2020年5月22日 衆院厚生労働委員会 国家試験不合格でも介護福祉士資格付与 法案可決 共産、共同会派は反対

提出資料➀ 厚生労働省提出資料
提出資料➁ 厚生労働省第6回障害福祉サービス等報酬改定チーム資料

 介護福祉士養成施設を卒業すれば、国家試験不合格でも資格を付与する措置の5年延長などを求める社会福祉法等改正案が、22日の衆院厚生労働委員会で、自民、公明、維新の賛成多数で可決しました。日本共産党と立憲民主党などの共同会派は反対しました。
 不合格者への資格付与は、養成施設卒業者への国家試験義務付けの経過措置とされてきました。共産党の宮本徹議員は反対討論で、『介護福祉士の地位向上のため、国家試験義務付けを確実に進める』とした衆参両院の付帯決議を踏みにじるものだ」と批判。社会保障審議会福祉部会では反対意見が圧倒的多数を占めたのに、政務三役は誰も議事録を読まず、少数意見だった経過措置の延長を決めたのは「結論ありきで、社保審の形骸化だ」と指摘しました。
 宮本氏は、「専門職、国家資格の軽視だ。国家資格として確立し、社会的評価を高めることこそ、介護の質と人材の確保ができる」と強調。社会福祉法人の大規模化を推進する仕組みについても、「公的支援を縮小し小さな法人の経営基盤を崩しながら、上から大規模化を進めるのは問題だ」と批判しました。同日の質疑では、「介護福祉士資格がプロである証しになってほしい」と国家資格としての確立を願う声を紹介。外国人労働者の確保を措置延長の理由に挙げる政府に対し、合格できるだけの日本語能力を養うための支援や、多額の借金を負って来日し、学業よりアルバイトを優先せざるを得ない実態の改善こそ必要だと主張しました。

以上2020年5月23日付赤旗日刊紙より抜粋

≪第201回2020年5月22日衆院厚生労働委員会第15号 議事録≫

○盛山委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。まず、前回事実確認をお願いした問題を伺いたいと思います。全国福祉高等学校長会の方が三月に署名を渡したい、会いたいというお話があった件について、確認していただけたでしょうか。
○谷内政府参考人 お答えいたします。一昨日の委員会におきまして、委員から、全国福祉高等学校長会が介護福祉士の経過措置の延長反対署名を提出するため、厚生労働省に面会申込みの連絡をしたが返事がなかったということで、事実関係について御質問いただいた際に、私からは、担当室も含めて話を聞いていないと一昨日は答弁いたしました。早速、一昨日のこの委員会の終了後、その午後に、担当室におきまして直ちに全国福祉高等学校長会と連絡をとりました。その結果、確認できたことは、ことしの三月十九日に全国福祉高等学校長会から当方の担当室長宛てに署名を提出するための日程調整のメールを送ったということでありましたので、改めて室長が確認しましたところ、確かにメールをいただいていたということが確認されたところでございます。ただし、担当室長の事情を申し上げますと、当時、三月の一月間なんですけれども、担当室長は新型コロナウイルス感染症対策のために厚生労働省のマスク等の物資対策班の業務を臨時に担当しておりまして、まず本務を離れていたということがございます。また、当然、本務のメールチェックは行っておりましたけれども、その業務の関係で毎日数百通のメールが届いておりまして、また、たまたまそのメールが届いた十九日は体調不良で休んでいたという中で、当該メールを見落としてしまったということでございました。ただし、失念していたということは事実でございますので、早速、一昨日に、全国福祉高等学校長会に対し、担当室長から電話で、失念によりメールへの返信が行われていなかったことを深くおわびさせていただきました。また、昨日の午後でございますけれども、私が校長会の来訪を受けまして、四千七百名分ございましたけれども、署名と陳情書を受け取りますとともに、その場で担当室長とともに謝罪をしたところでございます。事実関係は以上でございます。一昨日の委員会の場におきまして、私から、話を聞いていないと御答弁申し上げたことにつきましては、訂正させていただきたいというふうに思います。
