2015年3月13日 衆院財務金融委員会 受診抑制健康脅かす消費税増税中止を


安倍総理への委員会での初質問でした。

衆議院財務金融委員会2015年3月13日提出資料

≪189回 財務金融委員会5号 2015年3月13日議事録≫

○古川委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。所得税法等一部改正案に対する質問を行います。総理、昨年四月からの消費税の増税でとりわけ生活が厳しくなっているのが、年金削減が続くひとり暮らしの年金生活者です。先月発表された総務省の家計調査を見ますと、高齢単身無職世帯は、二〇一四年の可処分所得が前年比実質マイナス一一・四%もの大変な落ち込みとなっております。食費は、消費税増税と物価高の中、節約に節約を重ねても五百八十八円ふえております。水光熱費も五百十六円ふえております。いろいろ合わせると、毎月数千円の負担がふえております。年金収入はこの調査では月平均十万三千七百六十七円ですから、この負担がどれだけ重いかというのはおわかりになると思います。何を削っているのか。衣服類はマイナス七・五%の支出減。消費支出で最も減ったのは住居費のマイナス一二・六%、医療費のマイナス一二・五%です。総理は、低所得者への簡素な給付として一万円を配ったと言いますが、これは一年半分の食費の消費税増税分として、月にすれば五百五十五円であります。年金削減の中、増税と物価上昇には全く足りていないというのは、この家計調査の結果からも明らかだと思います。総理、消費税増税と物価高、年金削減の中で、必要な医療まで削らなければならないところまで追い込まれているという認識はあるでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 我が国におきましては、国民皆保険のもとで、患者が自由に医療機関を選んで受診できるフリーアクセスが確保されていると言ってもいいと思います。その結果、諸外国に比べて外来受診回数や入院日数が多いという状況にあるわけでありますが、その中で、近年、減少する傾向が続いているわけでございますが、これは消費税が引き上げられる前から続いているところでございます。こうした傾向は、予防や健康づくりの推進、医療機関の機能分化、連携、医薬品の長期処方等、さまざまな要因によるものと考えられています。昨年四月の消費税引き上げによって受診抑制が生じているというふうには承知をしておりません。
○宮本(徹)委員 消費税増税の前からいろいろな要因で起きているというお話ですけれども、実際に起きていることを見ていただきたいというふうに思います。受診抑制が典型的にあらわれるのは歯医者です。痛むまでは我慢ができるからであります。都内でも高齢化率の高い足立区にある歯科クリニックの受診者数をお聞きしました。きょう資料でもお配りしておりますが、昨年三月まで、月に百二十から百五十人台あった患者数が、四月以降、七十から九十人台に大きく減っております。高齢者だけではありません。全国保険医団体連合会が行った、保険でよい歯科診療に関する市民アンケートでは、消費税が八%に上がったことで受診を控えると答えた方が、このアンケートでは一三・二%にも上っております。兵庫県のある歯医者さんのお話です。昨年末、歯が突然痛んだと若者が来たそうです。虫歯が十本、うち五本がかなり進行していて、応急治療を行ったが、失業していて、持ってきた所持金は五百円しかなかった。年明けから本格的に治療しようと言っていたが、次は来なかったそうです。こういう患者がふえているという話であります。お金の心配で歯医者にかかるのがおくれれば、大事な歯を失い、口腔崩壊が起きます。大阪府の保険医協会、大阪府歯科保険医協会が昨年十二月に行った、医療・介護現場から見える貧困調査では、治療中断を経験したのは医科で六割以上、歯科では九割。薬が切れているはずなのに受診に来ない事例を報告した事業所が、増税前の二〇一一年の調査の三五%から、昨年の調査では六六%に急増しております。エコー、胃カメラ、大腸ファイバーなどの検査拒否が多くなった、初診から肺炎やがんなどの重症の方が増加している、各地からこういう報告が寄せられているそうです。総理、消費税増税は国民の命と健康を脅かしているという認識はあるでしょうか。
○吉田政府参考人 お答えいたします。先生、歯科のデータをお示しでございますので、私どもの手元にございます、歯科医療機関七万弱から診療報酬明細書、いわゆるレセプトをいただいていますので、その分析をいたしますと、消費税が引き上げられました二十六年四月から直近のデータ、九月まででございますけれども、歯科の外来の受診延べ日数は、前年同期と比べまして〇・八%の増となっております。経年的に見ますと、同じく前年同期比で、二十四年度が通年で〇・四%の減、あるいは二十五年度は〇・六%の増というところ、二十六年四月から九月は歯科については〇・八%の増というところになっているところでございます。
○宮本(徹)委員 いろいろ言われますけれども、私たちも、大阪の保険医協会だとか各地のお医者さんからの報告を、実際現場で何が起きているのかということを、レセプトだけでは見えない現実を見ていただきたいということで言っているわけですよ。総理、どうですか。
