マイナンバー制度 預貯金口座への拡大批判 宮本徹議員「負担増が狙い」

 

日本共産党の宮本徹議員は15日の衆院内閣委員会で、全国民の預貯金口座にまで適用範囲を拡大する共通番号(マイナンバー)拡大法案について、「低中所得や低年金生活者の社会保障の負担増が狙いだ」と追及しました。
宮本氏は、預貯金口座への拡大について、麻生太郎副総理が“拡大を求める世論があれば”と説明してきたことを示し、「世論はあるのか」と追及。山口俊一内閣府特命担当相は「国民の理解は上がっていくと思う」と述べるだけで世論の根拠は示せませんでした。
政府は、これまでマイナンバー導入で低所得者向け「給付付き税額控除」を検討するとしてきました。宮本氏の質問に、内閣官房の向井治紀審議官は法案に給付のための条項は「含まれていない」と認めました。
宮本氏は「低所得者への給付は一切検討されない一方で、国民負担増の検討は着々と進んでいる」と述べ、財務省が、マイナンバーを活用して預貯金などに応じて後期高齢者の医療費窓口負担を3割へ引き上げるなど負担増を求めていることを指摘し、「庶民の貯金を把握してさらに費用をとっていこうというのは許されない」と批判。山口担当相は「将来の制度設計は否定しない」と述べました。
宮本氏は、医療費窓口負担で金融資産を勘案する方式にすれば、「病院窓口の支払いで、金融資産が全部ばれることになる」と指摘。財務省の大家敏志政務官は、「具体的な制度設計の際には指摘の観点も含め幅広く検討していくことが必要だ」と述べ、資産情報が丸見えとなる可能性を否定しませんでした。

2015年5月18日付 あかはた日刊紙より抜粋

              ≪189回 内閣委員会第6号 2015年5月15日議事録≫

○井上委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。本法案は、マイナンバーの利用範囲を拡大して、預貯金の口座にまでマイナンバーをつけて、銀行などに管理を義務づけるというものになっております。まず、お伺いしますけれども、そもそもマイナンバー制度は、国民の側が導入してほしいと望んだ制度なんでしょうか。
○西村(康)副大臣 マイナンバー制度は、より公平公正な社会保障制度、あるいは税制の基盤、そういったものをつくっていくインフラであるということと同時に、情報社会において行政の効率化、そして国民の利便性の向上を実現するための基礎的な基盤、インフラとして導入をするものでございます。このマイナンバー制度の立案に当たっては、全国四十七都道府県でシンポジウムを開催し、雑誌、新聞等を活用した情報発信を行ってきました。国民各層各界の御理解を得られるように努めてきたところですけれども、平成二十三年十一月の内閣府が実施をいたしました世論調査におきまして、約六割の国民がマイナンバー制度は必要だと思うとして、必要だと思わない、これが二七%ぐらい、わからないが一五%ぐらいですけれども、これを大きく上回っておりまして、国民の一定の理解のもと導入されることになったというふうに理解をいたしております。
○宮本(徹)委員 余りいいかげんなことを言ってほしくないんですけれども、番号制度の認知度、そのころかな、二十三年十一月の調査で、内容まで知っているというのは一六%しかいないじゃないですか。内容を知らないのに必要だというのは、いいかげんな聞き方をしたことで、そういう答弁をされたら困るんですよ。それで、マイナンバー制度導入への国民の懸念というのは何なんでしょうか。
○西村(康)副大臣 お答えをいたします。マイナンバー制度に対する国民の懸念につきましては、ことしの一月に内閣府が実施をいたしました世論調査において、一定割合の国民が、一つには、個人情報が漏えいすることにより、プライバシーが侵害されるおそれがあること、それからまた、マイナンバーや個人情報の不正利用により、被害に遭うおそれがある、こういったことの懸念を持っているとの結果が明らかになっているところでございます。一方、政府としては、こうした国民の懸念に対しまして、制度面、システム面の両面から対応措置を講ずることとしているところでございます。