○宮本委員 コロナの対応だという話ですけれども、メールを複数でチェックするだとか、日常業務も並行してやっているわけですから、やはりそういう体制は最低とるべきであったということを申し上げておきたいと思います。私も、きのう、厚労省に行った後、先生方からお話を改めて伺いましたけれども、伺ったら、福祉系高校で学んだ後に介護福祉士の資格を取っても、介護職につくんじゃなくて、その後、別の道を選ぶ人もいるという話なんですよね。看護師を目指す人も少なくないと言っていました。なぜかというと、やはり看護師の方が資格としてはっきりしている、しっかりしている。介護福祉士は、資格として、自分たちは国家試験に受からなきゃなれないけれども、受からなくてもなれる人たちがいるので曖昧だということで、そういう選択をされる人もいるんだというお話を伺いました。先生方は、子供たちに対して、いや、これは経過措置で、これからは一本化されるから、ちゃんとした資格になって専門職として認められるんだよという話をしてきたというんですよ。だから、先生たちからすれば、子供たちにうそを言ってしまったということにも今度の経過措置の延長というのはなってしまうんですよね。だから、四千七百筆の署名も集まったんだというふうに思います。私は、この間、福祉系高校OBの若い方々のお話も伺いましたけれども、日本の介護現場では高卒は資格を取っても高卒扱いだ、介護福祉士の資格がプロであるあかし、プロとしてのブランドになってほしい、一本化してほしいんだ、こうおっしゃっておりましたので、しっかりと受けとめていただきたいというふうに思います。それから、この間、介護福祉士の養成施設協会の理事の方にもお話を伺いました。介養協からは昨年十二月に経過措置の延長を求める要望書というのが大臣宛てに出されておりますが、その経過の話を聞いたら、実は、この要望書というのは理事会で多数決で決めたという話だったんですね。内訳は三対五だったと。一人ひっくり返ったらこの要望書も出なかったというような話で、経過措置を延長してくれと言った介養協の中でも、延長すべきじゃないという意見もかなり強いんだということも、皆さん、ぜひ認識を持っていていただきたいと思います。もう一問お伺いします。養成施設に二〇一七年度に入学した方は五百九十一人、そして、二〇一八年度に国家試験を受験した方は三百九十四人。受験者の方が二百人少ないんですね。二〇一八年度に入学した留学生の方は一千百四十二人、二〇一九年度に国家試験を受験した留学生の方は八百六十五人ということで、受験者数が三百人少ないわけです。養成施設への留学生の入学者数と国家試験を受ける人数に大きな差があるわけですけれども、この差が起きている原因は何なのか、そしてまた、養成施設の留学生の合格率が低い原因がどこにあると考えているのか、これらの原因に対する対策をどう考えているのかをお伺いしたいと思います。
○谷内政府参考人 お答えいたします。まず一点目の御質問でございますけれども、入学者数と国家試験受験者数との差分でございますけれども、一般論として申し上げますと、入学後に中途退学したり留年したりする方がいることや、養成課程を終える際に国家試験を受験せずに卒業する方がいるということが考えられます。国家試験を受験しない方々にはさまざまな事情があると考えられますけれども、介護福祉士の資質と社会的評価を高めるという国家試験義務化の趣旨からすれば、可能な限り受験いただくことが望ましいというふうに考えております。また、試験の合格率の多寡でございますけれども、試験の合格につきましては、受験された方々御本人の努力、さらには介護福祉士養成施設の教育のたまものでございまして、合格率の高低は一概に論じられるものではございませんけれども、例えば、EPAの介護福祉士の候補者、特にベトナムの方と比較いたしますと、日本語習得に係る要件が異なっていることから、日本語能力が国家試験の学習に影響を与えて合格率が低くなっている可能性があるということは考えられます。こうした状況を踏まえまして、養成施設の教育の質の向上に係る取組支援といたしまして、先ほど大臣からも申し上げましたけれども、留学生向けの介護福祉士の試験対策教材の作成等の経費等々以外の、例えば教育の手引の作成に必要な経費、さらには教員が異文化理解の教育研修を受講するために必要な経費等の財政支援を行うことによりまして、各養成施設における取組を強化していきたいと考えております。また、一昨日の委員会でも申し上げましたけれども、国家試験合格率を高めていきますために、養成施設ごとの国家試験合格率を公表するスキームを新たに来年度から設けたいというふうに考えております。
