2020年3月17日 厚生労働委員会 高年法等改正案 請負「偽装」広がる危険 

 65歳以上の労働者のフリーランス化を促す高年齢者雇用安定法(高年法)等改正案が、17日の衆院厚生労働委員会で実質審議入りしました。日本共産党の宮本徹議員は、実態は労働者なのに労働法制の保護を受けられない個人請負の「偽装」が広がる危険を指摘しました。
 同法案は、安倍政権の「全世代型社会保障改革の柱の一つ。65~70歳の就労確保を企業の努力義務とし、その際、労働法制の対象外であるフリーランスや個人事業主としての義務委託も可能とするもの。
 宮本氏は、業務委託は請負「偽装」の温床になっていると指摘。東京電力パワーグリッド関連会社「ワットライン」と請負契約を結ぶ作業員が労働組合を結成した後、同社が組合員への発注を前年比で最大7割削減した事例を紹介。東京都労働委員会は作業員らを「労働者」と認めており、労働条件の不利益変更は許されないとし、「同法案で業務委託を認めれば、業務の打ち切りや縮小が自由にできるようになる」と迫りました。
 厚労省の小林洋司職業安定局長は「正当な理由のない業務委託打ち切りは(同法案の)趣旨を損なう」としつつ、歯止めは「労使双方の話し合い・納得が重要だ」と述べるだけでした。
 宮本氏は「労使には力の差があり、労使合意は担保にならない」と批判。「幅広く就業の継続を図りたい」と強弁する加藤勝信厚労相に対し、就業継続の方法として「雇用以外の形態を入れなければならない必要性はない。雇用によらない働かせ方を労働法制に組み込むことで、65歳以下にも広がる懸念がある。許されない法案だ」と力を込めました。
 同委員会理事会は18日に同法案の採決をすることを決めました。

以上2020年3月18日付赤旗日刊紙より抜粋

≪第201回2020年3月17日衆院厚生労働委員会第4号 議事録≫

○盛山委員長 これより質疑に入ります。質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。法案について質問いたします。今回の法案は、六十五歳から七十歳の高齢者の就業確保の努力義務を課すものであります。六十歳から六十五歳については、雇用確保の義務化を課す際に、年金の受給開始年齢の引上げとセットだったわけですよね。今回もそうなるのではないかという大変大きな懸念が国民の中から出ております。七十歳までの就業確保の今後の義務化、そして、それに伴って年金受給開始年齢が引き上げられるのではないか、この点、大臣、どうでしょうか。
○加藤国務大臣 まず、七十歳までの就業確保、これは努力義務ということになりますけれども、二〇一九年六月に閣議決定された成長戦略実行計画、二〇一九年十二月の全世代型社会保障検討会議の中間報告に記載をされて、今般新たに設ける高年齢者就業確保措置を講ずる努力義務についての実態の進捗状況を踏まえて検討する、これは確保義務でありますが、現時点で具体的な見通しが立っているわけではありませんが、あわせて、年金支給開始年齢については、今申し上げた二つの報告でも、七十歳までの就業機会の確保に伴い、現在六十五歳からとなっている年金支給開始年齢の引上げは行わないと明確に記しているところであります。
○宮本委員 六十五歳になれば誰もが年金で暮らせる、そういう年金制度こそ目指すべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。その上で、今回は、この七十歳までの高齢者の就業確保の努力義務の際に、創業支援等措置というものが入ります。これは雇用によらない業務委託契約や有償ボランティアでもよいという中身になっていると思いますが、この創業支援等措置、法律の中では当該事業に係る委託契約その他の契約という文言も出てきますが、これは具体的にはどういう働き方を指すんでしょうか。
○小林政府参考人 お答えいたします。創業支援等措置でございますが、これは労使合意に基づいた多様なものが想定されるわけでございますけれども、主なものを申し上げますと、個人との請負契約、あるいは高齢者が起業した企業との請負契約等を想定しているところでございます。
○宮本委員 主なものとして個人請負だというのが一番初めに出てまいりました。大臣、働く人を保護するという点で、雇用と比べて個人請負あるいはフリーランスなどの業務委託契約というのはいかなる問題点があるというふうに認識されていますか。