○宮本(徹)委員 一定の方が懸念というよりも、はるかに多い数が懸念を示していると思うんですけれども、この内閣府の調査では、懸念は特にないと言っているのが一一・五%しかいないということですよね。プライバシーが侵害のおそれ、三二・六%、個人情報不正使用により被害に遭うおそれ、三二・三%、国により個人情報が一元管理され、監視、監督されるおそれがあること、一八・二%ということで、国民のかなり多数の方が、これだけいろいろ政府が宣伝してくる中でも懸念を抱き続けているということになっております。麻生太郎副総理は、二年前に財務金融委員会で、当時の法案について、普通預金にマイナンバーがつかないことについて聞かれたわけですね。こう答えているんですね。マイナンバーを「適用する範囲、活用できる範囲というものを預金口座にまで広げるというようなことが適当という結論が仮に世論として出た場合、それは必要な法的措置を講ずるということに我々はしていくべきなんだと思っております。」ということで、そのとき、これは入れないのは個人情報の問題だとかの心配があるからだという答えを当時麻生副総理はされているわけですけれども、マイナンバーを預金口座にまで広げることが適当だという国民の世論なんかはないんじゃないですか、大臣。
○山口国務大臣 預貯金付番につきましては、社会保障制度の所得、資産要件を適正に執行する観点とか、あるいは適正、公平な税務執行の観点等から、金融機関の預貯金口座をマイナンバーとひもづけをして、金融機関に対する社会保障の資力調査とかあるいは税務調査の際にマイナンバーを利用して照会できるというふうなことにすることによって、現行法で認められている資力調査や税務調査の実効性を高めるものであるというふうなことから、マイナンバー制度の基本理念に資するものであり、国民の皆様方の御理解が得られるものと考えておるところであります。
○宮本(徹)委員 それは大臣の希望的推測であって、現時点で国民の世論があるのかということに対して、世論があるということは答えられないわけですよね。確認します。
○山口国務大臣 やはり、この制度の骨格といいますか中身が十分周知徹底をすることによって、私は、国民の皆様方の御理解というのは上がってきておるというふうに思いますし、今回のさまざまな議論の中でさらに国民の皆さんの御理解を得ることはできると思っております。
○宮本(徹)委員 順序が逆なんですよ、やることの。法律をつくる順序としては、国民の世論がどうであろうが、つくってから説明して回るんじゃなくて、まず何よりも国民の世論を得るのが大事だというのは、二年前に副総理が言っていたわけですよ。副総理ですよ。その立場に立ち戻るべきだというふうに思います。もともと、マイナンバーの利用範囲の拡大は、法律の附則では、法施行後の三年をめどに検討というふうにされてきたわけですよ。ですから、法施行前から利用範囲を拡大するのは、この法律の附則にも、そしてこの間の国会答弁にも反しているということを言わざるを得ないというふうに思います。そして、このマイナンバーを預金口座までつけていこうというのは、大変なコストと労力もかかることになります。政府税調のディスカッショングループの中で、銀行業界から、既存の口座までマイナンバーを付番していくためには一千億円以上のコストがかかる、そして、例えば、三井住友さんでしたか、窓口に来てもらい手続をやってもらったら、顧客二千五百万人にやってもらう、二千五百万口座やろうと思ったら、単純計算して六年かかりますよ、それをやったとしても、住所が変更になっている人だとかいろいろな人がいて、全員に付番することは無理ですよということをおっしゃっておられました。これだけコストもかかり労力もかかるということが言われていて、なぜ法の実施の前から預金口座にマイナンバーをつけることを焦っているのかと疑問でならないんですよね。今回、先ほどお話がありましたけれども、預金口座にマイナンバーをつけるのは、適正な資産調査と税務調査のためだということになっております。私は、主税局の方に、預金口座にマイナンバーをつけるメリットを直接お伺いしましたけれども、言っていたのは、税務調査が迅速になるという話しかなかったわけです。税務署で第一線に立たれてきた方にもお話を伺いました。結局、口座にマイナンバーをつけたとしても、正確な所得把握というのは税務調査でいえば簡単じゃないんだということを言っていましたよ。脱税するような人というのは、本人名義でない口座がいっぱいあるわけですし、口座の売買もやられている。ですから、正確な税務調査というのは、こういうことじゃなくて、結局、ベテランの税務職員の人海戦術しかないんだということをおっしゃっていました。ですから、正確な税務調査という点では大きなメリットはないということだと思うんですよね。ですから、こんなものに莫大なコストと労力をかけることは疑問だということをその税務署の元職員の方もおっしゃっておられました。こうなってくると、一体、三年を待たずに預金口座へのマイナンバーの付番を急いでいる本当の理由は何なのかというのをお伺いしたいと思います。
