2020年3月17日衆院厚労委員会 高年法等改正案 参考人質疑 規制なき労働増える 参考人「廃案を」

 65歳以上の労働者のフリーランス化を促す高年齢者雇用安定法(高年法)等改正案についての参考人質疑が17日、衆院厚生労働委員会で行われ、日本共産党からは宮本徹議員が質問に立ちました。
 参考人として意見を陳述した全労連の伊藤圭一雇用・労働法制局長は改正案について、企業に努力義務を課す60代後半の「就業確保措置」の中に「雇用以外の措置」として「委託契約」や「有償ボランティア」の選択肢を入れ込んだことを批判。「法案が成立すれば高齢フリーランスが増える可能性が高い。労働法の適用が外れ、最低賃金規制も労働時間規制もかからなくなる。不安定で保障のない働き方を増やすのは間違いだ」と強調しました。
 さらに、委託契約とはいえ元従業員であり事業主は以前と同様の指揮命令をする可能性が高いと指摘。「そうなれば委託契約は労働法制を偽装した違法なものとなる。違法を誘発する制度を認めてはならない」と廃案を求めました。
 連合の仁平章・総合政策推進局総合局長は「将来的に『雇用でない措置』が65歳以下の労働者にもなし崩し的に広がる懸念が拭い去れない」と発言。一方、経団連の正木義久労働政策本部長は、「非雇用型」の選択肢まで認めたことについて「評価している」と述べました。
 委託契約への切り替えの要件とされている従業員の過半数代表者の同意は多くの場合、歯止めにかからないと指摘した伊藤氏に対し、宮本氏は具体的な実情を質問。伊藤氏は「過半数代表者を選ぶ仕組み自体が法的に厳格ではない。経営者が見ている中での挙手や、社内メールで賛否を問うなどするため、使用者の目を意識し、使用者が指名した人物が代表者になるケースが極めて多い」と語りました。

以上2020年3月18日付赤旗日刊紙より抜粋

≪第201回2020年3月17日衆院厚生労働委員会第4号 参考人質疑部分議事録抜粋≫

○盛山委員長 本日は、本案審査のため、参考人として、一般社団法人日本経済団体連合会労働政策本部長正木義久君、日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長仁平章君、中央大学大学院経済学研究科委員長・経済学部教授阿部正浩君、全国労働組合総連合雇用・労働法制局長伊藤圭一君、以上四名の方々に御出席をいただいております。の際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。次に、議事の順序について申し上げます。最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。それでは、まず正木参考人にお願いいたします。
○正木参考人 日本経済団体連合会、経団連で労働政策本部長を務めております正木でございます。本日は、雇用保険法等の改正法案に対する経団連の考え方につきまして御説明をさせていただく機会をいただきまして、まことにありがとうございます。改正法案は多岐の内容にわたりますが、私からは、主に雇用保険法と高年齢者雇用安定法の改正内容につきまして、賛成の立場から考え方を述べたいと思います。まず、雇用保険法の改正法案に対する考え方を申し上げます。経団連では、昨年九月に、労働政策審議会等の議論に対応するために、雇用保険制度見直しに関する提言というのを公表いたしております。今回の改正法案は、その提言で申し上げておりました見直しの方向と合致しておりまして、高く評価しております。個別の論点のうち、財政運営の面で二点、制度見直しの面で一点、それぞれ私どもの考え方を述べたいと存じます。財政運営面での第一点目でございますけれども、雇用保険料率及び国庫負担の時限的な引下げ措置の二年間継続についてでございます。雇用保険は、景気循環、雇用情勢の変動に機動的に対応することで、雇用のセーフティーネット機能を果たす必要がございます。中期的に健全な雇用保険財政の運営を確保していくことが重要と考えております。失業等給付に係る積立金残高でございますが、直近三年間の保険料率と国庫負担の時限的な引下げ措置によりまして、二〇一五年、平成二十七年度には過去最高水準となっておりまして、約六・四兆円ございましたけれども、二〇一九年、令和元年度については四・二兆円まで減少いたしております。引下げ措置を継続した場合、更に積立金残高が減少するということは確実でございます。措置が終わった後、保険料率が急激に上昇するのではないかと懸念されるため、経団連では、措置は最長二年間に限るべきであるということを主張いたしました。今回の改正法案で時限的引下げ措置を二年間とした点は妥当だというふうに考えてございます。ただし、国庫負担の取扱いについては一言申し上げたいと思います。雇用保険における国庫負担は、国が主導する雇用政策の責任を明確化するものでございまして、国家財政の状況あるいは雇用保険の積立金の多寡によって変わるものではございません。この点、前回の雇用保険法改正時の衆議院厚生労働委員会の附帯決議に盛り込まれました、雇用政策に対する政府の責任を示すものである雇用保険の国庫負担については、早期に安定財源を確保し、本則に戻すという御指摘は、労使間でも一致した考えでございます。時限的引下げ措置が終わる二年後にしかるべき対応をお願いしたいというふうに考えてございます。財政運営面での第二点目でございますが、雇用保険財政の安定的な運営確保に資する対応でございます。経団連は、昨年九月の提言で、雇用保険の積立金残高の水準目安のあり方につきまして、支出構造や特性を踏まえた見直しを検討し、時限的な引下げ措置が終了した後も、保険料率の急激な引上げを回避しつつ、中期的に健全な雇用保険財政を実現すべきだということを主張いたしました。一部に育児休業給付について給付の引上げを求めるといった声もある中で、労働政策審議会では、労使双方から、今後の雇用保険財政に及ぼす影響を懸念する、あり方の見直しが必要との意見が出されました。改正法案では、保険料率の弾力条項について、雇用のセーフティーネット機能の根幹である求職者給付により焦点を当てて、景気動向に応じて判定できるよう算定方法を見直すとともに、育児休業給付を失業等給付から分離することで経理を明確化、見える化してございます。こうした見直しは、雇用のセーフティーネット機能を財政面で確保する観点から妥当でございまして、高く評価いたしております。制度見直しの面では、高年齢雇用継続給付の見直しについて申し上げます。経団連は、昨年の九月の提言で、仮に見直しを行うとしても、受給者への十分な配慮とともに、企業における人事賃金制度見直しの動向とあわせて考えることが不可欠であり、十分な経過措置を講じるべきと主張いたしました。労働政策審議会における議論の過程では、労使双方から見直しに慎重な対応を求める旨の意見が出されまして、改正法案では、こうした意見を踏まえて、高年齢雇用継続給付につきましては、二〇二四年度、令和六年度までは現状を維持した上で、二〇二五年度、令和七年度から五%縮小するという見直しということになりました。給付見直しの水準面、並びに縮小を開始するタイミング面の両面から企業労使の今後の対応に一定の御配慮をいただいたものとして評価いたしております。続きまして、高年齢者雇用安定法の改正についての考え方に移ってまいります。こちらについて申し上げます。経団連では、高齢者の就労ニーズの多様性、個人差が拡大する特性を踏まえながら、意欲と能力のある健康な高齢者が専門能力の発揮、技能の伝承、若手の育成などを通じまして企業内外のさまざまな場で活躍できることが重要であると、本年一月に公表いたしました経団連の経営労働政策特別委員会報告等において表明をいたしております。高齢者の活躍推進に向けては、企業での対応だけではなくて、高齢者の再就職支援、地域での多様な就業機会の確保に向けた社会全体での環境整備も求められます。こうした考え方に沿いまして、改正法案について、七十歳までの就業確保措置に係る二つの論点に関する考え方を申し上げたいと思います。第一は、努力義務による対応とした点でございます。経団連では、多様性に富む六十五歳を超える高齢者の方々の就業機会の確保につきましては、法律による一律の義務化ではなくて、企業労使の創意工夫を生かした、多様で柔軟な対応というものを求めてまいりました。改正法案では、七十歳までの対応につきまして、雇用による措置、雇用によらない措置、いずれかの就業確保措置を事業主の努力義務として講じるとしております。義務ではなく努力義務とすることで、企業労使の間で各社の実情あるいは高齢者のニーズを踏まえつつ十分な議論を重ねて、例えば段階を踏んだ導入など、創意工夫を凝らした対応を講じることが可能となるものと受けとめております。第二点は、六十五歳までの雇用確保措置と異なりまして、努力義務のもとで選択肢を拡大したという点についてでございます。改正法案では、雇用による措置として、定年の廃止、定年延長、継続雇用制度導入の三つの措置に加えまして、グループ会社ではないほかの企業との雇用契約も認めることとしております。加えまして、雇用によらない措置として、フリーランスや起業される方への業務委託、社会貢献活動への従事を支援する制度の導入を盛り込んでございます。対応の選択肢を広げることとあわせまして、勤務成績や健康状態などに基づき、対象者を限定するための基準を設けることも可能とされております。こうした点も、企業側から見れば、努力義務のもとで自社の実情や多様な就労ニーズに合わせたさまざまな工夫を可能とする内容であると評価いたしております。ただし、企業が七十歳までの就業確保措置を具体的に考えていく上では、法案が成立した後、省令や指針で詰めていただくべき点がございますし、企業規模を問わず先進的な好事例を横展開していくこと、それぞれの選択肢の内容をわかりやすく周知していくことが重要と考えております。以上、簡単でございますが、今回の改正法案に対する私どもの認識でございます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
○盛山委員長 ありがとうございました。次に、仁平参考人にお願いいたします。
○仁平参考人 連合の仁平です。本日は、参考人としてお招きいただいて、どうもありがとうございます。私は、法案の内容を審議いたしました労働政策審議会で、労働側の委員を務めさせていただいております。本日は、高齢法、雇用保険法、労災保険法についての意見を述べさせていただきたいと思います。本日、お手元に、簡単に考え方をまとめたレジュメを御用意しておりますので、こちらをごらんいただきながら話をさせていただきたいと思います。まず、表紙をあけていただきますと、ページ番号の一というところに高齢法の改正案についての意見を書いてございます。連合としては、働きたいと願う高齢者が年齢にかかわりなく働き続けることのできる環境整備、これは非常に重要であり、現在六十五歳までしか法的な枠組みがないことを考えれば、今回の議論については前向きに受けとめているところでございます。ただし、今回の七十歳までの就労機会の議論の前提として、二点ほど申し上げておきたいと思っております。前提の一点目でございます。公的年金の支給開始年齢の引上げは行わないということでございます。この点、昨年の成長戦略実行計画においても明示されておりますが、連合が実施しました調査においても、高齢法が改正されればやがて年金の支給開始年齢も引き上げられるのではないかという危惧の声も多く寄せられているところでございます。こうした不安の声に、政府としてもしっかりと対応していただきたいと思っております。前提の二点目でございます。希望者全員が六十五歳まで働く環境がその土台になるというところでございます。そのために、現行の高齢法で義務づけられている三つの選択肢、すなわち、定年年齢の引上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止という六十五歳までの雇用確保について、企業の規模を問わず、全ての企業において完全に実施される必要があると考えております。