2020年5月12日衆院本会議 社会福祉法関連3法案と、野党共同提案 本会議で質問 特別手当求める

 日本共産党と、立憲民主党や国民民主党などの共同会派が提出した介護・障害者福祉職員の処遇改善法案など3法案と、政府提出の社会福祉法改定案が12日の衆院本会議で審議入りしました。共産党の宮本徹議員が質疑し、高橋千鶴子議員が提出者として答弁に立ちました。
 宮本氏は、「コロナ禍で、自助 ・共助を優先して国の責任を回避してきたひずみ、介護・社会福祉基盤の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになっている。最たるものが、介護・障害者福祉の人手不足だ」と指摘。政府の処遇改善策には要件が多く、職員全体の賃上げにつながっていかないとして、「国費の直接投入で介護・福祉職員全体の賃上げをはかるべきだ」と提起しました。
 高橋氏は、政府の処遇改善策では、現場で重要な役割を果たしているケアマネージャーが対象外だと批判。「野党案はケアマネを含め現場の介護職員、管理部門の職員全体を対象とする。平均賃金を1人当たり月1万円上昇させることを提起し、賃上げした事業者に全額国費で助成金を支給する」と述べました。
 安倍晋三首相は、「現場の状況を踏まえて必要な支援をする」と述べるだけでした。
 宮本氏は、「現行制度では、基盤整備や処遇改善をすれば保険料・利用料にはね返る。介護保険の国庫負担割合を大幅に増やすべきだ」と主張。「来年の介護報酬改定で負担増はするべきでない。食事加算、送迎加算の廃止・縮小は絶対してはならない」と強調しました。
 さらに、新型コロナウイルス感染拡大で大幅減収となっている医療機関への補償と、医療・介護・障害者福祉従事者への危険手当支給を強く求めました。

以上2020年5月13日付赤旗日刊紙より抜粋  

≪第201回2020年5月12日衆院本会議第23号 議事録≫

○議長(大島理森君) 宮本徹君。
〔宮本徹君登壇〕
○宮本徹君 日本共産党の宮本徹です。(拍手)冒頭、二点お伺いいたします。総理、検察庁法改正案への抗議がなぜ大きく広がっているとお考えですか。時の権力をそんたくする検察にしては絶対ならないからです。民主主義の根幹を揺るがす大問題だからであります。法改正で恣意的な人事は行われないと言いますが、これまでの法解釈を変えて恣意的な検察人事を行ったのは総理御自身ではありませんか。審議の強行、あすの採決強行など、到底許すわけにはまいりません。検察庁法改正案は撤回すべきであります。総理の最初の自粛要請から二カ月半。補償がおくれる中、国民からは悲痛な声が上がっております。支援から抜け落ちる人をつくっては絶対になりません。十二月途中に開業したカレー屋さん、売上げが激減し、テークアウトも頑張っていますが、給付金の対象外です。新規事業者、開業者も支援の対象にすべきであります。家賃が数百万円のミニシアターなども、文化芸術支援として大胆に支援する必要があります。必要な事業者に必要な規模で支援することを約束していただきたいと思います。多くの一人親家庭は深刻な状況です。児童扶養手当は倍増すべきであります。収入を失い、困窮した人に、十万円一度の給付では全く足りません。生活保護も、日弁連会長声明のように、資産要件を抜本的に緩和するコロナ特例を設けるべきではありませんか。また、労働基準法違反の無給休業は厳しく是正すべきであります。雇用を守るために、雇用調整助成金は、上限を二倍に引き上げると同時に、事後審査による前払いへと仕組みを抜本的に見直すべきであります。昨日、総理は、事後チェックの導入と答弁しましたが、それでどれだけ支給は早くなるのですか。緊急事態宣言の延長の大きな理由とされたのが、医療体制の逼迫です。収束まで感染拡大の波を繰り返します。少な過ぎるICUの整備、ECMOの整備と訓練など、重症患者を治療する体制を目標を持って拡充すべきであります。中等症の病床、軽症者の療養施設も、ゆとりを持って確保すべきです。早期発見、早期隔離のために、抗原検査、PCR検査体制の拡充が必要です。新型コロナ対策の中、減収が十億円を大きく超える病院も出ています。病院の減収の補償を急ぐべきです。感染リスクの中、家族を感染させないために、私生活を犠牲にしている医療関係者も少なくありません。新型コロナ対策に当たる医療従事者に危険手当を国の責任で出すべきではありませんか。ドイツでは、高齢者施設の介護職の皆さんに特別手当の支給を決めました。総理、利用者のために感染症と闘う介護、福祉職場の皆さんに、国の責任で特別手当を支給すべきであります。次に、社会福祉法等改定案及び野党提案について質問いたします。