○山口国務大臣 先ほどの税務調査のお話でありますが、やはり悪質ないわゆる脱税、犯罪につながるような、そういうところもあるんだろうと思います。それはそうなんでしょうけれども、ただ、真面目にやっておられる方々に関しては、この番号付番によって恐らくしっかりした税務調査が進むものと考えております。今御質問のマイナンバー法でありますが、この附則の第六条第一項、検討規定がございますが、その中には、社会保障、税、災害対策以外の幅広い行政事務でのマイナンバーの利用や民間でのマイナンバーの利用に広げることを念頭に置かれた規定でありまして、今回の改正とのそごは生じないと考えておりますし、預貯金付番につきましても、社会保障制度の所得、資産要件を適正に執行する観点とか、あるいは適正、公平な税務執行の観点等から、金融機関の預貯金口座をマイナンバーとひもづけして、金融機関に対する社会保障の資力調査とかあるいは税務調査の際にマイナンバーを利用して照会できるようにすることによって、現行法で認められている資力調査や税務調査の実効性を高めるために行うものであります。
○宮本(徹)委員 だから、現行法の範囲の税務調査は税務署としてはやれるわけですよ、はっきり言って。それがやや迅速になるだけという話ですよ、今回のマイナンバー制度でできることというのは。税務署は税務署で、国税庁はちゃんとしたシステムを持っているわけですから、それで銀行に照会もしてやっているわけですよ。それで、五月五日の毎日新聞のマイナンバー特集に、財務省幹部の声としてこういうことが紹介されておりました。「利用範囲が限定されたままでは、マイナンバーは財政を悪化させる要因にしかならない」、こう書いてありました。なかなか率直なコメントだなというふうに思いました。山口大臣、預金口座にまでマイナンバーの範囲を広げる本当の狙いは、国民の負担をふやして財源を確保する新たなことをやろうとしていることなんじゃないんですか。私はそう思っているんですよね。まず、ちょっと経過を振り返ってみたいと思いますが、預金口座にマイナンバーをつける議論のこの間の出発点は、税と社会保障の一体改革だったというふうに思います。番号制度、マイナンバー法案化の前にまとめられた二〇一〇年十二月、社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会中間報告には、番号制度に期待される効果が次のように書かれておりました。このような番号制度の活用により、所得情報の正確性を向上させることができ、その結果、真に手を差し伸べるべき人に対しての社会保障の充実や、負担、分担の公平性、各種行政事務の効率化が実現できるとありました。その後、二〇一二年の社会保障・税一体改革関連法で、民主、自民、公明の三党合意により修正されて成立した消費税増税法の七条は、番号制度の本格的な稼働及び定着を前提に、低所得者に配慮する観点から、給付つき税額控除などの施策の導入について、所得の把握、資産の把握、執行面での対応の可能性などを含めさまざまな角度から総合的に検討する、こういう文言が盛り込まれたわけでありますが、これは事実ですよね。
○大家大臣政務官 お答えいたします。先生御指摘のように、税制抜本改革法にはそのように書かれています。ただ、御留意いただきたいのは、マイナンバー制度の導入に伴って法定調書等に番号が記載されることによって現状よりも効率化するという点がある一方、導入後も、番号のつかない国民所得やマイナンバーが付されない預貯金口座の存在など、所得、資産の把握には一定の限界は残るものというふうに考えています。
○宮本(徹)委員 事実は確認していただきました。では、今回、出されているこの法案では、先ほど言った消費税増税法七条に規定する給付つき税額控除の導入に関する総合的な検討、これを反映した内容というのは含まれているでしょうか。
○向井政府参考人 お答えいたします。含まれておりません。
