2020年5月11日 衆院予算委員会 「緊急事態宣言」延長集中審議 派遣切りストップ 授業料減額 検察庁法断念を 

 宮本氏は、派遣労働者の解雇・雇い止めが相次いでいる問題を取り上げ、「店舗での試食販売がなくなり、収入がなくなった。家賃も払えない」「6月末までの契約が中止となり、休業補償はないと言われた」など、全国の労働組合に寄せられた実態を紹介。政府による実態調査を求めました。
 さらに、「政府は業界団体や経団連に雇用維持の要請書を出しただけだ。全国約3万8000の派遣事業所で業界団体に加盟しているのは914社だけで、要請は全く届いていない」と批判しました。
 宮本氏は、2015年の派遣法改正時に安倍晋三首相が「雇用の安定は着実に強化される」「雇用安定措置を講じない派遣元には厳正な指導等を行う」と答弁したと指摘。今回のコロナ危機では「雇用を守り抜く」と繰り返しているとして、「そう言うのならば、派遣業者に対し、雇用調整助成金を使って雇用を維持し、生活できる水準の休業手当を支払うよう協力に事前に指導するべきだ」と迫りました。併せて、雇調金の前払い支給を求めました。
 安倍首相は、雇調金の「事後チェックの導入も含め、手続きの簡略化を指示している」「業界団体等を通じて雇調金の活用を強く要請したい」と述べました。
 宮本氏は、経済的に打撃を受け大学構内の設備を利用できない学生への支援も求め、「授業料を半額に減額し、国が大学・専門学校に補填すべきだ」と主張しました。

以上2020年5月12日付赤旗日刊紙より抜粋

≪第201回2020年5月11日衆院予算委員会第22号 議事録≫

○棚橋委員長 これにて枝野君、玉木君、川内君、後藤君の質疑は終了いたしました。次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。まず、学生への支援について私もお伺いしたいと思います。学生団体の調査では、学生の五人に一人が大学をやめるとお答えになっていて、大変深刻な事態であります。野党は、けさ、授業料の半額、そして最大二十万円の給付の法案を出しました。与党からも、窮した学生に十万円という提案が出てまいりました。一月前に私が学生への支援を求めた際の総理の答弁は、緊急小口貸付けがあるというものでしたから、給付、与党から出てきているのは大変前進だと思っております。しかし、これだけでは不十分です。今大学をやめる話が出てくるのは、そもそも授業料が余りにも高過ぎる、この問題があります。私立大学の授業料は平均九十万円、フランスは二万三千円です。今、学生の中では、授業料の一律半額を求める署名運動が広がっております。総理、国が大学、専門学校に補填をして、授業料を半額に減額すべきじゃありませんか。
○安倍内閣総理大臣 まず、この状況の中においても、子供たちの学びの機会が奪われることがあってはならないと考えておりまして、現在のこの状況の中で生活に窮した学生に対しては、先月スタートした高等教育の無償化の枠組みの中で、入学金や授業料のみならず、家賃支出なども加味した学生生活の費用をカバーするために、返済不要の十分な給付型奨学金を支給するとともに、感染拡大などの影響を受けて家計が急変した場合は、それを反映した所得を見込んで支援の対象とすることとしております。さらに、入学金や授業料の納付が困難な学生には納付猶予や減免等を行うよう大学等に対して要請を行うとともに、そうした場合における助成措置を国として講じることとしております。また、四月末の時点において、ほとんど全ての大学が、学費が未納の学生についてもそのまま在籍を認める措置を講じているところであります。しかし、それだけでは直ちに対応が困難な経済的に厳しい状況にあるアルバイト学生への支援については、与党においても検討いただいているところでございまして、政府としては、そうした議論も踏まえまして、学業の継続に支障が生じることのないように、野党の皆さんの御意見も伺いながら、早急に検討を進め、速やかな追加的な対策を講じていきたいと考えております。
○宮本委員 修学支援法の対象が狭いから、大学をやめるという話が今出てきているわけですよ。そして、大学が授業料減免をやったらそこに幾らか助成すると言いますけれども、これは、大学の責任じゃなくて国の責任で本来私はやらなきゃいけない話だと思いますよ。そして、今、学生に聞きますと、大学はオンライン授業だということになっているはずなんですけれども、実際は、実験も実技もできない、図書館は閉館で、ゼミの調べ物もできない、オンライン講義は回線がぶつぶつ切れる、家族でパソコンを共有している、しかも、オンライン講義ではなく、毎回参考文献を読んでレポートを出すだけという先生も少なくないという話であります。こういう中で、私は、通常の授業料を求めること自体が筋違いだと思っています。後ろに加藤大臣がいらっしゃいますけれども、保育園は、登園自粛要請をしておりますが、保育料については政府の方針で、利用しなかった負担分を日割りで全部返還をしているわけであります。鉄道会社も、定期券、使わなかった分を日割りで返しているわけであります。政府、自治体の自粛要請で大学が利用できないんだから、政府の責任で授業料を減額するのは私は当たり前の話だと思いますが、総理、そう思われませんか。