総理、コロナ禍の中で、この間、自助、共助を優先し、国の責任を回避してきたひずみ、介護、社会福祉の基盤の脆弱さが浮き彫りになっているのではありませんか。その最たるものが、介護、障害者福祉の人手不足です。とりわけ、通所介護を使えなくなった利用者の新たな訪問介護のヘルパー確保は困難をきわめています。確保のための緊急策を検討すべきです。マスク、手袋、消毒液、ガウン、非接触型体温計なども、国の責任で安定的に供給すべきであります。慢性的な人手不足のもと、特養ホームなどの施設介護では、ベッドはあいているのに入所者を受け入れられない事態もあります。ケアマネ不足も深刻です。人材確保のために、介護、障害者福祉のさらなる処遇改善は急務であります。政府は処遇改善加算を行ってきたと言いますが、さまざまな要件を課しているために、職員全体の賃上げにはつながっていません。国費の直接投入による介護、福祉職員全体の賃金引上げを図るべきではありませんか。安倍首相は、介護離職ゼロを掲げ、二〇二〇年代初頭までに、特別養護老人ホームの整備を進め、待機者をなくすと表明しました。二〇一九年度、特養ホームの待機者は約二十九万人。総理、必要な整備、介護離職ゼロはいつ達成できるのですか。法案にも入れられた有料老人ホームやサービスつき高齢者住宅は、平均でも月額二十二万八千円もします。国民年金の平均は五・五万円、女性の年金の平均は十・三万円。とても利用できるものではありません。国の責任で、待機者解消の計画を策定し、特養ホームの抜本的増設を行うべきではありませんか。人手不足の中、人材紹介会社の紹介料、派遣料がはね上がり、介護事業所の重い負担となっています。紹介料の上限規制を行うべきではありませんか。基盤整備や処遇改善を行えば、保険料、利用料にはね返るのが現在の仕組みです。既に保険料は全国平均で月五千五百円、二〇二五年には月八千百円に引き上がる見込みです。保険料、利用料の高騰を抑えながら制度の充実を図り、持続可能な制度にするため、介護保険の国庫負担割合を大幅にふやすべきではありませんか。最後に、来年度の介護報酬改定で補足給付の見直しが行われようとしており、利用者の不安を招いています。利用料の増大によって、介護を必要とする高齢者を制度からますます遠ざける見直しは、行うべきではありません。また、前回の障害者福祉の報酬改定では、食事提供加算の廃止が狙われ、当事者の声と超党派の取組で阻止をしました。食事提供加算、送迎加算の廃止、縮小は絶対してはならないと申し上げ、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 宮本議員にお答えいたします。検察庁法の改正案についてお尋ねがありました。検察官も一般職の国家公務員であり、検察庁法を所管する法務省において、一般法たる国家公務員法の勤務延長に関する規定が検察官にも適用されると解釈することとしたところです。その上で、黒川検事長については、検察庁の業務遂行上の必要性に基づき、検察庁を所管する法務大臣からの閣議請議により閣議決定され、引き続き勤務させることとしたものであり、私が恣意的な人事を行ったとの御指摘は全く当たりません。法案審議のスケジュール等については国会でお決めいただくことでありますが、今回の国家公務員法と検察庁法の改正については、高齢期の職員の豊富な知識、経験等を最大限に活用する等の同一の趣旨、目的が認められるところであり、一つの法案として束ねた上で御審議いただくことが適切であると承知しております。なお、インターネット上のさまざまな御意見に対して政府としてコメントすることは差し控えますが、今般の検察庁法改正案は検察官の独立性を害するものではなく、国民の皆様の御理解が深まるように、引き続き丁寧な説明に努めてまいります。事業者への支援についてお尋ねがありました。持続化給付金については、新規事業者についても、昨年創業した方については、前年同月との売上高の比較ができない場合も含め支援対象とするなど、柔軟な対応を行っています。その上で、創業間もない事業者に対しても、持続化補助金の特別枠の対象とすることで、テークアウトを実施するために必要な投資や販路開拓などを広く支援してまいります。持続化給付金の額については、固定費である地代、家賃などの平均六カ月分に相当する金額を参考に、その負担を軽減する観点から、中堅・中小企業には二百万円、フリーランスを含む個人事業者には百万円を上限に給付することとしたところです。多くの事業者の皆さんがあすの支払いにも御苦労をしておられる中で、最も重要なことはスピード感であると考えております。