2020年11月25日衆院予算委員会 分科会提言をただちに実践し、感染拡大をおさえるべき

 新型コロナウイルス感染が急拡大し、「桜を見る会」前夜祭をめぐる安倍晋三前首相の疑惑が急浮上するもとで、衆参の予算委員会が25日、それぞれ開かれ、日本共産党の宮本徹衆院議員、田村智子参院議員が、緊急のコロナ対策とともに、「桜」疑惑の究明にむけた安倍氏の証人喚問を要求しました。田村氏はまた、日本学術会議への人事介入問題を追及しました。
 コロナ対策について、宮本氏は、中川俊男日本医師会会長の「感染拡大は『Go To』事業がきっかけ」とする発言にふれ、「『Go To』事業を見直さず感染を広げた反省はあるか」と追及。菅義偉首相は「『Go To トラベル』が感染拡大の主要な原因とのエビデンス(証拠)は存在しない」と答弁しました。
 宮本氏は、厚労省のアドバイザリーボードでの「『Go To』に東京が加わった10月以降、感染が広がる県が増えた」との資料を示し、「エビデンスが出てから見直すと手遅れになる」と指摘。「Go To」事業の見直しとともに、国の責任で医療機関への減収補てんを行うべきだと求めました。
 田村氏は、新型コロナ第3波で医療も経済も暮らしも切迫した状況なのに、新たな対策を何一つ打ち出さない菅政権を批判。「年明けの3次補正では間に合わない。今すぐ7兆円の予備費の活用を」と迫りましたが、菅首相は「緊急に予算の手当が必要になった場合はちゅうちょなく活用する」と述べるだけ。田村氏は「今がその場合だ。命がかかっている」と迫りました。
 安倍前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭で、安倍氏側が多額の費用を補てんしたことについて、宮本氏は「事実なら公選法と政治資金規正法の違反だ」と批判。菅首相に「官房長官として安倍前首相を擁護してきた責任は重い。首相の責任で真相解明をする必要がある」と迫ると、菅首相は「捜査機関の活動内容にかかわるので答えは控える」と拒否しました。
 田村氏は、安倍前首相が前夜祭について「安倍事務所に収支は一切ない」との国会答弁を繰り返してきたと指摘。「安倍前首相の答弁はうそであったと認めるか」とただすと、菅首相は「捜査が行われていると報じられており、私が答えるべきじゃない」などと虚偽答弁の可能性さえ認めませんでした。
 田村氏は、菅首相も当時の官房長官として、「明細書はない」と安倍前首相のうそをそのまま答弁してきたとして、「何の疑念もなくオウム返しにしたのか」と追及しました。しかし、菅首相は「総理に確認しながら答弁した」と無責任に述べるだけ。田村氏は「菅政権のもとで新しい事態が起きている。局面は変わった。真相究明を菅政権として行うべきだ」と迫りました。
宮本、田村両氏は安倍前首相の証人喚問を強く求めました。

≪2020年11月25日 第203回衆院予算委員会第4号 議事録≫

○金田委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。安倍後援会主催の桜を見る会前夜祭の費用について、安倍事務所が多額の補填を認め、特捜部が捜査をしております。補填が事実ならば、公選法そしてまた政治資金規正法違反ということになっていくわけであります。そして、安倍前総理は国会で一年にわたって虚偽答弁を繰り返してきたということになります。まさに民主主義を揺るがす事態だと言わなければなりません。そして、菅総理も、官房長官として安倍前総理を擁護する答弁をこの場で繰り返してまいりました。その責任は極めて重大だと言わなければならないと思います。総理、総理の責任でこの問題を真相解明する必要があると思いますが、いかがですか。
○菅内閣総理大臣 いずれにしろ、今お尋ねいただいている点は、捜査が行われていると報じられているところであり、捜査機関の活動内容にかかわる事柄でありますので、お答えは控えます。
○宮本委員 いや、捜査はしているかもわからないけれども、国会でずうっと問題になってきた問題じゃないですか。総理自身の答弁だってうそを説明してきたという話なんですよ。大体、この問題の解明に消極的な姿勢を見ると、菅総理御自身も何か後ろめたいことがあるんじゃないかと勘ぐられることになりますよ。この桜を見る会の問題、もともと、昨年の五月に、一番初めに私と当時官房長官だった菅さんで質問をやったのが、これが始まりだったわけですよ。そして、当初から、隠蔽、文書の廃棄、虚偽答弁が重ねられてきた。そのあげくが今回の事態ということであります。菅総理が解明に後ろ向きだったら、国会として安倍前総理に来ていただくしかないということになります。委員長、真相解明のために安倍前総理の証人喚問をお願いいたします。
○金田委員長 理事会で協議をさせていただきます。