○宮本(徹)委員 含まれていないということでありました。そして、この法案について税務面の検討を行った政府税調のマイナンバー・税務執行ディスカッショングループというのがあります。マイナンバーの活用を検討しましたこのグループの中で、最終日に、出席した委員からこういう意見が出たんですね。「番号の活用というのは、そもそも社会保障と税の一体改革という理念から始まったものですので、その具体的な活用例として、消費税の引上げ後の低所得者対策としての給付付き税額控除が、確か消費税の増税法でも記されていると思うのですが、この点に関して記述が全く見られなかったのはどうしてなのか」、こういう意見が出されたわけですね。ですけれども、この意見というのは、結局、このディスカッショングループの中間整理には全く反映されないということになりました。ですから、結局、低所得者への配慮である給付つき税額控除については、この間、マイナンバー制度の一番初めに出てきた話なのに、一切検討が行われていないわけですよね。一方で、三党合意で決めた社会保障国民会議の報告書にのっとって、国民の負担をふやす方の検討は着々と進んでいるという状況があります。きょう、ことしの四月二十七日に財務省主計局が財政審に提出した資料を持ってまいりましたけれども、これを見ると、こう書いています。「全制度を通じ、マイナンバーも活用しつつ、所得だけでなく、高齢者を中心に預貯金等の金融資産も勘案して、負担能力に応じた負担を求める。」とあります。これはどういう意味でしょうか。
○大家大臣政務官 お答えいたします。医療や介護などの社会保障制度を維持していくためには、年齢や就業先にかかわらず、負担能力に応じた公平な負担を求めることが必要と考えています。こうした観点から、委員御指摘の四月二十七日の財政制度等審議会では、医療・介護分野において、高齢者に対して利用者負担を求める際、マイナンバーも活用しつつ、所得だけでなく預貯金等の金融資産も勘案して負担能力を判断する仕組みとする必要があるのではないかと提案をさせていただいたところであります。
○宮本(徹)委員 それで、この中の資料を見ると、いろいろな制度がマイナンバーを活用して、金融資産も勘案して負担増をしようという話がいっぱい出てまいります。例えば、後期高齢者の窓口負担、現在の一割から三割にしようじゃないか。七十歳から七十四歳の医療費の窓口負担、現在、一割から二割に引き上げる最中でございますが、これも三割に引き上げようじゃないか。それから高額療養費の自己負担限度額を引き上げようじゃないか。介護保険の利用料の一割から二割の負担というのは、今現役並み所得ということを言っていますけれども、これも金融資産を勘案して、少ない年金生活者の人も大きく負担してもらおうじゃないか。介護保険の利用者負担の限度額も引き上げようじゃないか。高齢者への負担増のオンパレードが、この四月二十七日、マイナンバーを活用して、出てきております。山口大臣、お伺いしたいと思いますけれども、結局、預金口座にマイナンバーを付そうとしている本当の目的というのは、全ての高齢者の金融資産を調べて、一定の資産を持つ低年金の生活者にも負担してもらう、一定の資産があれば、低年金の年金生活者の皆さんだって、たくさん、負担増をしてもらうということなんじゃないんですか。
○山口国務大臣 先ほど来のお話というのは、財政審としてのお考えもあるんだろうと思いますが、もう委員も御案内のとおりで、もともとマイナンバーというのは、そういったことではなくて動き出して議論としては始まっておったわけです。しかも、今回の改正法によりまして将来預貯金付番が進んでいるというふうなことを前提にして、もちろん、新たな制度設計がなされる可能性については否定するつもりはありませんけれども、しかし、今回の改正は、年金の給付額等を適正なものにするために、マイナンバーを利用して対象者の預貯金口座を調べることを目的としておるものでありまして、高齢者の金融資産を調べて、一定の資産のある低年金者の負担を引き上げるためというふうなことを目的としておるものでは全くございません。
