日本共産党の宮本徹議員は13日の衆院安保法制特別委員会で、戦争法案によって南シナ海で日本が軍事的関与を強めることになると指摘し、同地域の領有権問題をめぐる歴史を振り返っても、日本は現状変更による悪循環を断つための外交努力に徹するべきだと強調しました。
 外務省の滝崎成樹大臣官房参事官は、南シナ海(南沙、西沙、スカボロー礁)については5国1地域が領有権を主張しているとした上で、「サンフランシスコ条約において日本が放棄した権利や権原の帰属先については、関係国間で一致した見解がなく、今日に至っている」と説明しました。
 宮本氏は、2002年に採択された、平和的手段で解決を図る「南シナ海共同宣言」(DOC)の重要性を指摘しました。岸田文雄外相は「大変重要な宣言だ」と述べ、これに法的拘束力をもたせるため現在協議中の「南シナ海行動規範」(COC)についても「早期合意に至るよう呼びかけていきたい」と答弁しました。
 宮本氏は、「行動は対抗を引き起こす」と対抗措置の悪循環に懸念を表明したシンガポールのリー首相のアジア安全保障会議での講演を引用し、紛争の解決には外交的解決しかないと強調。一方、政府が戦争法案の重要影響事態の対象として南シナ海が排除されないと答弁していることを指摘し、「外交的解決が大事というなら、法案は撤回するしかない」と主張しました。
 加えて宮本氏は、日本の占領後、サンフランシスコ条約において帰属が決まらなかった歴史的経過にふれ、「問題の責任の一端を負う日本が、米国と一緒に軍事的に関与するのはもってのほかだ」と批判しました。

軍事費増の懸念指摘

 また宮本氏は、“戦争法案で軍事費が増えるのではないか”との国民の懸念をとりあげ、すでに軍事費の「ツケ払い」が急増している実態を明らかにしました。
 安倍晋三首相が戦争法案閣議決定後の会見(5月14日)で「安倍内閣で(軍事費を)増やしたのは消費税増税分を除けば0・8%だけだ」と述べていることについて宮本氏は「ごまかしだ」と批判。財務省主計局・可部哲生次長は、高額兵器購入の際に将来に「ツケ」をまわす「後年度負担」が10年間で1兆3807億円増え(46・3%増)、このうち1兆1327億円(35・1%増)が安倍政権の2年間で増えていることを明らかにしました。
 購入する兵器とは、P1哨戒機やオスプレイなど、地球規模で自衛隊を活動させるためのものです。
 中谷元・防衛相は「非常に安全保障環境が厳しさを増している」と従来の説明をくり返しました。
 宮本氏は「軍拡の悪循環がこの東アジアで起きている。これを断つことこそ必要だ」と強調。「アメリカの戦争支援に乗り出すことは、財政面でも未来世代に責任が負えない道だ」と厳しく指摘しました。

以上2015年7月14日付あかはた日刊紙より抜粋

2015年7月13日 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会提出資料①
2015年7月13日 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会提出資料②

≪第189回我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会第20号 2015年7月13日議事録≫

○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。先週の審議で、イラクでの自衛隊の活動記録をまとめたイラク人道復興支援行動史が取り上げられました。国会審議のために資料請求した国会議員に対して、黒塗りだらけで出てきたわけです。中谷大臣は、これまで不開示としていた部分の公表につきましても検討を始めており、速やかに結論を得たいと述べられましたが、きょう出てくるのかなと思ったら、まだ出てきておりませんので、黒塗りで何を隠していたのかというのを、穀田議員に引き続いて、私も黒塗りの部分を幾つか紹介したいと思います。一つ、家族支援に関する提言とあります。真っ黒ですが、こう書いてあります。家族の意識改革醸成措置、軍事組織においては、隊員は身の危険を顧みず任務を達成することが求められ、家族にもその覚悟が求められるが、現実はそうではない面があった、例えばイラク派遣を地連の担当員から初めて聞かされてうろたえた両親や、被通報者の居所を明確にしない家族があった、自衛隊がやや曖昧にしてきた家族の意識改革醸成措置を行うべきである、こういうことなどが書いてあります。それから、これはメンタルヘルスの問題の提言ですね。