○宮本委員 コロナ対策について伺います。感染が急激に進んでおります。重症患者が過去最多ということになっております。病院でのクラスターも続き、医療崩壊の危機が迫っている地域もあります。そして、この感染拡大について日本医師会の中川会長は、GoTo事業はきっかけだった、こう発言をされました。ところが、菅総理は、私たち野党がGoTo事業の見直しを求めてきたにもかかわらず、この間、本会議などでもみずから見直す姿勢は見せてこなかったわけであります。総理、GoTo事業を見直さないままここまで感染を広げてきたことについて、御自身の反省はありますか。総理の反省ですよ。総理の反省があるかどうかです。
○菅内閣総理大臣 まず、GoToを行っている中で、延べ四千万人以上の方々が利用して、感染者は約百八十名ということであります。先週の専門家の分科会の提言において、GoToトラベルが感染拡大の主要な原因であるとのエビデンスは現在のところ存在しないとされています。今お話がありました中川会長も、エビデンスはないということを申し上げていることを私も報道で知っています。ですから、感染拡大を防ぎながら地域の経済を下支えするGoToキャンペーンというのは今日の拡大と直結はしていない、このように考えます。
○宮本委員 いや、きっかけになったということを中川会長もおっしゃっている。そして、エビデンスはないということをおっしゃいますけれども、厚労省のアドバイザリーボードの中でも、GoToに東京が加わった十月以降、感染が広がっている県がふえていると。今、これは査読中の論文だから、まだ査読が済んでいない論文だけれども、途中経過だということで、委員の先生から資料も出されているわけですよ。査読が終わってエビデンスが出てからこれを見直そうとなったら、手おくれになるんですよ。そういう認識は大変深刻ですよ。人の移動がなければ、そもそもウイルスは全国に広がりません。感染研の脇田所長御自身、十月からGoToトラベルの対象に東京発着の旅行が追加されましたが感染がおさまり切っていませんでした、東京の無症状者や軽症者が他の地域へ動けば感染拡大の可能性は高くなります、道内の感染状況を加速させた可能性があります、こうインタビューで述べられているわけであります。そして、先週、コロナの分科会は、短期集中、三週間で局面を変えようということを提言されました。感染拡大地域での営業時間の短縮やGoTo事業の見直しへ、政府の英断を心からお願い、こう提言されております。そして、尾身会長は、見直しはできるだけ早く、こうおっしゃいました。ところが、政府は都道府県の判断に責任を丸投げをしている事態、ようやく決まったのは札幌市と大阪市の除外のみということであります。昨夜、厚労省のアドバイザリーボードの会議が行われました。このままの状況が続けば通常の医療で助けられる命が助けられなくなると、大変厳しい評価をされております。昨夜のアドバイザリーボードの報告は、総理、受けていますよね。確認だけ。
○菅内閣総理大臣 受けております。
○宮本委員 ならば、同じ認識でお話しさせていただきたいと思います。そこで、医療提供体制が厳しい地域として北海道、関東圏、関西圏、中部圏を挙げて、強い対策を求められております。英断が求められているのは知事じゃないんですよ。政府なんですよ。菅総理なんですよ。のろのろのろのろ本当にしているのは、国民の命を守る最高責任者としての危機感が欠けているんじゃないですか。
○西村国務大臣 お答え申し上げます。ステージ3に入ってきつつあるということを二十日の日に分科会で提言をいただき、そして、その地域、今おっしゃったような地域が入っているものですから、私ども、特に感染者の増加が見られる北海道、大阪府、それぞれの知事と私もその日からもう毎日のように、毎日何度も連絡をとりながら、地域の状況を一番わかっておられるのは知事でありますから、病床の状況、感染者の状況、知事の意向を尊重しながら、そして情報を共有しながら、私ども、提言を受けて最終的に、知事としてはそれぞれの事業者、関係者との調整、自治体との調整もあるわけであります。そして、その上で、昨晩に札幌市と大阪市を停止をするということを決めさせていただいたわけであります。今後も、それぞれの都道府県知事と連携をして、しっかりと対策を講じていきたいというふうに考えております。
○宮本委員 札幌と大阪市を外しただけで事態が変わるなんて国民の多くは思っていないですよ。中途半端なやり方でいったら感染拡大は一層加速しますよ。そして、分科会の皆さんも、そうすると後の経済へのダメージはより大きくなると言っているわけですよ。今局面を変えないと、観光業などの皆さんの一番の書き入れは年末年始なんですよ。年末年始にもっと感染拡大が広がる事態になったら、そこでもっと強い対策をとらなければいけなくなる。よほど、経済のことを考えても、今が大事なんだという認識を私は持たなければいけないと思いますよ。そして、今回、GoToトラベルの見直しも、感染拡大地域の、目的地について、目的地になるのは外すけれども出発地はいいというのが政府の立場で、これは知事会はおかしいじゃないかということで声も上げていらっしゃいます。事業者の皆さんには支援を別の形でしっかり行うことを前提に、出発地となった場合でも感染拡大地域は外すという英断が必要なんじゃないですか、総理。