○加藤国務大臣 まず、雇用と比べてということでありますけれども、労働関係法令による保護が適用されないということ、また、高齢者にとって六十五歳までとは異なる就労形態となること、こういった違いというんでしょうか、があるということであります。したがって、その就労条件、業務の内容、あるいは高年齢者に支払う金銭などについては労使双方で十分に話し合って、労使双方が納得した措置が講じられることが重要だと考えています。
○宮本委員 労働者保護法制の外に置かれてしまうということなわけですよね。企業の側が雇用を請負に切りかえるということは今でも起きているわけですけれども、それは、どういう理由から企業は請負だとかに切りかえるんでしょうか。
○小林政府参考人 お答えいたします。企業がこれまで雇用していた人について、業務委託契約に切りかえる理由については把握していないところでございます。なお、雇用していた人を業務委託に切りかえる場合に、雇用したときと同様に、労働者性のある働き方のまま指揮命令下に置くことは認められないものでございます。今般の改正でございますが、七十歳までの就業機会の確保を図る上で、六十五歳以前と比べて、就労に対する考え方など、個人差が大きくなることなどにも配慮して、六十五歳以降の働き方として、それぞれの高齢者の特性に応じて選択できる仕組みを導入するものでございます。したがいまして、措置の適用については、本人の希望を聴取し、本人の希望を勘案して選択できるような仕組みとする必要があり、こうしたことを指針に定め、対象となる高齢者の希望を踏まえた措置が講じられるようにしてまいりたいというふうに考えております。
○宮本委員 いや、本人の希望といっても、労使合意やあるいは労働者代表との合意で、請負しかありませんよという選択肢が示されたら、請負で働くしかなくなっちゃうじゃないですか。労働者保護法制の外に置かれるわけですよね。しかも、企業が雇用を業務委託契約に切りかえる理由というのは把握していないということですけれども、ホームページを開いたら、企業向けのいろいろな宣伝がされていますよ。業務委託契約に切りかえたらどんなに企業にメリットがありますかということで、社会保険料の負担がありませんよとか、契約関係を都合によって打ち切れますよ、そういうふうに宣伝もされているわけですよ。把握していないとか、そういうことじゃまずいんじゃないですか、労働者保護をする厚労省の立場で。もう一点お伺いしますが、雇用が業務委託契約に切りかえられたことに伴う労働相談というのは、厚労省にどういうものが寄せられていますか。
○小林政府参考人 お答えいたします。これまで雇用していた人が業務委託に切りかえられることについての労働相談の件数というのは、具体的に把握していないところでございます。繰り返しになるわけでございますが、六十五歳以降の方については、それぞれの個人差というものも大きくなる中で、それぞれの高齢者の特性に応じて選択できるような仕組みを導入しようということでございます。ハローワーク、労働局におきましては、これまでも高齢者雇用に関する相談、助言、指導等を行ってきておるところでございますが、七十歳までの高年齢者就業確保措置につきましても、高年齢者の相談を受けること、あるいは適切な指導、助言を行うことといったことを行いまして、高年齢者のニーズに対応した措置が講じられるようにしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。
○宮本委員 どういう労働相談が寄せられているのかという質問をしたのにもかかわらず、その中身も把握されていないようで、大変こういうことをやっていくのは心配だなというのを改めて思いました。その上で、業務委託契約、請負というのはどういうことが具体的に起きているのかということで、きょうは最近の事件について紹介したいと思います。配付資料をごらんいただきたいと思いますが、これは今月六日付の東京新聞でございます。東京電力のメーター交換をされている方々のお話であります。労働組合をつくられたわけですね、このメーター交換をされている請負労働者の皆さんが。この渡辺さんという方を見ますと、三十数年、この仕事をずっとやって生活をしてきたということでございます。この方々は、東電系の孫会社のワットラインサービスと個人で請負契約を結んでいる。そして、収入の確保や雇いどめの撤回を求めて労働組合を結成した。