今後の派遣においては、蓄積されるストレス以外にも惨事発生時のストレスに早期に対処する必要があり、戦闘力回復所を開設し、そこに医官などを常駐させ対応するといった惨事ストレス対処の体制をさらに検討する必要があると。黒塗りのところはたくさんあるわけですけれども、軍事秘密だとかそういうことじゃないわけですよね。なぜこうしたところを黒塗りにして国会議員に対して出したのかということだと思うんですよ。本委員会が始まって以来、今度の法制で自衛隊員が殺し殺されるのではないかということが議論されてきました。派遣後の自衛隊員の皆さんのPTSDの問題、自殺の問題も議論が重ねられてきました。先日、安倍首相がインターネットで自衛隊員のリスクは小さくなると言いましたが、今紹介したようなところをこういう形で黒塗りで国会議員に対して審議の最中に出してきたというのは、結局、イラク派遣の実態を隠して、この法案の危険性を小さく見せようとしたんじゃないか、こういう疑いが持たれるわけですけれども、大臣、なぜこういうところまで隠して出したんですか。
○中谷国務大臣 御家族に対する支援につきましては、隊員の安全確保とともに大変重要でございます。また、ストレス、惨事発生等につきましても、派遣前、派遣中、派遣後の対応等も非常に大事なものでございます。こういった点につきまして、機微に触れるような問題等があったかどうか、それはわからないわけでございますが、一応部内で検討いたしましてその部分は非開示としていたわけでございますが、国会の求め等もございますので、開示できるところはできるだけ開示してまいりたいと思っております。
○宮本(徹)委員 いや、だから、こういうところを非開示にしたのは、なぜ非開示にしたのかというのが不思議でしようがないわけですよ。機微に触れる軍事機密でも何でもないですよね。そう思われませんか、大臣。
○中谷国務大臣 自衛隊の活動につきましては、適時に情報公開をいたしまして、しっかりと議論を行うことが重要と考えておりまして、速やかに結論を得ていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 速やかに全文を出していただきたいですけれども、とにかくこういう形で審議中に黒塗りでいろいろなことが出てくるということだったら、我々に対して、与党も含めて、いろいろなものが隠されたままこの審議が続いているんじゃないかという疑問が拭い去れないわけですよね。こういう中で、もう審議は十分だ、採決強行などというのは絶対に許されないということをまず初めに申し上げておきたいと思います。そして、きょうの質問ですけれども、まず防衛費についてお伺いしたいと思います。安保法制で軍事費がふえるんじゃないか、こういう心配が広がっております。首相がこの法案を閣議決定したときの記者会見でもこのことは問われました。首相は、安倍内閣でふやしたのは、消費税増税分を除けば〇・八%だ、この法制によって防衛費自体がふえていく、あるいは減っていくということはないというふうにおっしゃっておられましたけれども、私はこの説明には随分ごまかしがあるんじゃないかと思っております。現実には、当初予算以外に後年度負担という形で、この法案を実行し得る兵器の購入契約がぐんとふえているんじゃないでしょうか。後年度負担、わかりやすく言えばローン払いですね、この残高はこの数年で飛躍的にふえております。財務省にきょう来ていただきましたけれども、後年度負担の合計額は十年前と比べてどれだけふえているでしょうか。とりわけ安倍政権のこの二年間でどれだけふえているでしょうか。
○可部政府参考人 お答えいたします。お尋ねのございました二〇一五年度予算における後年度負担につきましては四兆三千六百三十五億円となっており、長期契約による一括調達あるいはイージスシステム搭載護衛艦、F35Aの取得等もございまして、十年前と比べますと一兆三千八百七億円、四六・三%の増加、二年前と比べますと一兆一千三百二十七億円、三五・一%の増加となっております。
