2019年10月30日衆議院厚生労働委員会 国民年金と厚生年金の財政統合した場合の試算

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 10月30日の厚生労働委員会で配布した、国民年金と厚生年金を統合した場合の試算(概算)です。この試算は、国際医療福祉大学の稲垣誠一教授が作成し、許可をえて、厚生労働委員会で配布したものです。質問後、与野党議員から、うれしい反応がありました。

提出資料 稲垣誠一国際医療福祉大学教授の試算(概算)

以下2019年11月5日付赤旗日刊紙より抜粋

 日本共産党の宮本徹議員は10月30日の衆院厚生労働委員会で、政府が公的年金の財政検証で将来の見通しとして示している基礎年金の大幅な減額を抑制するために、国民年金と厚生年金の財政統合を検討するよう提案しました。
宮本氏は、厚労省年金局で室長も務めてきた稲垣誠一・国際医療福祉大学教授の試算を紹介。それによると、国民年金と厚生年金を財政統合すると、最終カット率は両年金とも9%になります。基礎年金の減少が抑制されるため、同年金の2分の1をまかなう国庫負担の減少も抑制され、将来の所得代替率がいまの仕組みでの50・8%から56・1%に改善します。
宮本氏が統合の検討と試算を求めると、加藤勝信厚労相は「統合を主張する学者もいるのは知っているが、ただちに統合しなければならない状況にはない」と答弁。一方で「今後の課題としては、所得再分配機能の維持のためにどのような方策が可能か議論していかなければならない」とも述べました。
宮本氏は、田村憲久元厚労相も主張していると指摘。財政統合を行えば、日本共産党も提案してきた厚生年金の保険料の上限引き上げが基礎年金の減額を抑える大きな力になると述べ、重ねて検討を求めました。

≪第200回2019年10月30日衆院厚生労働委員会第2号 該当部分議事録抜粋≫

○盛山委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。まず、年金について伺います。年金の今度発表されました財政検証を見ますと、年金の給付水準の引下げが基礎年金に集中しているわけですよね。ケース三の場合で見ると、所得代替率は、基礎年金は二八%削減、報酬比例部分は三%削減。国民年金だけや、あるいは報酬比例部分が少ない方、低年金の人ほど年金の削減が大きくなる。この現状は放置するわけにはいかないと思います。この基礎年金の方がなぜ削減が大きいのかというと、財政状況のよくない国民年金勘定をもとに基礎年金の削減率を決めているからであります。きょう提案したいのは、基礎年金の減額を抑制するために、国民年金と厚生年金の財政統合について検討していただきたいということです。私、厚労省に試算を出してほしいという話をしたら、試算を出してもらえませんでしたので、配付資料をお配りしました。これは、国際医療福祉大学教授の稲垣誠一先生の試算、概算です。御承知のとおり、稲垣先生は厚生労働省の年金局でも勤められた方でございます。裏表ありますけれども、一番右側が財政統合した場合どうなるかということですけれども、ケース三で見れば最終的な年金の削減は九%ということですから、今の仕組みでは基礎年金はマイナス二八%、三割近く減ってしまうわけですけれども、財政統合すれば九%ということです。モデル世帯で見れば、マイナス二〇%が財政統合すればマイナス九%ということであります。それから、表面、戻っていただきまして、所得代替率はどうなるのかということですけれども、ケース三でいけば、今の仕組みでいけば五〇・八%になるわけですけれども、財政統合すれば所得代替率は五六・一%ということで、現行よりもかなり改善するということになります。これは、基礎年金は、ふえればその分国庫負担も増加するからこうした効果が出てくるわけでありますけれども。大臣にきょうは提案したいのは、やはり国民年金と厚生年金の財源を一本化すればこうした効果が出てくるわけでありますから、ぜひこの財政統合についても検討していただきたい。試算も、ぜひ厚労省としてもやっていただきたいと思います。いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 今回の財政検証と前回と比べて、基礎年金の減額といいますかの状況は、若干でありますけれども、どのケースを比べるかですが、二〇一四年のケースEと今回のケース三を比べれば、若干は改善されていると言える姿ではありますけれども、ただ、委員の御指摘のように、このマクロ経済スライドの中で、基礎年金の下がる率が報酬比例部分に比べて大きいというのは、これは事実な御指摘であります。その上での話でありますけれども、ただ、そもそも、この基礎年金制度というのは、全国民に共通する給付を支給する制度として導入をされて、費用も被保険者全体で公平にということで、基本は定額、もちろん被用者の場合にはそれは所得比例で負担をしているわけでありますけれども、そもそもそれぞれが異なる仕組みになっているわけでありますから、それを一緒にするかどうかということについて、確かにそういう主張をされる学者の方もおられるのは私も承知をしておりますけれども、さまざまな御意見があるということであります。また、現在、当面は、厚生年金、基礎年金それぞれにマクロ経済スライドがかかるということ、またマクロ経済スライド自体が徐々に給付水準を調整するということでありますから、今直ちに何か対応しなければ、統合しなければならない、こういう状況にはないというふうには思っております。また、今回、被用者保険のさらなる適用拡大等の議論もあります。この適用拡大は、国民年金財政をも改善させるという結果も、先般、財政検証の結果において確認をされているわけであります。また、基礎年金は、所得の多寡にかかわらず一定の年金額を保障する再分配機能を有する給付であって、その再分配機能を大きく損なわないようにしていく、その視点は非常に大事だというふうにも思っております。そういった意味で、まずは被用者保険の適用拡大に向けた検討を進めるとして、今後の課題としては、所得再分配機能の維持のためにどのような方策が可能なのか、これについては今後とも引き続き議論はしていかなければならないというふうに考えています。
○宮本委員 これは、学者の提案だけじゃなくて、元厚労大臣の田村さんもいろいろなメディアなんかでも、きょう、今はいらっしゃらないですけれども、主張されている話ですよ。与党の中からもそういう意見が出ているんじゃないですか。ですから、これは本当に、基礎年金の減額が大変だから適用拡大という話も今一生懸命議論されているんでしょうけれども、この改善の効果、グラフを見ていただければわかりますけれども、適用拡大は当然必要ですけれども、それに増して大きな、基礎年金の削減率を抑える効果が財政統合にはあるわけですよね。大体、なぜ、国民年金勘定の財政状況で基礎年金の削減率を決めなきゃいけないのか。この仕組み自体、合理的根拠は私はないと思うんですよね。基礎年金は、だって、国民年金加入者だけじゃないんですから。厚生年金に加入している方も含めて支給されるわけですから、財政状況の悪い国民年金勘定で基礎年金の削減率を決めていくという今のやり方をどう改めるのかというのは真剣に検討していただきたい。緊急な課題じゃないというお話をされましたけれども、私は緊急に検討すべきだと思いますし、さらに、私たち、この間、先日の選挙でも提案しましたけれども、厚生年金の保険料の標準報酬月額の上限を引き上げるということを訴えていますけれども、それを考えても、財政統合をやれば、この厚生年金の保険料を引き上げていくということも、削減率、カットの率を小さくしていく上では大きな力になっていくというふうに考えておりますので、どうやって基礎年金をしっかり守っていくのかという観点で検討をお願いしたいと思います。