2020年2月21日 衆院予算委員会中央公聴会 「雇用によらない働き方」に必要な保護は

 衆院予算委員会は21日、中央公聴会を開きました。公述人らは、安倍政権下で相次ぐ公文書管理問題やカジノを中核とするIR(統合型リゾート)誘致問題、雇用・働き方などについて発言し、各党の議員が質疑に立ちました。
 NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子氏は、「桜を見る会」をめぐる公文書管理の問題について陳述しました。
 多重債務問題にとりくむ弁護士の新里宏二氏は、安倍内閣が「経済成長戦略の目玉」として推進するIRの問題について語りました。
 日本共産党の塩川鉄也議員は、カジノ規制の中核を担う行政組織として新設された「カジノ管理委員会」の事務局が、IR推進事業者から職員を受け入れている問題について質問。新里氏は「推進の人が規制側に入る自己矛盾になっている。中立性の担保に大きな問題がある」と指摘しました。
 塩川氏は、共産党の宮本徹衆院議員が「桜を見る会」の招待者名簿の提出要求をした1時間後に名簿を廃棄した政府の対応について質問。三木氏は、「国会で必要な記録が簡単に廃棄をされ、行政側の決めた規則で廃棄しても合法だという状況はおかしい」と批判しました。
 宮本議員は、飲食品配達代行サービス「ウーバーイーツ」など雇用によらない働き方が広がるなか、「どのような保護が具体的に必要か」と質問。連合の逢見直人会長代行は、形式的に自営業でも実際は雇用と分類されるべき働き方の場合があり、裁判などを通じてただしていくべきだと主張。新しい働き方に対応した労働法制の見直し、経済法や協同組合法でのカバー(保護)が必要だと語りました。

以上2020年2月22日付赤旗日刊紙より抜粋

≪第201回2020年2月21日衆院予算委員会公聴会第1号 議事録午後部分抜粋≫

○棚橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。令和二年度総予算についての公聴会を続行いたします。この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。令和二年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。御意見を賜る順序といたしましては、まず小林慶一郎公述人、次に逢見直人公述人、次に小黒一正公述人、次に八代尚宏公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。それでは、小林公述人にお願いいたします。
○小林公述人 皆さん、こんにちは。東京財団政策研究所の小林慶一郎でございます。きょうは、公述人としての意見陳述という大変光栄な機会をいただきまして、まことにありがとうございます。早速でございますが、資料としまして「経済・財政運営について」という六ページの短い紙をお配りしていると思いますので、それの資料に沿いまして、中長期的な観点から、日本の財政運営、経済運営全般についての意見を述べたいと思います。大体三つテーマがありまして、一つは、現状をどう認識するのか、低金利と低成長が続いているという日本経済の状況について、二番目に、その要因は何であるのかということについてお話をしまして、三番目に、これからの財政運営についてはやはり政府の信認が重要だと思うわけですが、その信認を維持するためにこれから何をしたらいいのかというようなことをお話ししたいと思います。まず、現状でございますが、低成長と低金利が長い間定着しているというのが日本の状況だと思います。実質のGDP成長率は、過去三十年近くにわたって一%程度、現在も一%弱の状態になっている。一方、実質金利、これは長期国債の利回りではかった安全資産の金利ですが、実質で見ると大体マイナス一%程度になってしまっているということであります。低い成長は財政運営にとって非常に悪いわけですが、ちょっと奇妙なことは、ここ数年定着している、金利が成長率よりも低い状態というのは、これは財政にとってややプラスの面があるわけですね。つまり、政府の借金は金利でふえていくけれども、GDPは経済成長率でふえていく。成長率の方が金利より高ければ、借金の比率というのは伸びていかないわけであります。だから、財政に対する緊張感というのもやや薄らいでいる。それが、今MMTのような議論が流行する背景にあるということだと思います。ただ、この状況は日本だけのことではないんですね。一ページ目にグラフを示しておりますが、これはローレンス・サマーズ・ハーバード大学教授、アメリカのもとの財務長官だった方が昨年出した研究ですけれども、OECD全体を一くくりにして経済成長率と実質金利を比べたものです。青い線が経済成長率、低下傾向にありますけれども、大体一・五%強の成長率がある。一方、実質利子率の方は三十年間ずっと低下しておりまして、今、OECD全体で見てもゼロ%に近い状態まで下がっている、こういう状況になっている。要するに、低成長、低金利、しかも金利の方が成長率より低いという状況がグローバルに続いているということであります。一ページおめくりいただきまして、では、なぜこういう低成長、低金利が続いているのかというと、一言で言うと、将来に対する不安あるいはその不確実性というものがあると思います。一つ目、日本にとって一番大きいのは、財政の過剰債務の問題。要するに、政府の債務は、GDP対比で二四〇%、ネットで見ても一五〇%。二ページ目のこのグラフですが、現在から二〇六〇年程度までの長期的な日本の財政の、要するに債務比率の推計をしたものであります。このまま現状の状態が続くと、黒い点線で描いてありますように、これから先ずっと債務比率は伸び続けて、二〇五〇年ごろになればGDPの五〇〇%を超えていく、そういう非常に巨大な水準に達してしまう。そこまでもつとはなかなか考えづらいので、その間に何かが起きるんじゃないかという不安があるわけであります。要するに、政府債務の過剰がどう解消されるかが不安であると。そのために投資の低迷が起きて、貯蓄が過剰になって、成長率が下がっていく、こういうことが起きているんじゃないか。要するに、これから増税が起こるのか、それとも歳出の削減が起こるのか、社会保障費が切られるのか、あるいは消費税や所得税がもっと上がるのかとか、そういう不安がどうしてもこのグラフを見ると出てくるわけですが、その結果として経済活動が停滞しているというのが一つあるんじゃないかということであります。二ページ目の一番下に書いておりますが、現在のグローバルな背景としましては、技術の変化というのも大きいわけですね。要するに、基幹技術と呼ばれる社会の構造を規定するような重要な技術が今大きく変わろうとしている。例えば、十九世紀は内燃機関の技術が基幹技術だった。二十世紀は電力。同じような意味で、二十一世紀は情報技術とか人工知能というものだと思いますけれども、今まだ変化の途上にあるわけであります。要するに、一つの基幹技術が社会に定着するまで、例えば電力の場合、八十年という時間がかかっております。それと同じような考えでいくと、情報化が社会に定着して本当の意味で成熟するためにはまだ時間がかかる。その間、将来に不安が残って、結果的に既存技術への投資が伸びない、こういうことがある。もう一つ、三ページ目に資料を移っていただきまして、低金利の要因というのは何だろうかといいますと、これも同じく不確実性の問題が大きい。これは低成長とほぼ同じような要因なんですが、サマーズが言っているのが一つありまして、それは、高齢化といいますか、先進国での長寿化、寿命が延びるという現象が想定外に起こってしまった。過去五十年間、第二次大戦以降、想定外に長寿化が起こったために、老後資金の需要が大きくなって貯蓄が増大しているということ。もう一つ、私が最近注目しているのは、所得格差の拡大が原因の一つではないか。所得格差の拡大は、一九八〇年代から日本でも他の先進国でも起こっておりますけれども、それは、個人の目から見ると、自分の所得の将来の不確実性が高まっているということをあらわしております。そうしますと、所得の不確実性に備えるために人々が貯蓄をふやして、結果的に金利が下がっていくということは、アイアガリという経済学者の理論でも示されていることでありまして、そういうことから考えると、格差の拡大というのは、実は、金利の低下、長期停滞と言われる金利の低下と関連しているんじゃないかというのが私の考えであります。次に、では、どうしたらいいのかということでございます。この現状で何ができるか。今は、財政に対する信認が保たれているので国債の金利が低くなっているということと、それから、民間の経済に、今申しましたようないろいろな不確実性があるということであります。もし金利が成長率よりも低い状況がこれからも長く続くのであれば、財政を機動的に使っていくという議論が可能になってくるかもしれない。例えば、成長戦略に対して財政を出してそれで生産性を上げて成長率を向上させていくとか、あるいは、全世代型の社会保障による格差の是正を財政の資源を使ってやることによって将来の不安をなくして金利を正常な水準まで上げていくとか、そういうことがあるかもしれない。あるいは、気候変動対策やインフラの更新の投資などに、より機動的に財政を使っていこうという議論があるかもしれないのですけれども、ただ、その前提として、民間の経済の不確実性は、これはどうしようもないことですが、財政への信認を維持するというのが政策の根本になければいけないんじゃないかというふうに思っております。そこで、二つここでは書かせていただいているんですが、政策として考えるべきことは、一つは、基礎的財政収支について、赤字に上限を設けて、その赤字の上限を超えないということに政府や財政当局がコミットするということが必要であろう。今現在、基礎的財政収支は改善傾向にありますけれども、今、GDPの二%程度の赤字ですが、これは、金利が成長率よりも低い状態であれば、赤字をあえて黒字に急いで変えなくても大丈夫かもしれない。ただ、もちろん、金利が成長率を超えて上がってきますと、これは二〇二五年に予定しているようなプライマリーバランスの黒字化がどうしても必要になってくる、こういう関係になっております。ですので、一つは、赤字に上限を設けるということ。もう一つは、政府、日銀が、財政危機のようなこと、可能性は非常に低いかもしれませんが、財政危機に対してちゃんと備えをしているんだということを明らかにする、準備して、明らかにするということが重要だろうと思います。要するに、財政への信認が失われれば、金利が成長率よりも上がってきて債務が急膨張していく。その結果として金利が上がっていく。金利を抑えようとすれば、日銀が国債を買い入れることで、今度はインフレがとまらなくなる。要するに、インフレが制御できなくなるか、金利が制御できなくなるかという、どちらかが起きてしまう。これは、言ってみれば財政破綻の状態になるわけであります。そういう危機に対してきちんと備えがある、そういうプランをつくることで、ここで書いているのは、コンティンジェンシープランといいますか財政危機対応プランを政府、日銀が準備することで対処していく、将来の不安を打ち消していくということができるのではないかということであります。例えば、事前に重要なのは、危機が起きたときに予算の執行ができなくなるかもしれないということに備えて、事前に歳出項目のトリアージのようなことをちゃんとやるべきじゃないか。要するに、全省庁の予算のうち、何を優先的に残すべきで何を切ることができるかというトリアージを事前に準備しておくということが必要ではないかということであります。四ページ目、めくっていただきますと、上に書いてある表は、私が東京財団あるいはキヤノングローバル戦略研究所というところで研究した危機対応プランの概略ですけれども、こういうような、時間軸を三つに分けて計画を準備するというようなことが必要になってくるのではないか。その中でも特に、赤い文字で書いておりますような歳出項目についてのトリアージを事前に準備しておくということが必要ではないかと思います。そのときに、よくある反応というか反論として、政府や日銀がこのような危機対応のプランをつくっているということがもし公になってしまうと、それがマーケットの不安をあおって財政危機を呼び寄せてしまうんじゃないかということは、よく反論で言われることであります。しかし、そんなことは今はないわけであります。この数年に限っていえば、金利が成長率よりも低くなっている、要するに、債務比率は上昇傾向がとまっているわけであります。このままいけば債務比率の緩やかな減少が見込まれるというような状況であるので、仮に政府が危機対応策をつくったとしても、それが市場に動揺を与える可能性はきっと少ないだろうということであります。もう一つ、ここで思い出さなければいけないと思うのは、一九九〇年代の不良債権問題のときの教訓であります。九〇年代の最初の八年間、政府、我々が有効な抜本的な対策を出せないままで、非常に不確実性といいますか不安が日本経済に広がって経済が停滞した。そして、九七年の十一月に銀行危機が起きた後、何段階かに分けてですが政府の金融危機対応策ができて、そしてようやくマーケットが鎮静化した。二〇〇五年に不良債権問題がようやく終息を見た。その段階では、こちらにいらっしゃる伊藤先生始め先生方の御尽力で危機対応策ができたわけであって、それによってマーケットの不安が払拭されたということだと思います。その教訓から考えますと、今、財政についての不確実性が経済活動の停滞を招いているということを考えますと、平時の今こそ、危機対応プランを検討するいい時期なのではないかということが言えると思います。そして、次に五ページ目でございますが、もう少し長期的な制度改革まで目を向けて、財政の信認の維持のための方策を考えてみたいと思います。二つあります。一つは、これはよく言われておりますが、いわゆる独立財政機関を設置して、長期的な財政見通しを中立的な立場で国会や政府に示して政策の議論の基礎とする、そういう構想であります。例えば、先ほどグラフにあったような、五十年程度先まで長期の財政推計をする。これも、幾つかの経済状況や財政についての仮定を置けば、五十年でも百年でも推計を描くことは可能であります。重要なことは、推計の方法について、あるいはどういう仮定を置いたのかということについて明らかにして、オープンな議論の場で出した推計をチェックすることができるようにするということが重要である。そういう意味で、オープンな情報の公開が必要になってくるということだと思います。そして、そのような機関を、アメリカの議会予算局のように、中立性を考えて国会の中の議院事務局に設置をするか、あるいは三条委員会のような形で政府から独立した組織にするということ、そして学界などから専門家を機動的に任用するということが必要ではないかということを考えております。もう一つ御紹介したいのは、フューチャーデザインという新しい政策意思決定の考え方であります。今我々が議論している財政の問題、財政再建というのはある意味で世代間の投資なんですね。要するに、現在世代がコストを負担して、現在世代は何も受け取らないんだけれども将来世代がリターンを得るということで、世代間の投資になっている。しかし、将来世代は、財政再建するかどうかという意思決定に加わることはできません。それは、民主主義というか人間社会の本質的な欠陥というか、本性なのでしようがないわけですけれども、では、将来世代が意思決定に加われないのが問題だとしたら、将来世代を連れてくればいいじゃないかというのがフューチャーデザインの考え方であります。それを言い出したのが、西條辰義さんという世界的に有名なミクロ経済学者で、今、高知工科大学の教授をやっていますが、その西條先生が、仮想将来世代という考え方を提唱しております。