○宮本(徹)委員 今、数字を述べられたもの、うちのグラフは八年前しかちょっとつくれなかったんですけれども、グラフをつくりました。このグラフを見ていただけばはっきりしておりますけれども、安倍政権が誕生するまでは後年度負担の合計額というのは三兆円前後で推移していたということになりますが、この十年間でふえた一兆三千数百億円のうち一兆一千三百億円が安倍政権がふやした後年度負担ということになります。安倍政権のもとで一三五・一%になったということであります。しかも、これまでローン払いは五年払いということになっていたわけですけれども、今国会で十年ローンを可能にする法律が制定されて、同じ元手で二倍の兵器を購入する契約ができるということになっております。このグラフを見ても、安倍政権が未来の予算を兵器購入で大きく先食いし始めているというのは明らかだと思うんですよね。先ほど、F35だとかイージスシステムの話がありました。それから、大きな購入としてはP1がありますよね。南シナ海まで飛んで警戒監視することも可能な航続距離を持っております。そして、オスプレイや水陸両用戦闘車、こういうものも新たに今年度から購入することになりました。外国からは、海外侵攻能力を持った兵器だというふうに言われているわけであります。そして、ことしの一般会計では、海外での活動を想定してオスプレイや水陸両用戦闘車を積み込む大型な強襲揚陸艦の調査費もつけられるということになっておりました。もし今回の法案が通っていけば、装備体系もさらにアメリカの戦争支援がいろいろな形でできるようになっていくということになります。中谷大臣、日本の厳しい財政状況の中で地球規模でアメリカの戦争の支援に乗り出せば、未来の世代にまでしわ寄せが行くということじゃないですか。
○中谷国務大臣 防衛というのは我が国における国民の皆様方の安全、命、生活を守らなければなりませんが、非常に安全保障環境は厳しさを増しておりまして、防衛大綱、中期防に基づいて、中長期的に計画的に防衛力を整備いたしております。中期防におきましては五年間の計画の実施に必要な所要経費を明記しており、また各年度の防衛関係費をこの枠内で計上しております。また、当該年度の歳出予算と新規の後年度負担額につきましても国会の議決を経て提示しておりまして、歳出予算と後年度負担の金額は毎年度公表いたしております。さらに、財政状況が非常に厳しい中でございまして、長期契約の導入など、一層の効率化、合理化を図っております。国民に見えにくい形で未来世代の負担をふやしているということはなくて、常に公開しながら防衛力の整備をしているということでございます。
○宮本(徹)委員 いろいろ言われますけれども、安全保障環境が厳しいから兵器をどんどん購入して未来世代にまでツケ払いをお願いするんだというやり方は間違っていると思いますよ。こんなに厳しい財政状況で、消費税増税までして、介護報酬も切り下げて、年金もマクロ経済スライドで切り下げて、保育園に入れない人はいっぱいいるわけですよ。そういう中で安全保障環境の変化に対応するということで、まさに軍拡の悪循環がこの東アジアで起きているんじゃないですか。私たちは、こういう軍拡の悪循環を断っていくことこそ必要だと思いますよ。そうしないと、日本にとって財政的にも未来がないと思いますよ。安倍政権で、たった二年でこんなに、一兆一千億円以上も防衛費だけで後年度負担をふやしているわけであります。ですから、この法案で地球的規模でアメリカの戦争の支援に乗り出していくということは、財政面からいっても未来世代に責任が負えない道だということを厳しく指摘しておきたいというふうに思います。そこで、次に、きょうは南シナ海の問題について取り上げたいと思っております。この間政府は、本法案が必要になった説明として、パワーバランスが変化したんだ、その中で中国が非常に軍事力をつけた、南シナ海における活動を急速に拡大、活発化しているということを強調されております。南シナ海での中国の進出が軍事的脅威として語られているわけでありますが、きょうは、南シナ海の領有権の争いがどう起きてきたのかという認識を伺っていきたいと思っております。まず、その大前提として、今、五国一地域が南沙諸島、スプラトリー諸島の領有権を主張しておりますが、これは一体どこの国の領土なのか。南沙諸島の領有権についての政府の立場を端的に述べていただきたいと思います。
○岸田国務大臣 まず、南シナ海においては、いまだ領有権の確定していない島嶼を含む海域が存在しております。南沙諸島については、中国、台湾及びベトナムが領有権を主張しております。スカボロー礁については、中国、フィリピン及び台湾が領有権を主張しております。南沙諸島については、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア及びブルネイが領有権を主張しております。我が国としましては、こうした南シナ海の現状について注視をするとともに、大規模な埋め立てや軍事目的での利用を含めて、現状を変更し緊張を高めるあらゆる一方的な行動について懸念をしております。各国が、緊張を高める一方的な行動を慎み、法の支配の原則に基づき行動することが重要だと認識をしております。
