消費税率の8%への引き上げ(2014年)以降、金の密輸が急増している問題で、日本共産党の宮本徹議員は12日の衆院財務金融委員会で、密輸入した金を国内で売却したさいの消費税脱税分が利益となって犯罪組織に流れている可能性を指摘し、政府に抜本的対策を求めました。
政府の対策強化で昨年の密輸摘発量は減少しましたが、貿易統計では昨年の金の輸入は7トン、輸出は156トンと依然大幅な輸出超過でした。昨年の金の密輸による脱税額の推計をただした宮本氏に、中江元哉関税局長は「仮にすべてが密輸だとすれば、1キログラムあたり50万円として、消費税の脱税額は約600億円」と答弁。宮本氏は消費税率が10%に引き上げられれば「密輸による脱税は、よりインセンティブ(動機)が動く」と指摘。中江局長も「利幅が増える」と認めました。
欧州では投資用の金地金は付加価値税の課税対象外で、日本も同様の制度検討すべきだと求めた宮本氏に麻生太郎財務相は「日本では投資用・非投資用で管理されていない」として困難だとの答弁に終始。宮本氏は、東京商品取引所などが「投資目的の金地金は非課税扱いとするのが一番の解決策」だと指摘していると紹介し、検討を重ねて求めました。

≪2019年3月12日 第198回衆院財務金融委員会第7号 議事録≫

○坂井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。きょうは、金地金の密輸問題について、まず質問させていただきます。昨年も当委員会で質問させていただきましたが、投資目的の金地金については、EUの多くの国は非課税という扱いにしております。そのことを私も検討すべきじゃないかという立場で、きょうも質問させていただきたいと思います。一年前もここで消費税の金密輸にかかわっての脱税額というのが議論になりましたが、ちょっと教えていただきたいんですけれども、昨年の金密輸に係る消費税の脱税額の推計というのは幾らになっているでしょうか。
○中江政府参考人 お答えいたします。貿易統計によりますと、平成三十年の金の輸出量が百五十六トン、輸入量が七トンでございまして、その差百四十九トンが輸出超過量となっております。この輸出超過量につきましては、例えば、国内で生産されて輸出される金があることや、在庫の増減等の要因もあることから、超過分が全て密輸によるものとは言えず、消費税の脱税額についても確たることを申し上げるのは難しいわけでありますが、その上で、仮に金の価格を一キロ当たり五百万円として、輸出超過量百四十九トン全てが密輸であると仮定すれば、脱税額は約六百億円となります。
○宮本(徹)委員 六百億円。もちろん、先ほどお話があったとおり、全てが密輸じゃないというお話でございますが、数百億円の脱税があるということであります。昨年からの取組で密輸入の摘発件数は減少したとはいえ、いまだ大規模な脱税が行われているということだと思います。もう一つお伺いしたいんですけれども、一方で、国内の金売買による消費税収というのはどれぐらいになるんでしょうか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。消費税は、御案内のとおり、売上げに係る税額から仕入れに係る税額を控除して納税額を計算する仕組みとなっております。このため、例えば金取引などの個別品目の取引に着目して計算するという仕組みにはなっておりませんから、金の取引による具体的な消費税収、これは把握をしていないところでございます。
○宮本(徹)委員 では、金の中でも、投資目的で使われることが多いのは金地金だと思うんですけれども、その論理でいうと、当然、金地金についての消費税収も推計はできないということになるのかなと思いますけれども。ただ、この投資目的の金地金、想像すればわかりますけれども、投資目的で事業者が購入して、手数料だけ上乗せしてどんどんどんどん回していくということですから、仕入れ税額控除との関係で消費税が発生するとしたら、上乗せした手数料に係るところの消費税ということになるわけですから、投資目的の金地金の取引に関しては、消費税収というのはそんなに多くないと思うんですよね。ですから、私、ぜひ、どういうやり方で推計をやる方法があるのかなというのもありますけれども、実際に金地金が投資目的でどれぐらい取引をやられているのか、こういう推計なんかもやってですね。実際、ヨーロッパでは、先ほど言いましたけれども、金地金だとかは非課税になっているわけですよね。そのことによって日本みたいなやり方での脱税は行われていないということだと思うんですけれども、投資目的の金地金の取引による消費税収と、金地金まで消費税を課税していることによってどんどんどんどん密輸、脱税がやられて、奪われている、さっきのでいえば数百億の税金と、どっちが得なのかという、私はぜひこういう比較をやる必要があるんじゃないかと思いますが、その点いかがですか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。先生の問題意識はよく理解をしております。ただ、繰り返しになりますけれども、その消費税収を仮に推計しようと思いますと、金の、先ほどおっしゃったような取引の額のほかに、取引を、例えば事業者間取引と対消費者取引に区分するといったようなことが必要になりますので、そういったデータ自体が現在は存在していないことなどから、金の売買による消費税収についてお示しする、したがって、それを比較するというのは、現時点では難しいということを御理解ください。