○宮本委員 私もいろいろ関係者にお話を伺うと、やはり、日本に来て学ぶために、留学生の皆さんは、EPAと違いますから、たくさんの借金をして来るわけですよ。ブローカーにもお金を支払う。現地での教育、そして日本での授業料というのもあるわけですよね。どうしてもアルバイト優先になっちゃう、借金も返さなきゃいけない、生活費も授業料もいろいろなものも稼がなきゃいけない、そして学業との両立が難しいんだ、授業料も払えない、生活が立ち行かなくなって中途退学しなきゃいけない、お金が全くない、大変だという相談を受けるという話も関係者の方からも伺いました。やはり、今の制度設計そのものに大変問題があるというか、無理がある面があると思うんですよね。こんなにたくさん借金をして日本語学校で学んで、介護の養成施設で学んで、生活費をどうするのか。ですから、本当に外国の方々に日本の介護福祉士の資格を取ってもらいたい、日本の介護でも力を発揮していただきたいというのだったら、やはりそういう仕組み自体にメスを入れていかなきゃいけないと思いますし、しっかり経済的な面でも支援をしていかなきゃいけない。そうしないと、今言ったようなお話では、合格率を高めるといっても限度がある話だと私は思いますよ。そういうところにしっかりメスを入れていく必要があると思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、まさに、国家資格試験を皆さんが受けて合格し、そして介護福祉士の資格を持って活躍していただく、これが本来の姿であることは従前から申し上げているとおりであります。ただ、先ほど来から申し上げておりますように、今の介護現場の状況等々を踏まえて今回は更に五年間暫定的に延長するということを法案の中に盛り込ませていただきましたが、この間において、そうした養成校における教育の質の向上、あるいは、今、多くの海外の方がそこで学ばれているわけでありますから、そうした皆さんがしっかり教育を受けて、そして試験の合格を目指して努力していただける環境をつくっていく、このことは大事だというふうに考えております。引き続きそういったことも含めて対応していきたいというふうに思います。
○宮本委員 私が今お話ししたのは、経済的な面も含めて、やはり更に突っ込んで考えないとまずいのではないかという問題提起をさせていただいているんですよね、経済的な支援も含めて。
○谷内政府参考人 お答えいたします。外国人の留学生の経済的な面でございますけれども、これにつきましては介護福祉士修学資金というのがございまして、まさに養成施設で勉強されている方にきちんとした貸付けを行っているものでございまして、例えば入学準備金で二十万円等々のメニューがございますけれども、そういった資金も用意されているといったような状況でございます。
○宮本委員 ですから、今の枠組みでは、先ほど言ったように、中途で退学する人もたくさんいる、勉強よりもアルバイトを優先せざるを得ない、たくさん借金をして来る、ここにもメスを入れなきゃいけないですし、そういうところをぜひしっかり考えていただきたいということを申し上げております。
○谷内政府参考人 お答えします。先ほど申し上げました介護福祉士修学資金でございますけれども、当然、貸付けではございますけれども、五年間介護の仕事に継続して従事された場合には全額免除ということになっておりますので、借りた上で勉強していただいた上で日本で働いていただければ全額免除ということになっておりますので、そういった形でこの資金も活用いただければというふうに思っております。
○宮本委員 それだと足りなくて中途退学がいっぱい出ているんじゃないですか、アルバイト優先になっているんじゃないですか、そこをどうするんですか。全然回答はないですけれども、ぜひそこは考えていただきたいということを重ねて申し上げておきたいというふうに思います。それから、研究者の方がおっしゃっていたんですけれども、外国人頼みの介護というのは諸外国でもうまくいっていない、やはり日本人の介護の担い手をつくらないと介護が崩れていくということをおっしゃっておられました。介護福祉士を目指す日本人をふやしていく、潜在介護福祉士の職場復帰を図っていかなきゃいけないと思います。その上でも処遇改善というのは非常に大事なんですけれども、きょうは配付資料をお配りしております。この間、特定処遇改善加算が設けられました。上が介護職員、下が障害者福祉の処遇改善であります。昨年始まったわけですけれども、この取得状況を見ますと、介護職員の方が五割台ということになっております。その前の処遇改善加算は一、二、三を合わせて九割とっていましたから、この特定処遇改善加算の取得率は低いわけですよね。さらに、障害者福祉の方で見ますと、十月から一月までずっと、特定処遇改善加算をとった事業所は三割台、三分の一強というのが現状であります。この取得状況について大臣はどう評価されているのか、そして、取得が進んでいない原因についてどう把握しているのか。