11月20日財金委員会 障害者雇用水増し、意図的なねつ造は明白 再調査と常勤雇用の拡大を求める

 
衆院財務金融委員会提出資料 2018年11月20日
20日、衆院財務金融委員会で、宮本徹議員は政府機関の障害者雇用水増し問題を取り上げ、原因の徹底した調査と、常勤での雇用拡大を求めました。
国税庁は、半数の国税局でうつ状態や不安障害、適応障害一歩手前といった症状を身体障害者と認定するなど、省庁の中で最も多い1103名の虚偽記載をしていました。
宮本氏は、「うつ状態や不安障害が何で身体障害になるのか」と指摘し、「国税庁の担当者はねつ造だと知って、組織的にやっていたのではないか」と質しました。並木稔国税庁次長は、問題が明らかになる以前にも「違和感を感じた担当者は確かにいたかもしれない」としつつ、「前例踏襲を続けてきた結果」「意図的な不正は確認できなかった」と繰り返し答弁。
宮本氏は、検証委員会の調査報告書でも、防衛省では依頼メールに「退職者がいる機関は同数の掘り起こしをしてください」と記載したり、農水省は「視力が悪そうな者から裸眼視力を聴取」など、意図的な水増しは明らかと批判し、過去に遡った再調査を強く求めました。
宮本氏は、今後の障害者採用計画について、国税庁は今年度550名の採用予定のうち常用雇用を50名しか予定していないと指摘、「可能な限り常用雇用を基本にすべきではないか」と質しました。矢野康治大臣官房長は「常勤雇用化を図っていくことが大切である」と答弁しました。

≪2018年11月20日 第197回 財務金融委員会第2号 議事録≫

○坂井委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。初めに、午前からずっと議論になっておりますが、人の税金で大学に行ってという発言が麻生さんから選挙のさなかにありました。率直に言って、大学に通う全ての人に対して失礼な発言だと言わなきゃいけないと思いますし、教育を受ける権利を保障するというのは政府の責任ですから、財務大臣の発言としては大変不適切だったと言わなければいけないと思います。私は撤回すべきだと思いますよ。そのことを初めに申し上げて、質問に入りたいと思います。きょうは、まず、障害者雇用の水増しについてお伺いします。何十年にもわたり障害者の働く機会を奪い、尊厳を傷つけた許されない問題です。ところが、検証委員会の調査に対して、どの省庁も、雇用率を引き上げるために意図的に行った事例は把握していないと答えているんですね。信じられない調査になっているわけですね。中でも国税庁は、障害者雇用の水増しの数が断トツに多かったわけですね。一千百三名。調査報告では、他省庁に比べて大変特異なのは、うつ状態、不安障害、適応障害一歩手前などを、何と身体障害者、内部障害として算定した。これはでたらめ過ぎますよ。かかわってきた方は、こういうでたらめなことをやっているということは、みんな自分のやっていることはでたらめだな、数も捏造をやっているなというのをわかっていたんじゃないですか。
○並木政府参考人 お答えいたします。今般、国税庁において、障害者雇用率制度の対象となります障害者の計上が不適切であったことが判明し、法定雇用率を達成していないことが明らかになったことは、民間に率先して障害者雇用に取り組むべき立場としてあってはならないことであると深く反省することでありまして、心からおわび申し上げます。御指摘の点につきましては、今般の検証委員会による調査にきちんとお応えすべく、可能な限りさかのぼって過去の担当者への聞き取りや保存資料の精査を行ったところ、今般の不適切計上は、身体障害者手帳等を確認することなく、前年までに障害者として報告している者と同程度の障害を有する者を報告対象の障害者として計上する、そういった実務慣行を歴代の担当者が安易な前例踏襲により引き継いできたことに起因することが判明したものであります。ただ、こうした計上方法が誤りであるということを明確に認識しながら、あえて不適切な計上を行っていた例というものは確認できなかったところでございます。いずれにしましても、障害者の計上が不適切であったことは事実でございますので、国税庁といたしましては、検証委員会の報告書を改めて真摯に受けとめ、深く反省するとともに、公務部門における障害者雇用に関する基本方針、これに沿って、不適切計上の再発防止に取り組むことはもとより、組織全体として障害者雇用を推進するという意識を徹底し、その取組を強化してまいりたいと考えておるところでございます。