その上で、今回の七十歳までの就業機会確保に向けた選択肢には、非雇用の選択肢も含まれております。この非雇用の選択肢は抽象度が高く、しかも労働者保護の観点から課題もあるものと捉えております。その観点から、三点ほど意見を申し上げたいと思います。一点目は、労働法規による保護が及ばない非雇用の働き方のさらなる拡大に対する懸念でございます。今回の改正法案では、創業支援等措置という新たな選択肢が示されております。六十五歳以上の者に限定されているとはいえ、高齢者雇用安定法という、雇用ということが明記されている法律に雇用でない措置も書き込まれることになります。そのため、将来的に雇用でない措置が六十五歳以下の労働者にもなし崩し的に広がる懸念も拭い去ることができません。本来雇用であるべきところを、事業主の責任を回避するために委託契約に変更するということはあってはならないことだと考えております。そのため、六十五歳以上の高齢者に限らず、就業者保護の観点から、現在雇用とみなされない就業形態で働く全ての者に対するセーフティーネットの構築に向けた議論、これが早急に進められていく必要があると申し上げておきたいと思っております。同時に、今回の法改正の目的が七十歳までの就業機会の確保ということであるならば、どの選択肢であっても遜色がないよう、それぞれの選択肢の均衡を図った上で、就業を希望する者に対し、その機会を確実かつ継続的に提供する枠組みとすることが必要だと考えます。二点目についてです。創業支援等措置を選択する者の保護に向けた具体的な対応が必要だということでございます。今回の制度に基づき業務委託契約を結ぶことが想定されるわけですが、契約上は委託契約であっても、高齢になれば事故の発生率は高くなってまいります。あるいは、労働安全衛生の観点からも、そういった視点から保護すべきものであるということを指針等で記載すべきだというふうに考えております。また、事故等が発生した際の補償のあり方についても検討が必要だというふうに考えます。さらに、事業主が委託契約の制度設計を行う段階において、意図的に委託契約の対象となる事業を限定したり、同業他社との取引がある場合には業務委託を行わないとしたり、あるいは、事業の開始当初のみの支援措置にとどまったりということも考えられると思います。そうしたことを防止するためにも、報酬のあり方や、年間を通じた仕事の発注、途中解約の要件等について、これも指針に記載するとともに、施行後の労働局や監督署による調査や適正な指導というのも必要だと考えております。三点目でございます。創業支援等措置における労使合意の枠組みについてでございます。創業支援等措置のみを企業が講じる場合には集団的労使関係による労使合意がその要件とされておりますが、しかしながら、裏を返して読みますと、創業支援等措置と雇用による措置、この二つを組み合わせた場合は労使合意が不要だ、こういう理屈になります。その点は、労働政策審議会の中でも議論をしてきたところでございます。私たちが危惧していることは、労使合意を避けるがために、例えば、他の事業所による継続雇用制度を形式的に創設しておき、実際は創業支援等措置しか活用されないといったケースでございます。その場合でも法律上の努力義務を果たしたということになりますが、これは法制度の趣旨からかけ離れたものだというふうに考えております。トラブルを未然に防ぐためにも、例えば、労使合意に必要な内容を指針で明確にした上で、その合意内容を労働局や監督署に提出するなどの措置が必要であると考えます。労働組合がない職場での話合いも含め、実効性のある制度を労使でつくり上げていくための枠組みを指針でどう定めていくのか、今後の大きな課題だと考えております。次に、レジュメのラストのページを見ていただきたいと思います。雇用保険法についてでございます。二点ほど申し上げたいと思っております。一点目は、国庫負担の引下げ措置の継続についてでございます。労働政策審議会では、労使ともに、雇用対策への国の責任に基づき、失業給付の国庫負担を本則に戻すべきだ、こういう意見を申し上げてまいりました。しかしながら、昨年十二月の審議会の取りまとめにおいては、雇用保険財政の安定的な運営が維持されると見込まれる二年間に限り暫定措置を継続することを、苦渋の決断としてやむを得ないものとしてきたところでございます。今回のリーマン・ショックを超えるとも言われる新型コロナウイルスの影響による先行き不透明感が漂う中、三年前の国会の附帯決議をほごにしてまで、この時点で国庫負担の引下げを更に継続することに対して、政府として十分な説明をお願いしたいと思っております。二点目は、高年齢雇用継続給付の縮小についてでございます。セーフティーネットの観点から継続すべきというのが基本的な考え方であり、縮小するのであれば、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保が前提となると考えます。継続給付を当てにした処遇制度設計を行っている企業も少なくないことから、まずは、同一労働同一賃金に関する法律に基づき、不合理な待遇差が解消されることに加え、高年齢労働者の処遇改善に先行して取り組む事業主に対する支援や、縮小後の激変緩和措置などが必要だと考えます。最後に、労災保険法について一点申し上げたいと思います。労災の認定について、複数の事業所での負荷が合算され、労災の給付も、複数の事業所の賃金をベースに合算して支給するもので、労働者にとってプラスな改正だと認識しております。合算の対象として、いわゆる一人親方として働く者が加入できる特別加入も入っているわけですが、実は、この特別加入制度は昭和四十年代から大きな修正がされておりません。そのため、この制度を今の時代に合うようにアップデートした上で広く周知、広報し、今回の高齢法改正により委託契約で働くこととなった者も含め、非雇用で働く者へのセーフティーネットを広げていくことが必要だと考えます。以上、我々の課題認識を申し述べさせていただきました。今後の国会審議におきまして、ぜひとも議論を深めていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○盛山委員長 ありがとうございました。次に、阿部参考人にお願いいたします。
○阿部参考人 おはようございます。中央大学で労働市場に関する諸問題を研究しております阿部と申します。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。意見を述べるに当たりまして、まず初めに、議員の皆様にはお願いしたいことがございます。御承知のとおり、新型コロナウイルス感染症問題は、日本だけではなく、世界各国に拡大をしております。経済社会にも甚大な影響を与えています。政府は雇用調整助成金の拡充など対策を進めておりますが、休業を余儀なくされている労働者もいらっしゃいますし、また、この三月に卒業予定の学生の中には、四月からの入社内定を取り消される、そういった方もいらっしゃるという報道がございました。感染症問題がいつまで続くのか先が見えない中、場合によっては労働市場政策を更に拡充していくということが必要になるかもしれません。四月以降の労働市場政策を円滑に進めていくためにも、今回の雇用保険法の改正につきましては、慎重、丁寧な議論はもちろんではございますが、早急に御審議をいただきまして、一つの結論をいただきたいと希望している次第でございます。それでは、今国会に提出されております雇用保険法等の一部を改正する法律案につきまして、私の意見を述べさせていただきます。先ほど述べました感染症問題は、労働市場に一過性の影響を与える問題であり、いわば短期的な課題であると考えられますが、これとは別に、日本の労働市場には長期的、構造的な課題もございます。議員の皆様も御承知のとおり、少子高齢化の影響がそれでございます。少子高齢化の進展によって労働力の減少を余儀なくされておりますし、それが日本経済の成長力の足かせになりかねないと考えられています。国立社会保障・人口問題の将来推計人口によりますと、十五歳から六十四歳までの生産年齢人口は現在おおよそ七千五百万人でございますが、二〇五〇年には五千三百万人程度と大きく減少していきます。今後三十年間で現在の約三割ほど生産年齢人口が減少すると考えられているところです。労働力人口の減少は、経済成長ばかりではなく、今後の社会保障の維持にも大きな影響を与えます。早急の対策が必要であることは言をまちません。昨年四月からは働き方改革が本格的に始まり、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方が選択できるような社会の実現に一歩踏み出しております。今回の法案も、働き方改革が実現しようとしている多様な働き方が、選択の実現だけではなく、より安心、安定した働き方になることを後押しする政策だと個人的には評価しております。労働市場の現状を見ますと、多様な働き方を必要とする労働者の多くが女性及び高齢者だと考えられています。二〇一九年の総務省統計局労働力調査によりますと、六十五歳以上の男女の労働力率は二五・三%、約四人に一人が、働いている、あるいは仕事を探している状態にございます。ちなみに、十五歳から六十四歳までの生産年齢人口の男女の労働力率は七九・六%となっております。また、今のところは仕事についていないけれども仕事をしたいと考えている六十五歳以上の方は、現在五十一万人ほどいると推定されております。こうした方々の労働参加の機会を整備するということは、働きたいと考える個人にとっても、また社会全体にとっても望ましいことであろうと考えております。今後は六十歳以上雇用継続義務化後の方々がふえてまいりますので、更に就業希望の方がこれまで以上にふえていくと考えられます。これらの方々の労働参加がかなうことは望ましいと思います。ただし、その際、注意しなければならない点もあると思っております。御承知のとおり、高齢者の方々の体力や健康の状態は個人差が大きく、個別の労務管理を行う必要性が高まります。実際のところ、六十歳以上の高齢者の労働時間や就業日数は、ほかの年齢階級と比べまして相対的に短いだけではなくて、個人的に大きなばらつきがあるということが観察されます。労働時間や就業日数を柔軟に決められる、そうした働き方を積極的に選択されている高齢者の方々も多いと考えられます。六十代後半あるいは七十代の方々がその希望に応じて活躍することは望ましいことではありますが、それには個々人の体力や健康に応じた多様な働き方を整備していく必要性があると考えられます。こうしたことから、今回の高年齢者雇用安定法及び雇用保険法では、高齢者の就業機会の確保及び就業の促進を一層展開していくため、従来からの雇用の継続以外にも、雇用以外の就業形態を継続就業の選択肢として示しております。労働者個人にとって働きやすい就業形態を選択できるよう、より幅のある多様なメニューを企業が提示することを可能にしています。従来から、自営業者は年齢にかかわらず就業できると注目されており、六十五歳以上の自営業者割合は他の年齢層に比べて高いことは事実です。ただし、自営業者が働きやすい形態とはいいましても、経営を軌道に乗せるためには、仕事を遂行するための知識や技能だけではなく、資金調達や顧客開拓などの経営基盤が必要となります。労使がその支援内容を十分議論した上で就労形態の一つとして雇用以外の働き方を選択することは、企業からの支援措置などもその条件に入っている点からもあり得ると、私個人としては認識しています。ただ、その際、雇用以外の働き方を選択するかどうかだけでなく、資金調達や顧客開拓といった企業からの支援内容についても、その企業の特性に合わせて、労使で十分議論していただきたいと考えているところでございます。女性の働き方についても、これまで以上に労働市場の整備を図る必要があると考えます。とりわけ、結婚や子育てと就業が両立するよう、社会全体で取り組む必要があります。従来から育児休業制度が整備されてきましたが、育児休業給付については雇用保険の失業給付等と同一会計から支給されることとなっておりました。