2021年2月1日 衆院内閣厚生労働連合審査会 やむなく調査拒否対象の恐れ
宮本氏は衆院内閣・厚生労働両委員会連合審査会での質問で、保健所の疫学調査などを拒否した感染者に罰則を科す感染症法改定案の問題点を追及。やむを得ず調査に協力できない複数の事例を挙げ、罰則対象になるかと問うたのに対し、田村憲久厚生労働相は「ならない」とは答えませんでした。
宮本氏は、保健所長が「患者さんには、自分の大切な人々に感染させたのではと自分を責めるなどの精神的負担が生じている。自分を責める患者さんに『言わなければ罰として過料ですよ』とは言いにくい状況がある」と語ったことを紹介。患者と家族の療養支援も担っている以上、「患者に寄り添い、理解を得る中で調査を進めたい。過料とはそぐわない面がある」と述べているとして、次のようにただしました。
宮本 罰則は、自分を責めている患者を追い詰めることになるのではとの指摘を否定できるのか。
厚労相 なるべく罰則適用にならないよう自治体には制度運用していただきたい。
宮本氏は、取材源を秘匿すべきメディア関係者が取材対象者を明かすことはできないと協力を拒めば、過料の対象になるのかと質問。田村厚労相は「取材目的で会ったのか、取材相手に会ったのかと聞くわけではない」と述べ、宮本氏は「単に誰に会ったかとの質問に、メディア関係者が答えられないと言えば、過料の対象になりうるという答弁だ」と強調しました。また、疫学調査に協力できない事例を挙げ、次のように質問しました。
宮本 友人が濃厚接触者になれば、2週間自宅待機で仕事ができず無収入になるため、調査に協力できない時は過料の対象になるのか。
厚労相 その友人が感染した可能性もある。その人の健康を守るのは重要なことだ。
宮本氏は「過料の対象にならないとは言わない」と指摘。罰則をもうければ検査を受けなくなり、感染コントロールが困難になると批判しました。
以上2021年2月2日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2021年2月1日 第204国会衆院内閣委員会厚生労働委員会連合審査第1号 議事録≫
○木原委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。田村大臣、罰則を設けると、検査を受けなくなって、そして、かえって感染コントロールが困難になるんじゃないかと、専門家の皆さん、あるいは保健所長の皆さんからたくさんの懸念が示されているわけですが、この懸念を否定できますか。
○田村国務大臣 実効性を確保するためにこのような厳しい対応が必要だとおっしゃられる方々もおられるわけであります。もちろん、委員がおっしゃっておられるような意見があることも存じておりますけれども、そこはまず、丁寧に御説明をすることが重要だというふうに思います。いきなり罰則というわけではないわけでございますので、しっかり御協力をいただくこと、それは、御本人の権利利益だけではなくて、感染症の蔓延を防止するという公共の利益、こういうものもある。ですから、御本人のお体のことと同時に、そういう、感染症を社会に蔓延させないというような社会的な意義もあるんだということを御説明をさせていただいた上で、理解、納得をいただいて対応していただくというのが前提でございますので、そのようなことをちゃんと周知できるように努力してまいりたいというふうに思います。
○宮本委員 懸念がある点について否定できないわけじゃないですか、それは。理解してもらえたら、別にこんな罰則なんて必要ないわけですからね。それは理解に基づいてやっていきましょうというのが今、保健所がずっと努力してやってきているわけですよ。本当に、検査を受けてもらいたい人にいかに受けてもらうのかというので苦労してきたんだと思うんですよね。見えないクラスターをどうやってつかまえていくのかと。それが、今までにやってきた努力を無にするような方向じゃないかということを大変私は懸念をしております。次にお伺いしますが、これは、ある保健所長さんの声を紹介したいと思います。 疫学調査は、他の方のため、体調の悪い患者さんに協力いただく調査ということになります。ここに刑事罰をつけるということは、それこそ、感染したことが他人を害する罪だから行動を白状せよと取られかねない。