○宮本(徹)委員 明確な誤りだと認識していた人がいなかったなんて、本当にそんなことを思っているんですか。うつ状態や不安障害だとかが何で身体障害者になるんですか。まだ精神障害者にカウントしていたら、これは誤解だったというのが通用するかもわからないですけれども。しかも身体障害者の内部障害。内部障害といったら、心臓が悪いとかそういうやつですよね。一つの国税局からの報告だけじゃないですね。聞いたら、半分の国税局がそういうようなカウントをしていた。組織的にやっていたに決まっているじゃないですか。みんなでまた隠蔽していこうという話なんじゃないですか。私、本当に、恐らく今まで少なくない方が、こんなでたらめなことはやめた方がいいと言った方がいろいろなところでいたはずですよ。それを握り潰してきたんじゃないですか。違いますか。
○並木政府参考人 お答えいたします。うつ病等の精神障害を身体障害として計上してきたことにつきまして、今回、不適切計上問題が明らかになる以前におきましても、障害者の区分の範囲が緩いのではないかというふうな違和感を感じた担当者は確かにいたかもしれません。しかし、当時の歴代の担当者にしてみれば、こうした計上方法が長年運用され、かつ受け入れられてきた実務慣行でありまして、厚生労働省の方からも特に誤りであるとの指摘を受けなかったことから、それまでの運用を変更するという必要性を認識するまでには至らず、前例踏襲を続けてきた結果、不適切計上を是正する機会を失って、長年にわたってこれが継続することになったということではないかと考えているところでございます。まことに申しわけないと考えているところでございます。
○宮本(徹)委員 違和感を感じた人がいたかもしれないなんということは絶対ないです。絶対、こんなのおかしいと言った人がいっぱいいると思うんですね。半分の国税局は多分直ったんだと思います、文句を言った人がいて。でも、半分の国税局はずっと同じようなやり方をしていたという話じゃないかなというふうに私は思いますけれども、いずれにしても、この実雇用率を厚労省に報告するというのは、捏造の数字だということを、確信犯的に、思っていない限りは、こんなことやれっこない話ですよ。きょう、ほかの省庁も含めた「実雇用率」の推移とかぎ括弧をつけていますけれども、出しておきましたけれども、グラフを見たらわかります。障害者雇用の水増しが多かった省庁を並べました。法定雇用率が上がれば、それに合わせて、見かけの障害者の実雇用率も上がるように捏造していっているわけですよね。検証委員会の調査報告を見たら、いろんなことをやっていますよ。防衛省、依頼のメールで、退職者がいる機関については、少なくとも退職者数と同数の掘り起こしを実施してください。農水省、人事担当者の周囲にいる者のうち、眼鏡、しぐさ等から視力が悪そうな者から裸眼視力を聴取し、計上していた。国交省、各部局から報告のあった障害者リストを取りまとめる際に、これは足りなかったからでしょうね、過去の全体リストに掲載されていたもう退職した人も含めて計上していた。法定雇用率をクリアするために、めちゃくちゃな数合わせを各省庁やってきているわけですよね。ところが、国税庁は、この黄色の折れ線を見たらわかるように、法定雇用率をちょうどクリアするような形で数の報告をやっているんですけれども、これはたまたまこうなったんだとしか答えていないんですね。私、意図的なごまかしをしない限り、こういうことにはなり得ないと思いますよ。大臣、これで曖昧で終わらすわけにいかないと思うんですね。徹底した調査、そして厳正な処分が必要じゃないんですか。
○麻生国務大臣 今般の不適切な計上問題については、民間に率先してこういったものを、障害者雇用に取り組むべき立場の役所としてはあってはならないことであって、これは重く受けとめねばならぬところだと思っております。いわゆる検証委員会の調査に対して、財務省、国税庁としても、可能な限り、いわゆる過去の担当者、記録等々にさかのぼる調査を行ってきたところで、最大限の対応をしたと今考えておりますが。いずれにいたしましても、その結果として、法令やルールに反して許されないものであると認識しながらあえて計上するといった、意図的に行ったという例は確認できなかったと理解をいたしております。いずれにしても、障害者の計上というのは不適切だったということは確かでありますんで、そういった意味では、この事実に対して、今般の事態はこれは厳しく注意せないかぬということで、過日、矢野官房長を呼んで、十月末でしたか、この話をして、雇用率の速やかな達成に取り組んでいくようにということを指示をさせていただいたところです。