失業給付は景気循環と連動して支出額が変動するのに対して、育児休業給付は景気循環とは関係なく一貫して支出額が伸びる傾向にある、また、育児休業給付が失業給付額と並ぶ水準に達している、こういうことから、今回の雇用保険法の改正では育児休業給付の区分経理を導入するということになりましたが、これもリーズナブルであると考えます。少子化対策のためには、労使だけでなく、社会全体で育児・介護休業制度、あるいはその周辺の制度を充実させていくことが望ましいと考えていますことを付言させていただきます。なお、今回、国庫負担の引下げを暫定的に二年間継続することになっておりますが、これは公労使ともに雇用保険の財政状況を鑑みた苦渋の選択であり、二〇一七年の雇用保険法改正時における附帯決議の内容に沿ったものではないということについては非常に残念に考えているところでございます。今後の労働市場を考えると、もう一つ解決すべき課題があると考えます。技術革新やグローバル化の進展に伴い、働き方そのものが大きく変化しており、いわゆるギグワークを行う雇用類似の働き方、あるいは副業などで複数の企業に雇用されるといった働き方が今後も増加していくと予想されます。今回の雇用保険法並びに労災保険法におきましてマルチジョブホルダーに対する給付が整備されるということは、いまだ不十分ではないかという御意見もお聞きするところではございますが、新しい働き方への対応への第一歩を踏み出したという点で評価できると思っております。もちろん、こうした新しい働き方が労働市場で増加していけば、それに合わせて制度を拡充することはもちろんのことであります。厚生労働省は、こうした新しい働き方の動向を十分に踏まえ、政策の検証と検討を継続して行い、適切な制度を整備していく必要があると思います。最後に、今回の法改正に当たりまして、労働政策審議会におきましては、公労使三者が十分に議論し、意見を集約してまいりました。労働現場の実態をよく知る労使の御意見を踏まえ、今回提出されている改正案となったことを御理解いただきまして、先ほども述べました新型コロナウイルス感染症に対する労働市場政策を円滑に進めるためにも、速やかな御審議を、労働政策審議会の委員の一人として希望したいところであります。以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
○盛山委員長 ありがとうございました。次に、伊藤参考人にお願いいたします。
○伊藤参考人 全国労働組合総連合の伊藤と申します。雇用と労働法制の担当をしております。きょうは、意見を述べる機会をいただきまして、ありがとうございます。私の方から、発言の要旨と、あと、改正事項についての評価というものを、要点をまとめた資料を皆さんのお手元に配らせていただいております。今回の法案、論点は多岐にわたりますけれども、私の方からは、中に問題と思われる点がありますので、三点ほどお話をさせていただきたいと思います。まず一点目です。法案の柱である雇用保険法そのものについてですけれども、雇用情勢の悪化に備える内容になっていないのではないか、修正すべきというふうに考えております。新型コロナウイルス感染症が景気と雇用に重大な影響を及ぼしております。全労連の地方組織が構えている各地の労働相談センターにも、今、多くの相談が寄せられております。九日には全国一斉の労働相談ホットラインをやりましたけれども、そこにはまずは三百四十九件の相談があり、百七十一件、要するに半数がコロナウイルス関連でした。相談内容としては、休校の影響で働けない保護者への助成制度ですとか、休業手当が払われない、そうしたお話が多かったんですが、中には、これを機にした解雇や雇いどめ、そういうものも出てきています。政府は雇用調整助成金の特例措置等を打ち出しておりますけれども、雇用情勢は残念ながら更に悪化する可能性があります。まさに雇用保険制度がその本領を発揮すべきときが来る可能性があります。ところが、提出されている雇用保険法案は、立案時の情勢として、今の情勢を想定したものとはなっておりません。雇用情勢は着実に改善が進み、失業者は減っている、そうした認識のもとでの内容になっております。幸い、今、先生方は法案を審議されているわけですから、この先を見通して、失業増加等の事態に備えるべきではないかと考えます。先ほど来問題にされている労働保険会計における国庫負担金、これは一七年の改正で本来の負担率の一〇%まで下げられています。法案ではこれはあと二年間継続するとしておりますが、この暫定措置の条項はやはり削除し、これは労使ともに言及があったと思いますが、国庫負担金の割合は本則どおりとし、危機に備えるべきではないかと考えます。あわせて、雇用保険の基本手当の日額の引上げというものを検討いただきたいと思います。コロナウイルスに関連する雇調金、それから保護者支援の措置として八千三百三十円という金額、これが雇用保険の上限額で、それと足並みをそろえたということで今注目が集まっておりますけれども、低過ぎるのではないかという意見が大分上がっております。これを、二〇〇〇年当時からかなり下げておりますので、生活を補填するに値するような金額まで引き上げていただきたい。これが一点目の修正の要求です。二点目、これが最大の問題だと考えますけれども、高年齢者雇用安定法から委託契約や有償ボランティアを可能とする条項は削除すべきだというふうに考えております。法案では、第十条の二というものを新設して、事業主に対して、六十五歳から七十歳までの雇用若しくは就業、創業支援措置という言葉で、これをとる努力義務を課すとしております。雇用については後ほど述べますけれども、まず、就業措置の方です。ただし書き以降を見ると、一定の要件を満たせば委託契約、有償ボランティアでもよいというふうにされております。企業から独立して自営で働く人は今でも存在しておりますし、労働法がその妨げとはなっていないわけで、委託契約の選択肢をここにつける必要がないわけです。必要がないどころか、これを入れることによって働き方に重大な悪影響を及ぼすことが懸念されると私は思っております。全労連でも、実際、労働相談をもとに、今、争議状態になっている、そういう仲間がいます。雇用契約を業務委託に切りかえられる、それによって必要な経費を全て自分持ちにされる、コストゼロ社員なんという言い方があるそうですが、非常に厳しい状態に置かれます。労働法の規制を逃れてコストダウンを図る、これをしたいという事業主は少なくない、そういうふうに思いますので、高齢者の就業環境整備の名目で、企業負担が軽い、不安定で保障のない働き方、こうしたものをふやしてしまうのは誤りではないか、こう考えます。御承知のとおり、フリーランスとなれば、労働法の適用が外れる、最低賃金規制も労働時間規制もかからない。コロナウイルス対策においても、有給休暇がない、感染症による休業補償も傷病手当金もない、こんな点が注目をされております。何らかの保護を求める声が上がっているわけです。特に高齢者で懸念されるのは、労働安全衛生の問題です。六十代後半の労働災害の発生率は、二十代後半に比べて、男性で二倍、女性で四・九倍と高くなります。加齢の影響が目立つのは、転倒、転落・墜落、それから交通事故など、命にかかわるものが多いわけです。幸い命を落とさなくても、治癒にかかる時間も長い。また、疾病を抱えながら就労する人の割合も加齢につれて増加するわけです。要するに、高齢者雇用安定法案の対象者となる方々は安全衛生面で特段の配慮が必要な人たちであり、労働基準法はもとより、労安法、労働災害補償保険法等による保護が特に必要な方々、こういうふうに言っていいと思います。厚生労働省は、人生百年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議報告書によってこうした知見も述べているところです。そうした報告書の内容とこの法案はちぐはぐじゃないか、こう考えます。委託契約になったとはいえ、元従業員だった方々ですから、事業主は退職前と同様の指揮命令をしてしまう、そういう可能性も高いのではないかと思います。そうなれば、委託契約は労働契約を偽装した違法なものとなります。こうした行為を誘発する制度を職場の労使合意を要件として合法化する、これは認めてはならないことだと思います。従業員の過半数代表者の同意はありますが、しっかりした過半数労働組合があればともかく、そうではない場合は、多くの場合、歯どめにはならずに、使用者の意のままの結論が導き出されてしまう、こうした傾向は、労働時間規制、三六協定等でも、既に先生方も御承知のとおりだと思います。また、そもそも労使が合意しようが労働基準法の適用を免れることはできないというのが労働法の原則だと思います。高齢者雇用安定法は廃案が妥当だぐらい、きつく考えております。少なくとも第十条の二のただし書き以降を削除すべき、こう考えております。六十五歳以上の雇用ならいいのか、これは望ましいとは言いつつも、別途、年金支給開始年齢の引上げのための地ならしとされるのではないか、こうした見方もあります。そういうものであれば反対であります。三点目、高年齢者雇用継続給付金についてです。年金制度の見直しのために導入された六十代前半の雇用確保措置義務ですけれども、実際、定年延長、定年廃止の事例は少数でして、多くの労働者は再雇用で働いております。その際の賃金水準の大幅な低下を助成する措置として、高年齢者雇用継続給付金は多くの企業で活用され、定着もしてきたと思います。利用数は年間累計で二十万人弱と、若干減っているとはいえ、中小企業等、私ども労働組合があるところでも、これをもとにしているところは多いわけです。法案では、給付率を二〇二四年までは現状維持とするものの、二五年以降は給付率を下げていく、その先には廃止の見通しも出ているそうです。こうした給付率の削減は労働者の収入減少や企業における賃金体系の改悪を促す可能性がある、こう考えております。これも反対であります。後ろの資料で、労災補償保険法と雇用保険法等の拡大についての態度表明があるところがあると思います。労災保険、雇用保険について、複数の事業で働く方々、マルチジョブホルダーについての一定の配慮をする、これは賛成ではあるんですが、副業推進というような政策自体については、働き方改革の本旨にも反するのではないか、長時間労働になるのではないか、こうしたことから私どもは反対をしています。この制度自体は、既にダブルジョブ、トリプルジョブをする方もいらっしゃいますから、これ自体はいいことだと思いますが、全体として副業、兼業を推進するという方向については懸念があるということも申し添えまして、私の発言にかえさせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
○盛山委員長 ありがとうございました。以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
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○盛山委員長 これより参考人に対する質疑を行います。質疑の申出がありますので、順次これを許します。谷川とむ君。