過料についても、前科はつかないにしても、感染自体が悪いのではないときちんと周知しないと、患者差別につながると考えます。人から人へ感染する疾患は、通常、近しい人、大切な人にうつしている可能性が大きく、患者さんは、自分の大切な人々に感染させたのではと不安を抱えていることが多く、患者さんになった時点で、自分を責めるなどの精神的負担が生じています。私たちは、その負担を一々確認する形で調査をさせていただくことになるので、自分を責める患者さんに、言わなければ罰として過料ですよとは言いにくい状況があります。私たちは、患者さんから感染拡大を防ぐとともに、患者さんと御家族の療養支援も仕事と考えておりますので、患者さんに寄り添って、御理解をいただきながら調査を進めたいと思っており、過料とはそぐわない面があります。これは、多くの保健所の現場の声だと思います。大臣、罰則というのは、自分を責めている患者さんを更に追い詰めることになるのではないのか、こういう保健所の現場からの指摘を否定できますか。
○田村国務大臣 自治体ではなかなか御協力いただけない例でありますとか、場合によっては、そういうような中で実効性を持つために、全国知事会からでありますけれども、罰則を設けていただきたいというお声もありました。例えば、入院勧告に直ちに従わなかった事例、これは七十七自治体があります、説得により入院に応じた事例も含んでいますけれども。それから、入院期間中に逃げた事例がある自治体、これは十六。積極的疫学調査に協力いただけない事例がある自治体、百七。そのうち、患者の発見や医療提供の遅れなどに、支障が生じた自治体が五十八。このように、やはり必要であるというお声があるのも一方にあります。しかしながら、委員がおっしゃられるその意味合いというものもしっかり我々理解しながら、正当な理由ということをお願いしておりますが、それに関しては、我々、詳細、いろんな基準をお示ししたいと思いますけれども、最終的には自治体でそれぞれ御判断をいただくという形になります。なるべくそのような罰則適用にならないような形で、御理解をいただきながら、この制度を運用していただきたい、これは我々の思いであります。
○宮本委員 なるべく罰則適用にならないようにとお話しされますけれども、こういう制度を設けたら、協力拒否している人がいるのに何で過料を取らないんだ、こういうプレッシャーが保健所、保健師さんの現場にかかるのではないのか、こういう懸念もあるわけですが、そういうプレッシャーが保健所の現場にかからない、こういう仕組みというのは何か考えているんですか。
○田村国務大臣 もちろん、今言われたようなこと、例えば、何か罰則を適用しなきゃならなければ、それに対する手続等々、手間がかかるというようなお声がある、それは我々も理解いたしております。一方で、今まで、例えば、じゃ、これは言うことを聞かなかったら何が、法的な問題はあるのかと言われたときに、それを対応できなければ、それは説得をして御協力をいただいてきたわけで、そちらには時間がかなりかかるという部分もあります。それが、過料というものがあるとすれば、これは、なるほど、積極的に協力しなきゃいけないことだなというふうに御理解をいただいて、今までの説明時間よりも短めに御理解をいただくということもあるかも分かりません。なかなか一概には言えないわけでありますが、ただ、今委員がおっしゃられたようなところもあるということを我々はしっかり認識して、保健所がそれによって忙殺されることのないように、都道府県ともいろんな話をしながら対応してまいりたいと考えております。
○宮本委員 これは予算委員会で申し上げましたけれども、過料を設けたら、じゃ、積極的疫学調査で答えたくないことを答えるようになるかといったら、そんなことは絶対ないですよ。初めから、覚えていません、分かりません、こう言われるだけで、実効性が上がるなんてとても思えないというのが現場の多くの皆さんの声だということを重ねて申し上げておきたいと思います。それから、何が正当な理由なのか、何が過料の対象になるのかというのは大変はっきりしないわけですけれども、例えばメディアの皆さんは取材源の秘匿という職業倫理があります。接触者は明かせないとメディアの皆さんが言った場合は、過料の対象になるんでしょうか。
