2018年12月7日 衆院財務金融委員会 日銀による株価買い支えをただす

衆議院財務金融委員会提出資料① 2018年12月7日
衆議院財務金融委員会提出資料② 2018年12月7日
衆議院財務金融委員会提出資料③ 2018年12月7日

日本共産党の宮本徹議員は7日の衆院財務金融委員会で、市場をゆがめ、国民への損失負担の恐れを生む日銀の株価買支え政策を「極めて罪深い」と厳しく批判しました。
宮本氏は図表で2018年の株価の変動と日銀の株価連動型上場投資信託=ETF買入れの実績を示し、10回の株価下落局面での89回の営業日で700億円超のETF購入が62回に上り、それ以外の営業日138日では14日にとどまると指摘。日銀が株価を買支えている実態を告発しました。
さらに日銀のETF買入れには法則性があるとして、東証株価指数(TOPIX)が前場(午前中の取引)でマイナス0.45%以下では100%購入する一方、マイナス0.35%までなら3.9%だと指摘。黒田東彦日銀総裁は、指摘について「事実だ」と認めつつ「市場をゆがめてはいない」と強弁しました。宮本氏は「市場のゆがみは明々白々だ。株価のつりあげや株価下落の買支えのために日銀が株式を購入するのは大問題だ」と批判しました。
宮本氏は、日銀が以前購入した株式を毎年平均3400億円で売却していることを考慮すると、約29兆円の保有ETFを売却し終えるのに80年かかると批判。保有中に株価暴落が起これば日銀の損失を国が補填することもありえるとし、「膨大な国民負担が生じることはあってはならない」と政策の転換を強く求めました。

≪2018年12月7日 第197回財務金融委員会第3号 議事録≫

○坂井委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。きょうは日銀によるETFの買入れについて質問をさせていただきたいと思います。現在、主要国の中央銀行は、金融政策の手段としてはETFの購入は行っておりません。総裁、なぜ禁じ手とされているんでしょうか。
○黒田参考人 日本銀行に限らず、各国の中央銀行は、それぞれの経済あるいは物価情勢さらにはそのもとで中央銀行が置かれた法的な枠組みといったものを反映して、それぞれの中央銀行で独自のというか、さまざまな、異なる手段を活用して物価安定の目標の実現に努力しているということでありまして、私どもとしても、何か特定の手段をあらかじめ排除するということではなくて、コストとベネフィットを比較考量した上で最適な手段を選択してきているというふうに考えております。現時点で主要国の中央銀行の中でETFの購入を行っている中央銀行はございませんが、私どもが資産買入れで行っているもの以外の、かなり違った資産を買い入れている中央銀行も多いわけでございます。ただ、先ほど来申し上げているように、それぞれの国の経済、金融情勢、法的枠組みに従って最適と思われる手段を選択している結果ではないかと思っております。
○宮本(徹)委員 なぜ他の主要国の中央銀行の政策として伝統的にとってきていないのか。かつて、白川総裁は、日銀が初めてETFの買入れを決めた直後にこう言っているんですね。最終的に損失負担が発生した場合には、納税者の負担につながる可能性があるほか、個別の産業、企業に対するミクロ的な資源配分にかかわる度合いが強くなる、白川前総裁はこれを弊害だとおっしゃっていました。今、この弊害の懸念が更に拡大していると言わなきゃいけないんじゃないかと思います。資料をお配りしております。一枚目、二〇一八年の日経平均株価の変動と日銀のETF買入れの実績です。赤く塗っているところは株価の下降局面、十回あります。日銀が七百億円を超すETF購入をいつやっているのか。この十回の株価下降局面では、八十九日の営業日のうち六十二回で行っております、約七割ですね。一方、それ以外の営業日百三十八日では十四回、一割にとどまっている。明らかに株価の下降局面で購入しているわけですね。ことし最も株が下がったのは十月でした。日銀は、月別でことし最も多い八千七百億円のETFの買入れを行っています。二十二日の営業日のうち十二日で七百億円を超す買入れを行っているわけですね。まさに買い支えじゃないかと思います。黒田総裁、日銀が株価を買い支えていると言われても仕方がないんじゃないですか。