○谷川(と)委員 おはようございます。自由民主党の谷川とむです。本日は、雇用保険法等の一部を改正する法律案の参考人質疑ということで、参考人の皆様方におかれましては、公私何かとお忙しい中、本委員会にお越しいただき、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。限られた時間ですので、全ての参考人の皆様に質問できるかどうかわかりませんけれども、御理解いただきまして、よろしくお願いいたします。阿部参考人からも冒頭お話がありましたけれども、新型コロナウイルス感染症対策、しっかりと私も取り組んでいきながら、経済対策も打ち出していけるように尽力してまいりたいと思いますので、どうか参考人の皆様方におかれましても御協力いただきたいなというふうに思っております。それでは、さて、令和元年六月二十一日に閣議決定された成長戦略実行計画において、高齢者の体力、運動能力はこの十年強で五歳若返り、歩行速度については十年で十歳若返り、健康状態だけを見ると、高齢者の就業率は現在より大幅に高い水準になる余地があるとの分析があります。また、六十歳以上の方で、七十歳以降まで働きたい、そういうふうに希望している高齢者は八割に上るという指摘もあります。人生百年時代を迎え、改めて、働く意欲のある高齢者がその能力を十分に発揮できるように、高齢者の活躍の場を整備することが必要であると私も考えております。そこで、まず、現行六十五歳から七十歳までの雇用機会を確保するための本改正法案では、定年の引上げなどの選択肢だけではなくて、他企業への再就職の実現といった新たな選択肢も明示した上で、事業主としていずれかの措置を講ずることを努力義務といたしております。多様な選択肢としたのは、体力や健康状態その他本人を取り巻く環境が六十五歳以前のものと比べて個人差が大きく、また、人件費等の負担が増加するという事業主側の懸念にも配慮したためであると考えられていますが、いかがお考えでしょうか。先ほど少し触れていただきましたけれども、また、今後議論となり得る完全義務化についても重ねてお聞かせいただきたいと思います。この質問は、正木参考人と阿部参考人、よろしくお願いいたします。
○正木参考人 御質問ありがとうございます。多様な選択肢を設けて、さまざまな選択肢をつくるということにつきましては、まさに先生御指摘のとおり、高齢者の方々、働く側の方も、七十までまだ会社に縛られるのかといったことで、やはりいろいろな働き方をしたいというニーズがあるということですので、それに応えたいというふうなことを考えたということでございます。一方で、もちろん、定年の延長という形で働くということもやられている会社さんも既に中小企業なんかでもございまして、私どものことしの春季労使交渉の手引であります、経営労働政策委員会の報告書と一緒に出している手引なんかでも、新潟県のある会社さんの例を出しているんですけれども、七十歳まで雇用を延長する、そのときに賃金体系なんかも七十でもモチベーションがちゃんと維持できるように設計をし直した、それを労使で話し合ったと。先ほどからいろいろな参考人の方も御指摘になっていますけれども、問題は、やはり、工場、作業場ですので、安全、先生の御指摘の、おっしゃるようにやはり体力等も変わってまいりますので、それをみんなで話し合ったと。安全通路の確保ですとか、作業場とか棚の高さを見直すとか、より安全に作業できる自動化設備の導入とか、そういった工夫をして、お互いにうまくやっていきましょうということで七十まで雇用を延ばした、そうすると、周りの会社さんは六十五定年だけれども、自分の会社は七十ということで、競争力が高まったというお話を伺いました。また、高齢の方が、これは缶をつくる会社さんなんですけれども、地域のごみステーション、これを自分たちの技術でつくったらどうかと提案してつくったということで、おかげで地域の方からも会社が評価されるようになった、高齢者を七十まで活用してハッピーだったというお話を伺っておりまして、それを紹介しております。こういう好事例をどんどん展開していくことを私どもとしてもしていきたいなと思っております。
○阿部参考人 御質問ありがとうございます。先ほど議員御指摘のとおり、人生百年時代に向けて、六十五歳から七十歳の雇用確保というのは非常に大事なポイントだと思います。それで、七十歳まで雇用を継続するということを基本としつつ、先ほど議員もおっしゃったとおり、体力あるいは健康状態、さまざまな事情が、高齢者の方々は多様性がありますので、雇用継続を基本としつつも、その他のさまざまな就業機会を提供するという制度設計というのは非常に望ましいかと考えております。以上でございます。
○谷川(と)委員 ありがとうございます。いろいろと、高齢者の皆さんも、七十歳まで働くという中でいろいろな働き方をまた望んでいらっしゃる人もいますから、多岐にわたるような、その選択肢があれば、より一層第二ライフがいいようになっていくのではないかなというふうに思っていますので、また引き続きの御支援をいただきたいなというふうに思っております。しかしながら、なかなかやはり六十五歳から七十歳まで働くという、働きたい仕事につけない方もたくさんいると思うんですけれども、この六十五歳以上の求職者に対する再就職支援などが、何か有効的なものが、こういうのがありますよというのがあればぜひお聞かせいただきたいと思いますけれども、これも正木参考人と阿部参考人にお聞かせいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○正木参考人 先生おっしゃるとおりでありまして、会社で、今回できる選択肢も、例えば最後に社会貢献活動という選択肢があるんですけれども、地域の町内会とかボランティア活動までは選択肢にならなかったんですね。働く場所についても、関係会社まで今回は選択肢となりましたけれども、それ以外のところで活躍したいとかいったこともあると思います。そういった場合に、産業雇用安定センター、産雇センターとか、高齢者の雇用のマッチングをしている機関がございます。こういったところをぜひ活用していきたいというふうに思いますし、そういうところの活動を活発にしていただきたいなというふうに思っております。また、サプライチェーンの中で、今、大企業と中小企業の連携が本当に大事になっております。BCPなんかの部分でもそうなんですけれども、こういった部分でも、今回はグループ以外の会社という選択肢も認められましたから、大企業の方でも活躍できた、例えば経理ができる人とか、こういうエンジニアリングの仕事ができるという人を中小企業に積極的に御紹介していって、うまくマッチングが図られればいいなというふうに思っております。
○阿部参考人 六十五歳ですぐにいろいろな仕事につきたいといっても、対応することは必ずしもできるわけではございません。以前から、やはり労働者の方々が自身で、キャリアやあるいは自分の将来設計、生活をどのようにしていくかというのを考えてほしいと思います。とりわけ技術革新のスピードが速いものですので、それまで身につけたスキル、知識がどんどんどんどん劣化していくという可能性もございます。したがいまして、六十五歳からの職業生活を考えるに当たっては、六十代あるいは五十代、四十代以前からキャリアカウンセリングを受講するといったことをしたり、あるいはリカレント教育を受講するといったことが我々個人にとっても必要かと思います。そのために、国としては、キャリアカウンセリングを整備するとか、あるいはリカレント教育の制度を整備していくということが必要になるかと思います。以上でございます。
○谷川(と)委員 ありがとうございます。私も、リカレント教育やキャリアカウンセリング、またマッチングが非常に重要であるなというふうに思っていますので、その辺をしっかりと推し進めていけるように努力してまいりたいなというふうに思っております。ありがとうございます。次に、多様な働き方を選択する者や、パート労働者等で複数就業している者が増加しております。政府においても、働き方改革実行計画に、労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業、兼業を認める方向で、副業、兼業の普及促進を図ると盛り込むなど、副業、兼業を推進しております。そのような実情を踏まえて、セーフティーネットとしての機能を果たしている労災保険制度の見直しを行い、複数就業者が安心して働くことのできる環境を整備することも重要であると考えております。本改正法案では、複数の事業主に雇用されている労働者の場合に、非災害発生事業場の賃金額も合算して労災保険給付を算定し、複数就業者の就業先での業務上の負荷を総合的に評価して労災認定を行うこととしております。他方、複数就業者の中には、例えば、公務員である者が民間企業、この場合、労災保険適用事業場で副業を行うなど、就業の場所の一つが労災保険法以外の法律を受ける事業場である場合もあります。この場合における複数業務要因災害についての明文の規定はありません。本改正法案においても、複数就業者が他の災害補償制度に加入している場合の保険給付についての措置はありません。その点についてどうお考えでしょうか。正木参考人、よろしくお願いします。
○正木参考人 先生御指摘のとおりでありまして、今回の労災保険法の改正というのは、現在は事故のあった事業場の賃金だけしか補償の対象となっていないところを、複数のところで働いていたものを合算できるということですので、先ほど阿部参考人もおっしゃっていましたとおり、今回のはまだ第一歩であるというふうに思います。まさに先生御指摘のとおり、ほかの保険のものとのという仕組みは今ございませんので、これから、もしそういったことも必要であるということであれば、連携をしたものをつくるとかいったことが、更に改善というのが考えられると思います。
○谷川(と)委員 ありがとうございます。続きまして、先ほど正木参考人に少し触れていただいたんですけれども、働く高齢者の増加に伴って、体力の衰え等による労災も本当にふえてきております。二〇一八年の六十歳以上の労災発生数は全体の四分の一を占めております。高齢者の労働災害発生率は若年者に比べて非常に高い。また、七十歳までの労働者が増加すると、企業側には労働災害防止のための対策にますます積極的に取り組んでもらわなければ、高齢者が安心して働ける環境づくりができないというふうに思っております。その場合、労働災害防止について、企業側にどのような支援策、先ほど少し触れていただきましたけれども、もう少し踏み込んでお話しいただければなと思いますので、これは正木参考人、また仁平参考人、よろしくお願いいたします。
○正木参考人 先生御指摘のとおりでございます。まず健康状態のきめ細やかな把握ということ、それから設備、作業環境の整備、こういったものをやっていくということになります。企業の方々にこういった点についてお伺いしてみたところ、やはり設備、制度を、スロープにしてもそうですし、いろいろ、段差をなくす、作業台の高さを調整する、いろいろな設備を設けるときに例えば助成金などの形で政策的支援があれば非常にありがたいという話を伺っております。ぜひよろしくお願いいたします。
○仁平参考人 御質問ありがとうございます。確かに、先生御指摘のとおり、高齢者になると労災の発生率が非常に高くなるものですから、実は、昨日、厚労省の方で、高年齢者の安全と健康確保のためのガイドラインというものを作成し、発表しております。この中には、実は、請負形式による契約により業務を行う者にも本ガイドラインを参考にすることが期待されるというふうに書いておりまして、こういった内容を広く周知していただく、守っていただくということは一つ大事なことかなと思っております。あと、さまざまな政府の補助金などもあるとは思いますが、もう一つ、直接の労働災害とは別に、やはり高齢になると病気を持たれる方がどうしても多くなるものですから、そうすると、働き方などについても、働きやすい日数とか労働時間なども含めて、ハード面の職場の整備のみならず、こういったソフト面での働き方の工夫というのも、ぜひ、労使でも話し合いますし、それを支援していただくような仕組みというのもお願いしたいと思います。以上です。
○谷川(と)委員 ありがとうございます。本当に、労働者の年齢が高くなればなるほど、多分、体の調子も変わってきますし、いろいろな状況の変化が生まれてくるので、一人一人の働き方ということはしっかりと、企業なり、その人なり、また同僚ですよね、助け合いながら職場環境をつくっていくべきであるというふうに思っています。そういう対策をいろいろ講じていただいても、メンタルヘルスもしっかりとサポートしていかないとやはりなかなかうまいぐあいに働けないのではないかなというふうに思っておりますので、私も、その意見をしっかりと受けとめながら、これからもしっかりと歩んでいきたいなというふうに思っております。残念ながら、もう時間となりましたので、この辺で質問を終わらせていただきますけれども、参考人の皆さん方におかれましては、本当に貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。しっかりとこれからも取り組んでまいりますので、引き続きの御支援を賜りますようによろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○盛山委員長 次に、岡本充功君。