今回、補正予算成立の翌日、五月一日から受け付けを開始しましたが、一週間後の五月八日から入金をスタートしたところです。まずは、この使い道が自由な現金を一日も早くお手元にお届けできるよう、今後とも全力を尽くす考えであります。厳しい状況にある方々への支援についてお尋ねがありました。一人親家庭に対しては、八十万円までの、返済免除も可能な緊急小口資金等の特例貸付制度を実施するほか、緊急経済対策で、一人当たり十万円の特別定額給付金や子供一人当たり一万円の一時金により、支援を行ってまいります。生活保護制度については、資産、能力、その他あらゆるものを活用いただくという基本原理は維持しつつ、現下の状況を踏まえた運用の弾力化等により速やかな保護決定を促してまいります。労働基準法に違反するおそれのある休業手当の不払い事案を把握した場合には、労働基準監督署が監督指導を行い、休業手当の支払いの徹底を図っていきます。雇用調整助成金がより迅速に支給されるよう、事後チェックの導入も含め、厚生労働省において手続の簡略化を進めているところであり、支給まで従前二カ月を要していたものを最速二週間程度まで短縮することを目指しています。また、上限額の引上げについては、与野党での御議論も踏まえ、政府としてもしっかりと検討し、早急に具体化してまいります。あらゆる政策を総動員し、厳しい状況にある方々を徹底的に下支えし、雇用と生活を守り抜いてまいります。医療提供体制の確保等についてお尋ねがありました。重症者対策を中心として医療提供体制を強化していくため、既存の医療機関の病床を重症者の入院に重点化していくとともに、個人防護具等の整備など、都道府県が必要な医療提供体制を構築していくため、しっかりと支援を行っていきます。ICU等については、適切な国際比較によれば、欧州の主要国を上回る整備水準となっているところであり、ECMOについては、現在、新型コロナウイルス感染症の治療に全国で三十台程度が稼働しており、このほか九百台以上のあきがあります。加えて、専門人材の養成も実施しているところです。また、現在、約五千六百名の入院患者に対して、医療機関と調整の上、既に三万床を確保できる見込みであり、今後の感染者の変動にも対応できる体制を整備しています。加えて、軽症者等の受入れ可能な宿泊施設は、現在、九百室程度が使用されていますが、全国で約一万六千室が確保されております。PCR検査については、特に大都市部を中心に、検体採取を行う人員や拠点も限られる中で、更に効率的に実施することが必要であると考えており、PCR検査センターを設置し、地域の医師会等へ委託する形で運営することや、歯科医師にも検体採取に御協力をいただくことなどの取組を推進することにより、検査拠点の確保を図っていくこととしています。加えて、現行のインフルエンザ検査と同様な形で迅速な結果判定が可能な抗原検査も有用であると考えており、あすにも薬事承認の予定です。経営に影響が出ている医療機関への支援も重要です。今般の緊急経済対策において、無利子無担保を内容とする経営資金融資による支援を行い、経営が厳しい医療法人や個人診療所に対しては、今般の持続化給付金の対象とした上で、医療法人は二百万円、個人診療所は百万円を上限に現金給付を行うこととしているところですが、さらに、医療機関の資金繰り支援の観点から、各種支援策の実施状況を踏まえつつ、どのような対応ができるか検討してまいります。また、感染症の患者に直接向き合う医療従事者の皆様に危険手当として四千円相当が支給されることを念頭に、人員配置に応じた診療報酬の引上げなどを行っており、介護職員についても、危険手当の支給を含む職員の確保に関する費用などのかかり増し経費について全額公費で助成を行うこととしています。引き続き、こうした方々に対する手当の支給等について、必要な支援を検討してまいります。介護、障害者福祉の人手、物資確保と処遇改善についてお尋ねがありました。新型コロナウイルス感染症の影響により通所系の事業所が休業した場合は、ケアマネジャー等により、必要な代替サービスの確保が行われるよう周知等を徹底してまいります。また、事業者に対しては、一時的に人員の基準を満たすことができない場合にも報酬を減額しない等の特例を設けるとともに、休業要請を受けた事業所等が感染予防を図りながらサービス提供を継続するため、介護職員の確保に関する費用などのかかり増し経費について全額公費で助成を行うこととしています。さらに、マスク等の衛生用品については、布マスクの配布や消毒用エタノールの優先供給に加え、都道府県がガウン等を購入する際にはその費用を補助の対象とするなど、国として必要な支援をしっかりと行ってまいります。