○黒田参考人 このETFの買入れというものは、あくまでも長短金利操作つき量的・質的金融緩和の枠組みの一つの要素として、株式市場のリスクプレミアムに働きかけることを通じて、経済、物価にプラスの影響を及ぼしていくという観点から実施しておりまして、特定の株価水準を念頭に置いて、それを実現するために実施しているというわけではありません。
○宮本(徹)委員 株価水準を念頭に置いていないということをおっしゃいますけれども、では、一体日銀のETF買入れは、誰の判断で、何を基準にして行っているんですか。
○黒田参考人 このETFの買入れについては、保有残高が年間約六兆円に相当するペースで増加するよう行うこととしております。その際、資産価格のリスクプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて弾力的に買入れを進めております。実際の買入れの運営は、市場の状況に応じて、日本銀行が定める基準に従って、受託者である信託銀行が行っておりますが、その基準の具体的な内容については、市場に不測の影響を与えることがないよう明らかにしない扱いとしております。なお、日本銀行では、ETF買入れを実施した都度、当日中にホームページで買入れ額を公表しているところでございます。
○宮本(徹)委員 信託銀行に委託しているという話ですけれども、信託銀行が勝手に信託銀行の判断で買い入れているというわけではないですよね。
○黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、実際の買入れの運営は、市場の状況に応じ、日本銀行が定める基準に従って、受託者である信託銀行が行っております。
○宮本(徹)委員 では、日本銀行の定める基準でやっているということですけれども、資料の二枚目を見ていただきたいと思います。日銀のETF買入れ傾向がどうなっているのかというのは、いろいろな人がいろいろなホームページで出しております。私もホームページを眺めてみましたら、毎日毎日、日銀の購入予測をホームページで公表しているサイトもあるんですね。TOPIXが前場でマイナスのときに買入れプラスの場合はない、前引けが前日の終わり値より上昇していれば買入れなし、前引けがマイナス〇・五%より下落していれば一〇〇%買入れといった法則性があるというふうにそこには書いていまして、午前中の相場を見て予測と出て、その後買い入れたら当たりと出ているホームページで、非常に法則的に買い入れているんだなと思いました。ちなみに、このお配りしている資料の左側がホームページに出ていた表です。右側の表は、日銀の過去の買入れの実績ですね。右側の表を見ていただきますと、TOPIXの前引けが前日の終わり値に比べてマイナス〇・四五%より下落していれば、一〇〇%日銀はETFの買入れを行っております。逆に、マイナス〇・三五%までだと買い入れることはめったにないということなんですね。総裁、このような買入れを行っているということで間違いないですよね。
○黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、日本銀行では、ETFの買入れを実施した都度、当日中にホームページで買入れ額を公表しております。その上で、御指摘の図表二の記載内容は誤っていないというふうに思います。
○宮本(徹)委員 総裁も誤っていないということですから、日銀は指示している基準を明らかにしていないですけれども、それを全部、毎日毎日統計処理すれば、基準は明々白々になってしまうわけですね。ですから、ホームページでこういう予測がやられているように、日銀は極めて法則的に買い支えをやっているというふうに見られているわけであります。この法則的なETFの購入というのは、ホームページに出ているということは、投資家の重要な判断材料になっているということだと思うんですよね。市場に明確に影響を与える法則的な買入れをやっているということじゃないですか。
○黒田参考人 繰り返しになりますけれども、日本銀行のETF買入れは、株式市場のリスクプレミアムに働きかけることを狙いとしておりまして、特定の株価水準を念頭に置いてやっているわけではありません。ただ、リスクプレミアムに働きかける中で株価に影響を与えるということはあるというふうに考えております。もっとも、実際の買入れ規模という面から見ますと、ETFを通じた日本銀行の株式保有額は株式市場の時価総額の四%程度にとどまっております。また、買入れに当たっては、幅広い銘柄から構成されるTOPIXに連動するETFのウエートを高めるなど、個別銘柄の株価に偏った影響ができるだけ生じないような工夫もしております。したがいまして、ETFの買入れが株式市場の価格形成や機能度に大きなゆがみをもたらしていることはないというふうに認識をしております。