○安倍内閣総理大臣 今、厚労省からお答えをさせていただきましたが、このI歯科クリニックというのは、これは一つのクリニックでございますから……(宮本(徹)委員「I歯科クリニックだけじゃなくて、兵庫県のお医者さんの話だとか大阪の……」と呼ぶ)いわば、それプラス保険医協会というお話でございましたが、厚労省の方からは全体を見た統計を紹介させていただいたんだろうと思います。いずれにいたしましても、受診回数等々につきましては、先ほど申し上げましたように、消費税の引き上げ前からそれは既に起こっている。それと、私どもが進めてきた政策によって、ある程度、受診回数の減少、特に、例えば医薬品の長期処方が可能になったことによって、今まで慢性の方々は二週間に一回病院に行かなければいけなかったものが、二カ月分出れば二カ月に一回ということになるわけでございますから、そうしたこともあるんだろう、このように思うところでございます。
○宮本(徹)委員 実際の総務省の家計調査でも、医療費の支出は減っているわけですよ。長期処方をしようがしまいが、使う薬の量が変わるわけじゃないわけですよ、その理由だったら。実際は、医療費が減っているということは、薬を受け取る量が減っているということじゃありませんか。そのことが大阪の保険医協会のアンケートでも明らかになっているということを申し上げたわけであります。よく政府は、基礎年金満額以下の方には消費税が一〇%に上がったときには月五千円を給付するということをおっしゃいますが、これは大半は消費税増税分で消えてしまうわけですよね。今、老齢基礎年金の満額は六万四千四百円です。そして、一〇%時に五千円配ったとして、六万九千四百円になります。これで仮に生活しているとしたら、消費税一〇%になれば、消費税五%時と比べて単純計算で月三千四百七十円の負担がふえるということで、五千円給付したとしても、三千五百円は消費税増税分で帳消しになってしまう。しかし、実際は、六万九千四百円では、東京ではひとりでは年金生活者の皆さんは暮らせませんよ。どう節約しても十万円ぐらいかかります。そうしたら、五千円給付したとしても、全部、消費税による負担増で、その五千円は消えてしまうということになるわけですよ。ですから、消費税増税で年金の財源を賄おうというのは、タコが自分の足を食うようなものだと思います。消費税増税が日本社会で貧困を広げているということは明らかだと思います。逆進性の強い消費税が社会保障の財源としてふさわしくないのは、国民生活の実態から見ても明らかだと思います。消費税を一〇%に引き上げることは、絶対に私たちは認められません。そして、消費税率引き上げの一方で、今回の法案は、巨額の利益を上げている黒字の大企業を中心に、法人税減税の大盤振る舞いをしております。財界の要望に応えて二・五一%も法人実効税率を引き下げ、穴埋めとして課税ベースの拡大を行いますが、法人税は全体で、二〇一五年、二〇一六年と、各年度二千百億円もの減税となっております。麻生大臣、この法人税の減税分の財源はどこから持ってくるんでしょうか。よろしくお願いします。
○麻生国務大臣 今御質問のありました、平成二十七年度の税制改正におきましては財政健全化の取り組みとの整合性を踏まえて法人税改革を行っておりまして、いわゆる大企業と言われる例を引きますれば、欠損金の繰越控除の見直しなど課税ベースを拡大することによって、二〇一九年度にかけて税率引き下げの財源をまず確保している、その対象になっておるという点であります。その上で、御指摘のように、二十七年、二十八年度は税率の引き下げを先行させておりますので、委員は先行減税分は財源を確保できていないというような見方をされているのかと思いますけれども、そうではなくて、きちんとしたものをやらせていただいておるということが、まず第一点、御理解いただきたいところであります。また、今言われましたところでいけば、今後引き続き税率を引き下げていくに当たりましても、私どもは、その分に関しましては、これは総務省の所管ではありますけれども、法人事業税とか、外形標準課税等々をさらに拡大していくことで、いわゆる大企業を特に優遇しているということではなくて、我々としてはいろいろなことを考えて法人実効税率を下げさせていただく、企業の競争力をつける、いろいろな表現が先ほどあったとおりであります。
○宮本(徹)委員 ですから、二〇一七年度以降、中立になるというのは私も知っていますよ。そうじゃなくて、二〇一五年、二〇一六年度分の減税分、各年度二千百億円分の財源はどこから持ってくるのかということをお伺いしているんです。
○麻生国務大臣 今申し上げたつもりだったんですけれども、二〇一七年度につきましても、これは国民負担によって賄われておるのであって、他方で、今回の先行減税ということを今言っておられるんだと思いますけれども、それは、所得拡大促進税制の要件などの緩和などとあわせて、企業が賃金アップへ踏み出していく一歩を力強く後押しするために、先ほど申し上げましたように、後で上がってきますので、我々としては御指摘の点についても政策効果というものを考えてやっておるというように御理解いただければと存じます。
○宮本(徹)委員 結局、政策効果で税金がふえてくるかもわからないという話しかなくて、いろいろ言いますけれども、八%に引き上げられた消費税収の入った一般会計で、二〇一五年、二〇一六年度分の減税、それぞれ二千百億円を穴埋めするものになっているというのは、お金の出入りからすればはっきりしているということだと思います。そして、政府は、数年以内で法人実効税率を二〇%台までに引き下げると言っております。自民党税調では、先ほど総理からもお話がありましたが、二〇一六年度に三・二九プラスアルファの実効税率の引き下げを目指すとしております。総理、これでは、法人税の減税は二〇一七年度以降も続くということでしょうか。