職員の処遇改善については、昨年十月から、介護報酬において満年度で公費一千億円、障害福祉サービス等報酬において満年度で公費四百五十億円を投じ、月額最大八万円のさらなる処遇改善を実施しており、この取得を促すことで確実な賃金改善につなげてまいります。引き続き、現場の状況も踏まえながら、機動的に必要な支援を講じてまいります。介護離職や介護施設の整備についてお尋ねがありました。介護離職ゼロという目標の達成に向けて、二〇二〇年代初頭までに、特別養護老人ホームを含めた五十万人分の介護の受皿の整備、介護職員の処遇改善を含む介護人材確保対策、仕事と介護の両立支援などを総合的に進めているところです。特別養護老人ホームを始めとする介護施設の整備は、三年ごとの介護保険事業計画に沿って各自治体が進めており、国としても施設整備や開設準備の費用に対する支援を行ってまいります。介護、障害者福祉の報酬改定等についてお尋ねがありました。紹介手数料の水準については、労働市場の需給の状況に応じて変動し、また、求人の内容に応じてさまざまであるため、一律に上限を設けることについては慎重な検討が必要であると考えています。その上で、民間の職業紹介事業者について、手数料等の情報開示を義務づけるとともに、法律や指針に適合する宣言を行った事業者のリストを公表するなど、利用者が安心して選択できるように環境整備を進めているところです。介護保険については、高齢化が進展する中で、必要なサービスが適切に提供されるとともに、保険料、公費、利用者負担の適切な組合せにより、制度の持続可能性を確保していくことが重要であり、低所得の高齢者の方々には、消費税財源を活用し、保険料軽減を実施しております。また、介護施設における食費や居住費への助成について、現行制度においては、年金収入の水準いかんによって助成額に大きな差異が生じる場合もあり、社会保障審議会において、こうした年金収入段階ごとの助成額の差をなだらかにする見直し案が検討されているものと承知しております。引き続き、厚生労働省において検討を進め、二〇二一年度からの次期介護保険計画期間が始まるまでの間に成案を得ることとしております。障害者サービスの食事提供体制加算や送迎加算については、昨年度実施した実態調査の結果や関係団体へのヒアリングを踏まえ、次期障害福祉サービス等報酬改定に向けて丁寧に議論を行ってまいります。(拍手)
〔高橋千鶴子君登壇〕
○高橋千鶴子君 宮本徹議員より、介護、障害者福祉のさらなる処遇改善の必要性についてお尋ねがありました。介護の社会化を目指して介護保険制度がつくられ、二十年がたちました。しかしながら、利用者がふえるにつれ、保険の範囲は縮小され、家族介護のための離職と介護従事者の離職が後を絶ちません。支え手の不足は一層深刻になっています。厚労省の二〇一七年調査で、働く人や家族介護を経験した人などに聞いたところ、介護についての相談先はケアマネジャーがトップでした。ところが、ケアマネジャーは現行の処遇改善の対象となっておらず、資格の維持のための研修など負担が大きいにもかかわらず処遇が改善されない、やめたいとの声も上がっています。このような現状を踏まえ、介護・障害福祉従事者人材確保法案では、ケアマネジャーを含め、現場の介護職員と管理部門の職員全体を対象に、平均一人当たり月額一万円賃金を上昇させることを想定した給付金の支給について規定をしております。さらに、介護現場におけるハラスメントの防止を念頭に、事業者に対し、適切な就業環境の維持についての努力義務を課すことにより、給与面以外での処遇改善についても規定をしております。次に、国費の直接投入による介護、福祉職員の賃金引上げの必要性についてお尋ねがありました。今、介護、福祉の現場では、要介護者や障害者など感染リスクの高い利用者さんをいかに守るか、必死で奮闘をされています。個々の利用者の特性に応じたきめ細かい対応が求められる専門職でありながら、その賃金は他の業種と比較して極めて低い水準にあります。こうした中、政府も処遇改善策を講じてきましたが、さまざまな要件が課されているために職員全体の賃上げにつながっていないことは、議員の御指摘のとおりです。そこで、介護、福祉職員の職業生活の安定と離職の防止を図る観点から、介護・障害福祉従事者人材確保法案では、現場の介護職員とそれを支援する管理部門の職員全体について、その賃金引上げの措置を講ずる事業者に対し、全額国費負担の介護・障害福祉従事者等処遇改善助成金を支給することといたしました。これにより、介護、福祉職員にすぐれた人材を確保し、要介護者、障害者等に対するサービスの水準の向上に資するものであります。(拍手)