○萩生田国務大臣 先生、学生の立場に立てば、そういう学生の皆さんが不安や不満を思われるという気持ちは私もよく理解できます。入学した大学のキャンパスに行ったこともない、図書館も利用したことがない、しかし、施設利用料は払えと言われて、既に納めている、あるいは、納めなければもしかしたら退学の危機に追い込まれるんじゃないか、こういう心理的不安を解消するために、延納策は、ほぼ、九八%を超える大学で取組をさせていただいたことを先ほど総理も答弁されたところでございます。中には、オンラインで十分な充実した授業をやっている、またそのための設備投資をしている学校もあります。私、大事なのは、既に入学している学生に対しての説明というのは、まず一義的には大学がきちんと納得するようにしていただく必要があるんじゃないかと思います。もちろん、こういう事態ですから、学校側も大変苦労していて、さまざまな対応をしていますので、できる支援はこれからさまざま考えていきたいと思いますけれども、国の責任で直ちに授業料を半額にせよというのは、ちょっと私は順序が違うんじゃないか、大学としても努力をしていただく中で、ともに伴走しながら、学生の皆さんが修学が続けられる環境というのを守っていきたい、そう思っているところでございます。
○宮本委員 順序が逆なのは今の萩生田大臣の答弁だと思いますよ。国の要請で、大学は、開かないということで、登校しないということをやっているわけです。だから、国の責任で保育料は日割りで返しているわけですよ。なぜ、保育料は返せて、大学の授業料は国の責任で返せないのか。全く私は筋が通っていないというふうに思います。学ぶ権利は基本的人権であります。それを保障する責任は政治にあります。そして、ここまで高い授業料をつくり出したのは歴代自民党政権の責任でありますから、私は、授業料半額、しっかりしていくことを強く求めておきたいと思います。次の問題に移ります。きょうは、派遣労働者の問題について取り上げたいと思います。全国で、労働組合に悲鳴が寄せられております。試食販売の派遣の方、店舗での試食販売がなくなり、収入がなくなった、家賃も払えない状況だ。ホテルで働く派遣の方、六月末までの契約だったが、派遣が中止となり、休業補償はないと言われた。ホンダと取引する宮城の自動車部品工場では、四月半ばに突然派遣労働者が中途解雇され、次の派遣先を紹介してほしいと派遣会社に頼んだが、紹介できるところがないと断られた。私自身も、先日、ある大手旅行会社で働く派遣の方に話を伺いました。それまでは三カ月契約を反復していたのが二カ月契約とされ、五月末で、ここで一斉に雇いどめだ、こういう通告を受けている、そして、先が見えない状況に置かれているという話でありました。週末、派遣ユニオンの方にお話を伺いましたら、無給休業で多くの人が苦しんでいる、そして、ここに来て派遣切り、雇いどめの相談がふえてきたという話であります。総理にお伺いしたいんですけれども、こうした派遣の実態というのはつかんでいらっしゃるんでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 お尋ねの派遣労働者についても、既に、経済団体や派遣事業者団体等を通じて企業の皆様に対して、解雇、雇いどめ等を防止するため、雇用調整助成金の活用を促すなど、最大限の経営努力を行うこと等をお願いしてきています。その上で、離職や廃業によって住居を失うおそれのある方等に対しては住居確保給付金を支給し、安定した住まいの確保を図るとともに、仕事が減るなどにより収入が減少し、生活に困窮されている方に対しては、八十万円までの、返済免除、返済をしなくてもいいという特典もついている、それも可能な小口資金の貸付けを進めています。政府としては、引き続き、雇用調整助成金等によって雇用の維持に全力で取り組むとともに、重層的なセーフティーネットによってしっかりと生活の下支えをしていく考えでございます。