制度設計に問題があったんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 これは、消費税の税収を財源として介護職員や障害福祉人材の処遇の改善を図るということで、昨年十月からスタートしたところであります。これを通じて、経験、技能のある職員に重点化してさらなる改善を、そうした皆さんが継続して働いていただける環境をつくろうということであります。報酬への加算という形で導入をしておりまして、取得率については委員お示しのとおりでありますけれども、これは介護の場合ですけれども、今後取得を検討していると回答している法人は約二割あるということでありますので、さらなる取得が進むように我々も努力をしていきたいと思っております。障害福祉については、今、三分の一、取得率は徐々にではありますけれども上がっているということでありますので、更に取得率の向上を図っていかなきゃならない、そういった観点から、加算の算定要件である経験や資格に応じて昇給する仕組みの整備、あるいは職務内容に応じた賃金体系の整備、研修の機会の確保などを満たせるように、介護事業所に対して社会保険労務士なども派遣して加算取得の支援を行っていきたいというふうに思っております。同時に、事務負担の議論もございます。今年度からは届出書類の簡素化も行ったところであります。引き続きそうした対策を講じることによって多くの事業所においてこの加算の取得を図っていただき、ひいては介護職また障害福祉の人材の方々の処遇改善につなげていただきたいというふうに思っています。
○宮本委員 実態はなかなか取得が進んでいないわけですね。とりわけ障害者福祉の方は、本当にこんなことでいいのかというぐらいな状況なわけであります。介護の側もこれからとりたいところが二割あるということですけれども、なかなか進んでいないというのは、やはり事務が煩雑過ぎるという問題もあるわけですよね。それだけじゃなくて、障害者福祉のところも、私は昨年もこの問題を大臣に申し上げたと思うんですけれども、特定の技能がある人に対して処遇改善を二倍にしなきゃいけないということになっているわけですよね。ところが、小さい事業所は本当に十人前後で職員がチームワークを持ってやっているのに、一部の人だけぐっと処遇を改善する、賃金を上げるというのは、チームワークで仕事をしているところも崩れちゃう、壊れちゃう、こういう話も伺うわけですよね。 ですから、もっと実態に見合って、頑張っている方々がしっかりと処遇が改善されて、今の人手不足が解消されるような方法を、ぜひ、数字だけを見るんじゃなくて、どういう形でだったら賃金アップをみんなで図りたいのかという生の声をたくさん聞いていただきたいと思うんですよ。私は、この問題を去年の秋に大臣に問題提起をしたときに、実態調査をするという話を大臣からたしか答弁いただいたんですけれども、まだ実態調査もこれぐらいしかいただいていなくて、今年度、これから調べますという話なんですよね。ですから、具体的な生の声をつかんで対応していただきたいというふうに思います。それと、もう一点、やはり、私たち野党は法案を出していますけれども、保険料、利用料にはね返らない形で全額国費で一律に給与を引き上げていく、これは事務手続も煩雑じゃないですし、どの事業所もあまねく賃金アップを図れるわけですから、こうしたことこそ考えるべきだということを強く申し上げておきたいと思います。次に、前回通告しておいてたどり着かなかった障害者福祉の問題についてお伺いします。相談支援事業、配付資料の裏面を見ていただきたいと思います。前回の報酬改定で経営状況がどうなったのかというのが出ています。増減がそれぞれ出ていますが、減の大きなものの一つが計画相談支援です。マイナス三・一ということになっております。相談支援事業の経営が大変厳しくなっているという話を伺います。私が伺ったある事業所は、三百五十万円の赤字だと言っておりました。百八十一人がこの相談支援に登録していて、常勤二人と、あと法人内の別の施設長が兼務の三人で相談支援に当たっている。この通所施設の事務所の一角で賃料も水光熱費も実際は通所施設持ちでやっている、兼務の方の給与も通所施設持ちでやっていると。ですから、実際は二人の人件費と電話代と交通費だけでも三百五十万円の赤字だ、これを法人内の別の事業の報酬で穴埋めしているという話でございました。国の基本的な報酬は、計画を立てるときと、あとは三カ月ないし六カ月のモニタリングのときにだけ出るという形になっているわけですが、実際には、急に親御さんが倒れてショートステイやグループホームが必要になると連日のように打合せをしなきゃいけない、あちらこちらに連絡をしてあいている施設を探す、そして、その施設が利用者の状況に合うところかどうか、まず職員がその施設を訪問して相談する、それが確認されれば、利用者や家族に同行して職員の方がその施設にお伺いする。