○宮本(徹)委員 いや、そう言いますけれども、私が先ほど来言っていますけれども、税務調査だとか資産調査とか現行法の範囲のものに、それこそ銀行業界に一千億円もかかるようなことをやらせるというのは、本当に、それこそ費用対効果で見たらつじつまが合わない話なんですよね。それは山口大臣はそういうところまで考えていないのかもわからないですけれども、政府の全体のところでは、こういうことを考えて、マイナンバー制度というのは大きく動いてきているんじゃないですか。そして、この財政審にはこう書いてありますよ。団塊の世代が後期高齢者になり始める直前の二〇二〇年度までに、受益と負担の均衡がとれた持続可能な制度を構築することを目的として進める必要があるというふうに書いています。ですから、この財政審の考え方としては、二〇二〇年度までに、マイナンバーも活用して、高齢者にも一定の資産があれば負担してもらうんだということを目指してやっているということじゃないですか。それが政府が急いで進めようとしている狙いなんじゃないんですか。この四月二十七日の財政審の資料では、負担増の対象として、夫婦で二千万円の預貯金を保有する世帯が例示されております。夫婦で二千万円というと、大体単身者の場合は一千万ということになりますけれども、負担増を求める対象世帯の預金額が夫婦で二千万円と例示している根拠というのは何なんでしょうか。
○大家大臣政務官 お答えいたします。もう御承知かと思いますが、介護保険の分野においては補足給付というのが支給されることになっていますけれども、昨年六月に成立した法律では、夫婦世帯で二千万円を超える預貯金等を有する場合、補足給付の対象外にするという見直しが行われたところであります。これを踏まえまして、今御指摘の四月二十七日の財政審の資料において、その一定の貯蓄の一つの例として二千万円という水準をお示しさせていただいたところであります。いずれにしましても、この二千万円という金額はあくまでも一つの例でありますので、具体的な制度設計については今後検討されていくものと考えております。
○宮本(徹)委員 特養ホームのホテルコストの負担増を始めるのが夫婦で二千万、単身で一千万だから、それをもとに例示として書いたんだというお話でございましたけれども、例示だといっても、結局、この事務局案が議論のスタートになるわけですよね、これからこの制度設計をするときに。高齢者の預貯金というのは何なのかというのを私たちはよく考えなきゃいけないと思うんですけれども、やはり、高齢者にとって預貯金というのは、これから何歳まで生きるかわからない、そしてどれだけ負担が生活費にかかるのかもわからない、医療費も介護費用もかかるかわからない、そういう中での生活の糧なわけでありますよ。将来が全く予見できないからこそ、そして将来が予見できないような我が国の社会保障制度の貧困さがあるからこそ、みんな預貯金をためているわけでありますよ。自営業者なんかでいえば、わずかな国民年金しかない、そういう中で、現役時代に一生懸命預貯金を積み上げる方もいらっしゃるわけですよ。単身者で一千万というのは、豊かな老後を送るのに十分な貯金と必ずしも言えないですよ、はっきり言って。そして、もしわずかでも残れば子供たちへ、孫たちへと思いながら、節約しながら貯金を積み上げてきているわけでありますよ。富裕層でない一般庶民の方々の貯金を当局が把握して費用をさらに取っていこう、私はこういうことは許されないというふうに思います。そして、一度金融資産を勘案する制度を設けたら、持続的な社会保障制度のためだということで、初めは一千万だというところが、九百万、五百万というふうに引き下げられていく危険だって大いにあるわけですよね。ですから、本来だったら、資産のことを考えるというんだったら、富裕層や資産家の金融資産への課税強化だとか所得税の総合課税だとか、そういうことこそ検討すべきなんじゃないですか。
○大家大臣政務官 お答えいたします。これも繰り返しになりますけれども、社会保障制度においては、持続可能性を高める観点からも、資産も含めた負担能力に応じた負担へと、負担のあり方を見直していく必要があるというふうにまずは考えております。他方、税制においては、先生のおっしゃるとおり、再分配機能の回復を図るために、二十五年度の税制改正で所得税の最高税率を引き上げました。それから、金融所得課税の見直しもさせていただき、相続税の見直し、これは基礎控除の引き下げで、五千万プラス一千万掛ける相続人数から、三千万プラス六百万掛ける相続人数、及び最高税率を五五パーに引き上げました。それから、二十六年度の税制改正では給与所得控除の見直しもさせていただきました。ということでありますけれども、ただ、やり過ぎれば勤労意欲や事業意欲、また富裕層や資産の国外への流出等がありますので、どのような影響を与えることがあるのかということも考えた上で、総合的に考えていくことが必要であるというふうに思っています。