○宮本(徹)委員 総裁はそういうふうに強弁されますけれども、しかし、実際は多くの方が、日銀がこういうふうに買い入れているのかというのを見てやっているわけですよね。市場のゆがみをもたらしているのは私は明々白々だと思います。夏に当委員会でスイスの投資家の皆さんと懇談した際に、日銀の政策についてこういう意見がありましたよ。株価操作は中央銀行の仕事ではない。大変手厳しい意見がありました。株価をつり上げるため、若しくは株価の下落を買い支えるために日銀が株式をどんどんどんどん購入していくというのは極めて問題だと言わなければいけないと思います。そして、こうやって毎年六兆円規模でETFの買入れを続けていますけれども、続けていくと大変困難になるのが、買い入れたETFを将来どう処分していくのかということになります。このETF、将来どう処分していくのか、日銀は今何らか検討されているんでしょうか。
○黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、このETF買入れというもの、現在の長短金利操作つき量的・質的金融緩和という枠組みの中で行っておりますが、現状、二%の物価安定の目標の実現になお時間がかかることを踏まえますと、ETF買入れを含む金融緩和からの出口のタイミング、あるいはその際の対応を検討する局面には至っていないというふうに考えております。もとより、先行き、物価安定の目標の実現に近づく際には、出口に向けた戦略や方針についても、金融政策決定会合で議論し適切に情報発信していくことになるというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 まだまだETFも買入れを続けていくんだという話ですけれども、そうなると、ますますこのETFの処分は困難さを増す一方だというふうに思いますよ。大体、今時価で二十九兆円ぐらいですかね、ETFは。これだけのETFを市場に売却しようということを考えたら、株価を大きく引き下げる要因になることは火を見るよりも明らかだと思うんですね。株価に影響を与えず処分する方法なるものというのはあるんですか。
○黒田参考人 いずれにいたしましても、現在保有しているETFの今後の扱いというものは、先ほど申し上げた出口との関係もありますし、いずれにせよ、その時々の情勢を踏まえて判断するものであるというふうに考えております。仮に将来において処分を行うという場合には、新たに処分の方針を定めるということになると思いますが、その考え方としては、政策委員会で定めた基本要領において、市場等の情勢を勘案した適切な対価によること、市場等に攪乱的な影響を与えることを極力回避すること、損失発生を極力回避することといった方針を既に明らかにしておりますが、仮に処分するということになれば、そういった基本要領における方針を踏まえて処分の指針を定めることになるというふうに思います。
○宮本(徹)委員 それは存じているわけですけれども、ですから、一体全体、これだけのETFを購入しちゃって、じゃ、市場に攪乱的な影響を与えないという処分方法があるのかということですよ。考え方の基準だけはおっしゃりますけれども、こうやれば、市場に混乱を与えずに、株価の大幅な下落をもたらさずに処分できる方法というのは示すことができないわけですよね。地獄の道を突き進んでいるんじゃないかという感じがいたします。GPIFの方も株式購入を進めていますけれども、GPIFの方は、積立金を将来縮小させるということになりますので、当然、市場で売却するわけですね。そうすると、ますます日銀の側は、GPIFが売っているときに日銀が売ったらもっと株価に影響が出るということで、ETFの処分ができなくなってしまうのではないか、そういうふうに考えてしまうわけであります。そして、資料の三枚目を見ていただきたいと思います。現在、日銀は、ETFとは別に、二〇〇〇年代以降の金融不安の際に金融機関から買い入れた株式というのを持っております。これを市場で売却を進めております。お伺いしますけれども、毎年どれくらいの規模でこの株を売却しているのか。仮に、今この株式を売却しているのと同じ規模で現在保有しているETF二十九兆円分を売却しようとしたら、何年かかるでしょうか。お答えください。