○西村国務大臣 これまでも何度も答弁を我々、仲間からも、閣僚からもしておりますけれども、GoToトラベル自体で何かその地域で感染者を拡大をさせているということはないわけであります。陽性者は出ておりますけれども、陽性者は出ておりますが、そこで、旅館やホテルや観光施設で拡大させているという報告は受けておりません。ただ、一定のレベルに行った地域については……(発言する者あり)
○金田委員長 静粛に。
○西村国務大臣 一定のレベル、感染者の数、あるいは病床の逼迫度、これが一定のレベルに行けば、正しい行動であっても制約しなきゃいけない段階があるわけであります。これをそのままほっておくと、ステージ4の、緊急事態宣言を視野に入れた段階になりますから、その前のステージ3の段階で措置を講じて、感染防止策が仮に徹底されている行動であっても一定の制約がかかってくる、それによって感染者数を減らし、医療体制を守らなきゃいけない、そういう段階があるわけであります。その段階になっているわけでありまして、これが、分科会の報告でも、北海道札幌、それから大阪府の大阪市、このあたりを我々、数字などを見ながら判断をしてきたわけであります。その上で、その地域は医療も逼迫しているということで、そこに人が訪れることによっていろいろな活動が起こって、そこで更に感染者がふえて、それで更に医療が逼迫することは抑えていかなきゃいけない。そして、先ほど厚労大臣も答弁がありましたけれども、出発の方は、それぞれの地域の事情がありますので、そこはそれぞれの事情を見ながらまた判断をしていくわけでありますし、また、今申し上げたように、行くことによって感染を広げていく、そういう事例は報告を受けていないということで、こういう判断をしているところであります。
○宮本委員 いや、ちゃんと、担当大臣なんだから、アドバイザリーボードで言われていることを受けとめた方がいいと思いますよ。感染拡大の要因として、きのうも、人の移動の増加ということが書かれているじゃないですか。だから、今、営業時間の短縮だとかいろいろなことも含めて、やらなきゃいけないところはやろうじゃないかということを、そして、短期集中的にやって、年末年始はもうちょっと感染が抑えられた状況で迎えられるようにしよう、これが専門家の皆さんの大事な提言ですよ。このGoToキャンペーンと乖離した生活を送っているのが医療関係者の皆さんであります。コロナ対応の激務の上、勤務外も厳格な行動制限をされております。会食の自粛、旅行は届出制にしている、こういう話も伺っております。相当なストレスが続いていて、一方、慰労金はまだ届いていないところも多数あるわけであります。もう疲れたと離職される方もいらっしゃる。これは、GoTo事業を見直して感染拡大をしっかり抑えていくという姿勢を政府がとることが、私は医療関係者の皆さんの精神的な支えにもなっていくと思いますよ。その点、強く申し上げておきたいと思います。最後に、求められるのは医療への支援であります。コロナ患者が急速にふえる中、またまた医療が、収入面からも大変不安な声が上がっております。また、コロナ患者を受け入れていない病院は、本当に減収のままで、補填もないままが続いているわけであります。最後に総理に、医療機関に対して、減収分やかかり増しの経費については全部国が責任を持つ、必要な財政的支援は更に行っていくんだ、このメッセージをしっかり発していただきたいと思いますが、いかがですか。
○菅内閣総理大臣 医療機関においては、患者数の減少による収入の減少などが見られたことは承知しております。感染症対策の徹底を促し、地域医療の継続を行うことは極めて重要なことでありますから、これまで約三兆円の支援を実施してきました。また、このほかに、過去に例のない最大減収十二カ月分を上限とする無利子無担保などの危機対応融資も実施してきました。一方で、こうした支援が現場の医療機関に十分に行き届いていない、こういう指摘もあります。現実にそうだと思います。まずは、一刻も早く支援が医療現場に届くように全力を挙げたいと思います。あわせて、引き続き、国民の皆さんに必要な地域医療が確保できるように、感染状況や地域の医療実態等を踏まえ、必要な取組、支援を検討していきたいと思います。
○金田委員長 時間が参りました。
○宮本委員 時間になりましたので、終わります。