○宮本(徹)委員 所得税にしても相続税にしても、過去の最高税率からしたらまだまだはるかに低い状況なのは御存じのとおりだというふうに思います。この間少しは戻しましたよと言うんだけれども、これだけ格差が拡大しているわけですから、負担増を富裕層にもっとしっかり求める、こういうことこそ必要だと思うんですよ。そういうことを検討せずに、低中所得者層と低年金生活者層を狙い撃ちにするように預貯金にマイナンバーを入れていくということは、私は許されないというふうに思います。社会保障の負担に金融資産を勘案するということになれば、これまで言っていた、税務調査の際に金融資産が幾らあるかというのを銀行に国税庁が、税務署が照会するというような、一部の人に対する限定的な使い方ではなくなるわけですよね。病院にはみんなかかるわけですから、みんなの資産を把握していくということで、全預金口座にマイナンバーが付番されていることを想定しているというのが財務省の提案だというふうに思います。ちょっと山口大臣にお伺いしますが、預金口座のマイナンバーの付番について、近い将来の義務化というのを視野に入れているんでしょうか。
○山口国務大臣 今回御審議をいただいております改正法案における預貯金付番に関する規定の見直しがございますが、これは、改正法附則十二条第四項におきましては、預貯金付番の規定の施行後三年をめどとして、預貯金者等から適切にマイナンバーの提供を受ける方策及び改正後のマイナンバー法の施行状況について検討を加えて、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、国民の理解を得つつ、所要の措置を講ずることというふうなことになっております。三年後、どういうふうな見直しをするかでありますが、少なくとも、現時点では全く予断は持っておりません。この法案が成立をすれば、この規定に基づいて、その後、検討されていくものであろうと思います。
○宮本(徹)委員 全く予断を持っていないということなんですけれども、実際は、義務化しなければできないようなことの検討が既に政府部内で始まっているということなわけですよ。ですから、本当に、初めは義務化しませんよ、しませんよと預貯金口座への付番を導入しておきながら、後では義務化しますよ、こういう制度ですよというのは、これは全く国民だましになっていくというふうに思います。そして、残された時間がわずかになってきましたけれども、山口大臣は、三月二十五日の本委員会の答弁で、次のように言っております。「例えば預貯金云々というふうな話の中で、たまたまテレビのニュースを見ておりましたら街角の声というのをやっていまして、えっ、預金、全部ばれるんですかみたいな話が出るんですね。これはかなり誤解があるわけですが、そこら辺は十分注意してやっていかなきゃいけないなと思っております。」というふうに答弁されております。仮に、ここに書かれているように、七十歳以上の医療費の窓口負担を金融資産を勘案して決める方式にしたら、少なくとも、七十歳になれば、病院の窓口でいざ支払いということになったら、この人は金融資産がどれぐらいあるのかというのが全部わかっちゃうんじゃないですか。
○大家大臣政務官 お答えいたします。現在も、既に、負担割合が異なる仕組みというふうになっておりますので、金融資産を勘案することが直ちにプライバシー上問題になるということは考えておりません。ただ、仮に具体的な制度設計を行う場合には、宮本委員が御指摘のような観点も含めて、幅広く検討していくことが必要だと考えております。
○宮本(徹)委員 いや、現在高い方が、現役並み所得ということで高いというのは、そういうのがプライバシーを侵害していないというのは物すごい認識の誤りですよ。昔、子供医療費も、所得制限がある時代がありましたよね。この東京でもあったわけですけれども、そうしたら、あの人はお金がある、あの人はお金がないと、窓口で全部わかるような状況があったわけですよ。ましてや、支払いのとき、○○さん、きょうは一万五千円ですなんと言われて、ああ、あの人は国民年金だと言っていたけれども、いっぱい貯金を持っているんですねみたいな話になっていく。事業者にもみんなわかっていくということです。国民にこういうことを隠して、預貯金にマイナンバーを付番していく突破口をまず開いていくということはとんでもない。この法案の撤回を求めて、質問を終わります。
○井上委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。