それは、五十年後に生きる将来世代になったつもりで現在の政策を議論しようじゃないかと。こういう、やや子供だましのようなロールプレーイングゲームをやろうということなんですが、これで現実に政策が動いた例がありますので、それを御紹介しますと、岩手県の矢巾町というところがあって、そこでこういう、将来世代になったつもりで議論するという実験をやってみたわけです。そのときに、住民討論で水道事業をどうするかという議論をしたんですが、通常の住民は水道料金の値下げを要求しているわけです。ところが、五十年先の将来世代になったつもりで議論をするというふうに促しますと、そうすると、水道管の更新だとか、あるいは浄水場の整備とかで、いろいろなインフラ整備のコストが将来かかってくるということに皆さん気がつかれて、水道料金の値上げに合意をされた。そして、二〇一七年に現実に、矢巾町では水道料金の値上げというのを実行しているということがあります。そういう意味で、同じような実験の結果がいろいろな自治体で出ておりますので、今、地方自治の世界でフューチャーデザインというのはやや手法として取り入れられつつあるのかな、そういう取り入れている自治体も幾つか出てきたかなというような状態であります。それは、行政であったり、あるいは議会の中に将来の世代の利益代表の院をつくるような、何かそういう発想もあり得るのではないか。そして、先ほど申し上げました独立財政機関というのもいわば将来世代の目で財政を検証しようという考え方ですから、これもフューチャーデザインの一つの考え方であるというふうに言えると思います。最後に、済みません、三十秒だけ。六ページ目。一言申し上げたいんですけれども、金融政策については余り述べませんでしたが、今、非常に長期的にゼロ金利が続いて、低インフレが続いております。この状況というのを見ると、実は、長期的なゼロ金利政策を継続するんだという日銀の宣言、それが、これからも景気の低迷が続くんだなというマーケットや企業の予想を生んでしまって、結果的に経済活動が萎縮してデフレあるいは低インフレの状態が強まっている。要するに、ゼロ金利の意図せざる結果としてデフレが続くんじゃないか、こういう新フィッシャー主義という考え方があります。こういう議論のあり方も少し見直しながら、これからの金融、財政の新しい政策のフレームワークを考えていくべきではないかというように考えております。長くなりましたが、以上で終わらせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
○棚橋委員長 ありがとうございました。次に、逢見公述人にお願いいたします。
○逢見公述人 ただいま御指名をいただきました連合の逢見でございます。本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、ありがとうございます。私からは、働く者の立場から見た我が国の経済、社会における課題を踏まえ、目指すべき社会像ととるべき政策について申し述べます。まず、新型コロナウイルスにつきましては、各地で感染例が相次いでおり、一日も早い終息に向けた取組が必要です。連合では、感染予防の徹底や就業上の措置に関する労使協議など、労働者保護の観点に立って職場対応を呼びかけているところです。国会、政府におかれましても、働く者を始め国民生活の安全、安心確保に向けた万全の対応をお願いしたいと思います。さて、私たち連合は、全ての働く仲間が将来に希望を持って働き、安心して暮らしていけるよう、私たちの未来を、次の世代に続く持続可能な社会、互いに認め支え合い誰一人取り残されることのない包摂的な社会に変えていくことを目指しております。お手持ちの、スライドの二枚目をごらんください。人口減少、超少子高齢化の進行、グローバル化やAI、IoTなど技術革新のさらなる進展など、社会経済の変化の速度が増しております。その一方で、パートタイム、有期契約、派遣労働などで働く人は雇用労働者の約四割を占め、年収二百万円以下の労働者も一千百万人を超えるなど、雇用の流動化と不安定化、中間所得層の地盤沈下、貧困の固定化と格差の深刻化が進行しています。その中で、私たちは、社会保障制度の持続可能性の確保や地域コミュニティー維持と、そのための国、地方の財政健全化、あるいは技術革新に対応した人材育成、能力開発、生み出される付加価値の公正な分配といった課題に直面しております。こうした社会の持続可能性にかかわる課題を克服し、将来に希望と安心を持てる社会としていくためには、連合が提起している社会像、連合ビジョン、働くことを軸とする安心社会、守る、つなぐ、つくり出すであります。守るということでいきますと、ワークルールとセーフティーネットを整備して、働く仲間一人一人を守る。つなぐということでいきますと、労働組合を結節点として、働く仲間、地域社会をつないでいく。そして、つくり出すは、一人一人の働きがい、生きがいをつくり出し、社会経済の活力を生み出すということであります。それらの実現のためには、雇用、労働にかかわる政策の実現はもとより、社会保障制度や教育制度、それを支える財源について、国民的な合意を積極的に形成しながら、持続可能で包摂的な仕組みとして再構築していくとともに、必要な負担を分かち合い、社会の分断を生まない再配分を進めていくことが求められております。また、特に経済社会の支え手となる現役世代、特に低所得層におきまして、自身のキャリア形成や子供の教育などの人的投資を十分に行えるように支援することを重視した取組が必要です。スライド三枚目にありますが、これは、ILOが二〇一九年の報告書で、人間中心のアジェンダを発表したものであります。このように、人間と仕事を経済社会政策及びビジネス慣行の中心に位置づけ、人間中心の成長と公平、持続可能性を推進していく必要があると考えます。足元の経済情勢に目を転じますと、海外経済の減速や相次ぐ自然災害、直近では感染症流行などの影響を受け、景気は停滞色を強めております。雇用情勢は数字の上では回復が続いていますが、労働分配率は低水準にとどまり、個人消費は伸び悩んでおります。その背景には、今後の景気減速の懸念に加え、超少子高齢化による社会保障制度の持続可能性への不安、所得格差の是正が進まないことが挙げられます。次に、国民生活の基盤である社会保障について述べたいと思います。社会保障は、一般会計歳出の三四・九%を占める最大の支出であり、国民生活にとって極めて重要なものです。私たちは全世代支援型社会保障の実現を求めており、その観点で幾つか述べたいと思います。まず、子ども・子育て支援です。保育所と放課後児童クラブ等の待機児童数が依然多い中で、保育士の一斉退職が各地で起きており、利用者にも影響が及んでいます。急増している企業主導型保育施設は、制度上、質の担保に課題があるほか、助成金の不正受給等が各地で報告されています。質が確保された保育所等の整備と継続的な処遇改善による保育人材確保に必要な一兆円超を早期に確保すべきと考えます。また、児童虐待の対応策として、子育て世代包括支援センターや子ども家庭総合支援拠点の全市区町村整備を促進すべきと考えます。男性の育休取得についても指摘をしたいと思います。 依然として約五割の女性が、第一子出産を機に仕事をやめています。連合が二〇一九年に全国の有職男性一千名を対象に実施した育休取得調査では、取得割合は七・二%で、半数以上が一週間以下でした。固定的性別役割意識も根強く、育児は女性に大きく偏っています。しかし、連合調査では、取得しなかった男性の約三割が、取得したかったと答えています。女性の就業継続率の向上や、誰もが仕事と両立できる社会の実現に向けて、男性の育休取得促進は必要であり、そのための両立支援制度の拡充と、長時間労働の是正など職場環境の改善が課題となっております。二番目は、介護の問題です。高齢化に伴い介護需要が急増する中で、人材不足でサービス提供に支障を来す事業所も出てきております。人材確保には継続的な処遇改善が不可欠です。二〇一九年十月に介護職員等特定処遇改善加算が創設されました。二〇二一年度介護報酬改定に向け、更に強力な措置を導入すべきです。家族等、介護者への支援も強化して、政府方針である介護離職ゼロ社会を着実に実現していただきたいと思います。医療につきましては、二〇二〇年度診療報酬改定の答申で、医師の働き方改革を支援するための地域医療体制確保加算が新設され、救急や周産期を始めとする病院勤務医について、過重労働の緩和が期待されています。今後、この加算を含む診療報酬が、医療従事者の負担軽減や処遇改善などへ確実に反映されることを求めます。次に、年金です。公的年金は、老後を始め生活保障の大きな柱です。しかし、多くの、パート、有期等で働く者が社会保険に適用されていません。特に、雇用機会に恵まれなかった団塊ジュニア世代の高齢化を見据えた制度改正が急務です。そのような中、全世代型社会保障検討会議を始め政府・与党の検討は、社会保険の適用拡大を小規模にとどめるなど、踏み込み不足が否めません。連合は、曖昧な雇用を含む全ての働く者への社会保険の適用と、基礎年金の給付水準の底支えが緊要と考えております。まずは、事業所と労働者の確実な適用に向け、日本年金機構の体制強化を行い、適用促進を加速すべきです。次に、将来社会の担い手を育成する教育について述べます。四月から、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の子供を対象に、大学などの入学金や授業料の減免、給付型奨学金の拡充により、教育の機会均等の観点から、これらは一歩前進と考えます。一方、スライドで四枚目のとおり、連合の調査、二〇一五年の十月調査ですが、そこでは、対象とならない年収四百万円から八百万円未満のいわゆる中間層であっても、八割以上が、大学などの教育費が重い負担であると回答しています。社会分断を招くことなく、希望する誰もがちゅうちょせずに学びたいことを学べる社会を実現すべきです。引き続き、中間層を含めた全ての子供を対象に拡充していくようお願いをいたします。今般の予算措置で、小中学校の全ての子供がパソコン端末を活用できる環境が整備されることになりました。学校のICT化を進めるためには、ハード面のみならず、ICT支援員や事務職員の果たすべき役割が大きいと思われます。一方、タイムカードによる客観的な勤務時間管理が、都道府県では六六%、政令市で七五%、市区町村では四七・四%にとどまっています。学校の働き方改革を進め、教員が授業などの本来業務に専念し、子供の学びの質を確保できるよう、全ての学校で客観的な勤務時間管理を行い、業務の削減、教職員定数の改善、給特法の抜本的な見直しを三つの柱として、着実に取組を進めていく必要があります。また、社会人の学び直しについても指摘をしたいと思います。スライド五枚目をごらんください。日本の労働者への教育訓練への公的支出、対GDP比は、二〇一一年のデータですが、OECD諸国平均の五分の一と低位となっています。また、右側は企業が支出する教育訓練費ですが、これについても、一九九一年以降減少傾向となり、リーマン・ショック後に更に大きく落ち込んだままで、その水準は戻っていません。AIやIoTの進展を踏まえれば、リカレント教育の一環として、全ての労働者に今後の安定的な雇用につながる能力開発の機会提供が必要であり、労働者が有給で訓練を受けられる教育訓練休暇制度などへの政府の支援が重要です。さらに、高齢期においても新しい機械、技術への対応も必要となるため、定年前の早い段階から長期の教育訓練、職業能力開発の充実が必要です。次に、財政の基盤である税制について触れたいと思います。今回の税制改革関連法案は、総じて申し上げますと、喫緊の課題である、格差是正に向けた所得再分配機能の強化や、持続可能で包摂的な社会保障制度の構築に必要な安定財源の確保に向けた改革の全体像は示されておらず、こうした課題に正面から取り組む姿勢がうかがえません。国民の暮らしと将来の希望を確かなものにするためには、社会保障制度や教育制度の充実とあわせ、税制の抜本改革に向けた議論を一刻も早く行うことを求めます。その上で、二点申し上げたいと思います。一点目は、税による所得再分配機能の強化と財源調達機能の回復についてです。我が国では、所得構造が二極化し、貧困に苦しむ国民が増加しています。所得格差の解消に向けては、税制が本来持つ所得再分配機能を有効に活用すべきですが、スライド六枚目のとおり、我が国の税制、社会保障による所得再分配効果は、先進国の中では最低レベルにあり、所得税や相続税の累進性強化、金融所得課税の強化など、抜本的な見直しが求められます。また、今後、社会保障給付費が増大を続ける見込みであることを踏まえ、安定財源の確保に向け、所得税の改革に加え、企業の社会的責任に見合った法人税制のあり方、社会保障の充実、機能強化に向けた安定財源としての消費税のあり方など、与党、野党にかかわらず、国会全体での徹底した論議を求めます。二点目は、軽減税率制度についてです。導入決定以降、小売業、流通業を始め、懸命に準備、対応を重ねてきたわけですが、導入以降、制度の複雑さ、煩雑さを問題視する声が多数聞こえてきております。加えて、スライド七枚目に記載のとおり、飲食料品の支出額は家計収入が高くなるにつれて増加することから、低所得者対策となるどころか、高所得者ほど恩恵を受ける構造となっています。これらの問題点は複数税率を導入している諸外国では以前から指摘されており、連合としても一貫して導入に反対してきました。軽減税率制度については、その政策効果や、働く現場、消費者の受けとめなどに関して不断の検証を行った上で、スライド記載の給付つき税額控除など、低所得者対策として真に効果的、効率的な制度の導入に向けた議論が必要と考えます。最後に、労働者の保護ルールに関しても述べたいと思います。働き方改革関連法は、施行から一年がたとうとしています。働き方全般にわたる指標によって達成度と課題を検証し、一層の徹底を図ることが大切です。また、中小企業においては、本年四月から時間外労働の上限規制の適用が始まります。一般的には中小企業の方が長時間労働になっていますが、その改善に向けては、スライド八枚目のとおり、短納期発注等の取引慣行の適正化が必要です。大企業の働き方改革によって中小企業の労働者がしわ寄せをこうむることのないよう、しわ寄せ防止のための総合対策の着実な実施をお願いするとともに、中小企業の経営環境改善に向け、下請代金支払遅延等防止法の周知徹底と、来年三月に期限を迎える消費税転嫁対策特別措置法の期限延長についても検討いただきたいと思います。次に、高齢者雇用の推進についてです。七十歳までの雇用・就業機会の確保には、希望者全員が六十五歳まで健康で安全、やりがいを持って働くことのできる環境整備が不可欠です。また、六十五歳以降の雇用によらない措置のみを選択する場合、要件となる労使合意の確実な担保が求められます。さらに、雇用によらない働き方は労働安全衛生法などによる保護が及ばないため、六十五歳以上に限らず、就業者保護の観点から広くセーフティーネットの構築を図るべきです。次に、就職氷河期世代への支援についてです。これまで支援が届かず置き去りにされてきた就職氷河期世代が、地域社会とつながりを持ったり、働きながら暮らしたり、それぞれのゴールに向かえるよう個々に寄り添った長期かつ丁寧な支援が必要です。具体的には、これからでも十分なキャリア構築ができる公的支援が必要です。また、高齢期に入っても継続して就労可能な資格の取得支援、安定就労に向けた定着支援、そして支援する側の体制の専門性の確保をお願いいたします。次に、外国人労働者の権利保護についてです。昨年四月に改正入管法が施行され、在留資格、特定技能が創設されました。日本で働く外国人労働者は過去最高を記録し続け、現在約百六十六万人の方々が日本で働いています。労働者ということで、当然、日本の労働関係法令が全て適用になるのですが、実際は、人権や労働に関する権利が十分に守られていない実態があります。