○宮本委員 私は実態をつかんでいるのかと聞いたんですけれども、実態についてのお話が何もなかったんですけれども、恐らくまともな調査もやっていないんじゃないかと思いますが。先ほど、経済団体などに要請書を出しているという話で、私もそれを見させていただきましたけれども、派遣会社に対して二回、あと、経団連だとかに対して一回、雇用を確保してほしいという要請書を出したということなんですけれども、これは業界団体に出しているだけなんですよね、紙ぺらを、はっきり言って。しかも、派遣の事業所は、全国で三万八千百二十八事業所あります。しかし、この要請書を出した業界団体に加盟しているのは、そのうち九百十四社だけなんですよ。全体には政府の要請は全く届いていない。これが実態なんですよね。だから、私が初めに述べたような派遣切り、雇いどめの事態がどんどんどんどん起きているわけであります。二〇一五年に派遣法が改正されました。派遣元に雇用安定措置を義務づけました。この雇用安定措置には、かわりの派遣先を探す、派遣元が雇用を維持しながら教育訓練を行うことも入っております。法改正の際、野党が不安定雇用の恒久化、こう批判したのに対して、安倍総理はこう答弁しているんですよ。派遣で働く方の雇用の安定は現行より確実に強化される、雇用安定措置を講じない派遣元に対しては厳正な指導等を行い、義務の履行をしっかりと確保していく、こうおっしゃっていたんですね。総理の答弁だから総理に答えていただきたいんですが、この紙ぺらを出す以外にどういう厳正な指導を政府としてやっていらっしゃったんですか。
○加藤国務大臣 まず、把握をしていないというお話がありましたけれども、労働局を通じて、例えば解雇等見込み労働者で労働者派遣、これは事業でありますので、この中には内勤の社員も入っておりますけれども、そういった方が三百九名おられる。また、雇用調整の可能性がある事業所としては、労働者派遣業の事業所が二百六十七事業所ある。こういった把握もさせていただいたり、あるいは大手の派遣会社でありますけれども、これは雇調金の関係ですが、どういう申請状況かというのは都度都度調べさせていただいて、把握に努力をしているところであります。今お話がありました雇用安定措置については、労働者派遣法に基づき、派遣元事業主が、派遣労働者の雇用の安定を図るため、同一の派遣先への派遣就業見込みが三年である派遣労働者に対して派遣先への直接雇用の依頼等の措置を講ずることを義務づけている、一年を超える場合には努力義務になっていることは委員御承知のとおりであります。派遣労働者の解雇や雇いどめの事案を把握した場合は、都道府県労働局において、派遣元事業主が雇用安定措置の対象となる労働者に対してその義務を果たしているかを確認し、違反が認められる場合には是正の指導を行う、こういうことにしているところであります。引き続き、今回の状況の中で、派遣の労働者の方々、特に、契約更新から考えると、七月一日更新に向けた五月の契約交渉が行われていく、こういったところをしっかり注視しながら必要な対応を行っていきたいと思います。
○宮本委員 実態をつかんでいると言って三百九名ですか。そんな規模じゃないですよ。労働組合の皆さんのところに相談に来ているだけでも、はるかに大きな規模の派遣切り、雇いどめというのがやられております。今、リーマン・ショックのとき以上の大量の派遣切りになるかもわからないということが、多くの方が懸念して、指摘されている状況があるわけであります。総理、必ず雇用を守り抜くと、総理はよくコロナ対策でこの間おっしゃっておられます。そう言うのであれば、派遣会社に対して、雇用調整助成金を使って雇用を維持して、生活できる水準の休業手当を支払うように、強力に、前もって事前に指導していく、こういう取組が必要になるんじゃないですか。
○加藤国務大臣 委員御指摘のように、こうした派遣労働者の雇用の維持のためにも雇用調整助成金を積極的に活用していただくことが重要だ、こう考えておりますので、我々としては、さらに、こうした雇用調整金の活用について業界関係に対して重ねて要請等を行っていきたいと思います。
○宮本委員 ですから、業界への要請だと届かないわけですよ。派遣会社というのは、許可されているわけですよね、今は。一定の資本金がなければ派遣会社というのは今は認められない、資産がなければ認められないということにもなって、体力が全くない派遣会社はないわけであります。一方、ただ、派遣会社自体は派遣先から仕事がなければ収入が全くないという特殊なところでありますから、ぜひ、政府自身が実態調査を行ってほしいんですよね。これから雇いどめになる予定の契約がどれだけあるのか、それをつかんで早急に指導していく。あわせて、雇用調整助成金の仕組みも抜本的に改めて、これだけ雇いどめがある、雇いどめになるというか、放っておいたら契約が終わってしまうというのがあるんだったら、それを続けてもらうために雇用調整助成金を前払いで支給していく、こういう改善も図って、しっかり雇用を守っていく必要があると思いますが、総理、総理が必ず雇用を守ると言っているんですから、やってください。