○宮本(徹)委員 私、最大限の調査をやったというのはとても言えないと思いますよ。何も真実がまだ明らかになっていないじゃないですか。だって、大臣だって、こんなグラフを見て、こんな都合よくたまたま上がっていくような数字が出てきたとはならないでしょう。意図的に水増し、捏造をやってきたわけですよね。ですから、これで終わりにしない、さらなる調査というのをやるというふうに、大臣、お約束ください。
○矢野政府参考人 お答えいたします。先ほど国税庁の次長が御答弁させていただきましたように、本件につきましては、厚生労働省の指導のもとに、各省と並びまして、徹底した調査をさかのぼって行いました。その結果がこのようなことでございまして、その質的な中身も先ほど次長がお答えしたとおりでございますので、それが事実でございます。
○宮本(徹)委員 この検証委員会のヒアリングだって見ましたけれども、三十三の機関に対して三十五時間ですよ。一機関に対して一時間しかやっていないんですよね。そんなので終わりというのは、はっきり言って、障害者の当事者の皆さんたちも全く納得できないと思いますよ、こんなことで終わりにしたら。本当の意味での反省と再発防止というんだったら、なぜこういうことが起きたのかというのを、過去の慣例にのっとったというんだったら、過去の慣例の出発点までさかのぼって調べる必要があるということを厳しく指摘しておきたいというふうに思います。その上で、今後の障害者の採用の取組についてもお伺いしますが、国税庁が厚労省に提出した取組の計画を見ると、常勤での採用を行うことを検討。偉いなと思って数を聞いたら、今年度五百五十のうち、常勤は五十、非常勤は五百。虚偽報告しているんじゃないかと思いましたよ。私は、合理的配慮をしながら、可能な限り常勤を基本にすべきだというふうに思います。それから、財務省の取組計画を見て驚きました。期間業務職員の契約更新は二回までとされているが、障害者に関しては更新回数の制約を撤廃するようお願いしたいと書いてありますね。私、毎年仕事があるんだったら常勤にすればいいじゃないかと。民間では非正規雇用も契約が五年を超せば無期雇用になる転換権が発生するという法律もできました。雇用の安定というんでしたら、常勤にする、少なくとも無期雇用への転換の仕組みを設けるべきだと思いますが、大臣、どうですか。
○麻生国務大臣 この財務省の障害者雇用の推進に向けた取組計画を作成した際の話ですけれども、これは事務方が民間の実務家、いわゆる仕事でそういった担当をしておられる方々から聞いた話の中で、障害者の方々の中には、常勤職員としてフルタイムで働くということは難しい、非常勤での採用を望む方がおられるという実態があります。また、現行ルールのもとでは、一旦採用されても、三年後には契約が自動延長されなくなるといった条件があります。それを不安に思って応募をためらうという方も出てきておられるということも考えておいてもらわないかぬという話を聞かされて、それで事務方の方から、障害者の方から、非常勤の方で長期安定して勤務したいと望む場合に限って、それが可能となるようなルールの整備について意見を提出したというように聞いておりますので、私どもとしては、引き続き政府内の関係部署で検討されていくものだと考えております。いずれにいたしましても、望ましい状況というのがどういう状況なのかというのは、これはなかなか難しいところでして、私どもとしては常勤と思っても、御本人たちが常勤を希望しておられないという例もありますので、そういった点に関して丁寧な対応をしていかねばならぬところだと思っております。
○宮本(徹)委員 私は先ほど、常勤になりたい人は常勤、そして仕事があるんですから無期雇用への転換権、これは民間ではあるわけですから、本人が望めば無期雇用になれる、それを設けるというのが基本的な考え方になるんじゃないですかということを大臣にお伺いしたんです。その点はどうですか。
○矢野政府参考人 お答えいたします。常勤雇用化を図っていくことが大切であるということは十分認識をしております。今回、いろいろと計数上の不始末があって、各省それぞれきちんとした雇用をしようとしているわけですけれども、その一環として、人事院が新しい統一的な試験を設けて常勤職員としての採用を始めるとか、あるいは非常勤で始まった雇用の方についても、ステップアップで常勤に移っていただくといったことをそれぞれがしようとしておりますし、財務省としても、あるいは国税庁を含めまして、そういうことをしていこうと思っておりますけれども。御指摘の、その提案をしてしまいましたことにつきましては、これは先ほど大臣からも答弁させていただきましたけれども、そういう希望をしている人がいるということがあって、これは実は、障害者でない方についても同じことがあるんですけれども、三年で打ち切られてしまうということに対する不安があって、非常勤でいいんだけれども続けたいというニーズがあって、そこに対しても機会を与えさせていただくという意味で提案をさせていただいたものでございます。