百六十六万人という数字は、派遣で働く人よりも多い数字です。外国人労働者保護のために、法令遵守を徹底するとともに、現行の外国人雇用管理指針の内容を充実させ、外国人労働者のための法律を制定すべきです。また、外国人労働者は、仕事を離れれば地域で生活する生活者でもあります。昨年十二月に改定された外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策における共生施策を着実に実行していく必要があります。次に、ハラスメント対策に関してです。二〇一九年五月末に成立した法により、事業主には新たにパワハラの防止措置が義務づけられますが、セクハラの防止措置も徹底されていないのが現状です。今回望ましい取組とされた、就活生に対するハラスメント、顧客等からのハラスメントを含め、相談体制の整備等の対策を徹底する必要があります。国際労働機関、ILOは、昨年六月に、仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶に関する条約を採択しました。それを受けて、ILO加盟国は、条約採択から一年以内に国会に報告し、国会の承認があれば、条約批准をILO事務局長に通知することになっておりますが、現段階では、日本政府は国会への報告を行っておらず、批准に向けての消極的な状況と言わざるを得ません。あらゆるハラスメントの根絶に向けて、国会審議の場において批准を目指した議論を行っていただくことを強く希望します。また、昨年六月二十六日に衆参両院におきまして、全会一致で、ILO創設百周年に当たり、ILOに対する我が国の一層の貢献に関する決議が採択されました。その中で、中核的労働基準として世界の大多数の国が批准している八つの基本条約のうち、未批准の案件については、引き続きその批准について努力を行うことが盛り込まれています。特に日本が未批准の第百五号条約と第百十一号条約は、それぞれ批准、未批准の国は異なっていますが、双方ともILO加盟百八十七カ国のうち百七十五カ国が既に批准しており、批准していないのは日本を含めてたった十二カ国であります。関係省庁による課題の洗い出しはおおむね終わっております。この決議にあるとおり、一刻も早い二条約の批准に向け、取組の推進をお願いいたします。以上で私の発言を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○棚橋委員長 ありがとうございました。次に、小黒公述人にお願いいたします。
○小黒公述人 法政大学で教授をしています小黒と申します。私は、専門として、財政と社会保障を研究してございます。本日、二〇二〇年度予算の審議の御参考として、簡単に私の意見を述べさせていただきます。まず、財政状況についてでございますけれども、消費税が一〇%に上がり、二〇〇〇年代半ばに始まりました社会保障・税の一体改革がとりあえず一回終了するということになりました。これはひとえに、先生方、皆さん方の御苦労のたまものかなと思っております。しかしながら、依然として財政は厳しい状況にあるというふうに認識してございます。理由は非常に単純でございまして、国、地方を合わせた政府の総債務残高、これはGDP比で見たものでございますけれども、これは今歴史的な水準に達しております。この水準は、太平洋戦争のために国の資源が全て総動員された第二次世界大戦末期、一九四四年度の水準を上回って、更に伸び続けているというような水準にあるということでございます。また、先ほど、いろいろ、長期金利と成長率に関する議論がございましたけれども、現実問題としまして、今、日本銀行が大規模な金融緩和を行っております。その結果、長期金利はゼロ近傍の水準で推移しているわけでございますが、それにもかかわらず、公債等残高GDP比は依然として増加の一途をたどっているという状況です。このような現実を認識するということも非常に重要ではないかというふうに考えております。例えば、二〇一二年度にGDP比で公債等残高は大体一八〇%でございましたけれども、これが二〇一九年度では一三%ポイント増という形で、一九二%という形まで大体伸びているという形になっております。この期間に、毎年平均しますと大体二・五%ポイントずつ、着実にその債務残高は伸びているというような現状でございます。その原因としましては、御承知のとおり、社会保障が膨張しているということでございまして、団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年から更に社会保障費が伸びていくということを鑑みますと、この社会保障の改革に力を入れていくということで、これからが正念場ではないかというふうに考えております。そういった中で、非常に成長率の低い中で、他方で、先ほども御議論ございましたけれども、貧困化も一方で進んでいるという状況です。少子高齢化、人口減少が進む中で、今政治に求められているのは何かといえば、ひとえに、持続可能な社会保障をどう構築していくのかということではないか、すなわち負担と給付のバランスの抜本改革ではないかというふうに思っております。その際、議論の出発点となるのは、二〇一八年五月に政府が公表しました、二〇四〇年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)というものになると思われます。この見通しのベースラインケースでは、二〇一八年度に百二十一・三兆円であった社会保障給付費が、二〇二五年度になりますと大体百四十兆円、二〇四〇年度になりますと百九十兆円まで膨らんでいく。GDP比でいいますと、今、二〇一八年度では足元大体二一・五%でございますけれども、これが二〇二五年度になりますと二一・八%になるとこの試算では予測されている。そして、二〇四〇年になりますと二四%ぐらいまで膨らんでくるというふうに予測してございます。言うなれば、二〇一八年度から二〇四〇年までの二十年間で、GDP比で見ますと大体二・五%ポイント伸びていく。ですので、伸びとしては二十年間で二・五%ですから、ある意味で改革は急ぐ必要はないというような意見もございますが、私はそうではないというふうに思っております。理由はなぜかと申しますと、実は、二〇一九年度予算ベースで見た社会保障給付費は、その前の年と比べますと大体二・四兆円ぐらい伸びている、金額としては百二十三・七兆円になっております。これはGDP比でいいますと二二・一%になっておりまして、さきの、二〇四〇年の予測でいう二〇二五年度で予測していた水準、これは二一・八%であったわけですけれども、この水準をもう既に超えているというような状況にあるということが重要ではないかと思います。したがいまして、今後の膨張を考えますと、やはりきちっと改革を進めていくということが求められているのではないかと思います。しかしながら、名目GDP成長率で経済成長をすればどうにか財政再建ができるんじゃないかという議論がございます。歳出削減だけではなくて、増税あるいは成長というバランスをとっていくということは当然重要なわけですけれども、一つ重要なのは、過度に成長に偏った財政再建、財政健全化政策を進めていくというのは、やはり一定の限界があるのではないかというふうに思っております。なぜかと申しますと、例えば、一九九八年度から二〇一八年度における政府の経済見通しがございますけれども、この名目GDP成長率の予測を見ますと、実際の実績と比較した場合、過去二十一年分あるわけですけれども、実績が予測を上回ったのは六回しかございません。全体としては、合っている確率というのは、そうしますと、二十一回のうち六回ですので、大まかに申し上げれば大体三割、二八%しか、実は政府が予測していた成長率が実現できていないというような状況でございます。数字で申し上げれば、政府の予測では、この期間、平均一・六%だったわけですけれども、実際の実績は〇・一六%という形で、十倍も格差があるというような状況でございます。このような状況の中、政府としても、全精力を注ぐということで、改革の司令塔として全世代型社会保障というものをつくっている。ここで、ことしの夏までに最終報告を出すというような形になっておりますけれども、将来世代や若い世代の今後の負担を考えますと、ぜひ、負担の先送りがないように、踏み込んだ改革に努めていただければというふうに思っております。今、新聞報道等で消費税のインパクトについても少し議論になっておりますので、二〇一九年十月の消費税の引上げの影響について、少し簡単に説明させていただければと思います。こちらの方につきましては資料を用意してございますので、お手元の資料を見ていただければと思います。配付しております資料の二ページ目をごらんください。この資料は、二〇一九年二月十七日に内閣府が公表しました四半期ベースのGDPの速報から作成したものになります。今回の速報は、財務省の法人企業統計の結果が反映されていないということもありますので、あくまでも現時点での評価ということでお聞きいただければと思います。まず、結論から申し上げますと、表を見ていただければわかりますが、二〇一九年十月の消費税の引上げが増税期である期間に実質のGDP成長率に及ぼした影響というのは、実は、二〇一四年四月の消費税の引上げのときに及ぼしたインパクトと比較すると、それよりも小さかったということが読み取れると思います。テレビや新聞では、二〇一九年、この期間の十月から十二月の実質GDP成長率は年率換算でマイナス六・三%というふうに報道してございますが、これはあくまでも年間で見た数字でございます。四半期ベースで見ますと、この段にありますように一・六%というマイナスでありますから、それと比較すると少しミスリードな報道になっているのかなと思います。これは、政府が、与党もあわせて対策を行っていることも、かなり大きな功を奏しているのではないかと思います。例えば、二〇一四年四月の消費税引上げで、その増税期以後どうなっていたかといいますと、二〇一四年の四月から六月の実質GDP成長率は前期比でマイナス一・九%でしたけれども、それ以降では、例えば七月から九月では前期比〇・一%のプラスになっております。それから、十月から十二月でも前期比で〇・五%、それから一五年の一月から三月でも前期比一・四%という形で、消費税を引き上げた後、最初はインパクトがありましたけれども、徐々に回復してきたというような事実もございます。したがいまして、むしろ重要なのは、今回マイナスのインパクトがあったわけで、今、足元では新型肺炎のいろいろな動きもございますけれども、今回のインパクトがどうだったのかということにつきましては、今後の成長率の見通しを見ながら判断することが重要ではないかなというふうに思っております。なお、ちょっと御参考までに、ブルーのラインでくくっているところでございますけれども、実際に消費税のインパクトがどうだったのかということにつきましては、もともとあるトレンドの成長率と実際に引き下がった経済成長率、この差がどれぐらいあるのかということを見て判断するのが重要ではないか。例えば、三%の経済成長が標準的な経済で成長率がマイナス一%になった場合、これは、本当のインパクトは、三%とこのマイナス一%の差の四%分になるわけです。ですので、トレンドの成長率をどう見るかということはなかなか難しいわけですけれども、一段目にありますように、増税期の五期前、五年前からですね、五年間の平均的な成長率をとって、その成長率と実際の成長率の差をとってみたものが、この段にあります、増税ショックというふうに書いてあるものでございます。要するに、実際の経済成長率、実質GDP成長率とトレンド成長率の差で評価したというものでございます。これを見ますと、どういうふうになっているかといいますと、実は、一九八九年のトレンド成長率は一・三%で、一九九七年のトレンド成長率は〇・四四%、徐々に下がってきているというような状況でございます。この中で計算した増税ショックを見ますと、実は、二〇一九年の増税ショックというのは、一九九七年よりは大きいですけれども、二〇一四年若しくは一九八九年よりも小さい可能性があるというような状況が読み取れます。したがいまして、現時点ではまだちょっと確実な判断はできませんけれども、過去の二〇一四年等のところと比較すると、今回の増税のショックはもしかするとそんなに大きくないのかもしれないということで、冷静な判断をしていただければというふうに思います。最後に、建設的な観点から、税制改正のところについて評価を少し簡単に述べさせていただきます。税制改正につきましては、いろいろな項目が入ってございますけれども、お手元の資料の七ページを見ていただければと思います。限られた財源の中でどういうふうに、今、日本の問題としては、低成長で貧困化が進んで、人口減少が進んでいるわけですけれども、この状況下でどうやって本当に必要な財源を真に困った人に再分配していくのかということが求められているわけです。そういった中で、この七ページにありますような、今回、未婚の一人親に対する税制上の措置というものを入れたということにつきましては高く評価できるのではないかというふうに思っております。理由としましては、八ページ目の資料をごらんいただければわかりますけれども、この資料の出所は厚生労働省になっております。ちょっと見方を説明させていただきますと、この資料では、全体の世帯での平均の等価可処分所得を一〇〇とした場合、年齢階級別あるいは世帯構造別のそれぞれの世帯数の中で見た平均的な等価可処分所得がどう変化してきたのかということをあらわしているものになります。この資料の真ん中のところを少し見ていただきますと、一人親と未婚の子の世帯の相対的な等価可処分所得の推移が出ておりますけれども、これを見ていただければ一目瞭然ですが、この世帯のみが唯一トレンド的にずっと相対的な可処分所得の水準が低下してきているという状況にあったわけです。その中で、今回、財源に限界はありますけれども、今回みたいな政策で税制改正をするということについては、一定の意義があったのではないかというふうに思っております。ひとえに、再分配を行う財源にも限界があるというのは、これはもう議会でも、先生方、皆さん方よくおわかりのとおりでございますけれども、低成長で貧困化が進む我が国で、やはり最も重要な視点というのは何か。そのときは、限られた財源を、公費を、本当に困っている人に集中的に配分していくことをどうするのかということを考えていただくということではないかなと。ここは私の見解なので、ちょっと更に踏み込んで説明させていただくと、例えば、現行制度上、基礎年金には半分公費が入っております。例えば医療でも協会けんぽみたいなところに公費が入っておりますけれども、これは、所得の多寡若しくは資産の多寡にかかわらず公費が入っているわけです。こういった部分の公費についてどう再分配していくのかということについても、新しい視点で、政治的な哲学も含めて御議論いただければなというふうに思っております。先ほどの税制改正も含めて、いろいろな意見があるということは十分承知をしております。ですけれども、未婚の一人親に対する今回の税制改正というものは、今私が説明したような哲学にある意味で沿ったものになっているというふうに思っております。いろいろ私も、少し踏み込んで御説明させていただきましたし、意見を表明させていただきましたが、今後の御審議の参考になればということで、御清聴ありがとうございました。(拍手)
○棚橋委員長 ありがとうございました。次に、八代公述人にお願いいたします。