○安倍内閣総理大臣 雇用調整助成金がより迅速に支給されるように、事後チェックの導入も含めて、厚生労働省において手続の簡略化を図るように指示をしているところであります。また、上限額の引上げについては今まさに与野党で御議論をいただいているところなんだろうと思いますし、また、いわば雇いどめ、派遣切り等についての今御指摘もございました。先ほど厚労大臣から答弁をさせていただいたように、しっかりと、我々としては、業界団体等を通じて、解雇、雇いどめを防止するため、雇用調整助成金の活用を促すように、強く我々も要請をしていきたい、お願いをしていきたいと思います。
○宮本委員 お願いじゃなくて、総理のもともとの答弁は、厳正に指導していくというのが派遣法改正のときの答弁ですからね。お願いベースじゃなくて、ちゃんと雇用安定の措置の義務を果たす、努力義務を果たせということで、本当にしっかりと指導して、雇用を守るために力を尽くしていただきたいというふうに思います。ほかにも取り上げたい問題があったんですけれども、朝からの議論を聞いていまして、私もちょっとお伺いしたい問題があります。枝野さん、後藤さんからも質問がありましたけれども、検察庁法の問題であります。この週末に、検察庁法改正案に抗議します、このハッシュタグをつけて、ツイッター上でデモが行われました。この週末二日間で約五百万のツイート、キョンキョンやきゃりーぱみゅぱみゅ、あるいは西郷輝彦さん、浅野忠信さん、いきものがかりの水野良樹さんなど、著名な方々、芸能人の皆さんも多数が参加されておられました。時の総理をも起訴することができるのが、検察官の職務であります。だからこそ、政治的中立性と独立性が不可欠であります。ところが、安倍政権はこの間、これまでの法解釈をひっくり返して、黒川氏の勤務延長を閣議決定いたしました。さらに、今度は法改正までして、政権の判断で検察幹部の勤務延長ができ、時の政権が恒常的に検察官人事に介入できる仕組みを制度化しようとしております。私、はっきり言って、三権分立を揺るがす独裁者の発想だと言わなければならないと思っております。演出家の宮本亜門さんは、ツイートの中で、このコロナ禍の中、集中すべきは人の命、どう見ても民主主義とはかけ離れた法案を強引に決めることは、日本にとって悲劇です、こうツイートされています。俳優の井浦新さんは、こうツイートされています。もうこれ以上、保身のために都合よく法律も政治もねじ曲げないでください、この国を壊さないでください、こうツイートされております。国民みんなで自粛をして、新型コロナと戦っているさなかに、みずからの権力を守るために悪法を押し通す火事場泥棒だと国民に映っているわけであります。総理、この国民の怒り、どう受けとめていますか。
○安倍内閣総理大臣 検察官も一般職の国家公務員であり、国家公務員法の勤務延長に関する規定が適用されるとの今回の解釈変更は、検察庁法を所管する法務省において適切に行ったものと承知をしております。その上で、今般の国家公務員法等の改正法案の趣旨、目的は、高齢期の職員の豊富な知識、経験等を最大限に活用する点などにあるところ、検察庁法の改正部分の趣旨、目的もこれと同じであります。また、今回の法改正においては、検察官の定年延長に当たって、その要件となる事由を事前に明確化することとしており、内閣の恣意的な人事が今後行われるといった御懸念は全く当たらないということをはっきりと申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)
○棚橋委員長 御静粛にお願いいたします。与野党とも御静粛に。
○宮本委員 いや、国家公務員並びにしちゃだめなんですよね。国家公務員と区別をして、政治が、時の政権が人事に介入できないように今まで検察官の仕組みはやってきたわけですよ、定年延長の制度を。そこになぜ手をつけて、検察官の人事にまで時の政権が介入できるようにしようというんですか。私は、先ほど総理にお伺いしたのは、これだけたくさんの方がツイッターで、著名人の方まで含めて、市民、国民が意思表示したのはかつてない事態ですよ、これをどう受けとめているのかということを伺っているんですよ。その点を答えてください。(発言する者あり)
○棚橋委員長 御静粛にお願いいたします。
○安倍内閣総理大臣 先ほど答弁したとおりであります。(発言する者あり)
○棚橋委員長 まず御静粛に。与野党ともに御静粛に。宮本徹君、恐縮ですが、申合せの時間が来ております。手短にお願いします。
○宮本委員 全く国民の怒りに応えていない、国民の声に耳を傾けるつもりもない、そういう姿勢に、国民はますます今度の検察庁法を通そうということに危惧を持つと思いますよ。検察庁法の改正案は撤回すべきだということを強く申し上げて、質問を終わります。
○棚橋委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。