○宮本(徹)委員 ですから、常勤でフルじゃなくて、何らかの非常勤みたいな形でも無期雇用に転換する、非常勤の無期雇用タイプみたいなものを考えればいいわけであって、一年更新の、いつ切られるかわからないというんだったら、不安定な状況がいつまでも続くということですから、それをなくそうというのが無期雇用への転換権、民間で始まっているわけですから、そのことこそ考えるべきだということを重ねて指摘しておきたいというふうに思います。それからあと、たくさんの人を採用していく過程で、今いる非常勤の人が雇いどめになるんじゃないかという不安も出ております。それから、定数がふえない中で仕事も大変な中で障害者の方が入ってきたときに、新しく雇用される障害者に重い重い仕事の負担がしわ寄せでいく、そのことからまた体調を崩すという悪循環の懸念というのもありますので、定員拡大も含めて思い切った予算措置を大臣にはとっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。二つ目に、森友文書改ざん問題についてお伺いします。理財局からの指示で改ざんを強いられた近畿財務局の職員がみずから命を絶つという事件が起きました。通常国会で矢野官房長は、パワハラがあったということであれば、調査の過程でその実態を把握していくこともあり得るとおっしゃっていました。人事院にきょう来ていただいていますが、パワハラの定義、ちょっと紹介してください。
○遠山政府参考人 お答え申し上げます。パワーハラスメントの定義について、法律又は人事院規則で定めたものはございませんが、職員への周知啓発のため人事院が作成した「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」では、「一般に「職務上の地位や権限又は職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、人格と尊厳を侵害する言動を行い、精神的・身体的苦痛を与え、あるいは職場環境を悪化させること」を指す」としてございます。
○宮本(徹)委員 つまり、今の定義からいうと、理財局の幹部職員が近畿財務局の職員に改ざんを強いたというのは、まさにパワハラに当たるということが言えると思います。しかし、財務省の調査報告書を見ましたが、この職員へのパワハラについては、事実の解明、責任の所在、あるいは当該職員の処分については書かれていないんですね。これは、パワハラはなかったという認識なんですか。
○矢野政府参考人 お答えいたします。パワーハラスメントの定義につきましては、今、人事院から御答弁がありましたように、法律や人事院規則という表立ったルールの中にはそれがまだ今はございません。したがいまして、例えばセクハラですと、セクハラの処分ルールということまであるわけですけれども、パワーハラスメントという言葉は、ルールとしてもそもそもなくて、処分の考え方というものもない状態でございます。ただ、概念としてはありますので、それをどう捉えるかということだったわけですけれども、私どもが六月の四日に調査報告書で記載させていただきましたように、本省の理財局から近畿財務局に決裁文書の書換えを行うよう具体的な指示をした云々ということが認定されておりまして、これはまことに不適切なことを近畿財務局に強いたという事実はあるわけですけれども。他方、その同じ報告書の中で書かせていただいておりますように、近畿財務局の統括国有財産管理官の配下の職員は、そもそも改ざんを行うことには強い抵抗感があったこともあって、本省理財局からのたび重なる指示に強く反発して、管財部長、近畿財務局の幹部ですけれども、に相談をし、また、それを受けて、本省理財局の総務課長と近畿財務局の管財部長の間でも相談が行われて、結果として、その配下の職員たちに対しては、これ以上作業に関与させないというふうに、自浄作用と言っては口幅ったいですけれども、改めるという動きがございました。ある意味、先ほど人事院が申された三つの考え方に当たっているではないかという御批判、御指摘、あろうかと思いますけれども、それを外から言われる前に改めたという部分があるわけです。定義がはっきりしない中で、これに当たる、当たらないというところが言えないわけですけれども、報告書の中では、そういう不適切な行為が本省理財局の指示であった、それをもって処分を行ったということでございます。