○八代公述人 昭和女子大学グローバルビジネス学部長の八代と申します。本日は、このような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございました。私は、専ら今の日本の経済成長あるいは所得格差の問題に最も関係する、働き方の改革というところに焦点を絞ってお話しさせていただきたいと思います。まず、言わずもないことでございますが、働き方改革というのはなぜ必要なのかということでありまして、これは、一言で言えば、今の日本の働き方というのは、かつての高い経済成長の時代に成立して普及したものであって、非常に日本の経済の発展には大きな役割を果たしたわけです。ただ、今の日本は、急速な少子高齢化あるいは経済社会のグローバル化ということで大きく変化しているわけでありまして、過去は合理的であった日本の働き方もいろいろな問題点が生じているわけです。ですから、新しい環境に基づいた別の合理的な形に変わっていく必要があるんじゃないかということであります。あとは、今、急速な人口減少に日本は直面しているわけですので、女性、高齢者あるいは外国人材の効率的な活用というのは避けられないわけで、これは、個々の人材の活用だけじゃなくて、その効率的な配分、生産性の低い分野から高い分野に労働者が移動することで、本人の所得も上がりますし、社会全体としてもより高い所得が生まれるわけであります。それからもう一つは、やはり、働くだけじゃなくて、生活ということとバランスをとるということが大事でありまして、今、急速に発展する情報化社会で、仕事と家庭とのバランスを図るということが重要であります。これは、政府におかれましても副業とかテレワークを促進しておられるわけですが、それが、残念ながら、なかなか実態に反映されない。その原因は何なんだろうかということもお話ししたいと思います。一ページめくっていただきまして、経済成長の長期的な減速ということでありますが、左のグラフは戦後からの日本の経済成長率を示しているわけであります。大きく分けて、三つの時期に分かれます。一九九〇年から後は、非常に低い、平均して一%の成長率しか実現していないわけで、日本はもう少し高い成長ができる余地があるんじゃないかということが言われているわけであります。そのときの一つの鍵は、やはり労働力の問題でありまして、右のグラフは人口のピーク時からの減少を示しております。二〇〇〇年からの比較なわけですが、この青い棒グラフが全人口であります。これを見ますと、二〇二〇年現在でもわずか二百万人の減少であって、人口減少なんて大したことないじゃないかということも言われるわけです。しかし、これは高齢者がふえているからでありまして、働き手である二十歳から六十四歳の生産年齢人口だけを見ますと、実に、二〇〇〇年をピークにして一千万人の減少が生じているわけでありまして、一千万人減るということはやはりすさまじいインパクトでありまして、それが今の人手不足の大きな原因になっているわけですし、経済成長を抑制する大きな要因にもなっているかと思います。もう一ページめくっていただきまして、今の労働市場の大きな問題として、非正社員の増加というのがございます。この非正社員の増加をどうやって食いとめるのか、安定した雇用をどう実現するのかというのが大きな課題でありますけれども、なぜこんなに非正社員がふえているのかということであります。これは、実は、非正社員の比率というのを見ていただきますと、かつては一〇%ぐらいの水準が、今は急速に高まって、最近時点の二〇一九年では三九%に上がっております。私は、これは四〇%を超すのはもう時間の問題でありまして、場合によっては五〇%を超しても不思議はないと思います。それはなぜかといいますと、この非正社員の増加数を要因分解しますと、派遣社員は一三%にすぎないわけですが、パートタイムが六五%、これが大部分です。最近の大きな特徴としては、契約とか嘱託社員が急速にふえている。全体の二七%ぐらいを占めている。その七割が五十五歳以上なわけでして、はっきり言えば、これは定年退職後の再雇用の人たちなわけですね。今、団塊の世代は急速に高齢化していますから、これからどんどん定年退職者がふえてくるわけで、そういう人たちは、一年契約の再雇用を続けているわけですから、非正社員になるわけであります。ですから、こういう非正社員問題を考えるときに当たっては、やはり日本の正社員の働き方、それが次のページでありますけれども、日本の正社員の働き方自体と結びつけて考えないといけないわけで、何か、非正社員だけが勝手にふえているというと、そういう問題ではないわけであります。日本の正社員の働き方というのは、御承知のように、長期雇用保障、年功賃金、企業別組合、こういうことで象徴されているわけですが、こういう働き方というのは、実は、企業の中で熟練を形成し、あるいは長期的な関係ですので、円満な労使関係を築いてきた、ある意味で非常にメリットも大きかったわけです。ただ、その雇用保障の代償として労働者も大きな負担を担っているわけでありまして、例えば、長時間労働というのがもう不可欠になっている。なぜ、日本人がこんなに長時間労働をするのか。フランス人とかドイツ人は残業は基本的にしないのに、なぜかと考えますと、その一つの理由は、不況のときに雇用を守るための手段として労働時間の削減を使っているということがあるわけです。フランス人なんかの場合はふだんから残業しませんから、不況になるとレイオフ、首切りが必要になるわけですが、日本の場合はふだんから残業していますから、まずその残業をカットすることで雇用を守るということができるわけで、そういう意味で、雇用保障と長時間労働というのは切り離せない関係にあるということです。それからもう一つは、年齢とか勤続年数の長さで賃金を決める仕組み。これが、それなりに雇用を安定させるということなんですが、同時に画一的な定年退職制と不可分の関係にあるわけで、際限なく賃金を上げていけば当然企業は維持できないから、どこかでやめてもらわなきゃいけない。次のページをめくっていただきますと、この定年退職制というのが日本の高齢化社会では、今、最も大きなガンになっているわけです。つまり、同じ仕事能力を持っているにもかかわらず、六十歳とか六十五歳とか特定の年齢で画一的に解雇される、こういう野蛮な仕組みはほかの先進国では許されていないわけです。つまり、六十歳になったから解雇していいというのは、いわば黒人だから解雇していい、女性だから解雇していいと同じような、年齢による差別だという受けとめ方がされているわけです。これが日本では全く問題になっていないのは、定年までの雇用保障、年功賃金と包括的な契約だからでありまして、これをやはり見直す必要があるのではないかということです。それはなぜかと申しますと、年金との関係でありまして、今、社会保障の赤字、社会保障が膨張する大きな要因の半分ぐらいは年金なわけですけれども、この年金改革の一番大きな鍵が年金支給開始年齢の引上げなわけです。これはなぜかというと、OECDの諸国と比較していただきますが、日本の場合は、男性について八十一ぐらいです、今もうちょっと長くなっていますが。年金の支給開始年齢は今は六十三歳で、二〇二五年に向けて六十五歳まで引き上げられることが決まっている。六十五歳まで引き上げられたとすると、八十一歳まで、実に十六年間も年金をもらうことになる。ところが、ほかの国では、日本より平均寿命が短く支給開始年齢が長いので、大体十年ぐらいをもらうというのが相場なわけです。このように、日本の年金水準が高いか低いかの議論はありますが、もらう期間が長過ぎるということがやはり年金制度の安定性を弱める非常に大きな問題になっているわけです。もちろん、年金の支給開始年齢を上げるということは非常に国民の反発を生むわけで、政治的には難しいわけですけれども、ほかの先進国は全てこれをやっているわけですね。ですから、オーストラリアのように日本人とほぼ平均寿命が変わらないところでは七十というところまでやっていて、平均十年の支給期間を確保しているわけです。これが女性になりますと更に六歳年齢が長いので、二十二年近くももらうことになって、こういう年金制度はやはりもたないわけです。ですから、速やかに、高齢者がもっと働いて社会保険料を払い税金を払うことで、働き手人口と一緒になって年金を支えるという仕組みに持っていかなければ、日本の年金制度はもたないのではないか。そういう意味でも、定年退職というような、繰り返しますが、野蛮な制度はできるだけ廃止して、何歳になっても労働者が働けるような仕組みに変えていく必要があろうかと思います。もう一枚めくっていただきますと、政府もそのためにどういうことをされているかというと、高年齢者雇用安定法というのをつくってあります。済みません、年が抜けておりますので、直していただければと思います。この高年齢者雇用安定法というのは、定年退職はそのままにした上で六十五歳までの雇用を維持する。繰り返しますが、これは非正社員として一年契約で維持するということです。これを大体八割の労働者が受け入れているわけでありますけれども、これはある意味でいろいろな問題点があるわけです。確かに、六十五歳まで働けるということは、その人たちにとってはいいことでありますけれども、逆に言えば、そういう恵まれた環境でない人、例えば、中小企業だと賃金はもっと低いわけですが、大企業だと賃金が高い。一旦定年退職した再雇用のときには賃金は下がりますが、その下がり方も二割から五割と非常に大きな差がある。それから、言うまでもなく、非正社員の人はこの恩恵は受けられないわけであります。ですから、この高年齢者雇用安定法という考え方は、今の定年退職制度は放置した上で、いわば継ぎはぎ的に高齢者の雇用を企業の負担で賄うという考え方なわけです。しかも、今国会において、この高年齢者雇用安定法を更に七十まで上げる。当面は努力義務ですが、過去の経験からすれば、いずれ数年後にはこれを義務化するわけですが、それは少しやはり問題ではないか。高齢者が働けるような労働市場をつくるのは大事ですけれども、それはやはり年功カーブをフラット化していく、それから、高齢者の雇用を流動化して、能力と意欲に応じて働けるような場をつくるというのが本筋であって、日本の企業が定年制を廃止できるような環境をつくるのが政府の役割であって、ただ義務づけるというのはやはり問題ではないかと思います。その次のグラフでございますが、これは、今の賃金格差がどこから来ているかということでありまして、正社員と非正社員、あるいは、正社員でも男性と女性の間には非常に大きな格差がありますが、これはいずれも、若年期は小さくて中高年になると大きくなるという年功カーブから来ているわけであります。ですから、賃金格差というのは実は年功カーブの格差なわけで、年功賃金を維持したままでどうやって格差を縮められるのかというのが大きなポイントであるわけです。もう一枚めくっていただきまして、そういうことで、同一労働同一賃金というのが今回新しい働き方改革としてつくられたわけでして、賃金というのはもともと労使で決めるのが原則なわけですが、賃金差が余りにも大きいと問題があるということで、政府が同一労働同一賃金というのをつくったわけです。この同一労働同一賃金というのは、働き方の違いにかかわらず公平な賃金ということでありますが、これは、欧米では職種別労働市場とセットで議論されているわけです。職種別の労働市場では、一部の労働者が勝手に低い賃金で働くということを労働組合は許さないわけですね。そんなことをしたら自分たちの賃金に反映しますから。しかし、日本のような企業別組合であれば、企業の中と外の労働者の賃金格差はあっても当然なわけです。労働市場が違うわけですから。それから、企業の中でも正社員と非正社員の間には大きな賃金格差がある。先ほどのグラフで見ていただいたとおりであります。ですから、こういう企業別の労働市場の中で、どうやって同一労働同一賃金がそもそもできるのか、ここはきちっと議論しなきゃいけないのに、それが余り議論もされずに、日本では職種別労働市場は無理だ、だから企業の中で不合理な賃金格差は是正するという形で、今の同一労働同一賃金法ができているわけです。では、不合理な格差とは何かということなんですが、その定義が実はかなり問題がありまして、企業の中で同じ勤続年数であれば、無期正社員と有期非正社員との格差はあってはならない、これで非合理的な格差は是正するというガイドラインができているわけでありますが、これは余り意味がない。なぜならば、有期の人というのは、無期の人と違ってそんなに長い間勤続できないわけです。大体平均四、五年でかわっているわけですから、仮に正社員と同じ賃金体系を非正社員に適用したとしても、年功賃金の恩恵を受ける前にやめてしまうわけですから、依然として賃金格差は残るわけです。そういう意味で、こういう、勤続年数の違いで賃金を決めるのは合理的だという厚労省のガイドラインは、今の正社員と非正社員の格差をむしろ正当化するようなものであるわけです。それはおかしいんじゃないか。同じ仕事をしていれば、正社員であろうが非正社員であろうが同じ賃金をもらうというのが本来の同一労働同一賃金であって、それは年功賃金に手を入れなければ無理なわけです。そもそも、製造業であればともかく、今の情報化社会のもとで、勤続年数が長いから生産性が高いということが本当に言えるのかどうか、その検証が大事なわけです。昨年、この一番いい例として、トラック運転手が訴訟をしました。定年退職後のトラック運転手が、定年前と全く同じ距離を走っているのになぜ賃金が二割以上も低いのかといって訴えて、東京地裁では運転手が勝ったわけですが、最高裁では会社側が勝った。その最高裁の論理というのは、一言で言えば、これは社会慣行だと。定年退職した後賃金が下がるのは。別の言い方をすると、みんながしているからいいんだと。こんなロジックがあるかということでありまして、みんながしていれば黒人差別でもいいのか、女性差別をしてもいいのかということになるわけで、こういうところがやはり裁判所の限界だと思います。そういう意味では、きちっと法制化することで、本当の意味で同じ仕事をしていれば同じ賃金というのをきちっとつくらないと、勤続年数という不明瞭な指標を入れるということはやはり非常に問題になるかと思います。それからもう一つは、次のページでありますが、今回の同一労働同一賃金では、企業の説明義務というのが入っています。これは非常に大事な点なわけでして、例えば、アメリカの企業はしょっちゅう労働者から訴えられているわけですね、なぜ自分の賃金が同僚よりも低いのかと。訴えられた企業は、あなたの賃金が低いのは、別に黒人だからじゃなくて、あなたの仕事が質が低いからだということをきちっと立証しなきゃいけない。立証しなければ、結局裁判で負けるわけです。これが本来格差を是正するためには必要なわけですが、日本の同一労働同一賃金では結果的にどうなったかというと、要するに、説明義務はしなきゃいけない、しかしそれは、労働者が納得するかどうかは関係ないんだ、企業が説明すればいいんだと。もし労働者が納得しなくて裁判になったら、労働者は今の賃金の不合理性を証明しろ、企業は合理性を説明しろ、双方に立証責任があるという、非常に中途半端な形になったわけでありまして、これでは労働者が勝てるわけはないわけです、人事記録を持っていませんから。ですから、きちっとして、本来の同一労働同一賃金法を入れるなら、米国型の、企業の方がきちっと差別をしていないということを立証する責任を課さないといけないわけで、それがうやむやになってしまったということです。そういうことをしたら企業にとって過重な負担になるんじゃないかという批判があるわけですけれども、しかし、それは同時に、企業の中の例えば人事管理の合理化にもつながるわけでありまして、決して企業も損ではないんじゃないかということです。ちょっと時間がないので飛ばしますが、最後の、正社員の働き方の改革というのを見ていただきたいと思います。ですから、非正社員だけをいじるんじゃなくて、本来正社員と非正社員の格差を是正するためには、正社員の働き方も変えなきゃいけない。どういうふうに変えなきゃいけないかというと、今の、雇用保障をするかわりに、何でも働け、どんな仕事でもどこでもやれ、こういう無限定な働き方というやり方を変えて、できるだけ職種を限定する、地域を限定する、そういう欧米型の働き方に正社員を変えていく。