○宮本(徹)委員 ですから、この地域は領有権は確定していないというのが政府の公式な立場でいいということでございますね。
○岸田国務大臣 冒頭申し上げましたように、いまだ領有権が確定していない海域が存在していると認識をしております。それから、先ほど答弁の際に、南沙諸島を二回申し上げたようであります。冒頭、中国、台湾、ベトナムで領有権を主張しているのは西沙諸島でございます。訂正しておわびを申し上げます。
○宮本(徹)委員 それで、日本政府は領有権についてニュートラルな立場に立っているということだと思います。そこで、南シナ海における領土問題の歴史を振り返りたいということで、きょうは、私も年表を作成してまいりました。もともと海上交通の要衝だったところに、フランスが植民地支配を広げる中で、インドシナ半島にまでフランスの支配が及ぶ。そういう中で、この地域に附属する島々としてフランスが主権を求めた。そして、一九二〇年代、三〇年代にかけては日本とフランスが南沙諸島の帰属を争って、第二次大戦に伴って日本が併合したという歴史かと思いますが、まず、第二次大戦までの経緯、この地域についてお伺いしたいと思います。
○滝崎政府参考人 事実関係に関することですので、私の方からお答えいたします。我が国は、サンフランシスコ平和条約により南沙、西沙諸島に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄しており、その帰属先について云々する立場にはないというのがまずは基本的な立場でございます。その上で、あくまで歴史的な事実関係として、公開情報などに基づいて南沙諸島をめぐる第二次世界大戦までの歴史的経緯につきお答えすれば、以下のとおりになるかと思います。一九一〇年代の後半から、日本人により燐鉱の収集等の事業が進められていったという経緯があります。そうした中、先ほど委員の方からも御指摘があったように、一九三三年、フランスが、これら群島が自分の国に属する旨日本政府に通知をしてきました。これに対して日本政府は抗議を行っております。そして、一九三八年の十二月、日本政府は、新南群島と名づけられました南沙諸島の領土編入を閣議決定した、このような経緯がございます。
○宮本(徹)委員 それは戦前の経緯です。日本が領有した後、日本は一九四五年に戦争に敗れるわけですが、それから、サンフランシスコ講和条約で、先ほどお話があったとおり、正式に領有権を放棄するということになります。一九四五年の日本の敗戦後からサンフランシスコ講和条約まで、この地域の領有をめぐってはどのような動きがあったでしょうか。
○滝崎政府参考人 まずは、先ほども申し上げたとおり、我が国は、これら諸島に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄しているということで、その帰属先について云々する立場にないということを申し上げた上で、歴史的な事実関係というのを申し上げたいと思います。第二次大戦の終戦後、南シナ海の沿岸国などはそれぞれ、南沙諸島や西沙諸島に対する調査などの活動を行ったものと承知しております。その後、例えばサンフランシスコ講和会議においては、ベトナムが南沙諸島それから西沙諸島の領有権を主張したのに対しまして、当時のソ連が南沙諸島に対する中華人民共和国の主権を認めるように主張したというふうに承知しております。そして、こうしたやりとりを経まして、一九五一年九月に署名されたサンフランシスコ平和条約では、我が国は、南沙、西沙諸島に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄することとなったということです。ただし、日本が放棄した権利や権原の帰属先については、関係国の間で一致した見解はなく今日に至っているというふうに認識しております。
○宮本(徹)委員 私の方も年表をつくりましたけれども、一九四五年にフランスがいち早くこの島々を占領しますが、すぐ撤収するということになります。その後、中華民国が一九四六年までに重立った島々を接収して、四八年にいわゆる公式な地図と言われるものを作成して、これが今、U字線と言われるものが描かれているものであります。今、中国が領有権を主張する論拠としているのがその地図になります。先ほどお話があったとおり、この時期は、いろいろな国が、それぞれが自分の領土だということを主張するということになりました。そして、ちょっと飛びますけれども、一九六九年に南シナ海の大陸棚に豊富な石油、ガス資源が埋蔵されていると指摘されてから、ここは権益争いの場になったというふうに言われております。これ以降、各国が何年ごろからこの南沙諸島での島嶼の占拠、実効支配を進めたのか、ちょっと紹介していただきたいと思います。