○麻生国務大臣 先ほど申し上げましたように、二〇一六年で三・二九ということになりました段階でも、まだ二〇%台ということにはなっておりませんので、我々としては、引き続き、そういったものを考えているというように御理解いただければと思っております。数年で税率二〇%台まで引き下げることを目的としておるというように先ほど総理から答弁があっておりましたけれども、我々は、そういったものを考えて、引き続き継続をさせていただきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 だから、実質減税になるのか。法人税率引き下げを目指すというのは、実質減税に二〇一七年度以降もするということなんでしょうか。税率引き下げを目指しているというのは、それは書かれているわけですけれども、今回、二〇一五、一六年度が先行減税で実質減税になっているように、一七年度以降もそうするのかということをお聞きしているわけです。
○麻生国務大臣 今後の話ですけれども、二〇一六年度の税制改正においても、課税ベースの拡大等によって財源を確保して、税率引き下げ幅のさらなる上乗せを図りましたが、さらに御指摘の平成二十九年度以降も、引き続き、数年で税率二〇%台まで引き下げることを目指して、財源を確保しつつ改革を継続していくということを考えております。税率引き下げのための財源の確保ということになろうと思いますけれども、これは先ほども申し上げましたけれども、総務省の所管ではありますけれども、大法人向けの法人事業税、また外形標準課税をさらに拡大していくということ等々、租税特別措置の見直しを進めることなどを初めとして、幅広く検討を行ってまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 ということは、実質減税は二〇一七年度以降はないということを御確認してよろしいでしょうか。
○麻生国務大臣 ないとどうして言い切れるんだかわかりませんけれども、ないとお思いになっておられるなら、ないとお思いになっておられるのは結構ですが、我々としては、なるべく、そういうことのないように、いろいろ幅広く検討してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 ないというふうに断言できないということは、結局、また実質減税が続いて、そこを、消費税増税で今度一〇%に引き上げられたのがそこで穴埋めされていくという話になるじゃありませんか。それは私たちは本当に認められないというふうに思います。次に行きます。政府税調の資料でも、連結納税制度、配当の益金不算入制度、研究開発減税など、租税特別措置などで課税ベースが小さくなり、法人税の実際の負担率は三分の二程度になっております。これらの制度の恩恵は大企業に偏重しております。法人税の実際の負担率を二〇一二年度の国税庁の統計から私たちが試算すると、資本金一億円未満の中小企業で二四・七%、資本金十億円以上の連結法人を含む大企業が一三・九%です。中央大名誉教授の富岡幸雄さんは、実効負担率という言葉を使って同じような試算をされておりますが、資本金五千万から一億円の中小企業の負担率が二三・六二%、資本金百億円を超える巨大企業の実際の負担率が一一・五四%と試算されております。大体、私たちの試算と同じ傾向ということになっております。総理に認識をお伺いしますが、巨大企業の実質の負担率が中小企業より低い不公平が生じている、こういう認識はございますでしょうか。
○麻生国務大臣 御指摘の試算については、詳細まで承知をしておりませんが、例えば、税務上、益金に算入しない、いわゆる非課税扱いとされております受取配当金などを分母の課税ベースに戻した上で、それに対する法人税の割合負担を計算しているものだと伺っております。しかしながら、この受取配当金の益金不算入制度というものは、御存じのように、子会社の段階で既に法人税が課税されているわけですから、それを踏まえて、二重課税を避ける観点から設けられているものであります。仮に、受取配当を全て課税扱いということにすれば、親会社にとりましては子会社形態で運営するよりは支店形態で運営する方が有利ということになりますので、企業の組織形態の選択をゆがめてしまうであろうという問題が当然のこととして起こります。したがいまして、二重課税を避ける手当てをしているにもかかわらず、二重課税を回避しているから大企業の負担率が低くなっているかのような指摘はいかがなものかというような感じがして伺っておりました。また、中小企業の実質的な負担率が一律に高いということではありませんで、先ほど申し上げたとおり、そもそも、全体の七割が赤字ですから、法人税は負担しておられません。また、所得が八百万円以下である企業に適用されております税率は一五%で、通常の企業は二五%だと思いますので、そういったことを考えますと、大企業の方が中小企業よりも実質的な負担率が低いという御指摘は必ずしも当たらないのではないかと考えます。
○宮本(徹)委員 いや、中小企業の赤字のところのことを話をしておるわけじゃありません。黒字のところの話しか私たちはしていないわけです。当然、法人税は黒字でしか払わないわけですから。そこを見れば、各種試算で明らかになっているように、巨大企業の方が実質の負担率が低いというのは明らかだと思います。私たちは、こういう大企業優遇も正さずに、そして法人税減税を進めながら、その一方で消費税増税する法案は絶対に許されないということを申し上げまして、質問を終わります。
○古川委員長 これにて内閣総理大臣出席のもとの質疑は終了いたしました。内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。これにて両案に対する質疑は終局いたしました。