しかし、ワットライン社は、請負契約で、労働者ではないということで団交を拒否した。これに対して、都労委に申立てをして、時間はかかりましたけれども、都労委は、三月四日、不当労働行為、これを認定して救済命令を出したということです。次のページに、東京都のホームページから、救済命令の載ったものを張りつけておきました。主文の二のところに、会社が組合らの団体交渉申入れに応じなかったことは不当労働行為であると認定されたこと、今後繰り返されないように留意することということが書いてあります。その下に、判断の要旨、これを全部読むと時間がないからあれですけれども、二のところに、計器工事作業者の労組法上の労働者性について、ア、事業組織への組入れ、計器工事作業者は会社の計器工事部の主要事業を担い、研修や賞罰制度、業務地域や業務日の割り振り等によって会社に管理されており、第三者に対して会社組織の一部として表示され、会社の計器工事に専属的に従事しているのであるから、会社の計器工事の遂行に不可欠な労働力として会社組織に組み入れられているということができる、それ以降、契約内容の一方的・定型的決定をしている、報酬の労務対価性もある、業務の依頼に応ずべき関係性もある、広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束もあるということで、最後に、団体交渉拒否について、団体交渉に会社が応じなかったことは正当な理由のない団体交渉拒否に該当するとともに、組合らの存在を否認し、その弱体化を企図した支配介入にも当たるというふうにされたわけであります。今回のこういう法律をつくると、表面上は業務委託だけれども、実態は労働者性のある個人請負の偽装が広がっていくんじゃないですか。
○小林政府参考人 お答えいたします。労働基準法上の労働者に該当するか否かは、契約の名称にかかわらず、実態を踏まえて個別具体的に判断され、労働基準法上の労働者と認められた場合には必要な保護が図られるということになるわけでございます。高年齢者就業確保措置の取組におきましても、雇用によらない措置を希望し、業務委託といった働き方を選択したにもかかわらず、実態として指揮命令が行われ、雇用関係が成立していると判断されるような事案が生じることはあってはならないというふうに考えております。法の趣旨を逸脱した不適正な取扱いを事業主が行う場合には、適切な運用が図られるよう、都道府県労働局等により必要な指導、助言等を行ってまいりたいというふうに考えております。
○宮本委員 あってはならないとおっしゃいますけれども、現に起きているわけですよね。そして、労働者性を認めてもらおうと思ったら、例えば労働組合法上の労働者性を認めるだけでも何年もかかるんですよ。これが、現在、現に進行している問題じゃないですか。それで、この東京電力の孫会社のワットラインで今何が起きているかということなんですけれども、今、請負労働者の皆さんの来年度の契約更新が行われております。その際、突然、前年比七割カットなどが行われております。資料の三枚目を見ていただきたいというふうに思います。分会長もやられている組合員のAさんですけれども、二〇一九年度の契約は、メーターの交換個数、六千七百個を請け負っていました。年収換算にすれば九百六十七万円。もちろん、ここから、請負ですから、自分の車代、ガソリン代、工具代、こういうものがあるわけであります。それから引いたもので生活されるわけですけれども、二〇二〇年度は一年契約じゃなくて十一カ月契約で、二千個というのが提示されたんですよ。しかも、単価は引き下げられております。そうすると、ここに書いてあるとおり、年間、この仕事で得られる収入というのは二百二十万円。ここからガソリン代や車の維持費は全部賄わなきゃいけないということなんですよね。これが、東京都労働委員会が労働組合法上の労働者性はあると認めた方々の扱いであります。正当な理由もなく仕事量を前年比の四分の三もカットして、生活も成り立たないほどの契約にしちゃう、こういうことは許されるんですか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。今委員から御紹介ありました個別の案件についてということにつきましては、コメントは差し控えさせていただきます。