○滝崎政府参考人 我が国は、南シナ海における領有権問題に関する直接の当事国ではないということから、沿岸国による島嶼の支配の現状、あるいはそこに至る過程について詳細にわたり御説明する立場にはないということをまず申し上げたいと思います。その上で申し上げれば、例えば一九七四年には、西沙諸島において中国とベトナムが交戦をし、その結果、中国が西沙諸島の全域を事実上支配下に置くという経緯があったものと認識しております。また、一九八八年には、南沙諸島におきまして中国とベトナムが交戦をし、その結果として、中国が南沙諸島のジョンソン南礁を事実上支配下に置くという経緯があったものと承知しております。さらに、一九九五年、この年には、フィリピンが実効支配していたミスチーフ礁を中国が占拠し、施設の建設を行ったという経緯があったものと認識しております。
○宮本(徹)委員 中国の動きについてだけ紹介されたわけですけれども、私は年表の方をつくっておきましたけれども、一九六九年以降でいえば、一九七一年、フィリピン軍がスプラトリー諸島のコータ島、パガサ島に駐留して自国領土に編入する。そして、二年後、南ベトナムが開発事業に乗り出していく。それから、一九七四年、先ほど紹介があった中国がパラセル諸島全体を支配下に置いた直後には、ベトナムがスプラトリー諸島の六島、フィリピンが五島を占拠するということになっております。そして、先ほどあった一九八八年に、中国がいよいよといいますか、スプラトリー諸島のジョンソン礁に来るというときに緊張関係が高まるということになりましたが、この中で、防衛省の資料を見ますと、ベトナム、フィリピン、マレーシア、台湾などが一九八〇年代から九〇年代にかけて滑走路をつくるということとなっております。そして、一九九八年にはベトナムが二つ、一九九九年にはフィリピンが二つの島礁を新たに占拠するという経過だというふうに思います。ちょっと岸田大臣にお伺いしますが、この時期を振り返ってみますと、各国それぞれがいろいろな島を占拠して実効支配を強めてきたという理解でよろしいんですよね。
○岸田国務大臣 先ほど外務省からも答弁させていただきました。また、委員の方から今御紹介もありました。さまざまな動きがあり、それぞれが領有権を主張した、こうした動きがあったと認識をしております。
○宮本(徹)委員 さまざまな動きがあって、さまざまな実効支配が行われたわけですけれども、そういう中で、この緊張の高まりの中、やはりこの地域はこのままじゃよくないということで、何回もいろいろな話し合いが行われてきましたけれども、二〇〇二年に、中国とASEAN諸国は南シナ海行動宣言を表明するということになりました。この南シナ海行動宣言が生まれた経過と中身についても簡単に紹介していただけるでしょうか。
○滝崎政府参考人 お答えいたします。お尋ねのあった南シナ海における関係国の行動に関する宣言は、一九九五年の中国によるミスチーフ礁占拠をきっかけとして中国による海洋進出に対する国際社会の懸念が高まる中、中国とASEANとの間で交渉されたものです。最終的に、二〇〇二年の中国とASEAN首脳会議の機会に採択されたものであると認識しております。具体的には、以下のような点を合意したものと承知しております。まず、国連憲章の目的と原則、一九八二年の国連海洋法条約、その他普遍的に定められた国際法等に対する約束を再確認すること、二つ目に、南シナ海の航行及び上空通過の自由を尊重すること、三つ目に、領有権などの争いを国際法の原則に従い平和的手段で解決すること、さらに四つ目といたしまして、紛争を複雑化、激化させ平和と安定に影響を及ぼす行動を自主的に抑制し、意見の相違を建設的な方法で対処すること、最後に五つ目といたしまして、南シナ海の行動規範の採択がこの地域における平和と安定をさらに促進することを再確認し、その達成に向けて作業するということとなっております。
○宮本(徹)委員 私は、この南シナ海行動宣言は非常に大事だと思うんですよね。平和的手段で、友好的な協議を通じて解決に当たる、そして紛争を複雑化、激化させるような行動は自制すること、そして行動規範をつくっていこうということが確認されたわけです。岸田大臣もこれは非常に大事な宣言だと思われると思いますが、この南シナ海行動宣言についてはどういう認識でしょうか。