○宮本(徹)委員 いや、定義はないと言いますけれども、法律上の定義はないかもわからないけれども、人事院自体は、先ほど紹介があったハンドブックまでつくって、パワハラはこうだということまでやっているわけですよね。しかも、先ほど自浄作用が働いたかのようなことを言いましたけれども、それは途中からこれ以上関与させなくなった話であって、それまでは関与させていたわけですよ。そのことによって、この亡くなられた方は、常識が壊されたということを親族に漏らされていたわけですよね。まさに改ざんの強要で、精神的、身体的苦痛を与えたという話じゃないですか。財務省が今取り組んでいます財務省再生プロジェクトのアンケートを見ましたら、ハラスメントがあった場合には厳正に対処すべきと回答もありました。私は、このパワハラ問題も不問にしちゃいけないと思いますよ。やはり、改めて調査を行って厳正に対処すべきだということを強く申し上げておきたいというふうに思います。次に、消費税一〇%増税について伺います。消費税一〇%増税をめぐって、我が党の出しているしんぶん赤旗日曜版に珍しい方が登場してくれました。内閣官房参与の藤井聡さんが、一面に登場していただいて、こう言っています。「消費に対する罰金として機能する消費税を増税すれば、消費は低迷し、国民の貧困化がさらに加速するのは間違いありません。」「今なすべきは消費税増税ではなく、所得税の累進課税を強化し、法人税率を引き上げることです。企業は多くの内部留保を抱えています。法人税率を上げることで内部留保が実体経済に還流され、大きな経済効果が期待できます。」何かもう本当に、この方の言うことを皆さん聞いていただいたらいいなというふうに思いますが、麻生大臣、消費税増税したら、また個人消費が落ち込んで、経済に深刻な打撃を与えることになることは明らかじゃないですか。
○麻生国務大臣 藤井さんの御意見というのは、そういう御意見もある。個人的に知っていますから、知らないわけではありません。その上で、我々、政権交代以降、個人消費というものに深刻な打撃を与えるのではないかという御指摘なんだと思いますが、少なくとも、今の現状を見て、この数年間の間、GDPとか企業収益とかいうのは、これは過去最高水準に達しております。また、有効求人倍率、よく言われる数字ですけれども、就職がよくなったということもこれははっきりしておりますし、また、失業率も二十五年ぶりで二・二%までとかいう形で低水準になっておりますし、賃金も、少なくとも、まだまだと思いながらも、二%程度の高い水準の賃金アップというようなものが約五年間継続しておりますので、雇用・所得環境は前に比べてよくなっていると思いますので。そういった意味では、我々としては、二〇一三年の水準というものを上回るという形になってきているのが、国全体の収支を捉えますGDPのベースで見ましてもそういう形になっておりますので、我々としては、今回の消費税率というものは三%ではなく二%ということでもありますし、前回の引上げのときにいろいろ起きました駆け込み需要とか反動減とか、いろいろ問題があるのは事実でありますので、そういった問題に対して万全をとりたいということで、いろいろな形で、消費税の引上げによる増収分の使い道というものに関しましても、いろいろ今対応させていただいているということであります。結果として、消費税の導入される直前の駆け込み需要とかその後の反動減、そういったものをなるべく平準化させていくということは極めて大事なところで、そのためには、低所得者層を中心としたそういった支援措置等々の対応を更に行っていくというようなことを考えてやっていかねばならぬところだと思っております。
○宮本(徹)委員 いろいろの対策を打つといっても、実質所得を奪う以上、個人消費がその分冷え込むというのは、これはもうはっきりしていることだと思いますし、二〇一四年の増税での落ち込みがまだ戻っていないよというお店は町を歩いたらいっぱいありますよ。それは麻生大臣も聞かれていると思います。それから、景気、個人消費の落ち込み対策と言われる、キャッシュレスの場合二%ポイント還元についてもお話をお伺いしたいんですが。これは、私も地元の商店街を回りましたけれども、どこに行っても大変評判が悪いですね。批判の声が多いですよ。大体、カードは手数料が高いからやっていないという店もかなりたくさん、古くからやられているお店だとあります。それから、カード決済を導入しているお店でも、手数料が高いので、二千円以下の買物はお客さんには現金で支払ってくれとお願いしているんだというお話もお伺いしました。少ない利益の中から手数料をがばっと持っていかれるというのは、本当に小さなお店からいったら厳しい話だというふうに思います。かといって、こういうものを始めたら、現金商売を続けるとカード決済のある店にお客さんが移動しかねない、そうすると売上げが落ち込むということになります。ですから、今回出ているこのキャッシュレスポイント還元というのは、古くからやっているような中小零細業者を苦しめることになるのは明々白々じゃないですかね。