○宮本(徹)委員 全部が全部の統計があるわけじゃないですけれども、資源エネルギー庁の貴金属流通統計調査によれば、日本金地金流通協会の主要五十社が二〇一八年に売却した金地金は三百六十七トン、うち百十八トンが輸出と。この五十社というのが国内では相当大部分を占めるというふうな話も聞いておりますけれども、ちょっと私も私なりの計算をしたら、この五十社のところでの取引で生まれている消費税収というのは二十数億ぐらいじゃないかなというのが私の手計算なんですよね、それが正しいかどうかというのもあるわけですけれども。やはり、消費税を、金地金まで含めて課税していることによって、プラスマイナスということを考えたら、今の密輸の規模ということを考えたら、相当税収が損なわれる事態になっているのは間違いないんじゃないかなと思います。それで、今国会、所得税法案の改正の中で、金地金の密輸対策が強化されるということがありますけれども、この対策でどれぐらい効果があるというふうに見込んでいるのか、お答えいただけるでしょうか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。金密輸につきましては、御指摘のとおり、社会的に深刻な状況となっていることを踏まえまして、平成三十年度の税制改正で、まず、金密輸に対する関税法、あと消費税法の罰金の上限額を大幅に引き上げたところでございまして、一定の効果があらわれているものと承知をしております。今般の改正法案、御指摘にありましたように、法案の中に対策を盛り込んでおりまして、一つは、密輸品と知りながら行った課税仕入れについて、仕入れ税額控除を認めないこととするとともに、金地金等の取引に係る仕入れ税額控除につきましては、本人確認書類の写しの保存をその要件に追加することといたしております。今般の改正によりまして金地金の密輸がどの程度抑止されるのか、具体的な金額、定量的な見込みを推計することは困難ではございますけれども、例えば買取りをする金地金が密輸品でないことの確認を行うようになるなど、買取り業者のコンプライアンスの向上に資する対応が求められることとなりますので、金地金等に係る国内取引の適正性が図られ、密輸抑止に対しさらなる効果が期待されるところでございます。いずれにしても、引き続き、関係部局とも連携の上、しっかりと対処してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 当然、さらなる効果を期待してこういう改正案を出したということだと思うんですけれども、どこまでかというのは定量的にはかれないとおっしゃいますけれども、例えば摘発件数だとか押収量が急激に伸びる前、二〇一三年、これぐらいの水準にまでは密輸入は減少する、そういう期待は持っての対策なんでしょうか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。何か、定量的に、このぐらいまでといったような、具体的な目標を持っているということは、現時点ではございません。
○宮本(徹)委員 目標を持っていないと。どこまで密輸入が抑止されるかわからないけれども、やれることとして今回はこの案を出したということなのかもわかりませんが。昨年、一定の措置をとり、ことし、また更に措置を講じても、これで密輸による脱税がなくなる保証というのはないわけですね。その一方で、政府は十月から消費税を一〇%に引き上げるということをやろうとしております。そうすると、一〇%に消費税を、私たちは上げるべきでないと考えていますが、仮に引き上げたら、当然、密輸による脱税のインセンティブはより働くということになるんじゃないんですかね。
○中江政府参考人 お答え申し上げます。金の密輸に関連して、消費税率が上がれば、その分、密輸を行った際のいわゆる利幅がふえることになるわけでございます。ただ、それ以外にも、金が小型で、隠匿が容易な高価な物品であることですとか、近年、金の国際価格が高どまりしていること、また、国内の買取り業者における換金が比較的容易であること等、金密輸の摘発件数が増加した要因、さまざまな要因が考えられるところでありまして、総合的な対策を講じていくことが大切だというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 否定されないので、利幅が更にふえるということですから、更にこれで、脱税すれば、もうけようという力は、間違いなく、消費税を引き上げれば働くわけですよね。それで、きょう、一つ資料をお配りしておりますけれども、これは、脱税の話ではありません、金の輸出量の推移と金の輸入量の推移、前回の引上げのときどうだったのかというものをお配りさせていただいております。過去の消費税率引上げのときには、増税前に金地金の輸入が拡大し、増税後に輸出の拡大が起こったと言われております。つまり、八%のときに輸入をして、一〇%になってから輸出すれば、金市場の取引価格が変わらなければ、手数料を引かなきゃいけないですけれども、手数料を別にすれば、それだけで二%の利益が得られるというわけですね。ですから、一九九七年四月の消費税率引上げ直前も、そして二〇一四年四月の消費税率八%引上げの際も、同じ現象が起こったというふうに言われております。このグラフを見ていただければわかるように、上の段が輸出量です。これは、増税前は減っているわけですが、増税後に輸出がふえている。輸入量は増税前にふえている。もちろん、相場を見ながら、どのあたりで買ってどのあたりで売ってというのは当然あるとは思いますけれども、こういう形になっているわけですよね。この取引は当然密輸じゃないですから、普通の正々堂々とした違法性のない取引なわけですけれども、ただ、消費税というのは、引き上げれば、こういう形で金の取引の場合は収入が得られるわけですよね。国民の税金から、還付金のような形で金の輸出入の業者のところにお金が渡るということになっているわけですよね。ですから、私、こういう取引というのは、こういう取引ができない国民から見れば極めて不公平なことが起きているんじゃないかなというふうに思いますが、ちょっと財務省にお伺いしますが、消費税引上げのたびにこのような金地金の取引が行われてきたということは認識されているんでしょうか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。先生お示しになられました統計、こういった統計があるということは認識をしております。また、輸出輸入の関係で、輸出をすればこういった形で還付等が行われる、そういう制度、仕組みになっているということも理解をしております。ただ、さまざまな要因が絡み合っている話ではございますので、それに対してどのように対応していくのかというのは、総合的な対策が必要だというふうに認識をしております。