○岸田国務大臣 地域の平和や安定のために、このDOC、行動宣言は大変重要な宣言であると認識をしております。そして、これに引き続いて、今、COC、行動規範の議論が行われています。法の支配を重視する立場から、こうした行動規範につきましても、早期に合意されることを我が国として重視しておりますし、早期合意に至るよう呼びかけていきたいと考えます。
○宮本(徹)委員 また実際の歴史の経過を引き続き見ますけれども、南シナ海行動宣言に続いて、一旦はこれに基づいて、二〇〇五年には、論争棚上げ、共同開発の原則で、海底資源の共同調査の協定が結ばれるということもありましたが、実際はそのとおりうまく進まなかったのは皆さん御承知のとおりであります。ベトナムとインド、イギリスの企業が海底資源開発に乗り出したことを一つのきっかけに再び衝突が繰り返されて、各国は埋め立てや構造物、滑走路建設を進めていくということになりました。外務大臣、南シナ海行動宣言以降、どの国・地域がいつ空港をつくったでしょうか。
○滝崎政府参考人 事実関係ですので、私の方からお答えさせていただきます。先ほども申し上げたように、我が国は南シナ海における領有権問題に関する直接の当事者ではないということですので、それを前提に御説明させていただきます。どのような埋め立てとかあるいは拠点建設をやっているかということですけれども、例えば最近でいえば、中国は、南シナ海において大規模な埋め立てを急速に実施するとともに、滑走路や関連施設の建設などもあわせて進めているというふうに認識しております。具体的には、中国は、昨年末の時点で約二百万平方メートルの埋め立てを行っていたというふうに言われていますけれども、その後の四カ月の間にこれを約八百万平方メートルにまで広げたというふうにアメリカの国防省は指摘しているというふうに承知しております。それから、アメリカのシンクタンクは、中国が例えばファイアリークロス礁というところにおいて三千メートル級の滑走路の建設を進めているということを指摘しているというふうに承知しております。ほかの国ですけれども、例えばベトナムは、二〇〇九年から一四年にかけて、約二十四万平方メートルの埋め立てを行ってきているというふうにアメリカの国防省の関係者は証言しているというふうに承知しております。さらには、アメリカのシンクタンクは、ベトナムがウエスト礁及びサンド礁において計約八万六千平方メートルの埋め立てを行ったというふうに指摘しているというふうに承知しております。しかしながら、中国はそれをはるかに上回る規模と速さで埋め立てを実施しているというふうに我々は考えておりまして、我が国としては、大規模かつ急速な埋め立てを含めて、現状を変更して緊張を高めるあらゆる一方的な行動を懸念しているということ、それから、先ほど大臣の方から申し上げましたけれども、法の支配が貫徹されるように、アメリカや他の同志国と緊密に連携していきたいというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 今、各国の埋め立ての状況が報告されました。一国だけではないということであります。そして、ベトナムや台湾なども、南シナ海行動宣言以降も滑走路をつくる、あるいは延長するということもやっているということであります。南シナ海行動宣言がありながら、宣言に背く動きがこういう形で起きているということがこの地域の緊張をもたらしているんじゃないかというふうに私は思いますが、そういう認識でしょうか、岸田大臣も。
○岸田国務大臣 まず、南シナ海は、我が国にとりましても、航行の自由ですとかあるいはシーレーンの確保、こういった観点から重要な関心事項であり、ぜひ外交を通じて平和的に解決を追求していかなければならないと思っていますが、国際社会における法の支配という観点からも、こういった南シナ海の動きを注視していかなければならないと思います。昨年、シャングリラ・ダイアログにおきまして、安倍総理から、海洋における法の支配三原則というのを発表いたしました。多くの国々から賛同を得たわけですが、主張するときは国際法に従って主張するべきである、威圧や力による現状変更は行ってはならない、あるいは問題を解決する際には平和的に国際法に従って解決する、この三原則、ぜひ我が国としては、自身も大事にいたしますが、国際社会においてもしっかり訴えることによってこの地域の平和や安定に貢献していくよう努力をしていきたいと考えます。