○岡本(充)委員 きょうは、参考人の皆様方には貴重な御意見を御披露いただきまして、感謝申し上げたいと思います。まずは、限られた時間ですので、できるだけ参考人の皆さんの御意見を聞きたいと思いますので、質問に入りたいと思います。一点目は、昨今のコロナウイルスの感染症に伴って景気状況が悪化しているのではないかという声があります。さまざまなインターネット上の検索などでも内定取消しというのがキーワードになっているんですが、この内定取消しに対して経団連としてはどういう取組をし、どういうふうに考えているのか、教えていただきたいと思います。
○正木参考人 この四月に入社されるという方の内定取消しというニュースは、まず本当に痛ましいことだと思っております。先週の金曜日、経団連に対して正式に、内定取消しのようなことがないようにと、政府の関係省庁から連名という形でいただきました。早速、金曜日のうちに経団連の会員企業に徹底もいたしました。中西会長に私の方から、こういった要請があったので、すぐ、徹底ということで、内定取消しのようなことがないように、雇用の維持というのは大事ですねということの通達といいますか、連絡を全会員企業にしましたという連絡を会長に入れましたところ、中西会長からも、雇用の維持は本当に大事だから、ここのところはぜひこれからも強いメッセージとして出していくようにというふうに指示を受けておりますので、まさに今御質問いただいたので申し上げておきますけれども、私どもとしても、ぜひ雇用の維持というものについて力強く取り組んでまいりたいと思います。
○岡本(充)委員 雇用の維持というのは重要なんですが、確認ですけれども、内定が出た段階で雇用契約が成立している、したがって、内定取消しというのは雇用契約の解除に当たる、こういう立場でよろしいですよね。
○正木参考人 失礼しました、おっしゃるとおりで、内定取消しというのは、これは雇用契約の解除と、特にこの三月の末という段階でございますので、同等のことということでございます。
○岡本(充)委員 ぜひそういう認識で対応していただきたいと思います。続いて、仁平参考人にお伺いをするわけでありますけれども、高齢者の雇用についていろいろな懸念をされておりました。今回の創業による措置をしていくに当たり、いろいろなメニューを用意しています、雇用によらない措置の場合には労使合意だ、一方で、全部を一遍に提示をして、労使間での合意ということではなく、全部を一括して提示をし、そして結果として雇用によらない措置だけを講ずるというようなことがあってはならない、こういう御意見だったというふうに理解をしておりますけれども、その点について御懸念があるという理解でよろしいでしょうか。
○仁平参考人 先生御指摘のとおりでございます。懸念を持っております。
○岡本(充)委員 そういう意味では、本当に雇用によらない措置になることが懸念をされているわけでありますが、そこで、ちょっと阿部参考人にお伺いしたいのですが、働き方もいろいろ個人差が年齢で出てくる、働く時間、労務管理、いろいろばらつきが出るということでありますけれども、その中で、やはり、高齢者の方の雇用によらないいわゆる就業ということになってくると、労災見合い、若しくは事業場での災害に対して十分対応ができないんじゃないか。特に、私が懸念しているのは、そこで起こった事故について、本来、次は労働者が同じところで事故を起こすかもしれない、例えば、事業場内に段差があった、つまずいた、転んだ、それは、高齢者で雇用によらない措置で就業しているわけだから、労災ではないからそのまま放置というわけではなくて、やはりそこは事業者に何らかの対応を求めるべきだ、こういうふうに考えるんですけれども、その場合、リスクアセスメントをするなり、こうした事故が起こった概要をきちっと事業者が把握をし、対応する、そして労基署もそれを知るという仕組みづくりが必要なのではないか、こういうふうに思うわけですが、それについて、いかがお考えでありましょうか。
○阿部参考人 まず、委託契約であっても労働者性が認められる場合には現行の労働法でも対応されているということを御認識いただきまして、私もそのように認識しております。その上で、委託契約で労働災害が起こるというケースでございますが、これから国がどのような指針を出すかということにもかかわってまいりますが、基本的には事前に、労働災害を起こさないように、委託契約でも事前に合意しておくということが必要かと思います。それから、先ほどもありましたけれども、偽装委託といったことが横行しないように、それは今回の法が求めるものではございませんので、労働契約とみなすことにしていったらどうかというふうに個人的には考えております。以上でございます。
○岡本(充)委員 いや、労働者性があるものについては労災だとなる可能性は高いんです。しかし、企業側としては労働者性がないと考えて就業させているという中で事故が起こる、これは労災と言われないという状況になる中で、でも、事業場の改善が必要なんじゃないか、そういう意味での仕組みづくりをしていく、今の労災と同様の、監督署も把握をし、事業場にも改善を求める仕組みづくりが必要ではないかということを問うているんです。それについてのお考えについて、賛成いただけるか、それとも、それには課題があるとお考えなのか。
○阿部参考人 それにつきましては、当然私も賛成いたします。
○岡本(充)委員 ちなみに、経団連としては私の今の提案についてどう思われますか。
○正木参考人 委託の中身が、今どんなものをイメージされているかということだと思いますけれども、例えば、同じ事業場の中でということであれば、当然、ユニバーサルじゃないですけれども、同じようなものが設備なりなんなりには適用されると思います。例えば、今話題になっているギグワーカーみたいな形で、運送をお願いするというような形ですと、これは事業場の外に出てしまいますので、そこの安全というのを荷物の運搬をお願いする事業場の方ができるのかというと、それはかなり難しいんじゃないかというふうに思います。
○岡本(充)委員 いや、私が聞いているのは、事業場の中で何らかの事故が起こるというような場合には、委託だからといってその起こった事故を放置するというのは問題ではないかということについては賛成していただける、そういう理解でよろしいですか。
○正木参考人 先生のおっしゃるとおりであります。恐らく、事業場の何かの、例えば設備のふぐあいがあって事故が起こるとなると、これは労災かどうかはともかくとして、設備に何らかのふぐあいがあった、それを設置した者について責任があるというようなことじゃないかと思います。
○岡本(充)委員 ぜひそれは対応をとるということを、これから労政審の中で議論していただくことになるんだろうと思いますけれども、私は、何らかの労働者保護と通ずるような政策的な取組が必要なのではないか、こう思っているんですが、仁平参考人はどう思われますか。
○仁平参考人 先生御指摘のとおりでございます。雇用にあって非雇用にないものというのは、やはり安全等のセーフティーネットだというふうに思っております。そういう意味で、委託契約になったとしても、同じ職場で働いている者については安全配慮義務も課していただきたいと思いますし、加えて、労災があった場合については、監督署等に報告を求め、再発防止に向けた検討をしていくことが必要だというふうに考えております。
○岡本(充)委員 どういう仕組みをとるかというのは本当に課題だと思いますけれども、やはり、監督署にもそういうことがあったということがわかる取組、改善をしたということがわかる取組、これを経団連でもぜひ検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○正木参考人 改善したということがわかる取組というのがちょっとイメージできていないんですけれども、先ほども申し上げましたとおり、高齢者にとって働きやすい環境をつくらなければ高齢者の方に活躍していただけないわけで、そういったものを整備するというのがやはり今後労使合意などを結んでいく上でも重要なキーポイントになってくると思いますので、働きやすい環境をどうやってつくったらいいかというのを労使で真剣に、安全のものも含めて話し合うべきだというふうに考えております。
○岡本(充)委員 ぜひお願いします。次は、雇用保険の料率について伺いたいと思います。伊藤参考人は、現下の厳しい経済情勢の中で、この料率の国庫負担でいいのかという疑問点を先ほど呈されたと思います。そういう意味でいうと、今後の経済の状況を見ると国庫負担は定額であるべきだという御主張だと思いますが、いわゆる労使の負担については、これは今の法案では低過ぎるというふうにお考えなのか、これはこれでいいというふうにお考えなのか、そこはもう一度教えてください。
○伊藤参考人 この間、中小企業家の方々のお話も聞いておりますが、恐らく、保険料率を上げることについては相当厳しいという御意見もあると思います。私も、そこは共有すべきだと、四月以降どうなるかはわかりませんけれども、極めて厳しい雇用情勢、それから景気そのものが厳しいという状況になれば、そこで使用者負担、労使の双方の保険料率を上げるとか、そういうことは難しいであろうということは言えると思いますので、まずは、国庫負担金、ここを本則に戻すことで備えるべきだ、そういう考えであります。
○岡本(充)委員 国庫を本則に戻しても、私が想定している大きな雇用情勢の変化からすると、場合によっては足りなくなる可能性もあるのではないか、こういう懸念を持っているわけでありますけれども、その場合、労使の負担を上げることについて、それぞれ、経団連と連合さんの御意見を聞きたいと思います。
○正木参考人 今、伊藤参考人がおっしゃったように、この四月から、先ほどからもあります同一労働同一賃金のことですとか、中小企業さんはかなりいろいろ負担が上がっているわけですよね。その中で、労使の負担する保険料率を今このタイミングで上げるというのは非常に厳しいだろうというふうに思っております。我々が提言したのも、ぜひ、厳しくなったときに上げるんじゃなくて、その手前のところで少しずつ、段階的に上がるようにする方がいいという議論の中で出していたわけですけれども、事ここに及んでは、今はとても上げられないというところでありまして、それで足りなくなったらというのは、改めて財政状況を見て考えるしかないということだと思います。
○仁平参考人 ありがとうございます。現時点の雇用保険の積立金を前提に、仮に法案を、二年間に限って引下げを継続するということであれば、この積立金残高の動向をこれまで以上に注視しながら、必要に応じて一年でこの引下げ措置をやめるなどの機動的な対応も必要ではないかと思っているところでございます。仮に、本当に一年でこの積立金がかなり減るような状況であるということであれば、企業もそうですし、労働者の懐というのもかなり痛んでいるという状況ではないかと思っております。そういう意味では、労使に保険料の負担を求める前に、まず政府として、本当に非常事態であるので、一般財源というところでしっかり対応していただく、これが最初にやるべきことだというふうに考えております。
○岡本(充)委員 重ねて聞くんですけれども、経団連として、これをもし一年でやめると、今は同一労働同一賃金で厳しいけれども、政府が本則に戻す、若しくは財政出動した上でこの〇・二という数字を上げていくということについて、経団連としては、場合によってはあり得るという理解でいいのか、いやいや、この二年間はしっかり引き下げたままにしてほしいと思っているのか、最後に、もう一回だけ確認をお願いします。
○正木参考人 これはやはり財政状況によるということだと思います。まだ積立金が四・二兆ということでございますので、これで二年間本当にもたないのかどうかというのを、この後また、実際の状況を見て判断するべきだというふうに思います。