○宮本(徹)委員 だから、どう対策するのかということを考えたときに、やはり、金地金に対して消費税を課すというやり方をやっている限り、増税のたびに合法的にこういう取引が行われて、国民の税金から、こうした取引をやった業者に対して税金が流れていくということになるわけですね。それから、あともう一点お伺いしたいんですけれども、政府はこの間、金密輸対策を強化してまいりましたが、その一方で、気になる記事も日経新聞で見ました。二〇一八年十一月二十七日付のものですけれども、市場は混乱、認定地金すら買い取らずという指摘があります。貴金属販売大手の中でも、店頭で海外ブランドの金地金は買取りを休止する企業が出てきた、こう書いています。金先物を上場する東京商品取引所は、国際認定の地金が流通しない事態は世界でも異例で、会員取引会社は現物受渡し品の処理にも困っているということを言っております。財務省にこれも確認したいんですけれども、この間の密輸対策で、こうした混乱が現場に生じているという認識はあるんでしょうか。
○中江政府参考人 先ほど申し上げましたように、金の密輸につきましては、その増加している要因がさまざまでございますので総合的な対策が必要だということで、これまでも、関係省庁と連携して、水際取締りにおける検査の強化や、大幅に強化された罰則に基づく厳正な処分の実施に加えまして、国内流通における透明性やコンプライアンスの強化など、金密輸に対して厳格に対応してきたところでございます。国内での取引についても、関係省庁と適切に連携して対応を行っているところでございます。
○宮本(徹)委員 金地金は国際的に安定した価格で取引できる市場が存在しているから、消費税が課税されると、どうしても密輸による消費税の脱税リスクが生まれる。そして、税率の引上げの際に発生する仕入れ税額控除を利用した、さっき言った差額利益も発生する。さらに、消費税の仕入れ税額控除の状況も厳格にすると、国税庁に否認されたら大変だということで、リスクを恐れて現物市場が混乱する。こういうことが起きているわけですよね。だからこそ、ヨーロッパでは、EU指令で、金の延べ棒や金貨のような投資用の金地金については、免税の特例というのを規定して、きょう配っている資料の裏面にありますように、ほとんどのEU加盟国で免税、非課税ということになっております。この黄色いところ、書いていますけれども、インゴットと、あとバー、ここは全部exですね、排除するということが全部ついているわけでございます。ほとんどの国がそうですよね。ですから、税金の損失を少しでも少なくする手段というのを本気で考えるんだったら、私は、EUと同じように、投資用の金地金については非課税にする、これはやはり真剣に検討する必要があるんじゃないかと思いますが、この点については大臣に御答弁いただきたいと思います。
○麻生国務大臣 御存じのように、これは消費税そのものですけれども、これは消費一般に広く負担を求めるものであります。加えて、金の場合の流通しておりますものの約六割、七割は宝飾品とか、またパソコンの部品なんというようなものの電子機器の部品の原材料ということになっておりますので、加えて、銀とかいう他の貴金属との課税の均衡というのを考える必要がありますので、現行法上、消費税は課税となっておるんですけれども。今、金密輸に対応するという目的なんでしょうけれども、金の国内取引をただ非課税にするというお話のように聞こえましたけれども、これは金の密輸物品というものが他の課税物品に移行したり、イタチごっこにもなりかねぬということもありましょうけれども、これは慎重に考えるべきところだと思っております。加えて、EUのように投資目的の金地金のみを非課税にすればいいじゃないかという話のように伺いましたけれども、国内の金地金の流通というのは、御存じのように、投資目的と非投資目的というのは、これは区別をされておりませんので、そういった管理がされておりませんので、そういった状況においてこの両者を適切に区分ができるかということを考えますと、いろいろ課題、問題があるんだと思っております。いずれにしても、この金地金の密輸につきましては、社会的に深刻な状況になっているということを踏まえて、先ほど局長の方からも答弁がありましたように、関係部局とよく連携の上、更にしっかりとした対処をしてまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 時間になりましたのでここで終わりますけれども、先ほどの日経の記事もこう書いています。東京商品取引所などは、欧州のように投資目的の地金は非課税扱いとするのが一番の解決策ではないかとの見方も示す、財務省が非課税化を検討する気配はなく、国内金市場の混乱もしばらくおさまりそうにない、こういう指摘もされているわけですね。いろいろな課題があるということを大臣は今おっしゃいましたけれども、現にヨーロッパではこういう線引きでやっているというのがありますから、ぜひ、これはよく欧州の事例も研究して、いかに国民から集められた、納められた税金を脱税で逃さないようにするのかというのは真剣に研究していっていただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。