○麻生国務大臣 お尋ねのキャッシュレスとかポイント還元の話というのは、これは所管は経産省ですからそちらに聞いていただいた方が正確なんだと思いますけれども、現在検討中なんだと承知をしておりますので、現時点で確かなことは申し上げられないのは事実であります。消費者に対してキャッシュレスの対応というのは、これは多様な選択肢を準備することになりますし、今言われましたように、カードの中でも、JCBとかいろいろなカードがあるのはありますけれども、そのほかにもいろいろな、交通機関が出しておりますカード等々もありますので、そういったようなものによって還元の率が、パーセントがえらい違っておりますから、そういったところの内容をどうしていくかというようなこともいろいろ検討を進められているものだと承知をしております。
○宮本(徹)委員 私が聞いたのは、制度の検討内容を聞いたわけじゃなくて、中小零細業者が苦しむところがたくさん出るんじゃないですかということをお伺いしたんですよ。
○麻生国務大臣 いろいろな対応が出てくるんだとは思いますけれども、少なくとも、今、先ほども御質問のあった中で、野田先生の御質問にお答えをしたと思いますけれども、少なくとも、こういったような話をするときに、移行期間はある程度考えないかぬということで、我々としては、当初四年間、更に六年間という形で、トータル十年間ぐらい、いろいろな対応をやれるような形にさせていただいているというように理解をしておりますので、手間がかかるという点は確かかもしれませんけれども、恩典もそれに伴って出てくるので、そういった意味によって、私どもとしては、マイナスばっかりでもないのではないかという感じがしております。
○宮本(徹)委員 それはインボイスの話ですよ、先ほど大臣が今答弁されたのは。移行期間はないですよ、このキャッシュレスポイント還元の話は。消費税一〇%増税と同時にやろうという、もう一年もない話ですよね。どう考えても、今、現金商売中心でやられている中小零細業者、これは苦しむことになりますよ。そう思われませんか、大臣。
○麻生国務大臣 何回も申し上げますように、このキャッシュレスの決済を利用して中小・小規模という話は、これは主に経産省のやっておられる話なので、いきなりこちらに言われても、これは全部細目詳しいわけではありません。そうお答えせざるを得ませんから、その上でお答えをさせていただくというところを、宮本先生、ちょっと理解しておいていただかないと、担当が全然違いますので。その点だけは頭に入れておいていただいた上で、キャッシュレスのさっきの話の、Suicaとかそういったものは、いわゆるインボイスと違って即やるという話になっているそうですので、そういった意味においても、今まで聞いている話でいくと、経産省の中でいろいろなものを検討しているという話以上、細目詳しいわけではありません。
○宮本(徹)委員 国の全体の財政を統括している財務大臣ですから、しっかり、中小業者を苦しめるようなところにお金を使うなんという、こんなことをやらないといけないような話はやめろということですね。ちゃんとしっかり考えていっていただきたいというふうに思います。それから、複数税率の問題について伺います。きょう国税庁にも来ていただきました。改訂版のQアンドAを私は見ました。コンビニエンスストアの場合は、イートインコーナーを利用する場合はお申し出くださいと掲示があれば、申し出なければ軽減税率になると書いてありました。改めて確認しますけれども、初めはお弁当を持ち帰ろうと思ってレジでは申し出なかったけれども、例えばイートインで友人が食べているのを見て自分も食べていこうと思った、こう気が変わった場合は、追加で二%分をお店が求める必要はないということでいいわけですね。
○並木政府参考人 お答えいたします。軽減税率制度における適用税率の判定につきましては、その販売時点で販売事業者が判断するものでございます。このため、飲食設備があるコンビニエンスストア等の小売店等においては、飲食料品を販売する際、顧客に対して店内で飲食するか持ち帰るかの意思を確認することなどによって適用税率を判定していただくこととなります。そういう観点から申し上げますと、ただいま御指摘のありましたような、イートインコーナーを利用する場合はお申し出くださいと表示をした上で特段の申出がない場合は軽減税率の適用ということになりまして、顧客が一旦持ち帰りとして購入した後、気が変わった場合についても、お店の側から二%分を追加で徴することまでを制度として求めるものではございません。
