2019年3月7日 衆院本会議 防衛調達法改定 将来の軍事費先取り財政民主主義に背く

戦闘機など高額な防衛装備品の調達費を長期契約で支払えるようにする防衛調達特措法改定案が7日、衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の宮本徹議員は「将来の軍事費を先取りすることは、国会の予算審議権を侵害し、憲法の定める財政民主主義に真っ向から反する」と批判しました。
防衛調達特措法は、財政法で5年以内とされている国庫負担義務行為を、自衛隊の航空機や艦船などの防衛調達については10年まで可能とするもの。同改定案は、2015年に制定された現行法の期限をさらに5年間延長します。
宮本氏は、憲法に財政民主主義の原則が定められたのは、過去の侵略戦争で戦費調達のために大量の国債を発行するなどし、国家財政と国民生活を破綻させた痛苦の経験があるからだと指摘。「その歴史の教訓をどう認識しているのか」とただしました。
さらに、宮本氏は、15年に現行法が制定された際、政府が「財政の硬直化を招くことがないように実施する」と説明していたのに、契約の翌年度以降に分割で支払う後年度負担が年々増大し、19年度は当初予算を上回る過去最大の5兆3613億円に上っていることを指摘。「軍事費をめぐる現状は、財政の硬直化そのものではないか」と批判し、「米国製兵器の爆買いをやめ、史上最大の軍拡計画の撤回を求める」と迫りました。
岩屋毅防衛相は「防衛力整備には、長い年月を要することからどうしても後年度負担が生じる」などと弁明しました。

以上2019年3月8日付赤旗日刊紙より抜粋

 