計画を立てるときと三カ月ないし六カ月のモニタリングのときにしか報酬は出ない仕組みになっているんですけれども、そういうものと大変に違う実態があるわけですよね。また、別の事業所にもお話を伺いましたけれども、障害者の方の状況に応じて毎月訪問して相談しているケースもあれば、もっと頻繁なケースもある、障害者の方の状況に応じて必要な相談支援を行おうとすればするほどマンパワーが必要だ、法人の他の部門からの持ち出しで支えているのが実態だ、しかし、そんなにたくさん持ち出せないから、少ない人数で多くの利用者の相談支援を担わざるを得ない、訪問した方がいいケースでも電話で済まさなければいけないということでありました。障害者の相談支援事業の今の実態と事業所の採算について厚労省としてどう把握して、どうこれを改善していこうと考えているのか、お伺いしたいと思います。
○橋本政府参考人 障害者のサービス等利用計画の作成などを行います計画相談支援でございますけれども、これは、障害者の希望に応じた生活を支援するという観点から大変重要なサービスだと私どもも考えております。平成三十年度の障害福祉サービス等報酬改定の中におきましては、質の高い支援ですとか、あるいは相談支援専門員の手厚い配置などを評価する、そういう観点からの報酬の見直しを行いました。御指摘の採算性という面でございますけれども、先ほど資料で配っていただきました令和元年度の経営概況調査におきまして、計画相談支援の収支差率は、平成三十年度決算で見て、二・〇%のマイナスということになってございます。前回の報酬改定の効果や影響等については引き続き把握や分析を行っていく必要があると考えておりまして、今年度に経営実態調査を行いますので、この調査によりまして直近の状況をしっかりと把握した上で、令和三年四月の報酬改定に向けて丁寧に議論させていただきたいと考えております。
○宮本委員 前回の報酬改定のときの通知を見たら、改定の趣旨ということで、計画相談支援については、適切な支援の実施や体制の整備を図っている事業所において独立採算が可能となり、新規事業所の増加や既存事業所における相談支援専門員の増員が促進される、こういう内容で報酬改定をしたと言っているんですけれども、全く逆になっているわけですよ、全く逆。やはり、本当にしっかり実情をつかんでやっていただきたいと思います。相談支援はとりわけ経験が求められます。そして、ネットワークが生かされる専門職なわけですよね。しっかりと対応をお願いしたいというふうに思います。次に、生活介護についてもお伺いします。前回の報酬改定では、就労移行支援や就労継続での成果主義が導入され、そうした事業所に大変大きな影響を及ぼしました。次は生活介護が標的にされるんじゃないかという懸念の声も伺っておりますが、一方で、生活介護については利用者から改善を求める声もあります。ASDの人の中には平日、休日にかかわらず同じペースで一日ずつ過ごすことで安定を得られるタイプの人もいる、そういう人に対して日中活動が毎日利用できる選択肢をという声であります。具体的には、土日の入浴ができないというような声が上がっております。障害者の特性に合わせて日中活動が毎日利用できるような報酬改定をやっていく必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
〔委員長退席、冨岡委員長代理着席〕
○橋本政府参考人 生活介護でございますが、これは、入浴や排せつあるいは食事の介護の提供など、重度の障害を抱える方が安心して地域生活を送るために必要不可欠なサービスでございます。生活介護事業所の営業日でございますけれども、各事業所において利用者数の見込みですとかあるいは職員体制を考慮しながら事業の継続性を検討して運営規程で定めるというものでございまして、全ての日にわたって開所するということも可能ではございます。ただ、毎日利用を希望される方もいる一方で、事業所の側から見ましたときに、毎日開所することを前提に多くの職員を確保するというのもなかなか難しい面もございますので、そのバランスの中で、実態として土日を休業日として設定している場合が多いというふうに考えられます。令和元年度の調査で調べてみますと、生活介護については、土曜日の営業ということであいておるところが四七・九%、それから、日曜、祝日については二〇・三%というのが実態でございました。