○宮本(徹)委員 岸田大臣がおっしゃったとおり、外交を通じて平和的に解決するというのがこの地域の問題では一番大事な問題です。それしか道はないんじゃないかというふうに思っております。中谷大臣も参加されたアジア安全保障会議では、インドネシアのリャミザルド国防大臣は、南シナ海の紛争回避に向けて、中国とASEAN諸国での共同パトロールの提案も行われましたよね。それから、ASEAN諸国の中でも、とにかく緊張が高まる悪循環を断とうというさまざまな努力が行われております。同じアジア安全保障会議で、シンガポールのリー・シェンロン首相は基調講演の中でこう述べております。現在の動きが続くなら悪い結果につながる、係争はコントロールされ封じ込められなければならない、アジア諸国は前向きな米中関係を望んでいる、米国か中国かどちらかを選びたい国はないんだと。そして、行動は対抗を引き起こすと言われました。こう言って、南シナ海での中国による埋め立てなどの一方的行動に米国が反応して監視、偵察活動をふやしていることが新たな対抗措置を生んで悪循環に陥りかねないという懸念を表明されました。そして、物理的な衝突が起き、大きな緊張や紛争にエスカレートしないように、可能な限り早く南シナ海行動規範を制定し、国際法を遵守すべきだ、こういうふうに訴えられたわけです。岸田大臣、このリー首相が主張されている方向こそ、この問題の解決では一番大事なことではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○岸田国務大臣 先ほども申し上げましたが、法の支配を重視する立場から、この行動規範、COCにつきましては、早期妥結されるべきだと我々も考えております。ぜひ早期妥結に向けてこうした取り組みが進むよう、我々としても環境整備に努めていかなければならないと考えます。
○宮本(徹)委員 その立場を貫くのは非常に大事だと思うんですよね。平和的、外交的解決が大事だということを繰り返されているわけですけれども、実際は、この委員会でも政府は、本法案が必要な安全保障環境の変容の一つとして、南シナ海での中国の行動というのを何回も挙げられているわけであります。外交的、平和的解決が大事だというんだったら、アメリカの求めるような南シナ海での警戒活動には参加すべきじゃないんですよね。そして、今回、法案の審議の中では、重要影響事態の地域としても南シナ海が排除されないということを答弁されております。そして、法案では、平時でも、南シナ海での共同訓練、警戒監視を行う米軍などの武器が防護できるということになっているわけですよ。本当に外交的、平和的に解決するといったら、リー首相が言っているとおり、緊張を高めるようなアメリカの行動を応援していくような方向というのは、違う方向なわけですよ。両立しないわけですよ。ですから、この問題で本当に平和的、外交的解決が大事だというんだったら、この法案の進む方向というのは間違っていると言わざるを得ないですよ。この法案を撤回してください。
○中谷国務大臣 現在、自衛隊は南シナ海において常続的な警戒監視を行っておりませんし、また具体的な計画もありません。大綱、中期防におきましても、警戒監視能力、情報機能の整備強化、またアジア太平洋地域における二国間、多国間による共同訓練、演習、キャパシティービルディングの推進などを行っておりますが、今後とも、南シナ海における情勢が我が国の安全保障に与える影響を注視しつつ、検討を行ってまいりたいと思います。なお、南シナ海におきましては、現在の情勢について政府としても特に注視をしているところですが、あえてこの地域を取り上げて、どのような状況になれば重要影響事態に当たるかといった具体例をお示しすることは差し控えさせていただきたいと思っております。
○宮本(徹)委員 一方の側に立ってキャパシティービルディングをしていくということが緊張を高めていくことになるわけですよ。平和的、外交的解決とは違う道を今中谷大臣はおっしゃっているわけですよ。平和的、外交的解決に徹しなきゃいけないですよ。なぜならば、歴史を初めに振り返りましたけれども、この地域の領有権争いが起きた歴史的経過を見たら、日本が大きくかかわっているわけですよね。日本が占領した、その後、本来ならば講和条約で領域は画定しなきゃいけなかったわけですよ。国境は画定しなきゃいけなかった。だけれども、全面講和じゃなくて、アメリカ中心の単独講和という形で、中国も入らない形で講和を結んだことが、ここの地域が、戦後、領有権が定まらないまま来る大きな出発点になっているわけですよ。その責任からいっても、責任の一端を担っている日本がアメリカと一体になって一方の側で軍事的に関与していく、こういう道は絶対通ってはならない、平和的、外交的解決に徹するべきだということを重ねて訴えまして、きょうの質問を終わります。
○浜田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。