○岡本(充)委員 きょうは、貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。時間になりましたので、終わります。
○冨岡委員長代理 次に、伊佐進一君。
○伊佐委員 公明党の伊佐進一です。参考人の皆さんには、お忙しい中で足を運んでいただいて、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。早速質問に入らせていただきたいと思います。私も、冒頭はコロナ対策で、雇用との関係です。もちろん、政府も今いろいろな手を打っておりまして、資金繰りももちろん大事だと思うんですが、やはり、私、最後は、守らなきゃいけないのは雇用だというふうに思っております。つまり、雇用にまで影響してくるほど大きな影響があるのであれば、ここは単なる需給ギャップの話じゃなくて、本当に立ち直っていくのに相当時間がかかるんじゃないか、本当にリーマンのような状況になるんじゃないかというふうに思っています。だから、いかにこの雇用というものへの影響を少なくしていくかということが大事だと。これまで政府は、雇調金、雇用調整の助成金を含めて、当初は、日中間の往来が減少するような旅行業とか、こういうところに限定していたわけですが、これを拡大して、感染症の影響を受ける全ての業種に広げたということもあります。要件も緩和した。さらには、今さらなる拡大というものも議論に入っているという状況でありますが、このコロナ対策の中で、雇用問題として、雇用としてどういうことをもっとすべきか。伊藤参考人からはさっき一部お話しいただいたと思いますので、仁平参考人からもいただきたいと思います。
○仁平参考人 先生、どうもありがとうございます。我々も、先週、労働相談をさせていただいております。受け切れないくらいの相談が来ているところでございます。その中には、職場の安全衛生上の問題もありますが、同時に、やはり雇用問題についての相談もたくさん来ているところでございます。まだ数字の上では余り失業率等に反映されていないところはありますが、先行きに非常に心配は持っているところでございます。先生御指摘のとおり、雇用調整助成金、これも使い勝手をよくしていただいているというふうに思っておりますが、北海道のみならず、全国で更に、補助率なども含めて、しっかり雇用に万全を尽くす、まさにリーマンを超えるくらいの取組をぜひお願いしたいというふうに思っております。
○伊佐委員 働き方の点でもう一点なんですが、テレワークです。政府も、このコロナ対策の前からテレワークというものを多様な働き方あるいはワーク・ライフ・バランスという観点で進めてきたわけですが、後押しをしてきたわけですが、今回、こういう外的な要因で進めざるを得ないというような状況になってまいりました。結果、これで働き方改革というのがもしかすると進んでいくのかもしれませんが、ちょっと個人的に大胆な提案をして、ぜひ御意見を伺いたいなと。正木参考人と阿部参考人に伺いたいと思いますが、以前、くるみん税制というのがありました。このくるみん税制で認定を受けたら、税制優遇が受けられた。今はなくなったと思うんですが。今回、テレワークを推進するようなところに対して、テレワーク減税、法人税減税、こういうようなもので強力に後押しするというのもあるんじゃないかというふうに個人的には私は思っておるんですが、お二人の参考人の意見を伺いたいと思います。
○正木参考人 御指摘ありがとうございます。まさにいろいろな手段をとってテレワークを推進するべきだと思います。今、自治体のレベルのものも含めて、かなりいろいろな助成金等もあると思います。ただ、テレワークに関しては、例えば私どものようなところですと比較的やりやすいというところはあるんですけれども、工場の現場があるですとか、お客様へのサービスを対面でどうしてもやらなきゃいけない仕事ですとか、テレワークを導入したくても、なかなかそれだと仕事にならない現場というのもございます。そういったところ等については、では何もないのかということに対して応えていけるような形で、いろいろな制度を考えなきゃいけないなというふうに考えております。
○阿部参考人 一つの考え方としてはあるだろうとは思います。ただ、今、正木参考人も御発言なさったとおり、できる企業とできない企業というのがございます。私が所属している大学でもテレワークが可能かというと、それはちょっと難しいだろう。自宅から授業ができるかとか、あるいは千人を超えるような受講生のいる場合にどのようにテレワークを実現するかとか、いろいろな問題がありますので、その事業所、事業所の特性があるということを御認識いただきたいなというふうに思います。ありがとうございます。
○伊佐委員 ありがとうございます。それでは、法案の内容に入っていきたいと思います。実は、先ほど、午前の審議でも議論になったのが、七十歳までの就業機会確保の中で、非雇用に対する懸念というものです。業務委託契約であったりとか有償ボランティアというものが、今回、七十歳までの方々には導入されるという法案になっておりますが、この非雇用への懸念というのは、参考人の中でも何人かの方から御懸念のお示しがございました。確かに、労基法が適用されない、これで大丈夫なのか、雇用じゃなくなって大丈夫なのかという点がありました。これは私は大事な指摘だというふうに思っております。もちろん、これは労使合意というのが要件ですので、勝手にできるわけではもちろんありませんが、その上で、今御指摘いただいた課題というのは、今回のこの法案で高年齢者の就業確保措置をきっかけに発生している問題というよりは、もともとこの問題というのはあって、例えば、フリーランスの働き方をどうするのか、委託契約の方々をどうやって守るのか、あるいは、企業家のセーフティーネット、このいわゆるセーフティーネットをどうするかというのはそもそもある議論であって、ここのところは政府もこれまでも議論してきましたし、これからもしっかりと中身を詰めて、実効ある政策を打っていくべきだというふうに私も思っております。その上で、では実際のニーズがどうなのか。この新しい措置に対して、では現場ではニーズがあるかどうか、経営者側から見て、あるいは労働者の側から見てどうなのか。私は、このニーズというのは全くの空集合じゃないと思っています。実際に多様なニーズというのが現場ではあって、そのニーズについてはどうなのかという点を、正木参考人と仁平参考人に伺いたいと思います。
○正木参考人 いろいろなニーズのお話があるんですけれども、卑近な例でいいますと、私、社会保険労務士としても登録をしているんですけれども、同じ仲間に聞いてみますと、兼業、副業で開業というのをしていらっしゃる方もいる。私は、勤務等という開業できない形です。それは兼業、副業です。さらに、六十五歳以降のことを考えますと、私もできれば開業とかをしてみたいなと思うわけですけれども、いきなり開業してもお客さんがなかなかつかない。こういうときに、六十五歳から七十歳のこの新しい選択肢ができて、会社から例えば給与計算のお仕事がもらえるとかいうことになれば、まずは開業して、一人目のお客さんは自分のもといた会社だということでできますので、非常にこれはありがたいなというふうに思います。こういった、自分の夢を実現したいという方にとって、いい制度じゃないかなというふうに思っております。
○仁平参考人 ありがとうございます。実は、先ほどのレジュメの中の資料にもちょっと引用させていただいておるんですが、連合の方で、十二月、昨年の末に行いました高齢者に関するアンケート調査というのをやっておりまして、本日は持ってきておらないんですが、その中で、どれぐらいのニーズがあるのかというのも実は聞いております。その中でいいますと、基本的には、高齢者の方は、現役時代と同じ会社で働くというのが実は一番目に多い選択肢でして、フリーランスというのはおよそ一割ぐらいの方が希望されているということでございます。ただ、十二月の時点と申し上げたのは、今の時点で、やはり、コロナの問題が発生して、どれだけフリーランスというもののセーフティーネットの脆弱性があるのかといったことについて気づかれた方も多いのではないかというふうに思っておりまして、こういったもので、もうちょっと少なく見積もっておいた方がいいのではないかというふうなのが一つ思っております。それともう一つなんですが、実は、六十五歳以上の働きたい方というのはやはり一定数おりまして、なぜ働けないのかということを聞いたときに、実は自分の会社では七十歳まで働ける制度がないんですと答えられる方が多いですので、今回の高齢法でこういった七十歳までの道筋を努力義務とはいえつくっていただくということは、非常に大きな一歩ではないかと思っております。
○伊佐委員 ありがとうございます。つまり、もちろんさまざま配慮しなきゃいけない事項があって、ガイドラインみたいなものでそれを少しでも担保するというのは大事な観点だと思いますが、少なくとも、今おっしゃっていただいたのは、経営者側から見ても、あるいは働く側から見ても、ニーズはあるんだということだというふうに理解をいたしました。次に、副業、兼業の話を伺いたいと思います。副業、兼業、複数就業者の額の算定を労災保険の制度でどうするかという話を私が調べると、最初に議論したのが平成十四年で、そのときに研究会を立ち上げて議論をして、有識者の皆さんの出した結論は、しっかりと複数の仕事の賃金を合算して給付額を出すべきだと、平成十四年、十五年の段階で既にそうなっておりました。ところが、労災保険部会に、労政審に持っていったら引き続き検討となって、ずっとその間検討がなかなかされずに前に進まなかったということです。ようやく昨年の労政審で結論が出された。労政審でも相当時間がかかってきたわけですが、その中で、ちょっと阿部参考人に伺いたいと思います。今回の改正内容は、対象になるのは六十五歳以上となっています。第一歩だというふうにさっきも言及いただきましたけれども、まず、議論の中で、なぜ今回は若者を対象にしなかったのか。そもそも、もともとは若者のマルチジョブホルダーをどうするかというのが議論のスタートだったと思うんですが、なぜ若者が対象とならなかったのかということについて伺いたいと思います。
○阿部参考人 委員御指摘のとおり、今回は六十五歳以上に限定されているわけでございますが、労政審の中での議論では、全年齢にこの制度を実施するとなると、どの程度雇用保険財政に影響するか、事前になかなか予測がつかないということで、まず六十五歳以上から始めて、そこで、雇用保険財政への影響がどの程度か、それから制度設計上どのような問題があるか、これを確認した上で将来的には全年齢に制度を実施していくというのがよろしかろう、そういう議論だったと思います。
○伊佐委員 ありがとうございます。阿部参考人、もう一回確認なんですけれども、この報告書の中でもそうですし、この法案でもそうですが、施行後五年をめどに検証するということになっていると思います。つまり、五年間見てみた上で若者に対しての適用をどうしていくかということだと思いますが、もう一度、五年間どういうものを見て、こういう条件があれば若者に適用できるということになる、そういう議論があったんでしょうか。
○阿部参考人 議論がどこまで詳しく起きたかということは今すぐにお答えできませんが、まず、どの程度事故が発生するのか、それから、それはどの程度財政的な影響があるのか、それ以外にもどういった問題が起こるのか、こういったところを少し検証してみないと現段階では予測しづらいということだったと思います。
○伊佐委員 ありがとうございます。もともとの議論の発端が若者というのもありましたので、しっかりとそこは、また五年間、見させていただきたいと思います。最後に、もう一問、阿部参考人に。もう一度さっきに戻って、今回の七十歳までの就業機会確保で、六十五歳までの雇用について、最初は三つの措置というのは努力義務でした。それが義務化になった。経緯をひもとくと、平成十二年に努力義務になって、平成十六年にそれが義務化されました。今回の七十歳までの就業確保措置についても、まず第一段階として努力義務化でやりましょう、その後、第二段階をやりましょう、これが労政審の議論だったと思いますが、正木参考人からも段階的にという言及があったと思いますが、では、六十五歳までは四年かけて義務化になりましたが、今回の七十歳までのこの措置については、いずれ義務化、どれぐらいのタイムスパンで議論があったんでしょうか。