○宮本(徹)委員 そうすると、申出がないと八%だと。では、客が意図的に店員をだまして税率八%で購入する、イートインを使う、この場合もお店は追加で二%分を求める必要はないということでよろしいですね。
○並木政府参考人 お答え申し上げます。仕組みとしては、ただいま申し上げたとおりと全く同じでございますので、まさに適用税率の判定は、その販売時点で販売事業者が判断するものでございますので、そういう観点から申し上げますと、今申し上げた、客が意図的に申出を行わずにイートインで食べるということになった場合につきましても、販売事業者が顧客に対して二%分を追加で徴することまで求めているものではございません。制度として求めるつもりはございません。
○宮本(徹)委員 つまり、意図的に申し出なくても八%です、二%追加を求める必要もないと。では、毎日毎日、まあ毎日イートインで食べる人がいるかどうかわからないですけれども、毎日毎日、店内で食べると言わずに八%で購入してイートインで食べる、こういう人がいてもお店は注意する必要はないということですね。
○並木政府参考人 お答え申し上げます。お申し越しの点につきましては、先ほど申し上げている原理原則で申し上げますと、その販売時点で販売事業者が判断するということでございますので、基本的には特段お店側から求めるものではないというのが原則でございます。
○宮本(徹)委員 つまり、毎日毎日、八%です、持ち帰りますという意思表示をしてお店で食べていてもお店は注意する必要がないというのが国税庁の今の見解です。総理は、二〇一六年三月十四日の予算委員会でこうおっしゃっています。テークアウトすると言ってそこでお子さんが食べていたら、周りにいる大人は、間違っていると注意するのが大人の義務だ。総理が予算委員会で国会の場で大人の義務だと言ったことも、やるな、やらなくていいよということに変わったということでいいわけですね。
○並木政府参考人 お答えいたします。軽減税率制度につきましては、先ほど来申し上げているとおり、飲食料品を販売する際、営業実態に合わせて、お持ち帰りかどうか顧客の意思を確認することなどで適用税率を判定するということが最も現実的な方法であるというふうに考えていることでございまして、そういう意味では、顧客の営業実態との関係で、多くのお客さんが、イートインがメーンのファストフードにおいて、イートインコーナーを利用する場合はお申し出くださいという掲示のみで意思確認を行って、何ら申出もしないというような状況が長く続いているというような実態があるようなことがあれば、それは、その上で、営業の実態と申告内容が著しく乖離しているというような状態があることが確認できれば、必要に応じて、事業者に対して税務当局から指導等を行うことを通じて是正が適正に進んでいくというふうに考えているところでございます。
○宮本(徹)委員 いや、今のは違う話がまた出てきたと思うんですけれども、だます人がたくさんいた場合の話ですよね、今のはね。だます人がたくさんいるわけじゃないです。同じ人がずっとだまして食べている場合は、いるかどうかは別ですけれども、それは見逃していいですよというのが国税庁の今の立場ということなんですよね。ですから、今回の複数税率では、社会のモラルを守るためにとるべき答えと、お店に過度な負担を求めずに、お店がトラブルに巻き込まれないようにするための答えというのが、違う答えが出てきちゃうわけですよ。両立しないんですね。ですから、今度の複数税率というのは、私は深刻な矛盾をはらんでいると思います。大臣、最後一問だけ聞かせていただきますけれども、正直者がばかを見るという税制をつくっていいんでしょうか。
○麻生国務大臣 私どもの周りに余りあなたのような極端な方がおられませんものですから、ちょっとなかなか実態として、たびたび、毎回毎回、八%でごまかして一〇%の分でそこで食っちゃうという人が、私の周りには残念なことだか幸いなことだか知りませんがおりませんものですから、ちょっとそういったような例を引かれて、何か日本じゅう皆そんなような人たちばかりのような話を聞いていると、そんな感じがしてきますけれども、そんなことはないんじゃないかな、正直私はそう思いました、今の感じで。いずれにいたしましても、正直者がばかを見るというような感じの法律をつくろうとするつもりはありません。
○宮本(徹)委員 正直者がばかを見る税制をつくる気がないんだったら、複数税率を伴う一〇%への引上げはやめるべきだということを申し上げまして、質問を終わります。