右側に単身赴任比率というのがありますが、これは単身赴任の数です。これは今でもふえ続けています。こんなふうに会社の命令で家族が引き裂かれる、こんなことは外国の労働組合は絶対受け入れないことでありますが、日本の労働組合はこれは雇用保障のためにやむを得ないということで受け入れているわけでありして、やはりそれはやめなければいけないわけで、そういう意味では、きちっと限定正社員というのをもっとふやしていく必要があるんじゃないかということです。それから、副業というものも今は原則解禁になっておりますけれども、副業を普及するということは、労働者が特定の企業に依存する働き方を変える上でも極めて重要なわけです。労働条件の悪い、賃金の低い企業から労働者が自由に転職できるような環境をつくるというのが最大の労働者保護ではないかと思っております。テレワークについても、時間と場所に制約されない働き方をぜひ推進する必要があろうかと思います。最後に一言だけ、今話題になっています男性の育児休業の取得についてコメントさせていただきます。女性だけじゃなくて男性も育児休業をとるということは非常に大事なことですが、なかなか進まない。政府は二〇二〇年度から国家公務員についても一カ月以上の育休の取得を義務づけるということで、これは大変結構なことですけれども、本当にできるのかということです。つまり、今なぜ男性の育休が進まないかというと、上司が無理解だからだ、こういう非常に単純な分析がされているわけなんですが、本当にそうだろうか。国家公務員であろうが民間であろうが、男性が育児休業をとりにくいのは、やはり、自分の仕事に責任を持って、ほかの人ではできない仕事を任されている面があって、女性と同じように完全に職場から切り離された休業を何カ月もとるというのは非常に難しいわけです。ですから、今の育児休業法を規制緩和して、やはり、パートタイムの就業をしても不利にならないような仕組みをとっていく、それによって男性の育児休業、女性も管理職のような人はそういう形をとると思いますが、もう少し、何でも規制で対応するのではなくて、人々の行動様式を考えた上で弾力的な制度にすることによって、もっと育児休業の取得率を高めるということが大事ではないかと思います。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
○棚橋委員長 ありがとうございました。
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○棚橋委員長 これより公述人に対する質疑を行います。質疑の申出がありますので、順次これを許します。山口壯君。
○山口(壯)委員 きょうは四人の先生方に、貴重な意見陳述、本当にありがとうございました。自由民主党の山口壯です。よろしくお願いします。最初に小林先生ですけれども、先生の方から、財政危機についてのいろいろな示唆に富む話もありました。また、金利が低下していることによって格差が拡大しているんだという話もありました。先生が、二〇二〇年ですからことしの二月十三日付で日経の記事に書かれた「格差是正、停滞脱出のカギ」、これでやはり格差というものをどういうふうに捉えるかということが今とても大事なんじゃないかと思います。四人の先生方に共通して所得格差の話は出てきました。今の資本主義というものがどこまでうまくいくのかという議論の中で、この格差の問題というのが先進工業諸国において特に問題になっている。このことが中間層の没落を招き、また民主主義の危機にまで議論がいっている。考えてみれば、中国にも似たようなことがあるんですね。中国は、赤い資本主義ということで突っ走って、今、格差が拡大している、それで共産党の危機ということもしばしば言われている。考えてみたら、テロリズムというのも、未来に希望が見えないと現状を破壊してしまおうかという意味では、そこに格差の問題というのが隠されていると思うんです。その意味では、小林先生の目から見て、二〇二〇年度のこの予算案、格差是正という観点から見るとどういうふうに評価されるのか、そのことについて一言コメントをいただければと思います。
○小林公述人 御質問をどうもありがとうございます。二〇二〇年度のということでございましたけれども、格差の拡大というのは、先ほども資料の中で述べた金利の低下と関連しておりまして、グローバルな現象ではあるわけですね。一九八〇年代から、アメリカ、ヨーロッパ、日本、いろいろな国で格差の拡大というのが起きてきていて、その背景にあるのはテクノロジーの変化が格差の是正の根本的な原因なんだろうというふうに、私や何人かの新古典派の経済学者はそういう見方をしております。ですので、本質的な是正というのは、情報化の技術とか人工知能のような新しい技術が社会の中に定着をして、その結果、社会構造が変わることで中間層が新しく生まれてくるということなんだと思います。ですので、ある意味で、イノベーションを社会全体が受け入れられるような方向に導く政策というのが必要とされていて、そのためのいろいろな政策をこれから考えていくべきかなというふうに思っています。今の予算は、もちろん全世代型の社会保障を目指しているということで、大変、方向性としては、問題に対して対処しようといういい方向に行っているのではないかというふうに考えております。
○山口(壯)委員 ありがとうございます。逢見先生は、きょうは連合の代表としてお越しいただいていて、確かに、年収二百万円以下の方が千百万人いる、これは大変なことだと思うんです。また、ただ、教育について、一部、高等教育について格差を是正するというものも入っているけれども、税制の中で必ずしも全体像が示されていないんじゃないかという問題意識もあったと思うんです。働く仲間の代表としていろいろと考えられる中で、やはりこの二〇二〇年度の予算案について、きょうは相当いろいろ多岐にわたって詳細のコメントもいただいたわけですけれども、この二〇二〇年度の予算案について、逢見先生として、格差をなくしていくという観点から、改めてどういうふうに評価されますですか。
○逢見公述人 格差の問題につきましては、冒頭の陳述でも幾つか述べさせていただきましたけれども、政府としてやるべきことは、一つは、税と社会保障の所得再分配機能をきちんと働かせるということだと思いますが、それについて言うと、私の印象としてはまだまだ不十分であるということです。個別には、例えば教育の問題について、無償化を進めるとか、あるいは給付型の奨学金を入れるとかということで改善している部分はあります。しかしながら、まだ課題はいろいろありまして、低所得者層に限られているので、中間層でもあずかれていない人たちがいるということ。それから、年金についても、基礎年金部分が、今後、マクロ経済スライドが導入されていくと低下していくことがあって、そういう点で格差を拡大しかねない問題があるんですが、そういうところの対策がまだ不十分であるというようなことがあります。
○山口(壯)委員 ありがとうございます。また、小黒先生の陳述の中でも、社会保障改革が正念場はこれからだというコメントもありました。持続可能な社会保障という用語を使われる中で、一つ例として、一人親の、未婚の一人親に対する税制の措置、それは非常に肯定的に評価していただいたと思うし、また、限られた財源をどういうふうに困った人に集中的に配分するべきかというコメントもいただきました。先生として、この二〇二〇年度の予算案、格差を是正するという観点からどういうふうに評価されるか。この一人親の、未婚の一人親の措置のみならず、全般的に評価いただけるとしたら、どうなりますですか。
○小黒公述人 先生、御質問ありがとうございます。格差是正という観点から見ますと、予算案だけではなくて、政府が持っている制度としては、大きく三つあると思っております。一つは、社会保障の仕組みです。もう一つは、税制で、もう一つは、意外にそういうふうに思われていないかもしれませんけれども、やはり国と地方の中での再分配、例えば地方交付税みたいなものを通じた格差の是正であるかなと。その場合、一度に全ての格差をならすということはなかなか難しいとは思うんですけれども、例えば、一つ税制の話で私がお話ししたところでは、やはり未婚の一人親、例えば母子家庭みたいなところが多分ターゲットになると思いますけれども、これは余りにも格差という観点から今まで対応がされてこなかった。その部分について今回対応するというような措置をとったということは、これは本当に、繰り返しになりますが、すばらしいことだと思います。他方で、社会保障の方はどうかというと、これは、今、全世代型社会保障の方でいろいろ議論されている内容と関連すると思いますけれども。例えば医療の窓口負担を一つとったとしても、これは十分難しいことは承知した上でちょっと一応発言させていただければ、年齢別で、本当に所得の多寡、資産の高低を含めて困っている方々がどうのこうのという問題よりも、やはり今、現役世代の中でも非正規の方々が相当ふえてくるという中で、生活保護世帯も全体としては二百万人ぐらいまでふえているということで、これは非常にふえているわけです。その中で、確かに高齢者の方々も多いですけれども、半分ぐらいが高齢者だと思いますが、半分ぐらいは実は現役になっているということを考えると、やはりこの部分についてどうしていくのかというようなことも重要なのかなと。これは今、与党と政府の方で七十五歳以上の自己負担のところについて議論されている、一定割合、一割のところを二割に変えていくというふうな議論もありますので、そこが今後どうなっていくのかということも一つ重要なのかなと。あとは、先ほど年金の議論もございましたけれども、年金については、二〇一九年の財政検証の中で、基礎年金が、例えばケース3ですと三〇%ぐらいマクロ経済スライドで今後目減りするというふうな話もある中で、この部分をどうしていくのかということについて、これは今の話ではないと思いますけれども、今後議論いただければというふうに思います。最後に、地方の方ですけれども、こちらの方についてはいろいろ地方創生の方でまた対応しているということを認識しておりますので、そういう意味でも、一定程度対応されているんじゃないかというふうに思っております。
○山口(壯)委員 ありがとうございます。八代先生に更にお伺いしたいわけですけれども、先生の方から賃金格差についての言及もあって、同一労働同一賃金というものの捉え方の話もいただきました。先生は、二〇一一年に本を出されていて、「新自由主義の復権」ということで、日本経済はなぜ停滞しているのかということを論じられて、確かに、先生がずっときょうおっしゃっておられたこともその文脈の中でいろいろとまた解釈させていただいたんですけれども。また、二〇一六年にシルバー民主主義という用語も使われて、高齢者優遇のシルバー民主主義というものの結果、年金の支給額というのがなかなか抑制できずに、その意味で保育とか次世代向けの支出がなかなか伸びない、こういうシルバー民主主義をどういうふうに打開すべきかということもいろいろと論じられていて興味深かったんですけれども。また、多分同趣旨だと思うんです、二〇一八年に、脱ポピュリズム国家ということで改革が先送りされてしまっているということも論じられていると思うんです。そんな中で、二〇二〇年度の予算案の中で、先生がいろいろと言われている、新自由主義というふうに言われるのは先生は多分好まれないと思うし、その意味では必要な改革をすべきだということを多分おっしゃっておられるので、そのことについて私自身ももちろん共有するんですけれども、そういう目から見て、二〇二〇年度の予算案について、これは格差につながっていく話だと思うんです、格差をどう捉えるか、それをどういうふうに是正するかにもつながっていく話だと思うんですけれども、先生の目から見てどういうふうに評価されますですか。
○八代公述人 御質問どうもありがとうございました。格差の問題は非常に大事でございまして、先ほども小林参考人の方から税制の問題ということを言われたんですが、もう一つ、やはり社会保障の構成に私は問題があると思うんですね。日本の社会保障費の実は九割近くが社会保険、年金とか医療、介護保険で賄われていて、これはいわば水平的な再分配をする機能で、本当の垂直的な再分配、貧しい人に集中的に投じられるのは福祉であって、この比率が日本は非常に低いわけですね。だから、やはりもう少し社会保険の給付を抑制して福祉の方をふやす。その点、今回は一人親とか母子世帯の方にある程度の給付がふえたことは非常にいいことだと思いますが、やはり私は、大事なのは生活保護費の改革、改革というと減らす方ばかりなんですが、生活保護というのは最も基礎的な所得再分配の手段であって、これを重視するということがやはり日本の所得再分配機能を高める非常に大きな要素だと思います。そんな財源がどこにあるかということなんですが、私がかつて規制改革会議にいたとき、こういう提案をしたことがあります。今の生活保護費の半分は医療扶助なんですよね。医療扶助を国民健康保険から賄ってもらえばいいと。つまり、生活保護の人に国民健康保険の保険料を扶助して、それから利用者負担も補助する。介護保険はそうなっているんですよね。ですから、そうすると医療保険の、国保の方は大変だと言いますけれども、それは規模が大きいので、今の生活保護費が半分で済むということは、今の生活保護費の予算を倍にできるわけですね、医療費以外は。こういうような、かなり構造改革を伴うことによって、政府の財源全体に大きな負担をかけずにより所得再分配的な効果ができるかと思います。それから、全世代型社会保障ということの点は、もう少し高齢者の方に負担をしてもらって、若年者生活世帯に回す。今、所得格差が拡大する一つの大きな要因は、もちろん先ほど言われたようなイノベーションなんですが、もう一つの大きな要因は高齢化なんですよね。つまり、高齢者層というのは最も所得格差が大きなグループであって、この人たちの比率が高まることによって日本全体の所得格差が高まるというのは、阪大の大竹教授が昔証明されたとおりでありまして、そうであれば、所得再分配というのは、むしろ、豊かな高齢者から貧しい高齢者に再分配機能を強化するというのが最も効率的な所得再分配政策で、そのためには、高齢者の抵抗がありますけれども、しかしそこはきちっと説得するということで、やはり実現することでより効果的な所得再分配ができるんじゃないかと思っております。
○山口(壯)委員 どうも、きょうは四人の先生方、貴重な意見、ありがとうございます。格差を是正して、そのことによって中間層をしっかり支えて民主主義を守っていく、日本の政治もそういうことでしっかり頑張っていきますので、またいろいろと御示唆ください。どうもありがとうございます。
○棚橋委員長 次に、濱村進君。