○阿部参考人 どのぐらいのタイムスパンでとか、あるいは努力義務から義務化へ移行するかといったことは、詳細には議論していないと認識しております。したがいまして、努力義務がいつ義務になるということも全く議論していないと記憶してございます。
○伊佐委員 私、時間になりました。きょういただいたさまざまな意見をしっかりと法案の審議に反映させてまいりたいと思います。ありがとうございました。
○盛山委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 宮本徹です。今回の法案は、雇用によらない働き方を六十五歳から七十歳に入れていく、ここは朝の法案審議でも質問させていただきました。仁平参考人と伊藤参考人にお伺いしますが、今、新型コロナウイルスの影響で労働相談をやられているというお話がお二人からありましたけれども、雇用によらない働き方をしている方々からはどういう相談が具体的には寄せられているんでしょうか。
○仁平参考人 先生、ありがとうございます。全国でやっているものですから十分集約はできておりませんが、フリーランスの方からも、契約を途中で打ち切られた、あるいは報酬を一方的に下げられる、特に、コロナなどについては、催物の開催がなくなったことで、やはりその分の補償がないなどの相談があろうかと思っております。全ては把握しておりませんが、重立ったものでございます。
○伊藤参考人 御質問ありがとうございます。相談事例で寄せられたもののうち、中身は仁平参考人と同じような話がありましたが、もう一つ多かったのが、政府が新しく打ち出されている制度についての質問です。今回、休校措置につきましては、フリーランスの方々にも一定の救済措置をするという情報は流れておりますけれども、まだ受け付けはされておらず、詳細も出ていないということで、その中身について聞かれることが多いです。あわせて、雇用調整助成金等で雇用労働者は救われる、雇用保険非適用の非正規の方も一般会計から、こういう話が流れる中で、雇用保険非適用のフリーランスもそれは何かあるのではないかといったような期待と質問というものも来ているところです。
○宮本委員 今回の事態で、雇用によらない働き方の脆弱性があらわれたというのを仁平参考人も先ほど述べられていましたけれども、本当に、まさにそのとおりだと思っております。それで、伊藤参考人の初めのお話の中に、従業員の過半数代表者の同意は、多くの場合、歯どめにならず、使用者の意のままの結論が導き出されてしまう傾向にあるというお話がございました。きょう朝の法案審議では、いや、これは労使合意が担保になるんだ、歯どめになるんだという答弁ばかり続いたわけですが、歯どめにはならないんだということについて、具体的にはどういう事例があるのか、述べていただけるでしょうか。
○伊藤参考人 実際には、三六協定なんというのがよく出てくるところ、議論になったところですが、特に、従業員の過半数代表者を選ぶ仕組み自体が、法的には余り厳格にはつくられていないわけですね。経営者の方々が見ている中で挙手をするだとか、社内メールで賛否を問うだとか、それをすれば、当然、使用者の目を皆意識して挙げるわけです。結局、使用者が指名した方が代表になるというケースが極めて多いです。それから、従業員懇親会ですとか、そういう方の代表が横滑りするですとか、あるいは、人事権を持つような方が自分の名前で書いて判こを押してしまう、こうした事態もよく起きているというところです。
○宮本委員 続けて伊藤参考人にお伺いしますが、企業が雇用を業務委託に切りかえる、委託契約の偽装を行っているというお話がありましたけれども、これについても、実例について詳しく教えていただけるでしょうか。
○伊藤参考人 議員はきょう午前中は業務委託についての質問もされたというふうに承知しておりますが、私が先ほど若干言及したのは、もともとは営業職で、これは布団の販売をしている営業職の方々なんですね。その方々が、そろそろ自立して頑張れですとか、あるいは、成績が振るわない場合に、もう委託契約じゃなきゃ雇わないというような圧力をかけられる中で、雇用契約を委託契約に切りかえるというところに追い込まれて働き始めた。そうしてみると、当初、労働条件、就業条件等についてそう知らされないで働いてみましたら、営業用の車のリース料を取られる、ガソリン代も取られる、そうしたことで、経費は全て自分持ちである、中にはマイナス給与なんという話もあるそうで、売上げよりも経費の方が上回ってしまう、こんなことも起きているというふうに聞いております。今、当事者たちは裁判を起こして、この経費について返金要求もしつつ、そもそもその労働者性自体についても問いたいというような闘いをしている、そうした事案であります。
○宮本委員 偽装委託、今でも雇用を業務委託に切りかえるという形で起きているわけですけれども、今度の法案ができたらそういう偽装委託が広がっていくのではないかという懸念があるんですが、この点について、これは正木参考人と仁平参考人と阿部参考人、お三方にお伺いしたいと思います。
○正木参考人 今回の法案でそうしたものが広がるという認識は持っておりません。以前、派遣法の改正のときに偽装請負というのが問題になりまして、そういったことはできないようにということで、かなり監督も厳しくなっているというふうに思いますので、先ほど御指摘が前の議員からもありましたけれども、請負あるいは業務委託に関する問題というのは今回の法案に限らず共通の問題だと思いますけれども、いずれにせよ、監督というのは、それは厳しくされるものだというふうに認識しております。
○仁平参考人 御質問ありがとうございます。雇用によらない選択肢の場合、労働関係法令による労働者保護が図られていないがゆえに、労使合意も含めてこういうフレームになっているんだろうというふうに私は思っております。その担保をとるために、我々としては、雇用でなく委託契約でなければなぜ業務ができないのかという、合理的で客観的な理由というのを労使が合意するときに文書ではっきりしておくべきではないかと思っております。その中身についても、行政に提出するなどして、後々のトラブルがないように、防止策を十分するべきだというふうに考えております。
○阿部参考人 私も、正木参考人、仁平参考人と同じような意見を持っております。今回を機に委託契約がふえるとか、あるいは雇用によらない就労形態がふえるといったことは、特に雇用から非雇用へ変わるといったことは大きくはないだろうというふうに認識しております。また、その際にさまざまな問題が生じた場合は、国が今後ガイドラインを作成するに当たって検討していく事項もあると思いますが、問題のないように、労使合意を基本としつつガイドラインを作成していったらいいんじゃないかというふうに思っております。
○宮本委員 朝、私、午前中の質疑で、東京電力のスマートメーター交換の作業をされている請負労働者の皆さん、東京電力が筆頭株主をやっている会社の一〇〇%子会社のワットライン社と請負契約を結んでいるわけですけれども、そこが今月、三月の四日に、その請負労働者の皆さんが組合をつくって団交を申し入れたのにそれに応じなかったことについて東京都の労働委員会から救済命令が出て、不当労働行為だということがなされたという問題について取り上げました。きょう、経団連の正木さんが見えていますのでお伺いしたいんですけれども、経団連加盟企業の法令遵守ということを考えた場合に、その加盟企業が業務を委託している先の法令遵守だとか、あるいは加盟企業が筆頭株主になっている企業の法令遵守に対して、経団連としてはどういう姿勢で臨まれているんでしょうか。
○正木参考人 経団連は企業行動憲章を数年前に改定したんですけれども、そのときも、サプライチェーン全体のことを考えなければいけないという話をしております。また、今ですと、下請法の話なんかも含めて、サプライチェーン全体でこういうことは考えていかなきゃいけないですよということを会員企業に呼びかけております。
○宮本委員 サプライチェーン全体で考えた場合、実際にそういう事態が起きて、不当労働行為だということで認定もされる事件が起きているんですけれども、そういう問題があった際には、経団連から改めて、何らか加盟企業に対して注意喚起だとかというのはされたりしないんでしょうか。
○正木参考人 個別の事例で何か、指導とかそういうことをできる、行政の団体じゃないものですからそういうことはないんですけれども、毎年十月の企業倫理月間のときには必ず企業倫理セミナーというものをやりまして、会員企業、皆さんに参加していただくようにしまして、時々の、最近こういう事例があったけれども、こういうのはよろしくないねとか、こういうふうにしましょうとかということをセミナーでやっております。
○宮本委員 現に起きている問題ですので、ぜひ注意深く経団連としても対応していただきたいなと思います。あと、これも経団連の正木参考人にお伺いしますが、高年齢雇用継続給付金を縮小する中身が今度の法案に入っておりますが、これは実際は多くの企業で活用されているものだと思います。そして、これがあることを前提に給料が低くなっている賃金体系のところも少なくないというふうに思うんですが、実際、高齢者の雇用継続給付金が縮小された場合は、経済団体としては、当然、賃金は引き上げていくべきだ、こういう取組をなされるということなんでしょうか。それとも、それぞれ任せということなんでしょうか。
○正木参考人 まず、高齢者の六十歳から六十五歳の状況ですけれども、定年の引上げをやる会社がまずふえております。これはやはりモチベーションを上げるためにということでございます。そうしますと、この給付金はそもそも使えなくなるということでございます。今ある制度は、現役時代の六割まで賃金を下げても、一五%、つまり七割五分まで賃金を戻せるといいますか、一五%分助成金が出るということなんですけれども、これはやはり、同一労働同一賃金の考え方からすると、何か一律に下げてもいいような形に見えるというところが問題点であると認識しております。ただ、現実に、この制度を前提に今いろいろなものが進んでおりますので、今回についてはしばらくこの形を残して、だんだん縮減という方向になったと考えております。したがいまして、今度、一五%支給なのが一〇%に縮減になるということは、当然、今、現役時代の六割に下げて、残り一五%で補填してくれよという会社がもしあったとすれば、六五%に引き上げなければ手取りが今と同じ水準が維持できませんので、そういう意味で賃金の引上げをすることが迫られるということだと思います。
○宮本委員 賃金の引上げを迫られるということで、経団連としてはそれは当然やらなければいけないという認識だと思いますが、その際の原資をどこから持ってくるのかといったときに、四十代、五十代の賃金の上がり方を抑えて持ってくるというところがあらわれないかという懸念の声もあるんですが、その点、経団連、いかがでしょう。
○正木参考人 これは、従業員のエンゲージメントをどう保つかということだと思います。恐らく、今の御指摘のような、四十代、五十代のものを削って六十代の方につけますということを普通に説明すれば、四十代、五十代の方のやる気がなくなるということにつながると思いますので、ではどういうふうにして生涯賃金をふやしていくのかとかいったことについて、労使でよく話し合って処遇を考えていくべきだと思います。
○宮本委員 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。
○盛山委員長 次に、藤田文武君。