ただ、一般的な議論として申し上げますと、先ほど安定局長の方からも申し上げましたとおり、労働者性、いわゆる賃金であったり契約ということにつきましては、労働基準法上の労働者に該当するか否かということが重要になってくるわけでございますけれども、この点につきましては、契約形態にかかわらず、仕事の依頼あるいは業務指示等に対する諾否の自由があるか、業務を遂行する上で指揮監督を受けているか、あるいは支払われた報酬が提供された労務に対するものであるかというような実態を勘案して、総合的に判断されるものでございます。その上で、この労働基準法の労働者に該当するということになった場合には労働契約法という法律も適用になりまして、労働契約法の第八条では、労働者及び使用者は労働契約の内容である労働条件の変更についてその合意により変更することができるとされておりますので、そういった点を勘案して判断がされるということかと承知します。
○宮本委員 先ほど来、労働基準法上の労働者と認められるかどうかという話が出てくるわけですけれども、それを認定してもらおうと思ったら、裁判なりなんなりで闘っていかなきゃいけないという話になるわけですよね。実際は、この請負労働者の皆さんは、まず労働組合法上の労働者の認定というのを都労委の命令でかち取ったわけであります。そういう方々に対してこういうことが行われているわけですよね。今度の法案ができたら、どこでもこういうことがどんどんどんどんやられていくという危険性は私はあると思いますよ。業務委託契約というやり方をしたら、七十歳までの安定した就業の保障というのは実際はなくて、業務の打切りやあるいは縮小、こういうのは自由にできるようになっちゃうんじゃないですか。
○小林政府参考人 お答えいたします。先ほど申し上げましたように、実態が労働者性がある場合には労働基準法上の保護が行われるということであります。それで、今般御提案をさせていただいております業務委託契約、雇用以外の措置でございますが、法文上、七十歳までの間の就業を確保するということが明記をされております。また、業務委託の場合は、高年齢者就業確保措置の対象となる高年齢者が七十歳になるまで業務委託を継続的に行う制度を設けるということを努力義務としておるところでございます。業務委託の場合におきましても、所定の年齢に到達する前に、正当な理由がなく、安易に業務委託を打ち切られれば、それは雇用確保措置の趣旨を損なうことになるものでございます。この点につきましては、昨年十二月の労政審の報告書におきましても、雇用による措置と雇用以外による措置について就業継続の可能性と就業時の待遇の確保における均衡が求められるということが指摘をされまして、労使合意によってこれを担保することが提言をされているわけでございます。このため、就業条件、業務の内容ですとか金銭のほか、業務委託契約等の解除の条件につきましても労使双方で十分に話し合って、労使双方が納得した措置が講じられることが重要であるというふうに考えております。今後、就業確保措置について運用計画を労使で作成していただくことになるわけでございますけれども、その際の規定内容として、業務の内容とともに契約の解除に関する事項等も踏まえてきちっとした計画を策定していただく、また、そういったものが同意を得た内容に基づかないで運用されておるといったような状況がある場合には、適正な運用が図られるよう、都道府県労働局等により必要な指導、助言等を行ってまいりたいというふうに考えております。
○宮本委員 労使合意で担保するんだということをおっしゃるわけですけれども、労使合意で何でも担保できるわけじゃないですよね。労使は力の差があるわけですよ。だから労働法制はあるわけでしょう。労使合意で何でも担保できるんだったら、労働法制は要らないわけですよ。実際は、打切りはだめですよとお話しされますけれども、こういう形、今回の東電の孫会社の請負労働者の皆さんみたいに、生活できないようなところまで縮小される可能性というのは否定できないわけでしょう。否定できるんですか。
○小林政府参考人 先ほども申し上げましたが、これは六十五歳以降の働き方に関する規定でございます。六十五歳以降は、普通の業務委託のフリーランスの関係と異なりまして、この方々というのは六十五歳以降の方であって、六十五歳まで雇ってきた事業主がその後の雇用、就業の確保措置を講ずる、その内容として七十歳までの継続的な業務委託等を努力義務としているところでございまして、そういった規定、あるいはそれに基づく指針等を踏まえて労使で実際の計画を策定していただいて、それを運用していくということになるというふうに考えております。