○濱村委員 公明党の濱村進でございます。四人の公述人の皆様、さまざま貴重な御意見を頂戴いたしまして、ありがとうございました。まず、小林先生からは、経済財政運営についてということで、フューチャーデザインの話も引かれながら、非常に興味深いお話を聞けたなと思っております。まさにこのフューチャーデザインの考え方、社会保障を議論するに当たって、この考え方を取り入れていかなければならないんじゃないかという実感をしたところでございます。そして、その次に、逢見さんからは、私が農水の政務官時代にも、農水省に連合さんのさまざまな施策、御要請についてお越しいただいたわけでございますけれども、多岐にわたる論点できょうお話をいただきました。その中で一つ、軽減税率の話もございましたけれども、支出額について、おっしゃっていることは私もよく理解をいたします。その上で申し上げるならば、よく我々も言うのが、支出における割合だというような話もいたします。ただ、大事なことは、これ自体の反省点。制度の欠陥、あるいは制度としてパーフェクトなものはないんだろうと思っておりますけれども、今、社会の要請からしてどのような選択肢があるのかということで選んだということは重大なことであると思っております。給付つき税額控除についても、確かに分配機能としてはすぐれている観点があるわけでございまして、ただ、残念ながら直ちに実装することができないという欠点もございました。これが解決できれば、十分に選択肢になり得るんじゃないかと個人的には考えております。小黒先生には、財政、社会保障についてさまざまいただいた上で、さらには一人親の件についてもお触れいただいたわけでございますし、八代先生には、働き方改革、トラック運転手の方の賃金引下げの件、これは社会慣行だということで最高裁の判決が出た。これはなかなか、社会慣行というのは、社会のあり方というのは一朝一夕には変えられないですし、それを乱暴に変えていくというのは余り望ましいことではないと思っておりますけれども、今そうも言っていられない状況もあるんじゃないかというのは一方で思うところもございます。その上で、ちょっとさまざまお伺いしていきたいと思っておりますが、まず小黒先生にお伺いをしたいと思います。 小林先生からもございましたが、財政への信認を維持していくことということは非常に重要だと私も思っております。その一方で、公共投資をしっかりと行っていくことも重要だと思っておるんですが、社会保障の伸びを抑制しながら公共投資を行っていかなければいけないと思っているんですけれども、そうなりますと、どの程度の公債等残高を維持していきながら、その上で、上限はどの程度まで目安にして残高を伸ばしていっていいものかしらというところが、なかなか私も確証を持って言えないなというふうに思っております。財政の観点からどのようにお考えになるか、小黒先生にお伺いしたいと思います。
○小黒公述人 御質問ありがとうございます。これは、正直申し上げまして、公債等残高GDP比が今大体二〇〇%ぐらいになっておりますが、これが、では、何%ぐらいまでになったときに本当に財政が危機的な状況になるのかということについては、多分、誰も明言はできないという状況であると思います。しかしながら、ある程度目安みたいなものはあるのではないかなというふうに思ってございます。例えば、公債等残高GDP比が四〇〇%とか、あるいは五〇〇%という水準にまでなっていくということになると、やはりこれは相当もう難しいだろうと。昔、ラインハート、ロゴフが、日本語の洋書名ですと「国家は破綻する」というやつで出していましたけれども、その中に出ているいろいろなデータとかを見ましても、やはり過剰債務がGDP比で三〇〇%ぐらいになると、サンプル数は少ないんですけれども、その三分の一ぐらいは後々見ると危機的な状態になる、要するに、債務のいろいろな再編をしなければいけないという状況になるというような表も載ってございます。ですので、そういう意味では、やはり、いっても三〇〇%ぐらいか、それぐらいかというのが何となく目安としてはあるのかなと。では、その場合、日本の財政で、一つ指標でとった場合、財政赤字のGDP比みたいなものがございますけれども、これをどれぐらいの水準まで引き下げればいいのかということも重要だと思います。その場合、最近、直近で出しました内閣府の中長期試算がございますが、これの比較的現実的なベースラインケースで見た場合、二〇二九年度の財政赤字のGDP比は、国、地方合わせて大体二・六%ぐらいの赤字になるというような水準になってございます。ちょっとここでは資料をお持ちしていないんですけれども、いわゆるドーマー命題と呼ばれるものがございまして、平均的に、今後、GDPの名目成長率がこれぐらいでいく、他方で財政赤字のGDP比がこれぐらいでいくとした場合に、名目成長率で財政赤字のGDP比を割り込むと、長期的に債務残高GDP比がどれぐらいにいくかというような計算ができる簡易試算がございます。今、名目GDPはどれぐらいの水準かと申しますと、一九九五年度から現在、直近までの平均をとりますと、実は〇・四%ちょっとぐらいしかない、いっても〇・五%ぐらいだと。ただ、今、いろいろ政権で苦労される中でも、やはり名目成長率は徐々に上がってきているということもありますので、仮に一%ぐらいだとしますと、二・六%の赤字を一%で割りますと二六〇%。仮に〇・五%だと、要はもう四〇〇%を超える、〇・五%で二・六%を割ると大体五二〇%ぐらいになっちゃいますので。そういう意味では、一つは、成長率を少し上げながら、やはり財政赤字のGDP比を最低でも二%レンジぐらいまで赤字幅を縮小していくというような努力をしていただくということが重要ではないかなというふうに思っております。
○濱村委員 大変参考になりました。ありがとうございます。社会保障の伸びを抑制するために、ちょっと踏み込んだ議論ということで御発言があった、基礎年金の公費負担の話もございました。これは先ほど山口先生のときにもお話があったので、ちょっとこれはさまざま議論していかなければいけないなと私も思っております。そして、あともう一つ、等価可処分所得が一人親と未婚の子のみ世帯では一貫して低下している。低下し続けてきているところに、ちゃんと今回の、一人親に対しての控除を広げたということ自体は非常に重要なことだと思っておりますが、まず、そもそもこの低下してきた点における原因というものが、何かしら小黒先生の方で分析なり、こういう傾向があるんじゃないか等ございますれば御教示いただければと思いますが、いかがでございましょうか。
○小黒公述人 一言で申しますと、データを見ますと、全世帯平均での等価可処分所得は上昇してきているということはございます。他方で、やはり今、いろいろな意味で労働環境も変わってきているという中で、非正規雇用、特に働きながら子供を育てるということは相当大変でございますので、なかなか所得が上がらない。この二つの要因で、これはあくまでも平均的な、全体の等価可処分所得に対して母子家庭の中での平均的な等価可処分所得、母子家庭ってごめんなさい、一人親のです、未婚、これがどうなっていたのかということで、ここが余り上がらない中で全体が上がってきているという中で、低下してきているということでございます。
○濱村委員 ありがとうございます。もう一点、ちょっとこれは逢見さんにお伺いしたいと思います。確かに、教育無償化はまだまだ不十分な点はあるというふうに思っております。中間層を含めて恩恵があるようにということでございますけれども、一歩前進したという評価をしていただいている部分もございますけれども、私はまだまだこれは進めなければいけないと思っております。今回、一応、国で水準をつくって、中間層の方々になかなか行き渡っていないということはございますけれども、これまでも各地方自治体において取組があったわけでございます。そういう地方自治体ならではの取組というのは、ある一定の、基礎自治体等を含めての財政の支出があったわけでございますけれども、こうしたものが、今回国が制度導入することによって浮いてくるわけでございます。これを活用して、更に対象となる所得水準を引き上げていこうというような取組を自治体の方でやっているということも実際問題としてあると思っております。私は、こうした格差解消といいますか、地方にも分配していくという観点でいうと非常にいい傾向だと思っておりますが、地域に応じてこのような取組をやっている点についてどのような評価をされておられるのか、御意見を伺いたいと思います。
○逢見公述人 質問ありがとうございます。基本的には、教育というのは普遍的なものであって、どこに住んでいても権利は同じものが受けられるというのがベースだと思います。もちろん、地方自治体がそれぞれの財源の中で暮らしやすい環境づくりのためにいろいろな部分に予算を使うという中に、教育についての負担軽減というのも選択肢としてはあると思います。しかし、それが余りに差がつき過ぎますと、住んでいる地域でこんなにも違うのかというのがありますので、そこの程度問題であるというのと同時に、その地域で住むことの魅力をいかに発信するかという、そこの兼ね合いで判断すべき問題だと思います。
○濱村委員 ありがとうございます。おっしゃるとおり、国でしっかりと、どこの地域に住んでいるからといって差があってはいけないという御指摘は、非常に重要な御指摘だと思っております。引き続きしっかり取り組んでまいりたいと思いますが、最後に、小林先生に一つだけ。財政への信認を維持するために重要なこと、PB赤字に上限を設定とか、あるいはコンティンジェンシープランを作成するといった具体的なお話もいただいております。私、非常に重要だと思っておりますけれども、一方で、市中の投資には、その実行力に限りがあると思います。人が必要であったりとかさまざま、設備であったりとか、投入量については限界があるわけでございますので、自然とキャップははまってくるんじゃないかというふうに思っております。そういう観点からすれば、無尽蔵に赤字になるというようなことはないんじゃないかと私は思っておりますが、先生の御意見を伺えればと思います。
○小林公述人 御質問ありがとうございます。おっしゃるとおりでありまして、プライマリーバランスは今、赤字が減少傾向になっていて、そういう意味では改善の兆しがあるわけですので、無制限にどんどん赤字がふえていくということはこれからも考えにくいのかなと。ただ、何らかの経済危機のようなことが、またリーマン・ショックのようなことが起こったときには大幅に下がる可能性もありますので、それに備えて、なるべくであれば赤字を今よりも更に縮める、あるいは約束どおりプライマリーバランスの黒字化を達成するということが、大事な、目指すべき目標ではないかなというふうに考えております。どうもありがとうございます。
○濱村委員 ありがとうございます。本当に何かあった場合、危機に対応するためには、コンティンジェンシープランに即して歳出を削減していくということ、非常に示唆のあるお話であったなと思っております。八代先生、本当はお聞きしたかったこともあったんですが、時間でございますので、きょうはこれで終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
○棚橋委員長 次に、岡本充功君。
○岡本(充)委員 きょうは、大変示唆に富むお話を四人の公述人の皆様にいただきました。岡本でございます。ありがとうございます。限られた時間ですので、それぞれにちょっと御質問させていただきながら、意見交換させていただければと思います。まず、小林公述人の方にお尋ねしたいんです。確かに、実質GDPの成長率と実質金利との関係というのは、極めて大きな、財政的に、そしてまた将来にわたって日本のとるべき経済政策にも影響があるということはわかるわけでありますが、資料の三ページの方でお示しをいただいた、現状と言われる金利とGDPのあの比を見たときに、金利の方が低いときにはこれでいいよねと。でも、いやいや、金利が上がってきてしまった場合には、より厳しいプライマリーバランスの黒字化が必要であり、なおかつ、場合によっては、インフレか、どちらかが制御不能にという大変刺激的な表現が使われておったわけであります。このrがでかいかgがでかいかという転換は、あらかじめ予測として必ずしもわかるものではないんじゃないかと思ったりもするわけでありますが、そう機動的にころころ変えるわけにもいかないという中で、やはりベーシックにやっていかなきゃいけないことというのがあるんじゃないか、こう思うわけですが、それはやはりプライマリーバランスの黒字化を目指していく、そういった考え方は、どちらが大きかろうと目指していくべき、こういうお考えだという理解でよろしいでしょうか。
○小林公述人 御質問ありがとうございます。おっしゃるとおりでありまして、将来的な危機のようなことに備えるためにも、プライマリーバランスの黒字化は目指すべきだろうと思います。ただ、金利が今現在、成長率よりも低い状態であって、それがかなり、これから先の将来もしばらくは続きそうであるという見込みがあるということは、多少余裕ができてきた、数年前は金利の方が高かったものですから、そのときに比べると財政再建のスピードについて多少余裕ができてきたという程度の違いはあろうかと思いますけれども、最終的には黒字を目指していくべきだろうというふうに思います。
○岡本(充)委員 常にその目指していく方向性にあるということであって、余裕が出てきたからといって野方図に使ってはいけない、こういう御示唆でありますね。うなずいていただいている、ありがとうございます。ぜひ私もそういうことを心がけて政策は立てていくべきじゃないかなと思っているわけであります。続いて、給付つき税額控除についてお伺いをしたいと思います。いろいろな方法で消費税のいわゆる逆進性対策をとっていくという議論があるわけでありますが、まずは逢見公述人にお尋ねしたいと思いますけれども、給付つき税額控除について、具体的にどのような制度とするべきだ、こういうふうにお考えなのかということをお答えいただければと思います。
○逢見公述人 御質問ありがとうございます。具体的には、連合としては二つの提言がございます。一つは、消費税の還付制度の導入であります。イメージとしては、合計所得が課税最低限の人に対して、扶養者数に応じて、最低限の基礎的消費にかかる消費税負担相当分を定額で還付するというものであります。そして、課税最低限の水準から徐々に低減していって、いずれかのレベルになればそこで消失するという制度もあわせて講じていくということでございます。二点目は、就労支援給付制度というものでありまして、これは、給与所得が五十五万円から二百万円で社会保険料や雇用保険料を負担している雇用者世帯、約一千五百万人ぐらいいると見込まれておりますが、こうした人たちの社会保険料や雇用保険料の半額に相当する金額、本人負担分になるわけですから、これを所得税から控除するということであります。こうしたことによって、低額所得者の消費税における逆進的な負担の部分を緩和することができると思います。いずれの制度も、適切な所得捕捉が原則、大前提となります。マイナンバー制度を信頼の置ける制度として国民の間にこれを定着して、こうした給付制度についても活用していくことが求められると思います。
○岡本(充)委員 ありがとうございます。私も、かねてより給付つき税額控除の必要性を訴えてきたわけでありますが。いずれにしても、どの政党も、その逆進性の緩和が必要だという中で何を選んでいくかという選択肢になるわけでありますけれども。今回、小黒先生にもお越しをいただいているんですが、これまでも各種委員会等で御意見を伺ったことがあるわけですけれども、この給付つき税額控除について先生はどのようにお考えなのかということをちょっと教えていただければと思います。
○小黒公述人 ありがとうございます。限られた財源を、必要な、例えば所得の面それから資産の面でも本当に困っている方々に集中的に再分配をしていくという仕組みとしては、かなりすぐれたものだろうというふうには思っております。先ほどでは、カナダとイギリスの事例みたいなものが少し出ていたと思うんですけれども、やはりそのためには、まずマイナンバーをきちっと国民に多く使っていただいて、全体の所得を把握するという環境をどうつくっていくかということがまず一番に重要なことになろうと思います。現状では、一応、通知カードみたいなものについてはある程度持っている方々もいますけれども、やはりなかなかマイナンバーについては今まだ持っていない方もいらっしゃるということで、ここをどうしていくのかということがやはり一番課題かなというふうに思います。今、政府の方では、昨年のたしか十一月ぐらいだと思いますけれども、マイナポータルAP、これは今までアンドロイドしか出ていなかったものを、iPhoneでも出すようにしております。例えば、そういったものの中に、これは私のアイデアなんですけれども、横軸に例えば課税前の所得があるもので、縦軸にその課税後の所得があったときに、何らかのインセンティブで、例えば企業の方ですけれども、今、給与の明細書とかを送っていますけれども、これはe―Taxとかも連携していますので、例えば給与の明細書みたいなものを、今、ちょっと細かな話ですけれども、e―私書箱みたいなものを野村総研がエストニアのX―Roadみたいな形で入れ始めております。なので、例えば給与明細書みたいなものをここに連動して入れて、それが、個人個人の給与明細がそこにたまっていく、国民のデータで、ある程度たまっていけば、どういう再分配というか、課税前と課税後の所得になっているか、点で見るような形もできるんだと思うんですね。なるべくそういう形で、いろいろな形で所得を把握していくということをしていただいて、最終形としてはやはりそういう給付つき税額控除みたいなものに向かって改革をしていく、国民の皆さん方にも現状がどうなっているのかということを見ていただくということが重要ではないかなというふうに思っております。
