2018年8月28日 「しんぶん赤旗」 くらし家庭欄の記事を紹介します。 →

 安倍政権が来年度から進める幼児教育の無償化。認可保育園、幼稚園、認定こども園だけでなく認可外の保育施設も対象です。ところが自主運営など、認可外の幼児教育施設は対象外です。差別なく無償にしてほしいと父母や職員、自治体が声をあげています。

 (染矢ゆう子)

 「『鉄棒をやりたい』と長男がいえば、鉄棒を出して見守ってくれます。子どもの『やりたい』気もちを尊重してもらえます」。東京都府中市の井上ゆきさん(41)はいいます。隣の国立市の国立富士見台団地の幼児教室「風の子」に長男(4)が通い、団地の敷地全部で思いっきり遊びます。父母が運営の主役で、井上さんは副運営委員長です。

56年の歴史
 東京都西東京市のひばりが丘団地「たんぽぽ幼児教室」も居住者がつくった自主運営の施設です。56年の歴史をもち、父母会会長の西澤倫子さん(33)は卒園生。子どももみな「たんぽぽ」に通います。「少人数で目がゆきとどき、あたたかく見守ってくれます」

 何園も見学して「たんぽぽ」を選んだ東久留米市の石川亜樹子さん(37)は「子どもの主体性と歩いて体を鍛えることを大事にした保育に魅かれました」。

 「風の子」や「たんぽぽ」などの幼稚園類似施設は政府の無償化の対象に入っていません。父母や職員は800人以上の署名を集めて幼稚園と同様に無償化するよう要請しています。「50年以上地域の母親に大事にされてきた幼児教室の実績を国は認めるべきです」(井上さん)

 全国市長会の推薦で内閣府の無償化検討会に出席した西東京市の市長も「幼児教育を担ってきた類似施設も差別なく無償化してほしい」と要望しました。

 本紙の調べでは、無償化の対象とならない施設が少なくとも神奈川、東京各35、千葉、長野、鳥取、広島各7、埼玉4、京都1など全国にあることがわかっています。

「不公平だ」
 「たんぽぽ」では保育園の待機児童や里帰り出産の際の一時受け入れのほか、水頭症や奇形などの難病、ダウン症、発達障害、外国籍など大規模園で断られた子どもを受け入れてきました。「どの子も大切に保育してきました。国の線引きで園児が減れば存続できません」。幼児教室部長の平賀千秋さん(61)は訴えます。

 同東村山市の幼児教室「すずめ」。「火をおこして魚を焼いたり、散歩で崖を登ったり、子どもに必要な保育をしています。すずめの保育を望む人が入園できるようにあえて認可をとっていません」と事務局長の千葉瑞枝さん(56)。就労する保護者のための定期利用保育も実施しています。「無償化実施で午後5時までの長時間保育は無料で、専業主婦家庭の短時間保育は有料になる。不公平です」と第3子を通わせる同市の上田幸子さん(42)はいいます。

園舎なしも
 園舎のない「森のようちえん」も無償化の枠組みから外れています。

 森のようちえん全国ネットワーク理事で、長野県伊那市の遊び舎はらぺこの保育者、小林成親さんは、母親が就労しているか否かで無償化の枠組みを決めたことを疑問視します。「はらぺこでは保護者と共同で保育します。編集者やデザイナーなど働いている人もいますが、国が無償化対象とする“8時間働く人”は少ないんです」。現在、はらぺこの保育分担金は月額27000円。「幼稚園が無償になれば、高いと思う人も出る。『すべての子どもに質の高い幼児教育を保障する』として始まる無償化で、枠組みから外れれば、廃園や縮小となることは釈然としません」と小林さんはいいます。

「自然保育も対象に」 46自治体が国に要望
 長野、鳥取、広島の3県42市町村と徳島県は、自然保育を行う認可外保育施設を利用する家庭を無償化の対象とするよう国に要望しました。長野県の担当者は「子どもの育ちに外遊びが必要だと広めたいし、自治体が保育の質を担保する施設を幼児教育無償化の対象に含めるよう政府にアピールし続けたい」と話します。