○宮本委員 ですから、何の担保もないということだと思います。もう一点、この資料を見ていただきたいんですが、この東京電力の孫会社のワットラインの請負労働の皆さんがワットライン社から提示された二〇二〇年度の計器交換個数の減り方というのは均等じゃないんですよね。前年度実績との関係でいえば、大きく減っている人もいれば数%減の方もいます。組合員Aさん、Bさんというのは、年収換算すれば四分の三カット、四分の一程度になっているわけですよね。非組合員のCさんは、個数でいえば、十一カ月換算で見れば前年比の九六・一%というふうに、マイナス四パー程度の提示ということになっているわけであります。労働者性が認められる請負契約について、請負契約の際に、対象労働者が労働組合活動を行っていることをもって、仕事量を大幅に減らして非組合の請負労働者と差別する、こういうことは許されるんですか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。この点につきましても、個別の案件についての御答弁は差し控えさせていただきますが、一般論で申し上げますと、労働組合法上の労働者に該当するか否かという問題につきましても、契約の名称を問わず、事業組織への組入れ、それから契約内容の一方的・定型的な決定、報酬の労務対価性ということなどを判断要素としまして、個別の事案に応じまして、労働委員会や裁判所において判断されるということとなっております。労働組合法上の労働者に該当するということになりますれば、使用者が労働組合の組合員であることを理由に解雇等の不利益取扱いをすることは不当労働行為として禁止されているということでございますので、こういった不当労働行為を受けた労働者は労働委員会に救済の申立てということができることとなるということでございます。
○宮本委員 一般論というお答えですが、こういうことは、法律上、不当労働行為で禁止されているということなんですよ。雇用者であれば労働契約法で労働条件の不利益変更というのは許されないので簡単にできないわけですが、請負契約ということでは契約の不利益変更が頻発しかねないわけですよ。そして、そのたびに、請負の皆さんは勇気を持って声を上げて闘っていかなければ不利益をこうむり続けるということになるわけですよね。きょうは、牧原さんに来ていただきまして、ありがとうございます。この不当労働行為を認定されたワットライン社は、東京電力パワーグリッドのスマートメーター交換という仕事を落札をされているわけであります。そして、このワットライン社は東光高岳社というところの一〇〇%子会社ですが、この東光高岳社の筆頭株主は東電で、三五%の株を保有しております。東電の関連企業が東電の仕事をやっているということなんですよね。そして、もちろん、この請負労働者の皆さんは東電の発行する委託従事者証を持って働いているということでございます。ワット社が都労委命令に従うように、経産省として東電に対してちゃんと指導すべきじゃないですか。
○牧原副大臣 宮本先生の質問でございますけれども、お尋ねの事案自体は厚生労働省の所管の労働組合法等の労働法制に係るものでございますし、また、現在係争中の個別事案ということでございますので、経済産業省としてコメントする立場にはないことを御理解いただきたいと思います。
○宮本委員 いやいや、東電は発注者の責任があるわけですよ、発注者の責任が。そして、株主としての責任もあるわけですよ。それで、東電は国民の税金で今生き長らえている企業ですよ。そこが明々白々な不当労働行為だと認定をされ、更に団交拒否という不当労働行為がここまで認定されたわけですが、今やっているこの組合員の皆さんに対して差別的な契約をやって、生活できないような事態に追い込もうとしているわけですよ。政治家としてですよ、牧原さん、政治家としてこういう事態を許していていいのかということなんですよ。だって、東電はただの会社じゃないんですよ。国民の税金がなければ成り立たない会社ですよ。しかも、スマートメーターの交換というのは国が進めている事業じゃないですか。その中で起きている事案ですよ。ちょっと、調べるなり、対応するなり、言ってください。
○牧原副大臣 スマートメーターを推進しているのは、確かに省エネを進めるという点でそのとおりでございますけれども、事案自体はあくまで個別の、今なお係争中の事案でございますので、今、経済産業省の副大臣の立場として、やはりお答えする立場にはないということでございます。