土日も含めて入浴などを使いたいというふうなニーズがあるというふうなお話でございました。生活介護とあわせて、例えば、地域生活支援事業における訪問入浴ですとかあるいは日中一時支援などを土曜日や日曜日に利用するというふうなことも地域によっては考えられますので、一人一人の障害者のニーズに合わせて多様なサービスと組み合わせて利用するということも一つの方法ではないかというふうに考えております。いずれにいたしましても、生活介護の事業所が地域ニーズを踏まえたサービスを提供していくことができるようにしなければなりませんので、令和三年四月の報酬改定に向けまして、障害者のニーズや事業者の実態などをしっかりと把握した上で丁寧に議論させていただきたいと考えております。
○宮本委員 今、生活介護は、一月マイナス何日というところまでしか報酬が出ない仕組みになっているわけですよね。ですから、その報酬体系では休日まで職員はとても配置できないという実態があるわけですね。ほかのサービスが地域によっては使えるという話ですけれども、地域によってはほかのサービスがないところもいっぱいあるわけです。しかも、障害者によっては、その特性によっては、その場所で、同じ人たちの人間関係の中でルーチンで定期的にやることが求められているという面もあるわけですから、一人一人に応じた対応ができるような報酬改定をしっかり検討をお願いしたいというふうに思います。法案についてお伺いしたいと思います。今回、重層的相談支援、伴走型支援、あるいはアウトリーチというお話もございます。引きこもり支援に取り組んでいる皆さんはこう言っているわけですよね。なぜ市町村が厚労省のデザインどおりに動かないのか、マンパワーと財源がないからだ、自治体はお金がない、専門性を発揮するような体制がない、福祉人材が活躍できるだけの財源を国で確保しないと安心して働けないんだ、当事者の中では生活保護費を削って会場を確保している方々までいるというような話もありました。私は、こういうことを法律でつくる以上は、自治体格差が生じないように全額国費でしっかり手当てを、財源を確保してやる、そういった必須事業にすべきだというふうに考えますが、その点はいかがお考えでしょうか。
〔冨岡委員長代理退席、委員長着席〕
○谷内政府参考人 お答えいたします。今回の法案におけます新たな事業でございますけれども、四分野の既存事業を一体的に実施することに加えまして、参加支援とかアウトリーチ支援、多機関協働といった、既存の事業を支えまして体制構築の強化に資する新たな機能を追加することを通じまして、包括的な支援体制の整備を行うことを目的としたものでございます。この新たな事業の実施に当たりましては、市町村によって、高齢化の状況等、直面している課題等が多様であること、また、地域の関係者間での十分な事前の議論によりまして事業実施の考え方などの共有を図るプロセスが重要でありますことから、必須事業とはせず、準備の整った市町村から取り組むこととして、市町村の手挙げに基づく任意事業としております。また、その財政措置でございますけれども、先ほど申し上げました四分野の各法の実施義務に基づきまして、人員配置基準、配置人員の資格要件等を維持いただきながら必要な支援を提供するとともに、その実施に係る国、都道府県、市町村の費用負担は各法に規定する負担割合と同様として必要な予算を確保する、加えまして、新たな機能につきましても必要な予算を令和三年度に向けて要求していくということとしております。したがいまして、具体的な財源規模につきましては予算編成過程におきまして今後調整していきますけれども、制度導入後におきましても引き続き市町村における事業実施に必要な財源確保に努めていきたいと考えております。
○宮本委員 時間になりましたから終わりますけれども、しっかり財源を確保して、自治体格差が出ないような形でやらないと絵に描いた餅になってしまうということを指摘しまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

≪第201回2020年5月22日衆院厚生労働委員会第15号 議事録法案討論・採決部分抜粋≫

○盛山委員長 これより討論に入ります。討論の申出がありますので、順次これを許します。阿部知子君。