≪2019年3月7日 第198回衆院本会議第10号 議事録≫

○議長(大島理森君) 宮本徹君。
〔宮本徹君登壇〕
○宮本徹君 日本共産党の宮本徹です。私は、日本共産党を代表して、防衛調達特措法一部改正案について質問いたします。(拍手)防衛調達特措法は、財政法で五年以内とされている国庫債務負担行為を、自衛隊の航空機や艦船などの防衛調達については十年まで可能とする特例を定めた法律です。本法案は、二〇一五年、安保法制の審議の直前に制定された現行法の期限を更に五年間延長するものであります。そもそも、一九四七年、日本国憲法のもとで財政法が制定されたとき、国庫債務負担行為の年限は三年でした。当時、大蔵省で法案作成に携わった平井平治氏は、財政法の解説書でこう述べております。余りに長期にわたり将来の国の債務を負担することは、国会の構成も時の経過に伴って異なるのであるから、避けるべきであるとの見地から、原則として三カ年度に制限した、こう述べておるわけであります。国会議員の任期を踏まえ、当初は三年とされた年限を、五年はおろか十年にまで延長し、将来の軍事費を先取りすることは、国会の予算審議権を侵害し、憲法の定める財政民主主義に真っ向から反するものではありませんか。憲法に財政民主主義の原則が定められたのは、過去の侵略戦争で、戦費調達のために大量の国債を発行するなどし、国家財政と国民生活を破綻させた痛苦の経験があるからです。政府は、その歴史の教訓をどう認識しているのでしょうか。現行法が審議された四年前、当時の中谷防衛大臣は、財政の硬直化を招くことがないように実施すると答弁しました。ところが、現実には、契約の翌年度以降に分割で支払う後年度負担が年々増大し、一九年度は、当初予算を上回る、過去最大の五兆三千六百十三億円に上っています。後年度負担の補正予算へのツケ回しは常態化し、防衛省が国内の防衛関連企業に装備品の代金の支払い延期を要請する事態にまでなっております。軍事費をめぐる現状は、財政の硬直化そのものではありませんか。財務省が昨年十月に財政制度審議会の分科会に提出した資料には、「長期契約に基づく装備品のまとめ買いなどにより、新規後年度負担額が大きく増加。」「予算の硬直化を招くとともに、平準化されない形で歳出規模の増大を招きかねない状況。」と書かれております。防衛調達に財政法上の特例を認め、予算の硬直化を招いた責任を、麻生財務大臣はどう認識されているのでしょうか。これまで長期契約の対象は、国内で調達する固定翼哨戒機P1や輸送ヘリCH47などでしたが、来年度予算案には、初めてFMS調達による新型早期警戒機E2D九機のまとめ買いが盛り込まれております。しかし、FMS調達については、価格は米国政府の見積り、納期も予定にすぎず、米国政府がこれらに縛られないことは政府自身が認めてきたことであります。長期契約においても、この仕組みに変わりはないではありませんか。米国政府と米軍事企業に兵器の一括購入を保証する一方、政府が長期契約の要件としてきたコストの縮減と安定的な調達は全て米国政府次第ということになるのではありませんか。政府は、昨年末、新たな防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画を閣議決定いたしました。新中期防の総額は、現中期防を二兆八千億円も上回る、過去最大の二十七兆四千七百億円に上ります。長期契約による個々の調達コストの縮減は、予算全体の縮減には全くつながっていません。そればかりか、イージス・アショアやF35戦闘機などの米国製兵器を大量購入するための原資になっているのが実態ではありませんか。トランプ米大統領に言われるがままの米国製兵器の爆買いをやめ、史上最大の軍拡計画の撤回を求め、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣岩屋毅君登壇〕
○国務大臣(岩屋毅君) 宮本徹議員にお答えいたします。まず、長期契約法と財政民主主義の関係についてお尋ねがありました。日本国憲法第八十三条は、財政民主主義の原則として、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」と規定をしております。今般の法律案に基づく個々の長期契約につきましては、各年度の予算に国庫債務負担行為として計上され、国会の議決を経た上でお認めいただくものでありまして、財政民主主義との関係で問題は生じないものと考えております。次に、財政民主主義とその歴史についてのお尋ねがありました。財政民主主義につきましては、過去の反省から、国の財政を適切な民主的コントロールのもとに置くことで、国民が不当な負担をこうむることを避けるために現行憲法に規定されたものであると認識をしております。次に、財政の硬直化についてお尋ねがありました。防衛力整備につきましては、例えば、艦艇一隻、航空機一機の製造に長いもので四年から五年の期間を要し、さらに、所要の隻数、機数を整備するためには長い年月を要することから、どうしても後年度負担が生じます。防衛省としては、毎年度、装備品等の調達の効率化、合理化に努め、中期防の枠内で、後年度負担も含む、計画的に予算編成を行っているところでありまして、引き続き、財政の硬直化を招かないように適切に対応してまいりたいと存じます。いずれにせよ、新中期防においては、五年間に新規契約する事業費の枠を設定しているところでありまして、後年度負担を含め、防衛関係費を一層適切に管理してまいりたいと存じます。なお、補正予算につきましては、財政法第二十九条に基づいて緊要性のある経費を計上しており、また、支払い時期の後ろ倒しを伴う部品の契約変更を三十一年度に行うことは考えておりません。次に、FMS調達の装備品に対する長期契約法の適用についてお尋ねがありました。御指摘のように、FMS調達は、価格は見積り、納期は予定である等の特徴があり、長期契約法を適用しても、この特徴に変わりはございません。長期契約法をFMS調達の装備品に適用することについては、他の調達方法による装備品と同様に、これがコストの縮減と調達の安定的な実施に資するということが重要だと考えております。製造企業等との調整は米国政府により実施されることとなりますが、平成三十一年度予算案に計上したE2Dの取得に係る調達効率化は、米海軍の調達分二十四機、空自の調達分九機のまとめ買いが前提となります。米側は空自の調達分とあわせて米国の製造企業に対して発注することから、価格の低減効果が発生し、製造ラインも調達期間中は確実に維持される見込みでございます。この点について、米海軍との間で、現在の価格と納期の見積りを遵守してもらうべく、最大限努力する旨を確認し、また、私も、シャナハン米国防長官代行との会談におきまして、速やかな導入、円滑な導入について協力することを確認しておりまして、引き続き米側と緊密に協力をしていきたいと思います。このように、今回のE2Dの取得に関する長期契約法の適用は、コストの縮減と調達の安定的な実施に資するものと考えております。最後に、長期契約による縮減額と予算額との関係についてお尋ねがありました。平成三十一年度予算案における長期契約につきましては、PAC3ミサイル用部品の一括調達によって約三十一億円、E2Dの九機まとめ買いによって約三百二十五億円、合計で約三百五十六億円の縮減額を見込んでおりまして、防衛予算全体の縮減に寄与しているものと認識をしております。また、御指摘のイージス・アショアやF35Aといった高い性能を有する米国製の装備品につきましては、我が国を取り巻く安全保障環境に対応し、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要不可欠なものとして平成三十一年度予算案にも計上しているものでございます。いずれにいたしましても、厳しい財政状況を踏まえつつ、防衛力整備の一層の効率化、合理化を図ることで経費の抑制に全力で努めてまいります。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕
○国務大臣(麻生太郎君) 宮本議員から、債務負担行為の年限の特例、財政民主主義と歴史の教訓、防衛予算の硬直化について、計三問お尋ねがあっております。まず、国庫債務負担行為の年度の特例についてのお尋ねがありました。財政法は、将来にわたる財政の弾力性を阻害することのないよう、国庫債務負担行為の年限を原則五カ年度以内と定めております。一方、今回の特別措置法は、防衛力の計画的な整備を行うために必要であって、長期契約による経費の縮減効果が見込まれることから、財政法の特例として定めるものであります。今回の特別措置法に基づく国庫債務負担行為につきましては、他の国庫債務負担行為と同様に、毎年度の予算において計上し、国会の議決を経ることとされております。したがって、国会の予算審議は確保されており、財政民主主義に沿ったものであると考えております。次に、財政民主主義と歴史の教訓についてのお尋ねがあっております。もとより、議会制度自体が、財政に国民の適切なコントロールを及ぼすため発達してきたものであることから、現憲法八十三条の財政民主主義の原則は、議員御指摘の理由のみによって新たに規定されたものではないことは承知をしておりますが、同条の規定に沿って財政運営を行うべきということは言うまでもありません。その上で、さきの大戦のような、国力に見合わない債務残高の累増の結果、国家財政や国民生活を危うくすることがあってはならないことであります。こうした教訓も踏まえ、新経済・財政再生計画に沿って経済再生を図り、防衛関係費を含めた歳出と歳入、両面の改革を続けることで、二〇二五年のプライマリーバランスの黒字化を実現し、債務残高GDP比の安定的な引下げを目指してまいりたいと考えております。最後に、防衛予算の硬直化についてのお尋ねがありました。防衛関係費につきましては、これまでも、中期防に定められた予算の範囲内で予算編成を行っているところであります。このため、後年度負担及びその後の歳出経費の増加により、毎年度必要となる裁量的経費が圧迫されることのないよう、新たな中期防において、後年度負担も含めた、新規契約する事業費の総額を定めることにより、防衛関係費の管理のさらなる適正化を図ったところであります。(拍手)