○田村国務大臣 これは結局、蔓延をどう防いでいくかというのが今般の問題であり、そのための実効性をどうやって担保していくかという話であります。決して目的を聞くわけでもありませんし、そういう意味では、それが、言うなれば、情報源というかどうかというのは分からないわけであります。どういう方とお会いされましたか、どういうような経路で動かれましたかというようなことを聞くだけの話でありますので、それに対して、例えば、それ以外のこと、この人とどういうような理由で会ったんですか、もしかしたら取材の相手ですかなんというようなことを聞けば、これに対しては答えないというのは正当な理由になってまいるというふうに思います。併せて申し上げれば、先ほど伊佐委員からもお話がありましたけれども、これに対して、もしこれを破って、本来これは守秘義務がございますから、守秘義務を破れば、その破った方に罰則がかかるということでございますので、それも含めて、しっかりと守秘義務を守っていただく中において、信頼関係において、この積極的疫学調査に御協力をいただきたいというふうに考えております。
○宮本委員 ですから、保健所の皆さんは、私たちは守秘義務がありますからということで一生懸命お話をしていますけれども、メディアの方は、例えば、取材源の秘匿だから話せないという例はある、現にあるわけですよ。そのことを公にいろんなところで書いているメディアの方だっていらっしゃるわけですよね。その場合、過料の対象になるのかならないのかということについて、お答えがないわけですよね。これはならないと言えますか。
○田村国務大臣 いろんな状況があると思いますけれども、基本的に、先ほど申し上げたとおり、取材のために会ったという、その何のためにを聞くわけではございませんので、そういう意味では、目的を聞くという、もし聞けば、これは答えなくていい。これは正当な理由ですから、この罰則の適用にはなりません。そして、必要なものを聞いた場合は、守秘義務を持っておりますので、聞いた側はこれを漏らしてはならないということでございますので、適切に運用をしてまいりたいというふうに考えております。
○宮本委員 ですから、取材の対象がどうかというのを聞かずに、ただ、誰に会いましたかといったときに、それについても答えられないといった場合は過料の対象になり得るというのが、今の答弁になりますよね、どう考えても。これは本当に大変な問題だと思うんですよね。あるいは、これもお伺いしたいんですけれども、例えば濃厚接触者の方は、今、何の補償もないわけですよね。現に、濃厚接触になって収入が断たれて大変な事態になる方もいるわけですけれども、濃厚接触者として友人の名前を挙げたら、その友達に迷惑がかかっちゃう、だからその人については言えないという判断をする場合も、今のままではあると思います。その人が例えば非正規雇用で、濃厚接触で休めというふうになったら、その人はもう来なくていいというふうに言われるかも分からない、あるいは収入が断たれてしまって生活が厳しくなってしまう、だからその友人のことについては言うわけにいかないということを、積極的疫学調査でそういうことを示される方がいるかもしれません。いたとしましょう。そういう方は過料の対象になるんでしょうか。
○田村国務大臣 濃厚接触者は、これは過料の対象にはなりません。あくまでも御本人、感染者の方が対象になりますので、濃厚接触者は対象にならないということであります。
○宮本委員 私の質問がちゃんと伝わっていないです。感染した人が、濃厚接触した友達がいる、その方の仕事だとかいろいろなこととの関係でその方が濃厚接触になっちゃったら、二週間待機しなきゃいけないわけです、今だと。その間、仕事ができなくなっちゃう。しかし、その感染者の方は、友達を守るために、この友達のことについては保健所に、誰と会ったというのは言うわけにいきません、その方については、その人に迷惑がかかるので、私は調査に協力できません、ほかの方は言えますけれども、その方については協力、名前を挙げることができないんですという場合も現状ではあると思うんですよね、私は。その場合は、これは過料の対象になるんでしょうか。
