪化を懸念して国債購入を続けざるを得ないとの指摘があると質問。若田部氏は「金融政策の手段として国債を購入している」とし、「金利が上昇しているところでは財政も改善する」と楽観的な見通しを述べました。
日本銀行の職員として20年ほどデフレ対策政策を立案・実践してきたとする雨宮正佳氏に対し、宮本氏は、金融政策の副作用で地域金融機関の収益は深刻だと述べ、「すぐにマイナス金利政策はやめるべきだ」と指摘しました。
雨宮氏は「多大に影響を与えていると認識している」と述べつつも、全体として銀行の貸し出しには影響はないと答えました。

以上2018年3月7日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2018年3月5日 第196回議会運営員会第10号 議事録≫

○古屋委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。まず一点目ですけれども、きょうも、追加の金融緩和策はあり得るんだというお話がありました。過去も、若田部先生のインタビューなどを見ると、長期国債の購入量を九十兆円に上げるのも手だということなども主張されております。ただ、これに果たして効果があるのか、副作用を更に広げるだけじゃないかという懸念を私たちは持っております。きょうは、マイナス金利の副作用は顕在化していないんだというお話もありましたけれども、この間、金融政策の副作用として、超低金利で銀行の収益は悪化している。そういう中で、大手銀行もカードローンに走って多重債務者を新たに生むということになっております。とりわけ地域の金融機関の収益は大きく低下して、将来的には経営破綻も懸念される事態になっております。地域の金融機関ももうけ口をどうしようかということで、需要を無視してアパートローンをどんどんどんどん拡大しています。その結果、レオパレスだとか、シェアハウスが今問題になっておりますが、詐欺まがいのサブリース問題も社会問題化するということになっております。一方で、貸出しは、金融緩和に比してそう大きく伸びているというわけではありません。ですから、私たちは、これ以上の追加緩和をしても、副作用を更に広げるだけで効果はないんじゃないかと考えておりますが、その点どうでしょう。
○若田部参考人 先ほど述べられましたその副作用なるものについての認識があるということは私も承知をしております。ただ、低金利というのは、これは、コストと呼ばれるものと同時に、やはりベネフィット、便益もございまして、つまり、ローンの金利が安くなるというふうなことで、債務を抱えている人にとっては、金利の負担が低くなるというようなこともございます。銀行収益の悪化というのは、確かに一部地域金融機関においてそのような兆しがないとは言えませんけれども、しかし、日銀の金融システムレポートなど、あるいは金融庁の金融レポートなどを参照いたしますと、基本的には、人口が減少していて、なおかつ、同じようなビジネスモデルでもって多数の地域の金融機関というのがひしめいて貸出し競争をしているというふうなところにかなりの問題があるというふうなことが指摘されております。そこに日銀の金融政策が影響を与えていないとは申し上げませんけれども、しかし、それが地域の金融機関の収益を大幅に悪化させているという状況ではないと思います。ちなみに、メガバンクと言われるところは過去最高収益を上げているところもございます。それで、追加緩和につきましては、私は、この場では、必要であるならば追加緩和を検討するということを申し上げましたので、追加緩和ありきで議論をしているわけではないということを申し添えさせていただきたいと思います。
○宮本(徹)委員 もう一点、出口にかかわってもお伺いしたいと思います。黒田総裁は、先日の聴聞の場で、二〇一九年ごろに物価上昇率二%に達するから、出口をそのころに検討をし議論していることは間違いないと発言されて、これは市場が大きく反応しました。一気に円高も進み、長期金利も一時はね上がるということになります。出口ということを考えた場合、先ほどのお話では、諸外国の先行例を参考にするんだというお話がありました。諸外国という点でいえば、アメリカは昨年来金融緩和策の縮小で、アメリカの国債の金利は上昇しております。日本でも、日銀が国債購入額を段階的に縮小し保有額自体を減らしていくということになれば、当然国債の金利は上昇していくというふうに思います。そうすると、今の国の予算の中で、今でも大変な状況ですけれども、国債費は金利上昇を受けてさらに増加していかざるを得なくなるということが見込まれるわけですね。そういう中で、こういう指摘もあるわけですね。財政悪化が続く中で、長期の金利を低位で安定して維持していくためには日銀は国債購入をむしろふやしていかざるを得ないんじゃないか、こういう指摘もあるんですが、この指摘についてはどうお考えでしょうか。
○若田部参考人 私が理解するところでは、日銀はあくまで物価安定の目標二%を達成するための手段として長期国債を購入しているというふうに考えますので、政府の財政の悪化を防ぐために行っているというふうには考えてはおりません。ただ、一般論として、これは経済学者としての立場で申し上げさせていただくならば、仮に金利が上昇するようなところというのはまさに名目成長率が上がっているところですので、経済全体としては豊かになっております。そこから得られるさまざまな税収というのはございますので、財政に対する影響というのは、よいことはあっても悪いことはないというふうに考えられます。ただ、これはあくまで、日銀副総裁候補者としてではなくて経済学者としての意見として述べさせていただきました。
○宮本(徹)委員 時間になりましたので、終わります。