○黒田参考人 日本銀行が金融機関の株式保有リスクの削減を促すために買い入れた株式、これは二〇一六年の四月以降、市場での売却を行っておりまして、十年間でおおむね均等のペースで処分することにしております。これは、ETFのような指数商品ではなく、個々の生株であります。現在の実績は、大体年間で簿価ベースで千六百億円程度の規模で売却を行っております。
○宮本(徹)委員 簿価ベースで年千六百億円ということですよね。ちょっと私、過去の資料を見ましたら、二〇一五年十二月の政策委員会では、売却期間は十カ年、売却規模は年間約三千億となるというふうに書いてあったんですよね。三千億という目標を持ったけれども、今、実際売っているのは年間千六百億円だということですよね。ですから、株式市場に影響を与えずに売却を進めようと思ったら、簡単に売るというのはできないということだと思うんですよね。大変苦労しながら、過去に買い入れた株についても売り払っているという話だと思います。それで、簿価ベースで年千六百で過去の株は売却している。じゃ、二十九兆円分のETFを売却するのは、割り算したら何年になるでしょうか。
○黒田参考人 先ほど申し上げました年間千六百億円ぐらいというのは簿価ベースでありまして、時価ベースでは三千四百億円ぐらいの売却をしております。いずれにいたしましても、物価安定の目標の実現にはなお時間がかかるために、ETFの買入れを含む金融緩和からの出口については、具体的に検討する局面には至っておりません。こうしたもとで、保有ETFの売却に関して、仮定に基づく御質問にお答えするのは適当でないというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 時価ベースだと三千四百億円。二十九兆円、割れば、百年まではいかないですけれども、八十年ぐらいですか。八十年ですよ。総裁が百五十歳まで生きれば見届けられるかもわからないですけれども、私だって八十年後は当然生きていないです。ここにいる方みんな、医学がどれだけ発達しても、そこまで生きていることはないというふうに思いますが。何世代も先にまでわたって、もし今売却を始めたとしても、株式市場に影響を与えずに処分しようと思ったらそれぐらいかかるものを買い入れてしまっているというのが今の事態だというふうに思います。そうすると、売却が大変困難だということになると永久に株式を保有するという選択肢が日銀にはあるのか。保有中に株価暴落が起これば日銀の損失は誰が補填するのか。国が補填するということもあり得るんじゃないかと思いますが、総裁、いかがでしょうか。
○黒田参考人 物価安定の目標の実現になお時間がかかるために、ETF買入れを含む金融緩和からの出口について具体的に検討する局面に至っていないということは、繰り返し申し上げているところであります。なお、株価下落の影響につきましては、二〇一八年九月末時点で日本銀行が保有するETFには七・二兆円の含み益があるために、株価が下落しても直ちに決算上の期間損益に影響を与えるわけではありません。また、仮に将来、時価総額が帳簿価格の総額を下回る場合にはその差額に対して引当金を計上することにしておりまして、これにより財務の健全性の確保を図ることができるというふうに考えております。なお、現行の日本銀行法では政府による損失補償に関する条項は置かれておりませんで、日本銀行はこうした認識のもとで金融政策運営を行っております。
○宮本(徹)委員 時間が来ましたからこれで終わりますけれども、株価が暴落することだってあるわけですね。過去、何度も暴落というのは起きているわけであります。含み益もすっ飛んでいく、引当金でも足りないと。そういうことになれば、初めに御紹介したように、白川前総裁が懸念していたような、最終的に損失負担が発生した場合は納税者の負担につながる可能性がある、こういうことにもなりかねない。ETFの買入れを進めれば進めるほど、そういう危険を増していくということになると思います。後は野となれ山となれという考え方でETFの買入れを進めるのは極めて無責任だ、この問題は国民的な議論が求められるということを指摘しまして、質問を終わらさせていただきます。