○田村国務大臣 感染者の方が自分の行動履歴等々を言う場合に、濃厚接触者に認定されちゃうとその方が一定の行動制限がかかるので、それを心配してそれを言わないという話でいいですか。(宮本委員「そうです」と呼ぶ)それに関して申し上げれば、基本的に、濃厚接触者に当たるかどうかは、これは保健所が一義的に判断をするというふうに思います。必ず言った方が濃厚接触者になるとは限らないということ。それから、もう一点は、濃厚接触ではなくて感染している可能性もあるわけでありまして、これは、感染拡大を防いでいくと同時に、感染の可能性のある方、こういう方に関しても行政検査をいただいて、その上でその方の健康を守るという意味もあります。ですから、そういう意味からいたしますと、やはりそこの点は、履歴をおっしゃっていただいて、接触した方をおっしゃっていただいて、それを保健所が判断する中において検査をいただいて、その人の健康を守るということは非常に重要だというふうに考えております。
○宮本委員 いや、それは当然そうなんですけれども、それは理解を得て今やっていることなわけじゃないですか。だけれども、そうじゃなくて、この人、もし感染していないにもかかわらず濃厚接触者となっちゃったら気の毒だなと思って、その友達に対しては自分からそっと、検査に行った方がいいよとアドバイスをする、でも保健所にはその人の名前は明かさないという例だってあると思うんですよね。そういう場合は過料の対象になるんですか、ならないんですか。
○田村国務大臣 感染していない、つまり、感染していないといいますか、PCR検査を受けて陰性と出ましても、そもそもPCR検査の感度は七割ぐらいでございます。残りの三割はすり抜ける可能性がある。そのために療養、自宅に待機をいただくということにしているわけでございまして、御本人も発症する可能性がある、PCR検査が仮に陰性であったとしても。ですから、そういうことを考えた場合に、御自宅にいていただくという意味合いもあるわけでございますので、そこは御本人の健康、体、これを守るためにもおっしゃっていただいて、その友人なり知人をお守りをいただきたい。そういう意味でのこの積極的疫学調査の意味合いもございますから、そこは御理解をいただければありがたいと思います。
○宮本委員 ですから、過料の対象にならないということは言わないわけですよね。ですから、それは、理解してもらうための努力は一生懸命保健所はやっていますよ。だけれども、どうしても、その友達のことを考えて言わない、別の方法で友達の健康を守る方法を選ぶという場合もあるわけですよね。最後、一問だけお伺いしたいですけれども、参考人質疑で、分科会のメンバーでもある舘田先生が、感染性のない人の不必要な隔離が行われているという指摘がありました。入院拒否の場合、これに過料を科すという場合に、感染力の有無も確認せずに過料を科すというのはできるんでしょうか。
○木原委員長 田村厚労大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
○田村国務大臣 感染力の有無というものを今一人一人調べているわけではございませんので、あくまでも、感染をしている、PCR検査等でこれは陽性になるということが前提でございますので、感染力があるかないか、これは多分、世界的にもそこまで詳細なエビデンスはないと思いますけれども、その中において運用させていただいて、御本人の健康と、それから社会における感染の蔓延、これを防いでいくということが目的で対応させていただきます。
○宮本委員 時間になりましたけれども、終わりますけれども、必要最小限の私権の制限にしなければならないというのは、特措法にしても感染症法にしても当然の前提だと思うんですよね。ですけれども、感染力がない人の隔離を現在はしている。
○木原委員長 宮本委員に申し上げます。質疑は終わっておりますので、おまとめをいただきたいと思います。
○宮本委員 それは、何回も検査しなきゃ分からないから、そういう形で、お願いベースでやっているのが現状だと思います。
○木原委員長 宮本委員に再度申し上げます。時間が過ぎておりますので、おまとめください。
○宮本委員 そのお願いベースを、罰則をかけるのに感染力の確認もしないというのはあり得ないということを申し上げて、質問を終わります。