○阿部委員 立国社の阿部知子です。地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。反対の理由は、審議の前提が整っていないことに尽きます。第一に、新型コロナ禍に見舞われているさなか、まして黒川検事長辞任問題で総理の任命責任が問われる中で、審議、そして採決すべきような事態ではありません。今回の法案は、主な法律だけを挙げても、社会福祉法、介護保険法、老人福祉法、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法案、社会福祉士及び介護法と、相変わらず数多くの法律を束ねています。そして、審議の中で指摘されたのは、全国各所の介護施設で起きている入所者と介護者の集団感染です。報告があるだけで、四十の高齢者福祉施設で集団感染が起き、感染者は四百六十六人、死亡は三十九人にも及ぶことがわかりました。歯どめをかけるためには何がなされるべきかがまず最優先のはずです。また、日本が今大きく依存しようとしている外国人介護人材の実情から目を背けるべきではありません。EPA、在留資格「介護」、技能実習、特定技能一号と、次々と新たな名目で外国人介護人材の受入れの仕組みをつくってきました。ところが、今、新型コロナの蔓延により技能実習を終えても日本から出られず生活に困窮する人から、介護福祉士の養成学校に入学したものの、親御さんが心配して帰国せよと言われ悩む留学生まで、人道的観点からも優先すべきは、目の前の外国人人材への支援のあり方であります。第二に、法案の中身です。とりわけ、束ねた法案の一つ、社会福祉士及び介護法の改正案について。平成十九年改正で、福祉系高校を出ても、実務経験を重ねても、養成学校を出ても、誰もが介護福祉士の国家資格に合格することが義務づけられました。しかし、平成十八年に締結したフィリピンとのEPAとの整合性の確保のため、養成施設を出て五年就労すれば介護福祉士になれるという経過措置をつけ、同時に、その経過措置が終わっても不合格となった場合の准介護福祉士資格が創設されました。しかし、それはあくまでフィリピンとのEPAとの整合性を確保する暫定措置でした。ところが、その後、この暫定的な経過措置が養成施設卒業者にだけ適用されたまま、もろもろの理由をつけて何回も延長されてきました。 国会は、その解消をその都度附帯決議して行政に求めてきました。平成二十八年改正のときも、准介護福祉士の国家資格については、フィリピンとの間の経済連携協定との整合性を確保する観点にも配慮して暫定的に置かれたものであることから、早急にフィリピン側と協議を行う等の対応を行うとともに、当該協議の状況も勘案するとしました。ところが、協議内容をただしても、その日時すら国会には明らかにされません。一つ一つの法案の問題点を法案の束に隠し、直面する新型コロナ感染症から介護人材を守るための処遇改善はなおざりに、外国人介護人材に関する立法事実を外交の壁の中に隠し、そんな無責任な内閣提出法案のあり方をこれ以上許容することはできません。国会は、まず総理の黒川検事長の任命責任を明らかにするとともに、コロナ感染症対策に全力を挙げるべきです。審議の前提を欠いた本日の採決にも反対し、審議の延期を求めます。以上、反対討論といたします。(拍手)
○盛山委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。社会福祉法等改正案に反対の立場から討論いたします。本法案は、介護福祉士の国家試験に合格しなくとも養成施設を卒業すれば介護福祉士の資格を取れるという経過措置を更に五年延長します。これは、介護職員の社会的地位の向上のため養成施設ルートの国家試験義務づけを確実に進めるとした衆参両院の附帯決議を真っ向から踏みにじるものと言わなければなりません。経過措置の延長法案が出てくるプロセスも全くおかしいと言わなければなりません。社会保障審議会福祉部会での議論では、経過措置の延長に反対の意見が圧倒的多数を占めました。議論を踏まえ、福祉部会長は、今後関係者も国会議員の方々も本日の議事録を通じてまた更に認識を深めていただくことになると発言し、両論併記で議論の整理をまとめました。ところが、政務三役のどなたも議事録に目を通すことなく、少数意見であった経過措置延長の法案を厚労省は決定いたしました。初めから結論ありきだったのでありませんか。社会保障審議会を形骸化する姿勢は大問題であります。介護福祉士は、介護の現場で中核的な役割を果たす指導的専門職です。本委員会の質疑で、国家試験を課す国家資格で、不合格でも資格が得られる経過措置を繰り返しているものは介護福祉士以外はないということも明らかになりました。経過措置の延長は介護の専門職の軽視であり、国家資格の軽視です。介護福祉士の専門性と地位向上を目指した法の趣旨にも反します。介護福祉士資格を目指す人たちのモチベーションを損ない、介護を目指す人の減少に拍車をかけることにもつながります。介護福祉士をきちんとした国家資格として確立し、社会的評価を高めてこそ、介護の質の確保と人材の確保の両立を図る道だと強く指摘しておきたいと思います。また、本法案は、地域福祉の理念として地域共生社会をつけ加えますが、国、地方自治体など公の責任を後退させながら自助、互助の強化を求めることには問題があります。本法案には社会福祉連携推進法人制度の創設がありますが、公的支援を縮小して小さい社会福祉法人の経営基盤を崩す政策を続けながら、上からの大規模化を進めることには問題があります。以上、指摘し、反対討論といたします。(拍手)