○岡本(充)委員 ある意味それは、全体で、グロスでどういう課税になっているかというのが見えるようにして公平性を図っていく、それをある意味ITやさまざまな先進的な技術を取り入れてやっていく、こういう御指摘だというふうに理解しました。続いて、ちょっと男性の育休についてお尋ねしたいと思いますけれども。連合さんはかねてより男性の育休取得に大変熱心にお取り組みだと理解をしておりますが、その一方で義務化の動きがあるというふうにも聞いておりますけれども、こういった義務化について連合の考え方はどのようになっているか、教えていただければ幸いであります。逢見公述人、お願いいたします。
○逢見公述人 男性の育休取得促進ということは我々連合でも強く主張しているところですが、これはあくまでも権利の行使であるというふうに思っておりまして、義務づけというのは、これは使用者がいわば強制的にとらせるということになるんですが、これは、それぞれの子育てをどのように家庭の中でやっていくかという中で、権利として誰がいつどのように行使するかということはやはり本人の選択に任せるべきだと思います。ただ、取得しやすい環境をつくるということによって男性も取得できるような環境、これは制度的環境もあるし社内の風土的な環境もありますが、そういったものを改善するということが必要だというふうに私は思っております。
○岡本(充)委員 ありがとうございます。やはり権利でありますから、もちろん義務化ということをするというのはなかなか難しいと私も思っています。私などは、自分が所属する国民民主党の社会保障調査会でこれまでも、育休取得のためのいわゆる給付金、休業給付金の引上げ、それはもちろん今の水準を上げていく、短期間でも上げていって男性がより給与的なギャップを小さくしていくことができないか、こういうことを提言をしてきたわけでありますけれども。きょう八代参考人も最後に、男性の育児休業取得率引上げを御指摘をされています。こうした休業給付金の引上げというような手法についてはどのようにお考えになられるかということについて、教えていただければと思います。
○八代公述人 ありがとうございました。もちろん今育児休業をとりますと雇用保険の方から一定の比率で給付されるんですが、やはり働いていたときよりは少ないわけで、そういう意味で、生活が苦しい家庭では給料の高い夫がとることが困難になるということは当然あり得るかと思います。その意味で、給付金の引上げというのも一つの手だと思いますが、私はそれだけでは無理だと思うんですね。先ほど言いましたように、義務化するかしないにかかわらず、今の育児休業法というのは暗黙のうちに女性がとることを想定しているわけでして、女性の場合は、授乳とか、いろいろな場合で完全に休業した方がいいわけですが、男性の場合は、先ほど言いましたように、パートタイムで育児休業をとれるような現実的なやり方をすることによっていろいろな責任を持つ人もとりやすくなる。だから、義務化するかしないにかかわらず、こういう男性がとりやすいような仕組みにしていくということが私は最も重要だと思うんですね。ただ、ここには実は障害がありまして、これに対しては反対論があるんですよね。つまり、なぜかというと、育児休業中に働けるような仕組みをすると、使用者がこれを悪用して、育児休業中でも一部は働け、そういうおそれがあるということがあって、それはそうなんですが、しかし、そういうふうに厳格に、休むのならもうとにかく徹底的に休まなきゃいけないというしゃくし定規な形にすると、なかなか男性の育児休業は進まない。このあたりをどうするかというところが非常に難しい点だと思います。
○岡本(充)委員 介護休業なども時間単位でとれるようにしようという話、まさにこの時間単位でとれるというのが、先生がおっしゃるパートで働けるということの裏返しではないか、こう思うわけですけれども。おっしゃるように、しっかりとした休業をするということでより安定的に子育てに取り組める、そういう側面もあるんじゃないかということもあって、おっしゃるように、どのように取得しやすい環境をつくるかというのは本当に課題でして、私もそこはまだまだ工夫をしていきたいと思っています。最後に、もう一度、小黒公述人にお聞きしたいと思います。この間の消費税増税の経済への影響をお話しいただきました。これから先、消費税を更に増税をしていくというような議論が起こったときには、これまでのトレンドを見る中で、経済的影響という観点から見たときに、引き上げるのはなかなか難しい状況に入っていくのではないか、そういうお考えをお持ちではないかと思うんですが、そこら辺はいかがでしょうか。
○小黒公述人 御質問ありがとうございます。今は、人口もだんだん減少してきている、他方で地方も非常に経済的に厳しい状況になっているという中で、経済成長率そのものに出ているわけですけれども、消費税を一%引き上げたときのインパクトというのは、先ほどお配りした資料の中でも出ておりますけれども、低いときは大体〇・六%ぐらい、一%当たりでショックがある。現在は、先ほどの資料を見ていただければわかりますけれども、軽減税率を入れておりますが、これでも〇・九三%ぐらいになっている。ちょっとこれはラフな計算ですので、当然今は、景気の認定の関係で政府の方ではいろいろありますけれども、ただ、CI一致指数で見るとやはりかなり景気は下降局面にあるという中での話ですから、もしかすると変わるかもしれませんが、やはりインパクトが少し大きくなってきているかなという認識は少し持っております。ただ、GDPギャップで見ますと、日本銀行のやつですけれども、これはまだ需要サイドの方が供給よりも大きい。それにもかかわらず、やはり少しインパクトが大きくなってきているということを考えると、今後引き上げるのは、やはり相当、だんだん難しくなってくるなと。そういう意味で、ぜひなるべく早くいろいろな改革を進めていただければというふうに思っております。
○岡本(充)委員 もう少しお伺いしたかったんですけれども、限られた時間でありまして、時間が参りました。それぞれの先生方の御意見を大変参考にしながら、これからも予算委員会の審議を進めていきたいと思います。本日はありがとうございました。
○棚橋委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。本日は、四人の公述人の皆さん、大変貴重な御意見をありがとうございます。まず、逢見公述人にお伺いしたいと思いますが、先ほどのお話で、雇用によらない働き方に対して幅広いセーフティーネットが必要だというお話がございました。本委員会でも、ウーバーイーツの皆さんの問題を我が会派でも取り上げさせていただきましたけれども、連合の皆さんもこの問題に一生懸命取り組まれていると思うんですが、雇用によらない働き方が広がる中で、どういう保護が具体的に必要だというふうにお考えになっているのか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
○逢見公述人 ありがとうございます。連合としても、この雇用によらない働き方の問題は非常に、これからのデジタル経済化が進む中で更にふえてくるんじゃないかということが予想されますので、しっかりした対応をすべきというふうに思っています。方法としては、三つほどあると思います。一つは、形式的に自営業、雇用ではないという形になっているけれども、しかし、実際の働き方を見るとこれは雇用と分類されるべき働き方ではないか。こういう誤った分類、誤分類というふうに言っていますが、この誤分類のところは、例えば裁判判例などを通じて、雇用労働者であるということの立証が必要だというふうに思っていまして、これは連合としても、個別裁判も含めて全面的に支援して、こうした誤分類判断を正していくということはやっていっております。それから、現行の労働法制がカバーし切れているのかということがありまして、そうした新しい働き方に対応した労働法制の見直し、ワークルールの見直しをすることによって、こうした労働法制からカバーし切れない人たちをなくしていくということをやっていかなきゃいけないと思います。それから、それでもなお雇用労働者には当たらないという人たちもあると思います。フリーランスで、みずから自由な働き方を選んでいるという人もいます。ただ、こういうところについては、労働法制ではなくてもカバーし得る、例えば経済法でカバーするとか、あるいは協同組合法でカバーするとかですね、そういう形で、労働法でカバーし切れない人たちについても、保護という視点からカバーする法律をつくるべきだというふうに考えております。
○宮本委員 ありがとうございます。次に、小黒公述人にお伺いしたいと思いますが、先ほど、消費税増税のインパクト、ショックが一%当たりで見ればだんだん大きくなってきているというお話がございましたが、その原因についてはどういうふうに分析されているんでしょうか。
○小黒公述人 ちょっと繰り返しになりますけれども、先ほどの資料に基づいて説明させていただきます。二〇一九年度十月ですけれども、このときに増税したインパクトというのは一%当たりマイナス〇・九三%。二〇一四年の四月時点での、若干ラフな計算ですけれども、このときの一%当たりのショックというのはマイナス〇・七七%ということで、一%当たりで見ると、少し大きくなってきているような感じはしております。ですけれども、ここはちょっと気をつけなければいけないのは、地方が疲弊しているということも当然ありますけれども、まず一つは、二〇一四年時点と二〇一七年時点では、景気の下降局面か、そうじゃないかというところもかなり影響を与えている可能性もあるのではないか。もし仮にこれがもう少し前の二〇一七年であるとか一八年の増税であったら、もしかしたら違うかもしれないということもありまして。一つ、これはまだ断定はできないんですけれども、これは最後のタイミングで増税するところだったとは思うんですね、これ以上行きますと、多分もう明らかに景気後退局面に入るので難しかったので、もうここしかなかったと思うんですが、やはり、この部分がきいている可能性がまず一番大きいかなと。ただ、ちょっと繰り返しになりますけれども、財務省の法人企業統計も盛り込んでおりませんので、その結果を盛り込んだ結果はどうなるのかということについては、ちょっと現時点ではお答えできないということだと思います。
○宮本委員 ありがとうございます。もう一点、小黒公述人にお伺いいたします。持続可能な社会保障制度にしていかなければならないというお話がございました。同時に、持続可能な国民の暮らしを守っていかなければならないと。そういう点でいえば、基礎年金が今三割減ってしまうという事態は、やはり政治としては何としても解決しなければならないということだと思うんですが。小黒公述人は国民年金と厚生年金の財政統合ということなんかも提唱されておりますが、その効果について、わかりやすく説明していただけるでしょうか。
○小黒公述人 先生、御質問ありがとうございます。二〇一九年の財政検証によりますと、これは幾つかケースがございますけれども、全部で六つのケースがございます。その中の真ん中のケース3でございますけれども、今、二〇一九年度の所得代替率が大体六一・七%でございますが、これが、大体二〇四七年ぐらいにマクロ経済スライドの調整が終わって、そのときの所得代替率は五〇%ちょっとぐらいになる。このとき、モデル世帯でやっておりますので、基礎年金の部分について大体三割ぐらい実は所得代替率が下がって、厚生年金の二階部分については三%ぐらいしか実はカットされないというような形になっております。今、政府の方でも、適用拡大という形で、なるべく国民年金から厚生年金に移っていただいて、厚生年金の方に入ってくるという形をとっておりますけれども、これは、ある意味で、国民年金というのは非常に規模が小さい家みたいな形になっている一方で、厚生年金というのはバランスシートを見ても非常に大きな形になっておりますので、もし仮にこれを両方統合することができれば、私の試算では、大体、基礎年金の一階の部分と二階の部分を含めて、ともに八%ぐらいのカットで済むような形になるのではないかというふうに推計してございます。
○宮本委員 ありがとうございました。八代公述人にもお伺いしたいというふうに思います。今国会は、この予算委員会でも、安倍政権のもとで税金が私物化されている、こういう、桜を見る会の問題、議論になっております。また、検察の定年延長についても、国会で当初説明されていた法令の解釈が変えられてしまうということなども議論になっているわけです。それで、私は、安倍政権のもとで行政がゆがめられたという点で忘れられないのは、やはり加計学園のときの問題であります。八代公述人は、国家戦略特区のワーキンググループの一員だったというふうに思います。そして、獣医学部新設の議論にも参加されていたというふうに思います。あのとき、加計学園と同時に京都産業大学も手を挙げて、ワーキンググループでのヒアリングもやられていたわけです。私たちも京都産業大学の環境の話なんかも当時からお伺いしていましたけれども、かなり早い段階から京都産業大学も準備を始められて、加計学園が構造改革特区に手を挙げるよりも前から準備をされておられたわけであります。ところが、二〇一八年四月開学という条件が最後につけられたことによって、京都産業大学は断念に追い込まれる。十年にわたって、わざわざ十年ぐらい前から鳥インフルエンザ対策の権威であった大槻教授を招聘して準備されていた方が諦めざるを得ないという事態になったわけですよね。そこで、せっかくの機会なのでお伺いしたいんですけれども、議事録を改めて見ますと、八代公述人は、当時、獣医学部は多ければ多いほどいいというふうに発言をされておられます。そして、京都の話と今治の話、両方聞かれていたわけですけれども、率直に、その二つの、両方のお話を聞かれて、どっちの提案がいいなというふうに感じられていましたか。
○八代公述人 御質問ありがとうございました。かなり古い話で、私もそれほど真面目に特区の委員会に出ていたわけじゃないので全ては存じませんけれども、私が獣医学部は多い方がいいというのはそのとおりです。なぜかというと、文科省の極めてひどい規制によって、獣医学部というのは新設の届出自体ができないという全くおかしな仕組みがあるわけですね。これは獣医学会の既得権そのものによるわけでして、特区というのはそういう既得権を打ち破るためのものでありますから、獣医学部に限らず、少なくとも届出は認める、認めた上で、本当にそれが正しいかどうかというのをきちっと文科省の委員会で審査する。それを、届出も認めないで門前払いするという、物すごい利権があったわけですよね。ですから、それは、私自身はどっちがいいかというのはよく覚えていませんが、どっちも、それから三つ目もたしかあったと思いますが、獣医学部というのは今非常に必要とされているんですね。つまり、加計か京都かどっちか忘れましたけれども、獣医学部というのは別にペットのお医者さんをつくるところだけじゃないわけで、渡り鳥がやってくるといつもウイルスの感染が起こる、だから、そういうまさに渡り鳥対策としてプロの獣医が必要である。これが一つと、あと、新しい薬をつくるときに、今は実験動物にネズミ、ラットを専ら使っているんですが、できれば豚とかもう少し大きな実験動物を使えば、もっと効率的に薬がつくれる。そのためには獣医さんが必要なんです。ですから、獣医さんが必要とされているのに、そういう利権の巣によって、獣医学会の長が現に講演でこう言っておられるんですね、私の力で一つにさせたと言っておられるわけでして、なぜ獣医学会のすさまじい利権の方が全く問題にならなくて特区の方だけが問題なのか、私はこれは全く理解できません。