○藤田委員 日本維新の会の藤田文武と申します。本日は、四名の参考人の皆様、お忙しいところをお越しいただきまして、ありがとうございます。早速質問に入りたいと思います。今回の改正案に複数就業者等に関するセーフティーネットの整備等が盛り込まれておるわけですけれども、少し四名の皆様に御見解をお聞きしたいところは、兼業、副業というものがそもそも労働市場にとってプラスかどうかということをお聞きしたいと思います。全世代型社会保障検討会議の中間報告の中に、思考・分析といった高度人材では副業をしている人がそうでない人よりも本業での賃金が三六%高くなっていて、これは非常に兼業、副業のよい効果であると示唆されるというような記述がありまして、これの参考資料を見ておりますと、いわゆる高度人材以外の、運動タスク、コミュニケーションタスク、思考・分析タスクと三つ領域がありまして、運動タスクは恐らく肉体労働、ブルーワーカーに近いもの、コミュニケーションタスクは恐らくサービス業を中心とした職種、こういったものが含まれて、こちらに関しては相関関係が見られず、むしろ、運動タスクに関しては明確な優位性はないけれどもちょっと下がっているというデータもあります。こういうところを見たときに、社会保障検討会議等では、兼業、副業を推進したい、兼業、副業がいいよというようなメッセージを放っているように思っているわけです。そこで、疑問点として、兼業、副業が果たして労働市場全体を見たときにプラスかどうかという疑問がございます。四名の皆様に、その点について御見解を聞かせていただけたらと思います。
○正木参考人 先ほど、社会保険労務士の友人が兼業、副業という形でやっているというお話を申し上げました。その方は、伺いますと、ふだん人事の担当で、会社の中で人事相談などをやっているんだけれども、土日に役所の労働相談窓口などで働いたりするとやはり会社の外からの視点というのもよくわかるということでしたので、そういう面でポジティブなんだろうと思います。ただ、先ほど、肉体というか運動系というふうなお話がございましたけれども、やはり、A事業所とB事業所と両方、雇用の場で働くとなりますと、これは労働時間の規制の問題があります。私どもも働き方改革に努めておりますので、働き過ぎというのは困るというふうに思っておりまして、その部分については今回の法案では未解決ということだと思います。ここは今後よく検討していかなければいけないところだと思います。
○仁平参考人 御質問ありがとうございます。実際に副業、兼業で働いている方がふえているというのは事実だと思っております。ただ、その中身がどういう人なのかということは、よく考えてみないといけないというふうに思っております。高所得の方で自分の能力を生かすために副業されているという方も一方ではいるんでしょうが、数的に言いますと、特に我々の近くにいる人たちでいきますと、細切れ雇用を組み合わせて、やむにやまれず兼業、副業をする中で生活を成り立たせている人というのもおりまして、こういう人を見るときに、今足りないのはやはりセーフティーネットの問題だというふうに思っております。そういう意味で、今回の労災保険の通算、あるいは雇用保険についても六十五歳以上から始まりますが、こういったものについてもより広く拡大していくなどなどのセーフティーネットが前進していくということは、こういった方々にとっての一つ安心材料になるかと思っております。いずれにしても、まず、ディーセントワークといいますか、一つのところでちゃんと仕事ができて生活ができるというのが本来のあり方なのではないかというふうには思いますが、こういった実態もある中での対応としては、セーフティーネットの整備が大事だというふうに思っております。
○阿部参考人 先ほど正木参考人、そして今、仁平参考人がおっしゃったとおりのことを私も考えますし、加えまして、この兼業、副業のメリットとしては、人生百年時代において長くキャリアを築く際に、一つ、今の仕事ではなくて、もう一つ仕事を持つことで、お試しのインターンシップ的な、実際にどういう仕事があるのかということを考えるきっかけにもなるかと思いますので、そういった点もメリットとしてはあるかなと思います。ただ、もちろん、だからといってやみくもにやればいいかというわけではなくて、その裏側には、やはり安全衛生管理ですとかそういったセーフティーネットも必要だろうというふうには思います。以上です。
○伊藤参考人 二点申し上げたいんですが、一つは、やはり、低賃金でやむを得ず働かざるを得ない不本意ダブルワークの方のことをきちんと考える、本業での賃金をまともにする等が大事だと思っておりまして、私どもは、全国一律の時間給、千五百円の最低賃金実現を求めて、先生方にも要請をしている次第です。もう一点は、やはり、人手不足と働き過ぎが言われる中で、副業推進ということを余り強く言うと問題があるかと思います。今回、雇用保険について、複数事業所での働き方について労働時間把握をする、週単位で、十時間、十時間であれば二十時間という時間把握をするということがシステム上可能となるようなことが検討されているわけですから、これは労基法の三十八条にかかわりますけれども、複数の事業所で働いた場合の通算を、現行の法制を守りつつ、かつ従来よりも厳格に、本人が複数の事業所で何時間働いたかを把握し、その上で、労基法の原則にのっとり、要するに、時間外を、超えた場合には割増し賃金をきちんと使用者に課すということを従来より厳格にできる技術上の基盤が整ったと考えますので、そのあたりで労働時間把握、管理をしていくべきというふうに考えています。
○藤田委員 どうもありがとうございます。今のお話をお聞きしても、労働市場全体に当てはめて兼業、副業を推進するというメッセージは、私は少し穴があるんじゃないかなというふうに思うわけであります。今、四名の皆様から、どちらかというと労働者側からの観点からお話をいただきましたが、こういう労働関係の政策を考えるときに、皆さんはすごくバランスを持ってきょうはお話をいただいて感謝しているんですけれども、労使は常に対立関係で、労働者は企業に搾取されているというようなイメージの間違った認識を持たれて、企業側と労働者側が共通価値を、相互利益を最大化させるために持てないというような観点から議論を進めるのは、私はちょっと違うなと思うわけです。だから、いわゆる企業と労働者の権利義務の関係というのは、どちらか一方に偏り過ぎると労働市場がゆがむのではないかというふうにも思います。その中で、事企業側から見たときのお話を少しさせていただきたいと思います。特に、中小企業。中小企業の従業員は労働市場の七〇%と言われておりますから、非常に重要な問題です。中小企業は赤字企業も多いですから、非常に苦しい経営環境の中、そして、全体のGDPが自然増しない経営環境の中で経営をやっておるわけでございます。その中で、昨今の状況を見てみますと、そもそも労働人口が減少し、人手不足、そして採用難、採用コストもどんどん上がっていっています。その中で、消費税の増税があり、キャッシュレスへの対応を迫られ、そしてインボイスも検討されている。同一労働同一賃金、それから、労働債権の時効期間延長は先週ここの委員会で通りましたが、それから、今回のに含まれています定年延長、兼業、副業の推進、パートを含む年金の適用拡大、最低賃金の毎年の引上げ、社会保険料の毎年の引上げと、企業側から見ると、企業の経営環境を揺さぶるような、一つ一つはそこまで大きなインパクトではないにしろ、あわせて見ると、人を雇うのがかなりしんどいというような政策が近年立て続けに打たれているわけです。これは労働者保護の観点から見ると全てプラスに働くと思いますが、労働者と企業の権利義務関係を労働市場で最適化させていくために、中小企業の負担増というのをどう捉えるかというのを、皆さんの御見解をお聞きしたいと思います。四名の皆さんにお聞きできたらと思います。
○正木参考人 おっしゃるとおりでございまして、経団連の経営労働政策特別委員会報告でも書いたんですけれども、二〇一八年度の一般労働者一人当たりの現金給与総額、継続的な賃金引上げが始まる前の二〇一三年度から比べまして四・四%ふやしたんですけれども、社会保険料負担が一〇%増となったということで、税引き前の賃金額の伸びは三・五%増にとどまっております。 そんなことで、非常にいろいろな負担がかかってきておりまして、日本商工会議所の三村会頭も、本当に何重にも負担がかかってきているんだということを訴えておられるわけでございます。 中小企業においては、賃金、それから社会保険料、さらに、もしこれで弾力条項が発動できなくなると、雇用保険料まで含めて引上げということになると、非常に負担は重たいというふうに考えます。
○仁平参考人 先生、どうもありがとうございます。我々労働組合の中では生産性三原則というのがありまして、何かと申し上げますと、これは中小、大手かかわりなくということでございますが、一つは、やはり労使で雇用の安定というのはいずれにしても守っていかなきゃいけない。その上で、生産性向上を始め、そこでしっかり労使協議をしていくということが一つあろうかと思います。技術革新の激しい中で、足元の短期的な利益のみならず、将来に向けた投資、事業計画をしっかり話し合うということが必要だと思います。三番目が、その成果については適正に、株主もそうですが、そこだけに偏らず、働く人にもきちっと還元するといったことがやはり基本になくてはいけないんだろうと思っております。足元の人手不足などを考えますと、中小企業、取引関係なども含めて厳しさがあるというのは我々の傘下の労使関係でも重々知っているところでございますが、では、それに甘んじて何もしなくていいのかということでいけば、本当に、若手、中堅含めて誰にも来ていただけないような企業になってしまうのではないか。そういう中で、やはり魅力ある企業づくりということについては、労働組合としても、これは労使関係の中でしっかりやっていく課題、取組というふうに認識しているところでございます。
○阿部参考人 さまざまな制約条件のもとでも、中小企業の中には、職場環境をよくしてこの人手不足を乗り切ろうというような企業も幾つもございます。私自身も、そういった企業にお邪魔させていただきまして、どういった取組をしているかといったことを勉強する機会もありました。そうした中で、やはり企業経営の中ではよい職場環境、労使関係というのが非常に大事ですので、そうした取組もお願いしつつ、行政もさまざまな補助金を準備しておりますので、それをうまく活用してよりよい職場環境をつくるといったことをしていただければいいかなと思います。もちろん、経営が苦しいということは重々承知しておりますが、その中で創意工夫を図っていくというのがこれまで日本の労使関係で取り組まれてきたことだろうと思いますので、そうしたことを今後ともお願いしたいなというふうに思っていますし、また、そうしたいい経営をしている企業に行政が支援をしていくということを拡充する必要性はあるかと思います。以上でございます。
○伊藤参考人 御質問ありがとうございます。全労連も、労使関係を対立的に見てというのではなくて、健全な労使関係のもと、それがあることこそが事業の健全な発展だということで、各加盟労働組合は努力をしているところであります。先生のお話の中小企業の苦しさですが、これを見る場合に、労使、要するに、労を優遇し過ぎて苦しくなっている、そういう社会保障制度があるということではなくて、私はむしろ、大企業、中小企業関係、要するに公正取引ルール、この弱さからきているのではないかというふうに思います。最近、政府の方でも過剰な内部留保というお話がありますが、多くは、下請中小企業について話を聞きますと、この間、相次ぐ原価低減ですとかさまざまな制約がある中でほぼ利益を持っていかれてしまうんだ、このような社長の述懐をよく聞くところであります。私は、そうしたことについても目くばせをした上での中小企業関係というものをちょっと議論していただいてはどうかというふうに思う次第です。ありがとうございました。
○藤田委員 時間になりましたので、終わらせていただきます。本当にきょうはありがとうございました。
○盛山委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。