○盛山委員長 以上で討論は終局いたしました。これより採決に入ります。内閣提出、地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○盛山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。この際、本案に対し、平口洋君外三名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、公明党及び日本維新の会・無所属の会の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者より趣旨の説明を聴取いたします。藤田文武君。
○藤田委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。 一 重層的支援体制整備事業が、より多くの市町村において円滑に実施されるよう、同事業を実施していない市町村に対し、計画の策定、支援会議の設置及び同事業の実施の準備について、必要な助言、研修等を通じた人材育成その他の援助を行うよう努めること。また、市町村における同事業の実施状況によっては、できる限り速やかに必要な見直しに向けた検討を開始すること。 二 より多くの市町村において支援会議が組織されるよう、その役割や重要性について周知を図るとともに、効果的な運営方法に関するガイドラインを作成するなど必要な支援を行うこと。また、支援会議に関する守秘義務の規定については、支援会議において知り得た全ての事項が含まれるものであることの周知を徹底すること。 三 重層的支援体制整備事業の実施に要する費用に充てるための交付金については、同事業が、既存の介護、障害、子ども、生活困窮の制度ごとに分かれている相談支援等の事業のほか、伴走支援や多機関協働といった新しい機能を持つものであることを踏まえ、必要な予算の確保に努めること。とりわけ、裁量的経費についても事業を安定的に運営することができるよう、必要な予算の確保に努めること。 四 介護保険法第五条第一項に規定する介護サービス提供体制の確保に関する施策その他の必要な各般の措置を講ずるに当たっては、介護人材の確保及び資質の向上の重要性に十分に留意すること。 五 介護・障害福祉に関するサービスに従事する者の賃金等の状況を把握するとともに、賃金、雇用管理及び勤務環境の改善等の介護・障害福祉に関するサービスに従事する者の確保及び資質の向上のための方策について検討し、速やかに必要な措置を講ずること。 六 介護人材を確保しつつその資質の一層の向上を図るための方策に関し、介護福祉士養成施設卒業者への国家試験義務付けに係る経過措置の終了に向けて、できる限り速やかに検討を行うこと。また、毎年、各養成施設ごとの国家試験の合格率など介護福祉士養成施設の養成実態を調査・把握の上、公表し、必要な対策を講ずること。 七 今後、必要となる介護人材を着実に確保していくため、介護福祉士資格の取得を目指す日本人学生及び留学生に対する支援を更に充実させること。 八 准介護福祉士の国家資格については、フィリピン共和国との間の経済連携協定との整合を確保する観点にも配慮して暫定的に置かれたものであることから、フィリピン共和国政府との協議を早急に進め、当該協議の状況を勘案し、准介護福祉士の在り方について、介護福祉士への統一化も含めた検討を開始すること。 九 社会福祉連携推進法人制度について、社会福祉連携推進法人が地域の福祉サービスの維持・向上に資する存在として円滑に事業展開できるよう、社員となることのメリットを分かりやすく周知すること。以上であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○盛山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○盛山委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。