○宮本委員 今御紹介があった、ライフサイエンスの話だとか豚を実験にするだとか渡り鳥の対策は、恐らく全部、京都の側の話だったんじゃないかなというふうに思いますが。私、総理ともここで当時議論したんですけれども、私たちが問題にしたのは、獣医学部をつくることがいいか悪いかという話じゃなくて、獣医学部をつくるときに、なぜ加計学園しか通れない条件をつくったのかということなんですね。二〇一八年四月、これはスケジュール感を事前に共有していた加計学園だけが準備できたわけですよ。それを知らされていなかった京都産業大学は、もっと早くから準備していたのに、できなかったわけであります。この二〇一八年四月に限るという条件というのは、八代公述人は、相談があったんでしょうか。こういう条件についてはどう思われるでしょうか。
○八代公述人 私は、特区ワーキンググループは、決して大物じゃなくて、とてもそんな大事なことは相談にあずかった覚えはございません。それから、繰り返し言いますが、一つにしろというのは獣医学会の方が言ったわけで、特区ワーキンググループは、私も含め、できるだけたくさん同時につくりたい、今まで長年の、利権を守るために獣医学部の新設が阻まれていた、これを国家戦略特区で打ち破ることが何より大事なんだということがあったわけです。よろしいでしょうか。
○宮本委員 獣医学会が言っていたわけだけじゃなくて、この二〇一八年四月に限るという条件はどこから出てきたのか、全く私も幾ら聞いてもわからないんですよ。まさに、幾らでもたくさんつくったらいいじゃないか、そういう話が、二〇一八年四月に限ると。いろいろな内部文書が当時出てきました。与党の皆さん、政治家の発言も出てきました。総理の御意向だとか、そういうものも出てきました。ですから、ワーキンググループの皆さんの意見とも関係ないところで、加計学園だけが通れる条件がつくられていったということが、きょうのお話を聞いても大変よくわかったところでございます。時間になりましたので……(発言する者あり)わからないという方がいるので、じゃ、もう少しお話しさせていただきますが……(発言する者あり)時間、回っていますか。いますので、わからないというんだったら、また今度、国会で議論させていただきます。どうもありがとうございました。
○棚橋委員長 次に、杉本和巳君。
○杉本委員 最後の質問者でございますが、維新の杉本和巳です。四人の公述人の先生方には、示唆に富むお話、本当に、同僚議員とともに改めて学ばせていただきました。小林先生から、財政への信認というお話がありましたけれども、財政ニアリーイコール政府ということで、政府の信認という意味で、もうちょっと広い意味で信頼されないと、財政破綻のお話も含めて、我々は緊張感を持ってやっていかなきゃいけないんじゃないかと、ちょっと冒頭申し上げておきます。それと、いつぞやか、私、本会議場で、総理、副総理に、質問だったか討論だったかは覚えていないんですけれども、シェークスピアの「ハムレット」を引用させていただいて、借金になれると倹約がばかばかしくなるといったようなお話をさせていただいた覚えがありますので。またもう一点、これは財金で私申し上げたかもしれないんですが、一九七六年にイギリスはIMF危機を迎えております。OECD、先進国であっても危機が起きる、アルゼンチンとか南米の国々とかそういった国、あるいはギリシャとかに限らないという認識を我々持たなきゃいけないなということを冒頭申し上げたいと思います。ちょっと相前後するんですが、財政の話は後段でさせていただいて、まず、八代先生にお伺いしたいんですが、先生の資料の中に、オーストラリアの年金支給開始年齢が七十歳になるというのがあるんですけれども、これはよく読むと、引上げ時期が二〇三五年という大分先に、これは法案を与野党が合意して通したという、本当に政治として立派な国会運営がなされて、この平均受給期間が九・五年というような。先生、前、私どもの維新の勉強会で、年金というのは死なない保険だ、最後の十年のための保険だみたいな御示唆のお話があったかと思うんですが、このオーストラリアの、引上げ時期を大分先にしているけれども支給開始を七十歳にしたという話を、少し国会議員の同僚の皆様にも共有いただきたいので、ちょっと御指導いただけないでしょうか。
○八代公述人 御質問ありがとうございました。まさしく、おっしゃるとおりで、年金の支給開始年齢を上げるというのは国民生活に極めて大きな影響をもたらしますから、来年から上げるということはあり得ないわけですね。だから、日本でもかなり余裕を持って二〇二五年から引き上げるということになっておりますし、オーストラリアとかほかの国もそれより後の時期から上げるということになっているわけです。大事なことは、しかし、政府がこれをコミットするということなんですね。つまり、社会保障の赤字というか、社会保障の保険料と給付のギャップというのは年々高まっていくわけで、これが実は財政赤字の一番大きな要因になっている。だから、社会保障の改革を進めなければ財政再建というのはほとんど不可能なわけです。ですから、その意味で、今すぐではないけれども、少なくとも政府は二〇三五年とか二〇三〇年のときから上げますよということを今のうちにコミットしておくということが極めて重要な政策なので、日本も仮に七十に上げるんだったら、多分、三五年とか、そういう、かなり余裕を持ってやることになると思いますが、今、全くその議論を封印しているというのが大事な問題なわけですね。議論すらしない。専らマクロ成長スライドの方ばかりやっているんですが、これは先ほども別の公述人の方から言われていましたように、非常にこれは厳しい政策なんですね。貧しい方にも一律にカットするわけで、このスライドの方は。この支給開始年齢を引き上げるということは、ある意味で自分で選べるわけです。もっと長く働いてもいいし、もっと早くからもらって減額年金を受け取ることもできる。それだけ選択肢が広いということは、極めて、そういう意味では、国民が自分で決められるということが大事なわけで、一律にマクロ成長スライドを強いられるということよりははるかにいい政策だと思っております。
○杉本委員 ありがとうございます。次に移りたいと思いますが、今度は、働き方改革、給料のあり方みたいなところ、あるいは解雇ルールみたいなところを連合の逢見さんと八代先生に短くちょっとお答えいただきたいんですが。いわゆる国家公務員なんかも、人事院の仕組みがあって、いわゆる労使交渉ができないというような状況があったりします。一方で、年功序列で、何かきょうも予算委員会理事会で、国家公務員の定年延長の法案の準備をいろいろしているというお話がちょっと出てきたんですけれども、えっと思ってはいるし、自民党の中でも、国家公務員の皆さんだけ年をとってもどんどんどんどん上がっていって、民間はそうではないというようなのがあっていいのかというようなことを塩崎先生が提起されていたりというようなことがありますけれども。ちょっと話が長くなりましたが、この給与のあり方、いわゆる実績給のようなものをもうちょっと重視していくべきではないかと私は思っていますけれども、そんな点とか、あるいは解雇のルールは、人材の流動化、お話にあった、単身赴任者がどんどんふえていっているというような実情とか人事院の仕組みとか、こんな点について逢見公述人、八代公述人の順で御答弁いただければと思います。
○逢見公述人 質問ありがとうございます。公務員の定年延長につきましては、民間も、今、六十五歳までの雇用ということになっていますが、定年延長という選択肢だけではなくて、雇用延長とか定年をなくすという選択肢もあって、実態として、六十歳で雇用を打ち切って、その後、再雇用なり雇用継続になっているというのが多くて、その際に賃金が大幅に下がっているということがあって、こちらはこちらで是正していかなきゃいけない点もあるんですが、公務員については、定年延長というのは、基本的にはこれを進めていく必要があると思っています。あとは、賃金の処遇の問題ですので、これは民間準拠というのが基本ではありますが、民間の六十歳以降の賃金のあり方についてはいろいろと課題もありますので、そういったところは現状とそれからあるべき姿をよくよく検証していく必要があると思います。よく年功賃金と言われますけれども、いわゆるエスカレーター的に、勤続年数がふえれば自動的に上がるという仕組みをとっている企業は民間ではもう極めて少なくて、能力や熟練度の高まりを評価しながらその中で上げていくということで、一律に上がる年功賃金というイメージはもはや過去のものと言っていいと思います。それから、解雇ルールの問題については、今も厚労省の中でも検討しておりますけれども、我々は、雇用についてのいわゆる金銭解決ですね、これを、もともと解雇有効であるか無効であるかを争って、解雇が無効であれば復帰しなきゃいけないわけですね。有効であれば、そこでやった解雇はそれでいいということになるんですが、解雇無効であっても金銭を払えば解雇できるということは、裁判の上でもあるいは働く人たちのモラルの上でも非常に問題があるというふうに思っていまして、こうした点については、やはり働く人たちのモラルダウンにならないような方針をとるべきだというふうに思っております。
○八代公述人 時間もありませんので、後の方だけちょっとお答えさせていただきます。解雇の金銭補償の方で。今、逢見委員がおっしゃったのはそのとおりなんですが、多くの場合、解雇無効になったときに、職場復帰ではなくて、そこで和解して金銭補償を、事実上の金銭補償を受けているというケースがかなりあるわけでして、そのときに解雇ルールがないために、金銭補償の水準は企業の払える額に応じて青天井になっている、少ない方は少ないわけですけれども。そういう意味で、極めて不公正みたいなものが存在する。それから、そもそも、そういう裁判に訴えられるのは、やはりそれだけの裁判の費用とかその間の所得保障ができる強い組合に支えられている労働者はそれでいいわけなんですが、多くの中小企業の労働者はそんな余地がありませんから、もう労働基準法に決められた一カ月の解雇手当をもらってしか、解雇されてしまうということがあるわけで、この解雇の金銭補償ルールというのは、そういう裁判に訴えなくても、中小企業の労働者であってもしかるべき補償が受けられるという面がほとんど議論されていない。ですから、そういう意味で、これは解雇される労働者にとっても、いい面もあるんだということを、ぜひ、特に中小企業の労働者の場合はこういうことをきちっと議論する必要があるかと思います。
○杉本委員 ありがとうございます。大変示唆に富むお二人のお話、ありがとうございます。次に、ちょっと財政の問題を伺いたいんですが、小林先生が編者で、小黒先生が一番上に名前が書いてある「財政破綻後 危機のシナリオ分析」ということで、「もはや「最悪の事態」を想定しない限り、真の危機は回避できない。経済・財政、社会保障の専門家が、様々な角度から示す“衝撃の論考”。」というのがあって、この書物の中、もう一通り読んで、何度も読んでいるんですけれども、八十八ページから八十九ページにかけてモンテカルロ・シミュレーションの話がありまして、ここで財政の破綻確率について考えてみようと。ちょっと飛ばしまして、二〇二五年の破綻確率はベースラインの九%弱である、他方、二〇三五年の財政破綻確率は衝撃的だ、同年の確率はおおむね一〇〇%に上るというくだりが実はあって、この二〇三五年あたりが危ないのかなというふうに、私は実は、このモンテカルロ・シミュレーションの結果、意識し始めておるんですが。この間ちょっと茂木外務大臣にお話ししたら、一生懸命メモしてくださいましたけれども。済みません、話が長くなったんですが。この破綻の定義と破綻の時期、可能性、この点について、小林先生と小黒先生に伺いたいんですけれども、時間があれば、ぜひお願いします。
○小林公述人 御質問ありがとうございます。モンテカルロ・シミュレーションは小黒先生がやられた研究ですけれども、破綻の確率を理論的に示すということは、これは不可能というか、今の経済学のモデルではまだできていない。まさにこれから知見を深めて、理論をつくっていかなきゃいけないというような段階であります。きょうの前半の私の話のように、金利が低い状態が、成長率の低い状態が続くのであれば、しばらくはもつだろうということは言えるんですけれども、では、それがいつ反転するのかということはなかなか予想がつかないので、わからないということが現状だということで御理解いただけるかと思います。
○小黒公述人 シミュレーションですので、そのときにシミュレーションしたときの経済それから財政の前提で延長していったもので推計している。例えば一つは、GDP比で見た債務残高がこれぐらいの水準を超えたらさすがに難しいだろう、あるいは、一国全体、日本全体の家計の金融資産に対して債務残高がこのぐらいの水準を超えたら難しいだろうというような一定の前提を置いた上で金利と成長率の不確実性を加味して、モンテカルロ・シミュレーションして、それが一定の閾値を超えるのかどうかということをやっているものでございます。まず、一つ大きく環境が変わったのは、その当時のシミュレーションと大きく違うのは、まず、消費税が確実に上がっている。もう一つは、プライマリーバランスについてもある程度改善してきているということもございますので、今、推計をし直すとちょっと数値は変わってくるんだろうと思います。ただ、やってみないとわかりませんが、それでも今の日本の財政が置かれている現状というのはやはり相当厳しい状況であるということは間違いないと思います。
○杉本委員 まだ時間があるようなので……(発言する者あり)ないんですか。終わりましたと来ないんですけれども。終わりですか。もう時間ですか。
○棚橋委員長 いや、まだ、もう少しだけございます。
○杉本委員 ちょっと、私の個人的な意見としては、今、日銀の資産の中身が相当危機的だという点を申し上げておいて。財政の話じゃなくて、もう一点、消費税。連合の逢見さんに伺いたいんですが、五%に下げるとか八%に下げるとかゼロにするとかという議論が出ていますけれども、連合さんの御所見はどんな状況か、確認させていただきたいと思います。
○逢見公述人 今回の一〇%は、税と社会保障の一体改革の中で、一〇%にすることを見込んで、それに見合う給付の充実というのもやってまいりましたので、これは必要な施策だというふうに思っております。今後を考えると、やはり社会保障の財源というのは更に必要になってくるわけです。消費税は社会保障だけに使うという目的税化されているわけです。そういった意味で、やはり今後の社会保障を考える上で、消費税の今後の負担のあり方というのも当然議論していくべきテーマになると思います。
○杉本委員 時間となりました。以上で終わります。ありがとうございました。
○棚橋委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。(拍手)以上をもちまして公聴会は終了いたしました。