○宮本委員 係争中の事案といっても、都労委の命令はもう既に出ているじゃないですか。都労委の命令は出ているじゃないですか。これに基づいて指導すべきなんじゃないですか。これを放置するんですか。加藤厚生大臣、これを放置するんですか、こういう問題を。これはまさに労働組合潰しそのものになっていくわけですよ。こういう契約の仕方をしていったら、この人たちは生活できないわけですから、このままだと。
○加藤国務大臣 委員の資料にもあるように、今、中労委の方に上がって、調整というんでしょうか、それが進んでいるということでありますから、今の段階で個別の問題について申し上げるのは控えたいというふうに思いますけれども、いずれにしても労働者としての実態があれば労働基準関係法令の保護を受ける、これは当然のことだろうというふうに思います。
○宮本委員 ですから、本当に、こういう問題が起きていても、争っている間に生きていけなくなるわけですよ。それを政治が放置していていいのか。私は、真剣に大臣にも牧原副大臣にも考えていただきたいというふうに思いますよ。法令遵守すべきだぐらいは東電に言うべきなんじゃないですか。法令遵守しなさいも言えないんですか、法令を遵守しなさいと。法令を遵守しなさいも言えなくなったら大変ですよ。法令遵守しなさいぐらいは東電に言ってくださいよ。国会でも指摘があったと、法令を遵守しなさいと言ってください。
○牧原副大臣 先ほど申し上げたように、電気事業は経済産業省が所管をしております。そして、一般論としては、東京電力のパワーグリッド始め送配電事業各社においては二〇一八年七月に閣議決定されたエネルギー基本計画を踏まえて適切にスマートメーターの設置を進めてもらいたいと思いますが、その前提としてはもちろん法令遵守でございますので、そうしたスマートメーターの設置については法令遵守をするようにということは申し上げたいと思います。
○宮本委員 スマートメーター設置にかかわってこういう不当労働行為が起きているわけですから、そういうニュアンスをしっかりと伝えていっていただきたいというふうに思います。時間がちょっと足りなくなってしまいました。結局、私、きょうはこういう事案を紹介しましたけれども、今回の法案を成立させていったらこういう事態がどんどんどんどん広がるんじゃないかというのを大変危惧しているわけですよ。現に、今起きている問題についても、係争中だったら政治は何の手も差し伸べることをしないし、法律上できないというのかもわからないんですけれども、そうなっちゃっているわけですよね。大変問題があるんじゃないですか、今度の請負契約というのをどんどん入れていいということにするのは。大臣、その点は、今起きている事案との関係でどういう認識でしょうか。
○加藤国務大臣 現在、高齢者の雇用継続は六十五歳までしかないわけでありますから、それを七十歳まで、どういう形で雇用なり就業というものの継続をしていける条件をつくっていくのか、その一歩が今回の法律だというふうに理解をしているところであります。当然、六十五までと違って就業の形態も多様になっていくということで、もちろん、これまでのような定年延長とか定年の廃止とか引き続きの雇用継続措置ももちろん含むわけでありますけれども、それ以外の選択肢も広く含める中で幅広く雇用であり就業の継続を図っていきたい、これが今回の趣旨であります。委員御指摘の、その中でさまざまな懸念が生じることについては、先ほど説明いたしましたように、省令であり、あるいは指針であり、これからつくる中身において、これも労政審で御議論いただくわけでありますけれども、そうしたことが生じないような対策をあわせ講じながら、本来の趣旨である、七十歳まで高齢者の皆さん方もそれぞれの希望に応じて働き、また就業できる環境をぜひつくっていきたいと思います。
○宮本委員 時間が来たから終わりますけれども、雇用以外を入れなきゃいけない必然性は私はどこにもないと思いますよ。短時間労働を希望するんだったら、短時間の雇用でいいじゃないですか。なぜ、雇用じゃない、請負という働き方をわざわざ労働法制の中に組み込んでいくのか。六十五歳以下まで広がっていく懸念すら今上がっているわけですよ、今回こういう大穴をあけることで。私は、こういうことは許されないということを申し上げまして、きょうの質問は終わらせていただきます。